説明

追従対象車特定装置

【課題】 追従対象車両と他の車両が近接している場合であっても、追従対象車両を精度よく特定することを可能とした追従対象車特定装置を提供する。
【解決手段】 車々間通信機30で取得した周辺車両情報と、レーダ装置41で取得した前方車両の車両情報とを追従走行ECU10が比較することで、追従対象車両を特定する追従対象車特定装置であって、車々間通信機30で取得した他車両の速度とレーダ装置41で取得した前方車両の速度とを自車両進行方向の速度成分で比較することにより、追従対象車を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両により隊列走行を行う際などに、追従対象車両を特定する追従対象車特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の周囲の車両の走行状況を検知する装置としては特許文献1に開示されている装置が知られている。この装置では、レーダ装置で取得した前方車両情報と、車々間通信装置から取得した前方車両情報との示す位置とを、自車を基準としたマッピング領域にマッピングし、車両位置が重複する場合には当該車両位置が示す情報の信頼度を算出してそれに基づいて位置推定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−115637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高速道路などの自動車専用道路において、複数の車両が隊列を組んで走行することで、車間距離の変動にともなう不必要な加減速を抑制し、車両群の燃費を向上させるとともに相互の安全を確保する技術が知られている。こうした隊列走行においては、後続車両は先行車両を特定し、その位置、速度に応じた走行(追従走行)を行う必要がある。こうした追従走行の対象車両を特定に特許文献1記載の技術を用いた場合、車両位置が近い車両の中でどの位置の車両を追従対象と特定すべきか判定が困難な場合があり、追従対象車両を誤って選択してしまう可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、追従対象車両と他の車両が近接している場合であっても、追従対象車両を精度よく特定することを可能とした追従対象車特定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る追従対象車特定装置は、車々間通信により取得した周囲の車両事情と自車両に搭載した前方センサで取得した前方車両の車両情報とを比較することにより追従対象車両を特定する制御手段を備えた追従対象車特定装置において、この制御手段は車々間通信で取得した速度と前方センサで取得した速度とを自車進行方向の速度成分で比較することにより、追従対象車を特定することを特徴とする。
【0007】
制御手段は車々間通信で取得した位置と前方センサで取得した位置とが略一致する車両についてこの速度成分の比較を行うとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両の進行方向の車両速度成分に基づいて追従対象車両を特定することで、例えば、割り込み車両や同一車線からの離脱車両を対象から除外し、追従対象車両を精度よく判定することができる。さらに位置情報を参照して絞り込みを行うことで、精度よく判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る追従対象車特定装置のブロック構成図である。
【図2】図1の装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の装置における自車座標系への座標変換を説明する図である。
【図4】図1の装置における追従対象車の特定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1に本発明に係る追従対象車特定装置の構成を示すブロック図である。この装置は、制御部である追従走行ECU10を中心に、車両の挙動を制御する車両制御ECU11、経路案内を行うナビゲーションECU12等を組み合わせて構成されている。これらの各ECUは、CPU、ROM、RAM等によって構成されるが、それぞれ専用のハードウェアとして構成されていてもよいし、複数のハードウェアを組み合わせたり、ハードウェアの一部または全部を共有する構成としてもよい。各ECUは、例えば、車内LAN回線を用いてデータの授受を行う構成をとるとよい。
【0012】
ナビゲーションECU12には、アンテナ21を用いてGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの信号を受信するGPS受信機20と、他車両との間でアンテナ31を介して各車両の車両情報(車両事情)を相互通信する車々間通信機30と、自律航法のためのジャイロ装置22、地図情報を格納する地図DB(Database)23と、表示用のディスプレイ24、音声出力用のスピーカー25が接続されている。
【0013】
追従走行ECU10には、車両前部に配置されるレーダ装置41の出力に基づいて周辺の障害物、他車両を検出する周辺検知手段40と、自車両の車両状態を検出する車両状態量センサ50の出力が入力される。ここで、車両状態量センサ50としては、各車輪の回転を検出する車輪速センサ、車両の前後方向に働く加速度を検出する加速度センサ、横方向に働く加速度を検出する横加速度センサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、操舵角を検出する操舵角センサ等が含まれる。レーダ装置41は、車両前方に電磁波(例えばミリ波)を照射し、他の物体からの反射波を受信し、それに基づいて他の物体の位置、相対速度情報を取得するものである。
【0014】
次に、この装置の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。この動作は、追従走行ECU10がナビゲーションECU12、車両制御ECU11と協調して運転者が追従走行を行うよう設定してから、設定が解除されるまで(運転者による解除のほか、追従走行を行う条件が満たされず、自動的に解除される場合を含む。)の間、設定されたタイミングで繰り返し実行される。
【0015】
最初に、車々間通信機30から周辺車両情報を受信する(ステップS1)。ここで、得られる周辺車両情報とは、車両ごとに固有に設定された車両ID、車両の速度、加速度、位置、進行方向を示す方位といった情報である。車々間通信機30はまた、車両状態量センサ50で取得した車両の速度、加速度とナビゲーションECU12で取得した車両の位置、進行方向情報を自車両の車両IDとともに他の車両に対して送信しており、他の車両も同様のデータ送受信を行うことで、車々間通信機能を有する車両間で、車両情報を授受することができる。このとき、GPSデータのみから位置情報を算出した場合には、その誤差が大きいため、自律航法データによって修正したうえで送信することが好ましい。
【0016】
次に、周辺車両情報として得られた各車両データの位置、速度を自車両の進行方向座標系に変換して相対位置、相対速度を演算する(ステップS3)。図3を参照してこの座標系変換を具体的に説明する。車々間通信において車両位置、進行方向を表す座標系を図3(a)に示すXY座標系であるとする。ここでは、各車両の位置座標は、車両の重心位置であるとする。このXY座標系における自車両100の位置座標は(X,Y)であり、他車両110の位置座標は(X,Y)であり、それぞれの位置座標誤差の半径は、σ、σである。自車両100の速度がV、他車両110の速度がVであって、各速度ベクトルがX軸となす角度をそれぞれθ、θとする。この座標系を自車両100の重心位置を原点とし、その速度ベクトル方向をx軸、それに直交する方向をy軸とする図3(b)に示す座標系に変換する。
【0017】
この変換は回転変換であるから、
【数1】


が成立し、相対位置の誤差σr1は、分散の加法性から、
【数2】


により求めることができる。
【0018】
そして、他車両110の速度ベクトルのx軸となす角度θr1は、(θ−θ)であるから、その速度Vの自車両100の進行方向(x軸方向)の速度成分V1xは、下記の式で表せる。
【数3】

【0019】
次に、レーダ装置41を用いて取得した他車両の相対位置と、ステップS3で求めた相対位置とが所定の距離、例えば、前述の誤差範囲σr1内で合致するものを抽出する(ステップS5)。続いて、合致したものの中から、自車両の進行方向の相対速度が所定の誤差範囲しきい値Vth内で一致するものを抽出する(ステップS7)。図3(b)に示される例では、ステップS3で求めたV1xとVの差(V1x−V)が周辺車両情報として得られた他車両の自車両進行方向の相対速度であり、これをレーダ装置41で取得した相対速度Vと比較して、その差が±Vth以内であれば合致すると判定すればよい。このしきい値Vthはレーダ装置41やナビゲーションシステムの測定精度等に基づいて設定される。
【0020】
こうして条件を満たすとして抽出された車両を先行車候補に設定し(ステップS9)、候補が複数ある場合には、その中から一致度の最も高いものを先行車として確定する(ステップS11)。車両制御ECU11は、こうして先行車両として確定された他車両に追従して走行できるようエンジンやブレーキの状態を制御することで、車両の速度を調整する。
【0021】
図4は、本発明に係る追従対象車特定装置による特定の模様を説明する図である。自車両100が合流地点手前に位置し、そこから近い位置に他車両200〜220が存在している。他車両200〜220の速度V〜Vが近似している場合であっても、それらの進行方向の違いにより、自車両100の走行車線に合流しようとしている車両210、220では、自車両100の進行方向の速度成分V1x、V2xは本来の速度V1、V2より小さくなる。一方、自車両100が追従すべき車両200の自車進行方向速度成分は、その本来の速度Vに一致し、レーダ装置41で取得した速度成分とほぼ一致する。このため、合流しようとする車両210、220や自車両から離れた車両230〜270ではなく、車両200を追従対象車として確実に特定することができる。
【0022】
以上の説明では、前方センサとしてレーダ装置を用いる場合を例に説明したが、赤外線センサや、超音波ソナーを用いてもよく、あるいは、前方カメラで取得した画像中から画像処理により他車両画像を取得し、それに基づいて他車両の距離、速度を判定してもよい。
【符号の説明】
【0023】
10…追従走行ECU、11…車両制御ECU、12…ナビゲーションECU、20…受信機、21…アンテナ、22…ジャイロ装置、24…ディスプレイ、25…スピーカー、30…間通信機、31…アンテナ、40…周辺検知手段、41…レーダ装置、50…車両状態量センサ、100…自車両、110、200〜270…他車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車々間通信により取得した周囲の車両事情と自車両に搭載した前方センサで取得した前方車両の車両情報とを比較することにより追従対象車両を特定する制御手段を備えた追従対象車特定装置において、
前記制御手段は前記車々間通信で取得した速度と前記前方センサで取得した速度とを自車進行方向の速度成分で比較することにより、前記追従対象車を特定することを特徴とする追従対象車特定装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記車々間通信で取得した位置と前記前方センサで取得した位置とが略一致する車両について前記速度成分の比較を行うことを特徴とする請求項1記載の追従対象車特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−221653(P2011−221653A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87974(P2010−87974)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】