説明

逆止弁装置

【課題】搭載スペースに応じて、適宜、大きさ等を自由に設計変更できる構成の逆止弁装置の提供。
【解決手段】本発明の逆止弁装置1は、カムシャフトを支持する支持構造物に穿設されてなる油路4の一部を構成し、作動油の入口穴13とそれの出口穴14とを有し、壁151,153で囲まれた収容室15と、作動油を透過させ内側に中空部89を含んだ筒状の周壁部85と、周壁部85の一端を塞ぐ蓋部82と、周壁部85の他端に設けられ内側に中空部89と繋がる開口部88を含んだ環状脚部84とを有し、環状脚部84が入口穴13を取り囲むように壁153に宛がわれつつ入口穴13と出口穴14とを隔てるように収容室15内に収容される支持基材8と、周面に切れ目状の弁孔12を有し、周壁部85に被せられ、外側に広がると弁孔12が開きかつ復元すると弁孔12が閉じる弾性変形可能な筒状の弁部材11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカムシャフトに設けられている可変バルブタイミング機構の作動油圧を制御するオイルコントロールバルブに対して作動油を供給し、かつ前記カムシャフトを支持する支持構造物に穿設されてなる油路に設けられる逆止弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力向上、エミッションの低減等を目的として、可変バルブタイミング機構(VVT機構)が、吸気バルブ又は排気バルブ(以下、吸排気バルブ)を作動させるカムシャフトの端部に設けられている。このVVT機構は、前記カムシャフトと、このカムシャフトに伝動手段を介して動力を伝達しているクランクシャフトとの位相(相対回転位相)を、エンジンの負荷に応じて変化させることによって、吸排気バルブの開閉タイミングを変更している。
【0003】
前記VVT機構としては、一般的に、油圧で駆動するもの(所謂、油圧ベーン式)が知られている。この種のVVT機構は、上流側にオイルポンプが設けられている油路と繋がっており、オイルポンプから圧送されてくる作動油が油路を介してVVT機構に供給されている。
【0004】
なお、前記油路の途中には、オイルコントロールバルブ(以下、OCV)が備えられており、このOCVによって、VVT機構の油圧制御が行われている。このOCVの作動に応じてVVT機構に作動油が供給されると、VVT機構は前記カムシャフトの位相がクランクシャフトの位相に対して進むように、又は遅れるように駆動する。
【0005】
ところで、特許文献1等に示されるように、VVT機構に供給される作動油の圧力(油圧)が低い場合、作動油が前記油路を逆流すること(つまり、VVT機構からOCV側に向かって作動油が流れること)が知られている。そのため、前記油路の途中には、逆流を防止するための逆止弁が設けられている。
【0006】
なお、前記油路及び逆止弁は、特許文献1及び2に示されるように、シリンダヘッドの上部に配置されているカムキャップ等の構造物に設けられている。前記油路は、前記構造物中を貫通する細長く延びた孔からなり、この孔の途中に前記逆止弁等を収容するための収容室が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−25032号公報
【特許文献2】特開2010−255533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カムキャップ等の構造物中に、前記逆止弁等を搭載できるスペースは限られている。そのため、搭載スペースに応じて、適宜、大きさ等を自由に設計変更できる構成の逆止弁装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の逆止弁装置は、内燃機関のカムシャフトに設けられている可変バルブタイミング機構の作動油圧を制御するオイルコントロールバルブに対して作動油を供給し、かつ前記カムシャフトを支持する支持構造物に穿設されてなる油路、に設けられる逆止弁装置であって、前記油路の一部を構成し、前記作動油の入口穴とそれの出口穴とを有し、壁で囲まれた収容室と、前記作動油を透過させ内側に中空部を含んだ筒状の周壁部と、前記周壁部の一端を塞ぐ蓋部と、前記周壁部の他端に設けられ内側に前記中空部と繋がる開口部を含んだ環状脚部とを有し、前記環状脚部が前記入口穴を取り囲むように前記壁に宛がわれつつ前記入口穴と前記出口穴とを隔てるように前記収容室内に収容される支持基材と、周面に切れ目状の弁孔を有し、前記周壁部に被せられ、外側に広がると前記弁孔が開きかつ復元すると前記弁孔が閉じる弾性変形可能な筒状の弁部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記逆止弁装置において、前記弁部材は、弾性シートが筒状に加工されてなる筒状弾性部材に、前記弁孔となる複数個の切れ目状の孔が設けられたものを用いてもよい。
【0011】
前記逆止弁装置において、前記弁部材は、弾性シートが帯状に加工されてなる弾性帯部材を、一方の側縁が前記周壁部に対して接着されかつ他方の側縁が、既に接着されている部分に覆い被さるように、前記環状脚部側から前記蓋部側に向かって互いに前記弁孔となる切れ目状の間隔を確保しつつ前記周壁部に巻き付けられたものを用いてもよい。
【0012】
前記逆止弁装置において、前記支持基材の周壁部が、前記作動油中に含まれる異物を吸着するためのフィルター層を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搭載スペースに応じて、適宜、大きさ等を自由に設計変更できる構成の逆止弁装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る逆止弁装置が設けられるVVT機構に作動油を供給する油路の説明図
【図2】開状態の逆止弁装置を示す断面図
【図3】支持基材の斜視図
【図4】弁部材が取り付けられた支持基材の斜視図
【図5】開状態の逆止弁装置における弁部材の斜視図
【図6】閉状態の逆止弁装置を示す断面図
【図7】実施形態2における閉状態の弁部材の斜視図
【図8】弾性帯部材の平面図
【図9】開状態の弁部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、一実施形態に係る逆止弁装置に設けられるVVT機構に作動油を供給する油路の説明図である。図1に示されるVVT機構2は、油圧ベーン式のものであり、ダブルオーバーヘッドカム(DOHC)式のエンジン(内燃機関)が備えている吸気側カムシャフトの端部に設けられている。
【0016】
VVT機構2は、供給される作動油の油圧によって作動し、前記エンジンの出力軸であるクランクシャフトと、前記カムシャフトとの相対回転位相を進角方向又は遅角方向に変化させて、吸気バルブの開閉タイミングを変更している。VVT機構2には、供給される油圧(作動油圧)によって前記相対回転位相を進角方向に変更する進角室と、供給される油圧によって前記相対回転位相を遅角方向に変更する遅角室とを備えている。
【0017】
VVT機構2は、図1に示されるように2本の油路4(43,44)と接続している。一方の油路4(43)は、進角制御用であり、進角室と繋がっており、他方の油路4(44)は遅角制御用であり、遅角室と繋がっている。また、これらの油路4(43,44)は、共にOCV3とも接続している。
【0018】
OCV3は、スプール弁を備えたリニアソレノイドバルブからなり、内蔵する電磁ソレノイドに対する駆動信号を変化させることによって、作動油の供給先及び供給量等を変更できるように構成されている。OCV3の駆動制御は、マイクロコンピュータ等を備えたECU(Electronic Control Unit)によって行われる。
【0019】
OCV3は、2つの給排ポート(不図示)と、1つの供給ポート(不図示)と、2つの排出ポート(不図示)とを備えている。一方の給排ポートは、VVT機構2の進角室と繋がった油路4(43)に接続され、他方の給排ポートは、VVT機構2の遅角室と繋がった油路4(44)に接続されている。なお、前記供給ポートは油路4(42)に接続され、前記排出ポートは、その先側で合流するように、2つとも1本の油路4(45)に接続されている。
【0020】
油路4(42)は、一端が上述したようにOCV3の供給ポートに接続されており、その他端は、逆止弁装置1に接続されている。更に、逆止弁装置1は、油路4(41)が接続されており、その油路4(41)の末端には、オイルストレーナ6が設けられている。また、その油路4(41)の途中には、オイルポンプ5が設けられており、このオイルポンプ5を利用して、オイルパン7内の作動油(エンジンオイル)がオイルストレーナ6を介して吸引され、そして油路4(41)を通ってVVT機構2側に向かうように圧送される。
【0021】
なお、油路4(45)は、その末端がオイルパン7に接続されており、上述したOCV3の排出ポートから排出された作動油を、オイルパン7内へ戻している。
【0022】
ここで逆止弁装置1について、図2ないし図6を参照しつつ詳細に説明する。図2は、開状態の逆止弁装置1を示す断面図である。図2に示されるように、逆止弁装置1は、主として、収容室15と、支持基材8と、弁部材11とを備えている。
【0023】
収容室15は、上流側の油路4(41)と下流側の油路4(42)との間に設けられており、収容室15自身が油路4の一部を構成している。図2に示される油路4(41)は、カムハウジング400に穿設されており、油路4(42)は、カムキャップ401に穿設されている。
【0024】
カムハウジング400は、エンジンのシリンダヘッド(不図示)の上部に取り付けられており、更にこのカムハウジング400の上部にカムキャップ401が取り付けられている。そして、カムハウジング400とカムキャップ401との間でカムシャフト(不図示)が回転可能に支持されている。本実施形態のカムハウジング400及びカムキャップ401は、共にアルミニウム合金等の鋳造物からなる。なお、本明細書では、カムハウジング400、カムキャップ401等のカムシャフトを支持する構造物を特に、支持構造物と言う場合がある。
【0025】
収容室15は、カムキャップ401側の壁151と、カムハウジング400側の壁153とで囲まれた空間からなる。収容室15の主たる部分は、カムキャップ401側に穿設された空間を囲む壁151からなる。この空間は、カムキャップ401の端面から掘り下げられて形成される。そして、カムハウジング400がカムキャップ401と密着する端面が、収容室15を囲む残りの壁153となっている。
【0026】
収容室15には、入口穴13と、出口孔14とが設けられている。入口穴13は、円形状であり、その周りを壁153が取り囲んでいる。また、入口穴13は、カムハウジング400に穿設されている油路4(41)の下流端に位置している。なお、収容室15の内径は、入口穴13の大きさ(直径)よりも大きく設定されている。
【0027】
これに対して、出口孔14は、壁151の一部である側壁151bに設けられており、カムキャップ401に穿設されている油路4(42)の上流端に位置している。つまり、油路4(41)と油路4(42)とは、それらを中継する部分の収容室15で折れ曲がるように配設されている。
【0028】
なお、壁151の一部が、入口穴13と対向するように配置する対向壁151aとなっている。そして、その対向壁151aの一部には、凹部152が形成されている。
【0029】
支持基材8は、図2に示されるように、周壁部85と、蓋部82と、環状脚部84とを備えている。図3は、支持基材の斜視図である。図2及び図3に示されるように、周壁部85は、全体として筒状であり、その内側に中空部(空間)89を備えている。周壁部85は、外側にある筒状のフィルター層80と、このフィルター層80を内側から支持する複数本の柱86からなる。フィルター層80は、作動油を透過する多孔質材料からなり、作動油を透過させる際に、作動油中に含まれている異物を吸着して除去する。前記柱86は、フィルター層80を内側から支えるように、等間隔で円環状に並んでいる。本実施形態においては、フィルター層80は各柱86に固定されている。隣り合った柱86,86の間には、複数個の隙間87があり、これらの隙間87は中空部89と繋がっている。なお、説明の便宜上、図3において、フィルター層80の内側にある柱86等の構造物が透過的に示されている。
【0030】
周壁部85は、内側と外側との間を、作動油が透過できるように構成されている。つまり、内側の中空部89から外側に向かって透過する場合、作動油は、中空部89から隣り合った柱86の間にある隙間87に入り、更にそこからフィルター層80の内部に進入して外側に抜ける。反対に、外側から内側の中空部89に向かって透過する場合は、フィルター層80の外側から内部に進入して、隙間87に入り、更にそこから内側の中空部89に入ることになる。
【0031】
蓋部82は、筒状の周壁部85の一端を塞ぐように、周壁部85の柱86の先端に取り付けられている。蓋部82は、円盤状の蓋本体部82aと、この蓋本体部82aの表面側の中央部分に設けられている円柱状の凸部83とからなる。凸部83は、根元側83bよりも先側83aの方が、外径が大きく設定されている。なお、蓋本体部82aの裏面が、前記フィルター層80の上端面を上側から押え付けている。蓋本体部82aの外径は、周壁部85の外径よりも大きく設定されており、蓋本体部82aの外縁が周壁部85よりも外側に張り出している。
【0032】
環状脚部84は、円環状であり、その内側に円形状の開口部88を有する。環状脚部84は、周壁部85の柱86の根元側に取り付けられている。柱86は、環状脚部84の内縁寄りに立設されている。環状脚部84の上面は、前記フィルター層80の下端面を下側から押え付けている。つまり、フィルター層80は、環状脚部84と蓋部82との間で挟まれている。なお、環状脚部84の外径は、周壁部85の外径よりも大きく設定されており、環状脚部84の外縁が周壁部85よりも外側に張り出している。なお、本実施形態の周壁部85は、環状脚部84側から蓋部82側に向かって外径及び内径が徐々に小さくなるように設定されている。
【0033】
支持基材8は、環状脚部84と、柱86と、蓋部82とが一体的に形成されており、これらで1つの支持部材を構成している。この支持部材は、例えば、プラスチック成形品からなる。この支持部材における柱86の周りに、筒状のフィルター層80が取り付けられている。
【0034】
弁部材11は、弾性変形可能な筒状の部材からなり、図2に示されるように、支持基材8の周壁部85に被せるように取り付けられている。図4は、弁部材が取り付けられた支持基材の斜視図である。図2及び図4に示されるように、弁部材11は、周壁部85の外側にあるフィルター層80を覆うように、周壁部85に取り付けられている。
【0035】
弁部材11は、筒状であり、ゴム等の弾性材料からなるシートを筒状に加工したもの(以下、筒状弾性部材11a)に、複数個の切れ目状の孔(弁孔)12を設けたものからなる。各孔12は、筒状弾性部材11aの周方向に沿って形成されており、互いに所定間隔を保ちつつ配置されている。
【0036】
図4に示される弁部材11は、支持基材の周壁部85に密着した状態にあり、各孔12は閉じている。なお、弁部材11の上側の開口端部と、下側の開口端部とは、共に支持基材8の周壁部85を若干締付けるように前記周壁部85に対して密着している。
【0037】
支持基材8は、弁部材11が取り付けられた状態で、収容室15内に収容される。その際、支持基材8の蓋部82に設けられている凸部83が、収容室15の壁151(対向壁151a)に設けられている凹部152内に圧入され、そして環状脚部84が入口穴13を取り囲むように壁153に宛がわれる。環状脚部84が前記壁153に宛がわれると、その内側にある開口部88が入口穴13と向かい合い、互いに繋がる。本実施形態では、支持基材8は、カムキャップ401側の壁151(対向壁151a)と、カムハウジング400側の壁153との間で挟まれた状態で、収容室15内で固定される。
【0038】
このように支持基材8が収容室15内に収容されると、収容室15が入口穴13側と出口穴14側との2つの部分に支持基材8によって隔てられる。支持基材8に取り付けられている弁部材11と、収容室15の壁151との間には、隙間があり、前記壁151(側壁151b)の一部に出口穴14が設けられている。なお本実施形態において、環状脚部84の外縁は、収容室15の壁151(側壁151b)と隙間なく密着している。
【0039】
弁部材11を備えた支持基材8を収容室15に取り付ける場合、以下の手順で行われる。先ず、カムキャップ401の端面とカムヘッド400の端面(壁153)とを密着させる前に、カムキャップ401側に設けられている収容室15の主たる部分に前記支持基材8を予め挿入しておく。そして、その後に、カムキャップ401の端面とカムヘッド400の端面とを密着させて、前記支持基材8を収容室15内に閉じ込める。
【0040】
ここで、逆支弁装置1の動作を説明する。先ず、図2等を参照しつつ、開状態の逆止弁装置1を説明する。図2に示される逆止弁装置1は、弁部材11が、その内側から外側に向かって広がっており、切れ目状の各孔12も開いた状態(開状態)になっている。この弁部材11は、油路4(41)を通って圧送されてくる作動油によって、外側に押し広げられている。この作動油は、図1に示されるように、オイルポンプ5を利用して、オイルストレーナ6を介してオイルパン7内から吸引されたものであり、適宜、圧送されてくる。
【0041】
油路4(41)を通って入口穴13から収容室15内に進入した作動油は、環状脚部84の内側にある開口部88を通り、更に、周壁部85の内側にある中空部89に進入する。そして、中空部89に進入した作動油は、周壁部85を内側から外側に向かって透過し、更に、周壁部85の外側に被せられている筒状の弁部材11を、上述したように外側に押し広げる。作動油は、弁部材11が押し広げられたことによって開いた孔12から、外側に向かって流れ出し、出口穴14側の収容室15内に入り、そして出口穴14から油路4(42)を通ってOCV3側に向かって流れる。
【0042】
図5は、開状態の逆止弁装置における弁部材の斜視図である。図5には、説明の便宜上、弁部材のみが示されている。上述したように、弁部材11が作動油によって外側に広げられると、それまで塞がっていた切れ目状の孔12が開くため、その孔12を作動油が内側から外側に向かって通過できるようになる。なお、図5には、一部の孔12に、矢印を用いて作動油が流れ出す様子が模式的に示されている。弁部材11に設けられる孔12の個数、大きさ等は、作動油の流量等によって、適宜、設定される。
【0043】
なお、作動油が支持基材8の側壁部85を通過する際、その中に含まれている異物が、側壁部85が備えているフィルター層80によって吸着され除去される。
【0044】
図6は、閉状態の逆止弁装置を示す断面図である。次いで、図6を参照しつつ、閉状態の逆止弁装置1を説明する。VVT機構2の位相振れ等によって、OCV3から油路4(42)に向かって作動油が逆流する場合がある。このように作動油が逆流すると、油路4(42)から出口穴14を通って収容室15内に作動油が進入してくる。すると、作動油が、弁部材11を外側から内側にある支持基材8の周壁部85に対して押し付けるように作用する。つまり、弁部材11を内側から外側に広げようとする作動油の力よりも、弁部材11の外側から作用する作動油の力の方が勝るため、それまで広がっていた弁部材11の周面が押し戻され、弁部材11の形状が復元して、図6に示されるような筒状の状態になる。
【0045】
弁部材11が筒状の状態になると、その周面にある切れ目状の各孔12が閉じ、その孔12を通って弁部材11の外側から内側に作動油が入り込むことが抑制される。そして、弁部材11(筒状弾性部材11a)自身も作動油を透過させないため、このような弁部材11で覆われている支持基材8の周壁部85は、外側から内側に向かって作動油が透過することが抑制される。したがって、作動油がオイルポンプ5側に向かって油路4(41)を逆流することが抑制される。
【0046】
なお、油路4(41)から収容室15に向かって供給される作動油の圧力が、弁部材11を外側から押し付ける作動油の力よりも上回れば、図2に示されるように、逆止弁装置1は再び開状態となる。
【0047】
本実施形態の逆止弁装置1は、上述したように、油路4の途中に設けた収容室15と、その収容室15内に収容される支持基材8と、それに被せられる弁部材11とからなり、簡便な構造で、作動油の逆流を抑制できる。また、本実施形態の逆止弁装置1は、部品点数が少なく簡便な構造であるため、搭載スペースに応じて、適宜、大きさ等を自由に設計変更できる。
【0048】
また、本実施形態の逆止弁装置1は、作動油をろ過するフィルター機能も備えている。このように、逆止弁機構とフィルター機構とを一体化することによって、逆止弁機構及びフィルター機構の搭載スペースの小型化を図ることが可能となる。カムキャップ等の支持構造物中に、逆止弁機構等を搭載できるスペースは限られている。場合によっては、支持構造物の大きさ等の都合により、逆止弁機構及びフィルター機構を設けるスペースを、それぞれ別個に確保できないことがある。このような場合であっても、本実施形態の逆止弁装置1は、従来のフィルター機構を搭載できる程度のスペースがあれば、搭載可能である。
【0049】
また、本実施形態の逆止弁装置1であれば、従来、別途設けていた逆止弁機構の搭載スペースを、支持構造物に設ける必要がなくなり、本実施形態の逆止弁装置1を備えた内燃機関等の生産性が向上する。
【0050】
<実施形態2>
以下、図面を参照しつつ実施形態2について説明する。図7は、実施形態2における閉状態の弁部材の斜視図である。本実施形態の逆止弁装置の構成は、弁部材以外の構成は、実施形態1のものと同様である。そのため、適宜、実施形態1を示す図面を参照しつつ、本実施形態では、主として弁部材について説明する。
【0051】
図7に示される本実施形態の弁部材11Aは、ゴム等の弾性材料からなる弾性シートを帯状に加工したもの(以下、弾性帯部材11b)を、支持基材8の周壁部85の表面(即ち、フィルター層80の表面)に、巻き付けるようにして取り付けたものからなる。図7には、説明の便宜上、弁部材11Aのみが示されており、かつその弁部材11Aの一部が切り欠かれた状態で示されている。
【0052】
図8は、弾性帯部材の平面図である。図8には、フィルター層80の表面に張り付けられる側(つまり、裏面)の弾性帯部材11bが示されている。弾性帯部材11bは、弾性シートを帯状(長尺状)に加工したものからなり、幅が一定に設定されている。弾性帯部材11bの一方の側縁には、接着剤が塗布されている接着部110が、長さ方向に沿って設けられている。この接着部110の幅は、弾性帯部材11bの幅の4分の1程度に設定されている。なお、弾性帯部材11bの他方の側縁には、接着部110等は設けられていない。
【0053】
弾性帯部材11bは、支持基材8の周壁部85の表面に対して、接着部110を密着させつつ、環状脚部84側から蓋部82側に向かって順次、螺旋状に巻き付けられる。その際、接着部110が上側(蓋部82側)に配置され、かつ側壁部85上で隣り合った弾性帯部材11bの間に、間隔が確保されるように巻き付けられる。この間隔は、周壁部84の表面上に、細長く螺旋状に形成されるものであり、本明細書では、この間隔も「切れ目状の弁孔」に含まれる。なお、図7において、弾性帯部材11bが一部、切り欠かれたところに、弁孔12aの一部が示されている。
【0054】
なお、弾性帯部材11bは、その他方の側縁が、前記周壁部85上に既に接着されている環状脚部84側の部分に覆い被さるように、前記周壁部85に巻き付けられる。上述した弁孔12aは、蓋部82側に隣接する弾性帯部材11bによって覆われており、閉じられている。
【0055】
図7に示される弁部材11Aは閉状態であり、実施形態1の図6に示される弁部材11の状態に対応する。つまり、VVT機構2の位相振れ等によって、OCV3から油路4(42)に向かって作動油が逆流した場合でも、弁部材11Aが閉状態となって、作動油がオイルポンプ5側に向かって油路4(41)を逆流することが抑制される。
【0056】
本実施形態の場合、作動油が、弁部材11Aを外側から内側にある支持基材8の周壁部85に対して押し付けるように作用すると、弁部材11Aにおける弾性帯部材11bの接着されていない方の側縁が、弁孔12aを塞ぐように前記側壁部85の表面に押し付けられる。したがって、上述したように、本実施形態の逆止弁装置においても、弁部材11Aが閉状態となることによって、作動油の逆流を抑制できる。
【0057】
図9は、開状態の弁部材の斜視図である。図9に示される弁部材11Aは開状態であり、実施形態1の図2及び図5に示される弁部材11の状態に対応する。つまり、弁部材11Aが作動油によって外側に広げられ、弁孔12aが開いた状態になる(開状態)。弁孔12aを塞いでいた蓋部82側に隣接する弾性帯部材11bの側縁が、支持基材8の内側から供給される作動油の圧力によって外側に広がり、そして、作動油が油路4(41)から油路4(42)に向かって流れる。
【0058】
図9には、隣接する弾性帯部材11bの隙間から外側に作動油が流れ出す様子が矢印を用いて模式的に示されている。弁部材11Aに設けられる孔12の個数、大きさ等は、作動油の流量等によって、適宜、設定される。
【0059】
本実施形態においても、作動油が支持基材8の側壁部85を通過する際、その中に含まれている異物が、側壁部85が備えているフィルター層80によって吸着され除去される。
【0060】
なお、油路4(41)から収容室15に向かって供給される作動油の圧力が、弁部材11Aを外側から押し付ける作動油の力よりも下回れば、図7に示されるように、逆止弁装置1の弁部材11Aは、復元して再び閉状態となる。
【0061】
本実施形態の逆止弁装置も、上述したような簡便な構造で、作動油の逆流を抑制できる。また、部品点数が少なく簡便な構造であるため、搭載スペースに応じて、適宜、大きさ等を自由に設定変更できる。
【0062】
また、本実施形態の逆止弁装置も、作動油をろ過するフィルター機能も備えている。このように、逆止弁機構とフィルター機構とを一体化することによって、逆止弁機構及びフィルター機構の搭載スペースの小型化を図ることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態の逆止弁装置も、従来、別途設けていた逆止弁機構の搭載スペースを、支持構造物に設ける必要がなくなり、本実施形態の逆止弁装置を備えた内燃機関等の生産性が向上する。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
(1)上記実施形態1において、筒状の弁部材11の周面に、複数個の弁孔12を、周方向に沿って形成していたが、他の実施形態においては、例えば、長さ方向に沿った切れ目状の弁孔を形成してもよい。
【0066】
(2)上記実施形態1において、筒状の弁部材11における上側の開口端部と、下側の開口端部とは、共に支持基材8の周壁部85を若干締付けるように前記周壁部85に対して密着させていたが、他の実施形態においては、例えば、何れか一方の開口端部を、周壁部85に対して接着剤等によって固定しても良いし、両方の開口端部を、周壁部85に対して接着剤等によって固定しても良い。
【0067】
(3)上記実施形態1及び2において、支持基材8の周壁部85には、作動油中の異物を吸着して除去するフィルター層80が利用されていたが、他の実施形態においては、例えば、積極的に異物を吸着しない多孔質材料が、周壁部85に利用されてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態2において、弁部材11Aは支持基材8の周壁部85(フィルター層80)に対して、接着剤が塗布されている接着部110を利用して、取り付けられていたが、他の実施形態においては、弁部材11Aを構成する弾性帯部材11bの一方の側縁を前記周壁部85の表面に溶着することによって、弁部材11Aが取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1・・・逆止弁装置
2・・・VVT機構
3・・・OCV
4・・・油路
5・・・オイルポンプ
6・・・オイルストレーナ
7・・・オイルパン
8・・・支持基材
11・・・弁部材
12・・・弁孔
13・・・入口穴
14・・・出口穴
15・・・収容室
151・・・壁(カムキャップ側)
153・・・壁(カムヘッド側)
400・・・カムヘッド(支持構造物)
401・・・カムキャップ(支持構造物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のカムシャフトに設けられている可変バルブタイミング機構の作動油圧を制御するオイルコントロールバルブに対して作動油を供給し、かつ前記カムシャフトを支持する支持構造物に穿設されてなる油路、に設けられる逆止弁装置であって、
前記油路の一部を構成し、前記作動油の入口穴とそれの出口穴とを有し、壁で囲まれた収容室と、
前記作動油を透過させ内側に中空部を含んだ筒状の周壁部と、前記周壁部の一端を塞ぐ蓋部と、前記周壁部の他端に設けられ内側に前記中空部と繋がる開口部を含んだ環状脚部とを有し、前記環状脚部が前記入口穴を取り囲むように前記壁に宛がわれつつ前記入口穴と前記出口穴とを隔てるように前記収容室内に収容される支持基材と、
周面に切れ目状の弁孔を有し、前記周壁部に被せられ、外側に広がると前記弁孔が開きかつ復元すると前記弁孔が閉じる弾性変形可能な筒状の弁部材と、を備えることを特徴とする逆止弁装置。
【請求項2】
前記弁部材は、弾性シートが筒状に加工されてなる筒状弾性部材に、前記弁孔となる複数個の切れ目状の孔が設けられたものからなる請求項1に記載の逆止弁装置。
【請求項3】
前記弁部材は、弾性シートが帯状に加工されてなる弾性帯部材を、一方の側縁が前記周壁部に対して接着されかつ他方の側縁が、既に接着されている部分に覆い被さるように、前記環状脚部側から前記蓋部側に向かって互いに前記弁孔となる切れ目状の間隔を確保しつつ前記周壁部に巻き付けられたものからなる請求項1に記載の逆止弁装置。
【請求項4】
前記支持基材の周壁部が、前記作動油中に含まれる異物を吸着するためのフィルター層を含む請求項1ないし3の何れか一項に記載の逆止弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−188999(P2012−188999A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53234(P2011−53234)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000185488)株式会社オティックス (305)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】