透明導電性フィルムロール及びタッチパネル
【課題】長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な透明導電性フィルムロール及びペン入力した図形や文字の認識ズレ率が小さいタッチパネルを提供する。
【解決手段】 少なくとも片面に透明導電膜を有する透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロール内で前記透明導電膜の表面抵抗を計33点測定した際に、下記式(1)で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする透明導電性フィルムロール。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。
さらに、タッチパネルの少なくとも一方のパネル板が前記透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とするタッチパネル。
【解決手段】 少なくとも片面に透明導電膜を有する透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロール内で前記透明導電膜の表面抵抗を計33点測定した際に、下記式(1)で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする透明導電性フィルムロール。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。
さらに、タッチパネルの少なくとも一方のパネル板が前記透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とするタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム上に透明導電膜を積層した透明導電性フィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロール及びそれを用いたタッチパネルに関する。詳しくは、透明性及び導電性が要求される、タッチパネル用透明電極やエレクトロルミネッセンスパネル用透明電極を製造するのに好適な、特に大型パネル用透明電極を製造するのに好適な、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な長尺の透明導電性フィルムロール及びそれを用いたタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムとしては、プラスチックフィルムに導電性材料を積層したフィルムが一般的に使用されている。また、導電性材料としては、有機物、無機物のいずれもが使用できるが、導電性と透明性の両立の点から無機物が好適である。前記無機物としては、金、銀などの金属や、金属酸化物が透明性の観点より好適である。特に、金属酸化物の中でも、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛及びこれらの複合酸化物が好ましく、前記金属酸化物を蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法あるいはCVD法によりプラスチックフィルムに積層したフィルムが知られている。
【0003】
この透明導電性フィルムは、フィルム巻取り式のイオンプレーティング装置またはスパッタリング装置で一般的に製造されている。これらの装置を用いて製造された透明導電性フィルムロールは、スリッターにより幅300〜800mm程度、長さ10〜1000m程度のサイズに裁断し、紙管またはプラスチックコア等に巻取り、フィルムロールの形態で流通するのが一般的である。このロール状に巻取った透明導電性フィルムをシート状に裁断した後、透明導電性フィルムの透明導電膜上に銀ペースト印刷や誘電体印刷などの加工を施し、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスパネル用の透明電極として使用される。
【0004】
アナログ方式のタッチパネルは、透明電極の表面抵抗の分布が均一であることを仮定して、入力位置を認識し文字や記号として表示される(月刊ディスプレイ、1999年9月号、82頁)。したがって、これに用いられる透明導電性フィルムの表面抵抗の分布はどの位置においても極めて均一である必要がある。また、エレクトロルミネッセンスパネルの透明電極においても、パネル内で均一な発光強度を得るためには、均一な表面抵抗分布を有する透明電極を用いる必要がある。特に、大型のエレクトロルミネッセンスパネルであればあるほど、透明電極の表面抵抗の分布は一層均一であることが強く要求される。
【0005】
透明電極の表面抵抗の分布を均一にするためには、巻取り式の成膜装置内に表面抵抗測定装置を設け、透明導電膜を形成しながらインラインで連続的に表面抵抗を測定し、表面抵抗の分布が一定になるよう導電性薄膜の成膜条件を制御する方法が採用できる。
【0006】
例えば、この方式の一例として、2本の金属ロール間に透明導電膜をはさんで接触させ、このロール間の表面抵抗を測定する方法が挙げられる。しかしながら、この方式は透明導電性フィルムの長手方向における表面抵抗の分布を測定することができるが、幅方向の表面抵抗の分布を測定することは原理的に不可能である。また、長手方向の表面抵抗の分布に関しても、フィルムのテンションが均一でないと、金属ロールと透明導電膜との接触が不均一になり、表面抵抗に測定誤差を含むことになる。
【0007】
また、透明導電性フィルムの幅方向における表面抵抗を測定するために、1本の絶縁ロール(シリコンゴムまたはポリフルオロテトラエチレン製)に3個以上の金属リングを巻きつけ、金属リング間の抵抗値を測定する方法もある。しかしながら、この方式は、絶縁物と金属リングとの境に微小な突起が形成され、このためにフィルム表面に傷が生じやすくなってしまう。
【0008】
そこで、幅方向の表面抵抗の分布を連続的に測定することができ、かつ、フィルム表面に傷を発生させない表面抵抗測定器として、電磁誘導コイルと導電膜との結合インダクタンスを測定する方法(磁界を印加して発生する渦電流を測定する方法)が知られている(月刊ディスプレイ、1999年9月号、第88頁)。しかしながら、この方法は、10Ω/□程度以上の表面抵抗を有する導電膜を測定するためには、印加磁界の強度をかなり上げる必要があるために、磁束の広がりが大きくなり、インラインでの連続測定では製造プロセスでの基材のパスライン変動(基材面の法線方向の振動)により、センサー部と測定対象である導電膜との離隔距離が変動し、結合インダクタンスが一定とならず、結果として測定誤差が大きくなるという問題がある。
【0009】
さらに、この方法は、渦電流発生部あるいは渦電流検出部としてのフェライトコイルの透磁率が温度特性を有しているために、温度変動があるとそれに従ってインダクタンスが変化し、コイルに印加する高周波電圧を一定にしていたとしても、前記導電膜に流れる渦電流が変化して、結果として測定誤差が大きくなるという問題が発生する。
【0010】
以上のように、一般的な表面抵抗測定計を巻取り装置内に設けても、測定誤差が大きいため、表面抵抗が均一な透明導電性フィルムロールを得ることは極めて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な透明導電性フィルムロール及びそれを用いて製造したタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の透明導電性フィルムロールに係る発明は、少なくとも片面に透明導電膜を有する、幅300〜1300mmで長さ10〜1000mのプラスチックフィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロールを幅方向に対し中央位置及び左右の端部から25〜100mmの任意の位置で、かつ長手方向に全長に対して10分の1の長さピッチで計33点の前記透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)を測定した際に、下記(1)式で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。上記表面抵抗の分布均一度Dは、ゼロに近いほど表面抵抗の変動が小さいことを意味する。
本発明におけるタッチパネルに係る発明は、透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が上記の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
表面抵抗などの品質が長手方向及び幅方向で均一な透明導電性フィルムロールが得られ、最終製品であるタッチパネル等の文字や図形の認識ズレ率が小さくなるなど性能安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で透明導電性フィルムロールの基材として用いるプラスチックフィルムとは、有機高分子を溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。
【0015】
有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0016】
これらの有機高分子のなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は単独で使用する以外に、他の有機高分子の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子を1種以上ブレンドしてもよい。
【0017】
前記プラスチックフィルムは、パネルの視認性の点から、透明性に優れていることが必要である。したがって、プラスチックフィルム中には透明性を悪化させるような粒子や添加剤などを含有させないことが好ましい。しかしながら、プラスチックフィルム製造時やロールの巻出しや巻取り時のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)の点からは、フィルム表面に適度な表面凹凸を有することが好ましい。
【0018】
このような相反する特性を満足させる方法として、基材フィルムをコーティング法または共押し出し法にて、厚みが0.03〜1μmと非常に薄い表面層を設けた積層構造とし、該表面層のみに粒子を含有させる方法が好ましい。これらの方法の中でも、コーティング法の場合、共押し出し法よりも表面層の厚みを薄くすることができ、かつプラスチックフィルムと導電層との密着性も良好にすることができるため好適である。
【0019】
基材として積層プラスチックフィルムを用いる場合、表面層に含有させる粒子は1種類でも複数併用してもよく、透明性の点から、粒子の屈折率がプラスチックフィルムの構成樹脂及びコート層のバインダー樹脂と同じまたは近いものを用いることが好ましい。例えば、基材やコート層のバインダー樹脂としてポリエステル系樹脂を用いる場合には、バインダー樹脂中に平均粒子径が10〜200nmのシリカ、ガラスフィラー、アルミナ−シリカ系などの複合酸化物、などを0.5〜5.0質量%含有させることが好ましい。
【0020】
前記プラスチックフィルムの厚みは、10μmを越え、300μm以下の範囲であることが好ましく、70〜260μmの範囲が特に好ましい。プラスチックフィルムの厚みが10μm以下では機械的強度が不足し、特にタッチパネルに用いた際のペン入力に対する変形が大きくなる傾向があり、耐久性が不十分となりやすい。一方、厚みが300μmを越えると、巻取りフィルムロールの形態をとることが難しくなってしまう。
【0021】
また、前記プラスチックフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0022】
また、基材のプラスチックフィルムと透明導電膜との間に、透明導電膜の付着力を向上させるために、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層または無機薄膜層を設けても良い。
【0023】
前記硬化型樹脂としては、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0024】
前記無機薄膜層の構成材料としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化サマリウムなどの単体あるいは2種類以上の複合酸化物であることが好ましい。
【0025】
また、本発明で用いる透明導電膜としては、透明性及び導電性をあわせもつ材料であれば特に制限はないが、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀及び銀合金、銅及び銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造したものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0026】
さらに、これらの透明導電膜中に、表面抵抗や透明性を調整するために、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化サマリウム、などを少なくとも1種含有させてもよい。これらの無機酸化物の含有量は多くても主成分に対して合計量で10質量%以下であることが好ましい。
【0027】
透明導電膜の膜厚は4〜800nmの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜500nmである。透明導電膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくい傾向がある。一方、800nmよりも厚い場合、透明性が低下しやすくなる。
【0028】
本発明における透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0029】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基材に直流、交流、高周波などのバイアスを印加しても構わない。
【0030】
透明導電性フィルムの透明導電膜表面での光の反射率を低減させ、光線透過率を向上させるために、透明導電膜の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を、透明導電膜とプラスチックフィルムの間に単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。単層構造の場合、透明導電膜よりも小さな屈折率を有する材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層構造とする場合は、プラスチックフィルムと隣接する層は、プラスチックフィルムよりも大きな屈折率を有する材料を用い、透明導電膜の下の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料を選ぶのがよい。
【0031】
このような低反射処理層を構成する材料としては、有機材料でも無機材料でも上記の屈折率の関係を満足すれば特に限定されない。例えば、CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2O3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In2O3、などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0032】
本発明の透明導電性フィルムロールは、下記式(1)で定義する透明導電膜の表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下となる、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な透明導電性フィルムロールである。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
【0033】
前記の材料及び方法により製造した透明導電性フィルムロールにおいて、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布を均一なものとするためには、例えば、透明導電層を積層する工程において、巻取り式成膜機に下記で詳述するインライン方式でかつ非接触式の表面抵抗測定装置を設けることが好ましい。
【0034】
この非接触式表面抵抗測定装置の構成を、図1を用いて説明する。
非接触式表面抵抗測定装置は、基材1上の導電膜2に設定間隔を空けて対向させてその導電膜2に渦電流を流す渦電流発生部3A、及び導電膜2に流れる渦電流を導電膜2とは離間した状態で検出する渦電流検出部3B(渦電流発生部3Aとは一体になっている)とから成る複数(n個)の渦電流センサー3を設けている。そして、該渦電流センサー3の温度を検出する温度センサー4A(温度検出部に相当)、及び渦電流センサー3と導電膜2との離隔距離センサー4Bを前記渦電流センサー3と一体に設けた構成からなる。さらに、渦電流検出部3Bの検出結果と、温度センサー4A及び離隔距離センサー4Bの検出結果に基づいて、導電膜2の表面抵抗を算出するコンピューター7(算出手段に相当)を設けて構成されている。
【0035】
渦電流センサー3、温度センサー4A、離隔センサー4Bの各センサーは、センサー用アンプ6につながれている。このセンサー用アンプ6は、高周波発振器と渦電流のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、導電膜2とセンサー3との離隔距離に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段、温度に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段とを含む。高周波発振器は、高周波を印加して導電膜に流れる渦電流を検出する。
【0036】
好ましくは、上記導電膜2とセンサー3との離隔距離を検出するセンサー4Bは、静電容量式、超音波式、レーザ式、光電式などの変位センサーである。導電膜の表面抵抗を算出する手段は、デジタル信号に基づいて導電膜の表面抵抗を算出する。
【0037】
導電膜に渦電流を流す方法は、導電膜に設定間隔を空けて渦電流発生部ならびに渦電流検出部を対向させるものと、渦電流発生部と渦電流検出部の両者で導電膜を挟み込むものがある。例えば、渦電流発生部としてのフェライトコイルなどのコイルに高周波電圧を印加し、前記コイルを導電膜に近づけるか、前記コイルで導電膜を挟み込むことで、導電膜に高周波誘導結合による渦電流を流す。
【0038】
この高周波電圧を一定にすると、導電膜に流れる渦電流と導電膜の表面抵抗が逆比例(反比例)する。したがって、予め渦電流と表面抵抗との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくと、その離隔距離(基準点)での表面抵抗を求めることができる。
【0039】
渦電流は、原理的に導電膜とセンサーとの離隔距離が大きくなるにつれて、小さくなる傾向があるため、予め渦電流と離隔距離との関係について校正曲線(検量線)を作成しておく。具体的には、上記導電膜とセンサーとの離隔距離を検出する手段にて得られた離隔距離から基準点との差を出し、上記校正曲線から渦電流の補正値を計算する。この補正値は、導電膜とセンサーとの離隔距離が基準点よりも小さい場合は減算する方向に、逆に導電膜とセンサーとの離隔距離が基準点よりも大きくなる場合は加算する方向で計算する。こうして導電膜とセンサーとの離隔距離の任意点で、導電膜の表面抵抗を正確に算出することができる。上記導電膜の表面抵抗の算出はコンピューターの演算周期により、導電膜の製造プロセスにおいて連続的に行われる。
【0040】
また、渦電流は、原理的に渦電流発生部あるいは渦電流検出部としてのコイルの透磁率が温度特性を有しているために、温度変動があるとそれに従って変化する。渦電流と透磁率の間には正の相関があるが、コイル材料の種類によって透磁率の温度特性は正負双方がある。すなわち、温度上昇に応じて透磁率が大きくなる正特性と、温度上昇に応じて透磁率が小さくなる負特性がある。
【0041】
そこで、前記温度検出部の検出結果が前記基準温度から外れていると、選択したコイル材料の温度特性に応じて、算出手段が、前記基準温度から外れたことに起因する渦電流の増減量を求めるとともに、前記渦電流の増減量を渦電流検出部の検出結果から減じあるいは加える補正を行い、その補正した渦電流の値に基づいて、表面抵抗を算出する。
【0042】
この場合、予め温度変動量と渦電流補正量との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくことが重要である。このように予め作成した検量線を基に導電膜の表面抵抗を算出するため、渦電流発生部の温度が変動しても、導電膜の表面抵抗の測定値に誤差が生じにくくなる。
【0043】
さらに、渦電流センサー、温度センサー及び隔離センサーとを一体化させた渦電流式表面抵抗計を導電膜の製造プロセスの幅方向に複数個を固定して配置することで、プロセス幅が広くて幅方向の温度分布(温度ムラ)があったとしても、幅方向の表面抵抗を正確に測定することができる。また、上記と同様の作用効果を示す方法として、上記渦電流式表面抵抗計を導電膜の製造プロセスの幅方向に1個設け、これらを積載して幅方向に走査させることができる駆動手段を設ける方法が挙げられる。
【0044】
前記渦電流センサー3、温度センサー4A、及び離隔距離センサー4Bは、センサーアンプ6にセンサーケーブル5を介して接続してあり、導電膜の表面抵抗の測定結果を表示するCRT8と、測定結果を印字出力するプリンター9と、測定された表面抵抗が規定された範囲外になったことや異常をオペレータに報知する警報装置10を設けてある。
【0045】
前記センサーアンプ6には、高周波発信器と、渦電流のアナログ信号をデジタル信号に変換する第1A/D変換器と、前記温度に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換する第2A/D変換器とを設けてある。
【0046】
前記コンピュータ7は、前記第1及び第2A/D変換器によって得られたデジタル信号に基づいてデータ処理し、温度センサー4の検出結果が前記基準温度から外れていると、基準温度から外れたことに起因する渦電流の増減量を求めるとともに、前記渦電流の増減量を渦電流検出部3Bの検出結果から減じあるいは加える補正を行い、その補正した渦電流の値に基づいて、導電膜2の表面抵抗を算出する。
【0047】
また、導電膜2の製造プロセスにおいて、前記の温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流表面抵抗計を導電膜2の幅方向に複数個配置して、あるいは前記渦電流表面抵抗計1個を適切な駆動手段に積載して導電膜2の幅方向に走査させながら、透明導電性フィルムロールの導電膜2における幅方向及び長手方向の表面抵抗分布のトレンド(経時的な変化)をコンピューター7により求めることができる。
【0048】
次に、上記の渦電流表面抵抗計の動作について説明する。
(1)前記渦電流発生部3Aが基材1上の導電膜2と数mmの設定間隔を空けて対向する状態、または基材1を挟み込む状態に渦電流センサー3、温度センサー4A、離隔距離センサー4Bを配置する。
【0049】
(2)センサーアンプ6から渦電流センサー3の渦電流発生部3Aに高周波を印加して、高周波誘導結合により導電膜2に渦電流を発生させる。
【0050】
(3)前記印加する高周波電圧を一定に制御していれば、導電膜2に流れる渦電流と導電膜2の表面抵抗が逆比例(反比例)する。そのため、図2に示すように、予め渦電流と表面抵抗との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくことで、導電膜2と渦電流発生部3Aとを前記設定間隔を空けた状態の基準温度での未知の導電膜2の表面抵抗を求めることができる。
【0051】
(4)渦電流は、コイル材料の温度特性が正特性を有していれば大きくなり、表面抵抗は小さくなる傾向がある。そのため、図3に示すような、予め作成しておいた表面抵抗と前記温度との関係についての校正曲線(検量線)に基づいて、渦電流検出部3Bの検出結果を補正する。
【0052】
(5)渦電流は、渦電流センサーと導電膜との離隔距離が大きいほど、表面抵抗は小さくなる傾向があるため、予め作成しておいた図4に示す、表面抵抗と離隔距離との関係についての校正曲線(検量線)に基づいて、上記(4)で得られた算出結果を補正する。
【0053】
前記コンピューター7により表示される導電膜2の表面抵抗は、任意の作成ソフトウェアによりCRT6に表示し、測定値やグラフとしてデータ処理を行い、インラインで表面抵抗を連続的に測定する。また、必要に応じて、プリンタ9に印字出力する。
【0054】
導電膜2の表面抵抗の算出は、コンピューター7の演算周期により導電膜2の製造プロセスにおいて連続的に行うことができる。
【0055】
また、表面抵抗の測定結果を、警報装置10や製造プロセスにフィードバックすることで、透明導電性プラスチックフィルムロールを製造する際に表面抵抗を制御することができ、製造工程における品質の向上・生産性向上を図ることができる。
【0056】
さらに、前記渦電流センサー3、温度センサー4A及び離隔距離センサー4Bを一体に設けることで、ほぼ同一点での渦電流と温度の測定を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
【0057】
本発明の透明導電性フィルムロールは、スリッターにより幅300〜800mm程度、長さ10〜1000m程度のサイズに裁断した後、フィルム上に銀ペースト印刷や誘電体印刷などの加工を施し、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスパネル用の透明電極として使用される。
【0058】
図11に、本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得た透明導電性フィルムを用いた、アナログ方式のペン入力用タッチパネルの例を示す。透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得た透明導電性フィルムを用いたものである。
【0059】
このタッチパネルにペンにより文字や図形を入力した時に、ペンからの押圧により、対向した透明導電膜同士が接触し、電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンの位置を検出することができる。このペン位置を連続的かつ正確に検出することで、ペンの軌跡から文字を認識することができる。
【0060】
この際、ペン接触側のパネル板に本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムを用いると、長手方向及び幅方向ともにほぼ均一な表面抵抗が得られるため、透明導電性フィルムロールのどの部分を裁断して用いても、文字や図形の認識ズレ率の小さい安定なタッチパネルが得られる。
【0061】
また、アナログ方式のペン入力用タッチパネルにおける両方のパネルに本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムを用い、透明導電性フィルムの導電膜を形成していない面を、粘着剤を介して透明樹脂シートと積層することで、タッチパネルの固定電極に用いる透明導電性積層シートが得られる。すなわち、固定電極をガラス製から樹脂製にすることで、軽量でかつ衝撃により割れにくいタッチパネルを作製することもできる。
【0062】
前記粘着剤は透明性を有するものであれば特に制限はないが、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚さの場合、実用上問題のない接着性を得るのが難しく、100μmを越える厚さでは生産性の観点から好ましくない。
【0063】
この粘着剤を介して貼合わせる透明樹脂シートは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚さは0.05〜5mmの範囲が好ましい。前記透明樹脂シートの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。一方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂シートの材質は、前記の透明プラスチックフィルムと同様のものを使用することができる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明は当然以下に示す実施例に限定されるものではない。また、本実施例で得られた透明導電性フィルムロール及びタッチパネルの特性は下記の方法により評価した。
【0065】
(1)透明導電膜の表面抵抗
透明導電性フィルムのスリットロールの幅方向における中央部及び中央部から左右200mmの位置について、長さ方向に10mピッチで、JIS−K7194に準拠した4探針法にて、透明導電膜の表面抵抗を、表面抵抗測定機(三菱油化(株)製、Lotest AMCP−T400)を用いて測定した。
【0066】
すなわち、1本のスリットロールにおいて、33箇所(幅方向3点×長手方向11点)の表面抵抗を測定し、この33個の測定値のうち、最大値をRmax、最小値をRminとした。この値を用いて、(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin)を算出した。この算出を16本のスリットロールすべてに対して行った。
【0067】
(2)タッチパネルの図形認識ズレ率
上記のように作製したタッチパネルに、X−Yプロッタ(ローランド株式会社製、DXY−1150A)を用いて、直径40mmの丸印を5箇所に筆記した。ペンは先端が0.8mmΦのポリアセタール製を用い、ペン荷重は0.6Nとした。銀ペーストからの信号を読み取り、丸印が正確に認識されているかを評価するために、認識した印の長軸の長さをr1、筆記した丸印の直径をr0=40mmとした際に、認識図形のズレとして、(|r1−r0|/r0)×100を図形認識ズレ率(%)として計算した。5箇所の筆記個所において算出し、最も大きなズレ率を、このタッチパネルの図形認識ズレ率とした。
【0068】
実施例1
図1に記載の温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流式表面抵抗計を具備した巻取り式スパッタリング装置を使用し、ITOターゲット(酸化錫10質量%含有、三井金属鉱業株式会社製)を用いた。なお、前記渦電流式表面抵抗計は、フィルム幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所に配設した。幅1300mm、長さ850m、厚み188μmの、片面に接着改質層を有するPETフィルムロール(東洋紡績株式会社製、A4100)を巻出し、基材とした。次いで、該PETフィルムの接着改質層面に透明導電膜を成膜した。
【0069】
透明導電膜の成膜条件は、スパッタ時の圧力を0.4Pa、Ar流量を200sccm、酸素流量を3sccmとした。また、ターゲット電力投入は、日本イー・エヌ・アイ社製RPG100を用いて、3W/cm2を印加した。この際に、パルス幅2μsec.でパルス周期が100kHzの正電圧パルスも印加することで、異常放電の発生を抑制した。
【0070】
なお、渦電流センサーの温度依存性及び離隔距離依存性をあらかじめ測定し、検量線を作成した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を連続的にモニターしながら、上記検量線から表面抵抗が250Ω/□が中心となるように、フィルムの送り速度及び酸素流量を調整した。透明導電性フィルムロール製造時の透明導電膜の膜厚は22〜27nmであった。また、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図5に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.03であった。
【0071】
得られた透明導電性フィルムロールを幅600mm、長さ100mにスリットし、16本のスリットロールを作製した。得られた透明導電性フィルムロールの評価結果を表1に示す。
【0072】
前記透明導電性フィルムのスリットロールから、透明導電性フィルムを200mm×300mmの長方形に切り出し、一方のパネル板として用い、両端部(200mm長の両辺)に銀ペーストを印刷した。他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性ガラス(日本曹達製、S500)を用い、これを200mm×300mmの長方形に切り出した後、300mm長の両辺に銀ペーストを印刷した。この2枚のパネル板を透明導電膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。得られたタッチパネルの断面図を図13に示した。また、タッチパネルの評価結果を表2及び図11に示した。
【0073】
実施例2
プラスチックフィルムとして、厚みが192μmのクリアハードコート層を片面に設けたPETフィルム(東洋紡績株式会社製、HC101)を用いた。前記ハードコート層の反対面に透明導電膜を形成させたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図6に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.09であった。
【0074】
実施例3
光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)を、トルエン/MEK(8/2:質量比)の混合溶媒を用いて、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液Aを調製した。
【0075】
幅1300mm、長さ850m、厚み188μmの、片面に接着改質層を有するPETフィルムロール(東洋紡績株式会社製、A4100)を巻出し、上記塗布液Aを塗膜の厚みが5μmになるようにマイヤーバーによりフィルムの接着改質層に塗布し、80℃で1分間乾燥を行った。次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させた。さらに、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分の低減を行ない、片面に硬化物層を有するPETフィルムロールを巻き取り、基材とした。
【0076】
片面に硬化物層を有するPETフィルムロールを基材として用い、硬化物層面に透明導電膜を形成させること以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。
【0077】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図7に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.02であった。
【0078】
実施例4
実施例1において、ITOターゲットの代わりにスズ−アンチモン複合酸化物(ATO)ターゲット(酸化アンチモン5質量%含有、三井金属鉱業株式会社製)を用い、酸素流量を3sccmから5sccmに変更し、透明導電膜の表面抵抗が1000Ω/□が中心となるように、フィルムの送り速度及び酸素流量を調整した。このこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。また、透明導電性フィルムロール製造時の透明導電膜の膜厚は95〜110nmであった。
【0079】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図8に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.10であった。
【0080】
実施例5
実施例1の導電膜の製造プロセスにおいて、温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流式表面抵抗計を、透明導電フィルムの導電膜上の隔離した位置に、幅方向に3個固定して配置する代わりに、上記渦電流式表面抵抗計1個を導電膜の幅方向に連続的に走査させながら、透明導電性フィルムの幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所で導電膜の表面抵抗を測定すること以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。
【0081】
なお、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図14に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.03であった。
【0082】
比較例1
温度センサー及び離隔距離センサーを備えていない渦電流式表面抵抗計(フィルム幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所に設置)を用いた以外は実施例1と同様にした。得られた結果を表1、表2、及び図12に示した。
【0083】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図9に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.22であった。
【0084】
比較例2
実施例1において、渦電流式表面抵抗計の代わりに、2本の絶縁式フリーロール間の抵抗値からフィルム上の表面抵抗を算出するモニターを用いた以外は実施例1と同様にした。得られた結果を表1及び表2に示した。
【0085】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図10に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.33であった。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
以上の結果から、次のことがいえる。
実施例1〜5は、透明導電性フィルムのスリットロール内での透明導電膜の表面抵抗分布が、長手方向及び幅方向ともに均一である。そのため、例えば実施例1の透明導電性フィルムのスリットロールから作製したタッチパネルも入力図形が正確に認識されている。
【0089】
これに対し、比較例1は、透明導電膜の表面抵抗分布が長手方向において均一性が不十分であり、比較例2は幅方向の均一性が不十分である。そのため、例えばの透明導電性フィルムのスリットロールから作製したタッチパネルは、図形認識ズレ率が大きく、タッチパネルとして不適であった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】非接触式表面抵抗測定装置の構成を示す説明図である。
【図2】渦電流と表面抵抗との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図3】温度と表面抵抗との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図4】渦電流と離隔距離との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図5】実施例1におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図6】実施例2におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図7】実施例3におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図8】実施例4におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図9】比較例1におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図10】比較例2におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図11】実施例1のタッチパネルの出力形状を示す説明図である。
【図12】比較例1のタッチパネルの出力形状を示す説明図である。
【図13】実施例1のタッチパネルの断面図である。
【図14】実施例5におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基材
2 導電膜
3A 渦電流発生部
3B 渦電流検出部
4A 温度センサー
4B 離隔距離センサー
5 センサーケーブル
6 センサーアンプ
7 コンピューター
8 CRT
9 プリンター
10 警報装置
11 通信ケーブル
12 CRTケーブル
13 プリンターケーブル
14 制御ケーブル
15 タッチパネルの認識図形
16 透明導電性フィルム
17 プラスチックフィルム
18 透明導電膜
19 ガラス板
20 ビーズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム上に透明導電膜を積層した透明導電性フィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロール及びそれを用いたタッチパネルに関する。詳しくは、透明性及び導電性が要求される、タッチパネル用透明電極やエレクトロルミネッセンスパネル用透明電極を製造するのに好適な、特に大型パネル用透明電極を製造するのに好適な、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な長尺の透明導電性フィルムロール及びそれを用いたタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムとしては、プラスチックフィルムに導電性材料を積層したフィルムが一般的に使用されている。また、導電性材料としては、有機物、無機物のいずれもが使用できるが、導電性と透明性の両立の点から無機物が好適である。前記無機物としては、金、銀などの金属や、金属酸化物が透明性の観点より好適である。特に、金属酸化物の中でも、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛及びこれらの複合酸化物が好ましく、前記金属酸化物を蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法あるいはCVD法によりプラスチックフィルムに積層したフィルムが知られている。
【0003】
この透明導電性フィルムは、フィルム巻取り式のイオンプレーティング装置またはスパッタリング装置で一般的に製造されている。これらの装置を用いて製造された透明導電性フィルムロールは、スリッターにより幅300〜800mm程度、長さ10〜1000m程度のサイズに裁断し、紙管またはプラスチックコア等に巻取り、フィルムロールの形態で流通するのが一般的である。このロール状に巻取った透明導電性フィルムをシート状に裁断した後、透明導電性フィルムの透明導電膜上に銀ペースト印刷や誘電体印刷などの加工を施し、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスパネル用の透明電極として使用される。
【0004】
アナログ方式のタッチパネルは、透明電極の表面抵抗の分布が均一であることを仮定して、入力位置を認識し文字や記号として表示される(月刊ディスプレイ、1999年9月号、82頁)。したがって、これに用いられる透明導電性フィルムの表面抵抗の分布はどの位置においても極めて均一である必要がある。また、エレクトロルミネッセンスパネルの透明電極においても、パネル内で均一な発光強度を得るためには、均一な表面抵抗分布を有する透明電極を用いる必要がある。特に、大型のエレクトロルミネッセンスパネルであればあるほど、透明電極の表面抵抗の分布は一層均一であることが強く要求される。
【0005】
透明電極の表面抵抗の分布を均一にするためには、巻取り式の成膜装置内に表面抵抗測定装置を設け、透明導電膜を形成しながらインラインで連続的に表面抵抗を測定し、表面抵抗の分布が一定になるよう導電性薄膜の成膜条件を制御する方法が採用できる。
【0006】
例えば、この方式の一例として、2本の金属ロール間に透明導電膜をはさんで接触させ、このロール間の表面抵抗を測定する方法が挙げられる。しかしながら、この方式は透明導電性フィルムの長手方向における表面抵抗の分布を測定することができるが、幅方向の表面抵抗の分布を測定することは原理的に不可能である。また、長手方向の表面抵抗の分布に関しても、フィルムのテンションが均一でないと、金属ロールと透明導電膜との接触が不均一になり、表面抵抗に測定誤差を含むことになる。
【0007】
また、透明導電性フィルムの幅方向における表面抵抗を測定するために、1本の絶縁ロール(シリコンゴムまたはポリフルオロテトラエチレン製)に3個以上の金属リングを巻きつけ、金属リング間の抵抗値を測定する方法もある。しかしながら、この方式は、絶縁物と金属リングとの境に微小な突起が形成され、このためにフィルム表面に傷が生じやすくなってしまう。
【0008】
そこで、幅方向の表面抵抗の分布を連続的に測定することができ、かつ、フィルム表面に傷を発生させない表面抵抗測定器として、電磁誘導コイルと導電膜との結合インダクタンスを測定する方法(磁界を印加して発生する渦電流を測定する方法)が知られている(月刊ディスプレイ、1999年9月号、第88頁)。しかしながら、この方法は、10Ω/□程度以上の表面抵抗を有する導電膜を測定するためには、印加磁界の強度をかなり上げる必要があるために、磁束の広がりが大きくなり、インラインでの連続測定では製造プロセスでの基材のパスライン変動(基材面の法線方向の振動)により、センサー部と測定対象である導電膜との離隔距離が変動し、結合インダクタンスが一定とならず、結果として測定誤差が大きくなるという問題がある。
【0009】
さらに、この方法は、渦電流発生部あるいは渦電流検出部としてのフェライトコイルの透磁率が温度特性を有しているために、温度変動があるとそれに従ってインダクタンスが変化し、コイルに印加する高周波電圧を一定にしていたとしても、前記導電膜に流れる渦電流が変化して、結果として測定誤差が大きくなるという問題が発生する。
【0010】
以上のように、一般的な表面抵抗測定計を巻取り装置内に設けても、測定誤差が大きいため、表面抵抗が均一な透明導電性フィルムロールを得ることは極めて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な透明導電性フィルムロール及びそれを用いて製造したタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の透明導電性フィルムロールに係る発明は、少なくとも片面に透明導電膜を有する、幅300〜1300mmで長さ10〜1000mのプラスチックフィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロールを幅方向に対し中央位置及び左右の端部から25〜100mmの任意の位置で、かつ長手方向に全長に対して10分の1の長さピッチで計33点の前記透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)を測定した際に、下記(1)式で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。上記表面抵抗の分布均一度Dは、ゼロに近いほど表面抵抗の変動が小さいことを意味する。
本発明におけるタッチパネルに係る発明は、透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が上記の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
表面抵抗などの品質が長手方向及び幅方向で均一な透明導電性フィルムロールが得られ、最終製品であるタッチパネル等の文字や図形の認識ズレ率が小さくなるなど性能安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で透明導電性フィルムロールの基材として用いるプラスチックフィルムとは、有機高分子を溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。
【0015】
有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0016】
これらの有機高分子のなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は単独で使用する以外に、他の有機高分子の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子を1種以上ブレンドしてもよい。
【0017】
前記プラスチックフィルムは、パネルの視認性の点から、透明性に優れていることが必要である。したがって、プラスチックフィルム中には透明性を悪化させるような粒子や添加剤などを含有させないことが好ましい。しかしながら、プラスチックフィルム製造時やロールの巻出しや巻取り時のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)の点からは、フィルム表面に適度な表面凹凸を有することが好ましい。
【0018】
このような相反する特性を満足させる方法として、基材フィルムをコーティング法または共押し出し法にて、厚みが0.03〜1μmと非常に薄い表面層を設けた積層構造とし、該表面層のみに粒子を含有させる方法が好ましい。これらの方法の中でも、コーティング法の場合、共押し出し法よりも表面層の厚みを薄くすることができ、かつプラスチックフィルムと導電層との密着性も良好にすることができるため好適である。
【0019】
基材として積層プラスチックフィルムを用いる場合、表面層に含有させる粒子は1種類でも複数併用してもよく、透明性の点から、粒子の屈折率がプラスチックフィルムの構成樹脂及びコート層のバインダー樹脂と同じまたは近いものを用いることが好ましい。例えば、基材やコート層のバインダー樹脂としてポリエステル系樹脂を用いる場合には、バインダー樹脂中に平均粒子径が10〜200nmのシリカ、ガラスフィラー、アルミナ−シリカ系などの複合酸化物、などを0.5〜5.0質量%含有させることが好ましい。
【0020】
前記プラスチックフィルムの厚みは、10μmを越え、300μm以下の範囲であることが好ましく、70〜260μmの範囲が特に好ましい。プラスチックフィルムの厚みが10μm以下では機械的強度が不足し、特にタッチパネルに用いた際のペン入力に対する変形が大きくなる傾向があり、耐久性が不十分となりやすい。一方、厚みが300μmを越えると、巻取りフィルムロールの形態をとることが難しくなってしまう。
【0021】
また、前記プラスチックフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0022】
また、基材のプラスチックフィルムと透明導電膜との間に、透明導電膜の付着力を向上させるために、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層または無機薄膜層を設けても良い。
【0023】
前記硬化型樹脂としては、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0024】
前記無機薄膜層の構成材料としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化サマリウムなどの単体あるいは2種類以上の複合酸化物であることが好ましい。
【0025】
また、本発明で用いる透明導電膜としては、透明性及び導電性をあわせもつ材料であれば特に制限はないが、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀及び銀合金、銅及び銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造したものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0026】
さらに、これらの透明導電膜中に、表面抵抗や透明性を調整するために、酸化チタン、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化サマリウム、などを少なくとも1種含有させてもよい。これらの無機酸化物の含有量は多くても主成分に対して合計量で10質量%以下であることが好ましい。
【0027】
透明導電膜の膜厚は4〜800nmの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜500nmである。透明導電膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくい傾向がある。一方、800nmよりも厚い場合、透明性が低下しやすくなる。
【0028】
本発明における透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0029】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基材に直流、交流、高周波などのバイアスを印加しても構わない。
【0030】
透明導電性フィルムの透明導電膜表面での光の反射率を低減させ、光線透過率を向上させるために、透明導電膜の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を、透明導電膜とプラスチックフィルムの間に単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。単層構造の場合、透明導電膜よりも小さな屈折率を有する材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層構造とする場合は、プラスチックフィルムと隣接する層は、プラスチックフィルムよりも大きな屈折率を有する材料を用い、透明導電膜の下の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料を選ぶのがよい。
【0031】
このような低反射処理層を構成する材料としては、有機材料でも無機材料でも上記の屈折率の関係を満足すれば特に限定されない。例えば、CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2O3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In2O3、などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0032】
本発明の透明導電性フィルムロールは、下記式(1)で定義する透明導電膜の表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下となる、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布が均一な透明導電性フィルムロールである。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
【0033】
前記の材料及び方法により製造した透明導電性フィルムロールにおいて、長手方向及び幅方向に表面抵抗の分布を均一なものとするためには、例えば、透明導電層を積層する工程において、巻取り式成膜機に下記で詳述するインライン方式でかつ非接触式の表面抵抗測定装置を設けることが好ましい。
【0034】
この非接触式表面抵抗測定装置の構成を、図1を用いて説明する。
非接触式表面抵抗測定装置は、基材1上の導電膜2に設定間隔を空けて対向させてその導電膜2に渦電流を流す渦電流発生部3A、及び導電膜2に流れる渦電流を導電膜2とは離間した状態で検出する渦電流検出部3B(渦電流発生部3Aとは一体になっている)とから成る複数(n個)の渦電流センサー3を設けている。そして、該渦電流センサー3の温度を検出する温度センサー4A(温度検出部に相当)、及び渦電流センサー3と導電膜2との離隔距離センサー4Bを前記渦電流センサー3と一体に設けた構成からなる。さらに、渦電流検出部3Bの検出結果と、温度センサー4A及び離隔距離センサー4Bの検出結果に基づいて、導電膜2の表面抵抗を算出するコンピューター7(算出手段に相当)を設けて構成されている。
【0035】
渦電流センサー3、温度センサー4A、離隔センサー4Bの各センサーは、センサー用アンプ6につながれている。このセンサー用アンプ6は、高周波発振器と渦電流のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、導電膜2とセンサー3との離隔距離に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段、温度に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段とを含む。高周波発振器は、高周波を印加して導電膜に流れる渦電流を検出する。
【0036】
好ましくは、上記導電膜2とセンサー3との離隔距離を検出するセンサー4Bは、静電容量式、超音波式、レーザ式、光電式などの変位センサーである。導電膜の表面抵抗を算出する手段は、デジタル信号に基づいて導電膜の表面抵抗を算出する。
【0037】
導電膜に渦電流を流す方法は、導電膜に設定間隔を空けて渦電流発生部ならびに渦電流検出部を対向させるものと、渦電流発生部と渦電流検出部の両者で導電膜を挟み込むものがある。例えば、渦電流発生部としてのフェライトコイルなどのコイルに高周波電圧を印加し、前記コイルを導電膜に近づけるか、前記コイルで導電膜を挟み込むことで、導電膜に高周波誘導結合による渦電流を流す。
【0038】
この高周波電圧を一定にすると、導電膜に流れる渦電流と導電膜の表面抵抗が逆比例(反比例)する。したがって、予め渦電流と表面抵抗との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくと、その離隔距離(基準点)での表面抵抗を求めることができる。
【0039】
渦電流は、原理的に導電膜とセンサーとの離隔距離が大きくなるにつれて、小さくなる傾向があるため、予め渦電流と離隔距離との関係について校正曲線(検量線)を作成しておく。具体的には、上記導電膜とセンサーとの離隔距離を検出する手段にて得られた離隔距離から基準点との差を出し、上記校正曲線から渦電流の補正値を計算する。この補正値は、導電膜とセンサーとの離隔距離が基準点よりも小さい場合は減算する方向に、逆に導電膜とセンサーとの離隔距離が基準点よりも大きくなる場合は加算する方向で計算する。こうして導電膜とセンサーとの離隔距離の任意点で、導電膜の表面抵抗を正確に算出することができる。上記導電膜の表面抵抗の算出はコンピューターの演算周期により、導電膜の製造プロセスにおいて連続的に行われる。
【0040】
また、渦電流は、原理的に渦電流発生部あるいは渦電流検出部としてのコイルの透磁率が温度特性を有しているために、温度変動があるとそれに従って変化する。渦電流と透磁率の間には正の相関があるが、コイル材料の種類によって透磁率の温度特性は正負双方がある。すなわち、温度上昇に応じて透磁率が大きくなる正特性と、温度上昇に応じて透磁率が小さくなる負特性がある。
【0041】
そこで、前記温度検出部の検出結果が前記基準温度から外れていると、選択したコイル材料の温度特性に応じて、算出手段が、前記基準温度から外れたことに起因する渦電流の増減量を求めるとともに、前記渦電流の増減量を渦電流検出部の検出結果から減じあるいは加える補正を行い、その補正した渦電流の値に基づいて、表面抵抗を算出する。
【0042】
この場合、予め温度変動量と渦電流補正量との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくことが重要である。このように予め作成した検量線を基に導電膜の表面抵抗を算出するため、渦電流発生部の温度が変動しても、導電膜の表面抵抗の測定値に誤差が生じにくくなる。
【0043】
さらに、渦電流センサー、温度センサー及び隔離センサーとを一体化させた渦電流式表面抵抗計を導電膜の製造プロセスの幅方向に複数個を固定して配置することで、プロセス幅が広くて幅方向の温度分布(温度ムラ)があったとしても、幅方向の表面抵抗を正確に測定することができる。また、上記と同様の作用効果を示す方法として、上記渦電流式表面抵抗計を導電膜の製造プロセスの幅方向に1個設け、これらを積載して幅方向に走査させることができる駆動手段を設ける方法が挙げられる。
【0044】
前記渦電流センサー3、温度センサー4A、及び離隔距離センサー4Bは、センサーアンプ6にセンサーケーブル5を介して接続してあり、導電膜の表面抵抗の測定結果を表示するCRT8と、測定結果を印字出力するプリンター9と、測定された表面抵抗が規定された範囲外になったことや異常をオペレータに報知する警報装置10を設けてある。
【0045】
前記センサーアンプ6には、高周波発信器と、渦電流のアナログ信号をデジタル信号に変換する第1A/D変換器と、前記温度に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換する第2A/D変換器とを設けてある。
【0046】
前記コンピュータ7は、前記第1及び第2A/D変換器によって得られたデジタル信号に基づいてデータ処理し、温度センサー4の検出結果が前記基準温度から外れていると、基準温度から外れたことに起因する渦電流の増減量を求めるとともに、前記渦電流の増減量を渦電流検出部3Bの検出結果から減じあるいは加える補正を行い、その補正した渦電流の値に基づいて、導電膜2の表面抵抗を算出する。
【0047】
また、導電膜2の製造プロセスにおいて、前記の温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流表面抵抗計を導電膜2の幅方向に複数個配置して、あるいは前記渦電流表面抵抗計1個を適切な駆動手段に積載して導電膜2の幅方向に走査させながら、透明導電性フィルムロールの導電膜2における幅方向及び長手方向の表面抵抗分布のトレンド(経時的な変化)をコンピューター7により求めることができる。
【0048】
次に、上記の渦電流表面抵抗計の動作について説明する。
(1)前記渦電流発生部3Aが基材1上の導電膜2と数mmの設定間隔を空けて対向する状態、または基材1を挟み込む状態に渦電流センサー3、温度センサー4A、離隔距離センサー4Bを配置する。
【0049】
(2)センサーアンプ6から渦電流センサー3の渦電流発生部3Aに高周波を印加して、高周波誘導結合により導電膜2に渦電流を発生させる。
【0050】
(3)前記印加する高周波電圧を一定に制御していれば、導電膜2に流れる渦電流と導電膜2の表面抵抗が逆比例(反比例)する。そのため、図2に示すように、予め渦電流と表面抵抗との関係について校正曲線(検量線)を作成しておくことで、導電膜2と渦電流発生部3Aとを前記設定間隔を空けた状態の基準温度での未知の導電膜2の表面抵抗を求めることができる。
【0051】
(4)渦電流は、コイル材料の温度特性が正特性を有していれば大きくなり、表面抵抗は小さくなる傾向がある。そのため、図3に示すような、予め作成しておいた表面抵抗と前記温度との関係についての校正曲線(検量線)に基づいて、渦電流検出部3Bの検出結果を補正する。
【0052】
(5)渦電流は、渦電流センサーと導電膜との離隔距離が大きいほど、表面抵抗は小さくなる傾向があるため、予め作成しておいた図4に示す、表面抵抗と離隔距離との関係についての校正曲線(検量線)に基づいて、上記(4)で得られた算出結果を補正する。
【0053】
前記コンピューター7により表示される導電膜2の表面抵抗は、任意の作成ソフトウェアによりCRT6に表示し、測定値やグラフとしてデータ処理を行い、インラインで表面抵抗を連続的に測定する。また、必要に応じて、プリンタ9に印字出力する。
【0054】
導電膜2の表面抵抗の算出は、コンピューター7の演算周期により導電膜2の製造プロセスにおいて連続的に行うことができる。
【0055】
また、表面抵抗の測定結果を、警報装置10や製造プロセスにフィードバックすることで、透明導電性プラスチックフィルムロールを製造する際に表面抵抗を制御することができ、製造工程における品質の向上・生産性向上を図ることができる。
【0056】
さらに、前記渦電流センサー3、温度センサー4A及び離隔距離センサー4Bを一体に設けることで、ほぼ同一点での渦電流と温度の測定を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
【0057】
本発明の透明導電性フィルムロールは、スリッターにより幅300〜800mm程度、長さ10〜1000m程度のサイズに裁断した後、フィルム上に銀ペースト印刷や誘電体印刷などの加工を施し、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスパネル用の透明電極として使用される。
【0058】
図11に、本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得た透明導電性フィルムを用いた、アナログ方式のペン入力用タッチパネルの例を示す。透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得た透明導電性フィルムを用いたものである。
【0059】
このタッチパネルにペンにより文字や図形を入力した時に、ペンからの押圧により、対向した透明導電膜同士が接触し、電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンの位置を検出することができる。このペン位置を連続的かつ正確に検出することで、ペンの軌跡から文字を認識することができる。
【0060】
この際、ペン接触側のパネル板に本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムを用いると、長手方向及び幅方向ともにほぼ均一な表面抵抗が得られるため、透明導電性フィルムロールのどの部分を裁断して用いても、文字や図形の認識ズレ率の小さい安定なタッチパネルが得られる。
【0061】
また、アナログ方式のペン入力用タッチパネルにおける両方のパネルに本発明の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムを用い、透明導電性フィルムの導電膜を形成していない面を、粘着剤を介して透明樹脂シートと積層することで、タッチパネルの固定電極に用いる透明導電性積層シートが得られる。すなわち、固定電極をガラス製から樹脂製にすることで、軽量でかつ衝撃により割れにくいタッチパネルを作製することもできる。
【0062】
前記粘着剤は透明性を有するものであれば特に制限はないが、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚さの場合、実用上問題のない接着性を得るのが難しく、100μmを越える厚さでは生産性の観点から好ましくない。
【0063】
この粘着剤を介して貼合わせる透明樹脂シートは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚さは0.05〜5mmの範囲が好ましい。前記透明樹脂シートの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。一方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂シートの材質は、前記の透明プラスチックフィルムと同様のものを使用することができる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明は当然以下に示す実施例に限定されるものではない。また、本実施例で得られた透明導電性フィルムロール及びタッチパネルの特性は下記の方法により評価した。
【0065】
(1)透明導電膜の表面抵抗
透明導電性フィルムのスリットロールの幅方向における中央部及び中央部から左右200mmの位置について、長さ方向に10mピッチで、JIS−K7194に準拠した4探針法にて、透明導電膜の表面抵抗を、表面抵抗測定機(三菱油化(株)製、Lotest AMCP−T400)を用いて測定した。
【0066】
すなわち、1本のスリットロールにおいて、33箇所(幅方向3点×長手方向11点)の表面抵抗を測定し、この33個の測定値のうち、最大値をRmax、最小値をRminとした。この値を用いて、(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin)を算出した。この算出を16本のスリットロールすべてに対して行った。
【0067】
(2)タッチパネルの図形認識ズレ率
上記のように作製したタッチパネルに、X−Yプロッタ(ローランド株式会社製、DXY−1150A)を用いて、直径40mmの丸印を5箇所に筆記した。ペンは先端が0.8mmΦのポリアセタール製を用い、ペン荷重は0.6Nとした。銀ペーストからの信号を読み取り、丸印が正確に認識されているかを評価するために、認識した印の長軸の長さをr1、筆記した丸印の直径をr0=40mmとした際に、認識図形のズレとして、(|r1−r0|/r0)×100を図形認識ズレ率(%)として計算した。5箇所の筆記個所において算出し、最も大きなズレ率を、このタッチパネルの図形認識ズレ率とした。
【0068】
実施例1
図1に記載の温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流式表面抵抗計を具備した巻取り式スパッタリング装置を使用し、ITOターゲット(酸化錫10質量%含有、三井金属鉱業株式会社製)を用いた。なお、前記渦電流式表面抵抗計は、フィルム幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所に配設した。幅1300mm、長さ850m、厚み188μmの、片面に接着改質層を有するPETフィルムロール(東洋紡績株式会社製、A4100)を巻出し、基材とした。次いで、該PETフィルムの接着改質層面に透明導電膜を成膜した。
【0069】
透明導電膜の成膜条件は、スパッタ時の圧力を0.4Pa、Ar流量を200sccm、酸素流量を3sccmとした。また、ターゲット電力投入は、日本イー・エヌ・アイ社製RPG100を用いて、3W/cm2を印加した。この際に、パルス幅2μsec.でパルス周期が100kHzの正電圧パルスも印加することで、異常放電の発生を抑制した。
【0070】
なお、渦電流センサーの温度依存性及び離隔距離依存性をあらかじめ測定し、検量線を作成した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を連続的にモニターしながら、上記検量線から表面抵抗が250Ω/□が中心となるように、フィルムの送り速度及び酸素流量を調整した。透明導電性フィルムロール製造時の透明導電膜の膜厚は22〜27nmであった。また、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図5に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.03であった。
【0071】
得られた透明導電性フィルムロールを幅600mm、長さ100mにスリットし、16本のスリットロールを作製した。得られた透明導電性フィルムロールの評価結果を表1に示す。
【0072】
前記透明導電性フィルムのスリットロールから、透明導電性フィルムを200mm×300mmの長方形に切り出し、一方のパネル板として用い、両端部(200mm長の両辺)に銀ペーストを印刷した。他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性ガラス(日本曹達製、S500)を用い、これを200mm×300mmの長方形に切り出した後、300mm長の両辺に銀ペーストを印刷した。この2枚のパネル板を透明導電膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。得られたタッチパネルの断面図を図13に示した。また、タッチパネルの評価結果を表2及び図11に示した。
【0073】
実施例2
プラスチックフィルムとして、厚みが192μmのクリアハードコート層を片面に設けたPETフィルム(東洋紡績株式会社製、HC101)を用いた。前記ハードコート層の反対面に透明導電膜を形成させたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図6に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.09であった。
【0074】
実施例3
光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)を、トルエン/MEK(8/2:質量比)の混合溶媒を用いて、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液Aを調製した。
【0075】
幅1300mm、長さ850m、厚み188μmの、片面に接着改質層を有するPETフィルムロール(東洋紡績株式会社製、A4100)を巻出し、上記塗布液Aを塗膜の厚みが5μmになるようにマイヤーバーによりフィルムの接着改質層に塗布し、80℃で1分間乾燥を行った。次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させた。さらに、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分の低減を行ない、片面に硬化物層を有するPETフィルムロールを巻き取り、基材とした。
【0076】
片面に硬化物層を有するPETフィルムロールを基材として用い、硬化物層面に透明導電膜を形成させること以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。
【0077】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図7に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.02であった。
【0078】
実施例4
実施例1において、ITOターゲットの代わりにスズ−アンチモン複合酸化物(ATO)ターゲット(酸化アンチモン5質量%含有、三井金属鉱業株式会社製)を用い、酸素流量を3sccmから5sccmに変更し、透明導電膜の表面抵抗が1000Ω/□が中心となるように、フィルムの送り速度及び酸素流量を調整した。このこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。また、透明導電性フィルムロール製造時の透明導電膜の膜厚は95〜110nmであった。
【0079】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図8に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.10であった。
【0080】
実施例5
実施例1の導電膜の製造プロセスにおいて、温度センサー及び離隔距離センサーを一体化した渦電流式表面抵抗計を、透明導電フィルムの導電膜上の隔離した位置に、幅方向に3個固定して配置する代わりに、上記渦電流式表面抵抗計1個を導電膜の幅方向に連続的に走査させながら、透明導電性フィルムの幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所で導電膜の表面抵抗を測定すること以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムロール及びタッチパネルを得た。得られた結果を表1及び2に示した。
【0081】
なお、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図14に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.03であった。
【0082】
比較例1
温度センサー及び離隔距離センサーを備えていない渦電流式表面抵抗計(フィルム幅方向の中央部、中央から左右500mm離れた位置の計3箇所に設置)を用いた以外は実施例1と同様にした。得られた結果を表1、表2、及び図12に示した。
【0083】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図9に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.22であった。
【0084】
比較例2
実施例1において、渦電流式表面抵抗計の代わりに、2本の絶縁式フリーロール間の抵抗値からフィルム上の表面抵抗を算出するモニターを用いた以外は実施例1と同様にした。得られた結果を表1及び表2に示した。
【0085】
また、実施例1と同様に、透明導電性フィルムロールを製造時に、幅方向の中央部、中央から左に500mmの位置、中央から右に500mmの位置における導電膜の表面抵抗値を長手方向に10mピッチで100m分を出力した。渦電流式表面抵抗計の測定結果を図10に示した。導電膜の表面抵抗の分布均一度Dは0.33であった。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
以上の結果から、次のことがいえる。
実施例1〜5は、透明導電性フィルムのスリットロール内での透明導電膜の表面抵抗分布が、長手方向及び幅方向ともに均一である。そのため、例えば実施例1の透明導電性フィルムのスリットロールから作製したタッチパネルも入力図形が正確に認識されている。
【0089】
これに対し、比較例1は、透明導電膜の表面抵抗分布が長手方向において均一性が不十分であり、比較例2は幅方向の均一性が不十分である。そのため、例えばの透明導電性フィルムのスリットロールから作製したタッチパネルは、図形認識ズレ率が大きく、タッチパネルとして不適であった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】非接触式表面抵抗測定装置の構成を示す説明図である。
【図2】渦電流と表面抵抗との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図3】温度と表面抵抗との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図4】渦電流と離隔距離との関係についての校正曲線(検量線)を示す説明図である。
【図5】実施例1におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図6】実施例2におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図7】実施例3におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図8】実施例4におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図9】比較例1におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図10】比較例2におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【図11】実施例1のタッチパネルの出力形状を示す説明図である。
【図12】比較例1のタッチパネルの出力形状を示す説明図である。
【図13】実施例1のタッチパネルの断面図である。
【図14】実施例5におけるスリットロール内の表面抵抗の分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基材
2 導電膜
3A 渦電流発生部
3B 渦電流検出部
4A 温度センサー
4B 離隔距離センサー
5 センサーケーブル
6 センサーアンプ
7 コンピューター
8 CRT
9 プリンター
10 警報装置
11 通信ケーブル
12 CRTケーブル
13 プリンターケーブル
14 制御ケーブル
15 タッチパネルの認識図形
16 透明導電性フィルム
17 プラスチックフィルム
18 透明導電膜
19 ガラス板
20 ビーズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に透明導電膜を有する、幅300〜1300mmで長さ10〜1000mのプラスチックフィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロールを幅方向に対し中央位置及び左右の端部から25〜100mmの任意の位置で、かつ長手方向に全長に対して10分の1の長さピッチで計33点の前記透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)を測定した際に、下記式(1)で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする透明導電性フィルムロール。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。
【請求項2】
透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が請求項1記載の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とするタッチパネル。
【請求項1】
少なくとも片面に透明導電膜を有する、幅300〜1300mmで長さ10〜1000mのプラスチックフィルムをロール状に巻き取った透明導電性フィルムロールであって、前記透明導電性フィルムロールを幅方向に対し中央位置及び左右の端部から25〜100mmの任意の位置で、かつ長手方向に全長に対して10分の1の長さピッチで計33点の前記透明導電膜の表面抵抗(Ω/□)を測定した際に、下記式(1)で定義される表面抵抗の分布均一度Dが0.2以下であることを特徴とする透明導電性フィルムロール。
D=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin) …(1)
上式で、33点の表面抵抗測定値において、Rmaxは最大値を、Rminは最小値を意味する。
【請求項2】
透明導電膜を有する一対のパネル板を、透明導電膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が請求項1記載の透明導電性フィルムロールを裁断して得られた透明導電性フィルムであることを特徴とするタッチパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−141853(P2007−141853A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339730(P2006−339730)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【分割の表示】特願2002−181972(P2002−181972)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【分割の表示】特願2002−181972(P2002−181972)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
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