説明

通信統合レーダ装置、通信統合レーダシステム

【課題】装置規模を増大させることなく、精度の良いチャネル行列をリアルタイムで生成可能な通信統合レーダ装置、及びこれを用いた通信統合レーダシステムを提供する。
【解決手段】アクティブターゲット装置からの折返波に基づくIF帯のビート信号の距離周波数スペクトルに基づき、周知のFMCWレーダの手法を用いて、各折返波に基づく信号成分(即ち、アクティブターゲット装置からの信号)を分離し(S210〜S240)、その分離した信号成分に基づいて、各受信アンテナで受信される受信信号から各アクティブターゲット装置毎の信号を分離抽出する際に用いるウェイト行列の生成に用いるチャネル行列を生成する(S250〜S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ波を送信し、レーダ波を反射した物体からの反射波、及びレーダ波を変調して折り返し送信をするアクティブターゲット装置からの折返信号を受信して、物体の位置や速度に関する情報、及びアクティブターゲット装置が有する情報を取得する通信統合レーダ装置、及びその統合レーダ装置を用いて構成される通信統合レーダシステムにに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダモードと通信モードの2モードで動作する通信統合レーダ装置、及びこの通信統合レーダ装置からのレーダ波を受信,変調して折り返し送信をするアクティブターゲット装置からなる通信統合レーダシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、通信統合レーダ装置は、レーダモードでは、周波数掃引されたレーダ波を送信し、レーダ波を反射した物体からの反射波を受信して、その送受信信号を混合することで得られるビート信号に基づいて、物体との距離や相対速度を検出する周知のFMCWレーダとして動作する。一方、通信モードでは、無変調のレーダ波(搬送波)を送信して、これを受信したアクティブターゲット装置からの折返波を受信し、その受信信号を復調することで、アクティブターゲット装置からの情報を取得する、いわゆるパッシブ方式の通信機として動作する。
【0004】
この特許文献1に記載の通信統合レーダシステムでは、複数のアクティブターゲット装置が同時に折返波を送信すると、通信統合レーダ装置では、これら折返波を分離して復調することができない。このため、通信統合レーダ装置は、アクティブターゲット装置を識別する識別情報を少なくとも含んだ情報で変調したレーダ波を送信した後、無変調のレーダ波を送信し、アクティブターゲット装置は、受信したレーダ波を復調して得られた識別情報が、自装置を指定するものである場合にのみ、折り返し送信を実行するように構成されている。
【0005】
しかし、この場合、通信すべきアクティブターゲット装置が複数存在すると、個々のアクティブターゲット装置との通信を、時間的に分離して順番に実行しているため、全てのアクティブターゲット装置との通信が終了するまでの時間が長くなり、情報更新の周期が長くなってしまうという問題があった。
【0006】
これに対して、複数のアンテナを使用して、互いに異なる複数の伝搬路(以下、チャネル)を介して同時に到来する複数の無線信号を受信し、その受信信号に空間フィルタ(「ウェイト行列」ともいう)を作用させることで、個々の無線信号に分離して復調する空間分割多重方式が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
この空間分割多重方式では、送信アンテナ#jと受信アンテナ#iとで特定されるチャネルの伝搬特性をチャネル応答hij(i=1,2,‥,L、j=1,2,‥,N)とし、送信アンテナと受信アンテナとの全ての組合せ(即ち、全てのチャネル)に対してチャネル応答をL×N要素の行列形式で配列したものをチャネル行列とする。
【0008】
そして、このチャネル行列から、Zf(Zero−forcing)法やMMSE(Minimum mean square error)法といった周知の手法を用いてウェイト行列を生成し、そのウェイト行列を受信アンテナの受信信号に作用させることで、各送信アンテナからの信号を個々に分離している。
【0009】
ところで、チャネル行列を生成するには、チャネル応答を測定する必要があり、そのためには、受信信号から各送信元毎に信号成分を分離しなければならない。そのための手法として、一般的に、既知のトレーニング信号を送信アンテナから送信させ、その受信信号からチャネル行列を測定(以下、チャネルサウンディング)する手法が用いられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
なお、チャネルサウンディングは、トレーニング信号の種類に応じて時分割方式、周波数分割方式、コード分割方式に分類されている。
【特許文献1】特許第3421058号
【非特許文献1】大鐘他,“MIMOチャネルにおける空間分割多重方式とその基本特性”,電子情報通信学会論文誌B Vol.J87−B No.9 pp.1162−1173,2005
【非特許文献2】阪口他,“MIMO伝搬特性の測定装置・測定方法・解析方法・モデル化”,電子情報通信学会論文誌B Vol.J88−B No.9 pp.1624−1640,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このうち、時分割方式では、送信アンテナ(送信元)のいずれか一つを動作させ、動作させる送信アンテナを順次切り替えながら受信信号の測定を行うものである。つまり、複数の送信元についてのチャネル応答を同時に測定することができないため、チャネル行列の生成に時間を要してしまい、チャネル行列(ひいてはウェイト行列)を、状況の変化にリアルタイムで対応させることが困難であり、通信品質を劣化させてしまうという問題があった。
【0012】
また、コード分割方式は、複数の送信アンテナから直交した符号系列を送信し、受信側ではこの直交性を利用して各チャネル応答を分離して測定する。この場合、全てのチャネル応答を同時に測定できるため、時分割方式で生じる問題を解決することができる。しかし、この場合、送信信号を符号化し、受信信号を復号するためのハードウェアコストが増大するという問題があった。
【0013】
また、コード分割方式を、上述の通信統合レーダシステムに適用した場合、全てのアクティブターゲット装置に、互いに直交した符号系列を割り当てる必要があり、符号系列の直交性を確保することが困難であるだけでなく、通信統合レーダ装置は、全ての符号系列を予め知っておく必要があり実現が困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するために、装置規模を増大させることなく、精度の良いチャネル行列をリアルタイムで生成可能な通信統合レーダ装置、及びこれを用いた通信統合レーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明の通信統合レーダ装置では、チャネル行列生成手段がチャネル行列を生成する際に、スペクトル生成手段にてチャネル毎に生成されるビート信号の周波数スペクトルから得られる情報(即ち、各アクティブターゲット装置との相対位置や相対速度)を用いることにより、アクティブターゲット装置を識別するための識別情報や直交符号系列などを用いることなく、各アクティブターゲット装置からの折返波に基づく信号成分を分離,抽出している。
【0016】
なお、周波数スペクトル上に現れるピークの信号成分(複素値)は、そのピークを発生させた折返波の伝搬経路についての伝搬特性を表しており、これはチャネル応答と等価であるため、これらの信号成分を用いてチャネル行列を生成することができる。
【0017】
このように、本発明の通信統合レーダ装置によれば、従来装置のようにチャネル行列生成のための特別なトレーニング信号を送受信するための構成を必要としないため、装置規模が小さく制御の簡易なシステムを構築することができる。
【0018】
しかも、本発明の通信統合レーダ装置によれば、複数チャネルを同時に測定できるため、一度のレーダ波の送信で、精度の良いチャネル行列をリアルタイムで生成することができ、その結果、アクティブターゲット装置から取得する情報の更新周期を短縮することができる。
【0019】
なお、アクティブターゲット装置からの折返波が、無変調又は情報で変調された中間周波数帯のサブキャリア信号によって変調されている場合、請求項2に記載のように、信号分離手段及びスペクトル生成手段は、ビート信号生成手段にて生成されるビート信号のうち、中間周波数帯に現れるビート信号に基づいて処理を実行するように構成されていてもよい。更に、請求項3に記載のように、ダウンコンバート手段によって、その中間周波数帯に現れるビート信号を抽出してベースバンド帯のビート信号にダウンコンバートし、そのダウンコンバートされたベースバンド帯のビート信号に基づいて処理を実行するように構成されていてもよい。
【0020】
なお、ここで言うベースバンド帯とは、システムで規定されたビート周波数の上限値以下の周波数帯のことであり、また、中間周波数帯は、システムで規定されたビート周波数の上限値の2倍より大きければよいが、できるだけ小さい(少なくとも送信するレーダ波の周波数より十分に小さい)ことが望ましい。
【0021】
この場合、アクティブターゲット装置からの折返波に基づくビート信号が、レーダ波を反射した物体からの反射波に基づくビート信号と異なる周波数帯に発生するため、両者を確実に区別して抽出することができる。その結果、両ビート信号の干渉によるチャネル行列の推定精度の劣化、ひいては通信品質の劣化を防止することができる。
【0022】
また、特に請求項2に記載の通信統合レーダ装置では、中間周波数帯の信号をそのまま処理するため、装置構成を簡易なものとすることができ、一方、請求項3に記載の通信統合レーダ装置では、ダウンコンバート手段を追加する必要があるものの、ベースバンド帯で信号を処理できるため、ビート信号のサンプリング等での処理負荷を軽減することができる。
【0023】
ところで、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項4に記載のように、送受信手段が、第1期間中に掃引速度が異なる複数種類のレーダ波を送信し、チャネル行列生成手段が、複数種類のレーダ波のそれぞれについてチャネル行列を生成し、ウェイト行列生成手段が、それら複数のチャネル行列を平均した平均チャネル行列に基づいてウェイト行列を生成するように構成されていてもよい。
【0024】
即ち、ビート信号の周波数スペクトル上に現れるピークの周波数(ビート周波数)は、レーダ波の掃引速度によって変化するため、ある掃引速度で測定した時に、同一周波数に複数のピークが重複していたとしても、それ重複するピークに対応する複数のアクティブターゲット装置との関係がいずれも同一の距離かつ同一の相対速度にない限り、異なる掃引速度で測定した時には、互いに異なった周波数にピークが現れることになる。
【0025】
従って、受信した全ての折返波(ひいてはアクティブターゲット装置)についてのチャネル応答を、より確実に取得することができ、その結果、信頼性の高いチャネル行列を生成することができる。
【0026】
ところで、複数種類のレーダ波のそれぞれについて生成されるチャネル行列の大きさ、即ち、各レーダ波の送信時に受信する折返波の数が互いに異なる場合は、単純にチャネル行列を平均化することができない。
【0027】
そこで、請求項5に記載のように、チャネルベクトル生成手段が、一つの折返波に対する各チャネルの応答を示すチャネルベクトルを、全ての折返波について生成し、平均化手段が、その同一折返波について生成された複数のチャネルベクトルを平均してなる平均チャネルベクトルを、全ての折返波について算出し、ベクトル配列手段が、その平均チャネルベクトルを配列することでチャネル行列を生成してもよい。
【0028】
つまり、まず、各折返波に対応するチャネルベクトルを生成し、チャネルベクトルの段階で平均化してからチャネル行列を生成しているため、複数種類のレーダ波の送信を繰り返した時に、各レーダ波の送信時に受信する折返波の数が互いに異なっていても、チャネル行列を構成する各要素の平均化を問題なく簡易に行うことができ、より信頼性の高いチャネル行列を生成することができる。
【0029】
そして、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項6に記載のように、送受信手段による周波数掃引がFMCW変調である場合、スペクトル生成手段は、FMCW変調の上昇変調区間および下降変調区間を異なる種類のレーダ波として処理するように構成されていてもよい。
【0030】
この場合、FMCWレーダで用いられている周知の様々な手法を適用することができるため、当該装置の実現を容易にすることができる。
また、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項7に記載のように、スペクトル生成手段にて生成される周波数スペクトルに基づいて、アクティブターゲット装置の位置及び速度のうち少なくとも一方に関する情報を求めるレーダ検出手段を備えていることが望ましい。
【0031】
この場合、請求項8に記載のように、レーダ検出手段にて検出される周囲物体の位置に基づいて、虚像検出手段が、マルチパスにより現れる虚像の信号成分を検出し、チャネル行列生成手段は、虚像の信号成分を、該虚像に対する実像の信号成分と同一の折返波に基づく信号成分であるとして処理を実行してもよい。
【0032】
このように構成された本発明の通信統合レーダ装置によれば、虚像を実在するアクティブターゲット装置として誤判定してしまうことを防止できるだけでなく、虚像の信号成分を有効利用することでチャネル行列の推定精度を向上させることができ、更には、誤判定による処理の重複も防止することができる。
【0033】
また、レーダ検出手段は、請求項9に記載のように、相関行列生成手段が、スペクトル生成手段にてチャネル毎に生成される周波数スペクトルのそれぞれから抽出される同一折返波の信号成分に基づいて、各信号成分間の相関を表す相関行列を、全ての折返波について生成し、方位検出手段が、それらの相関行列から角度スペクトルを算出し、その角度スペクトルに基づいてアクティブターゲット装置が位置する方位を検出するように構成されていてもよい。
【0034】
このように構成された本発明の通信統合レーダ装置では、レーダ波を反射した物体や、折返波を送信したアクティブターゲット装置との距離や相対速度だけでなく、これらが位置する方位(折返波の到来方向)も検出できるため、位置に関する情報をより詳細に検出することができる。また、周波数スペクトル上でピーク周波数が重複している場合でも、折返波の到来方向が異なっていればこれを分離することができる。
【0035】
このため、この情報を用いることにより、チャネル行列の生成に必要な処理である折返波に基づく信号成分の分離をより確実に行うことができる。
次に、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項10に記載のように、チャネル相関行列生成手段が、相関行列生成手段にて折返波毎に生成される複数の相関行列を加算することでチャネル相関行列を生成し、ウェイト行列生成手段は、チャネル行列とチャネル相関行列とに基づいてウェイト行列を生成するように構成されていてもよい。
【0036】
つまり、角度スペクトルを算出する過程で算出した相関行列を用いてチャネル相関行列を算出し、このチャネル相関行列を用いて空間分割多重ウェイト行列を算出しているため、空間分割多重ウェイト行列を算出する処理の負荷を軽減することができる。
【0037】
また、チャネル相関行列生成手段は、請求項11に記載のように、相関行列生成手段にて過去のサイクルで算出された相関行列と今サイクルで算出された相関行列とを平均した平均相関行列に基づいて、角度スペクトルを算出するように構成されていてもよい。
【0038】
なお、平均相関行列は、これに限らず、チャネル行列の場合と同様の手法で平均化したものを用いるように構成してもよい。これにより精度の高い相関行列を求めることができ、ひいては、相関行列を用いた各種処理の精度や信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項12に記載のように、判定手段が、折返波に基づく信号成分の有効,無効を判定するように構成されていてもよい。
そして、例えば、折返波に基づく信号成分の信号対雑音電力比を算出するSNR算出手段を備えている場合には、請求項13に記載のように、判定手段を、SNR算出手段にて算出される信号対雑音電力比が予め設定された下限しきい値より小さい信号成分を無効であると判定するように構成すればよい。
【0040】
また、複数の折返波に基づく信号成分の周波数が重複していることを検出する重複検出手段を備えている場合には、請求項14に記載のように、判定手段を、重複検出手段にて周波数の重複が検出された信号成分を無効であると判定するように構成すればよい。
【0041】
この場合、重複検出手段は、例えば、請求項15に示すように、折返波に基づく信号成分の過去の検出結果から各々のアクティブターゲット装置の位置をカルマンフィルタ等を使って追跡および推定し、ここから推定されるビート周波数の推定値と、スペクトル生成手段にて生成される周波数スペクトルに基づくビート周波数の検出値とを比較することにより、重複を判断するように構成すればよい。
【0042】
そして、この場合、請求項16に記載のように、破棄手段が、判定手段にて無効であると判定された信号成分を破棄するように構成してもよいし、請求項17に記載のように、代替手段が、判定手段にて無効であると判定された信号成分を予め指定された値で代替するように構成してもよい。
【0043】
即ち、ビート周波数が重複している信号成分や、信号対雑音電力比の小さい信号成分は、信頼性が低いため、これらを除去してチャネル行列を生成することにより、チャネル行列の推定精度や、チャネル行列を利用する処理や制御の信頼性が低下することを防止できる。
【0044】
ただし、重複した信号成分間の電力差が大きい(例えば、10dB以上)場合には重複の影響の小さい、電力が大きい方の信号成分だけを用いるようにしてもよい。
次に、本発明の通信統合レーダ装置において、ウェイト行列生成手段は、請求項18に記載のように、チャネル行列生成手段にて過去のサイクルで生成されたチャネル行列と今サイクルで生成されたチャネル行列とを平均した平均チャネル行列に基づいて、ウェイト行列を生成するように構成されていてもよい。
【0045】
即ち、チャネル行列は周囲の状況に応じて変動し、瞬時的なノイズの影響を受けた誤差の大きいチャネル行列が生成される可能性があるが、平均チャネル行列を用いることにより誤差の影響を低減でき、精度の安定した信頼性の高いウェイト行列を生成することができる。
【0046】
また、ウェイト行列生成手段及び分離手段は、請求項19に記載のように、振幅の大きい信号成分から順に順序付け逐次復号を実行するように構成されていてもよい。
この場合、アクティブターゲット装置からの折返波の受信電力が小さい場合でも、その通信品質を高めることができる。
【0047】
次に、本発明の通信統合レーダ装置は、請求項20に記載のように、送受信手段が、予め設定された第1期間中に周波数送信されたレーダ波を送信すると共に、予め設定された第2期間中に周波数を一定にしたレーダ波を送信する。そして、スペクトル生成手段が、第1期間中にビート信号生成手段にて生成されるビート信号に基づいて周波数スペクトルを生成(ひいてはチャネル行列生成手段がチャネル行列を生成)し、信号分離手段が、第2期間中にビート信号生成手段にて生成される折返波に基づくビート信号を入力として動作するように構成されていてもよい。
【0048】
このように、チャネル行列の生成とアクティブターゲット装置との通信を、異なる種類のレーダ波を用いて異なるタイミングで行うことにより、周波数掃引されたレーダ波の影響による通信品質の劣化、および変調されたレーダ波の影響によるチャネル行列の精度の劣化を防止することができ、システムの信頼性を向上させることができる。
【0049】
この場合、請求項21に記載のように、レーダ変調手段が、第2期間中に送信する一定周波数のレーダ波を、アクティブターゲット装置に提供する情報によって変調するように構成されていてもよい。
【0050】
これにより、通信統合レーダ装置からアクティブターゲット装置に対して情報を伝達することができ、例えば、アクティブターゲット装置の起動や送信タイミングを制御するための情報を伝達することによって、システムの信頼性や汎用性を高めることができる。
【0051】
次に、本発明の通信統合レーダ装置において、ビート信号生成手段は、例えば、請求項22に記載のように、ミキサが、各チャネルの送信信号と受信信号とを混合してビート信号を生成し、サンプリング手段が、その生成されたビート信号をサンプリングし、記憶手段が、そのサンプリングデータを記憶するように構成されていてもよい。
【0052】
この場合、サンプリングデータを用いて実行する処理の順番に関する制限を取り除くことができ、システムの柔軟性を高めることができる。
例えば、チャネル行列の生成に用いるレーダ波の送信(「レーダ用送信」という)と、通信に用いるレーダ波の送信(「通信用送信」という)を別々に実行する場合、通常であれば、レーダ用送信を行ってチャネル行列(ひいてはウェイト行列)を生成してから通信用送信を行って各アクティブターゲット装置からの情報を取得する必要がある。しかし、サンプリングデータが記憶手段に記憶されていれば、通信用送信を行ってからレーダ用送信を行っても、チャネル行列の生成とウェイト行列を用いた信号分離とを問題なく実行することができる。
【0053】
また、省電力化のためにレーダ波の送信を断続的に行い、これに応じて送受信手段の電源のON,OFFを繰り返す場合に、電源ON後のしばらくの間、送信周波数が不安定になる場合でも、先に通信用送信を行って、送信周波数が安定してからレーダ用送信を行うことにより、チャネル行列の推定精度、ひいてはウェイト行列による信号分離精度を高めることができる。つまり、電源ON後に待ち時間を設けることなく、信頼性の高い通信を実現することができる。
【0054】
また、請求項23に記載のように、ビート信号生成手段を構成するミキサは、受信アンテナ数よりも少なく、送受信手段は、複数のチャネルがミキサ及びサンプリング手段を時分割で共用するように構成されていてもよい。
【0055】
これにより、高コストな高周波回路の数が低減されるため、装置コストを抑えることができ、また、特性のばらつきが大きい高周波回路の数が少なくなることにより、装置全体としての特性のばらつきが抑えられ、チャネル行列の推定精度等を向上させることができる。
【0056】
次に第2発明の通信統合レーダシステムは、請求項24に記載のように、予め設定された周波数帯のレーダ波を受信すると、該レーダ波を変調信号で変調してなる折返波を送信する一つ以上のアクティブターゲット装置と、請求項1乃至請求項23のいずれかに記載の通信統合レーダ装置とからなる。
【0057】
そして、特に通信統合レーダ装置が、請求項21に記載のもの、即ち、変調手段を備えたものである場合、請求項25に記載のように、通信統合レーダ装置がアクティブターゲット装置に提供する情報には、少なくとも起動コマンドを含み、アクティブターゲット装置は、通信統合レーダ装置から受信したレーダ波を復号することで得た情報に起動コマンドが含まれている場合に、通信統合レーダ装置に提供する情報で変調して折り返し送信をする。
【0058】
つまり、アクティブターゲット装置では、起動コマンドを受信したときのみ変調用の構成を動作させればよいため、消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<システム構成>
図1は、第1実施形態における通信統合レーダシステムの概要を示すブロック図である。
【0060】
図1に示すように、通信統合レーダシステム1は、車両等の移動体Mや移動体Mによって検出されるべき特定の物体(以下「特定物体」という)SBに設置され、受信したレーダ波を変調し又は無変調で返送(「折り返し送信」という)するアクティブターゲット装置10と、車両等の移動体Mに搭載され、レーダ波を送受信することにより、特定物体SBに搭載されたアクティブターゲット装置10との通信を行うと共に、周囲に存在する特定物体SBやその他の各種物体(以下「通常物体」という)NBの位置や速度に関する情報を検出する通信統合レーダ装置20とからなる。
【0061】
なお、通信統合レーダ装置20は、周期的にレーダ波の送信を行い、その動作は、図2(a)に示すように、アクティブターゲット装置10との通信のために、周波数を一定にしたレーダ波を送信する区間(以下「通信区間」という)と、一定の掃引速度で周波数を三角波状に変化させたレーダ波を送信し、いわゆるFMCWレーダとして動作する区間(以下「レーダ区間」という)とからなり、通信区間の後にレーダ区間が続くように設定されている。
【0062】
また、通信区間は、通信統合レーダ装置20からアクティブターゲット装置10への送信を行うダウンリンク区間(図2(b)参照)と、逆に、アクティブターゲット装置10から通信統合レーダ装置20への送信を行うアップリンク区間(図2(c)参照)とに分かれており、ダウンリンク区間の後にアップリンク区間が続くように設定されている。
[アクティブターゲット装置の構成]
次に、図3は、アクティブターゲット装置10の構成を示すブロック図である。
【0063】
図3に示すように、アクティブターゲット装置10は、通信統合レーダ装置20が送信するレーダ波を受信する受信アンテナ11と、受信アンテナ11からの受信信号の供給先を、切替信号SXに従って切り替えるスイッチ12と、スイッチ12を介して供給される受信信号を復調して、通信統合レーダ装置20から送信されてきた情報(「ダウンリンクデータ」という)DDを抽出する復調回路13と、復調回路13で抽出されたダウンリンクデータDDに基づいて、スイッチ12に供給する切替信号SXの生成を含む各種処理を実行すると共に、通信統合レーダ装置20に送信する情報(「アップリンクデータ」という)UDの生成等を行う制御回路14とを備えている。
【0064】
また、アクティブターゲット装置10は、制御回路14からのアップリンクデータUDに基づいて変調信号SMを生成する変調回路15と、スイッチ12を介して供給される受信信号を、変調回路15で生成された変調信号SMに従って変調し且つ増幅する変調増幅器16と、変調増幅器16の出力を送信信号とするレーダ波(以下「折返波」ともいう)を送信する送信アンテナ17とを備えている。
【0065】
なお、復調回路13は、ダウンリンク区間の間動作して、スイッチ12を介して供給される受信信号を処理する。但し、ダウンリンク区間に通信統合レーダ装置20から送信されるレーダ波は、中間周波数帯のサブキャリア信号をダウンリンクデータDDにより所定の変調方式で変調してなる変調信号によって振幅変調されているため、これを復調できるように構成されている。
【0066】
また、制御回路14は、通常は、スイッチ12を介した受信信号の供給先が復調回路13となり、ダウンリンクデータDDから起動コマンドが検出されると、アップリンク区間およびレーダ区間の間だけ、受信信号の供給先が変調増幅器16となるような切替信号SXを生成する(図2(d)参照)と共に、アップリンクデータUDがある場合には、そのアップリンクデータUDをアップリンク区間に変調回路15に供給するように構成されている。
【0067】
また、変調回路15は、アップリンク区間及びレーダ区間の間動作し、アップリンク区間では、中間周波数帯のサブキャリア信号(周波数Fif)を、アップリンクデータUDを用いて所定の変調方式で変調した信号を変調信号SMとして出力し、レーダ区間では、無変調のサブキャリア信号を変調信号SMとして出力するように構成されている。
【0068】
なお、サブキャリア信号をダウンリンクデータDD及びアップリンクデータUDで変調する際の変調方式は、振幅偏移変調、周波数偏移変調、位相偏移変調、直交振幅変調等のいずれでも良く、また、直交周波数分割多重変調、拡散変調等の2次変調を併用しても良い。また、アップリンクとダウンリンクとでは、異なる変調方式を用いるように構成してもよい。
【0069】
このように、アクティブターゲット装置10では、通常時には、受信アンテナ11からの受信信号を復調回路13に供給して、通信統合レーダ装置20からダウンリンクデータDDの受信の有無を監視する受信動作を行い、受信したダウンリンクデータDDから起動コマンドが検出された場合にのみ、受信したレーダ波を変調し又は無変調で返送する送信動作を行うようにされている。
<通信統合レーダ装置の全体構成>
次に、図4は通信統合レーダ装置20の構成を示すブロック図である。
【0070】
図4に示すように、通信統合レーダ装置20は、レーダ波の送受信することにより、特定物体SBに搭載されたアクティブターゲット装置10に対してダウンリンクデータDDの送信、及び送受信信号に基づくビート信号の生成を行う送受信部21と、送受信部21で生成されたビート信号に基づいて、通常物体NBや特定物体SBの位置や速度に関する情報の検出、及びアクティブターゲット装置10から送信されてくるアップリンクデータUDの抽出を行う信号処理部23と、アクティブターゲット装置10に送信するダウンリンクデータDD(起動コマンドを含む)を送受信部21に提供すると共に、予め設定された一定期間毎に起動指令を出力することで送受信部21及び信号処理部23を作動させる制御回路25とを備えている。
<送受信部の構成>
このうち、送受信部21は、駆動信号により周波数を制御可能な電圧制御発振器(VCO)31と、制御回路25からの起動指令に従って、上述した通信区間及びレーダ区間(図2(a)参照)に応じた信号をVCO31に発生させるための駆動信号を生成する駆動信号生成回路32と、VCO31が発生させた信号を電力分配して送信信号及びローカル信号を生成する電力分配器33と、制御回路25から供給されるダウンリンクデータDDに基づいて変調信号を生成する変調回路34と、電力分配器33から供給される送信信号を変調回路34から供給される変調信号で振幅変調し且つ増幅する送信アンプ35と、送信アンプ35で変調,増幅された送信信号に従ってレーダ波を送信する送信アンテナ36とを備えている。なお、変調回路34では、アクティブターゲット装置10の変調回路15と同様に、中間周波数帯のサブキャリア信号をダウンリンクデータDDで変調した変調信号を生成するように構成されている。
【0071】
また、送受信部21は、レーダ波を反射した物体SB,NBからの反射波や特定物体SBに搭載されたアクティブターゲット装置10からの折返波を受信する複数(本実施形態ではL個;Lは正整数)の受信アンテナ37と、受信アンテナ37毎に設けられた受信処理回路40とを備えている。
【0072】
そして、受信処理回路40は、受信アンテナ37からの受信信号を増幅する受信アンプ41と、受信アンプ41にて増幅された受信信号に、電力分配器33から供給されるローカル信号を混合するミキサ42と、ミキサ42の出力から不要な信号成分を除去してビート信号を抽出するフィルタ43と、フィルタ43で抽出されたビート信号をサンプリングするAD変換器44とを備えている。
【0073】
以下では、送信アンテナ36から受信アンテナ37に至る伝搬経路をチャネルと呼ぶものとする。但し、送信アンテナ36が一つである本実施形態では、受信アンテナ37のそれぞれが一つのチャネルCH1 〜CHL に対応する。
【0074】
このように構成された送受信部21は、制御回路25から一定間隔(例えば、100ms)で起動指令が入力されると、電源が投入されてレーダ波の送信を開始する。そして、通信区間では固定周波数のレーダ波を送信した後、レーダ区間では一定の掃引速度で周波数が変化するレーダ波を送信する。但し、通信区間のうち前半のダウンリンク区間では、変調信号によって変調されたレーダ波を送信する。
【0075】
ここで図5は、送受信部21で送受信されるレーダ波(送信波,反射波,折返波)や生成されるビート信号の周波数の関係を示す説明図である。
図5に示すように、送信波の周波数をFtとすると、物体SB,NBからの反射波は、相対速度と距離に対応する遅延時間(レーダ区間のみ)とに応じた周波数シフト量ΔFbだけFtとは異なった周波数Frとなる。
【0076】
一方、特定物体SBに搭載されたアクティブターゲット装置10からの折返波は、反射波を周波数がFifの変調信号SMで変調したものであるため、その周波数はFr±Fifとなる。
【0077】
これら反射波(周波数Fr)及び折返波(周波数Fr±Fif)に基づく受信信号とローカル信号(周波数Ft)とをミキサ42で混合してビート信号を生成すると、反射波に基づく信号成分は周波数ΔFbに変換され、また、折返波に基づく信号成分は周波数Fif±ΔFbに変換される。
【0078】
但し、変調信号SMの周波数Fifは、ΔFbの信号成分と、Fif±ΔFbの信号成分とが重なり合ってしまうことがないように、周波数ΔFbが取り得る最大値の2倍より十分に大きな周波数に設定される。以下では、周波数ΔFbの信号成分が現れる周波数帯をベースバンド(BB)帯、周波数Fif±ΔFbの信号成分が現れる周波数帯を中間周波数(IF)帯と呼ぶ。
【0079】
これらの関係に基づき、フィルタ43及びAD変換器44は、周波数ΔFb,Fif±ΔFbの信号成分を抽出するように設定されている。即ち、フィルタ43は、周波数Fif±ΔFbが取り得る上限値を遮断周波数とするローパスフィルタとして構成され、またAD変換器44は、周波数Fif±ΔFbが取り得る上限値の2倍以上のサンプリング周波数で、ビート信号をサンプリングするように設定されている。
<信号処理部の構成>
次に、信号処理部23は、アップリンク区間の間に各受信処理回路40から出力される各チャネルCH1〜CHLのビート信号のサンプリングデータ(以下単に「サンプリングデータ」という)を記憶する記憶回路51と、レーダ区間の間に各受信処理回路40から出力される各チャネルCH1〜CHLのサンプリングデータをFFT処理した結果に基づき、レーダ波を反射した物体SB,NBの位置や速度に関する情報を求めると共に、特定物体SBに搭載されたアクティブターゲット装置10を経由して各チャネルCH1〜CHLで受信される信号の伝搬特性を表すチャネル行列Hを生成するレーダ処理回路52とを備えている。
【0080】
また、信号処理部23は、レーダ処理回路52で生成されたチャネル行列Hに基づいて、各チャネルのビート信号(サンプリングデータ)から、折返波毎の信号、即ち各アクティブターゲット装置10が送信した信号を個々に分離,抽出するためのウェイト行列Wを生成するウェイト計算回路53と、ウェイト計算回路53で生成されたウェイト行列Wを、記憶回路51に記憶されているサンプリングデータに作用させて、各アクティブターゲット装置10が送信した信号に分離する重み付け回路54と、重み付け回路54により分離された信号をそれぞれ復調することで、各アクティブターゲット装置10からのアップリンクデータUDを抽出する復調回路55とを備えている。
【0081】
なお、信号処理部23を構成する各回路51〜55の動作は、ハードウェアによって実現してもよいし、CPUが実行する処理によって実現してもよい。
<レーダ処理回路での処理>
ここで、レーダ波が送受信される毎にレーダ区間で取得されるサンプリングデータに基づいて、信号処理部23のレーダ処理回路52が実行するBB帯ビート信号処理及びIF帯ビート信号処理を、フローチャートに沿って説明する。
【0082】
このうち、BB帯ビート信号処理では、図6に示すように、まず、S110にて、サンプリングデータに対するフィルタリングを行うことにより、BB帯のビート信号、即ち、反射波に基づくビート信号(周波数ΔFb)を抽出する。なお、この処理は、チャネルCH1 〜CHL 毎に実行する。
【0083】
続くS120では、S110で抽出された信号に基づいて、物体NB,SBの位置及び速度に関する情報を求める電子スキャンFMCWレーダ処理を実行してS130に進む。
S130では、S120での検出結果、及び同ステップにおける過去の検出結果や外部から得られる周囲状況についての情報等に基づいて、マルチパスにより現れる虚像を識別する。なお、虚像は、例えば図24に示すように、物体NB,SBからの反射波が、更に防音壁などで反射することによって生じる。
【0084】
続くS140では、S120での検出結果からS130で識別された虚像に対応する検出結果を除いたものを、物体NB,SBに関する検出情報として制御回路25に出力して本処理を終了する。
【0085】
一方、IF帯ビート信号処理では、図7に示すように、まず、S210にて、サンプリングデータに対するフィルタリングを行うことにより、IF帯のビート信号、即ち、折返波に基づくビート信号(周波数Fif−ΔFb)を抽出し、続くS220では、S210で抽出した信号に、ビート信号から再生したサブキャリア信号を乗算することにより、BB帯の信号にダウンコンバートする。なお、これらS210,S220の処理は、チャネルCH1 〜CHL 毎に実行する。
【0086】
以下S230〜S240は、BB帯ビート信号処理のS120〜S130と同様の処理を実行してS250に進む。
S250では、S230,S240での検出結果,識別結果に基づいて、折返波の送信元である特定物体SBのアクティブターゲット装置10を経由して送信アンテナ36から受信アンテナ37に到達するレーダ波の伝搬特性を表すチャネル行列Hを算出するチャネル行列算出処理を実行する。
【0087】
続くS260では、S250にて算出されたチャネル行列Hをウェイト計算回路53に出力して本処理を終了する。
なお、ここでは、BB帯ビート信号処理での処理結果を制御回路25に出力しているが、IF帯ビート信号処理を実行した後に、BB帯ビート信号処理を実行するように構成し、IF帯ビート信号処理で求められる特定物体SBの検出情報と、BB帯ビート信号処理で求められる通常物体NBの検出情報とを制御回路25に出力するように構成し、BB帯ビート信号処理では、IF帯ビート信号処理で検出された特定物体SBに関する処理を省略するようにしてもよい。
<電子スキャンFMCWレーダ処理の詳細>
ここで、先のS120,S230にて実行する電子スキャンFMCWレーダ処理の詳細を、図8に示すフローチャートに沿って説明する。
【0088】
図8に示すように、本処理では、まずS310にて、後述のS320〜S340の処理が未だ実施されていないチャネルCHi (i=1,2,…L)を一つ選択し、続くS320では、その選択したチャネルCHi のサンプリングデータに対して、変調区間毎に、高速フーリエ変換(FFT)処理を実施することにより距離周波数スペクトルを算出し、S330に進む。
【0089】
ここで、図9〜11は、FMCWレーダの原理、及び各処理で得られる結果を模式的に表した説明図である。但し、これらの図は、図12に示すように、角度θ1の方位に相対速度が0の物体#1が存在し、角度θ2の方位に相対速度vで接近する物体#2が存在する場合の例を示している。
【0090】
図9(a)に示すように、三角波状に周波数掃引されたレーダ波は、レーダ波を反射した物体までの距離に応じて、その距離をレーダ波が往復するのに要する時間だけ遅延(グラフ中右方向に移動)すると共に、レーダ波を反射した物体との相対速度に応じて周波数がドップラシフト(グラフ中上下方向に移動)する。
【0091】
この遅延,シフトしたレーダ波の受信信号と、送信信号とを混合して生成されるビート信号は、図9(b)に示すように、遅延(距離)及びシフト量(相対速度)に応じた一定の周波数(ビート周波数)を有することになり、しかも相対速度がある時には、上昇区間と下降区間とでは異なった値となる。このため、ビート信号のサンプリングデータをFFT処理することによって得られる距離周波数スペクトルは、図10(a)(b)に示すように、レーダ波を反射した物体の数だけピークを有したものとなり、しかも、相対速度が非零であれば、同じ物体に基づくピークであっても、上昇変調区間と下降変調区間とで現れる周波数(ビート周波数)が異なったものとなる。
【0092】
S330では、S320で求めた距離周波数スペクトルをピークサーチすることにより、各変調区間毎に、ピークの周波数(以下「ビート周波数」ともいう)ΔFbを特定すると共に、その信号成分(複素値)を抽出して、S340に進む。
【0093】
なお、ピークサーチで検出されたピークは、それぞれ信号帯雑音電力比(SNR)が求められ、そのSNRが予め設定された下限しきい値より小さいピークの信号成分は、無効であるものとして破棄する。また、過去の検出結果からピークが現れる周波数を推定することにより、ピークの重複を判断し、重複があると判断されたピークの信号成分も破棄する。
【0094】
但し、破棄する代わりに、そのピークの前回検出値で代替してもよい。また、重複ピークの場合、重複するピーク(信号成分)間の電力差が大きい(例えば、10dB以上)場合には、重複の影響の小さい、電力が大きい方のピークを残して、他方のピークを破棄又は前回の検出値で代替してもよい。
【0095】
続くS340では、抽出された信号成分に、各チャネルが異なる受信アンテナ37,受信処理回路40,伝送線路等を用いることによるチャネル間の特性のばらつきを補正するための補正係数を乗じることで、信号成分の振幅や位相を補正して、S350に進む。
【0096】
S350では、S320〜S340の処理を未だ実施していないチャネル(未処理チャネル)があるか否かを判断し、未処理チャネルがあれば、S310に戻って、その未処理チャネルに対して同様の処理を繰り返し、未処理チャネルがなければS360に進む。
【0097】
S360では、先のS330で検出されたピーク(但し、変調区間毎に別々に処理する)のうち、後述のS370〜S380の処理が未だ実施されていないピークを一つ選択し、続くS370では、その選択したピークの信号成分(複素値)を、全チャネルCH1 〜CHL から抽出し、その抽出した信号成分を用いて角度スペクトルを算出する。
【0098】
なお、角度スペクトルの算出には、例えば、Beamformer法やMUSIC(Multiple signal classification)法など周知の手法を用いることができ、その算出結果は、図10(c)(d)に示すようなものとなる。
【0099】
続くS380では、算出された角度スペクトルをピークサーチすることにより、先のS360にて選択したピークに対応する物体が存在する方位角度(反射波,折返波の到来方向)を検出して、S390に進む。
【0100】
S390では、S370〜S380の処理を未だ実施していないピーク(未処理ピーク)があるか否かを判断し、未処理ピークがあれば、S360に戻って、その未処理ピークに対して同様の処理を繰り返し、未処理ピークがなければ、S400に進む。
【0101】
S400では、S310〜S390での処理により、変調区間毎にそれぞれ求められた各ピークの情報(周波数、強度(反射電力)、方位角度)に基づいて、両変調区間の間で同じ物体に基づくピークを、ペアとして関連づけるペアマッチを行う。
【0102】
なお、変調区間毎に検出された各ピークは、図11(a)(b)に示すように、それぞれ、周波数,強度(反射電力),方位角度を3軸とする三次元空間上の座標として表すことができる。そして、両変調区間の間で、強度(反射電力)及び方位角度の値が近いピーク同士をペアとして関連づける。この関連づけの際には、過去の検出結果や当該装置20の移動速度等から推定されるピークの動きを判断材料の一つとして用いてもよい。
【0103】
続くS410では、ペアマッチされた各ピークのビート周波数に基づいて、物体の距離Kと相対速度Vを、以下の(1)(2)式に従って算出して、本処理を終了する。
但し、cは光速、Tは変調時間、ΔFは送信波の周波数変調幅、F0は送信波の中心周波数、Fuは上昇変調区間のビート周波数、Fdは下降変調区間のビート周波数を示す(図9参照)。
【0104】
K=c×T×(Fu+Fd)/(4×ΔF) (1)
V=c×(Fu−Fd)/(4×F0) (2)
つまり、ペアマッチされたピークから特定される物体について、S420で求めた距離K,及びS380で求めた角度θが相対位置を表す位置情報であり、S420で求めた相対速度Vが速度情報となる。
<チャネル行列算出処理の詳細>
次に、先のS250にて実行するチャネル行列算出処理の詳細を、図13に示すフローチャートに沿って説明する。但し、IF帯ビート信号処理のS230にて検出されたピークペア(ひいては、ピークペアに対応するアクティブターゲット装置10)には、識別番号j(j=1,2,…N)が与えられているものとする。
【0105】
図13に示すように、本処理では、まず、S510にて、識別番号jを初期化(j←1)して、S520に進む。
S520では、識別番号jで特定されるピークペアについて、上昇変調区間に全チャネルCH1 〜CHL から得られたビート周波数の信号成分を要素とする受信信号ベクトルXuj((3)式参照)、及び下降変調区間に全チャネルCH1 〜CHL から得られたピーク周波数の信号成分を要素とする受信信号ベクトルXdj((4)式参照)を生成し、S530に進む。但し、xuiは、上昇変調区間でチャネルCHiから得られたビート周波数の信号成分xdiは、下降変調区間でチャネルCHiから得られたビート周波数の信号成分を表す。
【0106】
uj=[xu1j,xu2j,…xujj,…xuLj] (3)
dj=[xd1j,xd2j,…xdjj,…xdLj] (4)
S530では、受信信号ベクトルXuj,Xdjを平均化することでチャネルベクトルhj を求めて((5)式参照)、S540に進む。
【0107】
j =(Xuj+Xdj)/2 (5)
但し、受信信号ベクトルを平均化する際には、上昇変調区間と下降変調区間との間で、受信信号ベクトルを構成する各信号成分の位相を、(6)(7)式に従って、基準となるチャネル(ここではCH1 )に合わせておく必要がある。
【0108】
φ1j=arg(xu1j)−arg(xd1j) (6)
dj←Xdj×exp(jφ1j) (7)
また、いずれか一方の受信信号ベクトルXuj,Xdjにしか存在しない信号成分については、平均を求めるのではなく、その存在する側の要素の値を、そのままチャネルベクトルの要素の値として使用する。又は、その信号成分を破棄するようにしてもよい。
【0109】
S540では、識別番号jを更新し(j←j+1)、続くS550では、更新した識別番号jが、検出されたピークペア数N以下であるか否かを判断する。そして、識別番号jがピークペア数N以下であれば、S520に戻って、S520〜S540の処理を繰り返し、識別番号jがピークペア数Nより大きければ、S560に進む。
【0110】
S560では、S530にてピークペア毎に算出されたチャネルベクトルhj を、(8)式に示すように、順番に配列してなるチャネル行列Hを生成して、本処理を終了する。
【0111】
【数1】

つまり、各アクティブターゲット装置10に起因して距離周波数スペクトル上で検出される各ピークのビート周波数が互いに重複していない場合、これら各ピークの信号成分(複素値)は、通信統合レーダ装置20の送信アンテナ36からアクティブターゲット装置10を介して通信統合レーダ装置20の受信アンテナ37に至る伝搬経路(図14参照)のチャネル応答hijと等しくなる。従って、これら全てのチャネル応答をL×N要素の行列形式で表したものがチャネル行列Hとなる。
<ウェイト計算回路での処理>
ウェイト計算回路53は、レーダ処理回路52にて算出されたチャネル行列Hから、周知の空間分割多重方式での手法を用いて(9)に示すようなウェイト行列Wを算出する。
【0112】
【数2】

ただし、wj (j=1,2,‥,N)は、各チャネルの受信信号データから、識別番号jで特定されるピークペアに対応したアクティブターゲット装置10からの信号を抽出するためのウェイトベクトルである。
【0113】
なお、ウェイト行列の解法として、ZF(Zero−forcing)法を用いる場合には、(10)式により、MMSE(Minimum mean square error)法を用いる場合には(11)式によりウェイト行列Wを算出する。
【0114】
【数3】

ただし、*は複素共役、Tは転置、σ2 は雑音電力、Psは送信波の平均電力、IL はL次単位行列を示す。
【0115】
ここで、図15に、算出したウェイト行列からアンテナ指向性を求めた計算例を示す。
ただし、図中の矢印(#1〜#3)はアクティブターゲット装置10からの折返波の到来角度を示している。
【0116】
図15(a)は、(8)式(即ちZF法)により導出されたウェイト行列を構成する各ウェイトベクトルから求めたアンテナ指向性を示すものである。
各ウェイトベクトルのアンテナ指向性は、それぞれ抽出すべきアクティブターゲット装置10が存在する方位角度に対してビームが向けられ、その他のアクティブターゲット装置10が存在する方位角度でヌルとなるように設定されていることがわかる。
【0117】
図15(b)は、(9)式(即ちMMSE法)により導出されたウェイト行列を構成する各ウェイトベクトルから求めたアンテナ指向性を示すものである。
雑音電力を考慮するMMSE法では、ZF法に比べて各アクティブターゲット装置10からの折返波の到来角度へより強いビームが向けられるが、雑音電力の抑圧が優先されることにより、他の装置と比べて伝送距離が大きく受信電力の小さい折返波の到来角度に対するヌルが明確に形成されない場合があることがわかる(#1方向からの信号を検出するウェイトベクトルから求めたアンテナ指向性で、#3方向がヌルになっていない)。
<重み付け回路での処理>
次に、重み付け回路54は、図Aに示すように、まず、S910にて、通信区間の間に記憶回路51に記憶された各チャネルCHiのサンプリングデータを順次読み出して、これに対するフィルタリングを行うことにより、IF帯のビート信号を抽出し、続くS920では、S910で抽出した信号に、ビート信号から再生したサブキャリア信号と、位相が90度ずれたサブキャリア信号とをそれぞれ乗算することにより、BB帯の直交した2つの信号にダウンコンバート(直交検波)する。
続くS930では、(12)式に示すように、S920で直交検波した複素数の受信信号データri (n)(nはサンプリング番号)をベクトル化した受信信号ベクトルr(n)((13)式参照)をウェイト行列Wと乗算させることにより、抽出信号ベクトルy(n)((14)式参照)を生成して、S940に進む。
【0118】
【数4】

但し、yj (n)は、識別番号jで特定されるアクティブターゲット装置10(以下単に、「アクティブターゲット装置ATj 」とも記述する)についての抽出信号データである。
【0119】
即ち、個別の抽出信号データyj (n)は、受信信号ベクトルr(n)とウェイトベクトルWj に基づいて(15)式で求められるため、これを全ての抽出信号データy1 (n)〜yN (n)についてまとめたものが(12)式となる。
【0120】
【数5】

S940では、S930にて算出された抽出信号ベクトルy(n)、即ち、抽出信号データy1 (n)〜yN (n)を復調回路55に出力して、本処理を終了する。
<復調回路での処理>
次に、復調回路55は、各アクティブターゲット装置AT1 〜ATN からの折返波に対応する抽出信号データy1 (n)〜yN (n)をそれぞれ復調することにより、各アクティブターゲット装置AT1 〜ATN のアップリンクデータUDを抽出する。
【0121】
ここで使用する復調方式は、アクティブターゲット装置10の変調回路15がアップリンクデータUDによってサブキャリア信号を変調する際の変調方式に対応したものであればよい。
<効果>
以上説明したように、通信統合レーダシステム1によれば、通信統合レーダ装置20は、周知のFMCWレーダの手法を用いて、アクティブターゲット装置10に起因する信号成分を個別に分離し、その分離された信号に基づいて、ウェイト行列Wの算出に必要なチャネル行列Hの生成を行っている。
【0122】
つまり、チャネル行列H(ひいてはウェイト行列W)の生成のために、特別なトレーニング信号の送受信を行う必要がないため、装置構成を簡易なものとすることができる。
また、通信統合レーダ装置20は、通信区間で取得したサンプリングデータを記憶する記憶回路51を備えており、重み付け回路54は、その記憶回路51から読み出した各チャネルCH1 〜CHL のサンプリングデータ(受信信号ベクトルr(n))を用いて、ウェイト行列Wとの乗算を実行するようにされている。
【0123】
このため、通信統合レーダ装置20によれば、レーダ区間で取得したサンプリングデータに基づいてウェイト行列Wが生成され、そのウェイト行列Wを用いて通信区間で取得したサンプリングデータを処理するにも関わらず、レーダ区間を通信区間の後に設定することができる。
【0124】
つまり、周期的に起動(電源オン)される送受信部21において、その動作(電源電圧)が不安定な起動直後の期間を通信区間とし、その後の動作の安定した期間をレーダ区間とすることができる。従って、チャネル行列H、ひいてはウェイト行列Wの生成を精度よく行うことができ、その結果、抽出信号データy1 (n)〜yN (n)の分離精度、ひいてはアクティブターゲット装置10(AT1 〜ATN )との通信の信頼性を向上させることができる。
【0125】
また、通信統合レーダ装置20では、チャネル行列Hを生成する際に、変調区間毎に生成される受信信号ベクトルXuj,Xdjを平均化することでチャネルベクトルhj を生成し、このようにして生成された全てのチャネルベクトルh1 〜hN を配列することでチャネル行列Hを生成している。このため、両変調区間で検出されるピークの数(即ち、受信信号ベクトルの数)が異なる場合でも、両変調区間での検出結果の平均値を用いたチャネル行列Hを問題なく生成することができる。
【0126】
即ち、変調区間毎にチャネル行列を生成してからその平均を求めようとした場合、両変調区間でピークの数が異なると、チャネル行列の大きさが互いに異なったものとなってしまうため、単純に平均を求めることができないのである。
【0127】
また、通信統合レーダシステム1によりば、通信統合レーダ装置20は、複数のアクティブターゲット装置10からの提供情報(アップリンクデータUD)とその位置や速度に関する情報とを同時に取得することができるため、例えば、安全運転支援のための路車間通信システムや車車間通信システムのように、不特定多数の端末の情報と位置を検出するシステムを簡易に構築することができる。
<変形例>
本実施形態では、S530にて生成されたチャネルベクトルhj をそのままチャネル行列Hの生成に使用しているが、(16)式を用いて算出されたチャネルベクトルhj (t)を使用してチャネル行列Hを生成するように構成してもよい。但し、hj (t)は今サイクルでチャネル行列Hの生成に使用するチャネルベクトル、hj (t−1)は1サイクル前のチャネル行列Hの生成に使用されたチャネルベクトル、hj'(t)は今サイクルのS530にて生成された現チャネルベクトル、α(0<α<1)は忘却係数である。
【0128】
j (t)=(1−α)・hj'(t)+α・hj (t−1) (16)
但し、チャネルベクトルhj'(t),hj (t−1)を平均化する際には、両チャネルベクトルの間で、チャネルベクトルを構成する各要素hijの位相を、(17)(18)式に従って、基準となるチャネル(ここではCH1 )に合わせておく必要がある。
【0129】
φ1j=arg(h1j'(t))−arg(h1j(t−1)) (17)
j(t−1)←hj(t−1)×exp(jφ1j) (18)
また、本実施形態では、ウェイト計算回路53は、ウェイト行列Wを生成する際に、レーダ処理回路52から供給されるチャネルベクトルhj をそのまま使用しているが、(19)式を用いて算出されたチャネル行列H(t)を使用するように構成してもよい。但し、H(t)は今サイクルでウェイト行列Wの生成に使用するチャネル行列、H(t−1)は1サイクル前のウェイト行列Wの生成に使用されたチャネル行列、H’(t)は今サイクルにレーダ処理回路52から供給された現チャネル行列、α(0<α<1)は忘却係数である。
【0130】
H(t)=(1−α)・H’(t)+α・H(t−1) (19)
但し、この場合も、両チャネル行列H’(t),H(t−1)の間で、両チャネル行列を構成する各チャネルベクトルの位相を、上述の(17)(18)式に従って、基準となるチャネル(ここではCH1 )に合わせておく必要がある。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0131】
本実施形態では、通信統合レーダ装置20の送受信部21及び信号処理部23の構成が、第1実施形態のものとは、一部異なるだけであるため、共通する部分には同一符号を付して説明を省略し、構成が異なる部分を中心に説明する。
<送受信部の構成>
図16に示すように、本実施形態では、通信統合レーダ装置20aの送受信部21aは、複数の受信アンテナ37に対して、受信アンプ41,ミキサ42,フィルタ43,AD変換器44からなる受信処理回路40が一つだけ設けられており、更に、複数の受信アンテナ37からいずれか一つを順次選択して、選択した受信アンテナ37の受信信号を、受信処理回路40に供給するスイッチ38を備えている。
【0132】
このように構成された送受信部21aでは、スイッチ38は、AD変換器44の動作に同期してスイッチング周波数Fsで切り替えられる。従って、反射波や折返波が各受信アンテナ37で受信されると、その受信信号は、受信処理回路40にて時分割で処理され、その結果、受信処理回路40からは、各チャネルのビート信号のサンプリングデータを時分割多重したものが出力されることになる。
【0133】
なお、ローパスフィルタとして構成されるフィルタ43の遮断周波数は、スイッチ38の切り替えによって周波数帯域幅がFs以上に広がった時分割多重ビート信号を歪みなくサンプリングすることができるように、Fs/2以上に設定する必要がある。
<信号処理部の構成>
信号処理部23aは、受信処理回路40から出力される時分割多重されたサンプリングデータを、チャネルCH1 〜CHL 毎のサンプリングデータに分離すると共に、時分割動作に基づくチャネル間のサンプリングタイミングのずれを補償して、各チャネルCH1 〜CHL でのサンプリングタイミングが同時であると見なせるようにサンプリングデータの位相を補正する分離補正回路56を備えており、この分離補正回路56の出力を、記憶回路51及びレーダ処理回路52に供給するように構成されている。
<効果>
以上説明したように、通信統合レーダ装置20aでは、複数の受信アンテナ37からの受信信号を一つの受信処理回路40で処理するようにされている。
【0134】
従って、通信統合レーダ装置20aによれば、送受信部21aの構成が大幅に削減されるだけでなく、ローカル信号の出力、ひいてはVCO31の出力を抑えることができるため、装置20aの小型化,低コスト化を図ることができる。
【0135】
更に、通信統合レーダ装置20aによれば、複数の受信処理回路40を用いる場合に生じる受信処理回路40間の特性のばらつきによる影響を除去することができるため、各チャネルCH1 〜CHL 間の伝搬特性を精度よく検出することができ、その結果、精度の良いウェイト行列Wの生成、ひいてはアクティブターゲット装置10との通信の信頼性を向上させることができる。
<変形例>
本実施形態では、送受信部21aが1つの送信アンテナ36と複数の受信アンテナ37とを備え、全ての受信アンテナ37が受信処理回路40を共用するように構成されているが、例えば、図17に示す送受信部21bのように、複数の送信アンテナ36と1つの受信アンテナ37とを備えた構成、あるいは図18に示すように、複数の送信アンテナ36と複数の受信アンテナ37とを備えた構成としてもよい。
【0136】
そして、前者の場合、送受信部21bに、複数の送信アンテナ36のうちの一つを順次選択し、選択した送信アンテナ36に送信アンプ35の出力を供給するスイッチ39を設け、送信用の構成31〜35を各送信アンテナ36が共用するように構成すればよい。
【0137】
また、後者の場合、送受信部21cにスイッチ38,39を設け、複数の送信アンテナ36が送信用の構成31〜35を共用し、且つ複数の受信アンテナ37が受信処理回路40を共用するように構成すればよい。
【0138】
特に、送信アンテナ36及び受信アンテナ37のいずれも複数設けた送受信部21bでは、少ないアンテナ数で、より多くのチャネルを実現することができる。
例えば、9チャネルを実現する場合、送信アンテナ又は受信アンテナの一方が1個である場合は、他方が9個必要なため、合計10個ものアンテナが必要となるが、送信アンテナ及び受信アンテナをいずれも3個ずつ設ければ、6個のアンテナで同じ9チャネルを実現することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0139】
本実施形態では、通信統合レーダ装置20の送受信部21における受信処理回路40の構成、及び信号処理部23におけるレーダ処理回路52での処理が、第1実施形態のものとは、一部異なるだけであるため、共通する部分には同一符号を付して説明を省略し、構成が異なる部分を中心に説明する。
<送受信部の構成>
図19は、本実施形態における、受信処理回路40aの構成を示すブロック図である。
【0140】
図19に示すように、受信処理回路40aは、受信アンプ41,ミキサ42,フィルタ43,AD変換器44を備え、更に、ミキサ42の出力から不要な信号成分を除去してIF帯の信号成分を抽出するフィルタ61と、発振周波数の制御が可能な電圧制御発振器(VCO)63と、フィルタ61の出力に基づいて、アクティブターゲット装置10で重畳されたサブキャリア信号と同じ周波数のローカル信号をVCO63が生成するようにVCO63を制御する搬送波再生回路62と、フィルタ61の出力にVCO63が生成するローカル信号を混合することにより、IF帯のビート信号をBB帯にダウンコンバートするミキサ64と、ミキサ64の出力から不要な信号成分を除去してBB帯のビート信号を抽出するフィルタ65と、フィルタ65で抽出されたビート信号をサンプリングするAD変換器66と、VCO63が生成するローカル信号の位相を90°シフトさせる遅延回路67と、フィルタ61の出力に遅延回路67の出力を混合することにより、IF帯のビート信号をBB帯にダウンコンバートするミキサ68と、ミキサ68の出力から不要な信号成分を除去してBB帯のビート信号を抽出するフィルタ69と、フィルタ69で抽出されたビート信号(但し、フィルタ65の出力とは位相が90°異なる)をサンプリングするAD変換器70とを備えている。
【0141】
なお、フィルタ43,65,69は、周波数ΔFbが取り得る上限値を遮断周波数とするローパスフィルタとして構成され、また、AD変換器44,66,70は、周波数ΔFbが取り得る上限値の2倍以上のサンプリング周波数で、ビート信号をサンプリングするように構成されている。
【0142】
つまり、フィルタ43,AD変換器44は、反射波に基づくビート信号を処理し、追加された構成61〜70では、折返波に基づくビート信号をBB帯にダウンコンバートして処理し、しかも互いに直交した二つの信号成分をそれぞれ検波して二つの信号を生成するようにされている。
<レーダ処理回路の処理>
レーダ処理回路52は、BB帯ビート信号処理ではS110を省略し、IF帯ビート信号処理ではS210〜S220を省略して処理を実行するように構成されている。
<重み付け回路の処理>
重み付け回路54は、S910〜S920を省略して処理を実行するように構成されている。
<効果>
以上説明したように、受信処理回路40aでは、反射波に基づくビート信号と、折返波に基づくビート信号を別々にサンプリングし、しかも、折返波に基づくビート信号は、BB帯にダウンコンバートしてからサンプリングするようにされている。
【0143】
従って、IF帯に対応したサンプリング周波数の高いAD変換器を用いる必要がないため、レーダ処理回路52での処理負荷や記憶回路51でサンプリングデータを記憶するために確保すべき容量を大幅に削減することができる。
【0144】
なお、受信処理回路40aは、第2実施形態及びその変形例の構成に適用してもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0145】
本実施形態では、レーダ処理回路52が実行するチャネル行列算出処理の内容が、第1実施形態のものとは異なるだけであるため、この相違する部分についてのみ詳述する。
図20に示すように、本実施形態におけるチャネル行列算出処理では、まず、S1510では、変調区間毎に区間別チャネル行列Hu,Hdを算出し、続くS1520では、S1510で算出した区間別チャネル行列Hu,Hdを平均化することでチャネル行列Hを算出して、本処理を終了する。
【0146】
なお、区間別チャネル行列Hu,Hdを平均化する際には、両チャネル行列Hu,Hdの間で、両チャネル行列を構成する各チャネルベクトルの位相を、上述の(17)(18)式に示した手法と同様の手法によって、基準となるチャネルに合わせておく必要がある。
【0147】
このように構成された本実施形態の通信統合レーダ装置20によれば、チャネル行列Hの精度を向上させることができる。
[第5実施形態]
次に第5実施形態について説明する。
【0148】
本実施形態では、送受信部21の駆動信号生成回路32が生成する駆動信号、及びレーダ処理回路52が実行するチャネル行列算出処理の一部が、第1実施形態のものとは異なるだけであるため、この相違する部分についてのみ詳述する。
【0149】
本実施形態において、駆動信号生成回路32は、図21に示すように、レーダ区間にて、上昇変調区間及び下降変調区間からなる一連の変調(以下「第1単位区間」「第2単位区間」という)を2回行うような駆動信号を生成する。しかも、両単位区間で、変調の傾き(周波数の掃引速度)が異なるように設定されており、ここでは、第1単位区間より第2単位区間の方が変調の傾きが小さくなるように設定されている。
【0150】
そして、チャネル行列算出処理では、S520,S530の処理が、第1実施形態とは異なっている。
即ち、S520では、変調区間毎の受信信号ベクトルを、単位区間毎に算出し、続くS530では、S520にて算出された同一チャネルに関する4個の受信信号ベクトルの平均を求めることでチャネルベクトルhj を算出する。
【0151】
つまり、この場合のチャネルベクトルhj は(20)式により算出される。但し、第k単位区間に識別番号jで特定されるピークペアについて得られる上昇変調区間での受信信号ベクトルをXuj(k)、下降変調区間での受信信号ベクトルをXdj(k)、単位区間の数をMとする。
【0152】
【数6】

つまり、第1単位区間と第2単位区間とで変調の傾きが異なっていることにより、図22(a)(b)に示すように、一方の単位区間の距離周波数スペクトル上でピークの重複が生じたとしても、他方の単位区間では、図2(c)(d)に示すように、それらのピークは異なった周波数に現れるため、これらを平均することにより重複の影響が軽減されることになる。
【0153】
従って、本実施形態によれば、チャネル行列Hの精度や信頼性をより向上させることができる。
なお、ピークが重複していると判断された場合には、その重複したピークに対応する受信信号ベクトルを破棄して、チャネルベクトルhj を算出するように構成してもよいし、その重複したピークのみ平均化に使用されないように破棄してもよい。
【0154】
これにより、ピークが重複する場合でも重複の影響を回避して処理を実行することができる。
[第6実施形態]
次に第6実施形態について説明する。
【0155】
本実施形態では、レーダ処理回路52が実行するチャネル行列算出処理の内容の一部が、第1実施形態のものとは異なるだけであるため、この相違する部分についてのみ詳述する。 図23に示すように、本実施形態におけるチャネル行列算出処理では、S510〜S520は、第1実施形態と同様に、識別番号jを初期化(j←1)し(S510)、識別番号jで特定されるピークペアについて、変調区間毎の受信信号ベクトルXuj,Xdjを生成する(S520)。
【0156】
続くS522では、識別番号jで特定されるピークぺアと対になる虚像(図24参照)のピークペアが存在するか否かを判断し、虚像のピークペアが存在しなければ、S530にて、第1実施形態の場合と同様に、受信信号ベクトルXuj,Xdjを平均することでチャネルベクトルhj を求めて、S540に進む。
【0157】
一方、虚像のピークペアが存在すれば、S524にて、その虚像の受信信号ベクトルXRuj,XRdjを抽出し、続くS526では、先のS520及びS524にて抽出された四つの受信信号ベクトルXuj,Xdj,XRuj,XRdjを、(21)式に従って平均することでチャネルベクトルhj を算出し、S540に進む。
【0158】
hj=(Xuj+Xdj+XRuj+XRdj)/4 (21)
以下S540〜S560は、第1実施形態の場合と同様である。
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、虚像の情報も利用して、チャネルベクトルhj を求めているため、このチャネルベクトルhj を用いて生成されるチャネル行列Hやウェイト行列Wの精度を向上させることができる。
[第7実施形態]
次に第7実施形態について説明する。
【0159】
本実施形態では、ウェイト計算回路53及び重み付け回路54での処理が第1実施形態の場合とは異なるため、この相違する部分を中心に説明する。
<ウェイト計算処理>
ウェイト計算回路53が実行するウェイト計算処理では、図25に示すように、S610にて、識別番号jを初期化(j←1)して、S620に進む。
【0160】
但し、本実施形態では、識別番号jは、受信電力の大きいピークペアから順番に付与され、即ち、識別番号1で特定されるアクティブターゲット装置AT1 からの受信電力が最も大きく、識別番号Nで特定されるアクティブターゲット装置ATN からの受信電力が最も小さくなるようにされている。
【0161】
S620では、チャネル行列HからウェイトベクトルWj を算出し、続くS630では、その算出したウェイトベクトルWj を重み付け回路54に出力して、S640に進む。
なお、ウェイトベクトルWj の算出は、第1実施形態にて説明した手法を用いて算出することができる。
【0162】
S640では、チャネル行列Hから識別番号jで特定されるピークペア(即ち、アクティブターゲット装置ATj )の応答を表す列を削除して、S650に進む。
S650では、識別番号jを更新し(j←j+1)、続くS660では、更新した識別番号jが、検出されたピークペア数N以下であるか否かを判断する。そして、識別番号jがピークペア数N以下であれば、S620に戻り、S640にて更新されたチャネル行列Hを用いてS620〜S650の処理を繰り返し、識別番号jがピークペア数Nより大きければ、本処理を終了する。
<重み付け処理>
重み付け回路54が実行する重み付け処理では、図26に示すように、S710にて、識別番号jを初期化(j←1)して、S720に進む。
【0163】
S720では、アップリンク区間に取得されたサンプリングデータからなる受信信号ベクトルr(n)を記憶回路51から順次読み出して、ウェイト計算回路53から供給されるウェイトベクトルWj と乗算することにより、識別番号jで特定されるアクティブターゲット装置ATjからの信号を表す抽出信号データyj を求め、続くS730では、その求めた抽出信号データyj を復調回路55に出力してS740に進む。
【0164】
S740では、受信信号ベクトルr(n)を、(22)式に従って更新し、これを記憶回路51に記憶して、S750に進む。
なお、y'j(n)は、復調回路55にて復調されたアップリンクデータUDから逆算された抽出信号データである。
【0165】
r(n)←r(n)−hj×y’j(n) (22)
つまり、アクティブターゲット装置ATj の信号成分を受信信号ベクトルr(n)から除去したものが、更新後の受信信号ベクトルr(n)となる。
【0166】
S750では、識別番号jを更新し(j←j+1)、続くS760では、更新した識別番号jが、検出されたピークペア数N以下であるか否かを判断する。そして、識別番号jがピークペア数N以下であれば、S720に戻り、S740にて更新された受信信号ベクトルr(n)を用いてS720〜S750の処理を繰り返し、識別番号jがピークペア数Nより大きければ、本処理を終了する。
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、抽出信号データyj の分離抽出を受信電力の大きいものから順次実行し、しかも、分離抽出された抽出信号データyj の信号成分を、その都度、受信信号ベクトルr(n)から除去して、抽出信号データyj の分離抽出を繰り返す、いわゆる、順序付け逐次復号(OSD:Ordered successive detection)を行っている。
【0167】
従って、本実施形態によれば、受信電力が小さく通信品質が低いアクティブターゲット装置10の受信信号に対するダイバーシチ利得を得ることができるため通信品質を向上させることができる。
【0168】
なお、本実施形態では、ピークペアの受信電力が大きいものから順に分離抽出を行っているが、分離抽出の順番はこれに限るものではなく、任意の順番で行ってもよい。
また、アップリンクデータUDが誤り訂正符号で符号化されている場合、アップリンクデータUDの検出結果に対して誤り訂正復号した後に再符号化および再変調して受信データの信号成分y'j(n)を生成してもよい。これにより、受信信号ベクトルr(n)からの分離抽出済み信号成分の除去精度を向上させることができ、ひいてはアクティブターゲット装置AT1 〜ATN との通信品質をより向上させることができる。
[第8実施形態]
次に、第8実施形態について説明する。
【0169】
本実施形態では、レーダ処理回路52が実行するIF帯ビート信号処理、及びウェイト計算回路53が実行する処理の一部が第1実施形態とは異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
<IF帯ビート信号処理>
図27に示すように、本実施形態におけるIFビート信号処理では、S210〜S250は、第1実施形態の場合と同様であり、続くS255にて、チャネル相関行列算出処理を実行し、更に、S260では、先のS250にて算出されたチャネル行列Hと先のS255にて算出されたチャネル相関行列H*Tとを、ウェイト計算回路53に出力して、本処理を終了する。
【0170】
但し、S230の電子スキャンFMCWレーダ処理においてS370の角度スペクトル算出処理では、(23)式に示すような相関行列Rj を使用して角度スペクトルを算出するMUSIC等の手法が用いられているものとする。但し、Rj は、識別番号jで特定されるアクティブターゲット装置ATj に対応するビート周波数の相関行列であり、xijは、アクティブターゲット装置ATj からの信号に対するチャネルCHi のチャネル応答、E[]は期待値、添字のHは複素共役転置、添字の*は複素共役を表す。
【0171】
【数7】

なお、相関行列Ruj、Rdjの期待値計算は、(24)式を用いた過去の相関行列との平均により実現することができる。但し、相関行列Ruj、Rdjのいずれも、単にRで表すものとする。そして、R(t)は今サイクルでチャネル相関行列H*Tの生成に使用する相関行列、R(t−1)は1サイクル前のチャネル相関行列H*Tの生成に使用された相関行列、R'(t)は今サイクルで角度スペクトル生成の際に生成された現相関行列、α(0<α<1)は忘却係数である。
【0172】
R(t)=(1−α)R’(t)+αR(t−1) (24)
<チャネル相関行列算出処理の詳細>
次に、S255で実行するチャネル相関行列算出処理の詳細を、図28に示すフローチャートに沿って説明する。
【0173】
図28に示すように、本処理では、まず、S810にて、識別番号jを初期化(j←1)して、S820に進む。
S820では、識別番号jで特定されるピークペアについて、各変調区間毎に、S370の角度スペクトル算出処理で求められた相関行列(以下「区間相関行列」という)Ruj,Rdjを抽出し、続くS830では、区間相関行列Ruj,Rdjを平均することで相関行列Rj を求めて((25)式参照)、S840に進む。
【0174】
j =(Ruj+Rdj)/2 (25)
S840では、識別番号jを更新し(j←j+1)、続くS850では、更新した識別番号jが、検出ターゲット数N以下であるか否かを判断する。そして、識別番号jが検出ターゲット数N以下であれば、S820に戻って、S820〜S840の処理を繰り返し、識別番号jが検出ターゲット数Nより大きければ、S860に進む。
【0175】
S860では、算出された相関行列R1 〜RN に基づき、(26)式によってチャネル相関行列H*Tを算出して本処理を終了する。
【0176】
【数8】

なお、ここでは相関行列Rj を転置してから加算しているが、相関行列Rj を転置せずに加算した後、転置しても同じ結果が得られる。
<ウェイト計算回路での処理>
ウェイト計算回路53では、第1実施形態と同様に、(11)式を用いてウェイト行列Wを算出する。
【0177】
但し、(11)式に現れるチャネル相関行列H*Tについては、レーダ処理回路52にて算出された値を用いて計算を行う。
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、角度スペクトルの算出に用いた相関行列Rからチャネル相関行列H*Tを求め、これをウェイト行列Wの算出に使用している。
【0178】
従って、ウェイト行列Wを生成する際の処理負荷、ひいては、信号処理部23全体で見た場合の処理負荷を軽減することができる。
[他の実施形態]
上記実施形態では、通信統合レーダ装置20において、発振器31は搬送波周波数帯の信号を発生するように構成されているが、送信アンプ35と送信アンテナ36との間に入力信号の周波数をP倍して出力する逓倍器を追加し、発振器31は搬送波周波数帯のP分の1の周波数帯の信号を発生するように構成してもよい。これにより、発振器31,電力分配器33,送信アンプ35を、使用周波数の低いものを用いて構成することができるため、装置コストを抑えることができる。
【0179】
上記実施形態では、アクティブターゲット装置10の受信アンテナ11はスイッチ12に接続されているが、例えば、受信アンテナ11とスイッチ12の間に受信アンプを追加してもよい。これにより、復調回路13及び変調増幅器16への入力電力が大きくなり、通信品質を高めることができる。
【0180】
上記実施形態では、アクティブターゲット装置10においてスイッチ12が用いられているが、このスイッチ12の代わりに、制御回路14からの制御が不要な分配器を用いてもよい。これにより、装置コストを抑えることができる。
【0181】
上記実施形態では、通信区間がレーダ区間の前に設定されているが、通信区間のうち、ダウンリンク区間をレーダ区間の前に設定し、アップリンク区間をレーダ区間の後に設定してもよい。これにより、レーダ区間でのビート信号によりウェイト行列を算出した後に、アップリンクデータが重畳された信号を受信することになるため、アップリンク区間にサンプリングしたビート信号を記憶する必要がなく、記憶回路51の容量を削減することができる。
【0182】
上記実施形態では、通信区間のアップリンク区間でアップリンクデータUDを通信するようにされているが、例えば、アップリンクの伝送速度が距離周波数スペクトル上で分離できる程度に小さい場合には、レーダ区間の一部又は全部をアップリンク区間に設定してもよい。この場合、レーダ波の送信時間が短くなるため、他の無線局との干渉を低減することができる。
【0183】
上記実施形態では、通信区間において、通信統合レーダ装置20の変調回路34はダウンリンクデータDDで変調したサブキャリア信号を変調信号としているが、例えば、ベースバンドのままのダウンリンクデータDDを変調信号とするように構成してもよい。
【0184】
この場合、通信統合レーダ装置20の変調回路34及びアクティブターゲット装置10の復調回路13の構成を簡易なものとすることができ、装置コストを抑えることができる。
【0185】
上記実施形態では、IF帯のビート信号をAD変換器44で通常のサンプリングを実行し、受信信号から再生されたサブキャリア信号を乗算することによりベースバンドにダウンコンバートしている(S220)が、例えば、AD変換器44でアンダーサンプリングすることによりBB帯に近い周波数Fif’へダウンコンバートした上で、受信信号から再生されたサブキャリア信号を乗算することによりベースバントにダウンコンバートしてもよい。
【0186】
この場合、AD変換器44のサンプリング周波数を低くできると共に、サブキャリア信号の再生および乗算にかかる計算負荷を低減することができる。
なお、アンダーサンプリングする場合のAD変換器44のサンプリング周波数Fsは、以下に示す条件式(27)〜(30)を満たす必要がある。但し、BWはIF帯のビート信号の周波数帯域幅、ΔFbmaxは反射波に基づくBB帯のビート信号の最大周波数を示す。また、(29)は2Fif/Fsの整数部分が偶数の場合、(30)は2Fif/Fsの整数部分が奇数の場合である。
【0187】
Fs/2 > Fif’+BW/2 (27)
ΔFbmax < Fif’−BW/2 (28)
Fif’=rem(Fif,Fs) (29)
Fif’=Fs−rem(Fif,Fs) (30)
上記実施形態では、レーダ区間において、アクティブターゲット装置10の送信アンプは16一定時間(アップリンク区間,レーダ区間)の間だけ動作するように構成されているが、例えば、この一定時間の時間情報をダウンリンクデータDDによって通信統合レーダ装置20から得るようにしてもよい。この場合、アクティブターゲット装置10を、通信区間,レーダ区間の時間やタイミングの仕様が異なる通信統合レーダシステムにて共通に使用することが可能となる。
【0188】
本実施形態では、レーダ区間において、アクティブターゲット装置10の変調回路15はIF帯の無変調のサブキャリア信号を発生するが、例えば、直交した符号系列の1つで変調されたIF帯のサブキャリア信号を発生してもよい。これにより、各アクティブターゲット装置10からの折返波に基づくビート信号が距離周波数スペクトル上で重複する場合でも、符号系列の直交性により確実に分離することができ、信頼性の高いチャネル行列を生成することができる。
【0189】
本実施形態では、IF帯の各ビート信号を、BB帯にダウンコンバートしてから距離周波数スペクトルを算出する処理を行っているが、IF帯のビート信号をそのままFFT処理してIF帯で距離周波数スペクトルを算出するように構成してもよい。この場合、IF帯のビート信号をBB帯にダウンコンバートするための構成や処理が不要となり、装置構成を簡略化することができる。
【0190】
上記実施形態では、通信統合レーダ装置20の送信アンテナ36からアクティブターゲット装置10を介して通信統合レーダ装置20の受信アンテナ37に至るチャネル応答を用いてチャネル行列Hを生成しているが、例えば、通信統合レーダ装置20の発振器31からアクティブターゲット装置10を介して通信統合レーダ装置20のミキサ42に至るチャネル応答を用いてチャネル行列Hを生成してもよい。これにより、通信統合レーダ装置20の送信アンプ35、送信アンテナ36、受信アンテナ37、受信アンプ41による振幅と位相の変動を補正することなく空間分割多重の処理を実現することができる。
【0191】
上記第2実施形態及びその変形例では、通信区間およびレーダ区間のいずれにおいても分離補正回路56により時分割多重による位相遅れを補正するが、例えば、通信区間において、分離補正回路56は分離のみを行い、ウェイト計算回路53はウェイト行列Wに時分割多重による位相遅れを乗算することにより、重み付け回路54は各アクティブターゲット装置10に関する抽出信号データy1 (n)〜yN (n)の分離抽出と時分割多重による位相遅れの補正を同時に行うようにしてもよい。これにより、計算負荷を低減することができる。
【0192】
上記実施形態では、受信信号ベクトルXuj,Xdjを平均化することでチャネルベクトルhj を求めているが、例えば、相関行列Ruj,Rdjを固有展開し、その最大固有値に対応する固有ベクトルを、前記受信信号ベクトルr(n)と置き換えて使ってもよい。これにより、干渉波や雑音の影響を除いて精度のよいチャネル行列Hを求めることができるため、アクティブターゲット装置10との通信品質を高めることができる。
また、複数のアクティブターゲット装置10に基づくビート周波数が重複する場合、相関行列Ruj,Rdjの最大固有値に対応する固有ベクトルのみならず、第2、第3の大きさの固有値に対応する固有ベクトルを用いてもよい。ただし、それぞれの固有ベクトルとアクティブターゲット装置10との対応は、固有値の大きさの比と角度スペクトル算出時に求めた信号強度(反射電力)比との関係から推測する。これにより、ビート周波数が重複する場合でも精度のよいチャネル行列Hを求めることができ、アクティブターゲット装置10との通信品質劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】実施形態に係る通信統合レーダシステムの構成を示すブロック図。
【図2】システムの動作タイミングを示す説明図。
【図3】実施形態に係るアクティブターゲット装置の構成を示すブロック図。
【図4】第1実施形態における通信統合レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図5】送信波,反射波,折返波,ビート信号について周波数の関係を示す説明図。
【図6】BB帯ビート信号処理の内容を示すフローチャート。
【図7】IF帯ビート信号処理の内容を示すフローチャート。
【図8】電子スキャンFMCWレーダ処理の内容を示すフローチャート。
【図9】FMCWレーダの原理を示す説明図。
【図10】距離周波数スペクトル及び角度スペクトルの算出結果の例を模式的に示した説明図。
【図11】上昇変調区間及び下降変調区間で検出されるピークを、そのピークに関する情報を表す3次元空間上にマッピングした例を示す説明図。
【図12】図9〜図11を作成する上で想定した状況を表す説明図。
【図13】チャネル行列算出処理の内容を示すフローチャート。
【図14】チャネル応答の定義を示す説明図。
【図15】角度スペクトルの算出例を示す説明図。
【図16】第2実施形態における通信統合レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図17】第2実施形態の変形例の構成を示すブロック図。
【図18】第2実施形態の変形例の構成を示すブロック図。
【図19】第3実施形態における受信処理回路の構成を示すブロック図。
【図20】第4実施形態におけるチャネル行列算出処理の内容を示すフローチャート。
【図21】第5実施形態でのレーダ区間の動作を示す説明図。
【図22】第5実施形態での効果を示す説明図。
【図23】第6実施形態におけるチャネル行列算出処理の内容を示すフローチャート。
【図24】マルチパスに基づく虚像についての説明図。
【図25】第7実施形態におけるウェイト計算処理の内容を示すフローチャート。
【図26】第7実施形態における重み付け処理の内容を示すフローチャート。
【図27】第8実施形態におけるIF帯ビート信号処理の内容を示すフローチャート。
【図28】第8実施形態におけるチャネル相関行列算出処理の内容を示すフローチャート。
【図29】第1実施形態における重み付け処理の内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0194】
1…通信統合レーダシステム 10…アクティブターゲット装置 11…受信アンテナ 12…スイッチ 13…復調回路 14…制御回路 15…変調回路 16…変調増幅器、17…送信アンテナ 20,20a…通信統合レーダ装置 21,21a〜21c…送受信部 23,23a…信号処理部 25…制御回路 31…発振器 32…駆動信号生成回路 33…電力分配器 34…変調回路 35…送信アンプ 36…送信アンテナ 37…受信アンテナ 38,39…スイッチ 40,40a…受信処理回路 41…受信アンプ 42,64,68…ミキサ 43,61,65,69…フィルタ 44,66,70…AD変換器 51…記憶回路 52…レーダ処理回路 53…ウェイト計算回路 54…重み付け回路 55…復調回路 56…分離補正回路 62…搬送波再生回路 67…遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数掃引されたレーダ波を少なくとも送信し、該レーダ波を反射する物体からの反射波、及び前記レーダ波を受信,変調して折り返し送信をするアクティブターゲット装置からの折返波を受信,復調することにより、前記物体の位置や速度に関する情報、及び前記折返波に重畳された情報を取得する通信統合レーダ装置であって、
送信用アンテナ及び受信用アンテナの少なくとも一方が複数で構成され、前記送信アンテナと前記受信用アンテナとを任意に組み合わせてなる複数のチャネルを有する送受信手段と、
前記送信用アンテナへの送信信号と同じ周波数のローカル信号を前記受信用アンテナからの各受信信号に混合することにより、前記チャネル毎にビート信号を生成するビート信号生成手段と、
予め生成されたウェイト行列を前記ビート信号に乗じることで、前記折返波に基づく信号成分を個々に分離する信号分離手段と、
前記信号分離手段で分離された各分離信号をそれぞれ復調することで、前記折返波の送信元となった各アクティブターゲット装置からの情報を取得する復調手段と、
前記ビート信号生成手段から得られるビート信号に基づき、該ビート信号の周波数スペクトルを前記チャネル毎に生成するスペクトル生成手段と、
前記スペクトル生成手段にて生成された各周波数スペクトルから抽出される前記折返波の信号成分を、同一の前記チャネル毎かつ同一の前記折返波毎に配列することにより、各折返波に対する各チャネルの応答を示すチャネル行列を生成するチャネル行列生成手段と、
前記チャネル行列生成手段にて生成されたチャネル行列に基づいて、前記ウェイト行列を生成するウェイト行列生成手段と、
を備えることを特徴とする通信統合レーダ装置。
【請求項2】
前記アクティブターゲット装置からの折返波は、無変調又は情報で変調された中間周波数帯のサブキャリア信号によって変調されており、
前記信号分離手段、及び前記スペクトル生成手段は、前記ビート信号生成手段にて生成されるビート信号のうち、中間周波数帯に現れるビート信号に基づいて処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項3】
前記アクティブターゲット装置からの折返波は、無変調又は情報で変調された中間周波数帯のサブキャリア信号によって変調されており、
前記ビート信号生成手段にて生成されたビート信号のうち、中間周波数帯に現れるビート信号を抽出してベースバンド帯のビート信号にダウンコンバートするダウンコンバート手段を備え、
前記信号分離手段、及び前記スペクトル生成手段は、前記ダウンコンバート手段によりダウンコンバートされたベースバンド帯のビート信号に基づいて処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項4】
前記送受信手段は、掃引速度が異なる複数種類のレーダ波を送信し、
前記チャネル行列生成手段は、前記複数種類のレーダ波のそれぞれについてチャネル行列を生成し、
前記ウェイト行列生成手段は、前記チャネル行列生成手段にて生成された複数のチャネル行列を平均した平均チャネル行列に基づいて前記ウェイト行列を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項5】
前記送受信手段は、掃引速度が異なる複数種類のレーダ波を送信し、
前記チャネル行列生成手段は、
前記複数種類のレーダ波毎に、前記スペクトル生成手段にて前記チャネル毎に生成される周波数スペクトルのそれぞれから同一の折返波に基づく信号成分を抽出,配列することにより、一つの折返波に対する各チャネルの応答を示すチャネルベクトルを、全ての折返波について生成するチャネルベクトル生成手段と、
前記チャネルベクトル生成手段にて同一折返波について生成された複数のチャネルベクトルを平均してなる平均チャネルベクトルを、全ての折返波について算出する平均化手段と、
前記平均化手段にて算出された平均チャネルベクトルを配列することで前記チャネル行列を生成するベクトル配列手段と、
からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項6】
前記送受信手段による周波数掃引はFMCW変調であり、
前記スペクトル生成手段は、前記FMCW変調の上昇変調区間および下降変調区間を異なる種類のレーダ波として処理することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項7】
前記スペクトル生成手段にて生成される周波数スペクトルに基づいて、前記アクティブターゲット装置の位置及び速度のうち少なくとも一方に関する情報を求めるレーダ検出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項8】
前記レーダ検出手段にて検出される周囲物体の位置に基づいて、マルチパスにより現れる虚像の信号成分を検出する虚像検出手段を備え、
前記チャネル行列生成手段は、前記虚像の信号成分を、該虚像に対する実像の信号成分と同一の折返波に基づく信号成分であるとして処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項9】
前記レーダ検出手段は、
前記スペクトル生成手段にて前記チャネル毎に生成される周波数スペクトルのそれぞれから抽出される同一折返波の信号成分に基づいて、各信号成分間の相関を表す相関行列を、全ての前記折返波について生成する相関行列生成手段と、
前記相関行列生成手段にて生成された相関行列から角度スペクトルを算出し、該角度スペクトルに基づいて前記アクティブターゲット装置が位置する方位を検出する方位検出手段と、
を備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項10】
前記相関行列生成手段にて前記折返波毎に生成される複数の相関行列を加算することでチャネル相関行列を生成するチャネル相関行列生成手段を備え、
前記ウェイト行列生成手段は、前記チャネル行列と前記チャネル相関行列とに基づいて前記ウェイト行列を生成することを特徴とする請求項9に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項11】
前記チャネル相関行列生成手段は、前記相関行列生成手段にて過去のサイクルで算出された相関行列と今サイクルで算出された相関行列とを平均した平均相関行列に基づいて、前記チャネル相関行列を生成することを特徴とする請求項10に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項12】
前記折返波に基づく信号成分の有効,無効を判定する判定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項13】
前記折返波に基づく信号成分の信号対雑音電力比を算出するSNR算出手段を備え、
前記判定手段は、前記SNR算出手段にて算出される信号対雑音電力比が予め設定された下限しきい値より小さい信号成分を無効であると判定することを特徴とする請求項12に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項14】
複数の折返波に基づく信号成分の周波数が重複していることを検出する重複検出手段を備え、
前記判定手段は、前記重複検出手段にて周波数の重複が検出された信号成分を無効であると判定することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項15】
前記重複検出手段は、前記折返波に基づく信号成分の過去の検出結果から推定されるビート周波数の推定値と、前記スペクトル生成手段にて生成される周波数スペクトルに基づくビート周波数の検出値とに基づいて、重複を判断することを特徴とする請求項14に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項16】
前記判定手段にて無効であると判定された信号成分を破棄する破棄手段を備えることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項17】
前記判定手段にて無効であると判定された信号成分を予め指定された値で代替する代替手段を備えることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項18】
前記ウェイト行列生成手段は、前記チャネル行列生成手段にて過去のサイクルで生成されたチャネル行列と今サイクルで生成されたチャネル行列とを平均した平均チャネル行列に基づいて、前記ウェイト行列を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項19】
前記ウェイト行列生成手段、及び前記分離手段は、振幅の大きい信号成分から順に順序付け逐次復号を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項20】
前記送受信手段は、予め設定された第1期間中に周波数送信されたレーダ波を送信すると共に、予め設定された第2期間中に周波数を一定にしたレーダ波を送信し、
前記スペクトル生成手段は、前記第1期間中に前記ビート信号生成手段にて生成されるビート信号に基づいて前記周波数スペクトルを生成し、
前記信号分離手段は、前記第2期間中に前記ビート信号生成手段にて生成される前記折返波に基づくビート信号を入力として動作することを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項21】
前記第2期間中に送信する一定周波数のレーダ波を、前記アクティブターゲット装置に提供する情報によって変調するレーダ変調手段を備えることを特徴とする請求項20に記載の通信統合レーダ装置
【請求項22】
前記ビート信号生成手段は、
各チャネルの送信信号と受信信号とを混合してビート信号を生成するミキサと、
前記ミキサにて生成されたビート信号をサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段にて生成されたサンプリングデータを記憶する記憶手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれかに記載の通信統合レーダ装置。
【請求項23】
前記ビート信号生成手段を構成するミキサは、前記受信アンテナ数よりも少なく、
前記送受信手段は、複数のチャネルが前記ミキサ及び前記サンプリング手段を時分割で共用することを特徴とする請求項22に記載の通信統合レーダ装置。
【請求項24】
予め設定された周波数帯のレーダ波を受信すると、該レーダ波を変調信号で変調してなる折返波を送信する一つ以上のアクティブターゲット装置と、
請求項1乃至請求項23のいずれかに記載の通信統合レーダ装置と、
からなる通信統合レーダシステム。
【請求項25】
予め設定された周波数帯のレーダ波を受信すると、該レーダ波を変調信号で変調してなる折返波を送信する一つ以上のアクティブターゲット装置と、
請求項21に記載の通信統合レーダ装置と、
からなり、
前記通信統合レーダ装置が前記アクティブターゲット装置に提供する情報には、少なくとも起動コマンドを含み、
前記アクティブターゲット装置は、前記通信統合レーダ装置から受信したレーダ波を復号することで得た情報に前記起動コマンドが含まれている場合に、前記通信統合レーダ装置に提供する情報で変調して折り返し送信をすることを特徴とする通信統合レーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−128657(P2008−128657A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310398(P2006−310398)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】