説明

通信装置、通信制御方法および通信制御プログラム

【課題】 多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う装置において、前記通信回線の切換え制御のための通信回線のチェックを容易に行えるようにする。
【解決手段】 各通信回線の正常/異常を判断するにあたって、双方の通信装置から各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信し、選択中の通信回線でそれに対する返信が得られないときに通信回線を切換える。したがって、往路の通信回線および/または復路の通信回線の何れに障害が発生しても、切換えタイミングの同期などのためにそのことを双方の通信装置で共に認識しておくにあたって、相手側から送信されたヘルスチェックパケットから片道の通信で通信回線のチェックを行う場合のように、その異常を表すようなデータの内容を確認する必要はなく、双方の通信装置は自機からのヘルスチェックパケットに対する返信が帰って来たか否かで、通信回線の状態を共に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(インターネットプロトコル)網などに使用される通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関し、特に二重化などの多重化された通信回線を、障害の発生時などに選択的に切換えて使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銀行、鉄道、電気、ガス、水道等の社会インフラを運営する事業体などでは、これまで、ATMとホストコンピュータとのように、特定の機器同士の通信を、部外からのアクセス制限を有する二重化された業務用の専用回線で行っている。そして、上記のように、障害の発生などで選択的に切換えて使用している。しかしながら、このような専用回線は、通信を行っているか否かに拘わらず、1対1や1対多で、常時回線が確保されているので、非効率的である。そこで、前記通信回線をIP網で構築し、効率的に運用することが考えられる。
【0003】
一般に、前記IP網では、障害が発生すると、障害発生箇所に隣接するルータやスイッチングハブは、その障害の発生を検知し、自動的に迂回ルートを探索して、通信経路を切換え、通信を継続できるようになっている。しかしながら、その切換えには、標準的に1分程度も要し、前記ルータやスイッチングハブではその間のデータを溜め込むことができず、この通信不能の期間のデータは破棄されてしまうという問題がある。また、そのように通信再開までに時間を要してしまうと、適用可能な用途に大きな制約を生じることになる。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、前記IP網を二重化し、使用中の通信回線で障害が生じると、直ちにもう一方の通信回線に切換えるように、通信を行っている機器同士が通信回線を切換えることが考えられる。特許文献1には、そのような二重化されたIP網をモニタし、障害が発生したことを検知して自動的に切換えるようにした典型的な従来技術が記載されている。
【0005】
図4は、その従来技術によるヘルスチェックシーケンスを示す図である。この従来技術では、2つの端末それぞれから、予め定める時間W毎にヘルスチェックパケットを送信し、受信側では、前記時間W毎に送信されてくるヘルスチェックパケットが規定回数(図4では、端末1から端末2への下りのヘルスチェックパケット13,14,15の3回)受信されないと、回線障害が発生していると判定する。
【0006】
したがって、回線障害が発生しているという情報を双方の端末で共有するためには、回線障害判定後に、何らかの信号を送信しなければならない。図4では、その信号として、端末2から端末1への上りのヘルスチェックパケットを使用している。これによって、2つの端末が同期して回線切換えを行うことができ、個別に任意のタイミングでそれぞれ切換えを行ってしまうと不具合を生じるような用途にも適用することができる。
【特許文献1】特開2003−18217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、それぞれの端末が、相手側から送信されたヘルスチェックパケットから、片道の通信で通信回線のチェックを行うので、上述のように回線障害が発生しているという情報を双方の端末で共有するためには、回線障害の発生を検知した側の端末(図4では端末2)から、他方の端末へ、そのことを表す信号を送信しなければならず、受信した端末は、ヘルスチェックパケットを受信したのか、そのような異常を表す信号を受信したのかを判断するには、受信したデータを解析する必要がある。したがって、稀にしか発生しない異常を監視するために、毎回のヘルスチェックパケットを解析しなければならず、通信回線のチェックが煩雑であるという問題がある。また、一旦異常を判定してしまうと、以降はヘルスチェックパケットを送信しなくなり、通信回線のチェックを行わなくなってしまうので、前記通信回線がデータ伝送容量などで主系と従系とに区分されていて、主系を優先して使用するような場合には、主系に障害が発生し、一旦従系に切換えても、主系の障害が解消すると、速やかに主系に復帰することができなくなってしまうという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、通信回線のチェックを容易に行うことができる通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信装置は、多重化された通信回線を用いて相互に通信を行う装置において、双方の通信装置の通信インタフェイスから各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信させ、それに対する返信が選択中の通信回線で得られなくなったときに、通信回線を切換える通信制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、二重化された通信回線の一方を使用しており、障害の発生などによって他方に切換えて使用する場合のように、多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う装置において、前記通信回線の切換え制御のために、各通信回線の正常/異常を判断するにあたって、本発明では、通信制御部を設け、その通信回線を介して通信を行う通信装置の双方の通信インタフェイスから各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信する。そして、選択中の通信回線でそれに対する返信が前記通信インタフェイスで得られないときに、前記通信制御部は通信回線を切換える。
【0011】
したがって、双方の通信装置が、各通信回線のチェックを、任意に往復の通信でそれぞれ行うことで、パケットナンバーなどで自機からのヘルスチェックパケットに対する応答かどうかを容易に確認することができる。これによって、往路の通信回線および/または復路の通信回線の何れに障害が発生しても、切換えタイミングの同期などのためにそのことを双方の通信装置で共に認識しておけるようにするにあたって、相手側から送信されたヘルスチェックパケットから片道の通信で通信回線のチェックを行う場合のように、その異常を表すようなデータの内容を確認する必要はなく、自機からのヘルスチェックパケットに対する返信が帰って来たか否かで、双方の通信装置はそれぞれ通信回線の状態を共に認識することができ、通信回線のチェックを容易に行うことができる。
【0012】
また、自機からのヘルスチェックパケットに対する応答があれば、通信回線における前記障害などが解消し、再度使用可能になったことを判断できるので、前記通信回線がデータ伝送容量などで主系と従系とに区分されていて、主系を優先して使用するような場合には、主系に障害が発生し、一旦従系に切換えても、主系の障害が解消すると、速やかに主系に復帰することができ、特に好ましい。
【0013】
また、本発明の通信装置では、前記通信制御部は、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られないときに、通信回線を切換えることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、通信回線へのノイズの侵入などの瞬時的な障害に対して、通信制御部は過剰に反応することはなく、不所望な切換えを抑制することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の通信装置では、前記通信制御部は、通信回線を切換えるにあたって、被切換え側の通信回線が、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られているときに切換えを行うことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、前記一旦従系に切換えた後、主系に復帰させる場合のように、通信回線が障害から復帰するなどしても、通信制御部は、被切換え側の通信回線が、前記予め定める回数に亘ってヘルスチェックパケットの送受信が確認されるまで切換えを猶予するので、通信回線が安定してから切換えを行うことができる。
【0017】
また、本発明の通信装置では、前記通信回線は、部外からのアクセス制限を有する専用回線であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、銀行、鉄道、電気、ガス、水道等の社会インフラを運営する事業体などでは、これまでATMとホストコンピュータとのように特定の機器同士の通信を、部外からのアクセス制限を有する多重化された業務用の専用回線で行ってきたが、その専用回線をIP網で構築して上記の通信装置を用い、ヘルスチェックパケットの周期を調整することで、その専用回線に必要な切換えの応答性などを確保しつつ、前記専用回線の汎用性を広げ、社内電話やデータ通信などの他の通信にも使用することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の通信制御方法は、多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う方法において、双方の通信装置は、各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信し、それに対する返信が選択中の通信回線で得られなくなったときに、通信回線を切換えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、二重化された通信回線の一方を使用しており、障害の発生などによって他方に切換えて使用する場合のように、多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う方法において、前記通信回線の切換え制御のために、各通信回線の正常/異常を判断するにあたって、本発明では、その通信回線を介して通信を行う通信装置の双方が、各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信する。そして、選択中の通信回線でそれに対する返信が得られないときに通信回線を切換える。
【0021】
したがって、双方の通信装置が、各通信回線のチェックを、任意に往復の通信でそれぞれ行うことで、パケットナンバーなどで自機からのヘルスチェックパケットに対する応答かどうかを容易に確認することができる。これによって、往路の通信回線および/または復路の通信回線の何れに障害が発生しても、切換えタイミングの同期などのためにそのことを双方の通信装置で共に認識しておけるようにするにあたって、相手側から送信されたヘルスチェックパケットから片道の通信で通信回線のチェックを行う場合のように、その異常を表すようなデータの内容を確認する必要はなく、自機からのヘルスチェックパケットに対する返信が帰って来たか否かで、双方の通信装置はそれぞれ通信回線の状態を共に認識することができ、通信回線のチェックを容易に行うことができる。
【0022】
また、自機からのヘルスチェックパケットに対する応答があれば、通信回線における前記障害などが解消し、再度使用可能になったことを判断できるので、前記通信回線がデータ伝送容量などで主系と従系とに区分されていて、主系を優先して使用するような場合には、主系に障害が発生し、一旦従系に切換えても、主系の障害が解消すると、速やかに主系に復帰することができ、特に好ましい。
【0023】
また、本発明の通信制御プログラムは、コンピュータの通信インタフェイスに、上記の通信処理手順を実行させることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行うにあたって、通信回線の切換え制御のためのチェックを容易に行うことができるとともに、障害などが解消し、再度使用可能になったことも判断できる通信制御プログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の通信装置、通信制御方法および通信制御プログラムは、以上のように、二重化された通信回線の一方を使用しており、障害の発生などによって他方に切換えて使用する場合のように、多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う装置において、前記通信回線の切換え制御のために、各通信回線の正常/異常を判断するにあたって、その通信回線を介して通信を行う通信装置の双方から各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信し、選択中の通信回線でそれに対する返信が得られないときに通信回線を切換える。
【0026】
それゆえ、双方の通信装置が、各通信回線のチェックを、任意に往復の通信でそれぞれ行うことで、パケットナンバーなどで自機からのヘルスチェックパケットに対する応答かどうかを容易に確認することができ、通信回線のチェックを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の一形態に係る通信装置1,2を備える通信システムの構成を示すブロック図である。本発明に係る通信システムは、多数のルータR11,R12,R13,R14;R21,R22,R23,R24;・・・(総称するときは、以下参照符号Rで示す)やスイッチングハブH11,H12;H21,H22;・・・(総称するときは、以下参照符号Hで示す)を備えて構築されるIP網3に、参照符号L1,L2で示すような二重化された通信回線を設定して実現される。通信回線L1,L2は、相互に等しいものであってもよいが、ここでは通信回線L1が通信回線L2に比べて伝送容量が大きく、通信回線L1が主系の通信回線であり、通信回線L2が従系の通信回線とする。
【0028】
前記通信装置1,2には、それぞれパーソナルコンピュータやワークステーションなどで実現される端末装置5,6が接続され、これらの端末装置5,6が前記通信装置1,2からIP網3を介して相互に通信を行う。前記通信装置1,2は、前記二重化された通信回線L1,L2を用いて通信を行うので、前記端末装置5,6からの送信パケットは、この通信装置1,2でコピーされて、両通信回線L1,L2には相互に等しいデータが送信される。受信したデータは、選択されている通信回線側のデータのみが端末装置5,6へ出力され、非選択側の通信回線で伝達されたデータは破棄される。
【0029】
このように構成される通信システムにおいて、前記通信回線L1,L2の設定が通信装置1,2に行われており、該通信装置1,2は、主系の通信回線L1を優先して使用するようになる。この主系の通信回線L1を構成しているH11−R21−R22−R23−R24−H12の経路のいずれかにおいて参照符号Pで示すように回線障害が発生すると(図1ではR22−R23間)、その障害箇所Pに隣接したルータR22,R23は、自動的に迂回ルートを探索し、参照符号L1’やL1”で示すように、その迂回ルートが確立されると、以後はその迂回ルートL1’またはL1”に切換えて通信を継続する。前記迂回ルートL1’とL1”とのいずれを選択するかは、ルータR22,R23の設定による。
【0030】
しかしながら、ルータR22,R23による通信経路の切換えには、前述のように標準的に1分程度も要し、また回線障害が発生したことは、これらのルータR22,R23から通信装置1,2に通知されない。さらに、ルータRやスイッチングハブHではその間のデータを溜め込むことができず、この通信不能の期間のデータは破棄されてしまう。このため本発明では、前記通信装置1,2は、以下に詳述するように、それぞれヘルスチェックパケットを送信し、回線状態をモニタしている。そして、主系の通信回線L1に前記回線障害が生じると、通信経路を従系の通信回線L2に一旦切換え、前記回線障害が解消すると、通信経路を主系の通信回線L1に復帰させる。
【0031】
図2は、本発明によるヘルスチェックシーケンスを示す図である。本発明では、通信端末である2つの通信装置1,2のそれぞれから、予め定める時間W、たとえば1秒毎にヘルスチェックパケットを送信し、受信側では、それに応答して、たとえば同じパケットナンバーなどの送信パケットに対応した返信パケットを返信する。そして、送信側は、返信されてきたパケットが送信したパケットに対応するものである場合、それぞれで回線は正常であると判断する。これに対して、返信がない場合や、返信されてきたパケットが送信したパケットに対応するものでない場合、それぞれで回線は異常であると判断し、通信回線L1,L2を切換える。
【0032】
図2では、主系の通信回線L1で通信が行われている状態で、時刻t1で、その通信回線L1に、通信装置1から通信装置2への経路に回線異常が発生している。これによって、その時刻t1以降に送信された通信装置1からのヘルスチェックパケットP12は、通信装置2に到達せず、したがってこのヘルスチェックパケットP12に対する返信も発生しない。同様に、通信装置2からのヘルスチェックパケットP22は、通信装置2から通信装置1への経路は正常であるので、通信装置1には到達するけれども、このヘルスチェックパケットP22に対する返信は、通信装置2には帰って来ない。したがって、通信装置1,2は、互いに回線異常が発生していることを検知することができる。
【0033】
その後、それぞれ規定回数(図2では3回、したがって3秒に亘って)返信パケットが受信されないと、回線障害が発生していると判定する。図2では、主系の通信回線L1に回線異常が発生し、従系の通信回線L2には発生していないので、前記規定回数に達した時刻t2,t3において、それぞれ回線異常を判定し、従系の通信回線L2に切換えて通信が継続される。
【0034】
一方、本発明では、一旦回線異常が判定され、回線が切換えられても、2つの通信回線L1,L2のヘルスチェックは継続されている。すなわち、送信パケットに対する返信パケットが受信されたか否かに拘わらず、ヘルスチェックは継続されている。したがって、時刻t4で前記ルータR22,R23が迂回ルートL1’,L1”を確立すると、前記主系の通信回線L1は、その迂回ルートL1’またはL1”で復帰し、通信装置1,2は、それぞれ回線異常の解消を検知することができる。
【0035】
その後、それぞれ規定回数(図2では2回、したがって2秒に亘って)返信パケットが受信されると、回線障害が解消したと判定する。図2では、前記規定回数に達した時刻t5,t6において、それぞれ回線復帰を判定し、主系の通信回線L1に切換えて通信が継続される。
【0036】
図3は、前記通信装置1,2の具体的な一構成例を示す回路ブロック図である。この通信装置1,2は、中央処理装置11と、発振回路12と、プログラム格納用のROM13と、ワークデータなどを格納するRAM14と、タイマ15と、後述の通信インタフェイス17,18,19からの送受信割込みやタイマ15からのタイマ割込みを制御する割込み制御回路16と、主系の通信回線L1を介して通信を行う前記通信インタフェイス17と、従系の通信回線L2を介して通信を行う前記通信インタフェイス18と、端末装置5,6と通信を行う前記通信インタフェイス19とを備えて構成される。前記割込み制御回路16は、タイマ15からの前記予め定める時間Wのカウントによって割込みを発生し、通常のパケットデータに割込ませて、前記ヘルスチェックパケットを送信する。
【0037】
通信制御部である中央処理装置11は、通信インタフェイス19を介して端末装置5,6から受信したパケットデータをコピーして、前記通信インタフェイス17,18から通信回線L1,L2を介して、他方の通信装置の通信インタフェイス通信17,18へ共通に送信する。また、前記通信インタフェイス17,18から通信回線L1,L2を介して他方の通信装置から受信したパケットデータは、通信回線L1,L2の内、選択されている側の通信回線のデータだけを前記通信インタフェイス19を介して端末装置5,6へ入力し、非選択側の通信回線の受信データは破棄する。
【0038】
さらにまた、中央処理装置11は、前記タイマ15による割込みによって通信インタフェイス17,18から前記ヘルスチェックパケットを送信し、それに対する返信パケットの受信結果から、前述の図2で示すような処理によって、通信回線L1とL2とを切換える。
【0039】
以上のように、本発明の通信装置1,2は、二重化された通信回線L1,L2を選択的に使用して相互に通信を行う装置において、前記通信回線L1,L2の切換え制御のために、通信インタフェイス17,18が各通信回線L1,L2の正常/異常を判断するにあたって、双方の通信装置1,2から各通信回線L1,L2へそれぞれヘルスチェックパケットを送信し、選択中の通信回線でそれに対する返信が得られないときに、中央処理装置11は通信回線L1とL2とを切換える。
【0040】
したがって、双方の通信装置1,2が、各通信回線L1,L2のチェックを、任意に往復の通信でそれぞれ行うことで、パケットナンバーなどで自機からのヘルスチェックパケットに対する応答かどうかを容易に確認することができる。これによって、往路の通信回線および/または復路の通信回線の何れに障害が発生しても、切換えタイミングの同期などのためにそのことを双方の通信装置で共に認識しておけるようにするにあたって、相手側から送信されたヘルスチェックパケットから片道の通信で通信回線のチェックを行う場合のように、その異常を表すようなデータの内容を確認する必要はなく、自機からのヘルスチェックパケットが帰って来たか否かで、双方の通信装置1,2はそれぞれ通信回線L1,L2の状態を共に認識することができ、通信回線L1,L2のチェックを容易に行うことができる。
【0041】
また、自機からのヘルスチェックパケットに対する応答があれば、通信回線L1,L2における前記障害などが解消し、再度使用可能になったことを判断できるので、上述のように前記通信回線L1,L2がデータ伝送容量などで主系と従系とに区分されていて、主系を優先して使用するような場合には、主系に障害が発生し、一旦従系に切換えても、主系の障害が解消すると、速やかに主系に復帰することができ、特に好ましい。
【0042】
また、前記中央処理装置11は、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られないときに、通信回線L1とL2とを切換えるので、通信回線L1,L2へのノイズの侵入などの瞬時的な障害に対して、中央処理装置11は過剰に反応することはなく、不所望な切換えを抑制することができる。
【0043】
さらにまた、前記中央処理装置11は、通信回線L1とL2とを切換えるにあたって、被切換え側の通信回線が、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られているときに切換えを行うので、前記一旦従系に切換えた後、主系に復帰させる場合のように、通信回線L1,L2が障害から復帰するなどしても、中央処理装置11は、被切換え側の通信回線が、前記予め定める回数に亘ってヘルスチェックパケットの送受信が確認されるまで切換えを猶予することになり、通信回線L1,L2が安定してから切換えを行うことができる。
【0044】
なお、前記通信回線L1,L2は、部外からのアクセス制限を有する専用回線であることが好ましい。それによれば、銀行、鉄道、電気、ガス、水道等の社会インフラを運営する事業体などでは、これまでATMとホストコンピュータとのように特定の機器同士の通信を、部外からのアクセス制限を有する多重化された業務用の専用回線で行ってきたが、その専用回線をIP網3で構築して上記の通信装置1,2を用い、ヘルスチェックパケットの送信周期Wを調整することで、その専用回線に必要な切換えの応答性などを確保しつつ、前記専用回線の汎用性を広げ、社内電話やデータ通信などの他の通信にも使用することができる。
【0045】
この通信装置1,2によれば、ヘルスチェックパケットの送信周期Wおよび障害発生と判定するまでの回数にもよるが、前述のように障害の発生から通信回線L1,L2の切換えには3秒程度要するので、たとえば電力会社では、落雷による遮断器の連動などを行う系統保護用には使用できないが、営業所や制御所から変電所の機器の状態を監視し、制御を行うようなテレコントロール用途に使用することができ、さらに同じIP網3に、制御所と変電所とを専用回線で接続していた対向電話や、一般の事業用電話なども収容することができる。
【0046】
前記通信装置1,2は、一般のパーソナルコンピュータに、二重化された前記通信回線L1,L2に対応してインタフェイスボードを増設し、前記ROM13に上述のような通信制御プログラムを搭載して実現することができる。
【0047】
前記通信回線は、三回線設けられ、そのうちの二回線を使用するようなものであってもよく、前記のように障害発生などに対して、複数の通信回線の一部を選択的に切換えて使用するものであればよい。また通信装置は、1対1で通信するものに限らず、1対多や、多対多であってもよく、相互に通信を行う通信装置間の通信回線が複数設けられているものであればよい。また、前記通信回線は、光ファイバとADSLとのように、複数の通信回線を併用し、それらを選択的に切換えて使用するものであれば、一般のIP網でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の一形態に係る通信装置を備える通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明によるヘルスチェックシーケンスを示す図である。
【図3】本発明に係る通信装置の具体的な一構成例を示す回路ブロック図である。
【図4】典型的な従来技術によるヘルスチェックシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1,2 通信回線
3 IP網
5,6 端末装置
11 中央処理装置
12 発振回路
13 ROM
14 RAM
15 タイマ
16 割込み制御回路
17,18,19 通信インタフェイス
H11,H12;H21,H22;・・・ スイッチングハブ
L1,L2 通信回線
L1’,L1” 迂回ルート
R11,R12,R13,R14;R21,R22,R23,R24;・・・ ルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化された通信回線を用いて相互に通信を行う装置において、
双方の通信装置の通信インタフェイスから各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信させ、それに対する返信が選択中の通信回線で得られなくなったときに、通信回線を切換える通信制御部を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られないときに、通信回線を切換えることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、通信回線を切換えるにあたって、被切換え側の通信回線が、予め定める回数に亘って、送信したヘルスチェックパケットに対する返信が得られているときに切換えを行うことを特徴とする請求項1または2記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信回線は、部外からのアクセス制限を有する専用回線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
多重化された通信回線を選択的に使用して相互に通信を行う方法において、
双方の通信装置は、各通信回線へそれぞれヘルスチェックパケットを送信し、それに対する返信が選択中の通信回線で得られなくなったときに、通信回線を切換えることを特徴とする通信制御方法。
【請求項6】
コンピュータの通信インタフェイスに、上記請求項5記載の通信処理手順を実行させるための通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−20202(P2006−20202A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197782(P2004−197782)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】