説明

連続式加熱炉、及びその燃焼制御方法

【課題】 安定した燃焼状態を維持しながら、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくすることが可能な、連続式加熱炉、及びその燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】 予熱帯30、加熱帯40、及び均熱帯50を備える連続式加熱炉100の燃焼制御方法であって、予熱帯30、加熱帯40、又は均熱帯50の少なくとも1以上の領域に、燃焼と吸気とを交互に行う蓄熱式バーナ10、10、…が2対以上備えられ、当該蓄熱式バーナ10、10、…へと供給される燃料の流量を変更する、1対以上の蓄熱式バーナ10、10、…を間引く、及び/又は、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼時間と吸気時間との割合を変更することにより、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼量が調整される、連続式加熱炉の燃焼制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナを用いた連続式加熱炉、及びその燃料制御方法に関し、特に、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくすることが可能な、連続式加熱炉、及びその燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、連続式加熱炉の省エネルギ対策として、交番燃焼方式の蓄熱式バーナの導入が図られている。この交番燃焼方式の蓄熱式バーナ(以下において、単に「蓄熱式バーナ」と記述する。)は、高温の燃焼排ガス顕熱を蓄熱体に蓄熱し、高温になった蓄熱体に燃焼空気を導入することで、直接熱交換により燃焼空気が加熱されるもので、熱回収効率が極めて高い。一般的な排ガス煙道に設置されるレキュペレータによる燃焼空気温度が500℃程度であるのに対し、蓄熱式バーナによる回収空気温度は900〜1100℃程度であるため、蓄熱式バーナの利用により、燃焼空気を容易に加熱することが可能になり、省エネルギ効果を得ることが可能になる。
【0003】
蓄熱式バーナを備える連続式加熱炉の操業方法に関する技術は、これまでに開示されてきている。例えば、特許文献1には、炉内各部位の加熱能力分布の偏りを抑え、温度分布の偏りを抑制した連続式加熱炉の操業方法として、蓄熱体を具備した2基のバーナで構成される蓄熱式切替燃焼バーナを3対以上並設した連続式加熱炉において、対向する対のバーナを消火(間引き)させる場合に、加熱炉内各部位の加熱能力分布の偏りを抑え、温度分布の偏りを抑制するために、並設されたバーナ対のうち、隣り合うバーナの一方が着火の時、他方が消火吸引状態となるようにする方法が開示されている。かかる技術によれば、帯板の連続焼鈍、スラブの連続加熱等において、非加熱材のサイズ変更等に際し、炉幅方向の材料温度の偏りを抑制し、バーナの加熱能力を最大限に発揮させ、しかも設備メンテナンス上の問題も生じない操業が達成される、としている。
【特許文献1】特開2000−356321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、例えば偶数対の蓄熱式バーナを備える連続式加熱炉において、奇数対の蓄熱式バーナを間引く(蓄熱式バーナを完全に消火すること。以下において同じ。)と、当該加熱炉内を搬送される非加熱材の左右において、着火しているバーナの数に差が生じるため、炉内各部位の加熱能力分布の偏りが生じ、炉内の温度分布の偏りを抑制し難いという問題があった。
【0005】
ところで、蓄熱式バーナは、高速噴流タイプの2次燃焼割合の高い燃焼方式を採用しているため、燃料流量を過度に低減すると、燃焼が不安定となり、燃焼を制御することが困難になる。ここに、蓄熱式バーナのターンダウン比(バーナ1本当たりの定格燃料流量と制御可能な最小燃料流量との比)は、一般に、1/3程度が限界であるとされる。すなわち、燃焼時の火炎が安定的に確保できるのは、ターンダウン比が1/3程度までであり、燃焼を制御可能な燃料流量の下限は、定格燃料流量の約33%となる。
【0006】
したがって、ターンダウン比が1/3で、かつ、蓄熱式バーナを間引くことにより作動中のバーナ対が1対となった場合に、特許文献1に開示されている技術によって、さらに燃焼量を低減するには、当該1対の蓄熱式バーナを完全に消火する必要がある。かかる低燃焼状態における加熱炉の温度制御は、蓄熱式バーナの完全消火とターンダウン比を1/3とする燃焼との繰り返しにより行われるため、燃料原単位の増大、及び、加熱炉の制御目標温度と実績温度との偏差の増大を招きやすいという問題があった。
【0007】
燃料原単位の増大を抑制する等の観点からは、蓄熱式バーナ個々の単体能力を小さくして、低燃料流量域の燃焼制御を行うという方法も考えられるが、当該方法では、必要とされる蓄熱式バーナ数が増大し、設置スペースの確保が困難になるほか、設備費が嵩みやすいという問題がある。
【0008】
炉内温度分布の偏りや、制御目標温度と実績温度との偏差が増大すると、部分的な過加熱や加熱不足により被加熱材の温度分布に偏りが生じ、連続式加熱炉以降の圧延工程等において操業阻害が発生しやすく、また、被加熱材の特性、品質上の問題が発生しやすい。そのため、連続式加熱炉における被加熱材の加熱においては、制御目標温度と実績温度との偏差を十分に小さくし、炉内温度分布の偏りを少なくする必要がある。もしこのような温度分布の偏り等が発生すると、例えば、連続加熱炉の加熱帯や均熱帯で十分な均熱を行う必要があるため、被加熱材が炉内で停滞し、加熱炉の加熱能力低下や、燃料原単位の増大を招きやすい。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来の技術問題を解決するため、安定した燃焼状態を維持しながら、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくすることが可能な、連続式加熱炉、及びその燃焼制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、予熱帯、加熱帯、均熱帯の少なくとも1以上の領域に、2対以上の蓄熱式バーナを備える、連続式加熱炉の燃焼制御方法について検討し、蓄熱式バーナの燃焼状態を、(1)燃料流量(ターンダウン比)の変更、(2)バーナ間引き、(3)燃焼時間の変更、の組合せにより調整することで、従来よりも、低燃焼状態における加熱炉の温度を制御可能であることを見出した。さらに、蓄熱式バーナを間引く場合には、炉内温度分布の均一化を図る観点から、被加熱材の進行方向(搬送方向)に対して左右同一数の蓄熱式バーナが燃焼状態になる形態が好ましいことを知見した。
【0011】
ここで、燃焼を安定的に制御可能とする観点から、上記ターンダウン比の下限は1/3程度である。また、炉内温度分布の均一化を図る観点から、間引きの限界は、4対バーナでは1/2(2対のバーナを間引く)、8対バーナでは1/4(2対のバーナを間引く)である。さらに、燃料ガスと空気との混合割合の安定性を維持する観点から、上記燃焼時間の下限は、燃焼と吸気とからなる1サイクルの全時間を1とするとき、0.25程度である。なお、一対の蓄熱式バーナそれぞれの燃焼時間を同一とすることにより効果的な加熱を可能とする等の観点から、低燃焼状態への燃焼制御を実施しない場合には、燃焼時間及び吸気時間はそれぞれ0.5とされるため、燃焼時間の変更により燃焼状態を最大で1/2に低減することが可能である。したがって、例えば、連続式加熱炉内の1の領域に、4対の蓄熱式バーナが備えられる場合、上記(1)、(2)、及び(3)の全てを実行すれば、最大で、燃焼量が1/12まで低減された低燃焼状態下で炉内の温度を制御することが可能になる。
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
請求項1に記載の発明は、予熱帯(30)、加熱帯(40)、及び均熱帯(50)を備える連続式加熱炉(100)の燃焼制御方法であって、予熱帯(30)、加熱帯(40)、又は均熱帯(50)の少なくとも1以上の領域に、燃焼と吸気とを交互に行う蓄熱式バーナ(10、10、…)が2対以上備えられ、当該蓄熱式バーナ(10、10、…)へと供給される燃料の流量を変更する、1対以上の蓄熱式バーナ(10、10、…)を間引く、及び/又は、蓄熱式バーナ(10、10、…)の燃焼時間と吸気時間との割合を変更することにより、蓄熱式バーナ(10、10、…)の燃焼量が調整されることを特徴とする、連続式加熱炉の燃焼制御方法により、上記課題を解決する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連続式加熱炉の燃焼制御方法において、蓄熱式バーナ(10、10、…)が3対以上備えられ、1対以上の蓄熱式バーナ(10、10、…)が間引かれる場合には、連続式加熱炉(100)において加熱される被加熱材(1、1、…)の両側で、同数の蓄熱式バーナ(10、10、…)が燃焼状態となることを特徴とする。
【0015】
ここに、被加熱材(1、1、…)の両側とは、連続式加熱炉(100)内を搬送される被加熱材(1、1、…)の、搬送方向の両側を意味している。
【0016】
請求項3に記載の発明は、予熱帯(30)、加熱帯(40)、及び均熱帯(50)を具備し、当該予熱帯(30)、加熱帯(40)、及び均熱帯(50)の少なくとも1以上の領域に、燃焼と吸気とを交互に行う蓄熱式バーナ(10、10、…)が2対以上備えられ、蓄熱式バーナ(10、10、…)へと供給される燃料の流量を変更する、1対以上の蓄熱式バーナ(10、10、…)を間引く、及び/又は、蓄熱式バーナ(10、10、…)の燃焼時間と吸気時間との割合を変更することにより、蓄熱式バーナ(10、10、…)の燃焼量を制御する制御手段(80)が備えられることを特徴とする、連続式加熱炉(100)により、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、燃料流量の変更、蓄熱式バーナ(10、10、…)の間引き、及び/又は、蓄熱式バーナ(10、10、…)の燃焼時間の変更を組み合わせることで、安定した燃焼状態を維持しつつ、蓄熱式バーナ(10、10、…)を低燃焼状態で制御することが可能になる。したがって、本発明によれば、安定した燃焼状態を維持しながら、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくし得る、連続式加熱炉の燃焼制御方法を提供することが可能になる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、被加熱材(1、1、…)の搬送方向両側において、燃焼状態の蓄熱式バーナ(10、10、…)が同数とされるので、上記効果に加えて、さらに炉内温度分布を容易に均一化し得る、連続式加熱炉の燃焼制御方法を提供することが可能になる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段(80)によって、蓄熱式バーナ(10、10、…)が安定した燃焼状態を維持しつつ、その燃料能力が制御されるため、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくすることが可能な、連続式加熱炉(100)を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を容易に理解可能とするため、まず、一般的な連続式加熱炉(従来の連続式加熱炉)、及び、蓄熱式バーナについて、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図9は、従来の連続式加熱炉(アップテイク型加熱炉)を概略的に示す側面図である。炉内の様子を理解しやすくするため、被加熱材等を適宜透視して示している。
従来の連続式加熱炉900は、予熱帯93、加熱帯94、及び均熱帯95を具備している。装入口61から装入された被加熱材1、1、…は、ウォーキングビーム60によって抽出口62へと搬送される過程で、例えば、加熱帯94及び均熱帯95の上部に設けられる軸流バーナ21、21、並びに、予熱帯93の上部・下部、加熱帯94の下部、及び均熱帯95の下部に設けられるサイドバーナ22、22、…により、加熱される。加熱炉900の装入口61付近(炉尻)の上方には、排ガス煙道63が設けられており、当該煙道63の内部に、排ガスから廃熱を回収する換熱器(レキュペレータ)64が配置され、当該レキュペレータ64を介して、燃焼空気が暖められる。そして、上記レキュペレータ64を通過した排ガスは、煙突65を介して、大気へと放散される。
【0022】
図10は、蓄熱式バーナを概略的に示す断面図である。この図では、左側のバーナが燃焼状態にあり、右側のバーナが蓄熱状態(吸気状態)にある。図10を参照しつつ、交番燃焼の形態を以下に説明する。
【0023】
図示の蓄熱式バーナ10において、配管71、切替弁72、及び配管73を介して蓄熱器74Aへと供給された空気は、蓄熱器74Aの蓄熱体に蓄えられた熱によって、例えば1000℃以上にまで加熱された後、配管75Aを介して供給される燃料ガスと混合され、バーナ10Aで燃焼される。バーナ10Aで燃料が燃焼されると、蓄熱式バーナ10の炉内ガスが加熱される。このようにして加熱された炉内ガスは、バーナ10Bを介して吸気され、当該炉内ガスの熱が、蓄熱器74Bに備えられる蓄熱体によって回収される。そして、蓄熱器74Bを通過したガスは、配管76、切替弁72及び配管77を介して、大気へと放散される。
【0024】
上記状態から所定の燃焼時間(吸気時間)が経過すると、切替弁72が切り替えられ、上記バーナ10Aが吸気状態、上記バーナ10Bが燃焼状態へと切り替わる。バーナ10Bが燃焼状態になると、配管71内を流れる燃焼空気が、切替弁72、及び配管76を介して蓄熱器74Bへと達し、蓄熱器74Bの蓄熱体に蓄えられた熱により、例えば1000℃以上にまで加熱された後、配管75Bを介して供給される燃料ガスと混合され、バーナ10Bで燃焼される。バーナ10Bで燃料が燃焼されると、蓄熱式バーナ10の炉内ガスが加熱される。かかる炉内ガスは、バーナ10Aを介して吸気され、当該ガスの熱が、蓄熱器74Aに備えられる蓄熱体によって回収される。そして、蓄熱器74Aを通過したガスは、配管73、切替弁72、及び配管77を介して、大気へと放散される。
このように、蓄熱式バーナによれば、上記形態の交番燃焼を繰り返すことにより、熱回収効率の極めて高い燃料が実施される。
【0025】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態にかかる本発明の連続式加熱炉を概略的に示す側面図である。炉内の様子を理解しやすくするため、図1では被加熱材等を適宜透視して示し、図9に示す連続式加熱炉と同様の構成を採る部位には、図9にて使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0027】
第1実施形態にかかる連続式加熱炉100は、予熱帯30、加熱帯40、及び均熱帯50を具備し、加熱帯40及び均熱帯50の上部に軸流バーナ21、21を、下部にサイドバーナ22、22、…を備え、さらに、予熱帯30の上部及び下部に、蓄熱式バーナ10、10を、2対ずつ備えている。そして、温度検出手段87による実績温度の検出結果等に基づいて機能する制御手段80により、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼状態が制御されている。
【0028】
本発明の連続式加熱炉100において、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼状態は、制御手段80によって制御される。制御手段80には、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼状態制御を実行するCPU82と、そのCPU82に対する記憶装置とが設けられている。CPU82は、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU82に対する記憶装置は、例えば、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROM83と、CPU82の作業領域として機能するRAM84等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU82が、ROM83に記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、本発明の連続式加熱炉100における制御手段80が機能する。
【0029】
温度検出手段87からの出力信号は、入力ポート81を介して、入力信号としてCPU82へと到達する。一方で、タイマ85により発せられた時間に関する信号も、CPU82へと到達する。CPU82は、温度検出手段87からの信号、及びROM83に記憶された制御目標温度に関するプログラムに基づいて、出力ポート86を介して、蓄熱式バーナ10、10、…や燃料流量制御器(不図示)に対する動作指令を制御する。具体的には、後述するように、炉内の制御目標温度と実績温度との偏差や時間等に応じて、蓄熱式バーナ10、10、…へと供給される燃料の流量変更、蓄熱式バーナ10、10、…の間引き、及び/又は、蓄熱式バーナ10、10、…の燃焼時間と吸気時間との割合の変更、を適宜組み合わせることにより、上記燃焼制御が実施される。
【0030】
図2は、上記予熱帯30の上部に備えられる2対の蓄熱式バーナ10、10の燃焼制御形態を示す概略図であり、紙面上下方向が被加熱材の搬送方向である。当該2対の蓄熱式バーナのうち、上記装入口61側に配置される蓄熱式バーナ10に備えられる1対のバーナを11A、11B、上記加熱帯40側に備えられる蓄熱式バーナ10に備えられる1対のバーナを12A、12Bとする。さらに、上記バーナ11A及び12Bは、被加熱材1、1、…の搬送方向に対して左側に位置する一方、上記バーナ11B及び12Aは、被加熱材1、1、…の搬送方向に対して右側に位置すると仮定して、本発明にかかる蓄熱式バーナ11、12の燃焼制御形態例を以下に説明する。なお、図2において、100%とは、燃焼状態のバーナに定格流量の燃料が供給されている状態を、33%とは、燃焼状態のバーナにターンダウン比が1/3となる流量の燃料が供給されている状態を、0%とは、バーナが吸気状態であることを、消火とは、燃焼状態であったバーナが消火されたことを、それぞれ意味している。
【0031】
図2(A)は、バーナ11A及び12Aが「100%」であるとともに、これらと対をなすバーナ11B及び12Bが「0%」である状態(以下において「工程11」と記述する。)を概略的に示しており、かかる蓄熱式バーナ10、10により、上記予熱帯30の上部は最大限に加熱される「100%燃焼状態」となる。この100%燃焼状態から、本発明の燃焼制御方法により燃焼能力を低減する場合には、例えば、燃焼状態にあるバーナ11A及び12Aへと供給される燃料流量を変更することにより、当該バーナ11A及び12Aの燃焼能力を低下させる。ここで、蓄熱式バーナのターンダウン比は、1/3程度であり、安定した燃焼を維持しつつ燃焼能力を低減する場合における燃料流量の下限は、上記定格流量の約33%である。したがって、本発明では、まず、工程11におけるバーナ11A及び12Aへと供給される燃料流量を、定格流量の33%へと低減することにより、バーナ11A及び12Aを「33%」の状態にする(図2(B)参照)。
【0032】
次に、本発明の燃焼制御方法により、図2(B)に示す工程12の状態から燃焼能力をさらに低減させる場合、バーナ11A及び12Aへと供給される燃料流量をこれ以上低減すると、燃焼状態にあるバーナの安定した燃焼を維持することが困難になるため、一方のバーナ(例えば、12A)を間引く(消火する)ことで、その燃焼能力を低減させる。ここで、バーナ12Aを単に間引くと、燃焼状態にあるバーナ11Aへと供給される燃料流量がステップ的に変化する虞がある。そのため、かかる変化を防止するという観点から、本発明の燃焼制御方法を実施する場合には、バーナ12A及び12Bを備える蓄熱式バーナ10を間引きするとともに、バーナ11Aへと供給される燃料流量を一時的に定格流量の66%にまで増加させ、その後、再び燃料流量を上記33%にまで低減する事が好ましい(図2(C)参照)。このようにして、バーナ11Aのみを33%状態とすることで、工程11における100%の燃焼能力を、100×1/3×1/2≒16.7%の燃焼能力へと低減することが可能になる。
【0033】
さらに、本発明の燃焼制御方法により、図2(C)に示す工程13の状態から燃焼能力を低減させる場合には、バーナ11A及び11Bを備える蓄熱式バーナ10の燃焼時間と吸気時間(以下において、「蓄熱時間」と記述することがある。)との割合を変更する。ここに、図示のバーナ11A及び11Bは、バーナ11Aが燃焼状態にある時にバーナ11Bが吸気状態にあり、バーナ11Bが燃焼状態にある時にバーナ11Aが吸気状態にある。そのため、バーナ11A及び11Bは燃焼と吸気を交互に繰り返し(以下において、燃焼及び吸気をあわせて「1サイクル」と記述することがある。)、通常の燃焼時には、各バーナの燃焼時間及び蓄熱時間が等しくなるように調整される。すなわち、1サイクルの時間を100%とするとき、通常の燃焼時には、各バーナにおいて、燃焼時間が50%、蓄熱時間が50%とされる。そして、燃焼時間と蓄熱時間との割合を変更することにより燃焼能力を低減する場合、燃焼空気と燃料ガスとの混合割合の安定性を維持することにより、燃焼状態にあるバーナの安定した燃焼状態を確保する等の観点から、25%以上の燃焼時間を確保することが望ましい。したがって、工程13の状態から、さらに、バーナ11Aの燃焼・蓄熱時間の割合を、50%:50%から25%:75%へと変更することで、安定した燃焼状態を維持しながら、燃焼能力をさらに1/2低下する(バーナ11Aを33×(1/2)≒16%燃焼状態とする)ことが可能になる(図2(D)参照)。
【0034】
図3は、バーナの燃焼時間及び蓄熱時間の形態を示す概略図である。図3(A)は、燃焼状態にあるバーナの、通常時並びに燃焼時間変更時における、燃焼時間及び蓄熱時間の割合を示す概略図であり、図3(B)は、蓄熱式バーナに備えられる一対のバーナ(Aバーナ、Bバーナ)の、通常時並びに燃焼時間変更時における、燃焼時間及び蓄熱時間の割合を示す概略図である。
【0035】
図3(A)に示すように、バーナ1サイクルの時間を100%とするとき、通常時には、燃焼時間及び蓄熱時間がそれぞれ50%とされる。これに対し、燃焼時間を変更することにより、燃焼時間を25%、蓄熱時間を75%とすると、燃焼状態にあるバーナの燃焼時間が半減するため、蓄熱式バーナの燃焼能力を1/2に低減することが可能になる。一方で、図3(B)に示すように、通常時には、一方のバーナが燃焼状態にあると他方のバーナは蓄熱状態とされていたが、上記燃焼時間の変更により燃焼・蓄熱時間の割合を変更すると、一対のバーナ双方がともに蓄熱状態とされる時間帯が加えられることで、一対の蓄熱式バーナの燃焼能力が低減される。
【0036】
上記燃焼時間の変更は、例えば、蓄熱式バーナの1サイクルが120秒である場合、60秒燃焼、60秒吸気(蓄熱)の状態を、30秒燃焼、90秒吸気(蓄熱)へと変更することを意味している。ただし、蓄熱式バーナによる排ガス温度の上限が設定されている場合には、蓄熱時間の増加により排ガス温度の上限を超えることを防止するため、排ガス温度上限温度で吸気を中断し、蓄熱式バーナ1サイクル完了まで当該中断状態のまま保持することとなる。
【0037】
上記調整により、100%燃焼状態であった工程11を、100×(1/3)×(1/2)×(1/2)=100×(1/12)≒8.3より、安定した燃焼状態を維持しながらその燃焼能力を8.3%にまで低減することが可能になる。すなわち、燃料流量(ターンダウン比)の変更、バーナ間引き、燃焼時間の変更、の組合せにより調整することで、燃焼量を大幅に低減することが可能になる。そして、本発明にかかる上記方法では、安定した燃焼状態を維持しながら、低燃焼状態の燃焼制御が可能になるため、制御目標温度と実績温度との偏差を、従来よりも小さくすることが可能になる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態として、1の領域に4対の蓄熱式バーナが設置された連続式加熱炉の燃焼制御方法について、図を参照しつつ以下に説明する。
【0039】
図4は、4対の蓄熱式バーナの燃焼制御形態を示す概略図であり、紙面上下方向が被加熱材の搬送方向である。図4において、バーナ11A及び11B、バーナ12A及び12B、バーナ13A及び13B、並びに、バーナ14A及び14Bが、それぞれ対をなしている。図4(A)に示す工程21は、バーナ11A、12A、13A、及び14Aが100%燃焼状態であり、バーナ11B、12B、13B、及び14Bが吸気状態にある様子を示しており、これら4対の蓄熱式バーナにより、工程21の燃焼能力は100%とされている。この100%の状態から、本発明の燃焼制御方法により燃焼能力を低減する場合には、例えば、燃焼状態にあるバーナ11A、12A、13A、及び14Aへと供給される燃料流量を1/2へ低減することにより、バーナ11A、12A、13A、及び14Aを50%燃焼状態とし、燃焼能力が50%である工程22とする(図4(B)参照)。
【0040】
次に、当該工程22の状態から、燃焼状態にあるバーナの安定した燃焼状態を維持しつつ燃焼能力をさらに低減させる場合には、例えば、バーナ13A及び13Bを備える蓄熱式バーナ、並びに、バーナ14A及び14Bを備える蓄熱式バーナを消火(間引き)する(図4(C)参照)。この際、ステップ的な燃料流量の変化を防止するため、燃焼状態を維持するバーナ11A及び12Aへと供給される燃料流量を一旦100%へと増大させた後、その燃料流量を50%に戻すことが好ましい。かかる制御により、図4(C)に示す工程23は、工程21の状態から、燃料流量が1/2、燃焼状態にあるバーナ数が1/2となり、4対の蓄熱式バーナ全体の燃焼能力が25%へと低減される。
【0041】
工程23の状態から燃焼能力をさらに低減させる場合には、バーナ11A及び12Aへと供給される燃料流量を、安定燃焼を維持可能な下限値である定格流量の33%にまで低減した後、燃焼・蓄熱時間の割合を、50%:50%から、25%:75%へと変更する(図4(D)参照)。かかる変更により、図4(D)に示す工程24の状態では、燃焼量を蓄熱式バーナ4対全体の能力の約8.3%(間引き(2/4)×ターンダウン(1/3)×燃焼時間制御(1/2)=1/12)まで低減することが可能になる。
【0042】
第2実施形態にかかる上記燃焼制御方法では、被加熱材の搬送方向に対して左右で燃焼中のバーナ数が常に同数となり、左右で燃焼状態に偏りが生じない。そのため、被加熱材の両側において、加熱炉内の温度差が小さくなり、炉内温度分布を均一化することが容易になるため、被加熱材の均一な加熱が可能になる。
【0043】
これに対し、4つのバーナが燃焼状態にある状況から、各バーナへと供給される燃料流量を定格流量の1/3として燃焼能力を1/3へと低減した時点(上記工程22のバーナ11A、12A、13A、及び14Aが33%燃焼状態である場合に相当)で、例えば、バーナ14A及び14Bを備える蓄熱式バーナを消火して間引くと、残りの3対の蓄熱式バーナにより、被加熱材が加熱される。かかる状態で被加熱材が加熱されると、当該被加熱材の片側が2つのバーナにより、他方の側が1つのバーナのみによりそれぞれ加熱され、被加熱材の加熱が左右方向に不均一となる。このようにして、被加熱材の温度分布に偏りが生じると、連続式加熱炉以降の工程において、操業阻害が発生しやすく、また、被加熱材の特性、品質上の問題が発生しやすい。そこで、本発明では、かかる問題を回避するため、左右で燃焼状態に偏りが生じ難い、上記燃焼制御形態としている。
【0044】
なお、上記説明では、予熱帯、加熱帯、均熱帯のうち、1の領域に2対又は4対の蓄熱式バーナが備えられる形態の連続式加熱炉について記述したが、本発明を適用可能な連続式加熱炉は当該形態に限定されず、2以上の領域(例えば、予熱帯、加熱帯、及び均熱帯)に2対以上の蓄熱式バーナが備えられていても良い。かかる形態の連続式加熱炉であっても、上記形態で燃焼を制御することにより、制御目標温度と実績温度との偏差を小さくすることが可能になる。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
1の領域に蓄熱式バーナを2対設置した図1に示す連続式加熱炉を用いて、図2に示す燃焼制御を行った(実施例1)。蓄熱式バーナを設置した領域における、制御目標温度及び実績温度の結果を図5に示す。また、比較例として、従来の方法により燃焼を制御した場合における、制御目標温度及び実績温度の結果を図6に示す。図5及び図6において、制御目標温度及び実績温度の推移を破線及び実線で、燃料流量の推移を棒グラフで、それぞれ示す。また、図5及び図6において、横軸は時間(sec)、縦軸は、炉内温度(℃)、ガス流量(L/sec)を示しており、バーナA及びバーナBを、それぞれA及びBと示している。以下、図2を適宜参照しつつ、本実施例について説明する。
【0046】
図5に示すように、本発明の燃焼制御を行った実施例1では、制御目標温度の設定に基づき、まず、燃料流量を減少(ターンダウン)し(図2(B)参照)、次いで、図2(C)に示す間引き制御を行った。その後、さらに、1サイクル中の燃焼時間を変更(減少)する燃焼時間制御を行うことにより(図2(D)参照)、蓄熱式バーナの燃焼を制御した。その結果、図6に示す比較例の結果に比べ、制御目標温度との温度差が少ない温度制御を実施することができた。
【0047】
一方、図6に示す比較例では、ターンダウン及び間引きを行った後、制御目標温度と実績温度との乖離を低減するため、バーナを完全に消火し、次いで、炉内温度が過度に低下することに起因する制御目標温度と実績温度との乖離を低減するため、点火と完全消火とを繰り返すことにより、炉内温度を制御した。比較例にかかる燃焼制御では、点火/消化のハンチングを防止するために、ある一定流量指示を超えてから再点火、流量制御を実施したため、制御目標温度と実績温度との乖離が大きくなり、炉内温度を精度良く制御することができなかった。
【0048】
すなわち、実施例1により、本発明によれば、低燃焼域における効果的な燃焼制御が可能であるため、炉内温度を精度良く制御可能であることが確認された。このように、低燃焼域における燃焼制御が可能になれば、被加熱材の過加熱を抑制すること、熱回収効率を向上させること、及び、燃料原単位を低減することが可能になる。
【0049】
<実施例2>
1の領域に蓄熱式バーナを4対設置した第2実施形態にかかる連続式加熱炉を用いて、図4と同様の燃焼制御を行った(実施例2)。実施例2にかかる燃焼制御形態の概略図を図7に、当該燃焼制御形態により加熱された被加熱材の温度分布、及び、1対のバーナを間引く従来の燃焼制御形態(比較例2)により加熱された被加熱材の温度分布の結果を図8に、あわせて示す。図8において、横軸は、被加熱材の長手方向位置を、縦軸は被加熱材の温度(℃)を示している。
【0050】
図7に示すように、実施例2にかかる4対の蓄熱式バーナは、バーナ1a及び1b、バーナ2a及び2b、バーナ3a及び3b、並びに、バーナ4a及び4bが対をなしており、図7は、燃焼状態にあるバーナ1b、2b、3b、及び4bと、吸気状態にあるバーナ1a、2a、3a、及び4aとを、概略的に示している。
実施例2にかかる燃焼制御では、4つのバーナ1b、2b、3b、及び4bの燃焼が継続されている状態(図7(A)参照)から、徐々に燃料投入量を減少し(図7(B)参照)した。その後、2対の蓄熱式バーナ(バーナ3a及び3bを備える蓄熱式バーナ、並びに、バーナ4a及び4bを備える蓄熱式バーナ)を間引くことにより、残り2対の蓄熱式バーナ(バーナ1a及び1bを備える蓄熱式バーナ、並びに、バーナ2a及び2bを備える蓄熱式バーナ)を用いて被加熱材を加熱した(図7(C)参照)。かかる形態の燃焼制御により、被加熱材の左右が同数のバーナにより加熱され、被加熱材の左右における燃料投入量のバランスが均等となったため、被加熱材の左右の温度分布が均等になった(図8参照)。
【0051】
これに対し、比較例2にかかる燃焼制御では、例えば、バーナ4a及び4bを備える蓄熱式バーナを間引くことにより、残り3対の蓄熱式バーナを用いて被加熱材を加熱した。そのため、被加熱材の左右が異なる数のバーナにより加熱され、被加熱材一方の側の温度のみが高くなり、被加熱材の温度分布が不均一となった。
【0052】
すなわち、実施例2により、本発明によれば、炉内温度分布を均一化し得ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態にかかる本発明の連続式加熱炉を概略的に示す側面図である。
【図2】2対の蓄熱式バーナの燃焼制御形態を示す概略図である。
【図3】バーナの燃焼時間及び蓄熱時間の調整形態を示す概略図である。
【図4】4対の蓄熱式バーナの燃焼制御形態を示す概略図である。
【図5】実施例1にかかる制御目標温度及び実績温度の結果を示す図である。
【図6】比較例1にかかる制御目標温度及び実績温度の結果を示す図である。
【図7】実施例2にかかる燃焼制御形態を示す概略図である。
【図8】実施例2及び比較例2にかかる被加熱材の温度分布を示す図である。
【図9】従来の連続式加熱炉を概略的に示す側面図である。
【図10】蓄熱式バーナを概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 被加熱材
10 蓄熱式バーナ
21 軸流バーナ
22 サイドバーナ
30 予熱帯
40 加熱帯
50 均熱帯
60 ウォーキングビーム
61 装入口
62 抽出口
63 煙道
64 レキュペレータ
65 煙突
80 制御手段
100 連続式加熱炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱帯、加熱帯、及び均熱帯を備える連続式加熱炉の燃焼制御方法であって、
前記予熱帯、加熱帯、又は均熱帯の少なくとも1以上の領域に、燃焼と吸気とを交互に行う蓄熱式バーナが2対以上備えられ、
前記蓄熱式バーナへと供給される燃料の流量を変更する、1対以上の前記蓄熱式バーナを間引く、及び/又は、前記蓄熱式バーナの燃焼時間と吸気時間との割合を変更することにより、前記蓄熱式バーナの燃焼量が調整されることを特徴とする、連続式加熱炉の燃焼制御方法。
【請求項2】
前記蓄熱式バーナが3対以上備えられ、1対以上の前記蓄熱式バーナが間引かれる場合には、前記連続式加熱炉において加熱される被加熱材の両側で、同数の前記蓄熱式バーナが燃焼状態となることを特徴とする、請求項1に記載の連続式加熱炉の燃焼制御方法。
【請求項3】
予熱帯、加熱帯、及び均熱帯を具備し、
前記予熱帯、加熱帯、及び均熱帯の少なくとも1以上の領域に、燃焼と吸気とを交互に行う蓄熱式バーナが2対以上備えられ、
前記蓄熱式バーナへと供給される燃料の流量を変更する、1対以上の前記蓄熱式バーナを間引く、及び/又は、前記蓄熱式バーナの燃焼時間と吸気時間との割合を変更することにより、前記蓄熱式バーナの燃焼量を制御する制御手段が備えられることを特徴とする、連続式加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−349281(P2006−349281A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177371(P2005−177371)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】