連続熱処理設備の速度制御方法、装置及びプログラム
【課題】制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮し、板温変化量と通板速度との相関の最適化を図る。
【解決手段】理論制約速度に基づいてストリップが現在から所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成部2と、ネック速度スケジュールをベースにして複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについてシミュレーションを実行して加熱炉51の誤差予測値を予測するシミュレーション部3と、加熱炉51の誤差予測値を要素として含む評価関数を使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する中央速度探索部4とを備え、速度変更パターンとして、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンを採用している。
【解決手段】理論制約速度に基づいてストリップが現在から所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成部2と、ネック速度スケジュールをベースにして複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについてシミュレーションを実行して加熱炉51の誤差予測値を予測するシミュレーション部3と、加熱炉51の誤差予測値を要素として含む評価関数を使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する中央速度探索部4とを備え、速度変更パターンとして、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンを採用している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融めっき設備や連続焼鈍設備などの連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄鋼業などの金属製造プラントで、金属ストリップの連続溶融めっき設備や連続焼鈍設備などの連続熱処理設備において、加熱炉入側から合金化炉出側までの間、又は加熱炉入側から一連の熱処理炉出側までの間の通板速度(中央速度と称される)を制御する場合、例えば加熱炉の加熱能力や搬送ロールの搬送速度範囲等の設備能力や、金属ストリップの熱処理温度や時間等の製造仕様といった制約条件に基づいてネック速度スケジュールを決定する必要がある。制約条件が複数存在する場合は、それら制約条件をすべて満たすように、各制約条件から求められる理論制約速度の最低速度をネック速度スケジュールとして抽出する。
【0003】
ネック速度スケジュールが決定されたならば、それをベースにして適切な加減速レートで速度変更させるのであるが、固定的に決められている加減速レートで速度変更した場合、板温が上下限範囲を外れるなどして操業を不安定にする結果を招くおそれもある。
【0004】
現在のところ、ネック速度スケジュールを画面表示するなどのガイダンスレベルのシステム構築はなされているものの、最終的な速度決定はオペレータの判断によるものとされているのが実情である。
【0005】
連続熱処理設備での通板速度を制御する技術として、例えば特許文献1には、板温測定値に基づいてライン速度の加減速レートを自動設定することにより、連続焼鈍炉に通板される鋼帯に板温外れを生じさせることなく、適正な加減速レートで鋼帯のライン速度を変更するようにしたライン速度の加減速レート自動設定システムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、炉負荷燃焼、熱処理方法による制約に基づいて中央速度の制約速度を算出する工程と、加減速率の決定を行う工程とを行うようにした連続焼鈍ラインの中央速度制御方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、推定された板温変化量とストリップの目標板温との偏差が許容範囲外である場合には、加熱炉の炉温制御及びストリップの通板速度の修正制御を行うようにした連続焼鈍炉における板温制御方法が開示されている。
【0008】
また、本出願人による特許文献4には、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ、予め設定した複数パターンの速度スケジュールについて、加熱炉の出側板温の応答性をシミュレーションにより予測することにより、厳密性を保ちながら、板温変化量と通板の中央速度との相関の最適化を図る、連続焼鈍炉における速度制御方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−226911号公報
【特許文献2】特開平6−330182号公報
【特許文献3】特開平2−258933号公報
【特許文献4】特開2007−63641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されたライン速度の加減速レート自動設定システムでは、制約条件に基づくネック速度スケジュールが考慮されていないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に開示された連続焼鈍ラインの中央速度制御方法では、加減速率を決定するに際して、実験から知見された各熱処理炉の板温変動しない限界速度(律速線)を用いるが、あくまでも実験に基づくものであるため、板温の制御精度の点で問題がある。
【0012】
また、特許文献3に開示された板温制御方法では、推定された板温変化量とストリップの目標板温との偏差が許容範囲外である場合に、加熱炉の炉温制御及びストリップの通板速度の修正制御を行うものであり、必ずしも最適な操業条件を決定する技術ではない。
【0013】
また、特許文献4に開示された連続焼鈍炉における速度制御方法は、一応高精度な板温制御が可能となるものの、速度変更パターンを直線的に変化させるため、通板する金属ストリップの板厚が薄い場合や変動量が大きい場合に、十分高精度に板温を制御できないことがあった。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ板温が上下限範囲を外れることなく、板温制御を高精度に保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の連続熱処理設備の速度制御方法は、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法であって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手順と、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手順と、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手順とからなり、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
本発明の連続熱処理設備の速度制御装置は、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御装置であって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手段と、前記ネック速度スケジュール作成手段により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手段と、前記シミュレーション手段により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手段とを備え、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
本発明のプログラムは、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成処理と、前記ネック速度スケジュール作成処理により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション処理と、前記シミュレーション処理により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索処理とをコンピュータに実行させ、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ、熱処理炉を模擬したシミュレータによりシミュレーションを行うことで、厳密性を保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定することができる。特に、速度変更パターンとしてネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンを採用することにより、ストリップの板厚が薄い場合やストリップの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合でも、板温外れが発生しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図13(a)に、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53及び過時効帯54を備えた連続熱処理設備の構成例を示す。鋼材などの金属ストリップS(以下、ストリップ、コイルとも称する)は、連続熱処理設備の前段で順次溶接され、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53及び過時効帯54に連続的に通板され、連続熱処理設備の後段でカッタにより再切断される。
【0018】
図1に、本発明を適用した実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の構成を示す。本実施形態に係る速度制御装置は、図13(a)に示した連続熱処理設備での通板速度を制御するものである。連続熱処理設備での通板速度、すなわち図13(a)に示す連続熱処理設備の入側から出側までの間の速度は中央速度(中央ライン速度)と称される。
【0019】
1は入力部であり、中央速度の上限値及びネック速度スケジュールに対するバイアス値をオペレータが入力するためのものである。オペレータは、不図示のオペレータ介入操作盤を介して、任意の上限値[mpm]、及び、所定の範囲で任意のバイアス値[mpm]を入力することができる。
【0020】
2はネック速度スケジュール作成部であり、連続熱処理設備の各熱処理炉51〜54での、設備能力や金属ストリップの製造仕様等の制約条件に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成する。
【0021】
3はプロセスシミュレータを含むシミュレーション部であり、ネック速度スケジュール作成部2により作成されたネック速度スケジュールをベースにして、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについて板温応答をシミュレーションして、加熱炉51の出側板温を予測する。このとき、入力部1を介して中央速度の上限値やネック速度スケジュールに対するバイアス値が入力されている場合は、それを考慮する。
【0022】
4は中央速度探索部であり、加熱炉51の出側板温を要素として含む評価関数を使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する。
【0023】
速度制御装置は、中央速度探索部4により決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールに従って、連続熱処理設備での通板速度の制御を実行する。
【0024】
また、速度制御装置は、表示装置5に、中央速度探索部4により決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールを可視的画像表示する。また、表示装置5に、例えばネック速度スケジュール作成部2により作成されるネック速度スケジュールや、プロセスシミュレータ3により作成される複数の速度スケジュールを可視的に画像表示すれば、オペレータに対する操業ガイダンス機能の向上が実現される。
【0025】
図2は、本実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS101において、ネック速度スケジュール作成部2は、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度(ネック速度)を算出する。
【0026】
例えば加熱炉51での設備仕様上の加熱能力に基づく理論制約速度VCHFは、下式(101)のように数式モデルf1を適宜用いて算出される。なお、数式モデルf1としては公知のモデルを用いることもできる。
VCHF=f1(TPH,ρ,WD,TH,VR)・・・(101)
ただし、TPH:T/H[ton/hour]、ρ:比重[ton/m3]、WD:板幅[m]、TH:板厚[m]、VR:速度達成率[−]である。
【0027】
また、均熱炉52での設備仕様上の均熱時間に基づく理論制約速度VCRSFは、下式(102)のように数式モデルf2を適宜用いて算出される。なお、数式モデルf2としては公知のモデルを用いることもできる。
VCRSF=f2(PLRSF,TrefRSF)・・・(102)
ただし、PLRSF:均熱炉パス長[m]、TrefRSF:均熱時間[sec]である。
【0028】
次に、ステップS102において、ネック速度スケジュール作成部2は、上記ステップS101で算出された加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールVCminを作成する。
【0029】
具体的には、図3に示すように、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・をすべて満たすように、理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・の最低速度をネック速度スケジュールVCminとして抽出する(図3中の実線)。
【0030】
次に、ステップS103において、シミュレーション部3は、上記ステップS102で作成されたネック速度スケジュールVCminをベースにして、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールVを作成し、それら各速度スケジュールVについてプロセスシミュレータにより加熱炉51の出側板温を予測する。
【0031】
具体的には、まず、中央速度の上限値やネック速度スケジュールに対するバイアス値が入力されている場合、上記ステップS102で作成されたネック速度スケジュールVCminを、バイアス値分だけ下げるとともに、上限値を超える部分をカットする。
【0032】
続いて、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて、複数の速度スケジュールVを作成する。本実施形態では、速度変更パターンとして、図4に点線で示すように、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするV字型パターンを採用している。図4の例で説明すれば、ネック速度VCmin1→VCmin2に移行させる際に、それら移行前後のネック速度VCmin1、VCmin2よりもいったん低速にする。同様に、ネック速度VCmin2→VCmin3に移行させる際に、それら移行前後のネック速度VCmin2、VCmin3よりもいったん低速にする。
【0033】
本実施形態では、V字型パターンを、減速開始位置a、減速レート∠b、折り返し位置c、加速レート∠dの4つのパラメータで表現しており、パラメータa〜dの複数の組み合わせを予め用意しておけばよい。なお、V字型パターンの表現の仕方はこれに限らず、例えば減速開始位置a、折り返し位置c、ネック速度到達位置eの3つのパラメータで表現することもできる。図5には、速度スケジュールVを作成している様子を示す。
【0034】
続いて、複数の速度変更パターンそれぞれに基づく速度スケジュールVについてプロセスシミュレータによりシミュレーションを実行して加熱炉51の出側板温を予測する。本実施形態では、シミュレーション部3により予測する加熱炉51の出側板温そのものではなく、図6に示すように、各速度スケジュールVについて、加熱炉51の出側板温の目標板温に対する誤差予測値ΔTS(t)[℃]を求める。加熱炉51の出側板温の目標板温は、不図示のプロセスコンピュータにより生産スケジュールに従って決定されている。
【0035】
図12にはプロセスシミュレータの一例の概略構成を示す。図12に示すプロセスシミュレータでは、下式の1〜5で表わされるラジアントチューブ温度モデル701、炉温モデル702、ハースロール温度モデル703、板温モデル704、炉壁温度モデル705が構築されており、これら数式モデルを用いて加熱炉51での熱処理を模擬演算し、複数の速度スケジュールVそれぞれについて加熱炉51の出側板温の誤差予測値ΔTS(t)[℃]を求める。
【0036】
【数1】
【0037】
なお、本実施形態では、加熱炉51の板温変化が操業上で重要であることから、加熱炉51を模擬したシミュレータを構築するようにしたが、他の熱処理炉を模擬したシミュレータを構築してもよいし、複数の熱処理炉を模擬したシミュレータを構築するようにしてもよい。
【0038】
次に、ステップS104において、中央速度探索部4は、上記ステップS103で求められた誤差予測値ΔTS(t)を要素として含む評価関数Jを使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する。
【0039】
具体的には、上記ステップS103で算出されたΣΔTS(t)2と、生産量WTV(t)(マスフロー=板幅WD*板厚TH*炉速V)と、適宜な重みQ[−]とにより、下式(103)により構成される評価関数Jを使用する。そして、複数の速度変更パターンの中から、評価関数Jによる評価値が最小の値をとる速度変更パターンを決定する。式(103)では、重みQの大きさを調整することにより、板温精度と生産量とのバランスを取ることができる。
J=ΣΔTS(t)2+QΣ1/WTV(t)・・・(103)
【0040】
その後、上記ステップS104で決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールVに従って、連続熱処理設備での通板速度の制御を実行する。
【0041】
ここで、速度変更パターンとしてV字型パターンを採用することによる作用、効果について説明する。特許文献4では、図7に点線で示すように、ネック速度を直線的に移行させて速度スケジュールを作成する構成が開示されている。
【0042】
既述したように、連続熱処理設備ではストリップSが順次溶接されて連続的に通板されるが、各ストリップSの板厚が一定であるとは限らない。すなわち、板厚の異なるストリップSが順次溶接されて連続的に通板されることもある。図13(b)は加熱炉51の概略構成を示し、板厚の異なるストリップS1〜S3が順次溶接され、連続的に通板されている様子を示す。
【0043】
そして、ストリップSの板厚が薄い場合や、ストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合に、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、板温外れが発生してしまうおそれがある。以下、その点について説明する。図8には、板厚と炉温との関係、及び、板厚とネック速度との関係を示す。板厚が板厚aより薄い場合(板厚<aの領域α)、通板のためのモータの駆動能力限界でネック速度が決まる。それに対して、板厚が板厚a以上の場合(板厚≧aの領域β)、炉の加熱能力限界でネック速度が決まる。図8の点Aでは、モータの駆動能力限界で通板させることが可能であり、板厚が薄いので、燃料をしっかり焚かなくても所望の板温を確保できる状況である。それに対して、点Bでは、板厚が厚いので、燃料をしっかり焚いて炉温を限界まで上げるとともに、速度を落として炉に滞在する時間を延ばして板温を確保する状況である。
【0044】
ストリップSの板厚が領域βだけで変化する場合は、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させても、板温外れが発生することはない。しかしながら、ストリップSの板厚が領域αで変化したり、領域αと領域βとに跨って変化(図8の点A⇔点B)したりする場合、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、板温外れが発生してしまうおそれがある。
【0045】
これは、加熱炉51での板温制御は、速度と炉温(=燃料流量)が操作端となるが、これら2つの操作端の応答性が著しく異なるためである。すなわち、速度は応答性が高く、すぐに変更することができる(例えば数十秒〜数分程度)が、炉温は応答性が低く、炉温を上げる(下げる)には時間がかかる(例えば100度上昇させるためには数十分程度)。そして、領域βでは炉温が最大となる定常状態にあるので炉温の応答性は問題とならないが、領域αでは炉温が変動する非定常状態にあるので炉温の応答性が問題となり、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、炉温の影響が追いつかずに板温外れが発生してしまう。
【0046】
そこで、V字型パターンを導入することにより、ストリップSの板厚が薄い場合や、ストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合にも、板温外れを防ぐようにしたものである。
【0047】
図9は、ストリップSの板厚が点Aから点Bに変化するとき、すなわち板厚が厚くなる(図9(a)を参照)ときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。板厚が厚くなることから、図9(b)に示すように、タイミング901で炉温を上昇させている。
【0048】
また、図9(c)に示すように、V字型パターンを導入することにより、タイミング902で速度を下げて、板温を確保し、板厚変更タイミング903で炉温の上昇に合わせて速度を上げていき、タイミング904でネック速度に達する。なお、図9(c)中の点線は、特許文献4にあるように、ネック速度を直線的に移行させている場合の特性線である。
【0049】
この結果、図9(d)に示すように、ネック速度を直線的に移行させる場合(図9(d)中の点線)に比べて、板温が下がってしまうのを抑え、板温を確保して、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0050】
図10には、逆にストリップSの板厚が点Bから点Aに変化するとき、すなわち板厚が薄くなる(図10(a)を参照)ときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。板厚が薄くなることから、図10(b)に示すように、タイミング1001で炉温を下降させている。
【0051】
また、図10(c)に示すように、V字型パターンを導入し、タイミング1001で速度を下げて、板温が下がり過ぎないようにする。板厚変更タイミング1002で速度を上げて、タイミング1003でネック速度に達する。なお、図10(c)中の点線は、特許文献4にあるように、ネック速度を直線的に移行させている場合の特性線である。
【0052】
この結果、図10(d)に示すように、ネック速度を直線的に移行させる場合(図10(d)中の点線)に比べて、板温が下がってしまうのを抑え、板温を確保して、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0053】
なお、V字型パターンは、ストリップSの板厚が厚いときに速度を下げて板温を確保するという意味では、図9(c)、図10(c)に示すように、板厚が厚い段階で、ネック速度を緩やかに移行させる(時間をかけて次のネック速度に到達させる)形状が望ましいといえる(タイミング904、1001を参照)。
【0054】
以上述べたように、制約条件に基づくネック速度スケジュールVCminを考慮しつつ、熱処理炉を模擬したシミュレータによりシミュレーションを行うことで、厳密性を保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定することができる。特に、速度変更パターンとしてV字型パターンを採用することにより、ストリップSの板厚が薄い場合やストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合でも、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、予め用意された複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定するようにした。それに対して、第2の実施形態は、評価関数Jによる評価値が予め設定された値を満たすまで、速度変更パターンを変更して、シミュレーション、中央速度探索を繰り返すようにした例である。なお、速度制御装置の基本的な構成及び作用は第1の実施形態と同様であり、以下では相違点を中心に説明する。
【0056】
図11は、本実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS201において、第1の実施形態と同様、ネック速度スケジュール作成部2は、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度(ネック速度)を算出する。
【0057】
次に、ステップS202において、第1の実施形態と同様、ネック速度スケジュール作成部2は、上記ステップS201で算出された加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールVCminを作成する。
【0058】
次に、ステップS203において、速度変更パターンの初期値を与える。次に、ステップS204において、シミュレーション部3は、上記ステップS202で作成されたネック速度スケジュールVCminをベースにして、現在与えられている速度変更パターンに基づいて速度スケジュールVを作成し、その速度スケジュールVについてプロセスシミュレータにより加熱炉51の出側板温(加熱炉51の出側板温の目標板温に対する誤差予測値ΔTS(t)[℃])を予測する。
【0059】
次に、ステップS205において、中央速度探索部4は、上記ステップS204で求められた誤差予測値ΔTS(t)を要素として含む評価関数Jを使用して、現在与えられている速度変更パターンを評価する。そして、その評価値が予め設定された値(許容誤差ε)以内であるか否かを判定する。
【0060】
評価値が許容誤差ε以内であれば、ステップS206において、現在与えられている速度変更パターンを最適な速度変更パターンとして決定する。それに対して、評価値が許容誤差ε以内になければ、ステップS207において、速度変更パターンを修正した上で、ステップS204に戻る。ステップS207で速度変更パターンを修正する場合に、過去の実績から、どの方向に修正すれば評価関数Jによる評価値が許容誤差εに近づくかを学習させる等しておき、その方向に修正するような機能を持たせてもよい。
【0061】
以上述べた第2の実施形態では、再帰的に演算処理を行うことから、第1の実施形態に比較して演算時間が長くなる可能性があるが、評価関数Jによる評価が高い速度変更パターンを確実に求めることができる。
【0062】
なお、上記実施形態ではV字型パターンを説明したが、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンであればV字型パターンに限られるものではない。例えばネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にし、その状態を所定の時間だけ維持する台形状パターンとしてもよいし、減速及び加速を滑らかに行うU字型パターンとしてもよい。
【0063】
なお、本発明を適用した速度制御装置は具体的にはコンピュータシステム或いは装置により構成することが可能である。したがって、上述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0064】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】ネック速度スケジュールを作成する様子を示す図である。
【図4】V字型パターンを示す図である。
【図5】ネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成する様子を示す図である。
【図6】時間と板温との関係を示す特性図である。
【図7】従来の速度変更パターンを示す図である。
【図8】板厚と炉温との関係、及び、板厚とネック速度との関係を示す特性図である。
【図9】板厚が厚くなるときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。
【図10】板厚が薄くなるときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。
【図11】第2の実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】プロセスシミュレータの概要を示す図である。
【図13】連続熱処理設備の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 入力部
2 ネック速度スケジュール作成部
3 シミュレーション部
4 中央速度探索部
5 表示装置
51 加熱炉
52 均熱炉
53 冷却路
54 過時効帯
S ストリップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融めっき設備や連続焼鈍設備などの連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄鋼業などの金属製造プラントで、金属ストリップの連続溶融めっき設備や連続焼鈍設備などの連続熱処理設備において、加熱炉入側から合金化炉出側までの間、又は加熱炉入側から一連の熱処理炉出側までの間の通板速度(中央速度と称される)を制御する場合、例えば加熱炉の加熱能力や搬送ロールの搬送速度範囲等の設備能力や、金属ストリップの熱処理温度や時間等の製造仕様といった制約条件に基づいてネック速度スケジュールを決定する必要がある。制約条件が複数存在する場合は、それら制約条件をすべて満たすように、各制約条件から求められる理論制約速度の最低速度をネック速度スケジュールとして抽出する。
【0003】
ネック速度スケジュールが決定されたならば、それをベースにして適切な加減速レートで速度変更させるのであるが、固定的に決められている加減速レートで速度変更した場合、板温が上下限範囲を外れるなどして操業を不安定にする結果を招くおそれもある。
【0004】
現在のところ、ネック速度スケジュールを画面表示するなどのガイダンスレベルのシステム構築はなされているものの、最終的な速度決定はオペレータの判断によるものとされているのが実情である。
【0005】
連続熱処理設備での通板速度を制御する技術として、例えば特許文献1には、板温測定値に基づいてライン速度の加減速レートを自動設定することにより、連続焼鈍炉に通板される鋼帯に板温外れを生じさせることなく、適正な加減速レートで鋼帯のライン速度を変更するようにしたライン速度の加減速レート自動設定システムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、炉負荷燃焼、熱処理方法による制約に基づいて中央速度の制約速度を算出する工程と、加減速率の決定を行う工程とを行うようにした連続焼鈍ラインの中央速度制御方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、推定された板温変化量とストリップの目標板温との偏差が許容範囲外である場合には、加熱炉の炉温制御及びストリップの通板速度の修正制御を行うようにした連続焼鈍炉における板温制御方法が開示されている。
【0008】
また、本出願人による特許文献4には、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ、予め設定した複数パターンの速度スケジュールについて、加熱炉の出側板温の応答性をシミュレーションにより予測することにより、厳密性を保ちながら、板温変化量と通板の中央速度との相関の最適化を図る、連続焼鈍炉における速度制御方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−226911号公報
【特許文献2】特開平6−330182号公報
【特許文献3】特開平2−258933号公報
【特許文献4】特開2007−63641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されたライン速度の加減速レート自動設定システムでは、制約条件に基づくネック速度スケジュールが考慮されていないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に開示された連続焼鈍ラインの中央速度制御方法では、加減速率を決定するに際して、実験から知見された各熱処理炉の板温変動しない限界速度(律速線)を用いるが、あくまでも実験に基づくものであるため、板温の制御精度の点で問題がある。
【0012】
また、特許文献3に開示された板温制御方法では、推定された板温変化量とストリップの目標板温との偏差が許容範囲外である場合に、加熱炉の炉温制御及びストリップの通板速度の修正制御を行うものであり、必ずしも最適な操業条件を決定する技術ではない。
【0013】
また、特許文献4に開示された連続焼鈍炉における速度制御方法は、一応高精度な板温制御が可能となるものの、速度変更パターンを直線的に変化させるため、通板する金属ストリップの板厚が薄い場合や変動量が大きい場合に、十分高精度に板温を制御できないことがあった。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ板温が上下限範囲を外れることなく、板温制御を高精度に保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の連続熱処理設備の速度制御方法は、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法であって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手順と、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手順と、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手順とからなり、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
本発明の連続熱処理設備の速度制御装置は、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御装置であって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手段と、前記ネック速度スケジュール作成手段により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手段と、前記シミュレーション手段により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手段とを備え、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
本発明のプログラムは、連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成処理と、前記ネック速度スケジュール作成処理により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション処理と、前記シミュレーション処理により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索処理とをコンピュータに実行させ、前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制約条件に基づくネック速度スケジュールを考慮しつつ、熱処理炉を模擬したシミュレータによりシミュレーションを行うことで、厳密性を保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定することができる。特に、速度変更パターンとしてネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンを採用することにより、ストリップの板厚が薄い場合やストリップの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合でも、板温外れが発生しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図13(a)に、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53及び過時効帯54を備えた連続熱処理設備の構成例を示す。鋼材などの金属ストリップS(以下、ストリップ、コイルとも称する)は、連続熱処理設備の前段で順次溶接され、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53及び過時効帯54に連続的に通板され、連続熱処理設備の後段でカッタにより再切断される。
【0018】
図1に、本発明を適用した実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の構成を示す。本実施形態に係る速度制御装置は、図13(a)に示した連続熱処理設備での通板速度を制御するものである。連続熱処理設備での通板速度、すなわち図13(a)に示す連続熱処理設備の入側から出側までの間の速度は中央速度(中央ライン速度)と称される。
【0019】
1は入力部であり、中央速度の上限値及びネック速度スケジュールに対するバイアス値をオペレータが入力するためのものである。オペレータは、不図示のオペレータ介入操作盤を介して、任意の上限値[mpm]、及び、所定の範囲で任意のバイアス値[mpm]を入力することができる。
【0020】
2はネック速度スケジュール作成部であり、連続熱処理設備の各熱処理炉51〜54での、設備能力や金属ストリップの製造仕様等の制約条件に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成する。
【0021】
3はプロセスシミュレータを含むシミュレーション部であり、ネック速度スケジュール作成部2により作成されたネック速度スケジュールをベースにして、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについて板温応答をシミュレーションして、加熱炉51の出側板温を予測する。このとき、入力部1を介して中央速度の上限値やネック速度スケジュールに対するバイアス値が入力されている場合は、それを考慮する。
【0022】
4は中央速度探索部であり、加熱炉51の出側板温を要素として含む評価関数を使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する。
【0023】
速度制御装置は、中央速度探索部4により決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールに従って、連続熱処理設備での通板速度の制御を実行する。
【0024】
また、速度制御装置は、表示装置5に、中央速度探索部4により決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールを可視的画像表示する。また、表示装置5に、例えばネック速度スケジュール作成部2により作成されるネック速度スケジュールや、プロセスシミュレータ3により作成される複数の速度スケジュールを可視的に画像表示すれば、オペレータに対する操業ガイダンス機能の向上が実現される。
【0025】
図2は、本実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS101において、ネック速度スケジュール作成部2は、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度(ネック速度)を算出する。
【0026】
例えば加熱炉51での設備仕様上の加熱能力に基づく理論制約速度VCHFは、下式(101)のように数式モデルf1を適宜用いて算出される。なお、数式モデルf1としては公知のモデルを用いることもできる。
VCHF=f1(TPH,ρ,WD,TH,VR)・・・(101)
ただし、TPH:T/H[ton/hour]、ρ:比重[ton/m3]、WD:板幅[m]、TH:板厚[m]、VR:速度達成率[−]である。
【0027】
また、均熱炉52での設備仕様上の均熱時間に基づく理論制約速度VCRSFは、下式(102)のように数式モデルf2を適宜用いて算出される。なお、数式モデルf2としては公知のモデルを用いることもできる。
VCRSF=f2(PLRSF,TrefRSF)・・・(102)
ただし、PLRSF:均熱炉パス長[m]、TrefRSF:均熱時間[sec]である。
【0028】
次に、ステップS102において、ネック速度スケジュール作成部2は、上記ステップS101で算出された加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールVCminを作成する。
【0029】
具体的には、図3に示すように、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・をすべて満たすように、理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・の最低速度をネック速度スケジュールVCminとして抽出する(図3中の実線)。
【0030】
次に、ステップS103において、シミュレーション部3は、上記ステップS102で作成されたネック速度スケジュールVCminをベースにして、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールVを作成し、それら各速度スケジュールVについてプロセスシミュレータにより加熱炉51の出側板温を予測する。
【0031】
具体的には、まず、中央速度の上限値やネック速度スケジュールに対するバイアス値が入力されている場合、上記ステップS102で作成されたネック速度スケジュールVCminを、バイアス値分だけ下げるとともに、上限値を超える部分をカットする。
【0032】
続いて、予め用意された複数の速度変更パターンに基づいて、複数の速度スケジュールVを作成する。本実施形態では、速度変更パターンとして、図4に点線で示すように、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするV字型パターンを採用している。図4の例で説明すれば、ネック速度VCmin1→VCmin2に移行させる際に、それら移行前後のネック速度VCmin1、VCmin2よりもいったん低速にする。同様に、ネック速度VCmin2→VCmin3に移行させる際に、それら移行前後のネック速度VCmin2、VCmin3よりもいったん低速にする。
【0033】
本実施形態では、V字型パターンを、減速開始位置a、減速レート∠b、折り返し位置c、加速レート∠dの4つのパラメータで表現しており、パラメータa〜dの複数の組み合わせを予め用意しておけばよい。なお、V字型パターンの表現の仕方はこれに限らず、例えば減速開始位置a、折り返し位置c、ネック速度到達位置eの3つのパラメータで表現することもできる。図5には、速度スケジュールVを作成している様子を示す。
【0034】
続いて、複数の速度変更パターンそれぞれに基づく速度スケジュールVについてプロセスシミュレータによりシミュレーションを実行して加熱炉51の出側板温を予測する。本実施形態では、シミュレーション部3により予測する加熱炉51の出側板温そのものではなく、図6に示すように、各速度スケジュールVについて、加熱炉51の出側板温の目標板温に対する誤差予測値ΔTS(t)[℃]を求める。加熱炉51の出側板温の目標板温は、不図示のプロセスコンピュータにより生産スケジュールに従って決定されている。
【0035】
図12にはプロセスシミュレータの一例の概略構成を示す。図12に示すプロセスシミュレータでは、下式の1〜5で表わされるラジアントチューブ温度モデル701、炉温モデル702、ハースロール温度モデル703、板温モデル704、炉壁温度モデル705が構築されており、これら数式モデルを用いて加熱炉51での熱処理を模擬演算し、複数の速度スケジュールVそれぞれについて加熱炉51の出側板温の誤差予測値ΔTS(t)[℃]を求める。
【0036】
【数1】
【0037】
なお、本実施形態では、加熱炉51の板温変化が操業上で重要であることから、加熱炉51を模擬したシミュレータを構築するようにしたが、他の熱処理炉を模擬したシミュレータを構築してもよいし、複数の熱処理炉を模擬したシミュレータを構築するようにしてもよい。
【0038】
次に、ステップS104において、中央速度探索部4は、上記ステップS103で求められた誤差予測値ΔTS(t)を要素として含む評価関数Jを使用して、複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定する。
【0039】
具体的には、上記ステップS103で算出されたΣΔTS(t)2と、生産量WTV(t)(マスフロー=板幅WD*板厚TH*炉速V)と、適宜な重みQ[−]とにより、下式(103)により構成される評価関数Jを使用する。そして、複数の速度変更パターンの中から、評価関数Jによる評価値が最小の値をとる速度変更パターンを決定する。式(103)では、重みQの大きさを調整することにより、板温精度と生産量とのバランスを取ることができる。
J=ΣΔTS(t)2+QΣ1/WTV(t)・・・(103)
【0040】
その後、上記ステップS104で決定された速度変更パターンに基づく速度スケジュールVに従って、連続熱処理設備での通板速度の制御を実行する。
【0041】
ここで、速度変更パターンとしてV字型パターンを採用することによる作用、効果について説明する。特許文献4では、図7に点線で示すように、ネック速度を直線的に移行させて速度スケジュールを作成する構成が開示されている。
【0042】
既述したように、連続熱処理設備ではストリップSが順次溶接されて連続的に通板されるが、各ストリップSの板厚が一定であるとは限らない。すなわち、板厚の異なるストリップSが順次溶接されて連続的に通板されることもある。図13(b)は加熱炉51の概略構成を示し、板厚の異なるストリップS1〜S3が順次溶接され、連続的に通板されている様子を示す。
【0043】
そして、ストリップSの板厚が薄い場合や、ストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合に、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、板温外れが発生してしまうおそれがある。以下、その点について説明する。図8には、板厚と炉温との関係、及び、板厚とネック速度との関係を示す。板厚が板厚aより薄い場合(板厚<aの領域α)、通板のためのモータの駆動能力限界でネック速度が決まる。それに対して、板厚が板厚a以上の場合(板厚≧aの領域β)、炉の加熱能力限界でネック速度が決まる。図8の点Aでは、モータの駆動能力限界で通板させることが可能であり、板厚が薄いので、燃料をしっかり焚かなくても所望の板温を確保できる状況である。それに対して、点Bでは、板厚が厚いので、燃料をしっかり焚いて炉温を限界まで上げるとともに、速度を落として炉に滞在する時間を延ばして板温を確保する状況である。
【0044】
ストリップSの板厚が領域βだけで変化する場合は、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させても、板温外れが発生することはない。しかしながら、ストリップSの板厚が領域αで変化したり、領域αと領域βとに跨って変化(図8の点A⇔点B)したりする場合、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、板温外れが発生してしまうおそれがある。
【0045】
これは、加熱炉51での板温制御は、速度と炉温(=燃料流量)が操作端となるが、これら2つの操作端の応答性が著しく異なるためである。すなわち、速度は応答性が高く、すぐに変更することができる(例えば数十秒〜数分程度)が、炉温は応答性が低く、炉温を上げる(下げる)には時間がかかる(例えば100度上昇させるためには数十分程度)。そして、領域βでは炉温が最大となる定常状態にあるので炉温の応答性は問題とならないが、領域αでは炉温が変動する非定常状態にあるので炉温の応答性が問題となり、図7に示すようにネック速度を直線的に移行させると、炉温の影響が追いつかずに板温外れが発生してしまう。
【0046】
そこで、V字型パターンを導入することにより、ストリップSの板厚が薄い場合や、ストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合にも、板温外れを防ぐようにしたものである。
【0047】
図9は、ストリップSの板厚が点Aから点Bに変化するとき、すなわち板厚が厚くなる(図9(a)を参照)ときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。板厚が厚くなることから、図9(b)に示すように、タイミング901で炉温を上昇させている。
【0048】
また、図9(c)に示すように、V字型パターンを導入することにより、タイミング902で速度を下げて、板温を確保し、板厚変更タイミング903で炉温の上昇に合わせて速度を上げていき、タイミング904でネック速度に達する。なお、図9(c)中の点線は、特許文献4にあるように、ネック速度を直線的に移行させている場合の特性線である。
【0049】
この結果、図9(d)に示すように、ネック速度を直線的に移行させる場合(図9(d)中の点線)に比べて、板温が下がってしまうのを抑え、板温を確保して、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0050】
図10には、逆にストリップSの板厚が点Bから点Aに変化するとき、すなわち板厚が薄くなる(図10(a)を参照)ときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。板厚が薄くなることから、図10(b)に示すように、タイミング1001で炉温を下降させている。
【0051】
また、図10(c)に示すように、V字型パターンを導入し、タイミング1001で速度を下げて、板温が下がり過ぎないようにする。板厚変更タイミング1002で速度を上げて、タイミング1003でネック速度に達する。なお、図10(c)中の点線は、特許文献4にあるように、ネック速度を直線的に移行させている場合の特性線である。
【0052】
この結果、図10(d)に示すように、ネック速度を直線的に移行させる場合(図10(d)中の点線)に比べて、板温が下がってしまうのを抑え、板温を確保して、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0053】
なお、V字型パターンは、ストリップSの板厚が厚いときに速度を下げて板温を確保するという意味では、図9(c)、図10(c)に示すように、板厚が厚い段階で、ネック速度を緩やかに移行させる(時間をかけて次のネック速度に到達させる)形状が望ましいといえる(タイミング904、1001を参照)。
【0054】
以上述べたように、制約条件に基づくネック速度スケジュールVCminを考慮しつつ、熱処理炉を模擬したシミュレータによりシミュレーションを行うことで、厳密性を保ちながら、板温変化量と速度変更パターンを同時に計算して可及的に良好な操業条件を決定することができる。特に、速度変更パターンとしてV字型パターンを採用することにより、ストリップSの板厚が薄い場合やストリップSの板厚が所定の範囲を越えて変化する場合でも、板温外れが発生しないようにすることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、予め用意された複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定するようにした。それに対して、第2の実施形態は、評価関数Jによる評価値が予め設定された値を満たすまで、速度変更パターンを変更して、シミュレーション、中央速度探索を繰り返すようにした例である。なお、速度制御装置の基本的な構成及び作用は第1の実施形態と同様であり、以下では相違点を中心に説明する。
【0056】
図11は、本実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS201において、第1の実施形態と同様、ネック速度スケジュール作成部2は、加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度(ネック速度)を算出する。
【0057】
次に、ステップS202において、第1の実施形態と同様、ネック速度スケジュール作成部2は、上記ステップS201で算出された加熱炉51、均熱炉52、冷却炉53などでの理論制約速度VCHF、VCRSF、・・・に基づいて、ストリップSが現在から所定距離x[m]だけ進行する間のネック速度スケジュールVCminを作成する。
【0058】
次に、ステップS203において、速度変更パターンの初期値を与える。次に、ステップS204において、シミュレーション部3は、上記ステップS202で作成されたネック速度スケジュールVCminをベースにして、現在与えられている速度変更パターンに基づいて速度スケジュールVを作成し、その速度スケジュールVについてプロセスシミュレータにより加熱炉51の出側板温(加熱炉51の出側板温の目標板温に対する誤差予測値ΔTS(t)[℃])を予測する。
【0059】
次に、ステップS205において、中央速度探索部4は、上記ステップS204で求められた誤差予測値ΔTS(t)を要素として含む評価関数Jを使用して、現在与えられている速度変更パターンを評価する。そして、その評価値が予め設定された値(許容誤差ε)以内であるか否かを判定する。
【0060】
評価値が許容誤差ε以内であれば、ステップS206において、現在与えられている速度変更パターンを最適な速度変更パターンとして決定する。それに対して、評価値が許容誤差ε以内になければ、ステップS207において、速度変更パターンを修正した上で、ステップS204に戻る。ステップS207で速度変更パターンを修正する場合に、過去の実績から、どの方向に修正すれば評価関数Jによる評価値が許容誤差εに近づくかを学習させる等しておき、その方向に修正するような機能を持たせてもよい。
【0061】
以上述べた第2の実施形態では、再帰的に演算処理を行うことから、第1の実施形態に比較して演算時間が長くなる可能性があるが、評価関数Jによる評価が高い速度変更パターンを確実に求めることができる。
【0062】
なお、上記実施形態ではV字型パターンを説明したが、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンであればV字型パターンに限られるものではない。例えばネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にし、その状態を所定の時間だけ維持する台形状パターンとしてもよいし、減速及び加速を滑らかに行うU字型パターンとしてもよい。
【0063】
なお、本発明を適用した速度制御装置は具体的にはコンピュータシステム或いは装置により構成することが可能である。したがって、上述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0064】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態に係る連続熱処理設備の速度制御装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】ネック速度スケジュールを作成する様子を示す図である。
【図4】V字型パターンを示す図である。
【図5】ネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成する様子を示す図である。
【図6】時間と板温との関係を示す特性図である。
【図7】従来の速度変更パターンを示す図である。
【図8】板厚と炉温との関係、及び、板厚とネック速度との関係を示す特性図である。
【図9】板厚が厚くなるときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。
【図10】板厚が薄くなるときの炉温、速度、板温の状態を示す特性図である。
【図11】第2の実施形態に係る速度制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】プロセスシミュレータの概要を示す図である。
【図13】連続熱処理設備の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 入力部
2 ネック速度スケジュール作成部
3 シミュレーション部
4 中央速度探索部
5 表示装置
51 加熱炉
52 均熱炉
53 冷却路
54 過時効帯
S ストリップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法であって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手順と、
前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手順と、
前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手順とからなり、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項2】
前記シミュレーション手順では、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについて前記シミュレータにより板温を予測し、
前記速度探索手順では、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定することを特徴とする請求項1に記載の連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項3】
前記シミュレーション手順では、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして一の速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記シミュレータにより板温を予測し、
前記速度探索手順では、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して評価値を算出し、
前記評価値が予め設定された値を満たすまで、前記一の速度変更パターンを変更して、前記シミュレーション手順、前記速度探索手順を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項4】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御装置であって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手段と、
前記ネック速度スケジュール作成手段により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手段と、
前記シミュレーション手段により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手段とを備え、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする連続熱処理設備の速度制御装置。
【請求項5】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成処理と、
前記ネック速度スケジュール作成処理により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション処理と、
前記シミュレーション処理により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索処理とをコンピュータに実行させ、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御方法であって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手順と、
前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手順と、
前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手順とからなり、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項2】
前記シミュレーション手順では、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして複数の速度変更パターンに基づいて複数の速度スケジュールを作成し、それら各速度スケジュールについて前記シミュレータにより板温を予測し、
前記速度探索手順では、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記複数の速度変更パターンを評価し、その中から速度変更パターンを決定することを特徴とする請求項1に記載の連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項3】
前記シミュレーション手順では、前記ネック速度スケジュール作成手順により作成されたネック速度スケジュールをベースにして一の速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記シミュレータにより板温を予測し、
前記速度探索手順では、前記シミュレーション手順により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して評価値を算出し、
前記評価値が予め設定された値を満たすまで、前記一の速度変更パターンを変更して、前記シミュレーション手順、前記速度探索手順を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の連続熱処理設備の速度制御方法。
【請求項4】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御するための速度制御装置であって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成手段と、
前記ネック速度スケジュール作成手段により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション手段と、
前記シミュレーション手段により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索手段とを備え、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とする連続熱処理設備の速度制御装置。
【請求項5】
連続熱処理設備でのストリップの通板速度を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記連続熱処理設備での制約条件に基づいて、ストリップが所定距離だけ進行する間のネック速度スケジュールを作成するネック速度スケジュール作成処理と、
前記ネック速度スケジュール作成処理により作成されたネック速度スケジュールをベースにして速度変更パターンに基づいて速度スケジュールを作成し、その速度スケジュールについて前記連続熱処理設備に含まれる所定の熱処理炉を模擬したシミュレータにより板温を予測するシミュレーション処理と、
前記シミュレーション処理により得られた結果を要素として含む評価関数を使用して、前記速度変更パターンを評価し、その評価の結果に応じて速度変更パターンを決定する速度探索処理とをコンピュータに実行させ、
前記速度変更パターンを、ネック速度を移行させる際に、その移行前後のネック速度よりもいったん低速にするパターンとすることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−90455(P2010−90455A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263222(P2008−263222)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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