説明

運転支援装置および方法、並びに、プログラム

【課題】ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させる。
【解決手段】年齢推定部112は、撮影部111により撮影された顔画像に基づいて、ドライバの年齢を推定する。脇見検出部121は、ドライバの年齢が高くなるほど、より脇見が検出されやすくなるように、脇見を検出する条件を緩く設定する。ドライバの年齢が高年齢層である場合、障害物検出警告部132は、障害物の接近を警告するタイミングを早くし、他車検出警告部142は、他車の接近を警告するタイミングを早くし、コーナリング制御部152は、自車が右折するとき、通常より外側の軌道を通るようにコーナリングを制御し、左右確認警告部153は、交差点においてドライバが左右を確認しないときに警告する。本発明は、運転支援装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置および方法、並びに、プログラムに関し、特に、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させるようにした運転支援装置および方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転免許取得者の高齢化に伴い、高齢のドライバが第一当事者になる交通事故の件数が増加している。
【0003】
その原因として、高齢化に伴う視野の狭小化、知覚能力、反射神経、運動能力、判断力などの低下による運転能力の低下が挙げられる。さらに、高齢者が、自己の運転能力の低下に気づかずに、従来と同じ感覚で運転する傾向が強い点も事故の増加を招く一因となっている。
【0004】
そこで、予めドライバの年齢層を設定しておき、設定された年齢層に応じて、ドライバに対する警報を出力するタイミング、警報音の大きさ、警報表示の大きさなどを制御することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−317197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、予めドライバの年齢層を設定する必要があり、手間がかかってしまう。また、設定を忘れたり、設定の更新を行わなかったりして、実際のドライバの年齢と設定内容が一致しない場合、ドライバに対して適切な警報を行うことができない。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の運転支援装置は、ドライバを撮影した画像に基づいて、ドライバの年齢を推定する推定手段と、推定されたドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援を行う運転支援手段とを備える。
【0009】
本発明の一側面の運転支援装置においては、ドライバを撮影した画像に基づいて、ドライバの年齢が推定され、推定されたドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援が行われる。
【0010】
従って、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させることができる。
【0011】
この推定手段は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成される。この運転支援手段は、例えば、CPU、または、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。
【0012】
この運転支援手段には、ドライバの脇見を検出する脇見検出手段を設け、この脇見検出手段は、推定年齢が高くなるほど、脇見を検出する条件を緩くさせるようにすることができる。
【0013】
これにより、高齢者の脇見による事故をより確実に防止することができる。
【0014】
この脇見検出手段は、例えば、CPU、または、ECUにより構成される。
【0015】
この運転支援手段には、ドライバに危険を警告する警告手段を設け、この警告手段には、推定年齢が高くなるほど、警告を行うタイミングを早くさせるようにすることができる。
【0016】
これにより、高齢者がより確実に危険を回避することができる。
【0017】
この警告手段は、例えば、CPU、または、ECUにより構成される。
【0018】
この警告手段には、障害物または他の車両の接近を警告させることができる。
【0019】
これにより、障害物または他の車両との衝突や接触などをより確実に防止することができる。
【0020】
この運転支援手段には、ドライバが運転する車両のコーナリングを制御するコーナリング制御手段を設け、このコーナリング制御手段には、推定年齢が所定の年齢以上である場合、車両が右折するとき、通常の軌道より外側を通るように車両のコーナリングを制御させることができる。
【0021】
これにより、高齢者の交差点での事故を防止することができる。
【0022】
このコーナリング制御手段は、例えば、CPU、または、ECUにより構成される。
【0023】
この運転支援手段には、推定年齢が所定の年齢以上である場合、交差点においてドライバが左右の確認を行うかを監視し、左右の確認を行わない場合に警告する左右確認警告手段を設けることができる。
【0024】
これにより、高齢者の交差点での事故を防止することができる。
【0025】
この左右確認警告手段は、例えば、CPU、または、ECUにより構成される。
【0026】
本発明の一側面の運転支援方法またはプログラムは、ドライバを撮影した画像に基づいて、ドライバの年齢を推定する推定ステップと、推定されたドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援を行う運転支援ステップとを含む。
【0027】
本発明の一側面の運転支援方法またはプログラムにおいては、ドライバを撮影した画像に基づいて、ドライバの年齢が推定され、推定されたドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援が行われる。
【0028】
従って、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させることができる。
【0029】
この推定ステップは、例えば、ドライバを撮影した画像に基づいて、ドライバの年齢をCPUにより推定する推定ステップにより構成され、この運転支援ステップは、例えば、推定されたドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援をCPUまたはECUにより行う運転支援ステップにより構成される。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の一側面によれば、運転の安全性を向上させることができる。特に、本発明の一側面によれば、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明を適用した運転支援装置の一実施の形態を示すブロック図である。運転支援装置101は、運転支援装置101が設けられている車両(以下、自車とも称する)を運転するドライバの運転の支援を行う装置であり、撮影部111、年齢推定部112、および、運転支援部113を含むように構成される。
【0033】
撮影部111は、例えば、カメラにより構成され、ほぼ正面方向からドライバの顔を撮影する。撮影部111は、撮影したドライバの顔を含む画像(以下、顔画像と称する)を年齢推定部112、運転支援部113の脇見検出部121、および、運転支援部113の車両制御部124の左右確認警告部153に供給する。
【0034】
年齢推定部112は、図3を参照して後述するように、自車を運転するドライバの年齢を推定し、推定結果を示す情報を、運転支援部113の脇見検出部121、障害物検出制御部122、他車検出制御部123、および、車両制御部124に供給する。
【0035】
運転支援部113は、年齢推定部112により推定されたドライバの年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援を行う。運転支援部113は、脇見検出部121、障害物検出制御部122、他車検出制御部123、および、車両制御部124を含むように構成される。
【0036】
脇見検出部121は、ドライバの脇見の検出を行い、ドライバの脇見を検出した場合、脇見運転を止めるようにドライバに警告する。脇見検出部121は、例えば、自車に設けられている図示せぬ表示装置(例えば、カーナビゲーションシステム151のモニタなど)に脇見運転を止めるように促す警告表示を表示させたり、図示せぬスピーカから脇見運転を止めるように促す警告音を出力させたりすることによりドライバへの警告を行う。
【0037】
障害物検出制御部122は、前方の車両や落下物などの自車の進行を妨げる障害物の検出を行い、自車の前方に障害物を検出した場合、障害物の接近をドライバに警告する。障害物検出制御部122は、前方監視部131および障害物検出警告部132を含むように構成される。
【0038】
前方監視部131は、自車の前方を撮影するカメラ、または、自車の前方の物体を検出するレーダやセンサなどを含むように構成され、自車の前方の監視を行い、監視結果を示す情報を障害物検出警告部132に供給する。
【0039】
障害物検出警告部132は、前方監視部131による監視結果に基づいて、自車の前方に障害物を検出した場合、障害物の接近をドライバに警告する。障害物検出警告部132は、例えば、自車に設けられている図示せぬ表示装置(例えば、カーナビゲーションシステム151のモニタなど)に障害物の接近を警告する警告表示を表示させたり、図示せぬスピーカから障害物の接近を警告する警告音を出力させたりすることによりドライバへの警告を行う。
【0040】
他車検出制御部123は、自車の近くに存在する他車の検出を行い、他車の接近を検出した場合、他車の接近をドライバに警告する。他車検出制御部123は、車車間通信部141および他車検出警告部142を含むように構成される。
【0041】
車車間通信部141は、自車の近くに存在する他車と車車間通信を行い、通信相手である他車に関する情報、他車に設けられているカメラやセンサなどにより取得された情報などを受信したり、自車に関する情報、自車に設けられているカメラやセンサなどにより取得された情報などを送信したりする。車車間通信部141は、他車から受信した情報を他車検出警告部142に供給する。
【0042】
他車検出警告部142は、車車間通信部141からの情報に基づいて、他車の接近を検出した場合、他車の接近をドライバに警告する。他車検出警告部142は、例えば、自車に設けられている図示せぬ表示装置(例えば、カーナビゲーションシステム151のモニタなど)に他車の接近を警告する警告表示を表示させたり、図示せぬスピーカから他車の接近を警告する警告音を出力させたりすることによりドライバへの警告を行う。
【0043】
なお、他車検出警告部142は、車車間通信により受信した情報に基づいて、他車の接近を検出するので、見通しの悪い交差点などに自車から見えない、または、見づらい位置における他車の接近も容易に検出することが可能である。
【0044】
車両制御部124は、自車が交差点を通行する際の運転の支援を行う。車両制御部124は、カーナビゲーションシステム151、コーナリング制御部152、および、左右確認警告部153を含むように構成される。
【0045】
カーナビゲーションシステム151は、例えば、市販のカーナビゲーションシステムにより構成され、目的地までのルート、現在位置、道路の状態、渋滞情報、周辺情報などのカーナビゲーションシステム151が処理する各種の情報をコーナリング制御部152、および、左右確認警告部153に供給する。
【0046】
コーナリング制御部152は、自車のコーナリングを制御する。すなわち、コーナリング制御部152は、自車のステアリングなどを制御することにより、自車がカーブを曲がるときの軌道などを制御する。
【0047】
左右確認警告部153は、交差点においてドライバが左右の確認を行うかを監視し、ドライバが左右を確認していないことを検出した場合、左右を確認するようにドライバに警告する。左右確認警告部153は、例えば、自車に設けられている図示せぬ表示装置(例えば、カーナビゲーションシステム151のモニタなど)に左右の確認を促す警告表示を表示させたり、図示せぬスピーカから左右の確認を促す警告音を出力させたりすることによりドライバへの警告を行う。
【0048】
図2は、図1の年齢推定部112の機能的構成を示すブロック図である。年齢推定部112は、顔検出部181、特徴点検出部182、特徴量抽出部183、および、推定部184を含むように構成される。
【0049】
顔検出部181は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔を検出する。顔検出部181は、顔画像、および、ドライバの顔の位置を示す情報を特徴点検出部182に供給する。なお、顔検出部181がドライバの顔を検出する手法は、特定の手法に限定されるものではなく、ドライバの顔をより迅速かつ正確に検出できる手法を適用することが望ましい。
【0050】
特徴点検出部182は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔の特徴点を検出する。特徴点検出部182は、例えば、ドライバの両目の中心、口の中心、鼻の頂点などを特徴点として検出する。特徴点検出部182は、顔画像、および、検出した特徴点を示す情報を特徴量抽出部183に供給する。なお、特徴点検出部182が顔の特徴点を検出する手法は、特定の手法に限定されるものではなく、顔の特徴点をより迅速かつ正確に検出できる手法を適用することが望ましい。
【0051】
特徴量抽出部183は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔の特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部183は、Retinal Samplingの手法を用いて、ドライバの顔の特徴点に近いほど密に、遠いほど粗になるように、特徴量を抽出するサンプリング位置を設定し、特徴点を基準にガボールウェーブレット変換(GWT)を適用することにより、各サンプリング位置における画像の濃淡の周期性と方向性を特徴量として抽出する。特徴量抽出部183は、抽出した特徴量を示す情報を推定部184に供給する。なお、特徴量抽出部183が特徴量を抽出する手法は、特定の手法に限定されるものではなく、特徴量をより迅速かつ正確に抽出できる手法を適用することが望ましい。
【0052】
推定部184は、所定の手法を用いて、ドライバの年齢を推定する。推定部184は、例えば、サポートベクタマシン(SVM)を用いて、特徴量抽出部183により抽出された特徴量に基づいて、ドライバの年齢が、青年層(例えば、18乃至30歳)、壮年層(例えば、31乃至64歳)、高年齢層(例えば、65歳以上)のどの年代に属するかを推定する。推定部184は、推定結果を示す情報を脇見検出部121、障害物検出制御部122、他車検出制御部123、および、車両制御部124に供給する。なお、推定部184がドライバの年齢を推定する手法は、特定の手法に限定されるものではなく、ドライバの年齢をより迅速かつ正確に推定できる手法を適用することが望ましい。
【0053】
なお、以下、推定部184が、ドライバの年齢が青年層(18乃至30歳)、壮年層(31乃至64歳)、高年齢層(65歳以上)のどの年代に属するかを推定する場合の例について説明する。
【0054】
また、顔画像に基づいて人の年齢を推定する手法については、例えば、「細井 聖ほか、ガボールウェーブレット変換とサポートベクタマシンによる性別・年代推定システム、日本、第8回画像センシングシンポジウム講演論文集、画像センシング技術研究会、2002年7月、243乃至246ページ」などに詳細が開示されている。
【0055】
次に、図3および図4のフローチャートを参照して、運転支援装置101により実行される運転支援開始処理について説明する。なお、この処理は、例えば、自車のエンジンが始動されたとき開始される。
【0056】
ステップS1において、前方監視部131は、自車の前方の監視を開始する。また、前方監視部131は、自車の前方の物体の有無、物体の位置、物体の種類などの監視結果を示す情報の障害物検出警告部132への供給を開始する。
【0057】
ステップS2において、車車間通信部141は、車車間通信を開始する。具体的には、車車間通信部141は、自車の近くに存在する他車と車車間通信を行い、通信相手である他車に関する情報、他車に設けられているカメラやセンサなどにより取得された情報などを受信したり、自車に関する情報、自車に設けられているカメラやセンサなどにより取得された情報などを送信したりする処理を開始する。車車間通信部141は、他車から情報を受信した場合、受信した情報を他車検出警告部142に供給する。
【0058】
ステップS3において、カーナビゲーションシステム151は、ルート案内を開始する。具体的には、カーナビゲーションシステム151は、目的地が設定された場合、地図データに基づいて、目的地までのルートを検出する。カーナビゲーションシステム151は、測地衛星からの電波を受信して、自車の現在位置の検出を開始し、検出したルートに従って目的地にたどり着けるようにルートの案内を開始する。また、カーナビゲーションシステム151は、目的地までのルート、現在位置、道路の状態、渋滞情報、周辺情報などのカーナビゲーションシステム151が処理する各種の情報のコーナリング制御部152および左右確認警告部153への供給を開始する。
【0059】
ステップS4において、撮影部111は、ドライバの顔の撮影を開始する。撮影部111は、撮影した顔画像の脇見検出部121、左右確認警告部153、および、顔検出部181への供給を開始する。
【0060】
ステップS5において、年齢推定部112は、ドライバの年齢を推定する。具体的には、顔検出部181は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔を検出する。顔検出部181は、顔画像、および、ドライバの顔の位置を示す情報を特徴点検出部182に供給する。
【0061】
特徴点検出部182は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔の特徴点を検出する。特徴点検出部182は、顔画像、および、検出した特徴点を示す情報を特徴量抽出部183に供給する。
【0062】
特徴量抽出部183は、所定の手法を用いて、顔画像に写っているドライバの顔の特徴量を抽出する。特徴量抽出部183は、抽出した特徴量を示す情報を推定部184に供給する。
【0063】
推定部184は、所定の手法を用いて、特徴量抽出部183により抽出された特徴量に基づいて、ドライバの年齢が青年層、壮年層および高年齢層のどの年代に属するかを推定する。推定部184は、推定結果を示す情報を脇見検出部121、障害物検出制御部122、他車検出制御部123、および、車両制御部124に供給する。
【0064】
ステップS6において、脇見検出部121は、ドライバの年齢に応じた脇見の検出を開始する。具体的には、脇見検出部121は、ドライバが脇見をしているか否かを判定する角度(以下、脇見判定角度と称する)をドライバの年齢に応じて設定する。
【0065】
人の視野の広さは、青年層(18乃至30歳)における値を100%とした場合、壮年層(31乃至64歳)における値は約60%になり、高年齢層(65歳以上)における値は30%になることが知られている。例えば、脇見検出部121は、この値に基づいて、壮年層のドライバに対する脇見判定角度を、青年層のドライバに対する脇見判定角度の2/3に設定し、高年齢層のドライバに対する脇見判定角度を、青年層のドライバに対する脇見判定角度の1/3に設定する。従って、青年層のドライバに対する脇見判定角度を40度とした場合、すなわち、ドライバの顔または視線が車両の正面方向に対して40度以上左または右に向いた場合に脇見をしていると判定するようにした場合、壮年層に対する脇見判定角度は24度となり、高年齢層に対する脇見判定角度は12度となる。すなわち、年齢が高くなるほど視野が狭くなることを考慮して、ドライバの年齢が高くなるほど、脇見が検出されやすくなるように、脇見を検出する条件が緩く設定される。
【0066】
また、脇見検出部121は、脇見をしているか否かを判定する時間(以下、脇見判定時間と称する)を年齢層が高くなるほど短い時間に設定する。すなわち、年齢が高くなるほど反射神経や知覚能力が衰え、自車の進行方向の状況の確認に時間を要することを考慮して、ドライバの年齢が高くなるほど、脇見が検出されやすくなるように、脇見を検出する条件が緩く設定される。
【0067】
脇見検出部121は、撮影部111から供給される顔画像に基づいて、ドライバの左右方向の顔の向きの検出を開始し、設定した脇見判定角度および脇見判定時間に基づいて、ドライバの脇見の検出を開始する。脇見検出部121は、脇見を検出した場合、脇見運転を止めるようにドライバに警告する。このとき、脇見検出部121は、例えば、ドライバの年齢層が高くなるほど、警告音の音量を大きくしたり、警告表示の文字を大きくしたり、警告表示の色をより見やすい色に変更したり、警告時間を長くしたりする。
【0068】
これにより、高齢者の脇見による事故をより確実に防止することができる。
【0069】
ステップS7において、障害物検出制御部122は、年齢推定部112による推定結果に基づいて、ドライバの年齢が高年齢層であるかを判定する。ドライバの年齢が高年齢層であると判定された場合、処理はステップS8に進む。
【0070】
ステップS8において、障害物検出警告部132は、高年齢者障害物検出モードによる動作を開始する。具体的には、障害物検出警告部132は、前方監視部131による監視結果に基づいて、障害物の検出を開始する。障害物検出警告部132は、高年齢者障害物検出モードにより動作する場合、後述する通常障害物検出モードより、障害物の接近を警告するタイミングを早くする。すなわち、障害物検出警告部132は、通常障害物検出モードと比較して、障害物が遠い位置に存在する時点から、障害物の接近の警告を開始する。従って、高年齢層のドライバが障害物への対応を適切に行う時間が十分に確保されるようになる。また、障害物検出警告部132は、例えば、通常障害物検出モードと比較して、警告音の音量を大きくしたり、警告表示の文字を大きくしたり、警告表示の色をより見やすい色に変更したり、警告時間を長くしたりする。
【0071】
これにより、高年齢層のドライバが、障害物との衝突や接触などの危険をより確実に回避することができるようになる。
【0072】
その後、処理はステップS10に進む。
【0073】
ステップS7において、ドライバの年齢が高年齢層でないと判定された場合、処理はステップS9に進む。
【0074】
ステップS9において、障害物検出警告部132は、通常障害物検出モードによる動作を開始する。具体的には、障害物検出警告部132は、前方監視部131による監視結果に基づいて、障害物の検出を開始する。障害物検出警告部132は、通常障害物検出モードにより動作する場合、通常のタイミング、すなわち、高年齢者障害物検出モードより遅いタイミングで障害物の接近を警告する。すなわち、障害物検出警告部132は、高年齢者障害物検出モードと比較して近い位置に障害物が接近した時点で、障害物の接近の警告を開始する。また、障害物検出警告部132は、警告音の音量、警告表示の文字の大きさ、色、警告時間を通常の値に設定する。
【0075】
ステップS10において、他車検出制御部123は、年齢推定部112による推定結果に基づいて、ドライバの年齢が高年齢層であるかを判定する。ドライバの年齢が高年齢層であると判定された場合、処理はステップS11に進む。
【0076】
ステップS11において、他車検出警告部142は、高年齢者他車検出モードによる動作を開始する。具体的には、他車検出警告部142は、車車間通信部141からの情報に基づいて、他車の検出を開始する。他車検出警告部142は、高年齢者他車検出モードによる動作を行う場合、後述する通常他車検出モードより、他車の接近を警告するタイミングを早くする。すなわち、他車検出警告部142は、通常他車検出モードと比較して、他車が遠い位置に存在する時点から、他車の接近の警告を開始する。従って、高年齢層のドライバが他車への対応を適切に行う時間が十分に確保されるようになる。また、他車検出警告部142は、例えば、通常他車検出モードと比較して、警告音の音量を大きくしたり、警告表示の文字を大きくしたり、警告表示の色をより見やすい色に変更したり、警告時間を長くしたりする。
【0077】
これにより、高年齢層のドライバが、他車との衝突や接触などの危険をより確実に回避することができるようになる。
【0078】
その後、処理はステップS13に進む。
【0079】
ステップS10において、ドライバの年齢が高年齢層でないと判定された場合、処理はステップS12に進む。
【0080】
ステップS12において、他車検出警告部142は、通常他車検出モードによる動作を開始する。具体的には、他車検出警告部142は、車車間通信部141からの情報に基づいて、他車の検出を開始する。他車検出警告部142は、通常他車検出モードにより動作する場合、通常のタイミング、すなわち、高年齢者他車検出モードより遅いタイミングで他車の接近を警告する。すなわち、他車検出警告部142は、高年齢者他車検出モードと比較して近い位置に他車が接近した時点で、他車の接近の警告を開始する。また、他車検出警告部142は、警告音の音量、警告表示の文字の大きさ、色、警告時間を通常の値に設定する。
【0081】
ステップS13において、車両制御部124は、年齢推定部112による推定結果に基づいて、ドライバの年齢が高年齢層であるかを判定する。ドライバの年齢が高年齢層であると判定された場合、処理はステップS14に進む。
【0082】
ステップS14において、コーナリング制御部152は、高年齢層向けのコーナリング制御を行う。
【0083】
「細川 崇ほか、高齢運転者の日常運転行動記録を基にした右折時不安全行動の把握とその評価(第1報)、日本、学術講演会前刷集No.57-06、社団法人自動車技術会、2006年5月、5乃至10ページ」(以下、引用文献1と称する)には、高齢のドライバは、右折時に交差点の中心よりも内側をショートカットする傾向が強いという評価結果が報告されている。
【0084】
そこで、コーナリング制御部152は、以降、自車が右折する場合、通常の軌道より外側の軌道を通るようにコーナリングを制御する。これにより、高年齢層のドライバが運転する車両が、右折時に交差点の中心よりも内側をショートカットすることが防止され、交差点での事故を防止することができる。
【0085】
ステップS15において、左右確認警告部153は、左右確認警告処理を開始し、運転支援開始処理は終了する。
【0086】
上述した引用文献1には、高齢のドライバは、両側の交差交通の確認を忘れる傾向が強いという評価結果が報告されている。
【0087】
そこで、左右確認警告部153は、撮影部111から供給される顔画像に基づいて、ドライバの左右方向の顔の向きの検出を開始する。また、左右確認警告部153は、カーナビゲーションシステム151から供給される情報に基づいて、自車が交差点を通過するタイミングの検出を開始する。さらに、左右確認警告部153は、交差点においてドライバが左右を確認しているかの監視を開始する。左右確認警告部153は、交差点においてドライバが左右を確認していないことを検出した場合、左右を確認するようにドライバに警告する。この場合、左右確認警告部153は、ドライバが確認していない方向に警告表示を表示させたり、ドライバが確認していない方向から警告音を出力させたりするようにしてもよい。これにより、高年齢層のドライバが、交差点において左右の確認を忘れることが防止され、交差点での事故を防止することができる。
【0088】
一方、ステップS13において、ドライバの年齢が高年齢層ではないと判定された場合、処理はステップS16に進む。
【0089】
ステップS16において、コーナリング制御部152は、通常のコーナリング制御を開始し、運転支援開始処理は終了する。具体的には、コーナリング制御部152は、以降、右折時に通常の軌道を通るようにコーナリングを制御する。
【0090】
以上のように、自動的にドライバの年齢が推定され、推定された年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うようにドライバの運転の支援が行われるので、ドライバに負担をかけることなく、高齢者の運転の安全性を向上させることができる。また、年齢の設定を忘れたり、年齢を誤って設定することにより、運転の支援が適切に行われないようになることが防止される。
【0091】
なお、以上の説明では、ドライバの顔を含む画像に基づいて年齢を推定する例を示したが、例えば、他のドライバの身体の特徴に基づいて、年齢を推定するようにしてもよい。
【0092】
また、以上の説明では、ドライバの年齢を青年層、壮年層、高年齢層のどの年代に属するかを推定する例を示したが、より詳細に年齢を推定し、よりきめ細かくドライバの年齢に対応した運転の支援を行うようにしてもよい。例えば、障害物検出モードおよび他車検出モードをより詳細に分類し、障害物検出警告部132および他車検出警告部142が、詳細に分類された各モードに対応した動作を行うようにしてもよい。
【0093】
さらに、ドライバの年齢に応じて、各年齢層のドライバが見やすいように、車両に搭載される表示装置、例えば、インストゥルメンタルパネル、カーナビゲーションシステムのモニタの表示の明るさや色などを自動的に調節するようにしてもよい。
【0094】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0095】
図5は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するパーソナルコンピュータ300の構成の例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)301は、ROM(Read Only Memory)302、または記録部308に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)303には、CPU301が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU301、ROM302、およびRAM303は、バス304により相互に接続されている。
【0096】
CPU301にはまた、バス304を介して入出力インタフェース305が接続されている。入出力インタフェース305には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部306、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部307が接続されている。CPU301は、入力部306から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU301は、処理の結果を出力部307に出力する。
【0097】
入出力インタフェース305に接続されている記録部308は、例えばハードディスクからなり、CPU301が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部309は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
【0098】
また、通信部309を介してプログラムを取得し、記録部308に記憶してもよい。
【0099】
入出力インタフェース305に接続されているドライブ310は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア311が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記録部308に転送され、記憶される。
【0100】
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図5に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア311、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM302や、記録部308を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデムなどのインタフェースである通信部309を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
【0101】
なお、本明細書において、プログラム記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0102】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明を適用した運転支援装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】年齢推定部の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】運転支援装置により実行される運転支援開始処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】運転支援装置により実行される運転支援開始処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】パーソナルコンピュータの構成の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
101 運転支援装置
111 撮影部
112 年齢推定部
113 運転支援部
121 脇見検出部
122 障害物検出制御部
123 他車検出制御部
124 車両制御部
131 前方監視部
132 障害物検出警告部
141 車車間通信部
142 他車検出警告部
151 カーナビゲーションシステム
152 コーナリング制御部
153 左右確認警告部
181 顔検出部
182 特徴点検出部
183 特徴量抽出部
184 推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバを撮影した画像に基づいて、前記ドライバの年齢を推定する推定手段と、
推定された前記ドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うように前記ドライバの運転の支援を行う運転支援手段と
を含む運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援手段は、前記ドライバの脇見を検出する脇見検出手段を含み、
前記脇見検出手段は、前記推定年齢が高くなるほど、脇見を検出する条件を緩く設定する
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援手段は、前記ドライバに危険を警告する警告手段を含み、
前記警告手段は、前記推定年齢が高くなるほど、警告を行うタイミングを早くする
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記警告手段は、障害物または他の車両の接近を警告する
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転支援手段は、前記ドライバが運転する車両のコーナリングを制御するコーナリング制御手段を含み、
前記コーナリング制御手段は、前記推定年齢が所定の年齢以上である場合、前記車両が右折するとき、通常の軌道より外側を通るように前記車両のコーナリングを制御する
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運転支援手段は、前記推定年齢が所定の年齢以上である場合、交差点において前記ドライバが左右の確認を行うかを監視し、左右の確認を行わない場合に警告する左右確認警告手段を
含む請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
ドライバを撮影した画像に基づいて、前記ドライバの年齢を推定する推定ステップと、
推定された前記ドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うように前記ドライバの運転の支援を行う運転支援ステップと
を含む運転支援方法。
【請求項8】
ドライバを撮影した画像に基づいて、前記ドライバの年齢を推定する推定ステップと、
推定された前記ドライバの年齢である推定年齢に応じて、年齢による運転能力の低下を補うように前記ドライバの運転の支援を行う運転支援ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−15548(P2009−15548A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175778(P2007−175778)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】