説明

過給機付エンジンの排気還流装置

【課題】過給機の作動時に適量の排気ガスを吸気通路へ還流させること。
【解決手段】過給機7を備えたエンジン1のEGR装置は、エンジン1から排気通路5へ排出される排気ガスの一部を吸気通路3へ還流させるEGR通路21と、EGR通路21から分岐する分岐通路25と、吸気通路3における過給機7の上流側と下流側とを接続する吸気バイパス通路22と、吸気バイパス通路22に負圧を発生させるエゼクタ23とを備える。分岐通路25の出口25aがエゼクタ23を介して吸気バイパス通路22に接続される。排気通路5を流れる排気ガスを吸気通路3へ還流させるために、EGR通路21の出口21aがスロットルバルブ2の下流側にて吸気通路3に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給機付エンジンに係り、詳しくは、エンジンから排気通路に排出される排気ガスを吸気通路へ還流させる過給機付エンジンの排気還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される過給機付エンジンの排気還流装置が知られている。この装置は、過給機を備えたエンジンにおいて、排気通路に設けられたタービンの下流側と、吸気通路に設けられたコンプレッサの上流側とを接続するEGR用通路が設けられ、EGR用通路にはEGR調整弁が設けられる。排気通路には、タービンを迂回する排気バイパス通路が設けられ、排気バイパス通路には、排気バイパス弁が設けられる。また、タービン及び触媒より下流の排気通路と、コンプレッサ及びクーラより下流の吸気通路とを接続するEGR通路が設けられる。EGR通路には、EGR弁が設けられる。そして、過給機を作動させた過給時には、EGR調整弁を開くことで、排気通路を流れる排気ガスをコンプレッサ上流の吸気通路へ還流させる。一方、過給機を作動させない非過給時には、EGR弁を開くことで、排気通路を流れる排気ガスをクーラ下流の吸気通路へ還流させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−69305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の装置では、過給時に吸気通路で発生する負圧が比較的小さくなることから、EGR用通路を通じて吸気通路へ排気ガスを少量しか還流させることができなかった。そのため、過給時でも適量の排気ガスを吸気通路へ還流させることが望まれている。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、過給機の作動時に適量の排気ガスを吸気通路へ還流させることを可能とした過給機付エンジンの排気還流装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、吸気通路に過給機を備えたエンジンに設けられ、エンジンから排気通路へ排出される排気ガスの一部を吸気通路へ還流させる排気還流通路を備えた過給機付エンジンの排気還流装置において、排気還流通路から分岐する分岐通路と、吸気通路における過給機の上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、バイパス通路に負圧を発生させるエゼクタとを備え、分岐通路の出口がエゼクタを介してバイパス通路に接続されたことを趣旨とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、過給機の作動時には、吸気通路における過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じ、バイパス通路の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によってバイパス通路に空気が流れ、その空気流によってエゼクタに負圧が発生する。従って、分岐通路の出口にはエゼクタによる負圧が作用し、エンジンから排気通路へ排出される排気ガスが排気還流通路、分岐通路、エゼクタ及びバイパス通路を通じて吸気通路へ流れる。また、過給機による過給圧が増大すると、それに応じてエゼクタにより発生する負圧が大きくなる。従って、排気還流通路及び分岐通路からバイパス通路へ流れる排気ガス流量が増大し、吸気通路へ流れる排気ガス流量が増大する。ここで、バイパス通路は吸気通路の一部を迂回して設けられるので、バイパス通路とエゼクタが、吸気通路の吸気抵抗に影響を与えることはない。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、過給機の下流側にて吸気通路にスロットルバルブが設けられ、排気通路を流れる排気ガスを吸気通路へ還流させるために、排気還流通路の出口がスロットルバルブの下流側にて吸気通路に接続されたことを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、過給機の非作動時には、吸気通路における過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じ難くなり、バイパス通路の両端の間の圧力差が小さくなる。このとき、スロットルバルブの下流側にて吸気通路で発生する負圧が排気還流通路の出口に作用し、エンジンから排気通路へ排出される排気ガスが排気還流通路を通じて吸気通路へ流れる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、排気還流通路における分岐通路の分岐位置より下流側に、排気ガスの流量を調節するための排気ガス流量調節弁が設けられたことを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、過給機の非作動時には、排気還流通路を介して吸気通路へ流れる排気ガスの流量が排気ガス流量調節弁により調節される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明において、分岐通路に、分岐通路を開閉するための開閉弁が設けられたことを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の作用に加え、過給機の作動時に開閉弁により分岐通路を開くことで、分岐通路に排気ガスが流れ、エゼクタ及びバイパス通路を介して吸気通路へ排気ガスが流れる。一方、開閉弁により分岐通路を閉じることで、排気還流通路から分岐通路への排気ガスの流れが遮断されると共に、バイパス通路から分岐通路への吸気の逆流が遮断される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明において、過給機の下流側における吸気通路には、過給機から流れる空気を冷却するためのクーラが設けられ、バイパス通路の上流側は、クーラの下流側における吸気通路に接続され、バイパス通路の下流側は、過給機の上流側における吸気通路に接続されることを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の作用に加え、過給機の作動時には、クーラで冷却された空気がバイパス通路へも流れる。従って、分岐通路からエゼクタを介してバイパス通路へ流れる排気ガスが、吸気通路からバイパス通路を流れる空気に合流しても、バイパス通路を流れる排気ガスの温度が必要以上に上昇することはない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、過給機の作動時に適量の排気ガスを吸気通路へ還流させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、過給機の非作動時に排気還流通路を通じて適量の排気ガスを吸気通路へ還流させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、過給機の非作動時に、排気通路から吸気通路へ還流される排気ガス流量を適度に調節することができる。また、過給機の作動時に、吸気通路から排気還流通路への空気の逆流を防止することができ、エゼクタから分岐通路を通じて排気還流通路に作用する負圧への悪影響を防止することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、過給機の非作動時に、排気通路から吸気通路へ排気還流通路を通じて確実に排気ガスを還流させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加え、エゼクタ及びバイパス通路を過熱から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態に係り、排気還流装置を含む過給機付エンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】同実施形態に係り、エゼクタを示す断面図。
【図3】別の実施形態に係り、排気還流装置を含む過給機付エンジンシステムを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における過給機付エンジンの排気還流装置を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1に、この実施形態における排気還流装置(Exhaust Gas Recirculation(EGR)装置)を含む過給機付エンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0024】
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気ガスによりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0025】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウエストゲートバルブ12が設けられる。ウエストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気ガスが調節されることにより、タービン9に供給される排気ガス流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0026】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、クーラ13が設けられる。このクーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。クーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、クーラ13の下流側であってサージタンク3aの上流側には、スロットルバルブ14が設けられる。
【0027】
タービン9の下流側の排気通路5には、排気ガスを浄化するための触媒コンバータ15が設けられる。また、触媒コンバータ15の下流側の排気通路5と、サージタンク3aとの間には、本発明の排気還流通路であるEGR通路21が設けられる。つまり、排気通路5を流れる排気ガスの一部をEGRガスとしてEGR通路21を通じて吸気通路3へ還流させるために、EGR通路21の出口21aが、スロットルバルブ14の下流側にてサージタンク3aに接続される。また、この実施形態では、EGR通路21の入口21bが、触媒コンバータ15の下流側における排気通路5に接続される。そして、エンジン1から排気通路5へ排出される排気ガスの一部は、EGRガスとして、EGR通路21を通じて吸気通路3へ還流されるようになっている。
【0028】
吸気通路3における過給機7の上流側と下流側は、吸気バイパス通路22により接続される。すなわち、過給圧の高いコンプレッサ8の下流側の吸気通路3と、コンプレッサ8の上流側の吸気通路3との間には、コンプレッサ8を迂回した吸気バイパス通路22が設けられる。この実施形態では、吸気バイパス通路22の上流側は、クーラ13の下流側であってスロットルバルブ14の上流側における吸気通路3に接続される。また、吸気バイパス通路22の下流側は、コンプレッサ8の上流側であってエアクリーナ6の下流側における吸気通路3に接続される。
【0029】
吸気バイパス通路22には、同通路22を流れる空気により負圧を発生させるエゼクタ23が設けられる。図2に、エゼクタ23の概略構成を断面図により示す。エゼクタ23は、外側パイプ31を備える。外側パイプ31の空気の入口側には、減圧室31aが設けられる。外側パイプ31の、空気の出口側には、ディフューザ31bが設けられる。また、外側パイプ31の、空気の入口側には、減圧室31aの中に配置されて吸気を噴射するノズル32が設けられる。ノズル32の先端32aは、ディフューザ31bへ向けて配置される。外側パイプ31には、減圧室31aに対応して、減圧室31aにEGRガスを吸入するための吸入口31dが設けられる。吸入口31dには、後述する分岐通路25が接続される。ノズル32の入口32bには、吸気バイパス通路22の上流側が接続され、外側パイプ31の出口31cには、吸気バイパス通路22の下流側が接続される。
【0030】
上記したエゼクタ23は、吸気バイパス通路22を流れる空気を作動流体としてノズル32に導入し、ノズル32の先端32aから空気を噴射させることで低圧超音速流を生じさせ、減圧室31aに負圧を発生させる。すなわち、過給機7の作動時に、コンプレッサ8により吸気が昇圧することにより、コンプレッサ8の上流側の吸気通路3と、コンプレッサ8の下流側の吸気通路3との間で吸気に圧力差が生じる。このため、吸気バイパス通路22の上流側と下流側との間には圧力差が生じ、エゼクタ23のノズル32の入口32bと外側パイプ31の出口31cとの間に、吸気バイパス通路22を通じて異なる吸気圧力が作用する。これにより、吸気バイパス通路22に空気が流れてノズル32の先端32aから空気が噴射されることで、減圧室31aに負圧が発生し、吸入口31dから減圧室31aへEGRガスが吸入される。そして、吸入されたEGRガスが、ディフューザ31bを介して吸気と共に外側パイプ31の出口31cから排出される。減圧室31aで発生する負圧の大きさは、過給機7による過給圧の大きさに応じて変わり得る。
【0031】
EGR通路21の途中には、同通路21を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ24が設けられる。また、EGRクーラ24の下流側におけるEGR通路21には、同通路21から分岐する分岐通路25が設けられる。この分岐通路25の出口25aは、エゼクタ23を介して吸気バイパス通路22に接続される。すなわち、エゼクタ23の吸入口31dには、分岐通路25の出口25aが接続される。従って、過給機7の作動時に、エゼクタ23の減圧室31aに負圧が発生することにより、その負圧が分岐通路25に作用する。この負圧の作用により、EGR通路21から分岐通路25へEGRガスが導出され、そのEGRガスがエゼクタ23から吸気バイパス通路22を介して吸気通路3へ流れる。吸気通路3へ流れたEGRガスは、コンプレッサ8及び吸気通路3等を経由して吸気と共にエンジン1の燃焼室へ導入される。
【0032】
この実施形態で、EGR通路21における分岐通路25の分岐位置より下流側には、EGRガスの流量を調節するための本発明の排気ガス流量調節弁としてのEGR弁26が設けられる。このEGR弁26は、アクチュエータ26aにより弁体26bを動作させてEGR通路21の開度を調節することにより、EGR通路21を流れるEGR流量を調節するように構成される。
【0033】
また、この実施形態で、分岐通路25には、分岐通路25を開閉するための本発明の開閉弁としてのVSV27が設けられる。このVSV27は、アクチュエータ27aにより弁体27bを動作させて分岐通路25を選択的に開閉するように構成される。
【0034】
以上説明したこの実施形態における過給機付エンジンの排気還流装置によれば、エンジン1の運転時であって過給機7の作動時には、過給機7より下流側の吸気通路3が正圧となる。ここで、サージタンク3aにおいてEGR通路21の出口21aには、負圧が作用しなくなり、排気通路5から吸気通路3へはEGR通路21を通じてEGRガスが流れない。このとき、吸気通路3における過給機7の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じ、吸気バイパス通路22の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によって吸気バイパス通路22に空気が流れ、その空気流によってエゼクタ23に負圧が発生する。よって、分岐通路25には、エゼクタ23による負圧が作用する。従って、VSV27を開弁することで、エンジン1から排気通路5へ排出される排気ガスの一部が、EGRガスとして、EGR通路21、分岐通路25、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22を通じて吸気通路3へ流れる。このため、過給機7の作動時に適量のEGRガスを吸気通路3へ還流させることができる。
【0035】
また、この実施形態では、過給機7による過給圧が増大すると、吸気バイパス通路22の両端の圧力差が増大し、それに応じてエゼクタ23により発生する負圧が大きくなる。従って、排気通路5からEGR通路21及び分岐通路25へ流れるEGRガス流量が増大し、吸気通路3へ流れるEGRガス流量が増大する。ここで、吸気バイパス通路22は、吸気通路3の一部を迂回して設けられるので、吸気バイパス通路22とエゼクタ23が、吸気通路3の吸気抵抗に影響を与えることはない。このため、過給機7の作動時に吸気通路3の吸気抵抗を増やすことなくEGRガスを吸気通路3へ還流することができる。また、過給圧の増大に応じてEGRガス流量を増大させることができる。
【0036】
一方、この実施形態では、エンジン1の運転時であって過給機7の非作動時には、吸気通路3に負圧が作用する。このため、吸気通路3における過給機7の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じ難くなり、吸気バイパス通路22の両端の間の圧力差が小さくなる。このとき、スロットルバルブ14の下流側にてサージタンク3aで発生する負圧がEGR通路21の出口21aに作用する。従って、EGR弁26を開弁させることにより、EGR通路21に作用する負圧によって、排気通路5を流れる排気ガスの一部が、EGRガスとして、EGR通路21を通じてサージタンク3aへ流れる。このため、過給機7の非作動時に、EGR通路21を通じて適量のEGRガスを吸気通路3へ還流させることがきる。このとき、吸気通路3へ還流されるEGRガス流量は、EGR弁26の開度を調節することで任意に調節することができる。
【0037】
この実施形態では、EGR通路21における分岐通路25の分岐位置より下流側に、EGRガス流量を調節するためのEGR弁26が設けられる。従って、過給機7の非作動時には、EGR通路21を介して吸気通路3へ流れるEGRガスの流量がEGR弁26により調節される。このため、過給機7の非作動時に、排気通路5から吸気通路3へ還流されるEGRガス流量を適度に調節することができる。
【0038】
一方、過給機7の作動時には、EGR弁26を閉弁することで、サージタンク3aからEGR通路21へ作用する正圧を遮断することができる。このため、過給機7の作動時に、EGR通路21への空気の逆流を防止することができ、エゼクタ23から分岐通路25を通じてEGR通路21に作用する負圧への悪影響を防止することができる。この結果、EGR通路21から分岐通路25、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22を通じて、EGRガスを吸気通路3へ適正に還流することができる。
【0039】
この実施形態では、過給機7の作動時にVSV27により分岐通路25を開くことで、分岐通路25にEGRガスが流れ、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22を介して吸気通路3へEGRガスが流れる。一方、過給機7の非作動時にVSV27により分岐通路25を閉じることで、EGR通路21から分岐通路25へのEGRガスの流れが遮断されると共に、吸気バイパス通路22から分岐通路25への吸気の逆流が遮断される。このため、過給機7の非作動時には、排気通路5から吸気通路3へEGR通路21を通じて確実にEGRガスを還流させることができる。
【0040】
この実施形態では、過給機7の作動時には、クーラ13で冷却された空気が吸気バイパス通路22へも流れる。従って、分岐通路25からエゼクタ23を介して吸気バイパス通路22へ流れるEGRガスが、吸気通路3から吸気バイパス通路22へ流れる空気に合流しても、EGRガスの温度が必要以上に上昇することがない。このため、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22を過熱から保護することができる。
【0041】
また、この実施形態では、EGR通路21の入口21bを、排気通路5における触媒コンバータ15の下流側に接続したので、触媒コンバータ15を通過して圧力の下がった排気ガスがEGRガスとして利用される。このため、高い過給圧の領域でも、EGR通路21、分岐通路25、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22を介してEGRガスを適正に還流させることができる。また、排気ガス中に含まれるデポジット等の異物が、触媒コンバータ15で除去されてから、EGR通路21へ流れることになる。このため、EGR通路21、EGR弁26、分岐通路25、VSV27、エゼクタ23及び吸気バイパス通路22に関するデポジット対策として有利となる。また、この実施形態では、過給機7の非作動時から作動時への切り替え時に、EGR率のつながりを良好なものにすることができる。
【0042】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0043】
例えば、前記実施形態では、EGR通路21の入口21bを、触媒コンバータ15の下流側の排気通路5に接続したが、図3にエンジンシステムの概略構成図により示すように、EGR通路21の入口21bを、過給機7のタービン9の上流側における排気通路5に接続するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、過給機付エンジンであって、EGR装置を備えたエンジンシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
3 吸気通路
3a サージタンク
5 排気通路
7 過給機
8 コンプレッサ
9 タービン
13 クーラ
14 スロットルバルブ
21 EGR通路(排気還流通路)
21a 出口
21b 入口
22 吸気バイパス通路
23 エゼクタ
25 分岐通路
25a 出口
26 EGR弁(排気ガス流量調節弁)
27 VSV(開閉弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に過給機を備えたエンジンに設けられ、エンジンから排気通路へ排出される排気ガスの一部を吸気通路へ還流させる排気還流通路を備えた過給機付エンジンの排気還流装置において、
前記排気還流通路から分岐する分岐通路と、
前記吸気通路における前記過給機の上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路に負圧を発生させるエゼクタと
を備え、前記分岐通路の出口が前記エゼクタを介して前記バイパス通路に接続されたことを特徴とする過給機付エンジンの排気還流装置。
【請求項2】
前記過給機の下流側にて前記吸気通路にスロットルバルブが設けられ、前記排気通路を流れる排気ガスを前記吸気通路へ還流させるために、前記排気還流通路の出口が前記スロットルバルブの下流側にて前記吸気通路に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の過給機付エンジンの排気還流装置。
【請求項3】
前記排気還流通路における前記分岐通路の分岐位置より下流側に、排気ガスの流量を調節するための排気ガス流量調節弁が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の過給機付エンジンの排気還流装置。
【請求項4】
前記分岐通路に、前記分岐通路を開閉するための開閉弁が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の過給機付エンジンの排気還流装置。
【請求項5】
前記過給機の下流側における前記吸気通路には、前記過給機から流れる空気を冷却するためのクーラが設けられ、前記バイパス通路の上流側は、前記クーラの下流側における前記吸気通路に接続され、前記バイパス通路の下流側は、前記過給機の上流側における前記吸気通路に接続されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の過給機付エンジンの排気還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113097(P2013−113097A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256829(P2011−256829)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】