説明

過電圧保護付の非接触給電装置

【課題】第1に、過電圧保護部は、平滑後の電圧で過電圧を検出すると共に、第2に、2次側回路の立ち上がり後に、短絡を実施可能であり、第3に、しかも短絡実施に伴い、簡単かつ確実に給電が停止されるようになる、過電圧保護付の非接触給電装置を提案する。
【解決手段】この非接触給電装置10は、2次側回路2の整流部5と平滑部との間に、過電圧保護部21が設けられており、過電圧発生を検出すると、2次側回路2そして2次コイル4を短絡する。そして過電圧保護部21は、検出手段,増幅手段23,短絡手段24,逆流防止手段25等を有している。更に、遅延手段32も付設されており、給電開始に際し2次側回路2が立ち上がった後に、遅延して過電圧保護部21を作動可能とする。又、短絡に基づく1次側回路11の電流変化又は電圧変化を検出する検出部38と、その検出に基づき、1次側回路11の電源13をオフする制御部39が、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電圧保護付の非接触給電装置に関する。すなわち、地上側,1次側から車輌側,2次側に、エアギャップを存し非接触で電力を供給する、非接触給電装置の過電圧保護に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
ケーブル等の機械的接触なしで、例えば電気自動車等の車輌に、外部から電力を供給する非接触給電装置が、需要に基づき開発,実用化されている。
この非接触給電装置では、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、地上側等に定置された1次コイルから、車輌その他の移動体側に搭載された2次コイルに、数10mm〜数100mm程度のエアギャップを存し非接触で対応位置しつつ、電力を供給する(後述する図4等も参照)。
【0003】
《従来技術》
そして、このような非接触給電装置の2次側回路には通常、整流部,平滑部,充電部,バッテリー等が設けられており、2次コイルからの誘導起電力が、直流化,平滑化,定電圧化,低電圧化等されて、バッテリーへと供給される。
ところで、このような非接触給電装置にあっては、例えばエアギャップの変動(過接近による結合係数の上昇)や、平滑部のコンデンサの故障等々に起因して、2次コイルそして2次側回路に過電圧が発生し、もって2次側回路が過電圧により故障する虞がある。2次コイルの出力電圧が異常上昇し、もって2次側回路に過電圧が流れて、回路の構成部分である2次コイル,整流部,平滑部,充電部,負荷等が、過電圧の印加により破損や焼損する虞がある。
【0004】
そこで、図5に示したように、非接触給電装置1にあっては、従来、2次側回路2に過電圧保護部(短絡回路)3が設けられていた。
この過電圧保護部3は、2次コイル4について過電圧発生を検知すると、2次側回路2そして2次コイル4を短絡せしめ、もって2次側回路2を保護するようになっていた。図中5は整流部,6は平滑部,7は充電部,8はバッテリー,9は負荷である。
そして、過電圧保護部3は従来、2次側回路2の2次コイル4と整流部5間に、設けられていた。
すなわち過電圧保護部3を、もしも整流部5と平滑部6間や平滑部6の後等、平滑部6を含んだ回路に設けると、短絡時において、平滑部6側からの逆流電流,突入電流,流れ込み電流が過大となり、過電圧保護部3を構成するサイリスタ等の短絡素子が、損傷,故障する危険があることに、その理由がある。
勿論、これに耐える能力,規格のサイリスタ等を採用することも考えられるが、コスト負担が過大となってしまう。もって、従来のこの種の非接触給電装置1では、整流前で短絡するシステムが採用されていた。
なお、このように過電圧保護部3を設けるのではなく、過電圧により回路を遮断するヒューズを、2次側回路2に直列接続することも一部で行われていたが、ヒューズ交換に手間が嵩む等、工数面に大きな難点があり、本格採用には至っていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したこの種従来技術の過電圧保護付の非接触給電装置1については、次の課題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、従来のこの種の非接触給電装置1では、2次側回路2の駆動電圧と過電圧保護部3の駆動電圧とが、一致せず齟齬するという問題が指摘されていた。
すなわち、前述したように過電圧保護部3は、2次コイル4と整流部5との間に設けられており、整流,平滑前に過電圧を検出して短絡するシステムが採用されていた。そこで、過電圧保護部3が過電圧として検出する電圧、つまり整流,平滑前の短絡実施電圧と、充電部7等の2次側回路2への整流,平滑後の入力電圧とが、多少異なる事態が生じていた。
もって例えば、2次側回路2にとって過電圧とはならない程度の電圧でも、過電圧保護部3において過電圧として短絡を実施してしまうケースも発生し、無駄が多いという指摘があった。無駄な短絡が発生し易く、改善が望まれていた。
【0006】
《第2の問題点》
第2に、従来のこの種の非接触給電装置1にあっては、2次側回路2の立ち上がりが遅い場合、2次側回路2が起動する前に、過電圧保護部3にて短絡が実施されてしまうことが多々あり、もって、2次側回路2の充電部7等が起動できなくなることがある、という問題が指摘されていた。
すなわち給電開始に際し、2次側回路2では、充電部7等が立ち上がって起動する前(その立ち上がりに、例えば0.3秒程度を要することが多い)は、電力が消費されず必然的に電圧が上昇してしまう。そして過電圧保護部3が、これを過電圧として検出して、2次側回路2そして2次コイル4を短絡してしまうことが多々あった。
つまり、問題とすべき過電圧発生ではないのに、充電部7等が働く前に過電圧保護部3が働いてしまい、その結果、2次側回路2が起動できなくなることがある、という問題があった。
【0007】
《第3の問題点》
第3に、過電圧保護部3にて2次側回路2が短絡された場合、1次側回路にて給電を直ちに停止する必要があるが、従来のこの種の非接触給電装置1では、その検出手段や通信手段が複雑であり、給電停止が遅延することもある、という問題が指摘されていた。
すなわち、従来のこの種の非接触給電装置1では、2次側回路2で過電圧保護部3が働き短絡が実施されたことを、検出手段で検出すると共に、検出された短絡実施情報を1次側回路へと、配線ケーブルによらず(非接触なので配線ケーブルは使用不能)、何らかの通信手段を用いて伝達するようになっていた。
しかしながら、このような検出手段や通信手段の回路構成が複雑であり、通信障害や誤作動も多発すると共に、1次側回路の電源オフ動作が遅れ、もって1次側回路から無駄な電力供給が行われてしまう、等々の問題が発生していた。
【0008】
《本発明について》
本発明の過電圧保護付の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、過電圧保護部は、平滑後の電圧で過電圧を検出すると共に、第2に、過電圧保護部は、2次側回路の立ち上がり後に短絡を実施可能であり、第3に、しかも短絡実施に伴い、簡単かつ確実に給電が停止されるようになる、過電圧保護付の非接触給電装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の過電圧保護付の非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、1次側回路の1次コイルから、2次側回路の2次コイルに、エアギャップを存しつつ電力を供給する。そして該2次側回路について、整流部と平滑部との間に過電圧保護部が設けられており、該過電圧保護部は、該2次側回路について過電圧発生を検出すると、該2次側回路そして2次コイルを短絡して該2次側回路を保護すること、を特徴とする
請求項2については、次のとおり。
請求項2の過電圧保護付の非接触給電装置では、請求項1において、該過電圧保護部は、該平滑部における過電圧を検出する検出手段と、該検出手段の検出に基づき短絡を実施する短絡手段と、該短絡手段への該平滑部からの電流逆流を防止する逆流防止手段と、を有していること、を特徴とする。
【0010】
請求項3については、次のとおり。
請求項3の過電圧保護付の非接触給電装置では、請求項2において、該過電圧保護部は、該平滑部における過電圧を降伏電圧として検出する該検出手段としてのツェナーダイオードと、該ツェナーダイオードからの電流を増幅する増幅手段と、該増幅手段からのゲート電流に基づきターンオンすると共に、該整流部直後にて短絡を実施する該短絡手段としての保護サイリスタと、短絡時における該保護サイリスタへの該平滑部側からの電流逆流を防止する該逆流防止手段としての逆流防止ダイオードと、を有していること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の過電圧保護付の非接触給電装置では、請求項2において、該過電圧保護部は、更に遅延手段を有している。そして該遅延手段は、給電開始に際し該2次側回路が立ち上がった後に、該過電圧保護部を作動可能とすること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。
請求項5の過電圧保護付の非接触給電装置では、請求項1において、該2次側回路が短絡された際、短絡に基づく該1次側回路の電流変化又は電圧変化を検出する検出部と、該検出部の検出に基づき、該1次側回路の電源をオフする制御部とが、設けられていること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)非接触給電装置では、2次コイルが1次コイルに対応位置して、電力が供給される。
(2)すなわち電磁誘導の相互誘導作用により、電力が1次側回路から2次側回路へと、供給される。
(3)2次側回路では、2次コイルからの交流が、整流部,過電圧保護部,平滑部,充電部等を介して、バッテリーに供給される。
(4)さて本発明では、2次側回路に過電圧保護部が設けられている。そして過電圧保護部は、過電圧検出手段,電流増幅手段,短絡手段等を備えており、2次コイルそして2次側回路について過電圧発生を検出すると、これを短絡して保護する。
(5)そして、過電圧保護部の検出手段例えばツェナーダイオードは、平滑部手前で並列接続されており、平滑された電圧について過電圧発生を検出する。つまり、充電部等への入力電圧と一致する電圧を対象に、過電圧を検出する。
(6)短絡時には、平滑部側から過電圧保護部の短絡手段例えば保護サイリスタへ、逆流電流が流れ込む虞があるが、これは、逆流防止ダイオード等の逆流防止手段にて、回避される。
(7)過電圧保護部には、遅延手段が付設されている。もって、給電開始に際しては、充電部やバッテリー等の2次側回路が立ち上がった後に、過電圧保護部が作動可能となっている。給電開始に際し、充電部等が立ち上がる前に、過電圧保護部が短絡を実施してしまうことはない。
(8)過電圧保護部によって短絡が実施されると、短絡に基づく1次側回路の電圧や電流の変化を検出部が検出して、制御部が電源をオフする。このように、簡単な構成により確実かつ直ちに給電が停止される。
(9)さてそこで、本発明の過電圧保護付の非接触給電装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、過電圧保護部は、平滑後の電圧で過電圧を検出する。すなわち、本発明の過電圧保護付の非接触給電装置では、過電圧保護部の検出手段が、平滑部における過電圧を検出し、これに基づき短絡手段が、短絡を実施して2次側回路を保護する。
そして、過電圧保護部が過電圧として検出する電圧、つまり短絡実施電圧と、充電部等の2次側回路への入力電圧との間に差はない。共に、整流,平滑化された後の電圧である。
従って、前述したこの種従来技術、つまり整流,平滑前の電圧に基づき、過電圧を検出して短絡を実施していた従来技術のように、過電圧保護部の検出,駆動電圧と、充電部等の2次側回路の駆動電圧とが、多少異なる事態発生は回避される。
もって例えば、充電部等の2次側回路にとって過電圧とはならない程度の電圧でも、過電圧として短絡してしまうケースは発生せず、無駄な短絡発生が防止される。なお、短絡時における短絡手段への平滑部側からの逆流電流の流れ込みは、逆流防止手段を設けたことにより、確実に回避されるようになっている。
このように、非接触給電装置について、過電圧保護が最適に働くようになる。過電圧にて2次側回路の構成部分が破損や焼損することは防止され、その確実な保護が実現されるようになる。
【0013】
《第2の効果》
第2に、過電圧保護は、充電部等の2次側回路の立ち上がり後に、実施可能となっている。すなわち、本発明の過電圧保護付の非接触給電装置には、遅延手段が付設されており、給電開始に際し充電部等の2次側回路が立ち上がって起動した後に、タイミングを遅らせて過電圧保護部が作動可能となっている。
そこで、前述したこの種従来技術のように、給電開始に際し、充電部等の2次側回路が立ち上がり,起動する前に、過電圧保護部が短絡を実施してしまうことは回避される。過電圧保護部が本来目的とするエアギャップの変動や故障等に基づく過電圧発生ではないのに、過電圧保護部が働いてしまい、その結果、2次側回路が起動できなくなる事態発生は、確実に防止される。
従ってこの面からも、非接触給電装置について、過電圧保護が最適に働くようになる。
【0014】
《第3の効果》
第3に、短絡実施に伴い、簡単かつ確実に給電が停止されるようになる。すなわち、本発明の過電圧保護付の非接触給電装置では、過電圧保護部によって2次側回路が短絡されると、短絡に基づく1次側回路の電流変化や電圧変化を検出部が検出し、もって制御部にて、1次側回路の電源がオフされるようになっている。
前述したこの種従来技術、つまり何らかの検出手段を設けて短絡を検出すると共に、何からの通信手段を用いて短絡実施情報を1次側回路に伝達していた従来技術に比し、簡単な構成により、通信障害や誤作動発生の虞もなく確実かつ直ちに、1次側回路による給電が停止されるようになる。電源オフ動作が遅れ、もって無駄な電力供給が行われるようなことも、確実に回避される。
従ってこの面からも、非接触給電装置について、過電圧保護が最適に働くようになる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る過電圧保護付の非接触給電装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、1次側回路および2次側回路の要部の回路図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、2次側回路の残部の回路図である。
【図3】非接触給電装置の説明に供し、回路図である。
【図4】非接触給電装置の説明に供し、(1)図は、全体説明図、(2)図は、構成ブロック図である。
【図5】この種従来技術の非接触給電装置の説明に供し、要部の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《非接触給電装置10について》
まず、本発明の前提となる非接触給電装置10について、図3や図4を参照して、一般的に説明する。
非接触給電装置10は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、1次側回路11の1次コイル12から、2次側回路2の2次コイル4に、エアギャップGを存して非接触で対応位置して、電力を供給する。1次側回路11は、地上A側に定置配設されており、2次側回路2は、車輌B側等の移動体に搭載されている。
【0017】
このような非接触給電装置10について、更に詳述する。まず、給電側,トラック側,1次側の1次側回路11は、給電スタンドCその他の給電エリアにおいて、地面,路面,床面,その他の地上A側に、定置配置されている。
これに対し、受電側,ピックアップ側,2次側の2次側回路2は、電気自動車(EV車)や電車等の車輌B,その他の移動体に搭載されている。2次側回路2は、駆動用の他、非駆動用としても利用可能であり、図中に示したように車載のバッテリー8に接続されるのが代表的であるが、各種負荷9に直接接続される場合もある。
そして、1次側回路11の1次コイル12と2次側回路2の2次コイル4とは、給電に際し、数十mm〜数百mm、例えば50mm〜150mm程度の僅かな間隙空間であるエアギャップGを存しつつ、非接触で近接して対応位置される。図示例では、上下で対応位置される。
又、給電に際しては、2次コイル4が、1次コイル12上等で停止される停止給電方式が代表的であり、停止給電方式の場合は、1次コイル12と2次コイル4とは、上下等で対をなしうる対称構造よりなる。これに対し、2次コイル4が1次コイル12上を低速走行しつつ給電を行う移動給電方式も、可能である。
【0018】
1次側回路11の1次コイル12は、インバータが使用される電源13に接続されている。図3の1次側回路11中、14はチョークコイル、15は直列共振用のコンデンサ、16は並列共振用のコンデンサである。
2次側回路2の2次コイル4は、図示例ではバッテリー8に接続可能となっており、給電により充電されたバッテリー8にて、図4の例では走行用のモータ17が駆動され、図3の例では、その他の負荷9に電力供給される。図中18は、交流を直流に変換するコンバータ(後述する整流部や平滑部)、19は、直流を交流に変換するインバータであり、図3の2次側回路2中、20は並列共振用のキャパシタである。
1次コイル12や2次コイル4は、例えば、複数回巻回ターン方式の扁平な略平板状のフラット構造をなしている。
【0019】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際し、対応位置する1次コイル12と2次コイル4間において、1次コイル12での磁束形成により2次コイル4に誘導起電力を生成させ、もって1次コイル12から2次コイル4に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち、1次側回路11の1次コイル12に、電源13から例えば数kHz〜100kHz程度の交流を給電交流,励磁電流として印加,通電することにより、磁界が1次コイル12の周囲に生じ、磁束がコイル面に対して直角方向に形成される。
そして、このように形成された磁束が、2次側回路2の2次コイル4を貫き鎖交することにより、誘導起電力が生成されて磁場が形成される。このように、誘起された磁界を利用して、電力が送受される。1kW程度〜数kW以上、更には数10kW〜数100kW程度の電力供給も可能である。
非接触給電装置10では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、1次コイル12と2次コイル4間に磁束の磁路が形成され、1次コイル12と2次コイル4間が電磁結合されて、非接触給電が実施される。そして、2次側回路2では、2次コイル4からの交流が直流化されて、バッテリー8に供給される。
非接触給電装置10について、一般的説明は以上のとおり。
【0020】
《本発明の概要》
以下、本発明の過電圧保護付の非接触給電装置10について、図1,図2を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の過電圧保護付の非接触給電装置10は、2次側回路2について、整流部5と平滑部6との間に、過電圧保護部21が設けられている。過電圧保護部21は、2次側回路2についての過電圧発生を検出すると、2次側回路2そして2次コイル4を短絡して、2次側回路2を保護する。
そして過電圧保護部21は、次の検出手段22,増幅手段23,短絡手段24,逆流防止手段25等、を有した回路構成よりなる。
すなわち、平滑部6における過電圧を降伏電圧として検出する例えばツェナーダイオード26よりなる検出手段22と、ツェナーダイオード26からの電流を増幅する増幅手段23と、増幅手段23からのゲート電流に基づきターンオンすると共に、整流部5直後にて短絡を実施する例えば保護サイリスタ27よりなる短絡手段24と、短絡時における保護サイリスタ27への平滑部6側からの電流逆流を防止例えば逆流防止ダイオード28よりなる逆流防止手段25と、を有した回路構成よりなる。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明について、更に詳述する。
【0021】
《2次側回路2について》
まず、この非接触給電装置10の2次側回路2について、説明する。この2次側回路2では、まず、2次コイル4が、整流部5の入力端に接続されている。そして、整流部5の出力端と、バッテリー8の入力端との間に、過電圧保護部21,平滑部6,充電部7等が、整流部5側から順に並列接続された回路構成よりなり、相互間でも順に並列接続された回路構成よりなる。
又、過電圧保護部21を構成する短絡手段24の保護サイリスタ27、増幅手段23のフォトサイリスタ29、検出手段22のツェナーダイオード26等も、整流部5と平滑部6間に、整流部5側から順に並列接続されており、相互間でも順に並列接続された回路構成よりなる。
逆流防止手段25の逆流防止ダイオード28は、整流部5のプラス出力端子と平滑部6のプラス入力端子との間に、直列接続されている。
【0022】
まず整流部5は、図示例ではダイオードを用いたブリッジ全波整流回路よりなり、入力端が2次コイル4に並列接続されており、2次コイル4からの交流を脈動分を含む直流に変換する。
平滑部6は、図示例では互いに並列接続された3個のコンデンサよりなり、整流部5の出力端に、過電圧保護部21を介し並列接続されており、整流部5の出力電圧中に含まれる脈動分を低減して、安定した電圧の直流とする。
充電部7は、DC電源と称されることもあるが、平滑部6の出力端に並列接続されており、バッテリー8への充電に備え、直流の定電圧化や低電圧化を実施する。なお、このような充電部7として、コンデンサが使用されるケースもある。
バッテリー8は、充電部7の出力端に並列接続されており、例えば鉛蓄電池よりなり、その出力端に並列接続された負荷9に、電力を供給する。
2次側回路2については、以上のとおり。
【0023】
《過電圧保護部21について》
次に、このような2次側回路2に設けられた過電圧保護部21について、説明する。まず、過電圧保護部21の短絡手段24は、2次側回路2の整流部5の出力端直後に、隣接して並列接続されており、図示例では保護サイリスタ27が使用されている。
このサイリスタ27は、そのアノード端子が、整流部5のプラス出力端子側との接続点に接続され、カソード端子が、整流部5のマイナス出力端子側との接続点に接続されている。
そして、増幅手段23からの電流をゲート電流,トリガーとして、ターンオンし、もってアノード端子とカソード端子間が、順方向にオンして導通する。もって、整流部5直後の脈動分のある非平滑電圧部分にて短絡することにより、2次側回路2そして2次コイル4を短絡せしめる。図示例の短絡手段24は、このように保護サイリスタ27を用いて、短絡を実施する。
【0024】
これに対し、過電圧保護部21の検出手段22は、2次側回路2の平滑部6の入力端の直前に並列接続されており、図示例では、ツェナーダイオード26が使用されている。
このツェナーダイオード26は、そのカソード端子が、平滑部6のプラス入力端子側との接続点に接続され、アノード端子が、平滑部6のマイナス入力端子側との接続点に接続されている。
そしてツェナーダイオード26は、平滑部6における過電圧を、降伏電圧として検出する。つまり、脈動分のない平滑された電圧について過電圧が発生すると、これを降伏電圧(ツェナー電圧)として逆方向にオンして導通し、もって2次側回路2における過電圧発生を検出する。図示例の検出手段22は、このようにツェナーダイオード26を用いて、過電圧を検出する。
【0025】
このように導通したツェナーダイオード26からの電流を、直接、保護サイリスタ27のゲート電流とすることは困難(高電圧なので高電流とすることはできず、保護サイリスタ27のトリガーとしては不十分)なので、図示の過電圧保護部21には、増幅手段23が設けられている。
この増幅手段23は、ツェナーダイオード26のアノード端子側に直列接続された発光ダイオード(LED)30と、保護サイリスタ27とツェナーダイオード26との間に並列接続されたフォトサイリスタ29とを、備えている。
発光ダイオード30は、そのアノード端子を、ツェナーダイオード26のアノード端子側に向けて、ツェナーダイオード26に直列接続されている。フォトサイリスタ29は、そのアノード端子を、平滑部6のプラス入力端子側との接続点に向け、カソード端子を、平滑部6のマイナス入力端子側との接続点に向けて、並列接続されている。
もって、ツェナーダイオード26の導通により、発光ダイオード30が発光すると、フォトサイリスタ29のゲート電極に、その発光が入射してトリガーとなる。そして、フォトサイリスタ29が順方向に導通され、その電流が、前述した短絡手段24の保護サイリスタ27のゲート電流,トリガーとなる。図中31は、温度補償用のサーミスタである。
【0026】
又、この過電圧保護部21には、逆流防止手段25が設けられている。すなわち2次側回路2において、短絡実施時に、平滑部6側から短絡手段24の保護サイリスタ27へと、電流が逆流し,突入して,流れ込むのを防止するために、逆流防止手段25が設けられている。
図示例では、このような逆流防止手段25として、逆流防止ダイオード28が使用されている。この逆流防止ダイオード28は、短絡手段24の保護サイリスタ27のアノード端子側との接続点と、増幅手段23のフォトサイリスタ29のアノード端子側との接続点との間に、直列接続されている。そして逆流防止ダイオード28は、そのアノード端子が、保護サイリスタ27側に向けられ、カソード端子が、フォトサイリスタ29側に向けられている。
もって、ダイオード28の整流作用により、そのアノード端子からカソード端子への順方向のみに電流を流し、逆方向への流れを阻止するので、平滑部6側から保護サイリスタ27への電流の流れ込みが、防止される。
過電圧保護部21については、以上のとおり。
【0027】
《遅延手段32について》
次に、遅延手段32について説明する。過電圧保護部21には、遅延手段32が付設されている。この遅延手段32は、給電開始に際し、2次側回路2が立ち上がった後において、つまりタイミングを僅かに遅らせて、過電圧保護部21を作動可能とする。
図示例の遅延手段32は、充電部7の入力端に並列接続された制御用バッテリー33と、制御用バッテリー33にて通電可能なリレーコイル34と、制御用バッテリー33とリレーコイル34間に並列接続されたコンデンサ35と、直列接続された抵抗36と、を備えた回路構成よりなる。
そして、リレーコイル34にて開閉される常開のリレー接点37が、前述した過電圧保護部21の検出手段22のツェナーダイオード26のアノード端子、図示例では更に増幅手段23の発光ダイオード30のカソード端子と、平滑部6のマイナス入力端子側との接続点との間に、直列接続されている。
【0028】
このような遅延手段32が設けられているので、非接触給電装置10の1次側回路11から、2次側回路2へと給電が開始された際、つまり電源13投入時においては、次のようになる。
まず、2次側回路2の充電部7,バッテリー8等が立ち上がって起動し、もって供給された電力の消費が開始される。そして遅延手段32にて、それから所定時間タイミングを遅らせて(例えば、0.3秒程度タイミングをずらして)、過電圧保護部21特にその検出手段22のツェナーダイオード26が作動可能となる。
すなわち遅延手段32は、その給電開始時から、制御用バッテリー33,コンデンサ35,抵抗36等を経由し、これらを充電,通電してリレーコイル34が励磁される時までに、所定時間を要する。
従って、過電圧保護部21の検出手段22のツェナーダイオード26は、このような所定時間が経過した後(例えば0.3秒程度経過後)、常開のリレー接点37が閉つまりオンして、通電可能となる。もって、検出手段22として作動可能となる。
このようにして、過電圧保護部21は、2次側回路2に対し遅延して作動可能となる。つまり、2次側回路2の充電部7等が立ち上がるまで、過電圧保護部21による過電圧保護は禁止されている。
遅延手段32については、以上のとおり。
【0029】
《短絡時おける電源13オフについて》
次に、短絡時の1次側回路11の電源13オフについて、説明する。この非接触給電装置10は、過電圧保護部21によって2次側回路2が短絡された際、短絡に基づく1次側回路11の電流変化又は電圧変化を検出する検出部38と、検出部38の検出に基づき、1次側回路11の電源13をオフする制御部39とが、設けられた回路構成よりなる。
すなわち、過電圧保護部21にて2次コイル4が短絡されると、1次コイル12そして1次側回路11の電流や電圧も急変する。そこで図示例では、1次側回路11の交流電流変化を、CTコイルを用いた検出部38にて、比例した2次電流変化に変成する。交流電圧変化を、トランスを用いた検出部38にて、比例した2次電圧変化に変成するようにしてもよい。
そして制御部39は、整流器40を介して入力された、このような2次電流変化や2次電圧変化に基づき、2次側回路2における短絡の有無を判別する。すなわち、検出されて入力された電流値や電圧値を、予め設定された電流値や電圧値と比較し、もって短絡の有無を判別する。
そして、短絡有と判別した場合は、1次側回路11の電源13のスイッチ部に対しオフ信号を出力して、電源13をオフする。このような制御部39としては、専用プラグラムが読み込まれたマイクロコンピュータや、データ処理用のコンパレータ等を利用したシーケンサー等が使用される。
更に、制御部39から警報部に対し警報信号を送出し、もって警報部の表示やブザー音にて、オペレーターに対し、過電圧異常が発生し短絡した旨を、警報するようにしてもよい。
短絡時における電源13オフについては、以上のとおり。
【0030】
《作用等》
本発明の過電圧保護付の非接触給電装置10は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)非接触給電装置10では、車輌B等の移動体側の2次側回路2の2次コイル4が、地上A側の1次側回路11の1次コイル12に対し、エアギャップGを存しつつ対応位置して、電力が供給される(図4を参照)。
【0031】
(2)すなわち給電に際しては、1次側回路11において、電源13から1次コイル12に、励磁電流が給電交流として通電される。
もって1次コイル12に磁束が形成され、1次コイル12と2次コイル4間のエアギャップGに、磁束の磁路が形成される。このようにして、1次コイル12と2次コイル4が電磁結合され、磁束が2次コイル4を貫くことにより、2次コイル4に誘導起電力が生成される。
非接触給電装置10では、このような電磁誘導の相互誘導作用により、電力が1次側回路11から2次側回路2へと、供給される(図1,図2,図3等を参照)。
【0032】
(3)2次側回路2では、2次コイル4からの交流が、整流部5で脈動分を含んで直流化され、過電圧保護部21を経た後、平滑部6において脈動分が低減される。
もって、平滑化された直流が、充電部7で定電圧化や低電圧化されて、バッテリー8に供給される。充電されたバッテリー8からは、適宜必要に応じ負荷9等へと電力が供給される(図1,図2,図3等を参照)。
【0033】
(4)さて、本発明の非接触給電装置10は、2次側回路2に過電圧保護部21が設けられている。
そして過電圧保護部21は、過電圧発生を検出する検出手段22と、その電流を増幅する増幅手段23と、短絡を実施する短絡手段24とを、備えている。もって過電圧保護部21は、2次側回路2について過電圧発生を検出すると、これを短絡して保護する(図1,図2を参照)。
すなわち、2次側回路2について過電圧発生、つまり直流電圧の異常上昇を検出すると、2次側回路2そして2次コイル4を短絡し、もって、回路の構成部分である2次コイル4,整流部5,平滑部6,充電部7,負荷9等が、過電圧の印加により破損や焼損することを防止し、これらを保護する。
【0034】
(5)さて、この過電圧保護部21にあっては、次のように、過電圧を検出して短絡を実施する。
すなわち、過電圧保護部21の検出手段22例えばツェナーダイオード26は、2次側回路2の平滑部6の前で並列接続されており、脈動分のない平滑された電圧について、過電圧発生の有無を検出する(図2を参照)。
つまり、2次側回路2の充電部7等への入力電圧と一致する電圧について、過電圧を検出する。このように、過電圧保護部21の検出手段22は、充電部7等の2次側回路2と一致し,マッチして過不足のない電圧を対象に、過電圧を検出,把握する。そして、過電圧保護部21の短絡手段24は、このような検出に基づき、短絡を実施する。
【0035】
(6)なお、短絡実施時において、平滑部6側から過電圧保護部21の短絡手段24例えば保護サイリスタ27へと、逆流電流の流れ込みの虞があるが、これは、逆流防止手段25にて回避される(図1を参照)。
すなわち、この2次側回路2では、過電圧保護部21の保護サイリスタ27と、平滑部6との間に、逆流防止手段25として逆流防止ダイオード28が、直列接続されている。もって、短絡時における平滑部6側から保護サイリスタ27への逆流電流,突入電流,流れ込み電流は、阻止される。
【0036】
(7)又、過電圧保護部21には、遅延手段32が付設されている。もって遅延手段32により、給電開始に際しては、充電部7やバッテリー8等の2次側回路2が、立ち上がり,起動してから、例えば0.3秒程度経過した後、タイミングを遅らせて、過電圧保護部21が作動可能となる(図2を参照)。つまり、過電圧保護部21のツェナーダイオード26等の検出手段22が、作動可能となる。
これにより、発光ダイオード30やフォトサイリスタ29等の増幅手段23も、作動可能となって、保護サイリスタ27へのゲート電流が可能となり、短絡手段24も作動可能となる。
給電開始に際し2次側回路2では、充電部7等が立ち上がり,起動する前においては、供給される電力の消費が行われず、必然的に電圧が上昇するが、これについて過電圧保護部21が過電圧として把握することはなくなり、もって短絡を実施してしまうことも回避される。
過電圧保護部21は、充電部7等の2次側回路2が立ち上がった後において、そして本来の過電圧が発生した場合において始めて、所期の通り短絡を実施可能となる。
【0037】
(8)なお、この非接触給電装置10では、過電圧保護部21によって短絡が実施されると、1次側回路11に付設された検出部38と制御部39により、直ちに電源13がオフされる(図1を参照)。
すなわち、2次側回路2が短絡されると、短絡に基づき、1次側回路11の電流や電圧が変化する。そこで、このような電流変化や電圧変化を、1次側回路11に付設された検出部38で検出し、その検出に基づき、制御部39が短絡実施と判別した場合には、1次側回路11の電源13がオフされる。
このように、簡単な構成により確実かつ直ちに、給電が停止されるようになっている。
作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0038】
1 非接触給電装置(従来技術)
2 2次側回路
3 過電圧保護部(従来技術)
4 2次コイル
5 整流部
6 平滑部
7 充電部
8 バッテリー
9 負荷
10 非接触給電装置(本発明)
11 1次側回路
12 1次コイル
13 電源
14 チョークコイル
15 コンデンサ
16 コンデンサ
17 モータ
18 コンバータ
19 インバータ
20 コンデンサ
21 過電圧保護部(本発明)
22 検出手段
23 増幅手段
24 短絡手段
25 逆流防止手段
26 ツェナーダイオード
27 保護サイリスタ
28 逆流防止ダイオード
29 フォトサイリスタ
30 発光ダイオード
31 サーミスタ
32 遅延手段
33 制御用バッテリー
34 リレーコイル
35 コンデンサ
36 抵抗
37 リレー接点
38 検出部
39 制御部
40 整流器
A 地上
B 車輌
C 給電スタンド
G エアギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導の相互誘導作用に基づき、1次側回路の1次コイルから、2次側回路の2次コイルに、エアギャップを存しつつ電力を供給する非接触給電装置であって、
該2次側回路について、整流部と平滑部との間に過電圧保護部が設けられており、該過電圧保護部は、該2次側回路について過電圧発生を検出すると、該2次側回路そして2次コイルを短絡して該2次側回路を保護すること、を特徴とする過電圧保護付きの非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1において、該過電圧保護部は、該平滑部における過電圧を検出する検出手段と、該検出手段の検出に基づき短絡を実施する短絡手段と、該短絡手段への該平滑部からの電流逆流を防止する逆流防止手段と、を有していること、を特徴とする過電圧保護付きの非接触給電装置。
【請求項3】
請求項2において、該過電圧保護部は、該平滑部における過電圧を降伏電圧として検出する該検出手段としてのツェナーダイオードと、
該ツェナーダイオードからの電流を増幅する増幅手段と、該増幅手段からのゲート電流に基づきターンオンすると共に、該整流部直後にて短絡を実施する該短絡手段としての保護サイリスタと、
短絡時における該保護サイリスタへの該平滑部側からの電流逆流を防止する該逆流防止手段としての逆流防止ダイオードと、を有していること、を特徴とする過電圧保護付きの非接触給電装置。
【請求項4】
請求項2において、該過電圧保護部は更に遅延手段を有しており、該遅延手段は、給電開始に際し該2次側回路が立ち上がった後に、該過電圧保護部を作動可能とすること、を特徴とする過電圧保護付きの非接触給電装置。
【請求項5】
請求項1において、該2次側回路が短絡された際、短絡に基づく該1次側回路の電流変化又は電圧変化を検出する検出部と、該検出部の検出に基づき、該1次側回路の電源をオフする制御部が、設けられていること、を特徴とする過電圧保護付きの非接触給電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44762(P2012−44762A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182916(P2010−182916)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000187208)昭和飛行機工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】