説明

遮光性カバーレイフィルム及び樹脂組成物

【課題】十分な遮光性を得ることができ、電気信頼性が高いのは勿論、良好な接着力及び難燃性を有する実用性に秀れた遮光性カバーレイフィルムの提供。
【解決手段】基材に遮光性を有する樹脂組成物を塗布してなる遮光性カバーレイフィルムであって、前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が添加されて成り、前記赤色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加され、前記青色顔料は前記各顔料の総重量部に対して5〜40wt%添加され、前記黄色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加されており、前記赤色顔料、前記青色顔料及び前記黄色顔料の総重量部は、前記樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%に設定されたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性カバーレイフィルム及び樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は近年用途が拡大しており、特にカメラ、レーザーディスク等の光学系で用いられることが多くなっている。この場合、フレキシブルプリント配線板表面の反射光や透過光がこれらの機能を妨害する場合がある。そこで反射光や透過光を遮るため、カバーレイフィルムに対して遮光性が求められている。
【0003】
また、従来のカバーレイフィルムはポリイミドフィルム等の透明若しくは半透明なフィルムを用いているため、フレキシブルプリント配線板用金属張積層板等の回路が、外観から視認できる状態であった。その結果、回路の配置を比較的容易に模倣されてしまう問題があった。この問題を解決するために、カバーレイフィルムを黒色等で着色して遮光性を付与し、回路を隠蔽することで模倣を防止する場合がある。
【0004】
このような遮光性を有するカバーレイフィルムとして、例えば特許文献1,2に開示されるようなものがある。
【0005】
特許文献1においてはポリイミド基材を染料若しくは顔料により黒に着色することで、特許文献2においては樹脂組成物若しくはポリイミド基材をカーボンブラック、アセチレンブラック若しくは金属酸化物系物質により黒に着色することで、カバーレイフィルムに遮光性を付与している。
【0006】
ここで、カバーレイフィルムとは、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート等のフィルムに接着剤として樹脂組成物が積層されているもので、回路を設けたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板等の回路を保護するために設けられるものとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−350210号公報
【特許文献2】特開平9−135067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、ポリイミド基材の形成時に色が抜け落ちてしまうため、十分な遮光性を得ることができない。即ち、ポリイミド基材は、原液をベルトにキャストして黒色顔料の水溶液に浸漬し、黒色顔料を浸漬した当該原液を400℃〜500℃程度で熱処理して硬化せしめて巻き取ることで形成されるが、黒色顔料の成分の耐熱温度は300℃程度であり、上記熱処理に耐えられず分解されてしまう。
【0009】
また、特許文献2に開示される方法では、カーボンブラック及びアセチレンブラックは導電性が高い物質であるため、カバーレイフィルムに求められる電気信頼性の低下を招くことになる。なお、金属酸化物系物質は非導電性であるが、酸化反応時に未反応の金属が存在するため、同様に電気信頼性の低下を招く。
【0010】
本発明は、本発明者らが、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、非導電性の原色の各顔料を、熱硬化性樹脂に所定量添加することで、樹脂組成物が十分な遮光性と電気信頼性を有すること、さらに前記顔料が難燃性を有することを見出し完成したもので、十分な遮光性を得ることができ、電気信頼性が高いのは勿論、良好な接着力及び難燃性を有する実用性に秀れた遮光性カバーレイフィルム及び樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
基材に遮光性を有する樹脂組成物を塗布してなる遮光性カバーレイフィルムであって、前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が添加されて成り、前記赤色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加され、前記青色顔料は前記各顔料の総重量部に対して5〜40wt%添加され、前記黄色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加されており、前記赤色顔料、前記青色顔料及び前記黄色顔料の総重量部は、前記樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%に設定されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルムに係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には無機充填剤が熱硬化性樹脂100重量部に対して30〜200重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルムに係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には硬化剤が熱硬化性樹脂中のエポキシ基に対して硬化剤中のアミン基若しくはフェノール系水酸基のモル比が0.1〜1.0となるように添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルムに係るものである。
【0015】
また、請求項3記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には硬化触媒が硬化性樹脂100重量部に対して0.01〜3.0重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルムに係るものである。
【0016】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には高分子成分が熱硬化性樹脂100重量部に対して30〜120重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルムに係るものである。
【0017】
また、熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が添加されて成る樹脂組成物であって、前記赤色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加され、前記青色顔料は前記各顔料の総重量部に対して5〜40wt%添加され、前記黄色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加されており、前記赤色顔料、前記青色顔料及び前記黄色顔料の総重量部は、前記樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%に設定されていることを特徴とする樹脂組成物に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、十分な遮光性を得ることができ、電気信頼性が高いのは勿論、良好な接着力及び難燃性を有する実用性に秀れた遮光性カバーレイフィルム及び樹脂組成物となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】比較例及び実施例の配合例を示す表である。
【図2】図1の樹脂組成物の各成分の内容等を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
非導電性の原色の各顔料を熱硬化性樹脂に所定量添加して遮光性を付与するため、例えば基材としてのポリイミドフィルムの成形時に色が抜け落ちることがなく、また、電気信頼性も高いものとなる。
【0022】
また、原色の各顔料が難燃性を有するため、例えば難燃剤として添加される無機充填剤等の添加量を減らすことができ、難燃性を確保しつつ無機充填剤による接着力の低下を抑制でき、接着力及び難燃性を実用的なレベルで両立することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、基材に遮光性を有する樹脂組成物を塗布してなる遮光性カバーレイフィルムであって、前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が所定量添加されて成るものである。なお、以下で述べる「重量部」及び「総重量部」は「固形分換算の重量」を示す。
【0025】
具体的には、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が採用されている。また、熱硬化性樹脂には、上記顔料に加え、所定量の無機充填剤、硬化剤、硬化触媒及び高分子成分(エラストマー系等)が添加されている。
【0026】
ここで、十分な遮光性と難燃性を得るため、顔料の添加量は、樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%程度に設定するのが好ましい。1wt%未満では着色が不十分で、十分な遮光性及び難燃性を得ることができず、20wt%を超えると接着力が低下する。なお、3〜10wt%に設定するのがより好ましい。
【0027】
また、各原色顔料の混合比率は、各顔料の総重量部に対して、赤色顔料20〜60wt%、青色顔料5〜40wt%、黄色顔料20〜60wt%に設定するのが好ましい。このような混合比率であれば十分黒に近い色を表現できる。なお、赤色顔料30〜50wt%、青色顔料10〜30wt%、黄色顔料30〜50wt%に設定するのがより好ましい。
【0028】
また、硬化物の難燃性、線膨張係数などの特性を向上させるため、無機充填剤の添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、30〜200重量部であることが好ましく、50〜150重量部であることがより好ましい。
【0029】
また、硬化剤の添加量は、熱硬化性樹脂中のエポキシ基に対して、硬化剤中のアミン基若しくはフェノール系水酸基のモル比が0.1〜1.0であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましい。
【0030】
また、硬化物の接着力、耐薬品性、耐熱性などの特性を向上させるため、硬化触媒の添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.01〜3.0重量部であることが好ましく、0.1〜1.0重量部であることがより好ましい。
【0031】
また、硬化物の接着力等の機械的強度の特性を向上させるため、高分子成分の添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、30〜120重量部であることが好ましく、50〜90重量部であることがより好ましい。
【0032】
各配合成分としては例えば以下に挙げるものを採用できる。顔料としては難燃性が高い成分、例えば芳香族、アミド結合、又は窒素原子等を有する構造であることが好ましい。具体的には以下に挙げる通りである。
【0033】
赤色顔料としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には、次のようなカラーインデックス番号が付されているものを採用できる。
・モノアゾ系:Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,
114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,
266,267,268,269
・ジスアゾ系:Pigment Red 37,38,41
・モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,
64:1,68
・ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171,175,176,185,208
・ペリレン系:Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224
・ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254,255,264,270,272
・縮合アゾ系:Pigment Red 144,166,214,220,221,242
・アントラキノン系:Pigment Red 168,216,Solvent Red 149,150,152,207
・キナクリドン系:Pigment Red 122,202,206,207,209
【0034】
青色顔料としては、フタロシアニン系、アントラキノン系、ジオキサジン系などがあり、具体的には、次のようなカラーインデックス番号が付されているものを採用できる。
・Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,60
・Solvent Blue 35,63,67,68,70,83,87,94,97,122,136
【0035】
なお、これ以外にも金属置換若しくは無機置換のフタロシアニン化合物を採用することもできる。
【0036】
黄色顔料としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系などがあり、具体的には次のようなカラーインデックス番号が付されているものを採用できる。
・モノアゾ系:Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,
100,104,105,111,116,167,168,169,182,183
・ジスアゾ系:Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,
172,176,188,198
・縮合アゾ系:Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180
・ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181
・イソインドリノン系:Pigment Yellow 109,110,139,179,185
・アントラキノン系:Solvent Yellow 24,108,147,163,193,199,202
【0037】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などを採用できる。なお、エポキシ樹脂は2種類以上を併用しても良い。この場合、通常、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が含有される。
【0038】
無機充填剤としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化珪素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどを採用できる。
【0039】
硬化剤としては、アミン系、フェノール系等、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものから広く選択することができる。アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等が採用でき、フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトール変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、p−キシレン変性フェノール樹脂等が採用できる。
【0040】
硬化触媒としては、イミダゾール,2−メチルイミダゾール,2−エチルイミダゾール,2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール誘導体や、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物等を採用できる。
【0041】
高分子成分としては、1,2−ポリブタジエンエラストマー、イソプロピレンエラストマー、ブタジエンエラストマー、スチレンブタジエンエラストマー、ニトリルエラストマー、ウレタンエラストマー、エチレンープロピレンエラストマー、アクリルエラストマー、シリコンエラストマー等を採用できる。
【0042】
また、当該樹脂組成物には、諸特性を低下させない範囲で、必要に応じて前述した各成分に加えて、種々の添加剤、例えば、界面活性剤、カップリング剤等を加えても良い。この実施形態のカバーレイフィルムにおいては、基材の厚さが5μm〜100μmであり、樹脂組成物からなる層の厚さが5μm〜50μmであるものが好ましい。なお、樹脂組成物からなる層の厚さとは、カバーレイフィルムの樹脂組成物を、所定の温度で乾燥させた後の厚さを示す。
【0043】
前記基材としては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等が採用され、中でも、難燃性、電気絶縁性、耐熱性、弾性率等の点で、ポリイミドフィルムが好ましい。なお、他の素材のフィルムを採用しても良い。
【0044】
本実施例においては、図1に記載の材料を採用し、これらを実施例欄の配合割合で配合している。図1の比較例1〜7は、実施例と同様の材料を採用し(比較例1及び2では顔料は未配合)、例毎に配合割合を種々変化させたものである。そして、これらの遮光性、接着力及び難燃性を評価することで、実施例の効果を確認した。但し本発明は、かかる実施例により何等制限されるものではない。
【0045】
本実施例におけるカバーレイフィルムは以下の方法で作製した。
【0046】
上記比較例及び実施例の樹脂組成物を、ポリイミドフィルム[(株)カネカ製 アピカル12.5NPI]に、乾燥後の厚さが25μmとなる様にバーコーダーを用いて塗布し、150℃で5分間乾燥させた。
【0047】
上記方法にて得られたカバーレイフィルム(半硬化状態)について、以下の評価試験を行った。
【0048】
<遮光性>
遮光性の評価は、分光光度計[(株)日立製作所製 U―4100]を用いて、波長500nmの光透過率(%)を測定することで行った。
【0049】
この評価に用いるサンプルは、上記方法にて得られたカバーレイフィルムを160℃で3時間乾燥し、完全硬化状態にして用いた。評価は以下のように行った。
◎:光透過率が1%未満であり、実用上全く問題のない遮光性を有する。
○:光透過率が1%以上、15%未満であり、実用可能な遮光性を有する。
△:光透過率が15%以上、25%未満であり、遮光性がやや不十分である。
×:光透過率が25%以上であり、遮光性が不十分である。
【0050】
<接着力>
接着力の評価は、(株)島津製作所製のオートグラフを用いて、引き剥がし強さを測定することにより行った。なお、評価方法は、IPC TM650に準拠して行った(90°フィルム引き)。
【0051】
この評価に用いるサンプルは、銅箔[JX日鉱日石金属(株)製 JTC−1.0oz(35μm)]の光沢面にカバーレイフィルムを積層し、160℃、2.94MPa(1cm当たりの圧力)、60分の条件で加熱加圧したものを用いた。評価は以下のように行った。
◎:引き剥がし力が6.5N/cm以上であり、実用上全く問題のない接着力を有する

○:引き剥がし力が5.5N/cm以上、6.5N/cm未満で、実用可能な接着力を
有する。
△:引き剥がし力が4.5N/cm以上、5.5N/cm未満であり、接着力がやや不
十分である。
×:引き剥がし力が4.5N/cm未満であり、接着力が不十分である。
【0052】
<難燃性>
難燃性の評価は、UL94規格に準拠して、V−0グレードを達成できるか否かにより行った。
【0053】
この評価に用いるサンプルは、ポリイミドフィルム[(株)カネカ製アピカル 12.5NPI]をカバーレイフィルムで積層し、160℃、2.94MPa(1cm当たりの圧力)、60分の条件で加熱加圧したものを用いた。評価は以下のように行った。
◎:UL94規格V−0グレードを達成できる。
○:UL94規格V−0グレードを達成できるが、◎よりやや劣る。実用上問題ない。
△:UL94規格V−0グレードを達成できないことがあり、実用上やや問題がある。
×:UL94規格V−0グレードを達成することができない。
【0054】
以上の評価結果も図1に示す。
【0055】
比較例1は顔料を含まない例であり、従って、当然遮光性は不十分である。
【0056】
比較例2は比較例1に比し無機充填剤の添加量を減らしたものであり、比較例1に比し接着力は向上するが、難燃性が低下し、また、比較例1と同様に遮光性は不十分である。
【0057】
比較例3は比較例1に顔料を若干量添加したものであるが、遮光性は十分でない。
【0058】
比較例4は比較例3より顔料の添加量を増やしたものであり、比較例3より遮光性が向上しているが、接着力が低下している。
【0059】
比較例5は比較例4より顔料の添加量を増やしたものであり、比較例4より難燃性が向上し非常に良好となり、また、遮光性も向上しているが未だ十分でない。
【0060】
比較例6は比較例5より顔料の添加量を増やしたものであり、比較例5より遮光性が向上し、難燃性も非常に良好であるが、接着力が低下している。
【0061】
比較例7は比較例6より無機充填剤の量を減らしたものであり、比較例6より接着力が若干向上しているが、難燃性が低下している。
【0062】
実施例は比較例7より更に無機充填剤の量を減らしたものであり、遮光性が非常に良好で、接着力及び難燃性も良好な状態で両立できることが確認できる。
【0063】
本実施例は上述のように構成したから、非導電性の原色の各顔料を熱硬化性樹脂に所定量添加することで遮光性を付与するため、例えば基材としてのポリイミドフィルムの成形時に色が抜け落ちることがなく、また、電気信頼性も高いものとなる。
【0064】
また、難燃性を発現するような構造、例えば芳香族、アミド結合、又は窒素原子等を有する顔料を所定量添加することで、樹脂組成物、またはカバーレイフルム自体に難燃性が発現する。これにより、難燃剤として添加していた無機充填剤の添加量を減らしても、十分な難燃性を確保することができる。さらに難燃剤として添加される無機充填剤の添加量を減らすことができるため、難燃性を確保しつつ無機充填剤による接着力の低下を抑制でき、接着力及び難燃性を実用的なレベルで両立することができることになる。
【0065】
よって、本実施例は、十分な遮光性を得ることができ、電気信頼性が高いのは勿論、良好な接着力及び難燃性を有する実用性に秀れたものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に遮光性を有する樹脂組成物を塗布してなる遮光性カバーレイフィルムであって、前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が添加されて成り、前記赤色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加され、前記青色顔料は前記各顔料の総重量部に対して5〜40wt%添加され、前記黄色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加されており、前記赤色顔料、前記青色顔料及び前記黄色顔料の総重量部は、前記樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%に設定されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルム。
【請求項2】
請求項1記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には無機充填剤が熱硬化性樹脂100重量部に対して30〜200重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルム。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には硬化剤が熱硬化性樹脂中のエポキシ基に対して硬化剤中のアミン基若しくはフェノール系水酸基のモル比が0.1〜1.0となるように添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルム。
【請求項4】
請求項3記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には硬化触媒が硬化性樹脂100重量部に対して0.01〜3.0重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルム。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の遮光性カバーレイフィルムにおいて、前記樹脂組成物には高分子成分が熱硬化性樹脂100重量部に対して30〜120重量部添加されていることを特徴とする遮光性カバーレイフィルム。
【請求項6】
熱硬化性樹脂に非導電性の赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料が添加されて成る樹脂組成物であって、前記赤色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加され、前記青色顔料は前記各顔料の総重量部に対して5〜40wt%添加され、前記黄色顔料は前記各顔料の総重量部に対して20〜60wt%添加されており、前記赤色顔料、前記青色顔料及び前記黄色顔料の総重量部は、前記樹脂組成物の重量部に対して1〜20wt%に設定されていることを特徴とする樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−43833(P2012−43833A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180978(P2010−180978)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】