説明

部分還元鉄の製造方法及び製造設備

【課題】溶鉱炉で銑鉄を製造するために水平方向に移動する移動床において、還元材内装塊成鉱を部分的に迅速に還元し、高炉等の溶鉱炉用装入原料として好適な部分還元鉄を製造する製造方法およびその装置を提供する。
【解決手段】移動床1に、還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を混合状態で供給して、混合層2を形成し、混合層に燃焼装置15aで生成する1000〜1300℃の燃焼排ガス16aを通して、還元材内装塊成鉱を部分的に還元した後、混合層を冷却塔14に投入して、部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却し、冷却塔底部から、部分還元鉄と金属セラミックス球を分離して排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造設備を用い、炉内を水平方向に移動する移動床の上に、還元材内装塊成鉱と加熱媒体を含む混合層を形成し、該混合層の水平移動中に、還元材内装塊成鉱を部分的に還元し、冷却・排出して、高炉等の溶鉱炉用装入原料としての部分還元鉄を製造する製造方法、及び、そのための製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶鉱炉で銑鉄を製造するための主な原料として、鉄鉱石と副原料を予備処理(焼結、焼成)した焼結鉱や、焼成ペレットが用いられている。しかし、高品位鉱が枯渇しつつある現状では、これまで使用されていなかった貧鉱や、新産地の鉄鉱石を、多種の銘柄に渡り使用しなければならない。
【0003】
この場合、銘柄単味で用いる場合もあるし、各種銘柄を混合して用いる場合もあるが、これら鉄鉱石の特性は、産地にもより多種多様であり、従来の焼結技術や焼成技術に従って焼結鉱や焼成ペレットを製造しても、溶鉱炉内で期待どおりの還元挙動が得られない場合がある。
【0004】
それ故、溶鉱炉原料として最適な被還元特性を有する焼結鉱や焼成ペレットを製造するには、溶鉱炉内での被還元特性をも考慮した銘柄特性に合った鉄鉱石原料の事前処理法の開発が必要である。
【0005】
こうした状況下で、高炉の生産性を高めた操業を指向する際には、高炉原料の一つとして部分還元鉄を用いる高炉操業が有効と考えられている。従来の還元鉄製造方法としては、還元ガスとして天然ガスを用いてシャフト炉内で焼成ペレット等を還元するMIDREX法やHyL法等が知られている(例えば、非特許文献1、参照)。
【0006】
しかし、これらの還元鉄製造方法を用いて、好ましくは還元率85%〜90%程度の部分還元鉄を製造するためには、多量の天然ガスを必要とし、かつ、長時間の還元時間が必要であるため、高炉などの溶鉱炉用装入原料の一つとして部分還元鉄を採用する場合には、銑鉄製造コスト増加ならびに生産性低下などの課題があった。
【0007】
それ故、天然ガスを用いた上記還元鉄の製造方法に比べてより安価で還元効率に優れた還元材を利用したプロセスにより、安価でかつ高効率で、還元率85〜90%程度の部分還元鉄を製造する方法が望まれている。
【非特許文献1】第3版鉄鋼便覧 第II巻 製銑・製鋼 P329〜341、S54.10.15発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記鉄鉱石事情に鑑み、高炉等の溶鉱炉用装入原料を、安価でかつ高効率で、事前に部分還元する溶鉱炉装入原料の事前還元方法と、そのための製造設備を提供することを目的とする。
【0009】
具体的には、本発明は、水平方向に移動する移動床を有する還元装置を用い、該移動床に、還元材内装塊成鉱と加熱媒体を含む混合層を形成し、該混合層の移動中に、還元材内装塊成鉱を加熱して部分的に迅速に還元し、冷却・排出して、溶鉱炉装入原料とし好適な部分還元鉄を製造する方法、及び、そのための製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、溶鉱炉装入原料として好適な部分還元鉄を迅速に製造することができないかとの発想の下で、還元材内装塊成鉱の還元について鋭意研究調査した。図1に、その結果の一部を示す。
【0011】
図1は、1200℃の100%N2雰囲気中、及び、1200℃の80%N2−20%CO2雰囲気中で、粒径9.4mmの還元材内装ペレットを還元した時の該ペレットの重量変化割合(ΔW[g]/W0[g]、W0:還元材内装ペレットの重量)の推移を示す図である。
【0012】
図1から、還元材内装ペレットの加熱還元開始10分未満において還元が急速に進行し、部分還元鉄が形成されていることが解かる。
【0013】
図2に、部分還元鉄の組織を示す。還元開始後10分以上を経過すると(図2は30分経過)、再酸化する傾向が見られるが、図2に示す組織からも、還元材内装塊成鉱を加熱し短時間で還元して、高炉等の溶鉱炉用装入原料として使用し得る部分還元鉄を迅速に製造できることが解かる。
【0014】
本発明は、上記解明結果に基づいてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
【0015】
(1) 水平方向に移動する移動床に、還元材内装塊成鉱を供給し、該還元材内装塊成鉱を部分的に還元して部分還元鉄を製造する部分還元鉄の製造方法において、
(a)上記移動床に、還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球を混合状態で供給して、混合層を形成し、
(b)上記混合層に、燃焼装置で生成する1000〜1300℃の燃焼排ガスを透過せしめて、還元材内装塊成鉱を部分的に還元し、部分還元鉄とし、
(c)上記混合層を冷却塔に投入して、部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却し、
(d)冷却塔底部から、部分還元鉄と金属セラミックス球を分離して排出する、
ことを特徴とする部分還元鉄の製造方法。
【0016】
(2) 前記混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給し、1000〜1300℃の予熱用排ガスを生成することを特徴とする前記(1)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0017】
(3) 前記金属セラミックス球を、予熱用排ガスで1000〜1300℃に予熱することを特徴とする前記(2)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0018】
(4) 前記還元材内装塊成鉱を、予熱用排ガスで700℃以下に予熱することを特徴とする前記(3)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0019】
(5) 前記冷却塔にて、塔下部に設けた冷却装置と、塔最下部から吹き込む冷却ガスで、塔内を降下する部分還元鉄と金属セラミックス球を300℃以下に冷却することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造方法。
【0020】
(6) 前記塔下部に設けた冷却装置が、冷却水循環型の冷却装置であることを特徴とする前記(5)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0021】
(7) 前記塔最下部から吹き込む冷却ガスが、不活性ガスであることを特徴とする前記(5)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0022】
(8) 前記冷却塔底部から排出された金属セラミックス球を循環し、移動床に再供給することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造方法。
【0023】
(9) 前記金属セラミックス球が、融点1300℃以上、比熱0.25kcal/kg・deg以上の金属セラミックス球、又は、熱伝導率1.8kcal/m・h・℃以上の金属セラミックス球であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造方法。
【0024】
(10) 前記金属セラミックス球が、アルミナ球であることを特徴とする前記(9)に記載の部分還元鉄の製造方法。
【0025】
(11) 水平方向に移動する移動床で、還元材内装塊成鉱を部分的に還元して部分還元鉄を製造する製造設備であって、
(i)上記移動床の一方の端部に、移動床に還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球を混合状態で供給して混合層を形成する還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置を備え、
(ii)上記移動床の上部及び下部に、燃料排ガスを混合層に通すための燃焼排ガス送給吸引装置を備え、かつ、
(iii)上記移動床の他方の端部に、該端部から投入される混合層を収容し、
(a)下部に該混合層をなす部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却する冷却装置、
(b)最下部に上記部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却する冷却ガスを吹き込む羽口、及び、
(c)底部に冷却後の部分還元鉄と金属セラミックス球を分離して排出する排出装置
を設けた冷却塔を備える、
ことを特徴とする部分還元鉄の製造設備。
【0026】
(12) 前記還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置が、混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給して生成した予熱用排ガスで、金属セラミックス球を1000〜1300℃に予熱する予熱装置を有することを特徴とする前記(11)に記載の部分還元鉄の製造設備。
【0027】
(13) 前記還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置が、混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給して生成した予熱用排ガスで、還元材内装塊成鉱を700℃以下に予熱する予熱装置を有することを特徴とする前記(11)に記載の部分還元鉄の製造設備。
【0028】
(14) 前記冷却塔にて、部分還元鉄と金属セラミックス球を300℃以下に冷却することを特徴とする前記(11)〜(13)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造設備。
【0029】
(15) 前記冷却塔の冷却装置が、冷却水循環型の冷却装置であることを特徴とする前記(11)〜(14)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造設備。
【0030】
(16) 前記冷却塔の羽口から吹き込む冷却ガスが、不活性ガスであることを特徴とする前記(11)〜(15)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造設備。
【0031】
(17) 前記冷却塔の排出装置から排出された金属セラミックス球を、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置に循環する金属セラミックス球循環装置を備えることを特徴とする前記(11)〜(16)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造設備。
【0032】
(18) 前記金属セラミックス球が、融点1300℃以上、比熱0.25kcal/kg・deg以上の金属セラミックス球、又は、熱伝導率1.8kcal/m・h・℃以上の金属セラミックス球であることを特徴とする前記(11)〜(17)のいずれかに記載の部分還元鉄の製造装置。
【0033】
(19) 前記金属セラミックス球が、アルミナ球であることを特徴とする前記(18)に記載の部分還元鉄の製造装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、水平方向に移動する移動床を用い、還元材内装塊成鉱を部分的に迅速に還元して、高炉等の溶鉱炉用装入原料として好適な部分還元鉄を、短時間で製造することができ、大幅な生産性の改善が可能となる。
【0035】
また、部分還元鉄製造方法については、本発明方法では炭材内装でよく、天然ガスなどの高価ガスの使用割合を大幅に低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図3に、本発明の一実施態様を示す。
【0037】
図3に示す実施態様においては、水平方向に移動する移動床1の一方の端部に、移動床1に還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球を混合状態で供給して混合層2を形成する還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4を備え、移動床1の上部及び下部に、燃焼排ガス16を混合層2に透過せしめるための燃焼排ガス送給吸引装置3を備え、かつ、移動床1の他方の端部に、該端部から投入される混合層2を収容し、部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却する冷却塔14を備えている。
【0038】
移動床1は、通常、焼結設備で用いられるグレート式の移動床を採用するが、燃焼排ガス16が透過できればよいので、グレート式のものに限られない。
【0039】
還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4は、還元材内装塊成鉱の送給路23から送給されてくる還元材内装塊成鉱6を収容する還元材内装塊成鉱収容装置5、及び、金属セラミックス球8及び/又は金属セラミックス球循環装置22で循環されてくる金属セラミックス球8を収容する金属セラミックス球収容装置7を有していて、それぞれの装置5、7から切り出される還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を適宜混合して、移動床1上に供給して、混合層2を形成する。
【0040】
還元材内装塊成鉱6は、通常のぺレット造粒方法、装置で、例えば、図4に示すように、まず、粉状鉄鉱石26を、燃焼バーナー25で加熱しつつ造粒機24で造粒し、さらに、造粒した鉄鉱石擬似粒子27と還元材28(石炭、コークス等)を混合機29で混合した後、塊成鉱製造機30で、粒径5〜20mm程度、好ましくは、粒径9〜10mmの粒に塊成化したものである。
【0041】
このようにして製造された還元材内装塊成鉱6は、還元材内装塊成鉱の送給路23を経て、還元材内装塊成鉱収容装置5に収容される(図3、参照)。
【0042】
還元材内装塊成鉱収容装置5に収容された還元材内装塊成鉱6は、適宜、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4へ切り出されるが、その前に、混合層2を透過後の燃焼排ガス16bに(空気+燃料)21を加えて燃焼装置15bで燃焼して生成する100〜1300℃の予熱用排ガス17との熱交換で、還元材内装塊成鉱6の内部で還元反応が起きない700℃以下に還元材内装塊成鉱6を予熱しておくことが好ましい。
【0043】
燃焼排ガス16bは、移動床1で還元材内装塊成鉱6が還元する過程で生成したCOガスを含んでいるが、燃焼装置15bで燃焼された後、不活性ガス(主に、N2)とCO2を主成分とする予熱用排ガス17となる。そして、予熱用排ガス17は、還元材内装塊成鉱6と熱交換した後、還元材内装塊成鉱収容装置5の上部から排ガス20として外部に放出される。
【0044】
この予熱により、移動床1上の混合層2の温度を所定の温度範囲、好ましくは、1000〜1300℃に維持するエネルギー原単位を小さくすることができるし、また、還元材内装塊成鉱6の内部における還元反応を促進して、混合層2を冷却塔14へ投入するまでの時間を、20分程度まで短縮することができる。
【0045】
金属セラミックス球8は、混合層2内で還元材内装塊成鉱6の部分還元に伴うスティッキング現象の発現を防止し、また、加熱媒体として伝熱加熱するために供給する。それ故、金属セラミックス球8は、還元材内装塊成鉱6との混合状態で、又は、還元材内装塊成鉱6の装入態様に併せ、移動床1に供給される。
【0046】
金属セラミックス球は、加熱媒体として機能するものであるから、融点1300℃以上、比熱0.25kcal/kg・deg以上のもの、又は、熱伝導率1.8kcal/m・h・℃以上のものが好ましい。具体的には、例えば、アルミナ球が好ましい。
【0047】
混合層2内で金属セラミックス球8と還元材内装塊成鉱6を均一な混合状態にする必要があるので、金属セラミックス球8の粒径は、該混合状態が混合層2の移動中も維持されるよう、還元材内装塊成鉱6の粒径や密度を考慮して、適宜決定する。
【0048】
それ故、金属セラミックス球8の粒径は、特定の粒径に限定されないが、例えば、還元材内装塊成鉱6の粒径が9〜10mm程度の時、金属セラミックス球8の粒径は、5〜8mm程度が好ましい。
【0049】
また、金属セラミックス球8は、金属セラミックス球収容装置7に収容されている間に、1000〜1300℃の予熱用排ガス17との熱交換で、1000〜1300℃に予熱しておくことが好ましい。
【0050】
予熱用排ガス17は、金属セラミックス球8と熱交換した後、金属セラミックス球収容装置7の上部から排ガス20として外部に放出される。
【0051】
この予熱により、移動床1上の混合層2の温度を所定の温度範囲、好ましくは、1000〜1300℃に維持するエネルギー原単位を小さくすることができるし、また、還元材内装塊成鉱6の内部における還元反応を促進して、混合層2を冷却塔14へ投入するまでの時間を、例えば、20分程度まで短縮することができる。
【0052】
混合層2が移動床1の移動(図では右方へ)に伴って移動する間、混合層2の上部から、冷却塔14から排出される冷却塔排ガス19(これについては後述する)に(空気+燃料)21を加え、燃焼装置15aで燃焼して生成する燃焼排ガス16aを、燃焼排ガス送給吸引装置3を用いて、混合層2に透過せしめ、混合層2が、所定の温度、好ましくは、1000〜1300℃に維持される。
【0053】
そして、混合層2が移動床1の他方の端部(冷却塔14側の端部)に達するまでの間に、還元材内装塊成鉱6の内部で還元反応が進行し、部分還元鉄18が生成される。
【0054】
移動床1の他方の端部(冷却塔14側の端部)には、該端部から投入される混合層2を収容し、降下する間に混合層2、即ち、部分還元鉄18と金属セラミックス球8を、300℃以下、好ましくは200℃程度に冷却する冷却塔14が備えられている。
【0055】
冷却塔14の塔内下部には、冷却装置9、好ましくは、冷却水10を循環する冷却装置9が設けられ、また、塔最下部には羽口11が設けられている。
【0056】
冷却塔14内では、冷却装置9による冷却と、羽口11から塔内に吹き込まれる冷却ガス12、好ましくは窒素ガス等の不活性ガスによる冷却により、金属セラミックス球8と部分還元鉄18が、塔内を降下する間に、300℃以下、好ましくは200℃程度に冷却される。
【0057】
羽口11から冷却塔14内に吹き込まれた冷却ガス12(例えば、窒素ガス)は、降下する金属セラミックス球8及び部分還元鉄18と熱交換をしつつ塔内を上昇し、高温(1000〜1100℃程度)の冷却塔排ガス19となり、冷却塔14から排出された後、(空気+燃料)21が加えられ、燃焼装置15aにおいて、燃焼し加熱された後、混合層2の上部に送給される燃焼排ガス16となる。
【0058】
この際、燃焼排ガス16は、不活性ガス(例えば、窒素ガス)単独、又は、不活性ガスとCO2からなるものである。
【0059】
冷却塔14の底部には排出装置13が設けられている。排出装置13は、冷却塔14内を降下して底部に達した部分還元鉄18と金属セラミックス球8を分離して塔外に排出する。
【0060】
部分還元鉄18は、高炉等の溶鉱炉用装入原料として用いられる。金属セラミックス球8は、金属セラミックス球循環装置22により、金属セラミックス球収容装置7に循環され、移動床1に再供給される。
【0061】
図3に示す実施態様では、還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を、それぞれ、還元材内装塊成鉱収容装置5と金属セラミックス球収容装置7から切り出し、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4にて混合し、混合状態で移動床1に供給するが、本発明では、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4を用いずに、還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を、それぞれ、還元材内装塊成鉱収容装置5と金属セラミックス球収容装置7から、交互に、又は、同時に切り出して移動床1に供給し、混合層2を形成してもよい。
【0062】
即ち、本発明において、還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球の混合態様は、特定のものに限定されない。
【0063】
還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を予め混合しない場合は、それぞれの収容装置5、7内で、100〜1300℃の予熱用排ガス17と熱交換して、還元材内装塊成鉱6と金属セラミックス球8を、それぞれ、所定の温度に予熱しておくことが好ましい。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0065】
(実施例1)
通常の方法で、粉状鉄鉱石に、還元材として炭材(石炭)を配合し、粒径9.4mmの炭材内装ペレット(T.Fe=55%、C=15%)を製造し、図3に示す製造設備を用いて部分還元鉄を製造した。
【0066】
炭材内装ペレット:1782kg/t-DRI、及び、アルミナ球:1400kg/t-DRIを、それぞれの収容装置に充填した。
【0067】
移動床1で、炭材内装ペレットの還元過程で生成したCOガスを含有した燃焼排ガス16bに、空気:950Nm3/t-DRIを供給して、燃焼装置15bで燃焼させ、約1207℃の予熱用排ガス17を生成し、この加熱ガスの供給量を制御して、それぞれの収容装置5、7へ導入することで、炭材内装ペレットを685℃に、アルミナ球を1200℃に予熱した。
【0068】
予熱後、炭材内装ペレットとアルミナ球を、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置4で混合し、混合状態で移動床1の上に供給した。
【0069】
冷却塔14の羽口11から冷却ガス12として窒素ガスを931Nm3/t-DRI吹き込み、塔頂から排出された約700℃の冷却塔排ガス19を、さらに、空気と燃料ガスとしてプロパンガス:20Nm3/t-DRIを加えて、燃焼装置15aで燃焼させ、約1000℃の燃焼排ガス16を生成した後、移動床1上の混合層2上部に送給して、混合層2を加熱した。
【0070】
その結果、還元率:85〜90%、残留C:2%の組成の部分還元鉄を製造することができた。還元時間は、従来シャフト還元法において要する還元時間を1とした場合に、1/3程度にまで大幅に短縮され、大幅な生産性の改善が達成された。
【0071】
また、金属セラミックス球収容装置7の排出ガス温度は700℃、炭材内装ペレット収容装置5の排ガス温度は100℃であり、これら排ガス中のCO及びCO2濃度からηco(=CO2/(CO+CO2))=100%であり、従来シャフト還元法の反応効率(ηco=40%)に比べて反応効率も大幅に改善された。
【0072】
なお、還元時間及び反応効率の比較評価の基準に用いた従来シャフト還元法の結果は、MIDREX法により、天然ガスを改質した30%CO−50%H2−20%N2の還元ガスを用いて、900℃の還元ガス温度で、従来ペレット(内装C量=0%):1600kg/t-DRIを縦型シャフト炉に装入し、還元率:85〜90%の部分還元鉄を製造する場合の結果を用いた。
【0073】
(実施例2)
上記実施例1により製造した部分還元鉄を高炉に装入し、還元材(コークス等)の使用量の低減効果を確認した。
【0074】
図5に、還元率:85%の部分還元鉄を高炉原料として使用した場合の還元材比の低減量(部分還元鉄を使用しない高炉操業時のコークス装入量に対する低減量)を示す。
【0075】
高炉原料として部分還元鉄を100kg/t-pig使用した場合、高炉の還元材比を20kg/t程度低減することが可能であり、生産量5%の増大を達成できた。
【0076】
このことから、本発明の部分還元鉄製造方法は、生産性が高く、高価な天然ガス等の還元ガスが不要で、かつ、安価な炭材を使用できるものであることが解かる。
【0077】
また、本発明の部分還元鉄製造方法によって製造した部分還元鉄は、溶鉱炉装入原料として好適なものであることが解かる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】還元材内装塊成鉱における還元反応の進行状況を示す図である。
【図2】部分還元鉄の組織を示す図である。
【図3】本発明の一実施態様を示す図である。
【図4】還元材内装塊成鉱製造法の一製造態様を示す図である。
【図5】本発明の部分還元鉄の炉内における還元挙動を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 移動床
2 混合層
3 燃焼排ガス送給吸引装置
4 還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置
5 還元材内装塊成鉱収容装置
6 還元材内装塊成鉱
7 金属セラミックス球収容装置
8 金属セラミックス球
9 冷却装置
10 冷却水
11 羽口
12 冷却ガス
13 排出装置
14 冷却塔
15a、15b 燃焼装置
16a、16b 燃焼排ガス
17 予熱用排ガス
18 部分還元鉄
19 冷却塔排ガス
20 排ガス
21 空気+燃料
22 金属セラミックス球循環装置
23 還元材内装塊成鉱の供給路
24 造粒機
25 燃焼バーナー
26 粉状鉄鉱石
27 鉄鉱石擬似粒子
28 還元材
29 混合機
30 塊成鉱製造機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動する移動床に、還元材内装塊成鉱を供給し、該還元材内装塊成鉱を部分的に還元して部分還元鉄を製造する部分還元鉄の製造方法において、
(a)上記移動床に、還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球を混合状態で供給して、混合層を形成し、
(b)上記混合層に、燃焼装置で生成する1000〜1300℃の燃焼排ガスを透過せしめて、還元材内装塊成鉱を部分的に還元し、部分還元鉄とし、
(c)上記混合層を冷却塔に投入して、部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却し、
(d)冷却塔底部から、部分還元鉄と金属セラミックス球を分離して排出する、
ことを特徴とする部分還元鉄の製造方法。
【請求項2】
前記混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給し、1000〜1300℃の予熱用排ガスを生成することを特徴とする請求項1に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項3】
前記金属セラミックス球を、予熱用排ガスで1000〜1300℃に予熱することを特徴とする請求項2に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項4】
前記還元材内装塊成鉱を、予熱用排ガスで700℃以下に予熱することを特徴とする請求項3に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項5】
前記冷却塔にて、塔下部に設けた冷却装置と、塔最下部から吹き込む冷却ガスで、塔内を降下する部分還元鉄と金属セラミックス球を300℃以下に冷却することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項6】
前記塔下部に設けた冷却装置が、冷却水循環型の冷却装置であることを特徴とする請求項5に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項7】
前記塔最下部から吹き込む冷却ガスが、不活性ガスであることを特徴とする請求項5に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項8】
前記冷却塔底部から排出された金属セラミックス球を循環し、移動床に再供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項9】
前記金属セラミックス球が、融点1300℃以上、比熱0.25kcal/kg・deg以上の金属セラミックス球、又は、熱伝導率1.8kcal/m・h・℃以上の金属セラミックス球であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項10】
前記金属セラミックス球が、アルミナ球であることを特徴とする請求項9に記載の部分還元鉄の製造方法。
【請求項11】
水平方向に移動する移動床で、還元材内装塊成鉱を部分的に還元して部分還元鉄を製造する製造設備であって、
(i)上記移動床の一方の端部に、移動床に還元材内装塊成鉱と金属セラミックス球を混合状態で供給して混合層を形成する還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置を備え、
(ii)上記移動床の上部及び下部に、燃料排ガスを混合層に通すための燃焼排ガス送給吸引装置を備え、かつ、
(iii)上記移動床の他方の端部に、該端部から投入される混合層を収容し、
(a)下部に該混合層をなす部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却する冷却装置、
(b)最下部に上記部分還元鉄と金属セラミックス球を冷却する冷却ガスを吹き込む羽口、及び、
(c)底部に冷却後の部分還元鉄と金属セラミックス球を分離して排出する排出装置
を設けた冷却塔を備える、
ことを特徴とする部分還元鉄の製造設備。
【請求項12】
前記還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置が、混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給して生成した予熱用排ガスで、金属セラミックス球を1000〜1300℃に予熱する予熱装置を有することを特徴とする請求項11に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項13】
前記還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置が、混合層を透過した燃焼排ガスを燃焼装置に送給して生成した予熱用排ガスで、還元材内装塊成鉱を700℃以下に予熱する予熱装置を有することを特徴とする請求項11に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項14】
前記冷却塔にて、部分還元鉄と金属セラミックス球を300℃以下に冷却することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項15】
前記冷却塔の冷却装置が、冷却水循環型の冷却装置であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項16】
前記冷却塔の羽口から吹き込む冷却ガスが、不活性ガスであることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項17】
前記冷却塔の排出装置から排出された金属セラミックス球を、還元材内装塊成鉱・金属セラミックス球混合供給装置に循環する金属セラミックス球循環装置を備えることを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造設備。
【請求項18】
前記金属セラミックス球が、融点1300℃以上、比熱0.25kcal/kg・deg以上の金属セラミックス球、又は、熱伝導率1.8kcal/m・h・℃以上の金属セラミックス球であることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の部分還元鉄の製造装置。
【請求項19】
前記金属セラミックス球が、アルミナ球であることを特徴とする請求項18に記載の部分還元鉄の製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−176856(P2006−176856A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373234(P2004−373234)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】