説明

配線形成装置、配線形成方法および配線形成用材料

【課題】基板表面に配線材料を含む塗布液を塗布することで配線を形成する技術において、高アスペクト比の配線を容易に形成する。
【解決手段】基板Wをクールプレート31上に載置して例えば液体窒素温度まで冷却しておき、この状態で、吐出ノズル52から配線材料を含む塗布液を吐出させながら基板WをX方向に移動させる。基板W上に塗布された塗布液は冷却されることで粘度が大きく上昇し吐出時の形状が維持される。基板上の塗布液にUV光を照射して光硬化させることにより、吐出時の形状を保った高アスペクト比の配線を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面に配線材料を含む塗布液を塗布して配線を形成する配線形成装置および配線形成方法、ならびに該装置および方法に使用しうる配線形成用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽電池のように、光を受光して起電力を発生する光電変換デバイスの製造技術においては、基板の受光面に集電用の電極または配線を配置する必要がある。このような配線を形成する技術としては、基板表面に配線材料となる金属を蒸着する技術や、導電性材料を含む塗布液をスクリーン印刷またはインクジェット法により印刷する技術などがある。光電変換デバイス用の配線としては、光電変換効率を低下させることがないよう入射光をできるだけ遮蔽せず、しかも電気抵抗の低いものが望ましく、このためにはいわゆるアスペクト比、すなわち配線断面における幅に対する高さの比の高いものが望ましい。しかし、上記技術は一般に薄膜状の配線を形成するものであるため、必ずしも高いアスペクト比を得ることができない。
【0003】
この問題を解決するために、ノズルから比較的高粘度の配線材料を吐出して基板に塗布する、いわゆるノズルスキャン法を採用した技術がある。例えば特許文献1および特許文献2に記載の技術では、予め基板に溝を刻設しておき、ノズルからこの溝に電極材料を流し込むことで、幅が狭く厚みのある電極を形成するようにしている。また、特許文献3に記載の技術では、基板表面に対し流動性を有するグリッド線(配線)材料と、その両側を挟むように吐出される犠牲材料をノズルから共押し出しし、その後基板を熱処理して犠牲材料を蒸発させることにより、高アスペクト比のグリッド線を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−281813号公報(例えば、図4)
【特許文献2】特開2006−54374号公報(例えば、図1)
【特許文献3】特開2008−118150号公報(例えば、図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1、2に記載の技術は、予め基板に溝を設けるという予備加工を有するものであり、工程が複雑で製造コストが嵩む上に、近年における基板の薄板化の要求に応えることが難しい。また、特許文献3に記載の技術では、最終的なデバイスには必要のない犠牲材料の塗布およびその除去という複雑なプロセスを要し、やはり製造コストの上昇を抑えることができない。
【0006】
このように、高アスペクト比の配線を確実に、しかも低コストで形成する技術については、これまで確立されるに至っていなかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に配線材料を含む塗布液を塗布することで配線を形成する装置および方法ならびにこれらの装置および方法に使用しうる配線形成用材料において、高アスペクト比の配線を容易に形成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる配線形成装置は、上記目的を達成するため、基板表面に対し、配線材料を含有する塗布液を吐出する吐出ノズルと、前記基板表面に対し相対的に前記吐出ノズルを走査移動させる移動機構と、前記吐出ノズルから前記基板表面に吐出された直後の前記塗布液の粘度を増大させる増粘手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、基板表面に対し相対移動する吐出ノズルから、配線材料を含む塗布液を基板表面に吐出させる、いわゆるノズルスキャン方式を採用した配線形成装置において、基板表面に塗布された直後の塗布液の粘度を増大させるための手段を有している。吐出ノズルから吐出した配線材料を含む塗布液を基板表面に塗布する場合、吐出ノズルから塗布液をスムーズに吐出させるという観点からは塗布液の粘度が低いことが望ましい一方、基板表面に塗布された塗布液が周囲に広がらず高アスペクト比を維持するという観点からは、塗布液の粘度が高い方が望ましいという相反する要求がある。そこで、吐出直後の塗布液の粘度を増大させる手段を設けることにより、良好な塗布性と塗布後の塗布液の広がりを抑える効果とを両立させることが可能となり、高アスペクト比の配線を容易に形成することが可能となる。
【0010】
ここで、前記吐出ノズルは光硬化性材料を含有する前記塗布液を吐出し、前記基板表面で粘度が増大された前記塗布液に光を照射して硬化させる光照射手段をさらに備えるようにしてもよい。こうすることで、配線材料を含む塗布液を確実に硬化させて、アスペクト比が高く、しかも安定した配線を形成することができる。
【0011】
前記増粘手段としては、例えば、前記基板を保持しつつ前記基板を冷却する基板冷却部を有するものを用いることができる。配線材料を含む塗布液は、一般に温度が低いほどその粘度が低くなる。塗布液が塗布される基板を冷却しておくことにより、塗布直後の塗布液の粘度が高くなり、周囲へ広がることが防止される。この状態で塗布液に光を照射して硬化させるようにすれば、高いアスペクト比を保った状態で配線材料を硬化させることができる。なお、塗布液自体を予め冷却したのでは、吐出ノズル内での流動性が低下したり、吐出ノズルの吐出口の周囲で塗布液が固まってしまうなどの問題が生じうる。これに対して基板を冷却しておくようにすれば、基板に接した塗布液のみ粘度が上昇するので、このような問題を生じることがない。
【0012】
特に、前記吐出ノズルが前記配線材料と溶剤とを含む前記塗布液を吐出する場合、前記基板冷却部は、前記溶剤の凝固点以下の温度に前記基板を冷却することが望ましい。こうすることで、基板表面に塗布された塗布液は短時間でほぼ固化するので、吐出ノズルから吐出された直後の形状に近い形状を保ったまま光照射による硬化が起こることになる。これにより、塗布後の塗布液の広がりがほとんど起こらず、アスペクト比の高い配線を得ることが可能となる。
【0013】
一方、これとは反対に、前記増粘手段として、前記基板を保持しつつ前記基板を加熱する基板加熱部を備えるようにしてもよい。加熱した基板の表面に塗布液を塗布することにより、基板に触れた塗布液では溶剤成分の揮発が促進される。こうして溶剤成分が失われることにより塗布液の粘度が増大する。そのため、塗布後の塗布液の広がりを抑えることができる。
【0014】
ここで、前記吐出ノズルは前記配線材料と溶剤とを含む前記塗布液を吐出し、前記基板加熱部は、前記溶剤の沸点以下の温度に前記基板を加熱するようにしてもよい。溶剤の沸点よりも高い温度まで基板を加熱すると、基板表面に触れた塗布液に含まれる溶剤が激しく蒸発しあるいは沸騰し、塗布直後の形状が崩れてしまう可能性がある。したがって、基板を加熱する場合、その温度は溶剤の沸点を超えないようにすることで、配線の形状の崩れを防止することができる。
【0015】
基板を加熱するように構成された発明においては、前記移動機構は、前記基板表面の同一箇所に対し複数回重ねて前記塗布液が塗布されるように、前記基板表面に対し前記吐出ノズルを相対移動させるようにしてもよい。加熱した基板に塗布液を塗布すると、溶剤成分が短時間で揮発するので塗布液の流動性は極めて低下する。そのため、同一箇所に重ねての塗布を行うことが可能である。そして、そうすることにより、配線の厚みを増加させることが可能である。
【0016】
この場合、後の塗布での塗布量が、先の塗布での塗布量を超えないようにすることが望ましい。こうすることで、先に塗布液を塗布された領域から後の塗布液が溢れることがないので、配線の幅を広げることなく厚みのみを増大させることができる。また、塗布後に光照射により配線を硬化させる場合には、重ねて塗布を行った後に光照射を行うことが望ましい。こうすることで、塗り重ねられた各層を一体的に硬化させることができ、より強固な構造の配線を形成することができる。
【0017】
また、この発明にかかる配線形成用材料は、上記目的を達成するため、導電性粒子と、有機ビヒクルととを含有し、前記有機ビヒクルに含まれる溶剤分のうち10重量パーセント以上90重量パーセント以下が、沸点が80℃以下の有機溶剤であることを特徴としている。詳しくは後述するが、このような組成を有する配線形成用材料は、密封された環境では高い流動性を有する、つまり粘度が低いので、塗布作業に適している。一方、外部空間に吐出された直後から溶剤の揮発が始まり、短時間で粘度が増大し流動性の低い状態に変化する。このため、例えば基板に塗布されるとすぐに流動性の低い状態となり、周囲へ広がることがない。したがって、例えば吐出ノズルから基板表面に対し塗布することで配線を形成する装置および方法に使用される配線形成用材料として好適に使用することができるものである。
【0018】
この場合において、前記有機溶剤としては、アセトン、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンのいずれかを用いることができる。本願発明者らの実験により、これらの材料は、本発明の配線形成用材料に好適に用いることのできるものであることが確かめられている。なお、より強固な配線を形成可能とするために、光硬化性材料をさらに含有してもよい。
【0019】
また、この発明にかかる配線形成方法の第1の態様は、上記目的を達成するため、前記基板表面に対し、配線材料および光硬化性材料を含有する塗布液を塗布する工程と、前記基板表面に塗布された塗布液に光を照射して硬化させる工程とを備え、少なくとも前記塗布液が前記基板表面に塗布される時から前記光を照射されるまでの間、前記基板を所定の温度に冷却することを特徴としている。
【0020】
このように構成された発明では、配線材料および光硬化性材料を含有し基板に塗布された塗布液が光照射によって硬化されるまでの間、基板が冷却されているため、塗布された塗布液の粘度が増大し、周囲へ流れ出すのが防止される。そして、こうして粘度の高い状態が保たれたまま、光照射によって塗布液が硬化するため、アスペクト比の高い配線を簡単に形成することができる。
【0021】
また、この発明にかかる配線形成方法の第2の態様は、上記目的を達成するため、基板を所定温度に加熱する工程と、加熱された前記基板表面に対し、配線材料と溶剤とを含有する塗布液を塗布する工程とを備えることを特徴としている。このように構成された発明では、基板を加熱することにより、基板に塗布された塗布液に含まれる溶剤を短時間で揮発させるので、塗布液の広がりを抑えることができる。そのため、上記したように、アスペクト比の高い配線を簡単に形成することができる。
【0022】
この配線形成方法においても、前記基板表面上の同一箇所に対して、前記塗布液を複数回重ねて塗布することが可能である。これにより、より厚みのある、つまりアスペクト比のより高い配線を形成することができる。
【0023】
また、塗布液として光硬化性材料を含むものを使用し、前記基板表面への塗布液の塗布の完了後に、塗布された塗布液に光を照射して硬化させる工程をさらに備えてより強固な配線を得ることも可能である。この場合、上記したように、塗布液を複数回重ねて塗布する場合には、それらの塗り重ねが完了した後に光照射を行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる配線形成装置および配線形成方法によれば、塗布後の基板表面で配線材料を含む塗布液の粘度を増大させるようにしているので、ノズル吐出による塗布性に優れ、しかも基板表面での塗布液の広がりを抑えて、高アスペクト比の配線を容易に形成することができる。また、この発明にかかる配線形成材料は、塗布直後に短時間で溶剤が揮発して粘度が増大するので、基板表面に塗布して配線を形成する装置および方法に適用されることにより、高アスペクト比の配線を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明にかかる配線形成装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】ヘッド部の構成をより詳細に示す拡大図である。
【図3】ヘッド部からの配線材料の吐出の様子を模式的に示す図である。
【図4】塗布液の温度と粘度との関係を示す図である。
【図5】第1実施形態における配線形成処理を示すフローチャートである。
【図6】この発明にかかる配線形成装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】塗布液中の溶剤濃度と粘度との関係を示す図である。
【図8】第2実施形態における配線形成処理を示すフローチャートである。
【図9】塗布液の組成とその性質を評価した結果を示す図である。
【図10】第2実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる配線形成装置の第1実施形態を示す図である。この配線形成装置1は、例えば表面に光電変換層を形成された単結晶シリコンウエハなどの基板W上に導電性を有する配線を形成し、例えば太陽電池として利用される光電変換デバイスを製造する装置である。この装置1は、例えば光電変換デバイスの光入射面に集電電極を形成するという用途に好適に使用することができる。
【0027】
この配線形成装置1では、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、基板Wを保持するステージ3がステージ移動機構2により図1に示すX−Y平面内で移動可能となっている。基台11にはステージ3を跨ぐようにしてフレーム12が固定され、フレーム12にはヘッド部5が取り付けられる。
【0028】
また、ステージ3の上面には、基板Wを所定の温度まで冷却するためのクールプレート31が設置されている。クールプレート31は冷却ユニット32により温度管理される。詳しくは後述するが、クールプレート31に求められる冷却能力はマイナス数十度程度であり、この程度の低温が得られるものであればその冷却原理は何であってもよい。例えば、電子冷凍技術を用いるもの、内部に液体窒素などの冷媒を送通させるものなどを用いることができる。
【0029】
ステージ移動機構2は、下段からステージ3をX方向に移動させるX方向移動機構21、Y方向に移動させるY方向移動機構22、および、Z方向を向く軸を中心に回転させるθ回転機構23を有する。X方向移動機構21は、モータ211にボールねじ212が接続され、さらに、Y方向移動機構22に固定されたナット213がボールねじ212に取り付けられた構造となっている。ボールねじ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0030】
Y方向移動機構22もモータ221、ボールねじ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールねじ機構によりθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23はモータ231によりステージ3をZ方向を向く軸を中心に回転させる。以上の構成により、ヘッド部5の基板Wに対する相対的な移動方向および向きが変更可能とされる。
【0031】
ヘッド部5は、ベース51の下面に基板W上に液状の塗布液を吐出する吐出ノズル52、および、基板Wに向けてUV光(紫外線)を照射する光照射部53を有し、吐出ノズル52には逆止弁521を有する供給管522が取り付けられる。供給管522は分岐しており、一方がポンプ523に接続され、他方が制御弁524を介して配線材料を含む塗布液を貯留するタンク525に接続される。光照射部53は光ファイバ531を介して紫外線を発生する光源ユニット532に接続される。
【0032】
ステージ移動機構2の各モータ、ポンプ523、制御弁524、光源ユニット532および冷却ユニット32は制御部6に接続され、これらの構成が制御部6により制御されることにより、配線形成装置1による基板W上への配線パターンの形成が行われる。
【0033】
図2はヘッド部の構成をより詳細に示す拡大図である。より詳しくは、図2(a)はヘッド部5を側面から見たときの吐出ノズル先端付近の形状を示す図であり、図2(b)はヘッド部5を下方から見た図である。図2(a)に示すように、吐出ノズル52は内部が筒状の空洞52aになっており、下端が図において斜め右方に開口して吐出口52bを形成している。タンク525から供給管522を経由して輸送されてくる塗布液は、吐出ノズル52下端の吐出口52bから基板Wに向けて吐出される。
【0034】
また、光照射部53の先端にはレンズ533が設けられており、光源ユニット532からのUV光が第1吐出部52から基板W上に吐出された塗布液に集光されるように構成されている。
【0035】
図2(b)に示すように、吐出口52bはY方向に略等間隔で複数配列されている。光照射部53下端のレンズ533は、Y方向における吐出口52bの配設位置を全てカバーできるよう、長円形に形成されている。
【0036】
なお、吐出口52bの個数は特に限定されないが、例えば256個とすることができる。また、吐出ノズル52の材質についても特に限定されないが、吐出液に対し汚染物質を混入させることがなく、微細加工ができるという点から、例えばシリコンやジルコニアの結晶を用いることができる。
【0037】
図3はヘッド部からの塗布液の吐出の様子を模式的に示す図である。より詳しくは、図3(a)は塗布液がヘッド部5から吐出されている様子を側面から見た図である。また、図3(b)は同じものを斜め上方から見た図である。なお、図3(b)においては、吐出ノズル52からの吐出の様子を見やすくするために光照射部53の図示を省略している。以下、図1ないし図3を参照しつつ、この配線形成装置1による配線形成の基本動作について説明する。
【0038】
吐出ノズル52からの塗布液の吐出は、図1に示す逆止弁521、ポンプ523および制御弁524により行われる。まず、制御部6の制御により制御弁524が開放された状態でポンプ523が吸引動作を行う。このとき、逆止弁521により塗布液の逆流が阻止されるため、タンク525からポンプ523へと塗布液が引き込まれる。次に、制御部6の制御により制御弁524が閉じられ、ポンプ523が押出動作を行う。これにより、吐出ノズル52の複数の吐出口52bそれぞれから連続的に塗布液A1が吐出される。
【0039】
塗布液の吐出が行われる際には、制御部6がステージ移動機構2の各モータを駆動制御し、ヘッド部5の下方で基板Wの表面が(+X)方向に移動するように制御を行う。言い換えれば、ヘッド部5は相対的に基板W表面を走査しながら(−X)方向に移動することになる。これにより、基板W表面には塗布液がX方向に沿った筋状に塗布される。このとき、吐出口52bからは走査移動方向の後方に向かって塗布液A1が吐出され、吐出された液が吐出口52bの近傍に滞留することが防止される。
【0040】
基板Wに対するヘッド部5の相対移動方向において吐出ノズル52の後方側(図3(a)において右側)では、吐出された塗布液A1に対し、光照射部53からUV光Lが照射される。塗布液A1が光硬化性を有する樹脂材料を含む場合、UV光Lの照射によって架橋反応が生じて固化が始まる。その結果、図3(b)に示すように、基板W上には、吐出口52bから吐出された塗布液A1が固化してなる平行な筋状の構造物B1が形成される。
【0041】
次に、上記のように構成された配線形成装置1による、基板W上への配線形成の具体的な態様について説明する。この実施形態では、配線材料を含む塗布液を吐出ノズル52から吐出させて基板W表面に塗布することで配線を形成するが、この際、基板Wを氷点下数十度程度の低温に冷却しておく点が大きな特徴となっている。これは、ノズルから吐出され基板表面に塗布された塗布液が基板表面で広がるのを防止して、幅は狭いが高さのある、すなわちアスペクト比の高い配線を形成するためである。
【0042】
タンク525から供給管522を経て吐出ノズル52から塗布液をスムーズに吐出するためには、塗布液の粘度が低いことが望ましい。しかしながら、このように低粘度の液が基板表面に塗布されると、塗布液は周囲に流れて広がってしまい、結果的に幅が広く高さの低い、つまりアスペクト比の低い配線となってしまう。これを防止するために、粘度の高い塗布液を使用すると、供給管525内で液が滞留したり吐出ノズル52の先端付近で固まってしまうなどの原因によって、高精細パターンを形成することができないことがある。この実施形態は、このような問題を回避することが可能なものである。
【0043】
図4は塗布液の温度と粘度との関係を示す図である。配線材料としての導電性粒子(例えば金属微粒子)および溶剤を含む塗布液では、図4に示すように、液温が低いほど粘度が高く、流動性の低い状態となる。特に、溶剤の凝固点(f.p.)近傍で粘度の変化が大きい。なお、凝固点降下があるため、溶剤の凝固点以下で塗布液が確実に凍結するとは限らない。しかしながら、凝固点付近では完全に凍結しなくても液体の粘度は数十万cP程度であり、その流動性は十分低くなっている。つまり、この状態では、基板表面に塗布された塗布液はほとんど広がらず初期の形状を保っている。こうして塗布液の流動性を抑えた状態で光照射を行い、塗布液の光硬化反応を進行させれば、塗布直後の形状を維持したまま配線材料を固化させアスペクト比の高い配線を得ることができる。
【0044】
上記したように、基板の温度としては、塗布液に含まれる溶剤の凝固点程度あるいはそれ以下とすればよい。例えば基板温度を液体窒素温度(−196℃、77K)とした場合、一般的な有機溶剤の凝固点よりは十分に低いので、基板上に吐出された塗布液は短時間で凝固しほぼ吐出直後の形状が保たれる。ただし、図4に示したように低温ほど粘度が上昇するので、凝固点以上であっても常温から基板を冷却することで、塗布液の広がりを抑制する効果は得られる。したがって、例えば冷媒による熱交換式の冷凍機やペルチェ効果を利用した電子冷凍機の原理により基板を冷却するようにしても十分実用になる。
【0045】
図5はこの実施形態における配線形成処理を示すフローチャートである。まず、未処理の基板Wを装置1に搬入し(ステップS101)、ステージ3上のクールプレート31に載置する。次いで冷却ユニット32を作動させて、基板Wを所定温度に冷却する(ステップS102)。そして、吐出ノズル52から配線材料を含む塗布液を吐出させながら、ステージ3をX方向に移動させる(ステップS103)。このとき、塗布直後の塗布液に対して、光照射部53からUV光を照射する。こうすることにより、図3(b)に例示するように、基板W表面にはX方向に沿ったストライプ状の配線が描画されてゆく。
【0046】
基板Wの端部近傍まで配線が形成されステージ3が所定の終了位置に到達するまで描画を継続した後(ステップS104)、塗布液の吐出、ステージ移動、UV光の照射および基板の冷却を停止して(ステップS105)、基板を搬出することにより(ステップS106)、1枚の基板Wに対する処理が完了する。塗布された配線材料は既に光照射により硬化反応を起こしているため、基板Wを常温に戻しても配線の断面形状が崩れることはない。
【0047】
以上のように、この実施形態では、基板表面に塗布液を塗布するのに際して、予め基板を冷却しておく。このため、塗布液は塗布直後から粘度が大きく上昇し、塗布時の断面形状に近い形状が一時的に保持される。そして、低温状態を維持することでこの形状を保ったまま、光照射によって不可逆的に配線材料を硬化させることによって、塗布時の断面形状に近い高アスペクト比の配線を基板W上に形成することができる。
【0048】
なお、塗布液を予め冷却しておいたり、装置全体を低温下に置くことも考えられるが、このようにすると吐出前の塗布液の粘度まで上がってしまい、供給管やノズルを詰まらせたり微細な配線が形成しにくくなるなどの問題が生じうる。基板Wのみを冷却し、塗布液が基板に触れることで冷却されるようにすることが最も理に適っているといえる。
【0049】
上記した本発明の第1実施形態では、冷却した基板に塗布液を塗布し、塗布液を冷却してその粘度を増大させた状態で光照射により硬化させることにより、高アスペクト比の配線を得られるようにしている。これとは逆に、以下に説明する本発明の第2実施形態では、基板を加熱した状態で塗布液を塗布するようにしている。
【0050】
<第2実施形態>
図6はこの発明にかかる配線形成装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態における塗布装置1aの基本的構成および動作は、上記した第1実施形態のものとほぼ同じである。ただし、第1実施形態のクールプレート31に代えて基板を加熱するホットプレート35がステージ3上に設けられるとともに、これを制御する加熱ユニット36が冷却ユニットに代えて設けられている。この点を除けば装置構成は第1実施形態のものと同一であるので、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図7は塗布液中の溶剤濃度と粘度との関係を示す図である。塗布液中の溶剤濃度が高いほど粘度が低いことは当然であるが、単純な減少ではなく、図7に示すように、ある溶剤濃度の閾値Cthを境にしてその前後で粘度が大きく変化する。このことから、吐出前の塗布液は溶剤濃度を閾値Cthよりも高くしておき、吐出後に急速に閾値Cth以下まで溶剤濃度を低下させるようにすれば、塗布液の粘度が急激に増大するので基板上での広がりを防止することができ、高アスペクト比の配線を形成することが可能となる。
【0052】
そこで、この実施形態では、予め加熱した基板Wに塗布液を塗布するようにし、加熱された基板Wに触れた塗布液から溶剤を急速に揮発させて溶剤濃度を低下させることにより、塗布液の広がりを抑制するようにしている。そして、こうして予め溶剤濃度を低下させた状態で光照射による硬化反応を生じさせるようにすれば、溶剤を排除したより強固な架橋構造を形成させることができ、配線の強度を高めることができる。
【0053】
なお、配線材料を含む塗布液としては、既に商品化されている導電性ペーストも使用可能であり、このような導電性ペーストには、光硬化によらず溶剤の揮発のみによって固化させるタイプのものも存在する。本実施形態の配線形成装置1aは、このようなタイプの塗布液を使用した場合でも、基板の加熱により溶剤の揮発が促進されるので、断面形状の崩れを抑えてアスペクト比の高い配線を形成することが可能である。この場合には、光照射部53からの光照射を省いてよい。
【0054】
また、より高さのある配線を形成するため、基板W上の同一箇所に塗布液を塗り重ねたい場合にも、この実施形態は有効である。というのは、第1実施形態における冷却による粘度増大とは異なり、溶剤の揮発による粘度の増大は不可逆的な変化であり、塗り重ねを行う際には先に塗布した塗布液が新たな塗布液と混じり合わない程度に固化しているため、新たな塗布液は固化した先の塗布液の層の上に新たな層を作るからである。
【0055】
この場合、先に塗布された層から新たな塗布液が溢れ出してしまうとアスペクト比の高い配線が得られない。これを防止するためには、後から塗布する塗布液の量は、先の塗布における塗布量を超えないことが望ましく、例えば後の塗布工程ほど塗布量が少なくなるようにすることが好ましい。このようにすれば、先の塗布における液の広がりを超えて後の塗布液が広がることがなく、塗り重ねるごとに塗布層が積み重ねられて厚みを増すことができる。
【0056】
塗布後に光照射によって固化させる方法を用いて塗り重ねを行う場合には、1回の塗布ごとに光照射を行ってもよいが、より好ましくは、各層の塗り重ね時には光照射を行わず、全層の塗り重ねを終えてから光照射を行うのがよい。塗布ごとに光照射を行った場合、各層内での架橋反応による固化は進むが、異なる層の間での結合は弱くなり、配線全体としてみたときの強度は劣る。これに対して、全層の塗り重ねを終えてから光照射を行うと、塗り重ねられた層全体で架橋反応による固化を生じるので、配線の強度をより高めることが可能となる。
【0057】
基板の温度については、例えば次のような考え方に基づいて設定することができる。基板の温度が高いほど溶剤の揮発は促進される。その一方、温度が高すぎて塗布液がその内部で沸騰してしまうと、内部に気泡が発生したりそれが弾けることで配線の形状や電気的特性が乱れてしまう。したがって、塗布液が沸騰する温度よりは低いことが望ましい。市販されている塗布液でその沸点が規定されている場合にはその温度に基づけばよいが、そうでない場合には、例えば塗布液に含まれる主たる溶剤の沸点に基づいて、それよりも若干低めの温度としておくのがよい。例えば沸点が約56℃であるアセトンを主要な溶剤とする塗布液の場合には、基板温度を50℃程度とすればよい。その他の主要な有機溶剤も沸点は概ね摂氏数十度程度であるので、それらの沸点より数度程度低い温度を基板温度とすればよい。
【0058】
図8はこの実施形態における配線形成処理を示すフローチャートである。ここでは、光照射による硬化を前提とした、すなわち光重合開始剤を成分として含む塗布液を用いる場合の配線形成処理について説明する。光硬化性でない塗布液を用いる場合には、後述するステップS207の光照射処理を省けばよい。
【0059】
まず、未処理の基板Wを装置1aに搬入し(ステップS201)、ステージ3上のホットプレート35に載置する。次いで加熱ユニット36を作動させて、基板Wを所定温度に加熱する(ステップS202)。そして、吐出ノズル52から配線材料を含む塗布液を吐出させながら、ステージ3をX方向に移動させる(ステップS203)。こうすることにより、図3(b)に例示するように、基板W表面にはX方向に沿ったストライプ状の配線が描画されてゆく。このときには光照射部53からの光照射は行わない。基板が加熱されているので塗布液は溶剤が蒸発して固化してゆくが、この時点での配線は極めて脆い構造のままである。
【0060】
基板Wの端部近傍まで配線が形成されステージ3が所定の終了位置に到達するまで描画を継続した後(ステップS204)、塗布液の吐出およびステージ3の移動を停止させる(ステップS205)。塗布液の塗り重ねを行う場合には、所定回数に達するまで上記したステップS203〜S205を繰り返す(ステップS206)。
【0061】
塗布回数が所定回数に達すると、塗布液を塗布された基板Wに光を照射して、塗布液を光硬化させて配線を完成させる(ステップS207)。具体的には、吐出ノズル52からの塗布液の吐出を停止する一方、光照射部53からUV光を出射させた状態で、ステージ移動機構2によりステージ3をX方向に走査移動させることにより、基板W上の塗布液全体にUV光を照射する。光照射が完了すれば、基板Wを搬出し(ステップS208)、これにより1枚の基板Wに対する処理が完了する。
【0062】
以上のように、この実施形態では、基板表面に塗布液を塗布するのに際して、予め基板を加熱しておく。このため、塗布液は塗布直後から溶剤濃度が急速に低下して粘度が大きく上昇し、塗布時の断面形状に近い形状が保持される。この変化は不可逆的であるが、その後さらに光照射を行い配線材料を硬化させることによって、塗布時の断面形状に近い高アスペクト比の配線を基板W上に形成することができる。
【0063】
<塗布液の組成例>
上記した2つの実施形態は、一方が基板を冷却するものであるのに対し、もう一方が基板を加熱するという点で相反するが、「基板表面で塗布液の粘度を急速に増大させることにより、塗布直後の形状を維持する」という技術思想において共通するものである。本願発明者らは、このような目的に好適な塗布液の組成についても検討を行った。以下に説明する組成例は、上記第1および第2実施形態の配線形成装置に好適に適用することができ、特に第2実施形態の配線形成装置1aに最適である。しかしながら、これらの装置に限定されず、吐出ノズルから基板上に吐出させて配線を形成する配線形成装置および配線形成方法全般に好適に適用可能なものである。
【0064】
上記目的に適した塗布液とは、容器内に密閉された状態では粘度が低く流動性が良好であるが、外部空間に開放されると直ちに粘度が増大する性質を有する液体である。本願発明者らは種々の実験の結果、このような性質を有する塗布液として、以下の条件を備えるものが好ましいことを見出すに至った。その条件とは、すなわち、
(1)導電性粒子および有機ビヒクル(溶剤、樹脂、増粘剤等の混合物)を含む、
(2)有機ビヒクルに含まれる溶剤成分のうち、沸点が80℃以下の有機溶剤が溶剤全体に占める比率が、10ないし90重量パーセントである、
の2点である。以下に、本願発明者らによる実験結果の一部を示す。
【0065】
図9は塗布液の組成とその性質を評価した結果を示す図である。種々の組成比を有する塗布液を実験的に作成し、その塗布液としての特性を評価した。評価項目は、線幅および連続吐出性の2点である。このうち、「線幅」は基板上での配線の広がりに関する評価項目であり、内径50μmの吐出ノズルから速度20mm/secで基板上に塗布液を吐出し、常温で5分間放置した後の塗布液の広がり幅を評価したものである。広がりが100μm以下に留まっていたものを「○」印、110μm以上を「×」印、それらの中間を「△」印により表している。
【0066】
また、「連続吐出性」はノズルからの吐出のしやすさを表すものであり、吐出をオンにしてからオフにする操作を100回繰り返し行った後における、ノズル内や吐出口周辺への固形物の付着の有無を評価したものである。付着物の見られなかったものを「◎」印、若干の付着物が見られたものを「○」印、比較的多量の付着物が生じたものを「×」印により表している。このような付着物は塗布液の流れを阻害し、配線の形状を乱す原因となる。
【0067】
塗布液を構成する導電性粒子としては、銀粉末を用いた。有機ビヒクルとしては、樹脂材料としてのエチルセルロースと有機溶剤とを含むものを用いた。有機溶剤としては、高沸点溶剤としてテルピオネール(構造異性体により若干異なるが、沸点約200℃)を、低沸点溶剤としてアセトン(沸点約56℃)、酢酸エチル(同77℃)およびメチルエチルケトン(同79℃)を用いた。さらに、少量のガラスフリットを添加した。この実験では、銀粉末、ガラスフリットおよびエチルセルロースの含有量を固定し、その残部を占める溶剤の組成のみを変化させて上記2点の評価項目について評価を行った。
【0068】
図9に示すように、溶剤として高沸点のテルピオネールのみを用いた塗布液では、連続吐出性は良好であるが線幅に問題がある。これは、溶剤の蒸発が遅いことが原因と考えられる。アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどのより沸点の低い溶剤の比率を増加させることにより線幅は次第に改善されるが、低沸点溶剤の比率が90%以上に高くなると連続吐出性の低下が見られた。これは、塗布液の乾燥が早くなりすぎて、吐出直後に吐出口近傍で塗布液が固まってしまったのが原因と考えられる。
【0069】
低沸点溶剤としては、ここに示したものの他に、テトラヒドロフラン(沸点約66℃)、ヘキサン(同69℃)などが良好であり、樹脂に対する溶解性はやや劣るがエチルアルコール(同78℃)がこれに次ぐ。また、ガラスフリットを含まない組成や、若干量の光重合開始剤を含む組成においても同様の傾向である。これらの結果から、上記条件(1)、(2)に合致するものが、塗布液として好ましい性質を有するものであるということができる。
【0070】
<その他>
以上説明したように、上記各実施形態においては、吐出ノズル52が本発明の「吐出ノズル」として機能しており、ステージ移動機構2が本発明の「移動機構」として機能している。また、光照射部53が本発明の「光照射手段」として機能している。また、上記第1実施形態におけるクールプレート31が本発明の「基板冷却部」として機能する一方、第2実施形態におけるホットプレート32が本発明の「基板加熱部」として機能しており、これらはいずれも本発明の「増粘手段」に相当するものである。
【0071】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した塗布液の組成は一部の例を示したものであって本発明がこれに限定されるものではなく、先に列記した材料の他の組み合わせであってもよい。また、上記した配線形成装置1、1aに、上記した組成以外の塗布液を適用してもよいし、上記組成の塗布液を、配線形成装置1、1aと異なる構成を有する配線形成装置に適用してもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態では、吐出ノズル52を保持するヘッド部5に光照射部53を設け、基板に塗布された直後の塗布液にUV光を照射しているが、第2実施形態の装置と同様に、基板全体への塗布が終了してから光照射を行うようにしてもよい。この場合において、光照射はこの装置で行う必要はなく、低温状態が維持されるとの条件で、他の装置へ基板を移動させて行ってもよい。このことは第2実施形態においても同様であり、塗布後の基板を他の光照射装置に移動させて光照射を行うようにしてもよい。このようにした場合には、配線形成装置1、1aには光照射機能を設けなくてもよいこととなる。
【0073】
図10は第2実施形態の変形例を示す図である。上記第2実施形態において、図10に示すように、吐出ノズル52から基板W上に塗布された塗布液に対してガスを送出するガス吐出ノズル59を設け、該ノズル59から乾燥空気または不活性ガスを基板表面の塗布液の周囲に流すようにしてもよい。このようにすれば、塗布液から蒸発した溶剤成分が乾燥空気あるいは不活性ガスにより置換されるので、より溶剤の蒸発が促進され、粘度の増大が急速に進むことになる。この場合において、予め温められたガスを吐出するようにすればより効果的である。このような方法は、基板を加熱しない技術にも適用可能である。すなわち、ホットプレート35を設けない構成においても、塗布直後の塗布液に(好ましくは温められた)ガスを吐出することにより、溶剤の蒸発を促進させて塗布液の粘度を増大させて、液の広がりを抑えることができる。
【0074】
また、上記各実施形態では基板Wの片面にのみ配線を形成しているが、基板Wの両面に配線を形成する場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0075】
また、上記各実施形態ではシリコン基板上に配線を形成して太陽電池としての光電変換デバイスを製造しているが、基板はシリコンに限定されるものではない。例えば、ガラス基板上に形成された薄膜太陽電池や、太陽電池以外のデバイスに配線を形成する際にも、本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明は、例えば太陽電池の受光面に設けられる集電電極のように、線幅が細く厚みのある、すなわち高アスペクト比が必要とされる配線を基板上に形成する配線形成装置および配線形成方法に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1a 配線形成装置
2 ステージ移動機構(移動機構)
6 制御部(制御手段)
21 X方向移動機構
22 Y方向移動機構
23 θ回転機構
31 クールプレート(基板冷却部、増粘手段)
35 ホットプレート(基板加熱部、増粘手段)
52 吐出ノズル
53 光照射部(光照射手段)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に対し、配線材料を含有する塗布液を吐出する吐出ノズルと、
前記基板表面に対し相対的に前記吐出ノズルを走査移動させる移動機構と、
前記吐出ノズルから前記基板表面に吐出された直後の前記塗布液の粘度を増大させる増粘手段と
を備えることを特徴とする配線形成装置。
【請求項2】
前記吐出ノズルは光硬化性材料を含有する前記塗布液を吐出し、
前記基板表面で粘度が増大された前記塗布液に光を照射して硬化させる光照射手段をさらに備える請求項1に記載の配線形成装置。
【請求項3】
前記増粘手段は前記基板を保持しつつ前記基板を冷却する基板冷却部を備える請求項2に記載の配線形成装置。
【請求項4】
前記吐出ノズルは前記配線材料と溶剤とを含む前記塗布液を吐出し、前記基板冷却部は、前記溶剤の凝固点以下の温度に前記基板を冷却する請求項3に記載の配線形成装置。
【請求項5】
前記増粘手段は、前記基板を保持しつつ前記基板を加熱する基板加熱部を備える請求項1または2に記載の配線形成装置。
【請求項6】
前記吐出ノズルは前記配線材料と溶剤とを含む前記塗布液を吐出し、前記基板加熱部は、前記溶剤の沸点以下の温度に前記基板を加熱する請求項5に記載の配線形成装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記基板表面の同一箇所に対し複数回重ねて前記塗布液が塗布されるように、前記基板表面に対し前記吐出ノズルを相対移動させる請求項5または6に記載の配線形成装置。
【請求項8】
導電性粒子と、
有機ビヒクルと
とを含有し、
前記有機ビヒクルに含まれる溶剤分のうち10重量パーセント以上90重量パーセント以下が、沸点が80℃以下の有機溶剤である
ことを特徴とする配線形成用材料。
【請求項9】
前記有機溶剤として、アセトン、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンのいずれかを含有する請求項8に記載の配線形成用材料。
【請求項10】
前記基板表面に対し、配線材料および光硬化性材料を含有する塗布液を塗布する工程と、
前記基板表面に塗布された塗布液に光を照射して硬化させる工程と
を備え、
少なくとも前記塗布液が前記基板表面に塗布される時から前記光を照射されるまでの間、前記基板を所定の温度に冷却する
ことを特徴とする配線形成方法。
【請求項11】
基板を所定温度に加熱する工程と、
加熱された前記基板表面に対し、配線材料と溶剤とを含有する塗布液を塗布する工程と
を備えることを特徴とする配線形成方法。
【請求項12】
前記基板表面上の同一箇所に対して、前記塗布液を複数回重ねて塗布する請求項11に記載の配線形成方法。
【請求項13】
前記塗布液として光硬化性を有する材料を含む液を使用し、前記基板表面に塗布された塗布液に光を照射して硬化させる工程をさらに備える請求項11または12に記載の配線形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5404(P2011−5404A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150496(P2009−150496)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】