説明

酸化物半導体素子とその製造方法、薄膜センサおよび電気光学装置

【課題】酸化物半導体素子の製造方法において、酸化物半導体膜の低抵抗化を容易かつ低コストにする。
【解決手段】 基板10上に、ゲート絶縁膜30を挟んで酸化物半導体膜40とゲート電極20を形成し、酸化物半導体膜40に、ソース電極62およびドレイン電極63とそれぞれ電気的に接続されるソース領域42およびドレイン領域43を形成する。その後、シート抵抗値が10Ω/□以上の酸化物半導体膜40に、部分的に紫外光Lを照射して、そのソース領域42およびドレイン領域43におけるシート抵抗値を10Ω/□未満にまで低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体素子とその製造方法、薄膜センサおよび電気光学装置に関するものであり、特に詳細には、エネルギー光照射による酸化物半導体膜の低抵抗化を利用した酸化物半導体素子とその製造方法、薄膜センサおよび電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年フレキシブルな各種デバイスが注目を浴びている。このフレキシブルなデバイスは電子ペーパやフレキシブルディスプレイ等への展開をはじめ、その用途は幅広い。その構成は、基本的に樹脂基板等のフレキシブル基板上にパターニングされた結晶性の半導体や金属の薄膜を備えたものとなっている。フレキシブル基板は、ガラス基板等の無機基板に比して基板の耐熱性が低いため、フレキシブルデバイスの製造工程は、すべてのプロセスを基板の耐熱温度以下で行う必要がある。例えば樹脂基板の耐熱温度は、材料にもよるが、通常150〜200℃である。ポリイミド等の比較的耐熱性の高い材料でも耐熱温度はせいぜい300℃程度である。そのため、比較的高温の熱工程を必要とする例えばシリコンを用いる薄膜トランジスタ等の半導体素子を、耐熱性の低い樹脂基板に直接形成することは困難である。
【0003】
そこで、低温での成膜が可能な酸化物半導体を用いる半導体素子の開発が活発に行われている。
【0004】
酸化物半導体では、Si系半導体のようにドーピング(不純物打ち込み)による低抵抗化(高濃度キャリア生成)技術が構築されていないため、寄生容量の少ない自己整合型の半導体素子を作製することは難しい。そんな中、先行例として、特許文献1によって、X線もしくは電子線を所望の領域に照射して低抵抗化し、ソース領域およびドレイン領域を自己整合的に形成する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2007−73699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1で行われているX線や電子線の照射による低抵抗化では、これらを十分に遮断し得るマスクを準備することが難しい。特に、一般的に薄膜デバイスを構成するのに適する各層の膜厚は数十〜数百nmであるため、たとえ重元素等を含んでいてもマスクとして機能させることは困難である。従って、この方法によって自己整合型のトランジスタ素子を作製することは困難である。また、これらX線や電子線を発生させる線源は大掛かりな装置となり、遮蔽設備も必要となるため、デバイス作製コストの面でも極めて不利である。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、X線や電子線を用いることなく、酸化物半導体膜の低抵抗化を容易かつ低コストにする酸化物半導体素子の製造方法、およびその方法によって製造される酸化物半導体素子の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者は、紫外光の照射により酸化物半導体膜を低抵抗化できることに注目し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明による酸化物半導体素子の製造方法は、
基板上に、ゲート絶縁膜を挟んで酸化物半導体膜とゲート電極を形成し、酸化物半導体膜内に、ソース電極およびドレイン電極とそれぞれ電気的に接続されるソース領域およびドレイン領域を形成する酸化物半導体素子の製造方法において、
酸化物半導体膜のシート抵抗値が10Ω/□以上であり、
酸化物半導体膜に部分的に紫外光を照射して、この酸化物半導体膜内のソース領域およびドレイン領域におけるシート抵抗値を10Ω/□未満にまで低減させることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、上記「ソース領域」および「ドレイン領域」とは、それぞれソース電極およびドレイン電極と酸化物半導体膜とを、接触抵抗なく電気的に接触させるために、酸化物半導体膜内に形成された低抵抗化領域である。
【0010】
本発明において、ゲート電極は紫外光を遮断する材料からなるものとし、紫外光の照射を、ゲート電極をマスクとして行うことにより、このゲート電極に対してソース領域およびドレイン領域を自己整合的に形成することが望ましい。
【0011】
また、基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、酸化物半導体膜を、この順に形成し、その後、紫外光の照射によりシート抵抗値が低減された、ソース領域およびドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されるように、ソース電極およびドレイン電極を形成することが望ましい。
【0012】
あるいは、基板上に、酸化物半導体膜と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極を、この順に形成し、その後、紫外光の照射によりシート抵抗値が低減された、ソース領域およびドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されるように、ソース電極およびドレイン電極を形成することが望ましい。
【0013】
そして、酸化物半導体膜は、In、Zn、GaおよびSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むものであることが望ましい。
【0014】
また、紫外光は、レーザ光であることが望ましく、基板は、樹脂製基板であることが望ましい。
【0015】
一方、本発明による酸化物半導体素子は、上記方法により製造されたことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明による薄膜センサおよび電気光学装置は、上記酸化物半導体素子を用いて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明による酸化物半導体素子の製造方法によれば、UVレーザ等の照射だけで酸化物半導体を部分的に低抵抗化できるため、ドーピングといった煩雑な製造工程も少なく、さらに既に半導体素子製造装置として一般的に用いられているUVレーザ等を光源として用いることができる。
【0018】
さらに、照射光の波長領域が紫外光であるため、X線等と比べると透過力も弱く、適切な材料を用いれば数百nm程度の薄膜で十分に遮断できる。これにより、大掛かりな照射光の発生装置や遮蔽装置等を必要としない酸化物半導体素子の製造を可能とする。
【0019】
以上により、酸化物半導体膜の低抵抗化を容易かつ低コストにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0021】
「酸化物半導体素子とその製造方法」
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法における製造フローを示す概略断面図である。
図示の通り、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法は、基板10上に、パターニングされたゲート電極20を形成し(図1a)、ゲート絶縁膜30を形成し(図1b)、シート抵抗値が10Ω/□以上の酸化物半導体膜40をゲート電極20の上方に配置するよう形成し(図1c)、酸化物半導体膜40に対してマスク50を用いて紫外光Lを照射することにより、その酸化物半導体膜40の照射領域を、シート抵抗値が10Ω/□未満にまで低抵抗化(高キャリア濃度化)したソース領域42およびドレイン領域43に変化させ(図1d)、その後、ソース電極62およびドレイン電極63を、上記ソース領域42およびドレイン領域43にそれぞれ接続するよう形成する(図1e)ものである。
【0022】
なお、ソース領域42およびドレイン領域43が再度高抵抗化するのを防ぐため、プロセス温度は200℃以下、より好ましくは150℃以下に抑えることが望ましい。
【0023】
また、本製造方法によって製造される酸化物半導体素子(図1e)は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0024】
基板10は、ガラス基板やフレキシブル基板等特に制限はないが、可撓性、耐久性および耐熱性等の観点から、例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリイミド(PI)およびポリエーテルサルフォン(PES)等の樹脂製基板が望ましい。
【0025】
ゲート電極20は、導電性に優れるものが望ましく、例えばAl、Cu、Ag、Au、Ptおよびこれらの合金等を用いることが望ましい。また、ITO(酸化インジウム錫)等の導電性を有する非金属膜であってもよい。
【0026】
ゲート絶縁膜30は、絶縁性および誘電性の観点から、例えばSiO、SiNx、SiOxNy等のシリコン酸化物あるいはシリコン窒化物や、Al、TiO、ZrO、Y等の金属酸化物を用いることが望ましく、特にシリコン酸化物あるいはシリコン窒化物が望ましい。そして、ゲート絶縁膜30の膜厚は、諸条件により適宜選択でき50〜500nm程度が望ましい。
【0027】
酸化物半導体膜40は、膜形成時シート抵抗値が10Ω/□以上のもので、紫外光照射後10Ω/□未満に低減されるものであり、In、Zn、GaおよびSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むものであることが望ましく、例えばIn、Ga、ZnO、InGaZnO等を用いることができる。そして、酸化物半導体膜40の膜厚は、諸条件により適宜選択でき20〜500nm程度が望ましい。また、酸化物半導体膜40の成膜方法は、特に制限なく適宜、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等のドライプロセスや、ゾルゲル法、ミスト法等のウェットプロセスを用いることができる。本発明による酸化物半導体素子およびその製造方法は、酸化物半導体膜40の結晶構造に制限されない。すなわち、酸化物半導体膜40は、酸化物半導体膜40の形成時に、非結晶であっても多結晶であってもよく、また、紫外光照射後に、非結晶であっても多結晶であってもよい。
【0028】
ここで、上記のように酸化物半導体膜40の膜形成時におけるシート抵抗値を「10Ω/□以上」と規定したのは、酸化物半導体素子を実際に使用したときに所望の素子特性を得るためである。例えば、酸化物半導体素子をスイッチング素子として使用した場合には、活性領域のシート抵抗値が10Ω/□未満であると、オフ時における電流値が高くなり、良好なスイッチング特性が得られなくなってしまう。また、上記のように紫外光照射後におけるシート抵抗値を「10Ω/□未満」と規定したのも、上記同様所望の素子特性を得るためである。より具体的には、酸化物半導体膜40におけるキャリア濃度を十分高くし、接触界面でのポテンシャル障壁におけるキャリアの通過をトンネル効果によって容易にするためである。実際に、例えば膜厚50nm程度のInGaZnOの場合には、KrFエキシマレーザ照射後キャリア濃度はおよそ1018/cmから1019〜20/cmにまで増加する。これにより、ソース領域42およびドレイン領域43とソース電極62およびドレイン電極63のそれぞれの接触部における接触抵抗を低減することができる。
【0029】
上記のような低抵抗化の原理は、酸化物半導体膜40に短波長光を照射することで、酸化物半導体膜40中に酸素欠陥が生じているためである。これにより、キャリア電子が生成され酸化物半導体膜40中の可動キャリア密度が増加している。これは、n型ドーパントをSi系半導体膜中にドーピングし、キャリア電子を増加させることと同等な効果であるといえる。図2は、紫外光レーザの照射条件とInGaZnOのシート抵抗値の変化との関係を示す図である。これより、例えばInGaZnOを用いた場合には、例えば波長248nmのKrFエキシマレーザ光を、光強度80mJ/cm・s程度以上、パルス幅20〜30nsecで50〜200回照射することにより、所望のシート抵抗値の低減を実施することが可能であることがわかる。
【0030】
紫外光Lは、およそ150nm〜350nm帯域の波長であり、レーザ光を用いることが望ましく、例えばXeClエキシマレーザ(λ=308nm)やKrFエキシマレーザ(λ=248nm)等を用いることができる。
【0031】
ソース電極62およびドレイン電極63は、導電性に優れるものが望ましく、例えばAl、Cu、Ag、Au、Ptおよびこれらの合金等を用いることが望ましい。また、ITO(酸化インジウム錫)等の導電性を有する非金属膜であってもよい。
【0032】
本発明における酸化物半導体素子の製造方法では、シート抵抗値が10Ω/□以上の酸化物半導体膜40を、紫外光Lの照射によって、この照射領域のシート抵抗値が10Ω/□未満にまで低減することにより、その照射領域をいわゆる縮退半導体(伝導帯にいる自由電子または価電子帯にいる自由正孔のエネルギー分布が、普通の半導体におけるボルツマン分布とは異なっていて、縮退したフェルミ分布にしたがう半導体。フェルミ準位が伝導帯または価電子帯のなかにあるので、その物性は定性的には金属と類似している。)に変化させることを利用している。これにより、紫外光レーザ等の照射だけで低抵抗化できるため、ドーピングといった煩雑な工程を省くことができ製造工程を容易にする。
【0033】
さらに、既に半導体素子製造装置として一般的に用いられているUVレーザ等を光源として用いることができるため、製造プロセスコスト面において低コスト化を実現できる。
【0034】
なお、本実施形態では、マスク50を使用してソース領域42およびドレイン領域43を形成するため、マスク50の配置や精密な位置制御等の工程を必要としていた。これらの工程を省き、さらに酸化物半導体素子の製造を簡素化したのが、後述する自己整合型の酸化物半導体素子の製造方法である第2〜4の実施形態である。
【0035】
<第2の実施形態>
図3は、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法における製造フローを示す概略断面図である。
本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法は、第1の実施形態において、マスク50を用いた露光工程(図1d)に代えて、紫外光Lを遮断する材料からなるゲート電極20をマスクとした裏面露光工程を行うものである。その他の構成は、第1の実施形態の場合と同様であり、図1に示す第1の実施形態と同等の要素についての説明は、特に必要のない限り省略する。ただし、本実施形態における基板10およびゲート絶縁膜30は、紫外光Lの一部を透過させる材料からなるものを使用する。
【0036】
一方、本製造方法によって製造される酸化物半導体素子(図2e)は、ボトムゲート型かつ自己整合型のTFTである。
【0037】
ゲート電極20としては、第1の実施形態と同様に、導電性に優れかつ紫外光に対し吸収がある材料、例えばAl、Cu、Ag、Au、Ptおよびこれらの合金等を用いることが望ましい。また、紫外光に対し吸収がある材料であればITO(酸化インジウム錫)等の導電性を有する非金属膜であってもよい。
【0038】
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を生むと同時に、紫外光Lを遮断する材料からなるゲート電極20をマスクとして使用し裏面露光することにより、ソース領域42およびドレイン領域43をゲート電極20に対して自己整合的に形成することが可能となる。これにより、ゲート電極20とソース電極62およびドレイン電極63の重なり部分に生じる寄生容量を低減でき、良好な酸化物半導体素子を容易に製造することができる。
【0039】
また、照射光の波長領域が紫外光であるため、X線等と比べると透過力も弱く、適切な材料を用いれば数百nm程度の薄膜で十分に遮断できる。これにより、一般的に使用されている材料からなるゲート電極でも充分遮蔽効果を得ることができるため、簡易的な自己整合型酸化物半導体素子の製造を可能とする。
【0040】
裏面露光とリフトオフを用いて形成する特開2006−165527では、ゲート電極と自己整合させるのはソース「電極」およびドレイン「電極」であり、酸化物半導体膜内に低抵抗化したソース「領域」およびドレイン「領域」を形成するわけではない。このため、ソース電極およびドレイン電極と酸化物半導体膜との接触部分で接触抵抗が形成されやすくなるため、仕事関数が大きく安定な金属材料をソース電極およびドレイン電極として用い難い。
【0041】
しかしながら、本発明では酸化物半導体膜40内に高キャリア濃度で低抵抗な領域として、ソース領域42およびドレイン領域43を形成する。これにより、ソース電極62およびドレイン電極63と酸化物半導体膜40内の活性領域41との接続は、電極材料の種類に関係なくソース領域42およびドレイン領域43を介して良好なコンタクト特性が得られる。このため、電極材料は、抵抗値、加工性、信頼性やコスト等の項目を優先して選択することが可能となる。
【0042】
<第3の実施形態>
図4は、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法における製造フローを示す概略断面図である。
図示の通り、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法は、基板10上に、シート抵抗値が10Ω/□以上の酸化物半導体膜40を形成して、アイランド状にパターニング加工し(図4a)、その後、酸化物半導体膜40上に紫外光Lの一部を透過させるゲート絶縁膜30を形成し(図4b)、紫外光Lを遮断する材料からなるパターニングされたゲート電極20を形成し(図4c)、次に、このゲート電極20をマスクとして、基板表面側から紫外光Lを照射することによって、その酸化物半導体膜40内の照射領域を、シート抵抗値が10Ω/□未満にまで低抵抗化したソース領域42およびドレイン領域43に変化させ(図4d)、そして、基板10上に層間絶縁膜31を形成し、この層間絶縁膜31を開孔するコンタクトホールを介してソース電極62およびドレイン電極63を、上記ソース領域42およびドレイン領域43にそれぞれ接続するよう形成する(図4e)ものである。
【0043】
なお、ソース領域42およびドレイン領域43が再度高抵抗化するのを防ぐため、プロセス温度は200℃以下、より好ましくは150℃以下に抑えることが望ましい。
【0044】
本実施形態においては、図4dに示すように、紫外光Lが酸化物半導体膜40に到達するまでに透過する薄膜は、ゲート絶縁膜30のみである。そのため、基板10には紫外光Lを遮断する材料を、ゲート絶縁膜30には紫外光Lの一部を透過させる材料を用いる場合には、本実施形態による製造方法が適している。
【0045】
一方、本製造方法によって製造される酸化物半導体素子は、トップゲート型かつ自己整合型のTFTである。
【0046】
ゲート電極としては、第1の実施形態と同様に、導電性に優れる且つ紫外光に対し吸収がある材料、例えばAl、Cu、Ag、Au、Ptおよびこれらの合金等を用いることが望ましい。また、紫外光に対し吸収がある材料であればITO(酸化インジウム錫)等の導電性を有する非金属膜であってもよい
その他本実施形態において、基板10、酸化物半導体膜40、ゲート絶縁膜30、紫外光L、ソース電極62およびドレイン電極63の各々に関する要素は第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態においてゲート絶縁膜30は、第1の実施形態に記載の材料群のうち紫外光Lの一部を透過させるものを選択する。
【0047】
層間絶縁膜31は、ゲート絶縁膜30と同様に、絶縁性および誘電性の観点から、例えばSiO、SiNx、SiOxNy等のシリコン酸化物あるいはシリコン窒化物や、Al、TiO 、ZrO 、Y等の金属酸化物を用いることが望ましく、特にシリコン酸化物あるいはシリコン窒化物が望ましい。そして、層間絶縁膜31の膜厚は、諸条件により適宜選択でき100〜1000nm程度が望ましい。
【0048】
コンタクトホールは、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチングにより形成することができる。
【0049】
本実施形態においても、紫外光Lを遮断する材料からなるゲート電極20をマスクとして使用し露光することにより、ソース領域42およびドレイン領域43をゲート電極20に対して自己整合的に形成しているため、第2の実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
【0050】
<第4の実施形態>
図5は、本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法における製造フローを示す概略断面図である。
本実施形態による酸化物半導体素子の製造方法は、第3の実施形態において、酸化物半導体膜40上のゲート絶縁膜30にデート電極20と同様なパターニングを行う工程を追加している(図5c)。これにより、紫外光Lが酸化物半導体膜40に到達するまでに透過する薄膜が存在しない。そのため、基板10およびゲート絶縁膜30共に紫外光を遮断する材料を用いる場合には、本実施形態による製造方法が適している。
【0051】
一方、本製造方法によって製造される酸化物半導体素子は、第3の実施形態同様、トップゲート型かつ自己整合型のTFTである。
【0052】
本実施形態においても、紫外光Lを遮断する材料からなるゲート電極20をマスクとして使用し露光することにより、ソース領域42およびドレイン領域43をゲート電極20に対して自己整合的に形成しているため、第2の実施形態および第3の実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
【0053】
「薄膜センサ」
図6は、本実施形態による薄膜センサの断面図である。
【0054】
図示のように、薄膜センサは、上記第4の実施形態による酸化物半導体素子上に、第2の層間絶縁膜32を有し、この層間絶縁膜32を開孔するコンタクトホールを介して、ゲート電極20に接触するように形成されたセンシング部70を有するものである。
【0055】
センシング部70は、Au、Ag、Pt等の金属材料を用いて形成されることが望ましく、その表面(センシング面70s)は、被検出物質と結合可能な表面修飾が施されていることが望ましい。表面修飾は、薄膜センサの用途に応じて選択されるものであり、例えば、プロテインセンサとして用いる場合には抗体等の受容体が、DNAチップとして利用する場合にはプローブDNA等が表面修飾として用いられる。
【0056】
第2の層間絶縁膜32の形成およびコンタクトホールの開孔は、上記酸化物半導体素子の第3実施形態と同様に実施することが可能である。
【0057】
センシング面70s上に被検出物質が結合されると、センシング面におけるポテンシャル構造が変化するので、結合の前後で電位差が生じる。従ってその電位差を酸化物半導体素子によって検出することにより、被検出物質のセンシングを行うことが可能となる。
【0058】
薄膜センサは、上記第4の実施形態における酸化物半導体素子を用いて構成されたものである。上記のように第4の実施形態における酸化物半導体素子は、素子特性に優れるものであることから、この酸化物半導体素子を備えた薄膜センサは、素子特性に優れ感度の良好なものとなる。なお、本実施形態における酸化物半導体素子は、上記第4の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
「電気光学装置」
図7は、本実施形態による電気光学装置の断面図であり、例として上記本発明による酸化物半導体素子を用いて構成された有機EL装置を示している。
【0060】
本実施形態の有機EL装置(電気光学装置)は、上記本発明による酸化物半導体素子Tを用いて構成されたアクティブマトリクス基板90の上に、電流印加により赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)を各々発光する発光層91R、91G、91Bが所定のパターンで形成され、その上に、共通電極92と封止膜93とが順次積層されたものである。
【0061】
封止膜93を用いる代わりに、金属缶もしくはガラス基板等の封止部材で封止を行ってもよい。この場合には、酸化カルシウム等の乾燥剤を内包させてもよい。
【0062】
発光層91R、91G、91Bは、上記本発明による酸化物半導体素子T上に形成された画素電極80に対応したパターンで形成され、赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)を発光する3ドットで一画素が構成されている。共通電極92と封止膜93とは、アクティブマトリクス基板90の略全面に形成されている。
【0063】
有機EL装置では、画素電極80と共通電極92のうち、一方が陽極、他方が陰極として機能し、発光層91R、91G、91Bは、陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子の再結合エネルギーによって発光する。
【0064】
発光効率を向上するために、発光層91R、91G、91Bと陽極との間には、正孔注入層および/又は正孔輸送層を設けることができる。発光効率を向上するために、発光層91R、91G、91Bと陰極との間には、電子注入層および/又は電子輸送層を設けることができる。
【0065】
本実施形態の有機EL装置は、上記本発明による酸化物半導体素子Tを用いて構成されたアクティブマトリクス基板90を用いているため、消費電力を低減できる、周辺回路の形成面積を低減できる、周辺回路の種類の選択自由度が高いなどの点で、従来技術より優れたものとなる。なお、電気光学装置は、有機EL装置に限定されるものではなく、液晶装置等を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態による酸化物半導体素子の製造方法の工程を示す概略断面図
【図2】紫外光レーザの照射条件とInGaZnOのシート抵抗値の変化との関係を示す図
【図3】第2実施形態による酸化物半導体素子の製造方法の工程を示す概略断面図
【図4】第3実施形態による酸化物半導体素子の製造方法の工程を示す概略断面図
【図5】第4実施形態による酸化物半導体素子の製造方法の工程を示す概略断面図
【図6】本発明による薄膜センサの概略断面図
【図7】本発明による電気光学装置の概略斜視図
【符号の説明】
【0067】
10 基板
20 ゲート電極
30 ゲート絶縁膜
31 層間絶縁膜
32 第2の層間絶縁膜
40 酸化物半導体膜
41 活性領域
42 ソース領域
43 ドレイン領域
50 マスク
62 ソース電極
63 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ゲート絶縁膜を挟んで酸化物半導体膜とゲート電極を形成し、前記酸化物半導体膜内に、ソース電極およびドレイン電極とそれぞれ電気的に接続されるソース領域およびドレイン領域を形成する酸化物半導体素子の製造方法において、
前記酸化物半導体膜のシート抵抗値が10Ω/□以上であり、
前記酸化物半導体膜に部分的に紫外光を照射して、該酸化物半導体膜内の前記ソース領域および前記ドレイン領域におけるシート抵抗値を10Ω/□未満にまで低減させることを特徴とする酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート電極が、前記紫外光を遮断する材料からなるものであり、
前記紫外光の照射を、該ゲート電極をマスクとして行うことにより、該ゲート電極に対して前記ソース領域および前記ドレイン領域を自己整合的に形成することを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記基板上に、
前記ゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と、前記酸化物半導体膜を、この順に形成し、
その後、前記紫外光の照射によりシート抵抗値が低減された、前記ソース領域および前記ドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されるように、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板上に、
前記酸化物半導体膜と、前記ゲート絶縁膜と、前記ゲート電極を、この順に形成し、
その後、前記紫外光の照射によりシート抵抗値が低減された、前記ソース領域および前記ドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されるように、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物半導体膜が、In、Zn、GaおよびSnからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記紫外光が、レーザ光であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板が、樹脂製基板であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の酸化物半導体素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする酸化物半導体素子。
【請求項9】
請求項8に記載の酸化物半導体素子を用いて構成されたことを特徴とする薄膜センサ。
【請求項10】
請求項8に記載の酸化物半導体素子を用いて構成されたことを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−111125(P2009−111125A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281386(P2007−281386)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】