説明

重合性トリプチセン誘導体

【課題】 反射型偏光板、位相差板などの光学異方性を示す光学補償薄膜には、波長分散の小さな光学異方性を有する成形体が求められている。また重合性液晶組成物から光学異方性を示す成形体を製造する場合、他の液晶性化合物と良好な相溶性を持つ重合性の液晶性化合物が必要である。すなわち光学異方性の波長分散が小さく、他の液晶性化合物と良好な相溶性を持つ重合性の液晶性化合物が求められている。
【解決手段】 下記の式(1)または式(2)で表されるトリプチセン環を有する化合物、それらを含む液晶組成物、およびそれら液晶組成物を重合することで製造できる光学異方性を有する成形体である。


上式において、Aはトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−フェニレンなどで、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルであり、Xは単結合、アルキレンなどであり、Rはハロゲン、−CN、アルキルなどであり、Zは単結合、−COO−などであり、mは1〜6の整数であり、Pは重合性の基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプチセン環と重合性基を持つ化合物、それを含む液晶組成物、それら液晶組成物を重合することで製造できる光学異方性を有する成形体、及びそれら成形体を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重合性を持つ液晶性化合物が、反射型偏光板、位相差板などの光学異方性を示す成形体に活用されている。これらは液晶状態で光学異方性を示し、重合することでこれら化合物の配向が固定される。成形体に必要な光学的特性は目的により異なるので、目的にあった化合物や組成物が必要である。また、化合物を最適化する際、光学異方性に加えて、重合性、重合体の物理的・化学的な特性も要求を満足する必要がある。この特性は、化合物の重合速度、重合度、重合体の透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などである。
【0003】
光学異方性を示す成形体を製造する場合、重合前の液晶組成物は重合工程中に液晶状態を保たねばならない。重合工程は、通常、室温である。そのため、液晶組成物に使用する重合性化合物は、他の液晶性化合物と良好な相溶性を持たねばならない。重合性基を持つ化合物は、重合性基の嵩高さのために、一般に液晶温度範囲が狭く、他の液晶性化合物との相溶性が低い。他の液晶性化合物と良好な相溶性を持つ液晶性化合物が必要である。
【0004】
一方、液晶性化合物の位相差値は、透過光の波長に対して一定の値を示さず(波長分散)、短波長側でより大きな値を示す。成形体を反射型偏光板、位相差板などの光学補償薄膜に利用する際、この特性は好ましくない。波長分散の小さな光学異方性を有する成形体が求められている。
【0005】
光学異方性値が小さい、または二軸性を持つ化合物があれば前述の問題を解決できる。このような特性を持ち、更に液晶温度範囲が広く、他の液晶性化合物との相溶性がよく、重合速度、重合度、重合体の透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などを満足する化合物が望まれている。
【0006】
前述の問題を解決する手段の一つとしてメソゲンの短軸方向に芳香環を持つ化合物が考えられる。スウェーガーらはメソゲンの短軸方向に芳香環を持つ化合物としてイプチセン、特にトリプチセンを含む種々の高分子とその合成方法を開示している(例えば特許文献1および非特許文献1を参照)。高分子は、酸無水物のアミン誘導体との縮合、シクロペンテン環の開環重合(ROP)、アルキンのSonogashira型交差カップリング反応、アリルホウ素誘導体のSuzuki型交差カップリング反応を活用した重合方法で合成している。しかし、本願が示す重合性基を用いた高分子体の製造方法は説明されていない。また、液晶性と重合性を持つモノマーの開示はない。更に、これらを使用した光学機能膜の製造についても説明されていない。本願は重合性を持つ新規の液晶性モノマー、これらからなる組成物、およびこれらを重合して製造できる光学機能膜を開示するものである。
【0007】
【特許文献1】WO02/16463A3
【非特許文献1】M. Swagerら, J. Mater. Chem., 2002, 12(12), 3407-3412
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の目的は、他の液晶性化合物との相溶性に優れ、位相差または光学異方性値の波長分散が小さく、重合性を持ち、トリプチセン環を含む液晶性化合物、およびこの化合物を含有する液晶組成物を提供することである。第二の目的は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れた重合体、およびこの重合体から製造した光学異方性を有する成形体を提供することである。第三の目的は、この重合体を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決すべく検討した結果、本発明のトリプチセン環を含む液晶性化合物が、他の液晶性化合物との相溶性に優れ、光学異方性値が小さいことを見出した。また本発明の化合物を含む液晶組成物は、塗布性、配向性、重合性に優れており、その重合体は反射型偏光板、位相差板などの光学補償薄膜として優れていることを見出し、本発明を完成した。本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1] 下記の式(1)または式(2)で表される化合物。





式中、Aは独立に、トリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−、であり;mは1〜6の整数である;Pは独立に式(P1)、式(P2)、式(P3)、式(P4)、式(P5)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)で表される重合性の基であるが、Wは独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【0011】
[2] 式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであるが、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)である[1]項に記載の化合物。
【0012】
[3] 式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであるが、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;Pが式(P2)、式(P3)、式(P4)、または式(P5)である[1]項に記載の化合物。
【0013】
[4] 下記の式(1)または式(2)で表される化合物。







式中、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルであり、1,4−フェニレンの任意の1つまたは2つの水素がフッ素、塩素、CF、またはメチルによって置き換えられてもよい;Rは独立に水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい;Xは独立に式(X11)、式(X12)、式(X13)、式(X14)、式(X15)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜17の整数である;Zは独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;mは1〜4の整数である;Pは独立に式(P1)、式(P2)、式(P3)、式(P4)、式(P5)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)で表される重合性の基であるが、Wは独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【0014】
[5] 式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルであり、1,4−フェニレンの任意の1つまたは2つの水素がフッ素またはCFによって置き換えられてもよい;Rは独立に水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい;Xは独立に式(X11)、式(X12)、式(X13)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜12の整数である;Zは独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、または−C≡C−であり;mは2または4である;Pは独立に式(P1)、式(P3)、式(P5)、または式(P6)で表される重合性の基であるが、Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルである[4]項に記載の化合物。
【0015】
[6] 式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CN、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Xは独立に式(X12)、式(X13)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜10の整数である;Zは独立に単結合、−COO−または−OCO−である;mは2である;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)であり、Wは独立に水素、フッ素またはトリフルオロメチルである[4]項に記載の化合物。
【0016】
[7] 式(1a)、(1b)、および(1c)で表される化合物。



式中、環Tryはトリプチセン−1,4−ジイルであり;Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CN、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;rは2〜10の整数である。
【0017】
[8] 式(2a)、(2b)、および(2c)で表される化合物。



式中、環Tryはトリプチセン−1,4−ジイルであり、Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、rは2〜10の整数である。
【0018】
[9] 少なくとも2つの化合物を含有し、少なくとも1つの化合物が[1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物である液晶組成物。
【0019】
[10] 化合物の全てが重合性化合物である[9]項に記載の液晶組成物
【0020】
[11] 3〜90重量%の[1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと、10〜97重量%の式(M1)および(M2)で表される化合物から選択される少なくとも1つの重合性化合物とを含有する[9]または[10]に記載の液晶組成物。





式(M1)および式(M2)において、Pは独立して(P9)〜(P12)であり;Rは独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであるが、任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;sは独立して1〜3の整数である。
【0021】
[12] 式(M1)または(M2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの重合性化合物が、(M1a)、(M1b)、(M1c)、(M2a)、(M2b)、または(M2c)である[11]項に記載の液晶組成物。



式(M1a)〜(M2c)において、Pは独立して(P9)〜(P12)であり;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであり、Wは独立してハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;pおよびqは独立して0または1であり、nは0から10の整数である。
【0022】
[13] 第1成分として[7]項に記載の式(1a)、式(1b)および式(1c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として[12]項に記載の式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する[9]項に記載の液晶組成物。
【0023】
[14] 第1成分として[8]項に記載の式(2a)、式(2b)および式(2c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として[12]項に記載の式(M1a)、式(M1b)および式(M1c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する[9]項に記載の液晶組成物。
【0024】
[15] 第1成分として[8]項に記載の式(2a)、式(2b)および式(2c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として[12]項に記載の式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する[9]項に記載の液晶組成物。
【0025】
[16] [9]〜[15]のいずれか1項に記載の組成物に更に光学活性化合物を添加することで得られる液晶組成物。
【0026】
[17] [1]項に記載の式(1)または(2)において、Pが基(FG1)、基(FG2)、基(FG3)、基(FG4)、基(FG5)、基(FG6)、基(FG7)、または基(FG8)である式(1)または式(2)で表される、少なくとも1つの構成単位を有し、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物から得られる重合体。

【0027】
[18] [9]〜[16]のいずれか1項に記載の組成物を重合することで得られる[17]項に記載の重合体。
【0028】
[19] [1]項に記載の1つの化合物を単独重合することにより得られる[17]項に記載の重合体。
【0029】
[20] 重量平均分子量が500〜1,000,000である[18]または[19]項に記載の重合体。
【0030】
[21] 重量平均分子量が1,000〜500,000である[18]または[19]項に記載の重合体。
【0031】
[22] [9]〜[16]のいずれか1項に記載の組成物、[1]項に記載の式(1)で表される化合物または[1]項に記載の式(2)で表される化合物を配向させた後、電磁波の照射により液晶相における分子の配向を固定化した光学異方性を持つ成形体。
【0032】
[23] 固定化した分子の配向が、プラナー配向、ハイブリッド配向、ホメオトロピック配向、またはツイスト配向である[22]項に記載の成形体。
【0033】
[24] [22]または[23]項に記載の成形体からなる光学素子。
【0034】
[25] 波長350〜750nmのうち、一部またはすべての領域の光を選択的に反射する、可視光域にて円偏光二色性を示す[24]項に記載の光学素子。
【0035】
[26] 波長100〜350nmの紫外光域にて円偏光二色性を示す[24]項に記載の光学素子。
【0036】
[27] [17]〜[26]のいずれか1項に記載の重合体、成形体または光学素子を含む液晶表示素子。
【発明の効果】
【0037】
電磁波の照射で化合物(1)および(2)は重合できる。化合物(1)および(2)は他の液晶性化合物との相溶性に優れ、得られた組成物の液晶温度範囲の下限値を下げる。化合物(1)および(2)を含む液晶組成物から得られる重合体は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などにおいても優れる。化合物(1)および(2)を含む液晶組成物から得られる重合体の波長分散は小さいので、得られる位相差フィルム、視野角補償フィルム、および輝度向上フィルムなどは優れた光学特性を示す。また、化合物(1)および(2)を含む液晶組成物から得られる重合体は、装飾品、化粧品、偽造防止装置の材料としても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
液晶性化合物の用語は、液晶相を持つ化合物および液晶相を持たないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(1)、式(2)、式(M1)、および式(M2)で表わされる化合物をそれぞれ化合物(1)、化合物(2)、化合物(M1)、および化合物(M2)と表記することがある。アクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと表記することがある。
【0039】
句「任意の−CH−は−O−、−CH=CH−などで置き換えられてもよい」の意味を一例で示す。C−において任意の−CH−を−O−または−CH=CH−で置き換えた基の一部は、CO−、CHO(CH−、CHOCHO−、HC=CH(CH−、CHCH=CH(CH−、およびCHCH=CHCHO−である。このように語「任意の」は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。化合物の化学的安定性を考慮した場合、酸素と酸素とが隣接したCHOOCH−よりも、酸素と酸素とが隣接しないCHOCHO−の方が好ましい。
【0040】
本発明の第一は、式(1)および(2)で表されるトリプチセン誘導体である。式中のRは独立して水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0041】
好ましいRの例は、水素、フッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。ハロゲンは塩素またはフッ素が好ましい。Rが水素である場合、粘度が低い。Rがフッ素、塩素である場合、誘電率異方性値が大きい。Rが炭素数1〜10のアルキルである場合、液晶温度範囲が広い。Rが−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−を含む炭素数1〜10のアルキルである場合、液晶温度範囲が広く、誘電率異方性値および光学異方性値がやや大きい。Rがハロゲンを含む炭素数1〜10のアルキルである場合、中程度の誘電率異方性値および光学異方性値を示す。
【0042】
より好ましいRの例は、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。特に好ましいRの例は、水素、フッ素、塩素、−CN、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルである。
【0043】
式(1)および(2)のAは環構造の2価基である。これらは独立して、トリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるが、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよい。
【0044】
トリプチセン−1,4−ジイル以外の、好ましいAの例は、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、基中の任意の水素がフッ素、塩素、メチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられた1,4−フェニレンである。具体例は下記の通りである。
【0045】

【0046】
各式中、これらの環は左右逆向きに結合してもよい。1,4−シクロへキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスが好ましい。本発明の化合物の各元素は同位体元素を自然に存在する割合より多く含んでも、物性に大きな差異はない。
【0047】
式(1)および(2)中のZは結合基である。Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、―CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、−OCOC≡C−である。単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−は液晶温度範囲を広くする傾向がある。フッ素を含む−CFCF−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−は、光学異方性を小さく、または誘電率異方性を大きくする傾向がある。三重結合を含む−C≡C−、−C≡CCOO−、−OCOC≡C−は、大きな光学異方性を誘起する傾向がある。好ましいZは、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−である。より好ましいZは、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、または−C≡C−、である。特に好ましいZは、単結合、−COO−または−OCO−である。
【0048】
Xは独立に、単結合、任意の−CH−が−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキレンである。好ましくは、単結合、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜15のアルキレンである。より好ましくは下記の基(X11)〜基(X17)であり、これらの基においてnは1〜12の整数である。特に好ましいXは、基(X12)、基(X13)、基(X16)および基(X17)であり、これらの基においてnは2〜10の整数である。
【0049】

【0050】
mは1〜6の整数であるが、mが2〜5の整数である化合物(1)および(2)が液晶温度範囲が広いので好ましい。さらに、mが2〜4の整数である化合物(1)および(2)は液晶温度範囲が広く、相溶性に優れるので、より好ましい。特に好ましいmは2または4である。
【0051】
Pは式(P1)〜(P8)で表される重合性基であり、Wは独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはフルオロアルキルである。好ましいWは、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、トリフロロメチルである。基(P3)の立体配置はシスであってもよいし、トランスであってもよい。
【0052】
重合性基(P1)、(P6)、(P7)および(P8)はラジカル重合に、重合性基(P2)、(P3)、(P4)および(P5)はカチオン重合に適している。重合開始剤を添加することでより敏速に重合できる。より好ましいPは(P1)、(P3)、(P5)または(P6)であり、Wは水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルである。特に好ましいPは(P1)、(P3)または(P5)であり、Wは水素、フッ素またはトリフルオロメチルである。
【0053】
R、A、Z、X、P、m、Wを適切に選択することで、目的の物性を持つ化合物(1)および(2)を得ることができる。
【0054】
化合物(1)および(2)の製法を説明する。トリプチセン環は例えば、P. D. Bartlettら, J. Am. Chem. Soc., 1942, 64, 2649の方法で製造できる。重合性基(P1)および(P7)はそれぞれ、水酸基およびアミノ基を持つ液晶性残基にアクリル酸クロリド類を作用することで導入できる。重合性基(P2)は、水酸基を有する液晶性残基にブチルビニルエーテルを作用し、エーテル交換反応を行うことで導入できる。重合性基(P3)および(P4)は、不飽和結合を有する液晶性残基を酸化することで導入できる。オキシラン環およびシクロヘキセンオキシド環を含む公知の中間体を使用してもよい。重合性基(P5)はオキセタン環を含む公知の中間体、例えば、工業的に入手可能な3−アルキルオキセタン−3−イルメタノール等を使用して導入できる。重合性基(P6)は水酸基を有する液晶性残基に無水マレイン酸を作用することで導入できる。重合性基(P8)は、ハロゲンを有する液晶性残基にβ−クロロプロピオン酸クロリド類を作用し、次いで脱HClすることで導入できる。ただし、液晶性残基はR−X−(A−Z)−A−X−、および−X−(A−Z)−A−X−である。
【0055】
化合物(1)および(2)の重合性基以外の部分構造はフーベン・バイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセセス(John & Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(John & Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Pergamon Press)等に記載された有機合成化学的手法を適宜組み合わせることで製造できる。具体的には、6員環構造を含む有機残基を結合することで構築できる。次に結合方法を説明する。以下においてMGおよびMGは6員環構造を一つ以上含む有機残基であり、互いに異なっても同一でも良い。(1A)〜(1P)は、化合物(1)および(2)である。
【0056】


【0057】
化合物(1A)〜(1J)は図1の経路で合成できる。ボロン酸(i1)と臭化物(i2)の交錯カップリング反応で、Zが単結合である化合物(1A)を合成できる。カルボン酸(i3)と水酸基を持つ化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−COO−である化合物(1B)を合成でき、更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CFO−である化合物(1C)を合成できる。臭化物(i5)と化合物(i4)および塩基(B)から、結合基に−CHO−を持つ化合物(1D)を合成できる。ホスホニウム塩(i6)と塩基から得られるイリドとアルデヒド(i7)のウイティッヒ反応で、結合基が−CH=CH−である化合物(1E)を合成できる。塩(i6)は臭化物(i5)とPPhから合成できる。結合基が−CHCH−である化合物(1F)は化合物(1E)を還元することで合成できる。ジケトン(i8)をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CFCF−である化合物(1G)を合成できる。反応は2段階で進行するので、フッ素アニオンの力価を調整すれば、結合基が−CFCO−である化合物(i9)を取出せる。テトラフルオロエチレンにリチオ化物(i10)と(i11)を順次作用することで、結合基が−CF=CF−である化合物(1H)を合成できる。アルキン(i12)と臭化物(i12)を遷移金属触媒の存在下、交錯カップリング反応することで、結合基が−C≡C−である化合物(1J)を合成できる。
【0058】


【0059】
化合物(1K)〜(1P)は図2の経路で合成できる。カルボン酸(i14)と化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−CH=CHCOO−である化合物(1K)を合成できる。カルボン酸(i14)はアルデヒド(i13)のウイティッヒ反応で合成できる。結合基が−CHCHCOO−である化合物(1L)は化合物(1K)の還元で合成でき、更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CHCHCFO−である化合物(1M)を合成できる。カルボン酸(i15)と化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−C≡CCOO−である化合物(1N)を合成できる。更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−C≡CCFO−である化合物(1P)を合成できる。カルボン酸(i15)はアルキン(i12)を一旦リチオ化し、COを作用することで合成できる。
【0060】
上記方法で合成できる好ましい化合物を例示する。環(Try)は置換および非置換のトリプチセン環を示す。化合物(1−1)〜(2−59)において、液晶性残基の置換位置はトリプチセン環の1,4−位である。トリプチセン環、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ジオキサン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、フルオレン環の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはフルオロアルキルで置き換えられてもよい。Rは[1]、[4]または[7]項の記載と同一の意味を示し、nは10以下の整数である。
【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】


【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】
本発明の第2は、2つ以上の化合物を含有し、少なくとも1つが化合物(1)または(2)である液晶組成物である。詳しくは、化合物(1)および(2)の少なくとも1つと、化合物(M1)および(M2)から選択される少なくとも1つの重合性化合物とを含有する液晶組成物である。
【0081】

【0082】

【0083】
式(M1)および(M2)において、Pは独立して、(P9)〜(P12)であり;Rは独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであるが、任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合、炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;sは独立して、1〜3の整数である。
【0084】
化合物(M1)および(M2)の中で好ましい化合物は、式(M1a)〜式(M2c)である。化合物(M1a)〜式(M2c)の好ましい含有量は10〜99重量%であり、より好ましくは30〜70重量%である。

【0085】
式(M1a)〜(M2c)において、Pは独立して、(P9)〜(P12)であり;Rは独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであり、Wは独立してハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合、炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;pおよびqは独立して0または1であり、nは0から10の整数である。
【0086】
物性を改善する目的で、本発明の組成物に、非重合性の液晶化合物、光学活性化合物、液晶相を持たない重合性化合物、重合開始剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、フィラー、紫外線吸収剤などを添加してもよい。添加物の構造は限定されない。各添加物の含有量は、本発明の組成物の効果を損なわない範囲である。これら添加物については以下で詳しく説明する。
【0087】
非重合性の液晶化合物の例は、データベースLiqCryst(登録商標、LCI Publisher, Hamburg, Germany)およびその掲載文献に記載の化合物である。光学活性化合物の好適例は、式(OP−1)〜(OP−24)である。ただし、Akは炭素数1〜15のアルキルおよびアルコキシを、Me、EtおよびPhはそれぞれ、メチル、エチルおよびフェニルを示す。重合性基Pは重合性があれば限定されないが、(メタ)アクロイルオキシ部位、ビニルオキシ部位、オキシラニル部位、オキセタニル部位を含む重合性側鎖が好ましい。
【0088】


【0089】


【0090】


【0091】
本発明の第3は、化合物(1)および(2)またはそれらを含む液晶組成物をラジカル重合またはカチオン重合することで製造できる重合体である。化合物(1)および(2)の1つのみを重合させると、単独重合体が得られる。複数の重合性化合物を含む組成物からは共重合体が得られる。
【0092】
機械的強度、熱的強度、塗布性、配向性などを調整する目的で液晶相を持たない重合性化合物を添加してもよい。(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物、オキシラン化合物、オキセタン化合物が好ましい。重合体の機械的強度および熱的強度をより高めるために、多官能性のアクリレート、ビニルエーテル、オキシラン、およびオキセタンを使用してもよい。
【0093】
塗布を容易にするため、または液晶分子の配向を制御するために、界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤の添加量は界面活性剤の種類や目的により異なるが、本発明の液晶組成物に対して、100ppmから5重量%、さらに好ましくは0.1重量%から1重量%の範囲である。
【0094】
光ラジカル重合開始剤の例は、チバ・スペシャリティー(株)のダロキュアーシリーズから1173および4265(いずれも商品名)、イルガキュアーシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959(いずれも商品名)などである。
【0095】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などである。
【0096】
光カチオン重合開始剤の例は、UCC(株)のサイラキューアーUVI−6990および6974(いずれも商品名)、旭電化(株)のアデカオプトマーSP−150、152、170および172(いずれも商品名)、ローディアのフォトイニシエーター2074(商品名)、チバ・スペシャリティー(株)のイルガキュアー250(商品名)、みどり化学(株)のDTS−102(商品名)などである。
【0097】
本発明の成形体は、本発明の組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成させ、その組成物がネマチック相で形成する分子の配向を光の照射により固定化することで製造できる。支持体は、例えば、ガラス、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートなどである。具体的な商品名ではJSR(株)の「アートン」、日本ゼオン(株)の「ゼオネックス」および「ゼオノア」、三井化学(株)の「アペル」などである。支持体は一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムであってもよい。支持体は、事前に鹸化処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0098】
本発明の組成物は溶媒に溶かして塗布することもできる。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ブチルセルソルブなどを単独溶媒または複数の混合溶媒として用いることができる。
【0099】
本発明の組成物は、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコード、デップコート、スプレーコート、メニスカスコートや流延成膜法などの方法で薄膜展開し、溶媒を除去する方法で塗布できる。
【0100】
事前に支持体表面を配向処理することで、本発明の組成物を支持体上で配向させることができる。処理方法は、例えば、ポリイミド、ポリアミドやポリビニルアルコールなどからなる薄膜を形成して、それをレーヨン布などでラビング処理したものや、酸化ケイ素を斜方蒸着したもの、延伸フィルム、または光配向膜やイオンビームなどを用いたラビングフリー配向である。または、支持体を直接レーヨン布などでラビング処理してもよい。組成物と処理方法を最適化することで、ホモジニアス、ハイブリッド、およびホメオトロピック配向性を得ることができる。ホメオトロピック配向は、支持体表面の処理を行わなくても実現できる場合がある。
【0101】
本発明の組成物の分子の配向は電磁波を照射して固定できる。電磁波の波長は300nm以上が好ましい。照射時の温度は、組成物が液晶状態である温度であるが、熱重合を防ぐために、100℃以下が好ましい。
【0102】
光学活性化合物を含む本発明の組成物は支持体上でらせん構造を示す。重合すればツイスト配向を有する成形体を製造できる。式「λ=屈折率×らせんのピッチ」を満足する波長(λ)を持つ光において円偏光分離機能を持つ。これは輝度向上フィルムとして使用できる。光学活性化合物の種類および添加量を適時選択することで、らせん方向およびピッチを最適化できる。また、らせんのピッチを300nm以下、好ましくは250nm以下にすることで、ネガティブc−プレートを調製できる。
【0103】
本発明の成形体の厚さは、要求特性と成形体の光学異方性値により異なる。好ましくは0.05〜50μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、更に好ましくは0.5〜1μmである。好ましい位相差値は0.05〜50μmであり、より好ましくは0.1〜20μmであり、更に好ましくは0.1〜10μmである。成形体のヘイズ値は、1.5%以下、より好ましくは1.0%以下である。成形体の可視光領域での透過率は80%以上、より好ましくは85%以上である。十分な偏光性能を得るために、1.5%以下のヘイズ値が好ましい。80%以上の透過率は、この成形体を液晶表示素子に用いる際、明るさを維持するために好ましい条件である。
【0104】
熱可塑性を持つ本発明の重合体は、接着剤、機械的異方性を持つ合成高分子、化粧品、装飾品、非線形光学材料、情報記憶材料などに利用できる。これらは分岐構造の少ない線状の高分子であり、1つの重合性基を持つ化合物を主体とする組成物から得られる。これらの重量平均分子量は500から100万であり、好ましくは1000から50万であり、より好ましくは5000から10万である。
液晶表示素子用の位相差板、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などには熱硬化性樹脂が利用できる。熱硬化性樹脂は網目構造を持つ高分子であり、複数の重合性基を持つ化合物を主体とする組成物を重合することで、重合度の高い重合体として得られる。これらの重合体は溶媒に溶けにくく硬度が高い。これらの重合体の分子量は測定が困難で規定し難いが、無限大に近いことが好ましい。
【0105】
重合体の用途について説明する。この重合体は、光学異方性を有する成形体として使用できる。この重合体を含有する素子は、位相差板(1/2波長板、1/4波長板など)、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などの光学フィルムである。ホモジニアス、ハイブリット、ホメオトロピックなどの配向を有する重合体は、位相差板、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜、などに利用できる。ツイストなどの配向を有する重合体は、位相差板、偏光素子、選択反射膜、視野角補償膜などに利用できる。このような重合体は、液晶ディスプレイの位相差板や視野角補償膜などに、光学補償を目的として用いられる。このような重合体は、高熱伝導性エポキシ樹脂、接着剤、機械的異方性を持つ合成高分子、化粧品、装飾品、非線型光学材料、情報記憶材料などにも利用できる。
【0106】
熱可塑性樹脂は接着剤、機械的異方性を持つ合成高分子、化粧品、装飾品、非線形光学材料および情報記憶材料などの用途に適している。熱硬化性樹脂は液晶表示素子の構成要素である位相差板、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などの用途に適している。
【0107】
位相差板は偏光の状態を変換する機能を有する。1/2波長機能板は、直線偏光の振動方向を90度回転させる機能を有する。d=λ/2×Δnの式を満たすように組成物を支持基板上に塗布する。ここで、dは組成物の厚さ、λは波長、Δnは光学異方性である。この組成物の配向させたあと、光重合させることによって1/2波長機能板が得られる。一方、1/4波長機能板は、直線偏光を円偏光に、または円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。この場合には、d=λ/4×Δnの条件を満たすように組成物の塗膜を調製すればよい。重合体の厚さ(d)は次のように調整される。組成物を溶媒で希釈したあと、支持基板上に塗布する方法では、組成物の濃度、塗布する方法、塗布する条件などを適切に選択することによって、目的とする厚さの塗膜を得ることができる。液晶セルを利用する方法も好ましい。液晶セルはポリイミドなどの配向膜を有しているので都合がよい。この液晶セルに組成物を注入する場合には、液晶セルの間隔によって塗膜の厚さを調整することができる。
【0108】
ツイスト配向を有する重合体は、位相差板として有用である。らせんのピッチが、波長の1/n(nは重合体の平均屈折率)であるとき、この波長の光はブラッグの法則に従って反射され、円偏光に変換される。円偏光の方向は、らせんの方向、すなわち光学活性な化合物の立体配置に依存する。光学性な化合物の立体配置を適切に選択することによって、円偏光の方向を決めることができる。この重合体は、円偏光分離機能素子として有用である。
【0109】
この重合体は、輝度向上フィルムとしても有用である。例えば特開平6−281814号公報などに開示された方法に従えば、らせんピッチが厚さ方向に連続的に延びる重合体が得られる。この重合体は、ピッチに応じた広い波長領域の光を反射することができる。この重合体は、100〜350nm(または波長350〜750nm)の領域の光を選択的に反射することができる。
【0110】
物性の測定法を記載したあと、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例は、本発明の一例である。本発明は下記の実施例によって限定されない。合成した化合物の化学構造は、H−NMRおよび13C−NMRで確認した。組成物の割合は、重量%(wt%)である。
【0111】
相転移温度は、偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で昇温した。液晶相が転移する温度を測定した。Cは結晶、Nはネマチック相、Chはコレステリック相、SAはスメクチックA相、Iは等方性液体を意味する。NI点は、ネマチック相の上限温度またはネマチック相から等方性液体への転移温度である。「C50N63I」は、50℃で結晶からネマチック相に転移し、63℃でネマチック相から等方性液体へ転移したことを示す。
【0112】
セロテープ(登録商標)剥離試験は、JIS規格「JIS−K−5400、8.5、付着性(8.5.2、碁盤目テープ法)」の試験法に従った。つまり、100のます目のうち、剥離しなかったます目の数によって、結果を評価した。
【0113】
鉛筆硬度は、JIS規格「JIS−K−5400、8.4、鉛筆引掻試験」の方法に従った。結果を鉛筆の芯の硬さで表した。
【0114】
耐熱性試験は、100℃で500時間の条件で行ない、結果はリタデーション(retardation)の変動によって評価した。ガラス基板にポリアミック酸(チッソ(株)のPIA5310)を塗布したあと、210℃で30分加熱して支持基板を得た。加熱によって生成したポリイミドの表面はレーヨン布でラビングした。試料の組成物をトルエンとシクロペンタノンの混合溶媒(重量比で2:1)で希釈して30重量%の溶液を調製した。溶液をスピンコータで支持基板に塗布し、70℃で3分間加熱したあと、生成した塗膜に超高圧水銀灯(250W/cm)を使って紫外線を60℃で10秒間照射した。得られた重合体のリタデーションを25℃で測定した。重合体を100℃で500時間加熱したあと、再度リタデーションを25℃で測定した。2つの値を比較して耐熱性を評価した。レタデーションは、文献の方法に従い、セナルモン・コンペンセータ(Senarmont compensator)を用いて測定した。使用した波長は550nmである。文献は、粟屋裕著、「高分子素材の偏光顕微鏡入門」、94頁、アグネ技術センター発行、2001年である。
【0115】
光学異方性(△n)は、次のように算出した。耐熱性試験の方法にしたがって重合体のリタデーション(25℃)の値を測定した。重合体の厚さ(d)も測定した。リタデーションは△n×dであるから、この関係から光学異方性の値を算出した。
【0116】
配向は偏光顕微鏡によって観察した。重合体は、ケン化処理したTACフィルム(支持基板)の上に調製した。この試料を、クロスニコルに配置した2枚の偏光板に挟持した。配向の種類は、透過光強度の角度依存性から判断した。
実施例1 化合物(2−2)[n=6、W=水素]の合成
【0117】
4−(6−アクロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸(2.04g、6.98mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.44g、6.98mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(41.5mg、0.34mmol)およびジクロロメタン(80mL)の混合物に、P. D. Bartlettら, J. Am. Chem. Soc., 1942, 64, 2649の方法に従い合成した1,4−ジヒドロキシトリプチセン(1.0g、3.49mmol)を0℃で加え、得られた混合物を暗所、室温で2時間撹拌した。析出した不溶物を濾別除去し、濾液を濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:300mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(5/1))で精製し、1.41g(収率48%)の目的物を無色結晶として得た。H−および13C−NMRはよくその構造を支持した。融点132℃。Rf=0.62.
【0118】
実施例2 光重合性液晶組成物(Mix−1)の製造



【0119】
上記の組成を持つ組成物(Mix−1)を調製した。組成物(Mix−1)の1.2gとシクロペンタノン(5mL)の溶液を調製した。化合物Aは、特開2003−238491号公報(US2003−0203128A1に記載の方法に従い合成した。化合物Bは、Macromolecules, 1990, 23(17), 3938-3943に記載の方法に従い合成した。この溶液をスライドガラス上に塗布し、70℃に設定したホットプレート上で3分間放置して溶媒を除去し、残留物としてネマチック状態の組成物を得た。この組成物を室温に戻し放置したところ、2日間経過してもネマチック状態を保持したままであった。
【0120】
比較例1 光重合性液晶組成物(Mix−2)の製造



【0121】
化合物(2−2)[n=6、W=水素]の代わりに化合物Cを使用し、組成物(Mix−2)を調製した。組成物(Mix−2)の1.2gとシクロペンタノン(5mL)からなる溶液を調製した。化合物Cは、特開昭63−64029号公報(EP0261712A1)に記載の方法に従い合成した。この溶液をスライドガラス上に塗布し、70℃に設定したホットプレート上で3分間放置し、残留物としてネマチック状態の組成物を得た。この組成物を室温に戻したところ、即座に結晶化した。このことから、化合物(2−2)[n=6、W=水素]が液晶温度範囲の下限値の低下に効果的であることがわかった。
【0122】
実施例3 紫外線照射による光学異方性膜の製造
実施例2で調製した溶液を、表面をレーヨン布でラビングしたトリアセチルセルロース基板上に、スピンコーターを用いて塗布した。70℃のホットプレート上で3分間放置し溶媒を除去して液晶状態の組成物を配向させた。室温に戻し、高圧水銀灯(30Wcm2[365nm])によって紫外線を30秒間照射した。照射後、液晶相における分子の配向は固定化されており、タック性は認められなかった。温度変化(25℃〜100℃)による分子の配向の乱れはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)または式(2)で表される化合物。





式中、Aは独立に、トリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−、であり;mは1〜6の整数である;Pは独立に式(P1)、式(P2)、式(P3)、式(P4)、式(P5)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)で表される重合性の基であるが、Wは独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【請求項2】
式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであるが、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであるが、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよいが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Xは独立に、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Rは独立に、水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;Zは独立に、単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;Pが式(P2)、式(P3)、式(P4)、または式(P5)である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記の式(1)または式(2)で表される化合物。







式中、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルであり、1,4−フェニレンの任意の1つまたは2つの水素がフッ素、塩素、CF、またはメチルによって置き換えられてもよい;Rは独立に水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい;Xは独立に式(X11)、式(X12)、式(X13)、式(X14)、式(X15)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜17の整数である;Zは独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−、または−OCOC≡C−であり;mは1〜4の整数である;Pは独立に式(P1)、式(P2)、式(P3)、式(P4)、式(P5)、式(P6)、式(P7)、または式(P8)で表される重合性の基であるが、Wは独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【請求項5】
式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルであり、1,4−フェニレンの任意の1つまたは2つの水素がフッ素またはCFによって置き換えられてもよい;Rは独立に水素、ハロゲン、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい;Xは独立に式(X11)、式(X12)、式(X13)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜12の整数である;Zは独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、または−C≡C−であり;mは2または4である;Pは独立に式(P1)、式(P3)、式(P5)、または式(P6)で表される重合性の基であるが、Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(1)または式(2)において、Aは独立にトリプチセン−1,4−ジイル、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであるが、少なくとも1つのAはトリプチセン−1,4−ジイルである;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CN、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Xは独立に式(X12)、式(X13)、式(X16)、または式(X17)で表される基であり、nは1〜10の整数である;Zは独立に単結合、−COO−または−OCO−である;mは2である;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)であり、Wは独立に水素、フッ素またはトリフルオロメチルである請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
式(1a)、(1b)、および(1c)で表される化合物。



式中、環Tryはトリプチセン−1,4−ジイルであり;Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CN、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;rは2〜10の整数である。
【請求項8】
式(2a)、(2b)、および(2c)で表される化合物。



式中、環Tryはトリプチセン−1,4−ジイルであり、Wは独立に水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、rは2〜10の整数である。
【請求項9】
少なくとも2つの化合物を含有し、少なくとも1つの化合物が請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物である液晶組成物。
【請求項10】
化合物の全てが重合性化合物である請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
3〜90重量%の請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと、10〜97重量%の式(M1)および(M2)で表される化合物から選択される少なくとも1つの重合性化合物とを含有する請求項9または10に記載の液晶組成物。





式(M1)および式(M2)において、Pは独立して(P9)〜(P12)であり;Rは独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであるが、任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;sは独立して1〜3の整数である。
【請求項12】
式(M1)または(M2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの重合性化合物が、(M1a)、(M1b)、(M1c)、(M2a)、(M2b)、または(M2c)である請求項11に記載の液晶組成物。



式(M1a)〜(M2c)において、Pは独立して(P9)〜(P12)であり;Rは独立して水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、または1,4−フェニレンであり、Wは独立してハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは独立して−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、または−OCOCH=CH−であり;pおよびqは独立して0または1であり、nは0〜10の整数である。
【請求項13】
第1成分として請求項7に記載の式(1a)、式(1b)および式(1c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として請求項12に記載の式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項14】
第1成分として請求項8に記載の式(2a)、式(2b)および式(2c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として請求項12に記載の式(M1a)、式(M1b)および式(M1c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項15】
第1成分として請求項8に記載の式(2a)、式(2b)および式(2c)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物と、第2成分として請求項12に記載の式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の組成物に更に光学活性化合物を添加することで得られる液晶組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の式(1)または(2)において、Pが基(FG1)、基(FG2)、基(FG3)、基(FG4)、基(FG5)、基(FG6)、基(FG7)、または基(FG8)である式(1)または式(2)で表される、少なくとも1つの構成単位を有し、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物から得られる重合体。

【請求項18】
請求項9〜16項のいずれか1項に記載の組成物を重合することで得られる請求項17に記載の重合体。
【請求項19】
請求項1に記載の1つの化合物を単独重合することにより得られる請求項17に記載の重合体。
【請求項20】
重量平均分子量が500〜1,000,000である請求項18または19に記載の重合体。
【請求項21】
重量平均分子量が1,000〜500,000である請求項18または19に記載の重合体。
【請求項22】
請求項9〜16のいずれか1項に記載の組成物、請求項1に記載の式(1)で表される化合物または請求項1に記載の式(2)で表される化合物を配向させた後、電磁波の照射により液晶相における分子の配向を固定化した光学異方性を持つ成形体。
【請求項23】
固定化した分子の配向が、プラナー配向、ハイブリッド配向、ホメオトロピック配向、またはツイスト配向である請求項22に記載の成形体。
【請求項24】
請求項22または23に記載の成形体からなる光学素子。
【請求項25】
波長350〜750nmのうち、一部またはすべての領域の光を選択的に反射する、可視光域にて円偏光二色性を示す請求項24に記載の光学素子。
【請求項26】
波長100〜350nmの紫外光域にて円偏光二色性を示す請求項24に記載の光学素子。
【請求項27】
請求項17〜26のいずれか1項に記載の重合体、成形体または光学素子を含む液晶表示素子。













【公開番号】特開2006−111571(P2006−111571A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300481(P2004−300481)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】