説明

金型の離型剤塗布装置

【課題】油系離型剤を適正な量で金型の成形面に均一に塗布する金型の離型剤塗布装置を提供する。
【解決手段】金型の離型剤塗布装置1は、少なくとも一対の金型3の成形面5の側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置する。この間隔内に前記各金型3の成形面5に向けて油系離型剤を帯電せしめて吐出すべく高電圧を付与するノズル7を支持する支持部材11,13を配置する。この支持部材11,13を前記金型3の長手方向へ往復動自在であると共に前記ノズル7が各金型3の成形面5に向くように前記支持部材11,13を前記金型3の長手方向に対してほぼ垂直方向に旋回可能に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金型の離型剤塗布装置に関し、特に油系の離型剤を適正な量で金型の成形面に均一に塗布するための金型の離型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用金型としては、例えば射出成形用またはダイカスト要の金型は一対の第1金型と第2金型とから構成されており、第1金型と第2金型の成形面でキャビティ形成部が形成される。例えば溶融樹脂がキャビティ形成部内に射出されて樹脂製品が成形される。この場合、キャビティ形成部で成形された成形品の抜き性を向上し、且つ金型の焼き付きを防止するために、射出成形する前に、予め離型剤が金型の成形面に塗布される。
【0003】
従来の金型の離型剤塗布装置としては、例えば、上記の離型剤が装置本体の所定位置に固定されたノズルから金型の成形面に向かって噴出される。なお、金型は、離型剤の吐着性を向上させるために予め300°Cに予熱されている。
【0004】
また、離型剤としては水系離型剤(水溶性離型剤)と油系離型剤がある。油系離型剤は金型の離型性や環境保全性などの点で水系離型剤より優れているが、従来では殆ど水系離型剤が使用されている。
【0005】
水系離型剤としては、最近ではオゾン層の破壊などの地球環境問題や人体への悪影響などの問題からハロゲンの使用が制限されつつあり、ジクロロメタンも同様に制限を受けている。そのために、例えば縮合反応硬化型シリコンポリマーと硬化剤のトルエン溶液を界面活性剤で水に分散したエマルジョンの水系離型剤が用いられている。また、水系離型剤は自然乾燥に難点があり、噴霧し過ぎるとその部分が乾燥不足になりがちであり、そのために成形品の品質不良や生産性の低下などの不具合が生じる。また、水系離型剤が金型の成形面に噴出されると、水蒸気が発生したり、金型に付着している屑が舞い上がったりするために、雰囲気(作業環境)が悪いものであった。
【0006】
これらの不具合を解消するために、水系離型剤が金型の成形面に均一に塗布できるように種々の工夫が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−66405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の金型の離型剤塗布装置においては、一般的に使用されている水系離型剤から油系離型剤に替えて使用する場合、この油系離型剤をただ単に油圧・空圧で霧状にして噴出すると、モイスチャーがたくさん発生して周囲がべとべとになる。そのために、作業者は例えばゴム製の作業着や帽子を着て作業する必要があり、作業環境や作業効率が悪いという問題点があった。しかも、従来の金型の離型剤塗布装置では、油系離型剤の場合も水系離型剤と同様に塗着効率が悪いという問題点があった。
【0008】
また、油系離型剤を使用する場合、油系離型剤のコストが水系離型剤の100倍であり、従来の金型の離型剤塗布装置では離型剤の噴射量が約180cc/minであり、量的に多く噴射されてしまうので、水系離型剤に比べて大幅なコスト高になるという問題点があった。また、離型剤の噴射量が多く噴射すると、その結果、環境破壊が生じるという恐れもある。
【0009】
以上のことから、従来の金型の離型剤塗布装置においては、できれば水系離型剤より油系離型剤を使用したいのであるが、上述した理由から殆ど水系離型剤が使用されているのが現状である。
【0010】
また、金型への離型剤の塗布状態は、作業者の熟練度によって異なってくるものであり、離型剤の塗布状態によって金型成形品の品質の善し悪しにも大きく左右するので、離型剤の種類及びその塗布状態は重要である。
【0011】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の金型の離型剤塗布装置は、少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内に前記各金型の成形面に向けて油系離型剤を帯電せしめて吐出すべく高電圧を付与するノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在であると共に前記ノズルが各金型の成形面に向くように前記支持部材を前記金型の長手方向に対してほぼ垂直方向に旋回可能に設けてなることを特徴とするものである。
【0013】
この発明の金型の離型剤塗布装置は、少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内に前記各金型の成形面に向けて油系離型剤を帯電せしめて吐出すべく高電圧を付与する各金型の成形面の両側に設けられたノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在に設けてなることを特徴とするものである。
【0014】
この発明の金型の離型剤塗布装置は、前記金型の離型剤塗布装置において、前記ノズルが、前記金型の成形面に向けて油系離型剤を吐出する吐出流路群を備えた導電材料からなるシムと、このシムに前記各金型の成形面とは逆極性の電圧を印加する電極と、を備え、
前記吐出流路群に連通する離型剤供給路を設け、この離型剤供給路に供給する油系離型剤の供給量を制御する制御装置を設けていることが好ましい。
【0015】
この発明の金型の離型剤塗布装置は、前記金型の離型剤塗布装置において、前記支持部材が、アダプターを介してノズルを支持する電圧昇圧器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、この発明の離型剤塗布装置は静電型であるので、例えば金型が接地されて正電位を有し、ノズルに負電位の直流高電圧が印加されると、油系離型剤はノズル内を通過する間に瞬時に帯電するために、同一極性の電荷が互いに反発するので、油系離型剤が均一粒径の微粒子として吐出し、その後、霧化されて金型の成形面に向けて均等に噴霧される。その結果、霧化された油系離型剤が金型の成形面の凹凸の細部にまで十分に浸入するために、油系離型剤を成形面に満遍なく均一に塗布することができ、90%以上の塗着効率を得ることができる。
【0017】
したがって、油系離型剤のコストが水系離型剤の100倍であっても、油系離型剤の塗布量を水系離型剤の場合の100分の1にも満たない必要最小量で、金型の成形面に薄く塗布できるので、水系離型剤と同じかそれ以下のコストで、油系離型剤を塗布できる。したがって、油系離型剤を使用することによって、環境保全を向上できると共に金型の成形面の離型性を向上できる。
【0018】
また、少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内にノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在であると共に前記ノズルが各金型の成形面に向くように前記支持部材を前記金型の長手方向に対してほぼ垂直方向に旋回可能に設けているので、油系離型剤を複数の各金型の成形面に効率よく塗布できる。
【0019】
さらに、少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内に各金型の成形面の両側に設けられたノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在に設けているので、ノズルを旋回させるための各金型の成形面間の隙間がない場合には、油系離型剤を複数の各金型の成形面により一層効率よく塗布できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係る金型の離型剤塗布装置1を説明するために、この実施の形態では被塗布体として例えば射出成形用の金型3を用いて説明する。この射出成形用の金型3は一対の第1金型3Aと第2金型3Bとが縦状に配置されてから構成されており、第1、第2金型3A,3Bの各成形面5でキャビティ部が形成される。上記の一対の第1、第2金型3A,3Bは、図1に示されているように第1、第2金型3A,3Bの成形面5の側を予め決められた間隔をあけて相対向して配設される。
【0022】
また、この実施の形態に係る金型の離型剤塗布装置1は静電型であり、前記各金型の成形面に向けて油系離型剤を吐出する吐出流路群9を備えると共に油系離型剤を帯電すべく高電圧を付与するノズル7が、支持部材としての例えば電圧昇圧器11の下部にアダプター13を介して一体的に取り付けられており、前記第1、第2金型3A,3Bの成形面5の間隔内に配置されている。なお、電圧昇圧器11はノズル7に高電圧の電流を供給するためのものである。
【0023】
また、前記支持部材は、図1に示されているように前記第1金型3Aと第2金型3Bの対向面に対して第1,第2金型3A,3Bの長手方向へ往復動自在であると共に前記ノズル7が第1,第2金型3A,3Bの各成形面5に向けて油系離型剤を噴霧可能となるように前記長手方向に対してほぼ垂直方向に旋回可能に、この実施の形態では180°反転可能に設けられている。
【0024】
この実施の形態では、第1金型3Aと第2金型3Bは、ノズル7の図1において左右の両側に配置されている。ノズル7を支持する電圧昇圧器11及びアダプター13は、第1金型3Aと第2金型3Bの間隔内で図1において上下方向に移動自在である。また、電圧昇圧器11の上部には側面にクランプ部材15がクランプされて、例えば、このクランプ部材15が図示しないロボットで把持され、このロボットにより電圧昇圧器11とアダプター13とノズル7が一体的に昇降移動されたり、180°に反転されたりする。なお、ノズル7の先端と第1,第2金型3A,3Bとの距離Bは200〜250mm程度である。
【0025】
なお、この実施の形態では、ノズル7はアダプター13を介して電圧昇圧器11に取り付けられているが、電圧昇圧器11に限らず他の支持部材に取り付けられても構わない。また、ノズル7を金型3の長手方向へ往復動並びに反転する機構としてはロボットに限らず他の移動手段であっても構わない。
【0026】
また、上記のノズル7には前記吐出流路群9に油系離型剤を供給すべく第1離型剤供給管路17が連通されている。この第1離型剤供給管路17には当該第1離型剤供給管路17を開閉するための開閉バルブとしての例えば3方向電磁弁19が介設されており、この3方向電磁弁19には第2離型剤供給管路21が連通されており、油系離型剤は液体モータ23により回転駆動されるギヤ式の液体ポンプ25により離型剤タンク27から第2離型剤供給管路21を経て供給される。さらに、3方向電磁弁19には、第1離型剤供給管路17を閉塞したときに第2離型剤供給管路21を経て供給される油系離型剤を再び離型剤タンク27に戻して循環させるために離型剤排出管路29が連通されている。
【0027】
また、上記の電圧昇圧器11の上部は電源に接続された制御装置31に接続されており、さらに液体モータ23及び3方向電磁弁19はそれぞれ制御装置31により制御されるように接続されている。
【0028】
また、液体ポンプ25と3方向電磁弁19との間の第2離型剤供給管路21には、この第2離型剤供給管路21と液体ポンプ25の流体圧力を一定に保つためのリリーフ弁33が介設されている。
【0029】
また、上記のノズル7は、図2に示されているように一対のノズルブレード35とノズルブレード37との間に形成されたスリット39内に1枚のシム41が電極として配置されたノズルヘッド43が備えられている。ノズルブレード35,37は例えば絶縁性プラスチックなどの電気絶縁材料製であり、シム41は厚さが例えば0.5mm程度のステンレス鋼シートなどからなる導電材料製である。
【0030】
ノズルヘッド43には、シム41に負電位の高電圧を印加するための電極としての例えば電源コネクタ45を構成するコネクタピン47がノズルブレード35の側面から突出するように設けられている。
【0031】
また、シム41の表面とノズルブレード37の隣接表面との間には、金型3の成形面5に向けて吐出すべき油系離型剤の吐出流路群9が形成されている。この吐出流路群9は、例えばシム41の片面(この実施の形態ではシム41の図2において下側面)に溝深さCでエッチング加工されている。なお、上記の吐出流路群9には油系離型剤を供給するための離型剤供給口49が連通されている。
【0032】
図3(A),(B)を併せて参照するに、例えばシム41としては、図3(B)において左側の表面には油だめ51A,51Bと吐出流路群9A,9Bとが深さCでエッチング加工されており、この吐出流路群9A,9Bは油だめ51A,51Bから延在するものであり、下流側に向けて多数の流路溝が並列に配置されている。最下流の両端に位置する流路の間隔は油系離型剤の塗布幅WA,WBに対応するものであり、塗布幅WA,WBはそれぞれ、例えば50mm程度とすることができる。
【0033】
油だめ51A,51Bは塗布装置のノズルブレード37における一対の離型剤供給口49に連通させ、これら離型剤供給口49は図1及び図2に示されているように3方向電磁弁19を介して液体ポンプ25に接続されている。
【0034】
なお、吐出流路群9A,9Bは細管抵抗として作用するものであり、その抵抗値は流路の長さに比例し、流量は長さの二乗に反比例する。吐出流路群9A,9Bから吐出される流体の塗布幅は、それぞれWA、WBである。したがって、各吐出流路群9A,9Bの上流側の3方向電磁弁19を開閉することにより、シム41の全体としての塗布幅を、金型3の成形面5に応じてWA,WB,WA+WBと変化させることが可能である。
【0035】
上記のシム41における油だめ51A,51Bの両側に形成された比較的大きな円形開口部53は、塗布装置全体の支持ブラケット等に対する固定ボルトを通すものである。また、油だめ51A,51Bの隣接領域に配置された比較的小さい円形開口部55は、シム41と隣接するノズルブレード35,37との間の液密性を維持しつつ装置を組立てるための止めねじを通すものである。
【0036】
また、この実施の形態では、塗布幅WA,WBにはそれぞれ16本の流路溝が吐出流路群9A,9Bとして配置されている。さらに、上記のように形成された吐出流路群9A,9Bの最終的な流路の吐出口57は四角形状をなしている。
【0037】
なお、上述した実施の形態では図3(A),(B)に示されているような1枚のシム41が一対のノズルブレード35,37の間に装着された例であるが、複数枚あるいは多数枚のシム41を並列に並べられて塗布幅の全長を長くすることも可能である。
【0038】
また、前述した実施の形態では、第1離型剤供給管路17を開閉するための開閉バルブとして3方向電磁弁19が用いられているが、他の形態の電磁バルブであっても構わない。また、ノズル7に複数の吐出流路群9が設けられている場合は、複数の各吐出流路群9に対応して複数の第1離型剤供給管路17を連通すると共に前記各第1離型剤供給管路17を開閉するための複数の開閉バルブが各第1離型剤供給管路17に対応して設けられ、これらの複数の開閉バルブは、第2離型剤供給管路21の前方端に連通させたマニホールドに接続することができる。これにより、各吐出流路群9には、油系離型剤がそれぞれ対応する各電磁弁により制御されて供給される。これにより、塗布幅の調整が可能である。
【0039】
次に、上記構成における作用を説明する。
【0040】
図1及び図2を参照するに、油系離型剤は液体モータ23により回転駆動される液体ポンプ25により離型剤タンク27から第2離型剤供給管路21を経て3方向電磁弁19へ供給される。油系離型剤がノズル7から金型3の成形面5に向けて噴霧されるときは、前記3方向電磁弁19の作動により、第1離型剤供給管路17の側が開放されると共に離型剤排出管路29の側が閉塞されるので、第2離型剤供給管路21内の油系離型剤は第1離型剤供給管路17を経てノズル7の複数個の各吐出流路群9A,9Bの最終的な流路の各吐出口57から金型3の成形面5に向けて噴霧される。
【0041】
一方、油系離型剤がノズル7から噴霧されないときは、前記3方向電磁弁19の作動により、第1離型剤供給管路17の側が閉塞されると共に離型剤排出管路29の側が開放されるので、第2離型剤供給管路21内の油系離型剤は離型剤排出管路29を経て離型剤タンク27に戻るように排出されて循環される。
【0042】
さらに、図2を参照して、ノズル7から油系離型剤が噴霧されるときの作用を詳しく説明すると、金型3は接地されており、正電位を有する。そのため、負電位の直流高電圧(−60〜−70kV前後)が電源コネクタ45を介してシム41に印加されると、制御装置31により3方向電磁弁19を作動せしめ、油系離型剤が制御装置31により制御されて第1離型剤供給管路17を経て離型剤供給口49へ供給され、この離型剤供給口49から供給される油系離型剤はシム41の吐出流路群9A,9B内を通過する間に瞬時に帯電するので、同一極性の電荷が互いに反発することとなる。この結果、油系離型剤が均一粒径の微粒子として霧化され、ノズルヘッド43の先端から金型3の成形面5に向けて均等に噴霧される。金型3の成形面5における油系離型剤の拡散幅Aは油系離型剤の噴射量に応じて均等に拡がることとなる。
【0043】
したがって、必要最小量の油系離型剤が金型3の成形面5に向けて噴射されたとしても、静電型の離型剤塗布装置1であるので、たとえ金型3の成形面5にどんな凹凸があっても、静電効果により油系離型剤が金型3の凹凸面の細部にまで十分に浸入するために、油系離型剤を成形面5に満遍なく均一に塗布することができ、90%以上の塗着効率を得ることができる。
【0044】
ノズル7は、一対の第1金型3Aと第2金型3Bの間で、図示しないロボットでクランブ部材15で把持された電圧昇圧器11と一体的に昇降移動される。例えば、ノズル7は、油系離型剤がノズルヘッド43の先端から図1において左側の第1金型3Aの成形面5に向けて噴霧されながら下降することにより、第1金型3Aの成形面5に油系離型剤が満遍なく塗布される。
【0045】
次いで、ノズル7は、図1の2点鎖線に示されているように前記ロボットにより電圧昇圧器11と一体的に反転中心を軸として180°反転される。次いで、油系離型剤がノズルヘッド43の先端から図1において右側の第2金型3Bの成形面5に向けて噴霧されながら上昇することにより、第2金型3Bの成形面5に油系離型剤が満遍なく塗布される。以上のように、ノズル7が上下方向に1回だけ往復動作することにより、対向する一対の第1,第2金型3A,3Bの成形面5に対して油系離型剤が効率よく塗布される。
【0046】
以上のことから、この発明の実施の形態の金型の離型剤塗布装置1は、静電型であるので、油系離型剤のコストが水系離型剤の100倍であったとしても、油系離型剤の塗布量は静電効果により水系離型剤の場合の100分の1にも満たない必要最小量で、金型3の成形面5に薄く満遍なく均一に塗布することができるので、水系離型剤と同じかそれ以下のコストで、油系離型剤を塗布できる。しかも、油系離型剤を使用することによって、水系離型剤と比べて環境保全を向上できると共に金型3の成形面5の離型性を向上できる。
【0047】
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことによりその他の態様で実施し得るものである。
【0048】
前述した実施の形態では、ノズル7の両側に射出成形用の金型3を構成する一対の第1,第2金型3A,3Bの成形面5に対して油系離型剤を塗布する例について説明したが、複数対の金型3がノズル7を間に挟んでノズル7の両側に相対向して配置することにも適用できる。例えば、図4は平面図であり、2対の金型3がそれぞれノズル7を間に挟んで予め決められた間隔で相対向して配置されている。この場合、2対の各金型3の成形面5の側がそれぞれ互いに向かい合うように配置されている。
【0049】
また、ノズル7の反転(旋回)角度は、前述した実施の形態の180°に限定されず、任意の角度に反転することができる。また、ノズル7は往復移動方向において金型3から外れた位置で反転することにより、金型3にぶつかることなく所望の位置へ反転できる。図4の例では、ノズル7が上方向へ移動しながら一つの金型3の成形面5に油系離型剤を塗布した後に、90°反転してから、隣りの金型3の成形面5に対して下方向へ移動しながら油系離型剤を塗布する。さらに隣りの金型3にもノズル7が同様の動作を繰り返して90°反転してから油系離型剤を塗布することができる。したがって、別の例として、3対の金型3が配置されている場合は、隣りの金型3までの前記反転角度はほぼ60°程度となる。上記の実施の形態でギヤ式の液体ポンプ25を用いた例で説明したが、加圧式のポンプ装置であっても対応可能である。
【0050】
また、上記の実施の形態では、1個のノズル7を支持部材11の下部に設けた例で説明したが、図1において、金型3Aと金型3Bとの間の隙間が狭かった場合には、ノズル7を旋回させることなく、支持部材の下部の両側にノズル7を設けて、往復動すなわち、上下動に移動させて、金型3A、3Bの成形面を同時に離型剤を塗布するようにすることで、より一層の塗布効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施の形態の金型の離型剤塗布装置を示す全体的なシステム構成図である。
【図2】この発明の実施の形態の金型の離型剤塗布装置の概略的な断面図である。
【図3】(A)はこの発明の実施の形態のシムの一方の表面に吐出流路群が形成された正面図で、(B)はシムを油だめ並びに吐出流路群に沿った断面を拡大した状態の縦断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態の金型の離型剤塗布装置を示す部分的な平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 離型剤塗布装置
3 金型
3A 第1金型
3B 第2金型
5 成形面
7 ノズル
9,9A,9B 吐出流路群
11 電圧昇圧器
13 アダプター
15 フランジ部
17 第1離型剤供給管路(離型剤供給路)
19 3方向電磁弁(開閉バルブ)
21 第2離型剤供給管路
23 液体モータ
25 液体ポンプ
27 離型剤タンク
29 離型剤排出管路
31 制御装置
33 リリーフ弁
35,37 ノズルブレード
39 スリット
41 シム
43 ノズルヘッド
45 電源コネクタ(電極)
47 コネクタピン(電極)
49 離型剤供給口
51A,51B 油だめ
57 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内に前記各金型の成形面に向けて油系離型剤を帯電せしめて吐出すべく高電圧を付与するノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在であると共に前記ノズルが各金型の成形面に向くように前記支持部材を前記金型の長手方向に対してほぼ垂直方向に旋回可能に設けてなることを特徴とする金型の離型剤塗布装置。
【請求項2】
少なくとも一対の金型の成形面側を予め決められた間隔をあけて相対向して配置すると共に、この間隔内に前記各金型の成形面に向けて油系離型剤を帯電せしめて吐出すべく高電圧を付与する各金型の成形面の両側に設けられたノズルを支持する支持部材を配置し、この支持部材を前記金型の長手方向へ往復動自在に設けてなることを特徴とする金型の離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルが、前記金型の成形面に向けて油系離型剤を吐出する吐出流路群を備えた導電材料からなるシムと、このシムに前記各金型の成形面とは逆極性の電圧を印加する電極と、を備え、
前記吐出流路群に連通する離型剤供給路を設け、この離型剤供給路に供給する油系離型剤の供給量を制御する制御装置を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の金型の離型剤塗布装置。
【請求項4】
前記支持部材が、アダプターを介してノズルを支持する電圧昇圧器であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の金型の離型剤塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150693(P2006−150693A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343006(P2004−343006)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(504208474)LUI株式会社 (11)
【Fターム(参考)】