説明

金属粉

本発明は、新規のプレアロイ金属粉、それらの製造方法及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合金粉は、粉末冶金経路での焼結成形体の製造のために多岐にわたる用途を有する。粉末冶金の主な特徴は、相応する粉末状の合金粉又は金属粉がプレスされ、引き続き十分に高い温度で焼結されることにある。この方法は工業的規模で、複雑な成形品の製造のために導入されており、これらの成形品は、さもなければ、費用の大きくかかる最終切削加工を用いてのみ製造されることができるか、又は例えば超硬合金又は重金属の場合の、液相焼結の場合のように、技術的な選択肢が存在しない。
【0002】
一般的に、焼結温度が上昇するにつれて多孔度が低下し、すなわち焼結部材の密度は、その理論値に近づく。故に、強度の理由から、焼結温度はできる限り高く選択され、かつまた特定の相、組成等の調節も、相応して高い焼結温度及び焼結時間を必要とする。しかしながら、他方では、金属マトリックスの硬さは、最適温度を上回ると再び低下する、それというのも、粒成長のために、ミクロ構造の粗大化となるからである(オストワルド熟成)。これらの理由から、できるだけ低い焼結温度で既にそれらの理論密度及び適した相形成を達成する粉が、焼結体にとって有利である。
【0003】
技術水準
例えば、金属合金粉を、一部には有機相の存在で、沈殿させ、引き続き還元することにより製造するという提案も多数ある(国際公開(WO)第97/21 844号、米国特許(US)第5 102 454号明細書、米国特許(US)第5 912 399号明細書、国際公開(WO)第00/23 631号)。
【0004】
本発明の課題は、鉄、コバルト及びモリブデンの金属を少なくとも含有し、焼結材料に対する前記の要件を満たす合金粉、すなわちプレアロイ金属粉(vorlegierte Metallpulver)を提供することである。
【0005】
特定の組成範囲内のFeCoMo基鋼が相応する熱処理の際に、極めて高い硬さ及び強さを可能にし、かつ特定の用途には、炭化物により時効硬化される鋼に対する代替品である金属間化合物(FeCo)7Mo6を形成することは、久しい以前から知られている(Koester,W.: Mechanische und magnetische Ausscheidungshaertung der Eisen-Kobalt-Wolfram- und Eisen-Kobalt-Molybdaenlegierungen, Archiv fuer das Eisenhuettenwesen, 1932, 1号/7月, pp. 17-23)。不活性雰囲気下での前記成分の溶融及びキャスティングによるそのような鋼の製造は、しかし費用がかかり、かつこれまで工業的実施に採用されていなかった。
【0006】
近頃、個々の粉の混合によりそのようなFeCoMo鋼を粉末冶金経路で製造し、かつそれらの性質を試験することが成果をあげて研究された(Danninger,H. et al: Heat Treatment and Properties of precitation hardened carbon-free PM Tool Steels, Powder Metallurgy Progress, Vol.5 (2005), No.2, pp. 92-103)。この場合に、不利であるのは、金属間化合物の形成が、金属相互の均一な拡散及びこれらの相のその後の形成及び所望の性質のキャリアとしてのミクロ構造中で微細に分散した分布を達成するために、高温でかつ時間を浪費する複数の熱処理を必要とすることである。
【0007】
商業化の成功は、そのような焼結部材の製造が是認できるコストで実現されることができるかどうかに依存する。故に、決定的に有利であるのは、全ての成分を均一なミクロ構造を有する均質な形で含有し、かつ等方性の性質を有し、かつ費用集約的な温度処理を回避する、極めて焼結活性な粉であろう。
【0008】
発明の説明
これまで公知の粉の場合に、これらが前記成分を不均質な分布で含有し、ひいては、前記成分の均質化を拡散により達成するために高温を必要とすることが特に不利である。そのうえ、焼結挙動は、加熱速度に依存しており(急速加熱は、より高い最終温度又はより長い保持時間を必要とする)、かつ焼結体は、不十分な焼結密度を達成するに過ぎず、すなわち相応する多孔度を有する。
【0009】
意外にも、湿式冶金により製造されるFeCoマトリックス中にモリブデンが存在する場合に、空気中でのか焼の際に既に複合酸化物、例えばCoMoO4及びFeMoO4が生じ、これらの複合酸化物から、温和な条件での水素下でのその後の還元の際に、極めて微粒状でかつ高度に焼結できる金属粉が形成され、これらの金属粉が溶解された均質な形でMoを含有することが見出された。意外なことに、こうして製造されたFeCoMo合金粉は、技術水準とは、それらの焼結挙動が、焼結の際の加熱速度からほぼ独立しており(図5)、かつ機械的に混合された粉の使用の場合よりも、比較できる焼結条件下に、明らかにより高い焼結密度、ひいてはより低い多孔度が達成される点で相違する。有利な焼結挙動に加え、そのうえ目立ってより高い硬さも達成される(第2表)。
【0010】
本発明の対象は、まず、金属塩水溶液を沈殿剤、好ましくはカルボン酸溶液と混合し、沈殿生成物を母液から分離し、かつ沈殿生成物を金属に還元することによる、プレアロイ金属粉の製造方法であり、その際に有利には前記沈殿剤が化学量論的に過剰量でかつ濃縮された水溶液として使用される。前記金属塩溶液及び/又は前記沈殿剤の水溶液は、付加的に固体化合物を分散して含有していてよい。沈殿剤として、カルボン酸、水酸化物、炭酸塩又は塩基性炭酸塩の水溶液又は水性懸濁液が使用されることができる。
【0011】
その場合に、前記金属塩溶液は前記沈殿剤と混合されることができるが、しかしながら、有利には、金属塩溶液は沈殿剤へ添加される。
【0012】
好ましくは、沈殿生成物は、母液からの分離後に、水で洗浄され、かつ乾燥される。
【0013】
沈殿生成物の還元は好ましくは含水素雰囲気中で、600℃〜850℃の温度で行われる。還元は、間接加熱される回転管炉中又はトンネルキルン(Durchschuboefen)中で行われることができる。還元を実施するさらなる可能性は、当業者にはたやすく、よく用いられており、例えば多段式炉(Etagenoefen)中又は流動層炉中での実施である。これは意外である、それというのも、Mo酸化物が、水素を用いて1000℃を上回る温度ではじめて、十分に低い酸素含量を有し、粉末冶金によるさらなる加工及び焼結に必要であるMo金属粉に、還元されることができるからである。
【0014】
これらの相対的に高い還元温度の場合に、焼結活性を低下させるより激しい粒の粗大化が必然的に生じる。
【0015】
本発明の好ましい一実施態様によれば、湿った沈殿生成物又は乾燥した沈殿生成物は、還元の前に含酸素雰囲気中で250℃〜600℃の温度でか焼される。か焼は、一方では、多結晶粒子もしくはアグロメレートからなる沈殿生成物が、デクレピテーション(Dekrepitation)による(カルボン酸基の)分解の際に遊離されたガスにより細かくなるので、その後の拡散制御された気相反応(還元)のために、より大きな表面積及びより短い拡散経路が利用可能であり、かつより微粒状の最終生成物を得ることをもたらす。他方では、かなり低下された多孔度を有するプレアロイ金属粉が得られる。沈殿生成物[(複合)金属カルボン酸塩]をプレアロイ金属粉にさらに加工する際に、これらの粒子のかなりの体積減少がさらに生じ、この減少は細孔の形成をもたらす。含酸素雰囲気中での中間に接続されたか焼工程により、沈殿生成物は、まず最初に、(複合)金属酸化物へ変換され、かつ熱処理されるので、予備緻密化は、空孔クラスター(Fehlstellenklastern)及びミクロ孔の治癒(Ausheilung)下に行われる。含水素雰囲気中でのその後の還元の際に、それに応じてわずかにのみ、酸化物から金属への体積収縮が克服されることができる。中間に接続されたか焼段階により、それに応じて、その都度中間生成物結晶の構造的な安定化下に行われる段階的な体積収縮が達成される。
【0016】
適した沈殿剤は、カルボン酸、しかしまた、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、有利にナトリウム又はカリウムの、水酸化物、炭酸塩又は塩基性炭酸塩である。これらは、特に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、極めて特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0017】
カルボン酸として、脂肪族又は芳香族の、飽和又は不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸、特に炭素原子1〜8個を有するものが適している。それらの還元作用に基づいて、ギ酸、シュウ酸、アクリル酸及びクロトン酸が好ましく、かつそれらの入手可能性のために、特にギ酸及びシュウ酸、極めて特に好ましくはシュウ酸が使用される。カルボン酸は、水溶液又は懸濁液として、しかしまたカルボン酸が液体である場合には純粋な形で、沈殿剤として使用されることができる。
【0018】
過剰量の還元性カルボン酸は、収率の低下をまねきうるFe(III)イオンの形成を防止する。
【0019】
好ましくは、カルボン酸は、金属を基準として1.1〜1.6倍の化学量論的に過剰量で使用される。1.2〜1.5倍の過剰量が特に好ましい。
【0020】
本発明のさらに好ましい一実施態様によれば、沈殿剤として、カルボン酸溶液が、溶けていないカルボン酸を(懸濁液として)含有する懸濁液として使用される。好ましくは使用されるカルボン酸懸濁液は、溶けていないカルボン酸の貯蔵物(Depot)を含有し、これから、沈殿により溶液から奪われたカルボン酸が後供給されるので、全沈殿反応の間に高濃度のカルボン酸が母液中で維持される。好ましくは、母液中の溶解されたカルボン酸濃度は沈殿反応の終了時になお、水中のカルボン酸の飽和濃度の少なくとも10%、特に水中のカルボン酸の飽和濃度の20%であるべきである。これにより、完全でかつ大体において同じように経過する金属塩の沈殿が保証される。プレアロイ粉の合金組成は、従って金属塩溶液の組成の選択によって確定されることができる。
【0021】
適した他の沈殿剤は、水酸化物、炭酸塩又は塩基性炭酸塩である。これらは、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物であり、有利には水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。これらは、カルボン酸に類似して、それらの使用に関しても、カルボン酸について上記されたように溶液又は懸濁液の形で使用されることができる。
【0022】
沈殿剤は、確かに金属塩溶液に添加されることができるが、しかしながら有利には沈殿剤の溶液又は懸濁液が装入され、かつ金属塩溶液が添加される。
【0023】
本発明による方法の特に好ましい実施態様によれば、カルボン酸懸濁液への金属塩溶液の添加は、徐々に、しかも、母液中の溶解されたカルボン酸含量が、金属塩溶液の供給中に、水へのカルボン酸の溶解度の50%の値を下回らないように、行われる。殊に好ましくは、金属塩溶液の添加は、懸濁されたカルボン酸が溶解するまで、溶解されたカルボン酸の濃度が水への溶解度の80%を下回らないように徐々に行われる。カルボン酸懸濁液への金属塩溶液の添加速度は、従って、金属塩溶液と共に供給される水による希釈による濃度低下を含め、母液からのカルボン酸の剥奪が、溶けていない懸濁されたカルボン酸の溶解により補償されるように行われる。
【0024】
金属塩溶液を製造するための金属塩として、全ての水溶性化合物が使用されることができる。好ましくは、金属の塩化物又は硫酸塩が使用されるので、その都度、金属塩化物溶液もしくは金属硫酸塩溶液が使用される。塩化物及び硫酸塩も、例えば塩化鉄及び硫酸コバルトが金属塩溶液の製造に使用されることによって、混合されて使用されることができる。好ましくは、金属塩溶液の濃度は、1lあたり金属約1.6〜2.8molである。
【0025】
好ましくは、金属塩溶液は、全金属含量を基準として、鉄20質量%〜90質量%の含量、並びにコバルト及びモリブデンの元素を含有する。特に好ましくは、金属塩溶液中の鉄含量は、それぞれ全金属含量を基準として、25質量%〜85質量%、極めて特に好ましくは30質量%超〜70質量%である。
【0026】
さらに好ましくは、金属塩溶液は、全金属含量を基準として、コバルト65質量%まで、有利に5質量%〜50質量%、特に10質量%〜30質量%を含有する。金属塩溶液のモリブデン含量は、3質量%〜60質量%、好ましくは4質量%〜50質量%、特に5質量%〜40質量%、特に有利に6質量%〜35質量%、9質量%〜30質量%、12質量%〜20質量%又は14質量%〜19質量%である。
【0027】
モリブデン塩として、有利には二酸化モリブデンMoO2が使用される。MoO2は不溶性であるので、例えば金属塩溶液中に懸濁されることができる。しかしながら同じように、沈殿剤の溶液又は懸濁液中に懸濁されることができ、これに好ましくは金属塩溶液が前記のように添加される。
【0028】
金属塩の沈殿に関して、濃縮されたカルボン酸溶液は、"活性1"を有し、半分のみ濃縮されたカルボン酸溶液は、"活性0.5"を有する。それに応じて、好ましくは、母液の活性は、金属塩溶液の添加中に、0.8未満に低下すべきではない。
【0029】
例えば、好ましくは使用されるシュウ酸の水への溶解度は、水lあたり約1.1molであり(室温)、(結晶水2molを有する)シュウ酸138gに相当する。本発明による好ましい方法によれば、シュウ酸は、水1lあたりシュウ酸2.3〜4.5molを含有する水性懸濁液として、装入されるべきである。この懸濁液は、水1lあたり溶けていないシュウ酸を約1.2〜3.4mol含有する。金属塩溶液を導通し、かつ沈殿が終了した後に、母液中のシュウ酸含量は依然として15〜30g/lであるべきである。金属塩溶液をシュウ酸懸濁液へ導通する間に、沈殿のために消費されたシュウ酸は、懸濁されたシュウ酸の溶解により絶えず置き換えられる。母液の均質化のために、この母液は絶えず撹拌される。好ましい実施態様によれば、金属塩溶液の添加は、母液中のシュウ酸濃度が、添加中に、母液1lあたり69g未満、特に好ましくは110g未満に低下しないように徐々に行われる。これにより、金属塩溶液の添加中に、十分に高い過飽和が絶えず達成されることがもたらされ、この過飽和は、核生成のため、すなわちさらなる沈殿粒子の発生のために十分である。これにより、一方では、相応して小さい粒度のみをもたらす高い核生成速度が保証され、かつ他方では、母液中に存在している低い金属イオン濃度に基づいて、これらの粒子のアグロメレーションは部分溶解(Anloesen)により大体において防止される。
【0030】
沈殿の間の本発明によれば好ましくは高いカルボン酸濃度は、さらに、沈殿生成物が、金属の相対含量に関して、金属塩溶液と大体において同じ組成を有し、すなわち、その組成に関して均質な沈殿生成物、ひいては合金金属粉が生じることをもたらす。
【0031】
さらに、本発明の対象は、鉄、コバルト及びモリブデンの元素を含有し、かつASTM B330 (FSSS)による8μm未満、有利に0.1μm〜8μm、特に0.5μm〜3μmの平均粒度を有利には有するプレアロイ金属粉である。
【0032】
プレアロイ粉のBET表面積は、一般的に0.5m2/gを上回り、有利に0.7m2/g〜5m2/g、特に1m2/g〜3m2/gである。
【0033】
これらの合金粉は、全金属含量を基準として、鉄20質量%〜90質量%、好ましくは鉄25質量%〜85質量%及び特に好ましくは30質量%〜70質量%を含有する。さらに好ましくは、プレアロイ金属粉は、Co 65質量%まで、有利に5質量%〜50質量%、特に10質量%〜30質量%を含有する。金属粉のモリブデン含量は、3質量%〜60質量%、好ましくは4質量%〜50質量%、特に5質量%〜40質量%、特に有利に6又は7質量%〜35質量%、9質量%〜30質量%、12質量%〜20質量%又は14質量%〜19質量%である。これらの合金粉の別の成分はなお不可避の不純物でありうる。
【0034】
故に、本発明は、次のものを含有する合金粉にも関する:
鉄20質量%〜90質量%、
コバルト65質量%まで、
モリブデン3質量%〜60質量%;
又は
鉄20質量%〜90質量%、
コバルト65質量%まで、
モリブデン9質量%〜30質量%;
又は
鉄20質量%〜90質量%、
コバルト65質量%まで、
モリブデン12質量%〜20質量%;
又は
鉄20質量%〜90質量%、
コバルト65質量%まで、
モリブデン14質量%〜19質量%。
【0035】
有利には、次のものを含有する合金粉である:
鉄25質量%〜85質量%、
コバルト5質量%〜50質量%、
モリブデン4質量%〜50質量%;
又は
鉄25質量%〜85質量%、
コバルト5質量%〜50質量%、
モリブデン9質量%〜30質量%;
又は
鉄25質量%〜85質量%、
コバルト5質量%〜50質量%、
モリブデン12質量%〜20質量%;
又は
鉄25質量%〜85質量%、
コバルト5質量%〜50質量%、
モリブデン14質量%〜19質量%。
【0036】
特に有利には、次のものを含有する合金粉である:
鉄30質量%〜70質量%、
コバルト10質量%〜30質量%、
モリブデン6質量%〜35質量%;
又は
鉄30質量%〜70質量%、
コバルト10質量%〜30質量%、
モリブデン9質量%〜30質量%;
又は
鉄30質量%〜70質量%、
コバルト10質量%〜30質量%、
モリブデン12質量%〜20質量%;
又は
鉄30質量%〜70質量%、
コバルト10質量%〜30質量%、
モリブデン14質量%〜19質量%。
【0037】
極めて特に有利には、次のものを含有する合金粉である:
鉄45質量%〜70質量%、
コバルト16質量%〜26質量%、
モリブデン10質量%〜38質量%;
又は
鉄45質量%〜60質量%、
コバルト20質量%〜26質量%、
モリブデン15質量%〜25質量%。
【0038】
さらに、極めて特に有利であるのは、鉄含量が50質量%を上回る場合に、モリブデン含量が25質量%未満である合金粉;及び/又は
モリブデン含量及び鉄含量の総和が90質量%未満である場合に、コバルト含量が10質量%〜30質量%である合金粉である。
【0039】
有利に、この合金粉の残りの成分は不可避の不純物である。
【0040】
第1表による組成の合金粉が特に有利である。
【0041】
第1表:本発明によるプレアロイ金属粉の有利な組成
【表1】

【0042】
本発明によるプレアロイ粉のX線回折図形は、純粋に機械的に混合された元素粉から製造されるものとは、明らかに相違する。有利には、2シータ=40.5°でのモリブデン反射が存在しない(CuKα線)。有利には、このX線回折図形は、2シータ=37.5°で(FeCo)7Mo6の反射を有する。
【0043】
焼結後に既に、本発明によるプレアロイ金属粉は、同じ化学組成の金属粉混合物よりも高い硬さを達成する(第2表参照)。プレアロイ金属粉から得られる焼結体は、理論密度の少なくとも97%、有利に98.5%超の密度、しかし特に99%超の値を有する。これらの値は、粉末冶金法の場合に、まれにのみ達成されることができる。プレアロイ粉の焼結により得られる成形品は、焼結後に既に、50HRCを上回り、特に55HRCを上回り、かつ極めて特に好ましくは60HRCを上回る高いロックウェル硬さを有する。その後の熱処理("焼戻し(Anlassen)")に応じて、一般的に60HRCを上回る特に高いロックウェル硬さが達成される。達成可能な高い焼結密度のために、これらは直ちに最終形に近い形で焼結されることができるので、後切削加工が不要であるか又は僅かにのみ必要である。本発明によるプレアロイ金属粉は、これらが粉砕により発生される破壊面を有しないことにより特徴付けられている。これらは、還元直後にこの粒度で得ることができる、すなわち、これらの一次粒の微粒度は、化学的な製造方法により達成され、しかしながら粉砕、分級、ふるい分け等の場合のような機械的な過程によっては達成されない。本発明によるプレアロイ金属粉は、0.04質量%未満、好ましくは0.02質量%未満及び極めて特に好ましくは0.005質量%未満の低い炭素含量を有する。これは、沈殿と還元との間に実施される含酸素雰囲気中での温度処理に帰因されうるものであり、その際に沈殿後に存在している有機炭素が除去される。好ましいプレアロイ金属粉は、さらに、1質量%未満の酸素含量を含有する。
【0044】
本発明による粉の組成は、しかし、鉄、コバルト及びモリブデンの元素に限定されていない。また、有利には、本発明による合金粉がこれらの金属のみ及び不可避の不純物を含有する場合にも、追加的に、タングステン、銅、ニッケル、バナジウム、チタン、タンタル、ニオブ、マンガン及びアルミニウムからなる群から選択されるさらに別の金属Mが含まれていてよい。有利には、タングステン又は銅は、各25質量%までの量で含まれていてよい。有利には、銅は10質量%まで、特に6.5〜10質量%の量で含まれている。また、ニッケルは、10質量%まで、有利に1質量%〜10質量%、特に6.5〜10質量%の量で含まれていてよく、特に有利には、本発明による合金粉は、不可避の不純物を除き、ニッケルを含有しない。これらの合金粉の別の成分はなお不可避の不純物でありうる。
【0045】
さらに、本発明による合金粉は、バナジウム、チタン、タンタル、ニオブ、マンガン及びアルミニウムを含有していてよい。有利には、これらの添加剤は、最大各3質量%、特に0.5質量%〜3質量%まで含まれている。それゆえ、機械的性質、熱的性質又はまた電気的性質の意図的な調節が可能である。しかしながら、有利には、この合金粉は、バナジウム、チタン、タンタル、ニオブ、マンガン及びアルミニウムからなる群から選択される金属M不含である。有利に、この合金粉の残りの成分は不可避の不純物である。
【0046】
プレアロイ金属粉は、構造部品の粉末冶金による製造のために卓越して使用可能である。故に、本発明は、本発明によるプレアロイ金属粉の焼結により得ることができる成形品にも関する。これらの成形品は、耐高温性構造部品(500℃を上回る耐久温度での機械的応力)を必要とする用途に適しており、かつ高い高温硬さ(600℃を上回る温度でも)、高いクリープ抵抗、良好な熱伝導及び良好な化学的腐食耐性により特徴付けられる。故に、これらの成形品は、特にオーステナイト系鋼用の切削工具として又は内燃機関、タービン、ターボチャージャー、ジェットエンジン等の部品に好適である。
【0047】
以下の図は、本発明による合金粉の性質を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】例5による機械的粉混合物のX線回折図形。
【図2】例4による本発明による粉のX線回折図形。
【図3】機械的粉混合物及び本発明による合金粉が焼結する際の熱膨張測定の結果を比較する図。
【図4】加熱速度に依存した、例5による機械的粉混合物が焼結する際の熱膨張測定の結果を示す図。
【図5】加熱速度に依存した、例4による本発明による合金粉が焼結する際の熱膨張測定の結果を示す図。
【図6】繰り返し加熱する際の例5による機械的粉混合物及び例4による本発明による合金粉の焼結挙動を比較する図。
【図7】例5による機械的粉混合物及び例4による本発明による合金粉を繰り返し冷却する際の挙動を比較する図。
【図8】例5による機械的粉混合物及び例4による本発明による合金粉からの焼結体の残留多孔度を比較する図。
【図9】例6、7及び8による合金粉の高温強さを比較する図、その際に改善された高温硬さは、6又は7質量%を上回るモリブデン含量で確認可能である。
【0049】
発明を実施するための形態
本発明は、以下に、実施例に基づいて説明される。
【0050】
例1
撹拌容器中に脱イオン水90Lを装入し、絶えず撹拌しながら、結晶水4molを有する塩化鉄(II)(FeCl2・H2O) 33.95kg及び結晶水7molを有する硫酸コバルト(II)(CoSO4・7H2O) 17.82kgをついで溶解させ、均質化させた。それに並行して、第二の撹拌容器中に脱イオン水114Lを装入し、結晶水2molを有するシュウ酸{(COOH)2・2H2O}32.51kg及び二酸化モリブデン3kg(MoO2)をその中に溶解させるかもしくは分散させ、かつ強力に撹拌しながら均質化させた。その後、FeCo混合塩溶液を、計量供給ポンプを用いて、約2L/minの体積流量で、シュウ酸及び二酸化モリブデンの装入物へポンプ輸送した。完全に沈殿した後に、沈殿懸濁液をさらに30min、平衡の調節のために撹拌し、引き続き、母液からの沈殿物の分離のために、ヌッチェによりろ過し、脱イオン水で塩化物イオン及び硫酸イオン不含に洗浄した。
【0051】
ヌッチェ上の湿った(nutschfeuchte)沈殿生成物を、トンネルキルン中で約550℃で向流の空気でか焼し、その後方のトンネルキルン中で750℃で水素雰囲気中で金属粉に還元した。分析試験により次の値が得られた:Fe 58.38質量%/Co 24.65質量%/Mo 15.27質量%/酸素0.63質量%。炭素含量は17ppmであった。FSSS (ASTM B 330)を用いて測定された粒度は0.85μmと決定され、かつ比表面積(ASTM D 4567)は1.46m2/gと測定された。
【0052】
例2
撹拌容器中に、脱イオン水93Lを装入し、絶えず撹拌しながら、結晶水2molを有する塩化鉄(II)(FeCl2・2H2O) 32.79kg及び結晶水7molを有する硫酸Co(II)(CoSO4・7H2O) 12.83kgをその中に溶解させた。それに並行して、第二の撹拌容器中に、脱イオン水120Lを装入し、結晶水2molを有するシュウ酸{(COOH)2・2H2O}34.29kg及び二酸化モリブデン2.40kgをその中に溶解させるかもしくは分散させた。その後、FeCo混合塩溶液を、計量供給ポンプを用いて、約2L/minの体積流量で、シュウ酸及び二酸化モリブデンの装入物へポンプ輸送した。完全に沈殿した後に、沈殿懸濁液をさらに30min、平衡の調節のために撹拌し、ついで、母液からの沈殿物の分離のために、ヌッチェによりろ過し、脱イオン水で塩化物イオン及び硫酸イオン不含に洗浄した。
【0053】
ヌッチェ上の湿った沈殿生成物を、トンネルキルン中で約550℃で向流の空気でか焼し、その後方のトンネルキルン中で750℃で水素雰囲気中で金属粉に還元した。分析試験の際に次の値が測定された:Fe 69.11質量%/Co 17.73質量%/Mo 12.21質量%/酸素0.46質量%。炭素含量は21ppmであった。FSSS (ASTM B 330)を用いて測定された粒度は0.97μmと決定され、比表面積(ASTM D 4567)は1.08m2/gであった。
【0054】
例3
撹拌容器中に、脱イオン水20.8Lを装入し、絶えず撹拌しながら、塩化Fe(II)(FeCl2・2H2O) 5.91kg、硫酸Co(II)(CoSO4・7H2O) 2.33kg及び硫酸Cu(CuSO4・5H2O) 1.09kgをその中に溶解させた。澄明な溶液中に、二酸化モリブデン436gを、強力に撹拌しながら、均質に分散させた。並行して、第二の撹拌容器中に、脱イオン水23.9Lを装入し、シュウ酸{(COOH)2・2H2O}6.83kgをその中に溶解させるかもしくは懸濁させた。その後、分散されたMoO2を有するFeCoCu混合塩溶液を、計量供給ポンプを用いて、シュウ酸の装入物へポンプ輸送した。完全に沈殿した後に、沈殿懸濁液をさらに30min撹拌し、ついでヌッチェによりろ過し、脱イオン水で塩化物イオン及び硫酸イオン不含に洗浄した。
【0055】
ヌッチェ上の湿った沈殿生成物を、チャンバ炉中で空気の存在で550℃でか焼し、第二のチャンバ炉中でH2雰囲気中で725℃で金属粉に還元した。
【0056】
分析試験の際に次の値が測定された:Fe 61.57質量%/Co 16.34質量%/Mo 11.30質量%/Cu 9.98質量%/酸素0.647質量%。炭素含量は14ppmであった。粒度(ASTM B 330)は1.35μmと測定され、かつ比表面積(ASTM D 4567)は1.41m2/gと測定された。
【0057】
例4
例1の方法及び条件に従って、Fe 58.02質量%/Co 24.64質量%/Mo 15.03質量%/酸素0.774質量%の組成及び炭素26ppmの残存含量を有する金属粉を製造した。粒度は0.67μm、及び比表面積は2.15m2/gと測定された。このプレアロイ粉を、以下に"本発明による粉"と呼ぶ。
【0058】
比較例5
性質の比較のために、関与する元素の個々の粉から、大体において同じ組成の機械的粉混合物を製造した。そのためには、BASFからのカルボニル鉄粉1800g(5〜9μm)、Umicoreからのコバルト金属粉750g、H.C.StarckからのグレードSMS(0.9μm)及びモリブデン金属粉450g(1.3μm)をTurbulaミキサー中でボールを添加して60min、強力に混合した。生じた粉混合物を、以下に"機械的粉混合物"と呼ぶ。
【0059】
分析対照(analytische Kontrolle)により、Fe 59.94質量%/Co 24.80質量%/Mo 14.46%質量%/酸素0.61質量%及び炭素141ppmが得られた。粒度は1.88μm(FSSS)、及び比表面積は0.78m2/gと測定された。
【0060】
比較すると、例4及び5による粉は、極めて異なるX線回折図形を示す。例5による機械的粉混合物は、成分Fe、Co及びMoについて明らかな別個の反射を示し(図1参照)、これは例4によるプレアロイ型の本発明による粉の場合に事実上もはや検出不能であり(図2);明らかに、成分Co及びMoは、Feマトリックス中に溶解されている。
【0061】
機械的粉混合物及び本発明による粉の異なる構造は、異なる焼結挙動をもたらし、この挙動は熱膨張測定分析に示される、図3参照。試験のために、圧粉体(Gruenkoerper)を、221MPaでコールドアイソスタチックプレスにより製造し、Netzsch Geraetebau GmbH社の膨張計402 E中で水素雰囲気下に焼結させた。
【0062】
機械的粉混合物は、複数の収縮段階(長さの変化速度参照 − 破線)を示し、これは緻密でかつミクロ構造に最適化された構造部品の焼結による造形を困難にする。例4による本発明による粉は、約900℃でのFeCoマトリックスのα/γ−相転移(体心立方から面心立方への結晶格子の転移)に加えて、極めてシャープで際立った、1000〜1200℃での1つのみの収縮段階を示す。この相転移は、機械的粉混合物の場合に体積の拡大を伴うが、本発明による粉の場合にこれに反して収縮を伴って進行する。
【0063】
例5による機械的粉混合物の焼結挙動は、加熱速度に依存している、図4参照。より急速な加熱速度は、収縮をより高い温度の方向にシフトさせる。意外なことに、例4による本発明による粉の収縮は、それに反して加熱速度から事実上独立している、図5参照。
【0064】
異なる焼結挙動は、度重なる加熱(図6)及び冷却(図7)の場合にも得られたままであり、従って、それぞれの粉の再現可能な性質である。
【0065】
異なる加熱速度及び均一な冷却速度での熱膨張検査からの焼結錠剤を、焼結密度、多孔度及び硬さについて調べた。結果は、第2表にまとめられている。意外なことに、本発明による粉は、明らかにより低い圧粉密度(Gruendichten)にも関わらず、プレスした後に、例5による機械的粉混合物と比較して、系統的により高い焼結密度を、相応してより低い多孔度及び明らかにより高い硬さと共に達成する。例5による機械的粉混合物及び例4による本発明による粉についての焼結後に残っている残留多孔度を図8に示す(加熱速度それぞれ10K/min)。
【0066】
【表2】

【0067】
例6、7及び8
例1〜4に類似して、合金粉を、例1による方法に従い、シュウ酸塩沈殿、か焼及び水素下での還元を経て製造し、それらの組成は第3表中に記載されており、かつその際に全ての合金元素はプレアロイの形で存在している。モリブデン含分を、塩溶液中に懸濁された二酸化モリブデンとしてシュウ酸塩沈殿の間に導入した。
【0068】
合金粉を、"製造されたままで(as produced)"その後に長方形の棒にプレスし、焼結させた。
【0069】
圧粉体を、一軸で374MPaのプレス圧で製造した。その際に、約5g/cm3の圧粉密度が達成され、これは理論密度の約60%に相当する。
【0070】
ベルト炉中で水素下に焼結させ、焼結時間は、予熱時間及び冷却時間を含めて全部で8hであった。焼結温度及び焼結結果は、第4表にまとめられている。
【0071】
第3表:製造された合金の組成
【表3】

【0072】
第4表:焼結温度及び焼結結果
【表4】

【0073】
高温硬さを測定するために、約8mmの幅を有する棒を使用した。焼結棒での高温硬さの試験を、較正されたミクロ−マクロ−硬さ試験系を用いるビッカース硬さHV5(荷重5kgでのビッカース硬さ)の方法により行った。測定の前に、試料を平面平行に研削し、かつ測定面を研磨した。硬さを、22℃(室温)、500℃、700℃及び900℃で測定した。規定された温度での試料の保持時間は10minであり、圧入(Eindrucksetzen)の際の保持時間は20秒であり、それぞれ5つの測定を行った。第5表及び図9は、達成された結果を示し、sは、標準偏差を表す。6質量%を上回るモリブデン含量を有する材料が、相応する製造条件及び測定条件下に明らかにより高いビッカース硬さHV5を室温から700℃までの温度範囲内で有することが明らかにわかる;例6の試料の硬さは、例7及び8の試料の硬さのほぼ2倍である(例7及び8における84及び82に比較して、例6における159)。
【0074】
第5表:合金の高温硬さ
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、コバルト及びモリブデンの元素を含有する、プレアロイ金属粉。
【請求項2】
鉄20質量%〜90質量%、コバルト65質量%まで及びモリブデン3質量%〜60質量%を含有する、請求項1記載のプレアロイ金属粉。
【請求項3】
ASTM B 330による8μm未満の平均粒度及びBETによる0.5m2/gを上回る比表面積を有する、請求項1又は2記載のプレアロイ金属粉。
【請求項4】
0.02質量%未満の炭素含量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉。
【請求項5】
モリブデン及び/又は銅25質量%まで、特に6.5〜10質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉。
【請求項6】
ニッケル1質量%〜10質量%を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉。
【請求項7】
チタン、ニオブ、バナジウム、タンタル、マンガン及びアルミニウムからなる群から選択される金属を各3質量%まで含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉。
【請求項8】
金属塩水溶液を沈殿剤と混合し、沈殿生成物を母液から分離し、かつ沈殿生成物を金属に還元することによって、鉄、コバルト及びモリブデンの元素を含有するプレアロイ金属粉を製造する方法。
【請求項9】
沈殿生成物を、金属合金粉へ還元する前に、200℃〜1000℃で含酸素雰囲気中での熱分解にかける、請求項8記載の方法。
【請求項10】
沈殿剤として飽和カルボン酸水溶液を使用する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
カルボン酸水溶液が、固体カルボン酸を、母液が沈殿の終了後に、金属塩不含の水溶液を基準として、なお少なくとも10%飽和している量で含有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
金属塩水溶液を、装入されたカルボン酸水溶液中へ導通する、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
金属塩水溶液及びカルボン酸を沈殿反応器中へ連続的に導通し、かつ沈殿生成物を含有する母液を連続的に除去する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
構造部品を粉末冶金により製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉の使用。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項記載のプレアロイ金属粉の焼結により得ることができる成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−511782(P2010−511782A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538702(P2009−538702)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062940
【国際公開番号】WO2008/065136
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】