説明

金属部品をプラスチック、ガラス、および金属に貼り付けるための延伸熱可塑性物質ならびにその製造方法

本発明は、熱活性可能な熱可塑性物質をベースとする延伸された平坦な付着剤の製造方法、ならびにこれに対応する延伸された付着剤、ならびに携帯型家庭用電子機器製品のために金属部品をプラスチックに貼り付けるためのこの付着剤の使用に関する。本発明によればこの使用は、金属部品をプラスチック部品に固定するために、特殊な熱可塑性で熱活性可能なフォイルを利用することに依拠している。特殊処理された熱可塑性物質の使用および組込みにより、貼付加工および貼付特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱活性可能な熱可塑性物質をベースとする延伸された平坦な付着剤の製造方法、ならびにこれに対応する延伸された付着剤、ならびに携帯型家庭用電子機器製品のために金属部品をプラスチックに貼り付けるためのこの付着剤の使用に関する。本発明によればこの使用は、金属部品をプラスチック部品に固定するために、特殊な熱可塑性で熱活性可能なフィルムを利用することに依拠している。特殊処理された熱可塑性物質の使用および投入により、貼付加工および貼付特性が改善される。
【背景技術】
【0002】
金属部品をプラスチックに貼り付けるには、一般的に両面感圧接着テープが用いられる。このために必要な接着力は、金属部材をプラスチックに固定および固着するのに十分である。金属としては、鋼、特殊鋼、およびクロム処理された鋼を用いることが好ましい。プラスチックとしては、例えばPVC、ABS、PC、PPA、PA、またはこれらプラスチックをベースとするブレンドが用いられる。しかしながら携帯型家庭用電子機器製品に関しては絶えず要求が上がっている。一方ではこれらの製品がますます小型になっており、したがって貼付面積も小さくなっている。他方で携帯型製品は比較的大きな温度範囲で使用される可能性があり、加えて機械的負荷、例えば衝突、落下などに曝される可能性があるので、貼付はさらなる要求を満たさなければならない。この前提条件は、特にプラスチックへの金属の貼付に関して問題となる。プラスチックは落下の際にエネルギーの一部を吸収することができ、一方で金属は全く変形しない。この場合、接着テープがエネルギーの大部分を吸収しなければならない。これは、熱活性可能で、活性化後に特に高い接着力を形成し得るフィルムを用いることで特に効率的に行うことができる。さらに、金属とプラスチックの異なる膨張係数が問題である。つまり急速な温度変化の際には、プラスチック部材と金属部材の間に応力が生じる可能性がある。
【0003】
熱活性可能な接着剤は、a)熱可塑性で熱活性可能なフィルムとb)反応性で熱活性可能なフィルムの2つのカテゴリーに区分することができる。
【0004】
ただし既知の熱可塑性の系は欠点も有している。例えば携帯電話が床に落下したときに高い衝撃強度を達成するため、貼付には比較的軟らかくて弾性の熱可塑性物質が用いられる。これにはしかし欠点も結びついている。この軟らかさの故にこの熱可塑性物質は型抜きが比較的困難である。加えて大多数の熱可塑性のコポリエステルまたはコポリアミドは、比較的大量の湿気を吸収するという欠点を有している。湿気は貼付中に常に、例えば貼付性を弱める小泡形成のような欠点を引き起こす。熱可塑性物質のさらなる欠点は貼付工程中にも示される。熱活性可能なフィルムの形態は、加熱および温度活性化中に粘性が明らかに低下するので、熱貼付ステップ中に滲出(ausquetschen)する傾向が比較的強い。
【0005】
したがって、熱活性可能なフィルムのこの挙動を改善する要望がある。特に、前述の欠点を有さない、または存在する問題を改善する熱可塑性で熱活性可能な、特にフィルムの形の付着剤に対する要望がある。さらに、これに対応する改善された熱可塑性付着剤の製造方法に対する要望がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」Donatas Satas著(van Nostrand、1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術を考慮して本発明の課題は、貼付加工工程中の滲出挙動(Ausquetschverhalten)が低下しており、貼付前の貯蔵中または貯蔵形態での水分吸収性が低下しており、したがって熱貼付中の接着継目内での気泡形成が減少し、および/または阻止され得る貼付用の熱可塑性で熱活性可能なフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項1、5の提示に対応し、ならびに他の独立請求項9、12、13、および14に基づいて解決される。好ましい実施形態は、従属請求項および詳細には明細書で説明されている。
【0009】
本発明によればこの課題は、
a)熱活性可能な熱可塑性物質を押出成形または押出コーティングするステップ、
b)熱活性可能な熱可塑性薄膜を機械方向に少なくとも3倍分延伸するステップ、ただしその際、延伸温度が押出温度より好ましくは少なくとも30%低く、延伸された熱可塑性付着剤の融解エンタルピーが、付着剤、特に熱可塑性物質の非延伸状態での融解エンタルピーより少なくとも30%高く、
c)配向された熱活性可能な熱可塑性薄膜を支持体に載置するステップ、
を有する方法によって解決される。
【0010】
本発明の対象は、下記のステップを含む、少なくとも1種の熱活性可能でポリマー性の熱可塑性物質と、場合によっては少なくとも1つの支持体とを備えた延伸された平坦な付着剤の製造方法、ならびにその方法によって得ることができる、対応する延伸された平坦な付着剤である。
− 熱活性可能な熱可塑性物質を、熱可塑性で平坦な付着剤、特に熱可塑性薄膜または熱可塑性フィルムへと押出成形するステップ、
− 平坦な付着剤を、好ましくは、押出成形された非延伸の付着剤に対して特に機械方向に2倍分、好ましくは3倍分以上、特に好ましくは4〜5倍分以上、またはそれ以上にも延伸するステップ、ただしその際この延伸が、熱可塑性物質のポリマー鎖の配向をもたらし、特に、好ましくは押出成形された熱可塑性物質と比較してポリマー鎖の配向を上昇させるようにし、および
− 延伸された平坦な付着剤を取得するステップ。
【0011】
本発明による部分結晶性の熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤は、延伸によって、対応する未処理の付着剤、特に押出成形されただけの付着剤より高い結晶質割合および/または高い配向ポリマーの割合を有する。それぞれの熱可塑性物質の延伸およびそれに伴うポリマー鎖の配向の上昇および/または結晶化度の上昇は、あらゆる個々の場合に関し、とりわけ粉末X線回折法または通常の分光法によって検出することができる。
【0012】
本発明の特に好ましい一実施形態では、押出成形された熱可塑性物質の延伸は、機械方向に少なくとも4倍、特に好ましくは少なくとも5倍である。この倍率は、押出しされた付着剤の最初の長さと延伸後の付着剤の長さの変化の比(L:L−L)から得られる。熱可塑性物質の延伸には限界がある。化学組成および分子量に依存して、特にフィルムまたはフォイルの形の押出成形された熱可塑性物質は、引裂限界の直前まで機械方向に延伸することができる。
【0013】
部分結晶性材料の延伸は、一般的に様々な温度範囲内で、延伸材料にもたらされる多様な特性を伴って行うことができる。
【0014】
つまり本発明による方法に基づく延伸は、a)熱可塑性物質の微結晶溶融範囲より高い温度または温度範囲内で行うことができ、その後、平坦な延伸された付着剤は冷却される。微結晶溶融範囲は、好ましくは+85℃から+150℃の間、特に好ましくは100℃〜120℃であり、ポリマー化合物では典型的である幅広い融解ピークを有している。代替策として、b)延伸は熱可塑性物質の微結晶溶融範囲の温度範囲内で行うことができ、その後、平坦な延伸された付着剤は冷却される。またはc)延伸は熱可塑性物質の微結晶溶融範囲より低い温度で行うことができる。微結晶溶融範囲は、DSCにおいてピークが形成され始めるオンセット温度と定義される。
【0015】
特に好ましくは、延伸は、微結晶溶融温度より高い温度または温度範囲内で、融体延伸として実施される。その際、延伸は、例えば幅広スリットノズルのような幅広スリット工具内で、および/または幅広スリットノズルと載置点の間で、および/または冷却ドラム上で、速度の異なるローラによって行われる。生成された異方性配向は、続いて、延伸された熱可塑性物質が冷却ドラムによって冷却されることで、この状態で凍結される。結晶化温度まで冷却することができ、または結晶化温度より低く冷却することもできる。冷却は、考え得る限りのあらゆるやり方で行うことができ、例えば前述のように冷却ドラムでの積極的な冷却によって行うことができ、しかしより長い時間をかけてゆっくり冷却することも有用であり得る。
【0016】
好ましくは、該方法における延伸は、押出成形温度より少なくとも約30%低い温度範囲、または少なくとも部分結晶性の熱可塑性物質の結晶化温度より低い温度範囲、または熱可塑性物質の微結晶溶融温度より低い温度範囲内で実施される。
【0017】
これに代わる本発明の特に好ましい一変形実施形態では、延伸は、押出温度より少なくとも約40%、特に好ましくは約50%低く、ただし30℃を超える温度で行われる。極端な場合には、室温でフィルムを機械方向に延伸することもできる。
【0018】
延伸の際にポリマー鎖の配向が上昇することにより、特にこの状態を実質的に固定できる場合には、融解エンタルピーの上昇が結果として生じる。有意義なプロセス実行は、延伸された熱可塑性物質の融解エンタルピーを、押出成形された非延伸の熱可塑性物質に対して少なくとも約30%上昇させ、好ましいプロセス実行は、延伸後の熱可塑性物質の融解エンタルピーを、非延伸状態の融解エンタルピーより少なくとも約40%上昇させる。特に好ましいプロセス実行は、融解エンタルピーを、非延伸状態の融解エンタルピーより好ましくは60%上昇させる。極端な場合には100%超の値も実現可能である。
【0019】
この方法において、押出しされた平坦な付着剤には、一般的に延伸前に少なくとも1つの弾性支持体を付与することができ、かつ/または延伸後に、延伸された平坦な付着剤として、少なくとも1つの支持体を付与してもよい。好ましいのは、延伸後の付着剤に、1つまたは複数の可逆的に取外し可能な支持体を付与することである。平坦な付着剤の両方の接着面に付与するのが好ましい。
【0020】
同様に本発明の対象は、少なくとも1種の熱活性可能なポリマー性の熱可塑性物質を備えた延伸された平坦な付着剤であり、延伸された熱可塑性物質は、特にフォイルまたはフィルムとして存在しており、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えており、特に押出しされた、延伸された熱可塑性物質の融解エンタルピーは、対応する非延伸の、特に押出しされた熱可塑性物質に対して少なくとも30%上昇しており、特に融解エンタルピーは、対応する非延伸の熱可塑性物質に対して少なくとも40%〜100%、好ましくは少なくとも60%〜100%、特に好ましくは50%〜70%上昇している。
【0021】
ここで、特に好ましいのは、延伸された平坦な付着剤が、熱活性可能なポリマーまたはその混合物をベースとしており、この熱活性可能なポリマーまたはその混合物が、熱可塑性物質、反応性樹脂、および/または充填物質、または挙げた化合物の少なくとも2つの混合物から選択される場合であり、特に、延伸された平坦な付着剤が、この熱活性可能なポリマーまたはその混合物から成り、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えている場合である。
【0022】
支持体として、熱可塑性物質と支持体の可逆的な結合のため、特に剥離層または剥離塗料としての剥離剤を通例備えた通常のリリースフィルムまたはリリース紙が考慮される。この支持体は、後で説明するような通常の支持体を含むことができる。
【0023】
本発明のさらなる対象の一つは、60℃および相対湿度95%での約24時間内の湿気吸収が、対応する非延伸の、特にその他の点では基本的に同様に処理された熱可塑性物質に対して、それぞれ+/−5重量%の変動幅で少なくとも10重量%、特に20重量%だけ少ない特にフォイルまたはフィルムの形の延伸された平坦な付着剤に関する。熱可塑性物質は、フィルムの状態で実施された延伸工程または伸長工程を除き、その組成、重量、ならびに膜厚および大きさのような寸法に関して同じである。
【0024】
本発明により延伸された付着剤は、特に、(この理論に拘束されるものではないが)熱可塑性物質の結晶化度の上昇に起因する湿気吸収の減少だけでなく、さらに、改善した滲出挙動を有する。延伸された平坦な熱可塑性物質と、押出しされただけの熱可塑性物質について、圧力および温度の影響下での貼付による滲出挙動を、基本的に同じ条件下で測定する。
【0025】
こうして確定された滲出挙動に関し、熱活性可能な熱可塑性物質の延伸された平坦な付着剤は、その他では基本的に同じ条件での対応する非延伸の熱可塑性物質に対して2〜25%軽減した滲出挙動を有し、特に、滲出挙動はそれぞれ+/−5%の許容差で約10%、好ましくは約20%軽減している。
【0026】
意外にも、熱活性可能な熱可塑性物質をベースとする本発明による延伸された平坦な付着剤に関して、熱可塑性物質中での結晶質領域の数の上昇および/または拡大により、熱可塑性物質またはさらに熱可塑性物質を含む混合物、例えばブレンドの硬度および寸法安定性が増大することが観察される。延伸された付着剤のこの変化した特性は、加工性、例えば型抜き性または切断性を格段に改善させる。したがって本発明の対象の一つは、特にダイカットまたは切断された形態もしくはレーザ切断法を介して切断された形態の形での、定義された形状の延伸された平坦な付着剤である。その際、平坦な付着剤は、フィルム、フォイルとして、またはコーティングとして存在するのが好ましい。
【0027】
同様に本発明の対象は、少なくとも1種の熱活性可能なポリマー性の熱可塑性物質と、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えた、上述の方法に従って入手可能な延伸された平坦な付着剤であり、延伸された付着剤、特に延伸された熱可塑性物質の融解エンタルピーは、対応する非延伸の押出しされた付着剤、特に対応する非延伸の押出しされた熱可塑性物質に対して少なくとも30%上昇しており、特に融解エンタルピーは、対応する非延伸の熱可塑性物質に対して少なくとも40%〜100%、好ましくは60%〜100%、特に好ましくは50%〜70%上昇している。
【0028】
フィルムまたはフォイルの形での本発明による熱活性可能な付着剤を製造するための熱活性可能な熱可塑性物質として、まず一般には、熱活性化下に貼付のために用いることができ、ならびに延伸によって配向させることができ、かつ結晶質領域を形成し得る全ての適切な熱可塑性物質を用いることができる。
【0029】
非常に好ましい一変形実施形態では、軟化温度が85℃超で150℃未満の熱可塑性物質が用いられ、一般的に熱可塑性物質は1つの温度範囲内で軟化する。
【0030】
適切な熱可塑性物質は、例えばポリエステルまたはコポリエステル、ポリアミドまたはコポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(Hostalen(登録商標)、Hostalen Polyethylen GmbH)、ポリプロピレン(Vestolen P(登録商標)、DSM)であり、この列挙は全てを網羅しているわけではない。さらに、異なる熱可塑性物質から成るブレンドを用いることもできる。
【0031】
さらなる一実施形態では、ポリ−α−オレフィンが用いられる。Degussa社から商品名Vestoplast(商標)で、様々な熱活性可能なポリ−α−オレフィンを市場で入手可能である。
【0032】
接着技術的特性および活性化範囲を最適化するため、任意で、接着力を上げる樹脂または反応性樹脂を添加することができる。この樹脂の割合は、熱可塑性物質または熱可塑性ブレンドに対して2から30重量%の間である。ただし樹脂またはさらなる熱可塑性物質の添加によって、熱可塑性物質またはブレンドの結晶化力を損なわせてはならず、特に結晶化力を強く低下し過ぎてはならない。
【0033】
添加し得る粘着性付与樹脂として、文献に記載された全ての既知の粘着樹脂が例外なく使用可能である。これらの樹脂自体は当業者には周知である。代表として挙げるなら、ピネン樹脂、インデン樹脂、およびロジン樹脂、その不均化、水素化、重合、エステル化された誘導体および塩、脂肪族および芳香族の炭化水素樹脂、テルペン樹脂、およびテルペンフェノール樹脂、ならびにC5、C9およびその他の炭化水素樹脂である。結果として生じる接着剤の特性を所望通りに調整するため、これらの樹脂およびさらなる樹脂の任意の組合せを用いることができる。一般的には、対応する熱可塑性物質と適合する(可溶性の)全ての樹脂を用いることができ、特に指摘するなら、全ての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族の炭化水素樹脂、純モノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂、および天然樹脂である。「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」Donatas Satas著(van Nostrand、1989)(非特許文献1)中の知識水準の記述を参照するよう明示的に指摘しておく。
【0034】
さらなる一変形実施形態では、熱可塑性物質および/またはブレンドに反応性樹脂が加えられる。反応性樹脂の非常に好ましい群は、エポキシ樹脂を含んでいる。エポキシ樹脂の分子量は、ポリマー性エポキシ樹脂では好ましくは100g/mol〜最大10000g/molまで可変である。
【0035】
エポキシ樹脂には、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンからの反応生成物、フェノールとホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)とエピクロルヒドリン、グリシジルエステルからの反応生成物、および/またはエピクロルヒドリンとp−アミノフェノールからの反応生成物が含まれる。市場で入手可能な好ましい樹脂および/または樹脂製造用原料は、他にもあるが例えばCiba GeigyのAraldite(商標)6010、CY−281(商標)、ECN(商標)1273、ECN(商標)1280、MY720、RD−2、Dow ChemicalのDER(商標)331、DER(商標)732、DER(商標)736、DEN(商標)432、DEN(商標)438、DEN(商標)485、Shell ChemicalのEpon(商標)812、825、826、828、830、834、836、871、872、1001、1004、1031など、および同様にShell ChemicalのHPT(商標)1071、HPT(商標)1079である。市場で入手可能な脂肪族エポキシ樹脂を例として挙げれば、例えばビニルシクロヘキサンジオキシド類であり、例えばUnion Carbide CorpのERL−4206、ERL−4221、ERL4201、ERL−4289、またはERL−0400である。ノボラック樹脂として使用できるのは、例えばCelaneseのEpi−Rez(商標)5132、住友化学のESCN−001、Ciba GeigyのCY−281、Dow ChemicalのDEN(商標)431、DEN(商標) 438、Quatrex5010、日本火薬のRE305S、大日本インキ化学のEpiclon(商標)N673、 またはShell ChemicalのEpicote(商標)152である。さらに反応性樹脂として、メラミン樹脂、例えばCytecのCymel(商標)327および323を用いることもできる。さらに反応性樹脂として、テルペンフェノール樹脂、例えばArizona ChemicalのNIREZ(商標)2019も用いることができる。さらに反応性樹脂として、フェノール樹脂、例えば東陶化成のYP50、Union Carbide Corp.のPKHC、および昭和ユニオン合成株式会社のBKR2620も用いることができる。ポリイソシアネートをベースとする反応性樹脂、例えば日本ポリウレタン工業のCoronate(商標)L、BayerのDesmodur(商標)N3300またはMondur(商標)489を用いることもできる。
【0036】
さらに任意で充填物質、例えば繊維、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、チョーク、中実もしくは中空のガラス球、別の材料から成るマイクロ球、シリカ、ケイ酸塩、または核形成剤、発泡剤、コンパウンド化剤、補助剤、および/または(例えば一次および二次酸化防止剤または光保護剤の形の)老朽化防止剤を添加することができる。充填物質は、好ましくは押出の前または最中に、特に熱可塑性物質および/またはブレンドに添加される。押出の前に、例えば二軸スクリュー押出機内で混合を行うことができる。
【0037】
以下に、延伸された平坦な付着剤の製造方法を包括的により詳しく説明するが、方法はこれらの実施形態に限定されるものではない。コーティング、特に平坦な付着剤の製造は、溶融物から行われる。樹脂または熱可塑性物質を混合するには、予め混合を実施する必要があり得る。この混合は、例えば二軸スクリュー押出機または混練機内で行うことができる。熱可塑性物質だけによるコーティング、特に熱可塑性物質だけの平坦な付着剤の製造には、一般的に一軸スクリュー押出機でも十分である。ここでは押出物を段階的に押出温度まで加熱し、つまり加熱工程において液化する。温度選択は熱可塑性物質のメルトフローインデックスに依拠して行われる。平坦な押出しされた付着剤、特にフィルムの形成は押出ノズルで行われる。コーティング、特に平坦な付着剤の製造に関しては、包括的には接触方法と非接触方法に区別することができる。特に接着フォイルとしての、熱可塑性で熱活性可能な平坦な付着剤は、既にノズル内で予め配向することができる。この工程は、コーティングノズル内部のノズル設計に影響される。ノズル出口の後に、ノズル出口で伸長工程を行うことができる。伸長工程または伸長によって、平坦な付着剤の延伸が、延伸された平坦な付着剤を形成するために行われる。伸長比は、例えばノズル間隙の幅によって調整することができる。伸長は、平坦な付着剤、特に感圧接着フィルムの層厚がノズル間隙の幅より小さい場合に常に生じ、延伸された平坦な付着剤には、コーティングすべき支持材料を付与するのが好ましい。通常は、延伸された平坦な付着剤は、支持体を備えた延伸された平坦な付着剤を形成するため、コーティングすべき支持材料に載置される。
【0038】
押出コーティングには、押出ノズルを用いるのが好ましい。使用される押出ノズルは、下記の3つのカテゴリー、すなわちTダイ、フィッシュテールダイ、およびコートハンガーダイの1つに由来し得る。各タイプはその流路形態によって区別される。押出ノズルのこれらの形状によって、融解接着剤中に配向を生成することができる。2層または多層の熱可塑性で熱活性可能なフォイルを製造すべき場合には、共押出ノズルを用いることもできる。
【0039】
製造するには、特に平坦で好ましくは延伸された付着剤を形成するには、コートハンガーダイで支持体上にコーティングするのが特に好ましく、それも支持体に対するノズルの相対運動によって、熱活性可能な延伸された平坦な付着剤がフォイル層として一時的な支持体上に生じるように形成するのが好ましい。ここで本発明による方法では、平坦な付着剤、特に溶融接着フィルムは、少なくとも3倍、好ましくは5倍伸長される。
【0040】
この方法の好ましい一実施形態では、押出物は、幅広スリットノズルを通ってプレスされ、その後、1つまたは複数の搬出ドラム上で搬出される。搬出ドラムは、押出物を所望の温度に冷却するためにも用いられる。このようにして得られた特にフォイルの形の平坦な付着剤は、次いで押出方向に沿って延伸され、これはポリマー鎖の配向をもたらす。縦方向に好ましくは3:1、より好ましくは4:1、極めて好ましくは5:1超で伸長し、延伸された平坦な付着剤を得る。この縦延伸は、有用には高速に回転する2つまたは複数の異なったドラムによって実施される。延伸用のドラムに異なる加熱を施すことができる。温度は、押出温度より少なくとも30%低いのがよい。抗付着性ドラムを用いない場合、ドラムの温度は、好ましくは熱活性可能なフォイルの接着温度より低いのがよい。
【0041】
しかし原理的には、コーティング方向への別の伸長方法を適用することもできる。一般的に、平坦な付着剤を延伸するための伸長が、機械方向に対して横および/または斜めにも可能であることは、当業者には明らかである。ただしこの様式の伸長は、プロセス実行に基づきより手間が掛かり、したがってより不経済である。
【0042】
伸長後に、特にフォイルとしての熱活性可能な延伸された平坦な付着剤に、支持体が設けられる。これは、例えばリリースフィルムまたはリリース紙であることができる。付着剤と支持体の定着を改善するため、特にフォイルとしての熱活性可能な付着剤を、静電気によって載置することが必要となり得る。さらなる一形態では、熱活性可能なフォイルを片面接着性の感圧接着テープに被着させることもできる。ただし感圧接着剤と平坦な付着剤の付着があまり強く現れないほうがよい。さらに感圧接着剤は、室温でも、それより高い温度でも、熱活性可能なフォイルから可逆的に取り外せるのがよい。
【0043】
本発明のさらなる一変形実施形態では、平坦な未延伸の付着剤、特に未伸長または未配向の熱活性可能なフィルムをリリースフォイルに被着させることもできる。この場合は続いて、リリースフォイルと熱活性可能なフォイルの複合体の状態から、縦方向への伸長が行われる。本発明による方法のこの変形実施形態では、応力を回避するためには、リリースフォイルと熱活性可能な平坦な付着剤、特に熱活性可能なフォイルとが、類似の熱挙動を有することが好ましく、かつ望ましい。加えてリリースフォイルは、延伸工程中に断裂しないよう柔軟なリリース層を備えているのがよい。
【0044】
以下に付着剤の製品設計をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤は、一時的な支持体なしで、例えばフィルムまたはフォイルの形で、特に10〜500μm、好ましくは25〜250μmの層厚を有している。しかし、プライマ層/バリア層/支持体を介して結合されている2つの貼付層を備えた、特にフォイルとしての、熱可塑性で熱活性可能な平坦または延伸された平坦な付着剤を用いることもできる。プライマ層/バリア層/支持体の層厚は、好ましい設計では0.5から100μmの間である。
【0045】
例えばプライマ/バリア層/支持体から成る構造のための支持材料として一般的には、この目的のために当業者には周知で通例の全ての材料を使用することができ、これは、他にもあるが例えば、特にポリエステル、PET、PE、PP、BOPP、PVC、ポリイミド、ポリメタクリレート、PEN、PVB、PVF、ポリアミドから成るフォイルであり、または同様にこれらの材料をベースとし得る不織布、フォーム、織布、および織物フォイルもである。
【0046】
プライマとしては、同様に当業者に周知で適切な全てのポリマー化合物またはプレポリマー化合物を使用することができ、特にカルボン酸基を有する化合物が適している。例として挙げられる適切なポリマーは、ポリウレタン、ポリウレタン/アクリレートコポリマーであり、ポリアルキレン、ポリアルキルジエン、ポリアクリレートエステル、ポリアルキルエステル、ポリビニルエステル、ポリビニルと、アクリル酸またはメタクリル酸とのコポリマーまたはターポリマーである。しかし例えばポリエチレン/アクリル酸コポリマー、ポリエチレン/メタクリル酸コポリマー、ポリエチレン/メタクリル酸/アクリル酸ターポリマーをベースとするポリマー、メチルメタクリレート/アクリル酸コポリマー、ポリブタジエン/メタクリル酸コポリマー、塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、および/またはそれらの混合物などのコポリマーも適している。使用される好ましいポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリウレタン、ポリエチレン/アクリル酸コポリマー、および/またはポリエチレン/メタクリル酸コポリマーをベースとする。ポリマーおよび/またはコポリマーの特性は、カルボン酸基の数の選択によって変えることができる。
【0047】
これに加えプライマは、反応性基、特にさらなる反応性基を有することができる。対応する混合物のための架橋性化合物は好ましくは多官能基を有しており、またはこの化合物は多官能性である。これに関連して多官能性とは、化合物が2以上の官能基を有することを意味している。
【0048】
適切な架橋剤には、多官能性アジリジン、多官能性カルボジイミド、多官能性エポキシ、およびメラミン樹脂が含まれ、ここでも全てを網羅してはいない。好ましい架橋剤は、多官能性アジリジン、例えばトリメチルプロパン−トリス−(B−(N−アジリジニル)プロピオネート)、ペンタエリトリトール−トリス−(B−(アジリジニル)プロピオネート)、および2−メチル−2−エチル−2−((3−(2−メチル−1−アジリジニル)−1−オキソプロポキシ)メチル)−1,3−プロパンジイルエステルである。
【0049】
さらなる一代替策によれば、ヒドロキシ基またはアミン基を有するプライマを用いることができる。
【0050】
硬化を調整するために結合剤を添加することができる。液状結合剤は、水中に溶解させてまたは少なくとも1種の有機溶剤もしくは溶剤混合物もしくは水性混合物中に溶解させて、かつ/または分散液として施与することができる。付着硬化のためには、主に分散液としての結合剤が選択され、これは例えば、他にもあるがフェノール樹脂分散液もしくはメラミン樹脂分散液の形の熱硬化性物質、天然ゴムもしくは合成ゴムの分散液としてのエラストマーであり、またはたいていは、熱可塑性物質、例えばアクリレート、ビニルアセテート、ポリウレタン、スチレンブタジエン系、PVCなど、ならびにそのコポリマーの分散液である。通常は陰イオン性分散液または非イオノゲン性に安定化された分散液が用いられるが、特別な場合には陽イオン性分散液も有利であり得る。
【0051】
熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤または特にフォイルもしくはフィルムとしての平坦な付着剤のための一時的な支持材料としては、当業者に周知でありかつ/または一般的な材料、例えばポリエステル、PET、PE、PP、BOPP、PVC、ポリイミドをベースとするフォイル、または同様に挙げたポリマーをベースとし得る不織布、フォーム、織布、および織物フォイル、ならびにグラシン、HDPE、および/またはLDPEをベースとする剥離紙などを使用することができる。その際、支持材料が剥離層を備えている場合が好ましい。本発明の特に好ましい一実施形態では、剥離層がシリコーン剥離塗料またはフッ素化された剥離塗料を有しており、好ましくは剥離層がこれら塗料の少なくとも1種から成る。さらなる一実施形態では、この熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤または特にフォイルとしての平坦な付着剤は、一時的な支持材料を1つだけでなく2つ備えることもできる。このダブルリリースライナーの形は、ダイカットの製造に関して有利であり得る。
【0052】
本発明の対象はさらに、金属を含む物体、特に金属、合金、または対応して表面改質された金属をも含む物体、ポリマー性有機化合物、特にプラスチックをベースとする物体、ガラス体を貼り付けるため、および/または上に挙げた物体のうち少なくとも2つの異なる材料もしくは同じ材料を貼り付けるための、特に接着工程中の熱の適用下での、好ましくは圧力の追加的な適用下での、延伸された平坦な付着剤の使用である。ここでは特に金属を含む物体を、金属、プラスチック、および/またはガラス体と、あるいはプラスチックを、プラスチックおよび/またはガラス体と、あるいはガラス体を、ガラス体と、特に接着工程中の熱および場合によっては圧力の適用下で貼り付けることができる。
【0053】
明示的に本発明により、金属を含む物体を、プラスチックをベースとする物体、ガラス体、および/または金属を含む物体と、特に接着工程中に熱を適用されて、および場合によっては圧力下で貼り付けることができる。同様に、ガラス体の貼付、プラスチックをベースとする物体の貼付、またはさらにガラス体とプラスチックをベースとする物体との貼付も本発明の対象である。
【0054】
特に好ましい一実施形態によれば、延伸された平坦な付着剤は、部材、特に携帯用の家庭用電子機器製品の部材を貼り付けるために使用される。好ましくは、金属を含む物体、ガラスを含む物体、および/またはプラスチックを含む物体、もしくはプラスチックでコーティングされた物体をベースとする部材を貼り付けるために使用される。
【0055】
以下に、好ましい貼り付けるべき材料ならびに貼付のための使用、または場合によっては方法をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0056】
好ましくは本発明による熱活性可能で延伸された平坦な付着剤により、金属を貼り付けることができる。一般的に、全ての金属、合金、または金属を含む物体は、表面改質され、および表面改質されずに、熱活性可能で延伸された付着剤により貼り付けることができる。この付着剤は、フォイルまたはフィルムの形で存在するのが好ましい。例として挙げられる金属には、鉄またはアルミニウムまたはマグネシウムまたは亜鉛を含む金属または合金が含まれる。つまり例えば鋼、特殊鋼、またはオーステナイト合金を貼り付けることができる。一般的には、金属は通常の添加剤を有することができ、かつ/または合金として存在することができ、つまり例えば通常の添加剤を含む鉄および/または合金としての鉄は、本発明による付着剤により貼り付けることができる。
【0057】
しばしば視覚的な理由から、金属および/または合金の表面改質が行われる。つまり例えば特殊鋼がブラッシングされ、または保護塗料もしくは有色塗料を施与することができる。その他の通常の表面改質は、陽極処理、クロム処理、クロマイト処理、またはクロメート処理である。さらなる改質としては、例えば表面を不動態化するための金属被覆が考えられる。これは多くの場合、金または銀で行われ、特にコーティングとして施される。別の表面改質は、金属表面の酸化に基づくことができる。
【0058】
同様に、多層の金属を用いることもできる。貼り付けるべき金属部品または金属を含む部品が、一般的にはあらゆるサイズおよび/または形状で存在し得ることは当業者には明らかであり、つまり部品は平坦に、例えばフォイル、フィルム、プレートとして、例えばダイカットとして、またはレーザ成形で、形成されてもよく、あるいは3次元に形成されてもよい。機能的にも、貼り付けるべきまたは貼り付けられた金属部品または金属を含む部品の適用可能性に制限はなく、つまり部品は、例えば装飾要素として、補剛支持体、フレーム部材、カバーとして、情報担体、懸架具、組立要素などとして使用することができる。
【0059】
貼り付けるべきプラスチック部品または少なくとも1種のプラスチックをベースとする部品もしくは含む部品として、一般的には基本的に固体の通常の全てのプラスチックが考慮される。家庭用電子機器部材の範疇では、プラスチック部品は通常は押出可能なプラスチックをベースとする。好ましい貼り付けるべき部材は、押出可能なプラスチック、例えばABS、PC、ABS/PCブレンド、ポリアミド、ガラス繊維強化ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、アセテート、シクロオレフィンコポリマー、液晶ポリマー(LCP)、ポリラクチド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリルメチルイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフタルアミド、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、スチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリアクリレートもしくはポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、アクリルエステルスチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリエステル、例えばPBT、PETをベースとし、上記の列挙がこれで終わりでないことは自明である。その他の挙げていないプラスチックも本発明による付着剤で貼り付け得ることは、当業者には明らかである。
【0060】
部材は、家庭用電子機器製品用の部材またはハウジングを製造するために必要なあらゆる任意の形を取ることができる。最も単純な形において部材は平坦であり、例えばプレート、フィルム、フォイルとして、例えばダイカットの形でもある。しかしさらに3次元の部材も全くもって一般的である。部材は、例えばハウジングまたは覗き窓、または補剛要素などのように非常に様々な機能を備えることもできる。
【0061】
さらなる好ましい本発明の態様の一側面によれば、本発明の対象は、特に上記の実施形態に基づく平坦な延伸された付着剤、好ましくは延伸された熱可塑性付着剤から成るダイカットを、部材を貼り付けるために使用することであって、
− ダイカットを準備するステップ、
− 貼り付けるべき部材、とりわけ第1の部材、特に好ましくは金属を含む部材、好ましくはさらにプラスチックおよび/またはガラスを含む部材上で、ダイカットを位置決めするステップ、
− 部材へのダイカットの付着剤の付着性を上昇させるために圧力および/または熱を供給し、その際、付着剤の温度を熱可塑性物質の微結晶溶融温度より低く保ち、こうしてダイカットと部材の複合体を取得し、特にホットプレススタンプによって圧力および/または熱を供給し、好ましくは、特に熱可塑性付着剤中の配向を基本的に維持するために、室温で圧力の供給を行うステップ、
− 場合によってはダイカットの支持体を取り外すステップ、
− 場合によっては、複合体を分離し、例えばさらなる加工者へと個別に販売するステップ、または以下を行う、
− 第2の部材、特にプラスチック部材、ガラス部材、および/または金属部材上で複合体を位置決めする、あるいは対応する合成材料の部材を位置決めするステップ、および
− 複合体と第2の部材を貼り付けるために圧力および熱を供給するステップ、
− 場合によっては冷却し、かつ場合によっては冷却の前または後に、必要に応じて成形部品から1つまたは複数の貼り付けられた部材を取り外すステップ、
を含む使用である。
【0062】
本発明によれば、ダイカットと第1の部材から成る得られた複合体を分離することができ、場合によっては個別に販売することができ、代替策としては複合体を直接的にさらに使用もしくは二次加工することができる。
【0063】
前述のステップを有する方法も、特に、本発明によるプロセスステップに基づいて得られ、場合によっては少なくとも1つの支持体が設けられた延伸された平坦な付着剤を、上述の使用に対応して二次加工する方法も、本発明の対象であり得る。
【0064】
好ましくは、上記の貼り付けるべき部材上でのダイカットの位置決めは、部材に成形部品を設けることによって行われ、この成形部品の接触面は部材の輪郭にネガ形状の意味において対応しており、かつ/または成形部品が、ダイカットを位置決めするためのガイドピンを有しており、かつ/または、貼り付けるべき部材上で複合体を位置決めするために部材に成形部品が設けられており、この成形部品の接触面が部材の輪郭にネガ形状の意味において対応しており、かつ/または複合体が対応する成形部品によって固定されている。
【0065】
熱および場合によっては圧力の供給は、部材、特に金属部材を通してダイカットの付着剤に、または代替策としてダイカットの一時的な支持体を通して、部材、特に金属部材、プラスチック部材、および/またはガラス部材上の付着剤に行われるのが好ましい。その際、プレラミネート加工中に、付着剤の部分結晶性熱可塑性物質の微結晶溶融温度を超えないよう注意するべきである。
【0066】
以下に、本発明による使用をより詳細に説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0067】
熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤のダイカットは、プレラミネート加工のため通常はフォイルまたはフィルムの形で製造するのが好ましい。ダイカットは、多くの場合、レーザ切断または平台式型抜きまたは回転式型抜きによって製造される。それだけではなく他にも当業者に既知の多くのダイカット製造法が存在している。最も簡単な場合は、金属部品上にダイカットを手作業で、例えばピンセットによって配置することができる。その際、一般的にダイカットは基本的に金属部品の寸法を有しているが、貼付工程中の僅かな滲出現象、滲出プロセスを相殺するためにやや小さく形成することもできる。これにより、視覚的に望ましくない、可視となるウージング(Oozing)には至らない。これに代わって、構造上の理由から全面的なダイカットの使用が必要な場合もある。さらなる一変形実施形態では、延伸された平坦な付着剤を含む熱可塑性で熱活性可能な接着テープダイカットを、手作業で位置決めした後、熱源によって処理することができ、これは例えば最も簡単な場合にはアイロンで行うことができる。この措置により付着剤が粘着性になり、もしくはより粘着性になり、金属への付着性が上昇する。このような使用の場合には特別に、一時的な支持材料を備えたダイカットを使用するのが好ましい。
【0068】
代替策としての使用によれば、熱活性可能な接着テープダイカット上に金属部品を配置することができる。ダイカットへの配置は、付着剤のうち支持されていない、特に開放された側で行われる。ダイカットの裏側には、まだ一時的な支持材料が存在しているのが好ましい。続いて熱源により、熱が特に金属を通って、例えば接着テープの形の熱可塑性で熱活性可能な平坦な付着剤にもたらされる。この措置により接着テープはタック性をもち、リリースライナーより金属により強く付着する。本発明による使用は、熱が金属部材および/またはダイカットを通ってもたらされることを基礎とするのが好ましい。
【0069】
本発明による使用によれば、特に、プレラミネート加工中に付着剤中の熱可塑性物質の延伸を実質的に維持するため、熱量を正確に配量しなければならない。本発明に関しては十分な熱量を配量しなければならず、達成される温度は、部材、好ましくは金属部材に付着剤、特にフィルムが確実に貼り付くことを保証するために必要な温度よりできれば最大10℃高くすべきである。プレラミネート温度は、DSCで測定される微結晶溶融範囲のオンセット温度を超えないのがよい。
【0070】
熱をもたらすため、好ましい一設計ではホットプレスが用いられる。ホットプレスのスタンプは、例えばアルミニウム、黄銅、または青銅から作製することができ、通常は部材、好ましくは金属部品の外形または輪郭を有している。したがってスタンプを成形部品と呼ぶこともできる。加えてスタンプは、部分的な熱損傷の可能性を回避するための形状を有することができる。特に特定の温度を調整するには圧力も熱もできるだけ均一にもたらすというのは自明のことである。当業者は、圧力、温度、および/または時間が、それぞれ選択した貼り付けるべき材料に依存して、それぞれの具体的な状況に適応しなければならないことを承知している。その際、例えば金属、合金のような材料、金属厚、特にフォイルまたはフィルムの形でもある熱可塑性で熱活性可能な付着剤の種類が、それぞれのパラメータに影響を及ぼし、この理由からパラメータは変えることおよび適合させることができる。
【0071】
部材、好ましくは金属部品を熱活性可能なフォイルのダイカットに固定するために、金属部品の下面の形状をした成形部品を使用するのが好ましい。一般的に成形部品は、部材または部材の一部の形状(ポジ形状)に対するネガ形状の様式を有している。位置ずれを回避するため、最も簡単な場合にはボルトおよび/またはピンのようなロック手段を用いることができ、このロック手段が、例えば特に接着テープダイカットの形の付着剤の一時的な支持材料内の定義された穴と共に位置決めを担う。
【0072】
熱活性化の後で、ラミネートされた接着テープダイカットを備えた部材、好ましくは金属部品を成形部品から取り外すことができる。前述の使用は、手作業で、自動化して、不連続的にも、または連続的にも、1つの工程に、例えば自動化された方法に転換することができる。
【0073】
得られた複合体のさらなる使用は、直接的または間接的な、ボンディング工程とも称されるさらなる使用において行うことができる。
【0074】
以下にこのさらなる使用またはその後の複合体と第2の部材の貼付工程を、下記のステップ1〜6の少なくとも1つに基づく使用またはさらなる加工を通して詳細に説明するが、その際、複合体はダイカットおよび第1の部材を含んでおり、特にダイカットを備えた金属部品から成る複合体である。
1)第2の部材、特にプラスチック部材、ガラス部材、または金属部材を成形部材に固定するステップ、
2)場合によっては複合体中のダイカットの支持体、特に一時的な支持体を取り外すステップ、
3)複合体、特に熱活性可能な平坦な付着剤、例えばフォイルから成るダイカットを備えた金属部材を含む複合体を、第2の部材、好ましくはプラスチック部材、ガラス部材、および/または金属部材上に配置するステップ、
4)ホットプレススタンプによって圧力および/または温度を施与するステップ、
5)場合によっては、再冷却ステップとしての冷却ステップ、
6)複合体総体を取得し、場合によっては貼り付けられた部材を成形部材から、特に貼り付けられたプラスチック部材と金属部材を成形部材から取り外すステップ。
【0075】
一般的には、本発明は金属部材とプラスチック部材の貼付に限定されない。上で説明したように、金属部材同士もしくは金属部材とガラス部材を貼り付けてもよく、またはガラス部材同士を貼り付けてもよく、言うまでもなくプラスチック部品同士を貼り付けてもよい。例えば異なる合金、ガラス、またはプラスチックがそれぞれ異なる化学組成を有してもよいということは、当業者には自明である。貼り付けられる金属も同様に、同じまたは異なる化学組成を有することができる。
【0076】
これに加え、金属部材、プラスチック部材、および/またはガラス部材を含む部材の収容に用いられる成形部材は耐熱性材料から作製されるのがよい。対応する材料は例えば金属または金属の合金である。しかしプラスチックまたは適切な合成(Komposit)材料、例えばフッ素化ポリマーまたは熱硬化性物質を用いてもよく、熱硬化性物質は、同時に優れた硬度を有し、かつ変形し難い。
【0077】
ステップ4に基づき圧力および温度が施与される。これは、優れた熱伝導性を持つ材料から成るホットスタンプによって行われる。通常の材料は、例えば銅、黄銅、青銅、またはアルミニウムである。ただし別の合金を用いてもよい。さらに、ホットプレススタンプは金属部品の上面の形状を例えばネガ形状の形でとっているのが好ましい。この形状は2次元または3次元として存在することができる。一般的に圧力は加圧シリンダによって施される。しかし施与は必ずしも空気圧を介して行わなくてもよい。例えば液圧式プレス装置または電気機械式の例えばスピンドル、調整駆動装置、もしくはアクチュエータも可能である。さらに、例えば直列接続またはローテーション原理によって工程のスループットを上げるため、1回より多く、好ましくは複数回、圧力および温度を施与することが有利であり得る。この場合、ホットプレススタンプは、全てが同じ温度および/または同じ圧力で稼働しなくてもよい。例えば温度および/または圧力が最初は上昇し、場合によっては後で再び下がってもよい。さらにこれに代わる変形実施形態では、スタンプの接触時間を様々に選択することができる。さらに場合によっては、最後のステップでは温度調節されていないスタンプによって、または例えば冷却されたスタンプ、例えば室温に冷却されたプレススタンプによって、圧力だけを施与することが有利であり得る。
【0078】
本発明の一つの対象に基づきステップ4では、特にフォイルの形での熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤は、対応する非延伸の付着剤より低い滲出挙動を有する。本発明による付着剤の滲出挙動は、温度、圧力、および/または時間などその他の点では実質的に同じ、好ましくは同一のプロセスパラメータの下で、特に押出しされた対応する非延伸の熱可塑性物質または平坦な付着剤に対して2〜25%、特に少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%軽減または減少されている。
【0079】
熱可塑性で熱活性可能な平坦な付着剤、例えばフォイル中の結晶質部分の存在によって、この付着剤は、対応する未処理の付着剤より硬く、かつ寸法安定性である。熱可塑性で熱活性可能なフォイルの伸長に伴って低温変形が生じるので、弾性または粘弾性の材料については通常であるように、伸長工程による応力は維持されない。
【0080】
本発明によるダイカットは、熱可塑性で熱活性可能な平坦な特にフォイルの形で存在する付着剤の、製造工程中に形成および/または凍結された配向によって、低下した滲出挙動を有している。プレラミネート加工の工程では、熱付与ができるだけ小さくなるよう選択され、好ましくは室温であり、したがってこの製造方法では、特に延伸によってもたらされた配向が、ボンディングステップのために基本的に維持される。ボンディングステップでは、貼付中にもたらされる熱の一部が、貼付のために吸収されるだけでなく、この熱を配向の消退および/または溶融工程にも使うことができる。
【0081】
本発明によるダイカットは、熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤の、製造工程中に形成および凍結された配向によって、低下した滲出挙動を有しており、この配向は、貼付ステップ中の温度上昇によって消退するが、このことは滲出および熱膨張を妨害する。
【0082】
これによりダイカットは貼付中、改善された形状安定性を保ち続ける。これは特に目に見える部材、例えば装飾要素を貼り付ける場合であり、というのもそうでなければ、接着剤の残留物が意図しない位置で見えてしまうからである。これに加え、本発明による低下した滲出挙動を有する熱活性可能なフォイルのダイカットにより、意図しない材料流出のために必要なスペースをより小さく考慮できるので、ダイカット形状、特に面積をより大きく選択することができ、ダイカットの幾何学形状を変更することもできる。したがってこの系でしばしば設けられていたダイカット内の中断部、または意図しない接着剤流出を収容するために設けられた、部材、接合部自体での構造的な解決策もなくすことができる。
【0083】
これにより、本発明による延伸された熱可塑性の付着剤を使って、非常に小さな部材も貼り付けることができる。これは今まで、強過ぎる滲出挙動を示す付着料では不可能であった。なぜならこの付着料のためにはダイカットが小さくなり過ぎ、したがってもう貼付を実施できなかったからである。ダイカットのランド幅(Stegbreite)に関する下限としては、好ましくは最小400μmまで実現することができる。上限は部材のデザインおよびサイズに依存し、本発明に関しては上限はない。
【0084】
特にフォイルの形での、熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤の滲出挙動は、実験の部で説明する滲出試験を介して決定される。この試験に基づき、標準的な条件下での滲出率が決定される。
【0085】
ボンディングステップ中の熱付与により、配向の消退(a)だけでなく、結晶質領域の融解(b)も起こり、かつ熱可塑性フィルム中に含まれる水(c)の相転移も起こり得る。水(c)は、もたらされた高い温度により水蒸気となり、その後、フィルム中での気泡形成を引き起こす可能性がある。この気泡形成は、一般的に接着複合体の強度に対して明らかに悪い影響を及ぼす。
【0086】
本発明の部分結晶性の熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な付着剤は、延伸に基づき、対応する未処理の付着剤に比べて上昇した結晶質割合および/または上昇した割合の配向ポリマーを有している。この結晶化度の上昇および/またはポリマーの配向の上昇は、蓄積水分量を減少させる。一般的に水はポリマーの非晶質領域により多く蓄えられる。これは、通常は周囲空気からの吸収によって起こる。延伸された付着剤は、貼付特性の改善、例えば滲出挙動の低下および/または気泡形成の減少だけでなく、水分吸収が減少することで貯蔵安定性も改善される。なぜなら水分吸収が減少すると、ポリマー中での例えば加水分解による分解反応が軽減されるからである。
【0087】
冷却ステップであるステップ5は任意のステップであり、貼付性能の最適化に役立ち得る。加えてこのステップは、貼り付けられた部材のより簡単またはより速い取り外しを可能にする。冷却には、一般的に金属のプレススタンプが用いられ、このプレススタンプの形状はホットプレススタンプに類似しているが加熱要素は含んでおらず、一般的にこのプレススタンプは積極的には温度調節されず、特に室温で稼働する。代替策として、プレススタンプを能動的に、例えば冷却システムによって、空気または冷却液のような冷却手段を用いて冷却することもできる。この場合、プレススタンプは部材から能動的に熱を奪うことができる。
【0088】
最後の工程ステップでは、貼り付けられた部材(複合体総体)を成形部材から取り外すことができる。
【0089】
プレラミネート加工およびボンディングのためのホットプレススタンプは、部材の温度安定性ならびに熱可塑性で熱活性可能な延伸された平坦な特にフォイルとしての付着剤の活性化温度および/または溶融温度に応じて、60〜300℃の温度範囲内で稼働される。通常のプロセス時間は、1回のプレススタンプステップにつき2.5〜15秒である。さらに、圧力を変化させることが必要なこともある。非常に高い圧力では、熱可塑性で熱活性可能なフォイルが、本発明による特性に反して滲出を増加させる可能性がある。適切な圧力は、特に1.5〜10barであり、貼付面積に基づいて算出される。ここでも、材料の安定性および熱可塑性で熱活性可能な付着剤、特にフォイルの流動挙動が、それぞれ選択すべき圧力に大きな影響を及ぼす。時間、圧力、および/または温度のようなそれぞれのプロセスパラメータを、それぞれ使用する熱可塑性の付着剤および部材にどのように適応させるかは当業者にはよく知られたことである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】貼付強度の検査のための試験方法を概略的に示す図である。
【図2】貼付強度の測定のための試験を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に、本発明を説明するためにいくつかの例を提示するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0092】

I.)試験法
貼付強度A)
貼付強度は動的せん断試験で決定する。貼付面積は2cmである。1.5mm厚で2cm幅のAlプレートと、幅2cmで層厚3mmのポリカーボネートプレート(PCプレート)を、本発明による熱可塑性で熱活性可能なフォイルで結合させる。熱可塑性で熱活性可能なフォイルを、伸長状態(延伸された平坦な付着剤)でも、非伸長状態(非延伸の平坦な付着剤)でも調べた。全ての試料が、コーティングまたは伸長後にもう1度、23℃および湿度50%で14日間順化された。
【0093】
第1のステップでは、100μm厚の熱可塑性で熱活性可能なフォイルを、110℃の熱いホットプレートを用いてアルミニウム上にラミネートする。続いて剥離フォイルを剥がす。被検体の貼付はホットプレスで実施し(図1を参照)、その際、金属1を介して、つまりアルミニウム側が加熱される。熱活性化は、150℃の熱いホットプレススタンプ4により、5barの圧力5および5秒のプレス時間で実施される。
【0094】
熱貼付の後、気泡の発生のような貼付品質は、透明なポリカーボネートを通して判断することができる。
【0095】
続いて被検サンプルを、図2に示した引張検査機で、図2に符号0で示した緩慢に上昇する力Fを適用しながら10mm/minで引き裂く。測定単位はN/mmで示され、被検体(アルミニウムおよびポリカーボネート)を互いに分離するための測定される最大力である。測定は23℃、湿度50%で実施する。
【0096】
滲出挙動B)
熱可塑性で熱活性可能なフォイルを、直径29.5mmの円形ダイカットとして型抜きする。このフォイルは上面からも下面からも、シリコーン処理されたグラシンライナーで覆われている。続いてこの複合体をホットプレス機に入れ、その後75N/cmおよび150℃(ホットプレス温度、両面加熱)で10秒間圧力をかける。圧力を施すことで熱可塑性物質が円形に滲出する。滲出率は、
【0097】
【数1】

によって決定され、上式ではOR=滲出率、Areaafter=ホットプレス後の熱可塑性物質の面積、およびAreainitialはホットプレス前の熱可塑性物質の面積である。
【0098】
滲出率としてそれぞれ、延伸された付着剤および対応しているが非延伸の付着剤のダイカットの面積変化を測定する。
【0099】
水分吸収C)
熱可塑性で熱活性可能なフォイルを、直径50mmの円形ダイカットとして型抜きする。このフォイルは下面から、シリコーン処理されたグラシンライナーで覆われている。続いてこの複合体を、60℃および湿度95%の空調室に入れる。試料はそこで24時間放置される。続いて湿気吸収を重量測定法で決定する。
【0100】
下記の式に基づき水分吸収を決定する。
【0101】
【数2】

上式ではWA=水分吸収、Gewafter=湿気処理後の熱可塑性フォイルの重量、およびGewinitialは湿気処理前の熱可塑性フォイルの重量である。
【0102】
融解エンタルピーの測定D)
融解エンタルピーの測定は、Mettler DSC822での動的示差熱量測定(DSC)によって行われた。加熱速度は10℃/minであり、−100℃〜+250℃の範囲内の第1の加熱曲線を評価した。試料を、穴のあいた40μlのアルミニウム製のるつぼに計量して入れた。試料の秤量した量は10から15mgの間であった。融解エンタルピーのために融解ピークを積分し、試料の秤量した量で割り算する。したがって融解エンタルピーはJ/gで表される。延伸工程により変化するパーセンテージは、非延伸の試料と延伸された試料の差を測定することで簡単に決定される。ポリマー試料では通常であるように、融解ピークは広い範囲にわたって延びている。それぞれオンセット温度からオフセット温度の範囲を評価した。これは、DSC曲線のベースラインからの逸脱が起こる範囲である。
【0103】

試料の延伸
長さ5cmの熱可塑性で熱活性可能なフォイルストリップを、23℃で長さ約25cmに伸長した。同じ工程を105℃で実施し、その際、配向を固定するため、フィルムを延伸直後に急速に室温へと冷却した。これにより、最初の長さと長さの変化の伸長比(L:ΔL)は約1:4であった。延伸後はフィルム厚が約100μmであり、最初のフィルム厚は約500μmであった。
【0104】
例1)
Degussa社のDynapol(商標)S1227を、2層のシリコーン処理されたグラシン剥離紙の間で、140℃で100μmにプレスした。このコポリエステルの融解範囲は86℃から109℃の間である。
【0105】
例2)
Degussa社のDynapol(商標)S1247を、2層のシリコーン処理されたグラシン剥離紙の間で、140℃で100μmにプレスした。このコポリエステルの融解範囲は100℃から135℃の間である。
【0106】
例3)
Ems−Grilltech社のGrilltex(商標)1442Eを、2層のシリコーン処理されたグラシン剥離紙の間で、140℃で100μmにプレスした。このポリマーの融解範囲は93℃から121℃の間である。
【0107】
結果
例1、例2、および例3は、熱活性可能なフォイルとして金属部品を貼り付けるために使用可能なコポリエステルフォイルに関する例である。最初に、フィルムをホットプレスで融解し、100μmの層厚にプレスした。溶融物状態での加圧工程およびゆっくりとした冷却により配向現象は発生しない。
【0108】
その後の伸長工程は、23℃および105℃で、急速な冷却を伴って実施された。続いて試料を、伸長状態および非伸長状態で、試験法Dに従って調べた。調べたフォイルの層厚はそれぞれ約100μmであった。このため延伸フォイルは、500μmに押出成形し、その後100μmに延伸した。これにより、接着継目からの望ましくない目に見える滲出が生じることはない。結果は表1に示している。
【0109】
【表1】

【0110】
表1は、選択された熱可塑性で熱活性可能なフォイルが強い伸長によって、配向され、かつ結晶性の部分領域の割合および/または大きさを上昇させることを証明している。この効果は、加熱下(150℃で)で延伸する場合より23℃での低温延伸の場合により強く現れる。測定値は、融解エンタルピーをほぼ100%上昇させ得ることを証明している。
【0111】
さらなる試験では、配向の効果を確定するため、全ての例によって滲出挙動を決定した。これに関しては試験法Bに従って行われた。結果は表2に示している。
【0112】
【表2】

【0113】
表2からは、伸長工程による滲出挙動の格段の改善を読み取ることができる。
【0114】
さらに、伸長工程によって水分吸収がどのように影響を及ぼされるのかを調べるべきであろう。このために例1〜例3を試験法Cに従って調べた。結果は表3に示している。
【0115】
【表3】

【0116】
表3の結果は、伸長によってコポリエステルの水分吸収が低下することを証明している。測定された値は、コポリエステルが、特に非晶質割合の低下によって、より少ない水しか吸収できないことを証明している。したがってこのようなサンプルは、貼付のために格段に良好に用いることができる。なぜならこの場合には、熱活性化中に、湿気による気泡がより少なくしか生じず、したがって均質な貼付が達成されるからである。
【0117】
最後に、伸長の影響をさらに貼付力についても調べた。これに関しては試験法Aを実施した。結果は表4に示している。
【0118】
【表4】

【0119】
表4からは、貼付強度がほとんど影響を受けていないことを読み取ることができる。測定された値は検査法の測定変動の範囲内にある。したがって接着技術的特性が一定の場合、伸長工程によって特性改善を達成することができる。貼付面内の気泡の数の判定は、非伸長の例1〜例3が、比較として同様に試験した伸長された例よりも貼付面内に格段に多くの気泡を有していることを明らかにした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の熱活性可能なポリマー性の熱可塑性物質と、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えた延伸された平坦な付着剤の製造方法であって、
− 熱活性可能な熱可塑性物質を、熱可塑性の平坦な付着剤、特に熱可塑性フィルムまたは熱可塑性フォイルへと押出成形するステップ、
− 平坦な付着剤を、特に機械方向に、好ましくは押出しされた非延伸の付着剤に対して2倍分、好ましくは3倍分以上、特に好ましくは4〜5倍分以上、またはそれ以上に延伸し、特に前記延伸が、熱可塑性物質のポリマー鎖の配向をもたらすようにするステップ、および
− 延伸された平坦な付着剤を取得するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
平坦な付着剤に、延伸前に少なくとも1つの弾性支持体が付与され、かつ/または延伸された平坦な付着剤に少なくとも1つの支持体が付与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)延伸が、熱可塑性物質の微結晶溶融範囲より高い温度または温度範囲内で行われ、その後、平坦な延伸された付着剤が冷却されること、
b)場合によっては延伸が、熱可塑性物質の微結晶溶融範囲の温度範囲内で行われ、その後、平坦な延伸された付着剤が冷却されること、または
c)延伸が、熱可塑性物質の微結晶溶融範囲より低い温度で行われること、
を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
延伸が、押出温度より約30%低い温度範囲、または少なくとも部分結晶性の熱可塑性物質の結晶化温度より低い温度範囲、または熱可塑性物質の微結晶溶融温度より低い温度範囲内で実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の熱活性可能なポリマー性の熱可塑性物質と、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えた延伸された平坦な付着剤において、
特に押出しされた、延伸された熱可塑性物質の融解エンタルピーが、対応する非延伸の特に押出しされた熱可塑性物質に対して少なくとも30%上昇しており、特に融解エンタルピーが、対応する非延伸の熱可塑性物質に対して少なくとも40%〜100%、好ましくは少なくとも60%〜100%、特に好ましくは50%〜70%上昇していることを特徴とする付着剤。
【請求項6】
60℃および相対湿度95%での約24時間以内の湿気吸収が、対応する非延伸の、特にその他の点では実質的に同様に処理された熱可塑性物質に対して、それぞれ+/−5重量%の変動幅で少なくとも10重量%、特に20重量%低められていることを特徴とする請求項5に記載の付着剤。
【請求項7】
熱可塑性物質がフォイルまたはフィルムの形で存在することを特徴とする請求項5または6に記載の付着剤。
【請求項8】
延伸された熱可塑性物質の、圧力および温度の影響下での貼付による滲出挙動が、その他では実質的に同じ条件での対応する非延伸の熱可塑性物質に対して、+/−5%の許容差で2〜25%、特に約10%、好ましくは約20%軽減していることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の付着剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一つに基づき得ることができる延伸された平坦な付着剤。
【請求項10】
少なくとも1種の熱活性可能なポリマー性の熱可塑性物質と、場合によっては少なくとも1つの支持体を備えた、請求項9に記載の延伸された平坦な付着剤において、延伸された熱可塑性物質の融解エンタルピーが、対応する非延伸の特に押出成形された熱可塑性物質に対して少なくとも30%上昇しており、特に融解エンタルピーが、対応する非延伸の熱可塑性物質に対して少なくとも40%〜100%、好ましくは60%〜100%、特に好ましくは0%〜70%上昇していることを特徴とする延伸された平坦な付着剤。
【請求項11】
定義された形、特にダイカットの形を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の延伸された平坦な付着剤。
【請求項12】
金属を含む物体、プラスチック、および/またはガラス体を貼り付けるための、請求項1〜11のいずれか一つに記載の延伸された平坦な付着剤の使用であって、特に金属を含む物体が金属、プラスチック、および/またはガラス体と、あるいはプラスチックがプラスチックおよび/またはガラス体と、あるいはガラス体がガラス体と、特に接着工程中の熱の適用下で貼り付けられる使用。
【請求項13】
携帯型家庭用電子機器製品の部材を貼り付けるための、請求項1〜11または12のいずれか一つに記載の延伸された平坦な付着剤の使用。
【請求項14】
部材を貼り付けるための請求項1〜11のいずれか一つに記載の平坦な延伸された付着剤の使用であって、
− 請求項11に記載のダイカットを準備するステップ、
− 貼り付けるべき部材、特に金属を含む部材上でダイカットを位置決めするステップ、
− 部材へのダイカットの付着剤の付着性を上昇させるために圧力および/または熱を供給し、その際、付着剤の温度を熱可塑性物質の微結晶溶融温度より低く保ち、こうしてダイカットと部材の複合体を取得するステップ、
− 場合によってはダイカットの支持体を取り外すステップ、
を含む使用。
【請求項15】
− 複合体を、第2の部材、特にプラスチック部材、ガラス部材、および/または金属部材上であるいは対応する合成材料上で位置決めすること、
− 複合体と第2の部材を貼り付けるために圧力および熱を供給すること、
− 場合によっては冷却すること、
を特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
貼り付けるべき部材上でダイカットを位置決めするため、部材が成形部品を備えており、かつ/または成形部品が、ダイカットを位置決めするためのガイドピンを有しており、かつ/または貼り付けるべき第2の部材上で複合体を位置決めするために、部材が成形部品を、および/または複合体が成形部品を備えている、請求項14または15に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511066(P2012−511066A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538912(P2011−538912)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060964
【国際公開番号】WO2010/063498
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】