説明

銅の選択的かつ清浄なエッチングのための集束イオンビームプロセス

集積回路編集のための銅の集束イオンビームエッチング用のエッチング促進剤はイオンビームによる隣接する誘電体の損失を防ぎ、隣接面上のスパッタされ再堆積した銅を非導電性にして電気的短絡を回避する。促進剤は分子中にN−N結合を有し、約70〜220℃の沸点を有し、ヒドラジン及び水の溶液と、ヒドラジン誘導体と、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択された2つの炭化水素基によって飽和したニトロソアミン誘導体と、ニトロソアミン関連化合物と、四酸化窒素とを含み、好適にはヒドラジン一水和物(HMH)、ヒドロキシエチルヒドラジン(HEH)、CEH、BocMH、BocMEH、NDMA、NDEA、NMEA、NMPA、NEPA、NDPA、NMBA、NEBA、NPYR、NPIP、NMOR及びカルムスチン単独、又は四酸化窒素との組合せである。促進剤は高アスペクト比(深さ)の孔の銅をエッチングするのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に、銅および銅材料の集束イオンビームエッチングに関し、およびより具体的には、誘電材料上への銅の化学的に促進されたエッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
銅(Cu)は、導電性配線を形成するために集積回路(IC)に用いられる主要材料であり、また、集束イオンビーム(focused ion beam:FIB)技術を用いたIC内の銅のエッチング技術は、ICの不具合検査およびデバッギングのための回路編集(circuit editing:CE)の分野において重要である。集束イオンビーム(FIB)システムを用いたICの回路編集は、銅平面および配線が、形成された間隔にわたって回路要素を電気的に絶縁するように、均一かつ清浄に平削り(切断)されることが必要である。
【0003】
CEのために銅の清浄で均一なFIBエッチングを実現することは難しい。FIB銅エッチングプロセスの品質を改善するための過去の著しい努力にもかかわらず、問題は残っており、主要な2つの領域で改善が必要である。それら2つの領域は、FIBエッチング領域内の導電性の再堆積した銅を低減すること、エッチング選択性および銅の除去を改善すると共に、隣接するおよび下にある誘電体を、好ましくないエッチングおよび除去から保護することである。これら2つの問題は共に、銅の特性から生じている。
【0004】
ヨウ素またはヨウ素含有エッチャント等の薬剤を用いるFIB工程で迅速かつ清浄に除去できるアルミニウム(Al)とは対照的に、銅は、イオン衝撃に耐えることができ、および容易に除去されるアルミニウムのように、ヨウ素または他のいずれかの元素と単純な揮発性化合物(例えば、AlI)を生成しない。むしろ、FIBプロセスにおける銅エッチングは実質的に、イオンビームスパッタリングにのみ依存する。このことは、上述したような問題を引き起こす導電性の銅の好ましくない再堆積を必然的にもたらす可能性がある。
【0005】
また、銅は、異なる結晶方位を有する結晶粒を含む結晶構造を有する。異なる配向を有する粒子は、著しく異なるFIBエッチング速度を呈し、そのため、銅のFIBエッチングは、非常に不均一で一様ではない。そのことは、エッチングされた銅上に非常に粗い面を生じさせ、および下にある誘電体に向かって、銅層に孔を開ける可能性がある。このことは、下にある誘電体の著しい損傷につながる可能性があり、また、再堆積した導電性の銅によるIC回路の電気的短絡を引き起こす可能性がある。銅のエッチングのために実現可能である所要の選択性は、例えば、揮発性エッチング副生成物が生成されるアルミニウムと比較して低いため、選択性の改善に関する過去の努力は主に、銅の除去を強化することよりもむしろ、誘電体を保護することに集中していた。
【0006】
さらに、イオンビームスパッタリングプロセスは、そのイオンビームに曝された領域の全周囲に銅の再堆積をもたらす。このことは、除去されることが意図されている平削りされた銅材料が、この領域に再堆積して、信号の電気的絶縁を困難または不可能にするため、重大な問題を引き起こす。好ましくない損傷または除去からの隣接するおよび下にある誘電体の保護を与えることに加えて、銅のエッチング促進化学薬品もまた、導電性の銅材料の再堆積を制限し、または、再堆積した導電性の銅を非導電性状態に変換して、好ましくない電気的短絡を防ぎ、および切断されることが意図されている銅伝導体の切断を確実にできるようにすることを活発に促進しなければならない。図1は、エッチング促進剤を何ら用いることなく、イオンビームによる純粋なスパッタリングを用いた(上部の配線A)およびアンモニア(NH)と水(HO)とからなる酸化蒸気の混合物を含むNHOHの雰囲気内でのイオンビームスパッタリングを用いた(下部の配線B)を用いた銅線を切断するためのFIB工程の2つの比較実施例を示す。これらの図において、銅は、明るい領域として見えている。銅線における明るさ(灰色〜白色)の異なる陰影は、異なってエッチングされた異なる粒子配向の領域を示す。
【0007】
図1の上部の実施例Aにおいて、再堆積した導電性の銅は、切断された銅線12の向かい合った側の明るいライン10、11として明確に見えており、電気的切断が完全ではない、すなわち、その銅線の切断端部間に電位差がなかったことを実証している。一方、この図の下部の実施例Bに示されているように、銅線14は、良好に切断されており、また、その線の2つの端部は、電気的に切断されていた。再堆積した導電性の銅は、NHとHOとからなる蒸気によって酸化され、それを非導電性にし、および電位差は、銅線のそれら切断された端部間にあった。この実施例は、化学酸化剤、例えば、酸素および窒素のような電気陰性化学元素を、銅のためのFIBエッチング薬剤として用いることの利点を示している。
【0008】
しかし、全ての酸化剤が銅に対して作用するわけではない。例えば、ハロゲンは、エッチング促進剤として使用すべきではない。ハロゲンは、フッ素を除いて、イオンビームによる活性化を何ら伴うことなく、銅と自然に反応して腐食させ、また、銅の導電性を著しく低下させる。塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン剤を注意深く制御した場合であっても、それらの薬剤は、長期間、FIB真空チャンバ内に残って、露出している銅を腐食し続ける可能性がある。さらに、(フッ素を含む)全てのハロゲンは、高誘電率誘電体および低誘電率誘電体の両方に対して非常に侵食的である。
【0009】
銅をエッチングする場合、1つのメタライゼーション層に対するCEの実行が、隣接するまたは下にある層まで突き抜けないように、および漏電を引き起こさないように、誘電体のオーバエッチングはかなり小さくかつ制御されたものであるべきである。また、平面上の銅線を切断することが、CEプロセスの最後の工程ではない場合には、銅の除去後に、その誘電体の床面が確実に平坦になっているように措置を講じるべきである。そうではない場合、後の工程が著しく影響を受ける可能性がある。前述したように、その結晶構造のため、銅のスパッタリング速度は、その粒子配向に強く依存し、また、平均エッチング速度は、著しく、例えば、FIB工程パラメータの所定のセットの場合、4倍以上変化する可能性がある。このことは、エッチング促進剤を何ら適用することのない銅20の純粋なスパッタリングの結果を示し、およびその結晶学的構造による銅の極めて一様ではないスパッタリングを明確に実証している図2に示されている。その図の平削りされた領域の寸法は、約10μm×10μmである。図示されているように、下にある誘電体は、銅の除去が最大である領域において激しく損傷を受けており、他の領域では、かなりの量の銅が除去されないままの状態である。この図から、銅のエッチングを制御する際の難しさは、容易に認識することができるだろう。
【0010】
銅の除去は、イオンビームスパッタリング(揮発ではない)によるものであるため、銅の除去は、比較的ゆっくり起きる。これは、銅をイオンビームに長時間曝す必要があることを意味しており、および銅の除去の不均一性のため、イオンビームが、下にある誘電体のいくつかの箇所に意図せず損傷を与える可能性がある。従って、銅エッチング促進剤はいずれも、その誘電体の好ましくないエッチングを防ぐために、隣接するまたは下にある誘電体の保護を実現しなければならない。誘電体の領域が露出された時点で、エッチング促進剤は、誘電体スパッタリングを停止させるかまたは著しく遅くするべきである。
【0011】
従来の誘電体、例えば、二酸化ケイ素、すなわち、SiOの場合、イオンビーム電流密度および蒸気圧が適切に調節されていれば、酸素、水、または、水およびアンモニアの蒸気の混合物が、誘電体スパッタリングを10倍まで遅くすることができることが分かっている。水およびアンモニアは、優れた酸化剤であり、従来の誘電体のための合理的に優れた保護を提供することが分かっており、また、酸素、水、および水とアンモニアの混合物は、従来のSiO誘電体上の銅をエッチングするための銅エッチング促進剤として用いられてきている。しかし、それらの化合物は、ICでますます使用されてきている新たな低誘電率誘電体を保護するのには役に立たないことが分かっている。主な問題は、多くの低誘電率誘電体が、その誘電体構造の主要成分の1つとして炭素を含有していることであり、そのことは、低誘電率誘電体が、しばしば「有機」誘電体といわれる所以である。水および酸素はどちらも、誘電体構造中の炭素を容易に酸化させて、一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO)を生成し、それらはどちらも気体であり、および揮発されている。そのため、それらは、誘電体のための保護剤というよりは、その誘電体構造の主要成分のうちの1つを揮発させることによって、誘電体エッチングを加速させる。
【0012】
誘電体構造中の炭素の割合の増加により、より低誘電率の誘電体を採用する傾向が、IC業界では増してきている。このことは、誘電体を保護することが可能な新たな銅エッチング促進剤に対する要求につながっている。米国特許第7060196号明細書は、FIB銅エッチング用途における誘電体を保護するためのエッチング促進剤として使用される多くの化学物質、主に、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロエタノール等のニトロ化合物を開示してクレームしている。ニトロエタノールは、現時点で、FIB工程で有機誘電体上の銅をエッチングするのに最も幅広く使用されている化学剤のうちの1つである。ニトロエタノールは、誘電体エッチングを制限する際に有効であったが、IC作業領域に隣接する面上のスパッタされた導電性銅材料の再堆積という問題にはそれほど有効には対処してきていない。このことを図3に示す。
【0013】
図3は、ニトロエタノールをエッチング促進剤として使用して、Black Diamond(登録商標)誘電体上の銅をエッチングした結果を示す。図示されているように、平削りされた領域の中心部は、すぐ下の層に接続されたビアを具備するコンタクト30からなる2つの列を有する平坦な底部を有している。しかし、符号32に示すように、開口部の垂直壁には、再堆積した銅が明らかに存在する。再堆積した導電性の銅材料は、二次電子放出を生じた場合に、その図において、明るい領域として見える。その再堆積した材料は、銅エッチング促進化合物(この場合、ニトロエタノール)により、銅と多少の炭素を含有しているため、導電性である。この再堆積した材料は、配線を電気的に短絡させることにより、または、銅電力面を接地することにより、ICを部分的または全体的に動作不能状態にする可能性がある。例えば、その図において、上方の平削りされた領域34が、下方の平削りされた領域36よりも幅広ではない場合、上部および底部の電力面は、開口部の垂直壁の再堆積した導電性の銅によって、互いに電気的に短絡するであろう。また、接地されておらず、および二次電子放出を生じないため、図には現れていない平削りされた領域内にも、より多くの再堆積した導電性の銅材料がある。この図から、ニトロエタノール銅エッチング促進化合物は、下にある誘電体を保護するように良好に機能するが、導電性の銅の再堆積に対処する際には有効ではないと結論付けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、公知の方法およびエッチング促進剤に関する上記のおよび他の問題に対処する、銅のFIBエッチングのためのエッチング方法およびエッチング促進剤に対する要求がある。具体的には、隣接するおよび下にある誘電体を、好ましくないエッチングから保護し、および導電性の銅および他の材料の再堆積によって生じる問題を回避する、銅のFIBエッチングのためのエッチング方法およびエッチング促進剤の双方に対する要求がある。本発明は、これらの目的を達成するために注力する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ICのCEのためのFIB銅エッチングプロセスおよび薬剤の上記のおよび他の既知の問題に対処するFIB銅エッチングプロセスおよび薬剤を提供する。具体的には、本発明は、既知のエッチング促進剤についての2つの主要な問題、すなわち、銅をエッチングする場合の隣接する誘電体を保護すること、電気的短絡を防ぐために、スパッタされ、および再堆積した導電性の銅を非導電性にすることに対処するFIB銅エッチング促進剤を提供する。本発明のエッチング促進剤は、誘電体面に吸着された場合に、高粘性および長い滞留時間を与える低揮発性を有することにより、およびイオンビームによって活性化された場合に、酸化物、窒化物または酸窒化物を生成し、およびイオンビームスパッタリングによる誘電体損失分の補充に寄与する原子群で形成されていることにより、銅エッチング中に隣接する誘電体を保護する。さらに、そのエッチング促進剤は、再堆積した銅の有効な酸化を生じて、スパッタされたおよび再堆積した導電性の銅を、非導電性の銅の塩または酸化物、窒化物あるいは酸窒化物に変換する。
【0016】
一つの側面において、本発明は、誘電体の存在下で、集束イオンビームによって銅をエッチングするためのFIBプロセスおよびエッチング促進剤を提供し、この場合、その銅および誘電体は、ヒドラジンおよびヒドラジン誘導体、および化学構造RN(−R)−N=Oを有するニトロソアミン(ここで、RおよびRは、線形または分岐炭化水素基である)、および化学構造RN(−R)−N=Oを有するニトロソアミン関連化合物(ここで、RおよびRは、線形または分岐炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である)からなる群から選択された化合物を含むエッチング促進剤に曝される。炭化水素基は、窒素および酸素を含んでもよい。これらの化合物は、最高で約220℃の沸点を有する。
【0017】
より具体的には、ニトロソアミン関連化合物は、直接または酸素を介して接続されたRおよびR基を有していてもよく、また、ニトロソピペリジン(Nitrosopiperidine:NPIP)、ニトロソピロリジン(Nitrosopyrrolidine:NPYR)およびニトロソモルホリン(Nitrosomorpholine:NMOR)から選択することができ、あるいは、ハロゲン化炭化水素基が互いに接続されていないカルムスチン(Carmustine)であってもよい。
【0018】
より具体的な側面においては、そのエッチング剤は、約70℃〜約220℃の沸点を有する。他のより具体的な側面において、ヒドラジンは、ヒドラジン一水和物を含み、前記ヒドラジン誘導体は、ヒドロキシエチルヒドラジン(HydroxyEthyl Hydrazine:HEH)、シアノエチルヒドラジン(CyanoEthyl Hydrazine:CEH)、ブトキシカルボニルメチルヒドラジン(ButoxyCarbonylMethl Hydrazine:BocMH)、ブトキシカルボニルメトキシエチルヒドラジン(ButoxyCarbonylMethoxyEthyl Hydrazine:BocMEH)、および線形または分岐炭化水素基が、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)またはブチル(C)から選択されるニトロソアミンからなる群から選択される。また別の他のより具体的な側面においては、ニトロソアミン化合物は、ニトロソジメチルアミン(NitrosoDiMethylAmine:NDMA)、ニトロソメチルエチルアミン(NitrosoMethylEthylAmine:NMEA)、ニトロソジエチルアミン(NitrosoDiEthylAmine:NDEA)、ニトロソメチルプロピルアミン(NitrosoMethylPropylAmine:NMPA)、ニトロソエチルプロピルアミン(NitrosoEthylPropylAmine:NEPA)、ニトロソジプロピルアミン(NitrosoDiPropylAmine:NDPA)、ニトロソメチルブチルアミン(NitrosoMethylButylAmine:NMBA)、ニトロソエチルブチルアミン(NitrosoEhylButylAmine:NEBA)からなる群から選択され、また、ニトロソアミン関連化合物は、ニトロソピロリジン(NPYR)、ニトロソピペリジン(NPIP)、ニトロソモルホリン(NMOR)およびカルムスチンからなる群から選択される。
【0019】
また別の側面において、本発明は、集束イオンビームによって、誘電体上のまたは誘電体に隣接する銅をエッチングするためのFIBプロセスおよびエッチング促進剤を提供し、そのプロセスの場合、その銅および誘電体は、そのイオンビームと、ヒドラジンと水とからなる溶液、およびヒドラジン誘導体から成る群から選択された第1の化合物であって、その第1の化合物が、約220℃以下の沸点を有する第1の化合物と、スパッタされた導電性の銅を非導電性にする強力な酸化剤を含む第2の化合物とを一緒に含むエッチング促進剤とに曝される。
【0020】
より具体的には、その第1の化合物は、ヒドラジン一水和物(Hydrazine Monohydrate:HMH)またはヒドロキシエチルヒドラジン(HEH)、あるいはニトロソジメチルアミン(NDMA)、ニトロソメチルエチルアミン(NMEA)、ニトロソジエチルアミン(NDEA)、ニトロソメチルプロピルアミン(NMPA)、ニトロソエチルプロピルアミン(NEPA)、ニトロソジプロピルアミン(NDPA)、ニトロソメチルブチルアミン(NMBA)およびニトロソエチルブチルアミン(NEBA)から選択されたニトロソアミン、あるいは、ニトロソピロリジン(NPYR)、ニトロソピペリジン(NPIP)、ニトロソモルホリン(NMOR)およびカルムスチンから選択されたニトロソアミン関連化合物であり、また、第2の化合物は、四酸化窒素を含む。
【0021】
さらなる側面において、本発明は、誘電体の存在下で、集束イオンビームによって銅をエッチングするためのFIBプロセスを提供し、この場合、その銅および誘電体は、約−15℃〜約+10℃の温度に冷却され、また、その銅および誘電体は、四酸化窒素を含むエッチング促進剤に曝される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のイオンビームエッチングを用いて2本の銅線を平削りした結果を示す図であり、この図におけるその上部の銅線は、エッチング促進剤を何ら用いることなく、純粋なイオンビームスパッタリングによってエッチングされており、また、下部の銅線は、アンモニア、NH、および水、すなわち、HOの蒸気を含む雰囲気中で、イオンビームエッチングによって平削りされている。
【図2】エッチング剤のない環境での純粋なイオンビームスパッタリングによる銅の不均一なエッチングを示す図である。
【図3】ニトロエタノールをエッチング促進剤として使用した、Black Diamond(登録商標)上の銅のイオンビームエッチングの結果を示す図である。
【図4A】平面上およびトレンチ内に気体のエッチング促進剤を用いた銅のFIBエッチングを示す概略図である。
【図4B】平面上およびトレンチ内に気体のエッチング促進剤を用いた銅のFIBエッチングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ICにおける回路編集(CE)の場合の銅配線、電力および接地面等の集束イオンビーム(FIB)エッチングに特によく適応され、その文脈で説明する。しかし、このことは、本発明の単に一つの有用性に関する例示的なものであること、また、本発明がより多くの適用性を有することは、正しく認識されるであろう。
【0024】
従来のFIB装置および工程は周知であり、本願明細書において詳細に説明しない。参照によって本願明細書に組込まれる米国特許第7060196号明細書は、本発明と同様の文脈および環境で、有機誘電体上の銅を平削りするためにガリウム(Ga)イオンを用いるFIB装置を開示しており、そのようなFIB装置は、本発明を実施するのに利用することができる。
【0025】
従来のFIB装置およびプロセスは、典型的には、ガリウム(Ga)イオンを用いていたが、異なる金属イオン、非金属イオン、希ガスイオンおよび分子イオンもFIBプロセスに有利に用いることができる。例えば、用いることのできる他の金属イオンは、ガリウムよりも重い非放射性金属イオン、例えば、インジウム(In)、水銀(Hg)、銀(Ag)、金(Au)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、タリウム(Th)および鉛(Pb)を含む。用いることのできる非金属単原子イオンは、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)およびビスマス(Bi)を含む。用いることのできる希ガスイオンは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)を含み、用いることのできる分子イオンは、NO+/−、NO+/−、N+/−、N+/−、N+/−、CO+/−、CO+/−、O+/−、SiO+/−、GeO+/−、SiO+/−およびGeO+/−を含む。
【0026】
本発明は、銅のスパッタリングにガリウムイオンを使用するFIBプロセスを用いて記載されているが、本発明が、FIBプロセスに用いられる特定のイオンに依存しないこと、および上述したイオン等の他のイオンも用いることができることは、正しく理解されるであろう。以下の説明および実施例から、当業者は、選択したイオンに用いることのできるイオンビーム実施パラメータに対して、もしあれば、適切な変更を容易に判断することができるであろう。
【0027】
上述したように、本発明は、銅に隣接する誘電体を、FIBエッチングプロセスにおけるオーバエッチングから保護し、およびエッチング作業領域内に再堆積したスパッタされた導電性の銅を酸化させてそれを非導電性状態にする、気体のエッチング促進剤を提供する。図4A、図4Bは、それぞれ、平面状の誘電体面52に堆積した銅線50、および側壁64および66を有するトレンチ62内に配置された銅線60のFIBエッチングを概略的に示す。その図に示すように、イオンビーム70が、エッチングすべき銅線50、60に向けられて、それらの銅線および隣接する誘電体が、そのイオンビームに隣接するFIBチャンバ内に設けられたガスノズル74からの気体のエッチング促進剤72に曝される。その気体のエッチング促進剤は、記載されるように、その誘電体を保護するために、およびスパッタされた銅を非導電性にするための酸化によって、そのスパッタされた銅を不動態化するように選択される1つ以上の化合物を含む。その誘電体に関する「隣接する」という言葉は、本願明細書において用いる場合、その銅の近傍にある誘電体と、その銅の下にある誘電体を意味し、また、「導電性の銅」という用語は、元素の銅と、導電性の銅化合物または銅材料とを指す。
【0028】
図4A、図4Bから正しく認識できるように、そのガスノズルはイオンビーム経路を遮ることができず、および一方の側に配置しなければならないため、FIBシステムにおける作業領域に供給されるガス流束は、あまり均一または対称的ではない。図4Aは、銅線50、80が、平坦面52に位置している場合、そのエッチング促進剤は、それらの銅線間の領域内の表面のどの箇所にも容易に到達して、その領域を、例えば、再堆積した銅を酸化させるように処理することができることを示している。しかし、その切断すべき銅線が、トレンチの底部にある場合、例えば、非常に一般的な状況である図4Bの線60の場合には、そのガスノズルからそのトレンチの底部を直接視程に入れることを実現することは、不可能である可能性がある。そこには、主要なエッチング促進ガス流72が、直接的に作用することができない(その図の壁64のような)影になった領域がある可能性がある。そのトレンチのアスペクト比(深さ対幅)が高くなるにつれて、影になる問題は大きくなる。任意の有意量のエッチング促進ガスが、壁またはそのトレンチの底部等の影になる領域に到達する唯一の機会は、他の面、例えば、図4Bの符号68に示すような壁64で反射することである。また、他の銅線82、84が、そのトレンチの垂直壁64、66上に露出する可能性があり、十分なエッチング促進ガス流束を、それらの銅線の周りの領域に供給することは難しい。そのエッチング促進ガスの粘性が過度な場合、すなわち、その促進ガスが、低揮発性および長い滞留時間を有する場合には、その促進ガスは、それらの壁に残る傾向があり、そこで作用し、および影になった領域に到達しないか、または、低流束で到達する。この場合、所望の処理、例えば、その影になった領域内の再堆積した銅の酸化、およびその誘電体の保護を行なうには、その影になった領域内に、不十分な反射ガス流束しかないかもしれない。従って、適切な粘性を有するガスを選択することにより、影になった領域に到達するための表面からのそのエッチング促進ガスの反射は、その誘電体を保護するために、または、再堆積した導電性の銅の酸化を実施するために、そのエッチング促進剤を影になった作業領域に供給するための有効なメカニズムとなる可能性がある。
【0029】
図4Bに示すように、他の金属層からの他の銅線82、84が、トレンチ壁64、66に露出する可能性がある箇所である、トレンチ62の底部の銅線60を切断する必要がある場合、銅の再堆積が、そのエッチング促進ガスが別の面からの反射後に間接的にのみ到達することが可能な領域内で生じる可能性がある(および非常に多くの場合に生じる)。表面で長い滞留時間を有する粘性のあるエッチング促進ガスは、最初に作用する点に留まる傾向があるので、そのような領域には有効に供給されることはないであろう。一方、そのエッチング促進剤に粘性があればあるほど、イオンビーム衝撃に対するその誘電体の保護にはより有効である。ここに矛盾が生じる。銅エッチング促進化合物が、下にある誘電体の保護にとって良好であればあるほど、特に狭い、すなわち、高アスペクト比(high aspect ratio:“HAR”)の孔内の再堆積した銅の酸化にとっては都合が悪くなる。
【0030】
この矛盾に対処するために、本発明は、分子当たりの炭素原子の数が少ない、より揮発性があり、およびより侵食的な銅酸化エッチング促進剤を提供する。それらの銅エッチング促進剤は、妥当な誘電体保護を促進するために、より低い作用イオンビーム電流密度で用いられる。また、本発明は、一方の化合物は、誘電体の良好な保護のために粘性があり、他方の化合物は、スパッタされて再堆積した導電性の銅を非導電性にするために、より揮発性があり、かつより侵食的な酸化剤である、銅エッチング促進剤としての異なる化合物の組合せを提供する。
【0031】
本発明は、銅エッチング促進剤の主要な2つの要件を両方共満たすエッチング促進剤を提供する。第一には、その促進剤は、銅のエッチング中に、隣接する誘電体、すなわち、従来の誘電体および低誘電率の誘電体の両方を保護する。このことは、保護される面にかなりの量の促進剤を集めることによって有効な保護ができるため、高沸点、低蒸気圧、高粘性、および表面に吸着された場合の長い滞留時間を示唆する低揮発性を有するエッチング促進剤を用いて実現することができるであろう。第二には、本発明のエッチング促進剤は、その作業領域に隣接する面上への導電性の銅のスパッタリングおよび再堆積中に、有効かつ継続的な酸化を生じる。エッチングの後に、1つの単層の厚みよりも大きい再堆積した銅を取り除くことは困難で実行不可能であるため、そのエッチング促進剤は、スパッタリング中に、および隣接する面上への単層としての再堆積中または直後に、銅を有利に酸化させる。このことは、再堆積した銅を迅速に酸化させるために、良好な揮発性を有するエッチング促進剤を用いて、十分な量(流束)の促進剤を隣接する面に供給することで実現することができるであろう。
【0032】
エッチング促進酸化ガスが、粘性が過度である場合、すなわち、高沸点および低蒸気圧により低揮発性を有する場合、その促進酸化ガスは、表面に吸着された場合の滞留時間が長い。そのガスは、影になった領域内の再堆積した銅に到達できない可能性があり、酸化剤として有効ではないであろう。従って、粘性が過度であるエッチング促進剤は、高アスペクト比を有する孔内の再堆積した銅の有効な酸化を実現できないであろう。また、そのエッチング促進剤の揮発性が高すぎる(低粘性である)場合には、その促進剤は、誘電体のエッチングを防ぐのに十分な期間、その誘電体面上に留まらない。
【0033】
本発明によれば、記載されるように、特定の種類の化合物が、既知の誘電体を、イオン、例えば、ガリウム(Ga)イオン、またはFIBプロセスに用いることのできる他のイオンによるスパッタリングから保護すること、およびそれらの種類の化合物が、銅のエッチング促進剤として有用であることが見出されている。本発明によってもたらされるそれらの種類の化合物の際立った特徴は、それらの化合物が、N−N結合(Nは窒素)を含み、その結合が、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、特定のニトロソアミンおよびニトロソアミン関連化合物、および四酸化窒素を含むということである。ニトロソアミンおよびニトロソアミン関連化合物は、前述したように、N−N結合における窒素原子のうちの1つが、酸素で飽和されており、および他の窒素原子が、2つの炭化水素基で飽和されている化合物であり、そのため、その化合物の一般式は、RN(−R)−N=Oで表すことができ、ここで、RおよびRは、酸素を含有することができ、および直接または(例えば、酸素原子を介して)間接的に互いに接続することができる線形または分岐炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。本発明の化合物の分子中のN−NまたはN−N=Oフラグメントの存在により、FIBプロセス中に、誘電体がイオンビームおよびこれらの化合物の流束に曝された場合、その誘電体は、エッチングから保護される。誘電体のスパッタリングは、Siを、ガリウム(Ga)イオンの場合にはGaNをそれぞれ生成するために、その誘電体からのシリコン(Si)と、またはそのイオンビームからのイオンと結合するそのエッチング促進剤のN−N結合からの窒素(N)による補充誘電体の成長、あるいは、SiOおよびGaNをそれぞれ生成するためにシリコンおよびガリウムと結合するそのエッチング促進剤のN−N=O結合からの窒素および酸素による補充誘電体の成長によって大幅に補償される。
【0034】
本発明の好適なエッチング促進化合物は、構造式HN−NHと、ヒドラジン一水和物(HMH)を含有する、様々な濃度のヒドラジン水溶液(N*HO)とを有するヒドラジン(N)と、1つ以上の水素原子と、ヒドロキシエチルヒドラジン(HEH)(NOH)、および、シアノエチルヒドラジン(CEH)(C)、1−Boc−1−メチルヒドラジン(N−Boc−N−メチルヒドラジン)(BocMH)(ブトキシカルボニルメチルヒドラジン)(C14)および1−N−Boc−1−(2−メトキシエチル)ヒドラジン(BocMEH)(ブトキシカルボニルメトキシエチルヒドラジン)(C18)を生成するための他の概して任意の基、例えば、ヒドロキシエチル基との置換によって得られるヒドラジン誘導体とを含み、これらのヒドラジン溶液およびヒドラジン誘導体は、約70℃〜約220℃の沸点を有する。CEHの沸点は、0.5mmHgで76〜79℃であり、BocMEHの沸点は、0.5mmHgで80℃である。
【0035】
本発明の他の好適な化合物は、四酸化窒素(N)(ON−NO)、メチル(CH)、エチル(C)、プロピル(C)またはブチル(C)から選択された線形または分岐炭化水素基によって飽和されたニトロソアミン誘導体、および他の関連するニトロソアミンを含む。最も好適なニトロソアミン誘導体は、ジメチルニトロソアミン(別名ニトロソジメチルアミンまたはNDMA)(CO)、メチルエチルニトロソアミン(別名ニトロソメチルエチルアミンまたはNMEA)(CO)、ジエチルニトロソアミン(別名ニトロソジエチルアミンまたはNDEA)(C10O)、メチルプロピルニトロソアミン(別名ニトロソメチルプロピルアミンまたはNMPA)(C10O)、エチルプロピルニトロソアミン(別名ニトロソエチルプロピルアミンまたはNEPA)(C12O)、ジプロピルニトロソアミン(別名ニトロソジプロピルアミンまたはNDPA)(C14O)、メチルブチルニトロソアミン(別名ニトロソメチルブチルアミンまたはNMBA)(C12O)およびエチルブチルニトロソアミン(別名ニトロソエチルブチルアミンまたはNEBA)(C14O)を含む。最も好適なニトロソアミン関連化合物は、ニトロソピロリジン(NPYR)(CO)、ニトロソピペリジン(NPIP)(C10O)、ニトロソモルホリン(NMOR)(C)およびカルムスチン(CCl)を含む。上述のニトロソアミン誘導体およびニトロソアミン関連化合物は、約70℃〜約220℃の沸点を有する。
【0036】
誘電体保護のための適度に良好な粘性ならびに良好な酸化効率を有することが分かっている最も好適な化合物は、ニトロソジメチルアミン(NDMA)(CO)、ニトロソジエチルアミン(NDEA)(C10O)、ヒドラジン一水和物(HMH)(N*HO)およびヒドロキシエチルヒドラジン(HEH)(NOH)である。また、酸化化合物が極めて流動的であるべき高アスペクト比(HAR)の領域に対しては、NDMAまたはNMEAまたはNDEAまたはNMPAまたはNEPAまたはNDPAまたはNMBAまたはNEBAまたはHMHまたはHEHと、四酸化窒素すなわち、Nとの組合せを用いることができる。四酸化窒素は、それを深い孔または他の高アスペクト比(“HAR”)の領域に対して理想的な酸化剤にする非常に高い蒸気圧(沸点が21℃)を有する極めて強力な酸化剤である。上記の全ての化合物は、ターゲットICの適度に低い温度で用いることができる。それらの化合物の揮発性は、温度の低下と共に低下するため、それらの化合物のターゲットの面に対する粘性は増加し、その作業領域の温度は、以下に説明するように、エッチングプロセスを制御するために制御することができる。実際には、四酸化窒素(N)は、その融点である−11.2℃に適度に近い、例えば、約−20℃〜約+10℃、より具体的には、約−15℃〜約+10℃の範囲の温度で特に有利な有用性を有している。Nは、この温度で固相を有するため、この温度の周辺の温度範囲では、Nの増加量をICの表面に集めることができる。そのため、Nは、(N−N基を有し、および低い温度で表面に有効に集められる)その誘電体の保護のために、かつ、再堆積した銅のための酸化剤として作用することが可能である。
【0037】
ICの温度は、そのICを冷却するためのFIB真空チャンバ内の熱電冷却器(いわゆるペルチェ冷却器)モジュールの表面にそのICを載せることにより、FIB銅エッチングのための所望の温度まで制御可能に低くすることができる。その熱電冷却器への電気的入力は、そのICを所望の温度に冷却するために、ペルチェ効果によって、そのICの温度を操作するように制御することができる。そのチャンバ内の熱電対は、そのICの温度を測定するのに用いることができる。参照によって本願明細書に組込まれる、2006年3月30日付のChad Rueの米国特許出願公開第2006/0065853号明細書は、エッチング中に、ICの温度を制御するのに用いることのできるFIBにおけるサンプルの温度を操作するためのそのような装置および方法を開示している。
【0038】
以下の表1は、本発明の好適な銅エッチング促進剤の特性の比較を示す。これらの促進剤は、(i)ニトロソアミン、すなわち、NDMA、NDEA、NMEA、NMPA、NEPA、NDPA、NMBAおよびNEBA、(ii)ニトロソアミン関連化合物、すなわち、ニトロソピロリジン(NPYR)、ニトロソピペリジン(NPIP)、ニトロソモルホリン(NMOR)、カルムスチン、(iii)ヒドラジンおよびヒドラジン誘導体、すなわち、ヒドラジン一水和物(HMH)、ヒドロキシエチルヒドラジン(HEH)、および四酸化窒素を含む。ニトロエタノールは、参考のためにこの表に含まれている。
【0039】
【表1】

以下の表2〜表9は、本発明による上記の気体のエッチング促進剤を利用するFIB銅エッチングプロセスの実施パラメータおよび実施例を示す。
【0040】
FIBのガリウムイオンビーム電位は、好ましくは、イオンカラムから約30kVになるように調節され、また、イオンビーム電流は、好ましくは、イオンビーム電流密度が、以下に指定するように、各エッチング促進剤のための値の推奨範囲内にあるように、約1ピコアンペア(pA)以下〜数十ナノアンペア(nA)の値に調節される。また、推奨されるチャンバガス圧力および電流密度も、本発明の各エッチング剤の場合について、以下の表2に記載してある。
【0041】
【表2】

表2のパラメータの値は、変えてもよく、また、示されている推奨値の±30%の範囲内の値を想定することができる。時間は、エッチングされた層の厚さに依存するパラメータである。
【0042】
以下の表3は、従来のおよび有機(低誘電率)誘電体に対して、本発明のニトロソアミンおよびニトロソアミン関連化合物、およびヒドラジン誘導体HEH、CEH、BocMEH、BocMHおよびHMH銅エッチング促進剤を、酸化剤である四酸化窒素、すなわち、Nと共に使用した場合の好適な作用パラメータを示す。
【0043】
【表3】

以下の表4〜表9は、酸化剤を使用しないときの、それぞれ、NDMA、NDEA、NPYR、HMH、HEHおよびCEHの場合の実施例および実施パラメータを示す。これらの表におけるパラメータのセットは、従来のSiOおよび有機誘電体と共に使用した場合に、異なるエッチング促進剤に対して良好な結果をもたらすことが分かっている。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

銅のスパッタリング速度は、イオン電流密度に比例するため、その電流密度と、特定の気体のエッチング促進剤の流束との比は、スパッタされ、再堆積した銅の酸化と、その誘電体に対する保護の提供の両方に影響を及ぼす。電流密度が高すぎる場合には、その気体の促進剤は、スパッタされ、再堆積した銅を適切に酸化させる十分な時間を有せず、また、そのガス流束が低すぎる場合は、その促進剤は、その誘電体を適切に保護しない可能性がある。一般的には、所望の比を示すように、ガス流束を選択して、電流密度を調節することが好ましい。表4〜表9の値は、テストしたエッチング促進剤に対して良好な結果を生じることが分かっており、およびそのようなパラメータが、本発明の他の促進剤に対しても適切であろうことが予想される。正しく認識できるように、それらの値は、代表的な値であり、および特定のエッチング工程の仕様に対して示された値に関する範囲内で調節することができる。
【0050】
上記のことは、本発明の好適な実施形態に関連しているが、本発明の原理および意図から逸脱することなく、それらの実施形態に関して変更が可能であることは正しく認識することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体の存在下での、銅の集束イオンビームエッチングの方法であって、
集束イオンビームを、エッチングすべき銅に対して向けること、
前記銅および前記誘電体を、ヒドラジンおよびヒドラジン誘導体、および化学構造RN(−R)−N=Oを有するニトロソアミンおよびニトロソアミン関連化合物からなる群から選択された化合物を含むエッチング促進剤に曝すことであって、RおよびRは、線形または分岐炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であり、前記化合物は、最高で約220℃の沸点を有する、前記エッチング促進剤に曝すこと
を含む方法。
【請求項2】
前記化合物は、約70℃〜約220℃の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドラジンは、ヒドラジン一水和物を含み、前記ヒドラジン誘導体は、ヒドロキシエチルヒドラジン、シアノエチルヒドラジン、ブトキシカルボニルメチルヒドラジンおよびブトキシカルボニルメトキシエチルヒドラジンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニトロソアミンは、NDMA、NMEA、NDEA、NMPA、NEPA、NDPA、NMBAおよびNEBAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニトロソアミン関連化合物は、直接または酸素を介して接続された前記RおよびR基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ニトロソアミン関連化合物は、NPYR、NPIP、NMORおよびカルムスチンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチング促進剤は、ヒドラジン一水和物、ヒドロキシエチルヒドラジン、NDMA、NDEAのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチング促進剤はさらに四酸化窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記銅および前記誘電体の温度を制御して、前記エッチング促進剤の揮発性および粘着係数を制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記銅および前記誘電体の温度を制御することは、前記温度を約−15℃〜約+10℃に制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エッチング促進剤は、約21℃以下の低い沸点を有する酸化剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤は、四酸化窒素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記四酸化窒素が、前記誘電体および前記銅の表面に固相で集められるように、前記銅および前記誘電体を、約−12℃程度の温度に冷却することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
誘電体の存在下での銅の集束イオンビームエッチングの方法であって、
集束イオンビームを前記銅の一部に向けること、
エッチング促進剤に前記銅を曝すことであって、前記エッチング促進剤は、前記誘電体をエッチングから保護するために選択された第1の化合物であって、ヒドラジンと水とから成る溶液、およびヒドラジン誘導体からなる群から選択され、約220℃以下の沸点を有する前記第1の化合物と、スパッタされた導電性の銅を非導電性にする強力な酸化剤を含む第2の化合物とを含む、前記エッチング促進剤に前記銅を曝すこと
を含む方法。
【請求項16】
前記第1の化合物は、前記誘電体上での十分な滞留時間を与えて、イオンビームエッチングによる誘電体損失を補充するために、低〜中程度の揮発性を有するように選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記銅は、前記エッチング促進剤に対する直接的な曝露から影になった第1の面を有する高アスペクト比の孔内に位置しており、前記第1の化合物は、前記促進剤が、直接作用する第2の面から前記第1の面に十分な流束で反射して、前記第1の面における再堆積した銅を酸化させるような揮発性を有するように選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
銅エッチングイオンビーム電流と、前記エッチング促進剤の流束との比を調節して、前記エッチングの近傍の面に再堆積したスパッタされた銅を実質的に完全に酸化させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の化合物は、ヒドラジン一水和物、ヒドロキシエチルヒドラジン、シアノエチルヒドラジン、ブトキシカルボニルメチルヒドラジンおよびブトキシカルボニルメトキシエチルヒドラジンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の化合物は、四酸化窒素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記誘電体は、従来の誘電体または低誘電率誘電体の一方である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
誘電体の存在下での銅の集束イオンビームエッチングの方法であって、
前記銅および前記誘電体を、約−15℃〜約10℃の温度に冷却すること、
集束イオンビームを前記銅の一部に向けること、
前記銅および前記誘電体を、四酸化窒素を含むエッチング促進剤に曝すこと
を含む方法。
【請求項23】
スパッタされた銅が、実質的に完全に酸化され、かつ前記イオンビームによってスパッタされた誘電体が実質的に補充されるように、銅エッチングイオンビーム電流を、四酸化窒素の流束に対して調節することをさらに含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−503485(P2013−503485A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526903(P2012−526903)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046449
【国際公開番号】WO2011/025770
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512047391)ティザ ラブ エル.エル.シー. (1)
【氏名又は名称原語表記】TIZA LAB,L.L.C.
【Fターム(参考)】