説明

銅箔積層体及び積層板の製造方法

【課題】プリント基板製造工程のハンドリング性向上及び歩留りアップによるコスト削減。
【解決手段】銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔Aの対向する2辺の端部で張り合わせた後、この接着した前記矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとし、次にこの積層体Dの両面に、全面を覆う大きさのドライフィルムレジストFをラミネートし、ラミネート後にドライフィルムレジストFを露光・現像してパターンを形成し、さらにこのパターン部をエッチング及びめっきにより金属パターンGを形成した後、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGが形成された2枚の積層板H。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に使用される銅箔積層体及び積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層積層体の代表的な例は、プリント回路板である。一般に、プリント回路板は、合成樹脂板、ガラス板、ガラス不織布、紙などの基材に合成樹脂を含浸させて得た「プリプレグ(Prepreg)」と称する誘電材を、基本的な構成としている。
プリプレグ表面(表裏面)には電気伝導性を持った銅又は銅合金箔等のシートが接合されている。このように組み立てられた積層物を、一般にCCL(Copper Clad Laminate)材と呼んでいる。そしてCCL材料に、さらに銅箔を、プリプレグを介して多層化したものを多層基板と呼んでいる。
前記銅又は銅合金箔の替りに、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの箔を使用する場合もある。これらの厚さは5〜200μm程度である。
【0003】
以上の工程において、銅箔の表面に異物が付着することを防ぐ目的及びハンドリング性を向上させる目的でキャリア付銅箔が用いられる。
例えば、従来知られているキャリア付銅箔(特許文献2、3、4参照)を使用した4層基板の製造工程においては、厚さが0.2〜2mmのプレス面が平滑なステンレス製のプレス板(通称、「鏡面板」と言う。)の上に、キャリアに剥離可能に接着された極薄銅箔をM面(粗面)が上になるように載置し、次に所定枚数のプリプレグ、次に内層コアと称するCCL材料に回路を形成したプリント回路基板、次にプリプレグ、次にキャリアに剥離可能に接着された極薄銅箔をM面(粗面)が下になるように載置し、これらを鏡面板の順に重ねることにより、1組の4層基板材料からなる組み立てユニットが完成する。
【0004】
以降は、これらのユニット(通称「ページ」)を2〜10回程度繰り返して重ね、プレス組立体(通称「ブック」)を構成する。次に、上記ブックをホットプレス機内の熱板上にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより、積層板を製造する。4層以上の基板については、内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。この際、使用されるキャリア付銅箔は、極薄銅箔とキャリアとが全面で接着しているため、積層後に作業者がこのキャリアを剥離するのに、かなりの力を必要とし手間がかかるという問題がある(特許文献9参照)。
【0005】
また、前記の通り、作業者はレイアップ(積層組み作業)の際に、銅箔のM面を上にして配置する、又はM面を下にして配置する作業を、交互に繰り返す必要があるため、作業効率が低下するという問題がある。さらに、銅箔及びキャリアが同寸法であるため、レイアップ時に銅箔1枚1枚を取り分けることが難しく、この点においても作業性が低下するという問題がある。
【0006】
特許文献1に記載されるような、アルミ板表裏に銅箔が接着された構造のCACを用いた回路基板が提案されている。
この4層基板の製造工程においては、アルミ板表裏に銅箔が接着された構造を有するCACの上に、プリプレグ、次に内層コアと称する2層プリント回路基板、次にプリプレグ、CACの順に重ねることで、「1枚の4層基板」の材料組み立て単位(ユニット)が完成する。以降はこの単位(通称「ページ」という。)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物(通称「ブック」)が構成される。
しかる後、このブックをホットプレス機にセットし、所定の温度および圧力で加圧成型することにより、4層基板が10枚程度同時に製造される。
4層以上の基板についても、一般的には内層コア、プリプレグの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
【0007】
この際使用されるCACは接着剤が全面に塗布されておらず、4辺の内側約10mm程度の位置に1mm程の幅で額縁状に塗工されている。そのため、CACの銅箔表面に鍍金またはエッチングをする必要がある際には、これらの薬液にそのまま投入することができない。これは、CACを構成する銅箔とアルミ箔との間に接着剤が隙間無く塗工されているわけではなく隙間があるため、そこから薬液が入り込み内部の箔を侵食する為である。
【0008】
さらに、製造に際して、CAC材料の一部にアルミ板(JIS#5182)が使用されているが、このアルミ板の線膨張係数は、23.8×10−6/°Cと、基板の構成材料である銅箔(16.5×10−6/°C)及び重合後のプリプレグ(Cステージ:12〜18×10−6/°C)に比べて大きいことから、プレス前後の基板サイズが設計時のそれとは異なる現象(スケーリング変化)が起きる。これは面内方向の回路の位置ずれを招くことから、歩留り低下の一因となる問題がある。
【0009】
プリント配線板に使用される各種材料の線膨張係数(常温)は、下記の通りである。アルミニウム板の線膨張係数が、他に突出して大きいことが分かる。
・銅箔:16.5(×10-6/°C)
・SUS304:17.3×10-6/°C
・SUS301:15.2×10-6/°C
・SUS630:11.6×10-6/°C
・プリプレグ(Cステージ):12〜18×10-6/°C
・ アルミニウム板(JIS#5182):23.8×10−6/°C
本願発明には直接関係しないが、キャリア付極薄銅箔に関する例として次の文献がある(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0010】
一方、2辺を超音波溶接等で接合固定したキャリア箔と銅箔接合体の提案がある(特許文献5参照)。この2辺を超音波溶接等で接合固定されたキャリア箔と銅箔の接合体を生産する際にも、上記同様にエアー抜き作業が必要になるが、皺を発生しないようにエアー抜きを行うことは困難である。なぜなら、回転ローラーを押し付け、エアーを搾り出す際にシート間にズレを伴い、この結果ズレが生じない固定された接合部では歪がたまり、皺が入るか、又は亀裂が入る等の不具合が発生するからである。
【0011】
剛性がある強固なキャリアに銅箔を接合することは比較的容易である(特許文献6、7、8参照)。強固なキャリアへ貼り合わせ整堆した場合、直後は整堆されたキャリアおよび銅箔間またはキャリア付き銅箔間にはエアー層が存在するが、キャリアに剛性があることからシート銅箔のように凸形状には至らず、積み重ねることによって次第にエアー抜きが成されるからである。
しかし、このリジッドキャリアにも問題がある。それは高い剛性のため易剥離接着を施した場合、ハンドリング等でたわんだ際に銅箔とキャリアが瞬間的に分離し、隙間にエアーが吸引されることで、結果として生じた空隙に塵や異物を巻き込む。即ちベローズ効果が生じるという問題があるからである。
【0012】
また、下記特許文献9には、全面が接着された構成のキャリア付き銅箔が提案されているが、この場合は引き剥がし強度が上昇し、剥離作業が難しくなるという問題があり、またハンドリングの際にたわみが発生し、このたわみの影響で弱接着となっている部分から、エアー及び異物が混入するという問題を生ずる。
これらの特許文献の問題点については、本願発明との対比において、詳細を後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3100983号公報
【特許文献2】特開2005−161840号公報
【特許文献3】特開2007−186797号公報
【特許文献4】特開2001−140090号広報
【特許文献5】特開平10−291080号公報
【特許文献6】特開2002−134877号公報
【特許文献7】国際公開WO2007−012871号公報
【特許文献8】特表平6−510399号公報
【特許文献9】特開2001−68804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、これらの事に鑑みてなされたものであり、プリント配線板に使用される銅箔積層体及び積層板の製造方法に関し、その目的とするのはプリント基板製造工程のハンドリング性向上及び歩留りアップによるコスト削減を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、積層体の製造工程、特に接着剤の選択と塗工方法により大きく改善できるという知見を得た。
この知見に基づき、本発明は、
1)銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔の対向する2辺の端部で接着させた後、この接着した矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとしたことを特徴とする銅箔積層体
2)前記積層体Dの銅箔Cに金属パターンGが形成され、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGを有する2枚の積層板Hであることを特徴とする1)記載の銅箔積層体
3)接着剤Bが、エポキシ系、アクリル系、メタクリレート系、シリコンゴム系、セラミック系、ゴム系のいずれかであることを特徴とする1)又は2)記載の銅箔積層体
4)積層体Dの厚みが100μm以上であることを特徴とする1〜3のいずれか一項に記載の銅箔積層体、を提供する。
【0016】
本発明は、また
5)銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔Aの対向する2辺の端部で張り合わせた後、この接着した前記矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとし、次にこの積層体Dの両面に、全面を覆う大きさのドライフィルムレジストFをラミネートし、ラミネート後にドライフィルムレジストFを露光・現像してパターンを形成し、さらにこのパターン部をエッチング及びめっきにより金属パターンGを形成した後、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGが形成された2枚の積層板Hとすることを特徴とする積層板の製造方法
6)前記積層体を搬送する際、接着剤Bの塗工方向と同一の向きで搬送することを特徴とする5記載の積層板の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の銅箔積層体及び積層板の製造方法は、銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔の対向する2辺の端部で接着させた(この段階のものを、DCC「商品名:DuoCopper&Career」という)後、この接着した矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dの構造を備えているので、作業者のハンドリング性が向上し、剥離も容易となる。
銅箔(以下の説明には、「銅合金箔」を含む。)とプリプレグの積層体(CCL)は、薄くなるほど基板自体にコシが無くなり、容易に変形して、特にエッチングまたはメッキ工程でローラー上を搬送する際にローラー間に転落してしまうため、量産工程において極薄コアレス基板を生産することは困難であった。
一般に、これらの量産工程を流すためには全厚で、およそ100μm以上が必要であるとされる。
【0018】
本発明はこの点に鑑みたものであり、DCC(商品名:DuoCopper&Career(上側銅箔と下側銅箔の2層銅箔))を用い、その両面にそれぞれ50μm厚のCCL(両側で合計100μm厚)を一度に作製することにより、量産工程に流す搬送材としてのコシを有する厚みの下限100μm以上を確保することで、極薄コアレス基板の量産性を改善することが可能となった。
また、この製法により、最終段階でDCCの接着面から分離することにより、1枚の搬送材から2枚の極薄コアレス基板が生産可能になるので、生産能力が2倍になり、コスト削減に寄与するという著しい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の製造工程の一例を示す説明図であり、工程の前半を図1に示す。
【図2】本願発明の製造工程の一例を示す説明図であり、工程の後半を図2に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一般に、プリント回路板は、合成樹脂板、ガラス板、ガラス不織布、紙などの基材に合成樹脂を含浸させて得た「プリプレグ(Prepreg)」と称する誘電材を用い、このプリプレグを間に挟んで、電気伝導性を持った銅又は銅合金箔等のシートが接合されている。このように組み立てられた積層物を、一般にCCL(Copper Clad Laminate)材と呼んでいる。
この一般的に用いられるCCLについては、コア材の厚さを極限まで薄くすることで、全体の厚さを薄くする工法が求められている。現在CCLのメーカーではこの工法に対応すべく50μm厚程度のコア材となる銅貼り積層板(CCL)が販売されている。
【0021】
この場合、層の構造は、銅箔18μm/プリプレグ14μm/銅箔18μmである。すなわち、2枚の銅箔がプリプレグを間に挟む構造である。このCCLを使用した場合、CCLが薄くなるにつれて、コシが無くなり、容易に変形してしまうため、プリント基板の生産が難しくなるという問題が発生した。
特に、銅箔のエッチング又はメッキ工程で、ローラー上を搬送する際に、薄くてコシがないCCLは容易に変形してローラー間に転落してしまうという問題が生じた。一般に、これらの量産工程でCCLを搬送するためには、全厚で概略100μm以上が必要とされている。
【0022】
本発明はこの点に鑑みたものであり、まず銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔Aの対向する2辺の端部で張り合わせる。次に、この接着した2枚の矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとする。上記の接着剤Bとして、エポキシ系、アクリル系、メタクリレート系、シリコンゴム系、セラミック系、ゴム系のいずれかを使用することができる。
この銅箔積層体の構造が、本願発明の大きな特徴である。すなわち、矩形の箔Aは、2枚の矩形の箔からなり、この両面にプリプレグP及び銅箔Cが、それぞれ張り合わされた構造を有している。
【0023】
この結果、例えば一般に使用されている銅箔18μm、プリプレグ14μmを用いた場合、銅箔C(18μm)/プリプレグP(14μm)/2枚の矩形の箔A(銅箔18μm+銅箔18μm)/プリプレグP(14μm)/銅箔C(18μm)となり、合計の厚さは、100μmとなる。
銅箔のエッチング又はメッキ工程でローラー上を搬送する際に、全厚で概略100μm以上が必要とされているが、上記の厚さでは全く問題がない。
すなわち、薄くてコシがないCCLは容易に変形してローラー間に転落してしまうという事故は生じることがなく、従来の設備で製造が可能であることを意味している。
【0024】
次に、この積層体Dの両面に、全面を覆う大きさのドライフィルムレジストFをラミネートし、ラミネート後にドライフィルムレジストFを露光・現像してパターンを形成し、さらにこのパターン部をエッチング及びめっきにより金属パターンGを形成する。
そして、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGが形成された2枚の積層板Hを同時に製造することができる。
【0025】
上記の通り、DCCに、片側当たり50μmのCCL(両側で合計100μm)を作製し、全厚を量産工程でCCLを搬送する際の下限とされる100μm以上とすることで、搬送に耐え、それによって極薄コアレス基板の量産性を改善することができると共に、1枚の搬送材から最終的にDCCの張合せ面から分離することにより、極薄(コアレス)基板2枚が同時に生産可能になる。これにより、生産能力が2倍になり、コスト削減に寄与することが可能となる。
【0026】
また、DDCの張合せでは辺から10mmの位置に1mm幅に辺に沿って塗布するのが望ましいが、この塗布位置と塗布の幅はDCCの設計に応じて変更することは任意である。また、その塗布方向が搬送方向に平行である方が、搬送方向に直交する場合に比べて、搬送材のコシが強くなり、搬送性がアップする効果がある。
【0027】
発明においては、レイアップ作業者が解体する際の負荷を低減するために、接着剤Bの接着強度は500g/cm以下の易剥離性接着剤を使用することが望ましい。また、ある程度の接着強度が必要であり、5g/cm以上の接着剤Bを使用するのが良い。
【0028】
本発明は、接着強度500g/cm以下の接着剤を厚さ1−100μmのキャリアの2辺に接着することができる。この工程は、既に本出願人が先に出願した先願の発明(特願2009−290424)の技術を利用できる。
この先願の発明では、「キャリアをボビンから巻き出しながら、その対向する両端部に接着剤を塗工し、接着剤を塗工した側に、金属箔をボビンから巻き出しつつ重ねて両者を接着し、次にこれを裁断し、裁断された積層体を整堆し、整堆した積層体からなる裁断物の中央の盛り上がりが大きくなったときに、裁断物の上部からローラー掛けして、裁断物間及び積層体内に存在する空気を抜き、しかる後に接着剤を硬化させて相互に接着する積層体の製造方法」を採用しているが、先願の発明のキャリアと銅箔の接着という工程と、本願発明の銅箔相互を接着するという材料上の若干の材料の差異はあるが、同様に適用できる。
【0029】
また、先願の発明は、さらに次の要件を提示している。同様にキャリアと銅箔の相違を除くと、いずれも本願発明に適用できるものである。
その骨子は、「キャリアと金属箔Bが交互に重なり合う矩形の積層体であって、キャリアの耐力又は降伏応力が20〜500N/mmであり、当該キャリアAと金属箔Bとが接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤により、対向する2辺の端部で接着されていることを特徴とする積層体」、「キャリアAと金属箔Bが交互に重なり合う矩形の積層体であって、キャリアAの耐力又は降伏応力が20〜500N/mmであり、当該キャリアAと金属箔Bとが接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤により、対向する2辺の端部で接着されていることを特徴とする積層体」、「塗布後3分経過後の粘度が300万mPa・s(25°C)以下である接着剤を用いる前記積層体」、「塗布後3分経過後の粘度が100万mPa・s(25°C)以下である接着剤を用いる前記積層体」、「接着剤が、金属箔Bのプリント回路基板として使用する領域外の部分で塗工されており、キャリアAと金属箔Bとが接着されている」前記積層体、「接着剤が、点又は線状に塗工されている前記積層体」、「接着剤の塗工位置が、プリプレグ及び/又はコア材の積層基板材料よりも外側に配置されている前記積層体」である。これらは、いずれも、本願発明に適用できるものである。
【実施例】
【0030】
次に、実施例について説明する。なお、この実施例は、発明の理解を容易にするものであって、この実施例に発明が拘束されるものではない。発明は、特許請求の範囲に記載する要件とそれを裏付ける明細書に記載する技術思想の全体から把握されるべきものであり、本願発明は、これらを包含する。
【0031】
本発明の実施例1を、図1及び図2に基づいて説明する。なお、図1及び図2は連続した工程の説明図であり、前半の工程を図1に、後半の工程を図2に示す。
まず、図1の工程(1)に示すように、DCC(上側銅箔18μm/下側銅箔18μm、対向する2辺に接着材を塗工し張り合わせたもの)を準備した。
この場合、粘度が200−300万mPa・sの接着剤を使用し、一方の銅箔をボビンから巻き出しながら対向する両端部に塗工幅3mmで塗工した。塗工は線状とした。なお、点状に塗工した場合も同様の効果が得られた。
【0032】
次に、この銅箔の接着剤を塗工した側に、他方の銅箔をボビンから巻き出しつつ重ねて両者を接着し、次にこれを裁断し、裁断された積層体を整堆し、裁断物の上部からローラー掛けした(エアー抜き)。この結果、粘度が200−300万mPa・sであれば、皺や亀裂の発生はない状態で、張り合わせが可能であった。このようにしてDCCを事前に作製した。
【0033】
次に、図1の工程(2)、(3)、(4)に示すように、作製したDCCの両面に、プリプレグ14μm及び銅箔18μmを順にセット(積層)し、ホットプレスにより接合しCCL(Copper Clad Laminate)とした。
この結果、積層体CCLは、それぞれで50μm厚のコア材二枚及び銅箔二枚を外表面に貼りあわせた構造となり、全厚で100μmとなった。すなわち、銅箔C(18μm)/プリプレグP(14μm)/2枚の矩形の箔A(銅箔18μm+銅箔18μm)/プリプレグP(14μm)/銅箔C(18μm)とし、合計の厚さ100μmの積層体が得られた。
【0034】
次に、図1の工程(5)、(6)に示すように、この両面に積層体CCL全面を覆うような大きめのドライフィルムレジストをセットし、ラミネートした。ここで、ドライフィルムレジスト(DFR)とは、片面・両面・多層基板の回路形成に使用されるフィルム状のエッチングレジストであり、感光性樹脂をフィルム化したものである。
DFRは、配線基板のエッチング工程、テンティング、めっき工程で使用される。DFRをウェットエッチング法で使用する場合は、(I)CCLなどの金属上にDFRをラミネートし、図2の工程(7)に示すように、(II)露光、現像により設計したレジストパターンを形成後、(III)対象とする金属を溶解するための酸性溶液等でエッチングを行う手順をとり、これによって、微細な配線パターンを得ることができる。
【0035】
これらのドライフィルムレジストFをラミネート工程(6)、ラミネート後にドライフィルムレジストFを露光・現像してパターンを形成する工程(図2の(7)の工程)、さらにこのパターン部をエッチング及びめっきにより金属パターンGを形成する工程で、ローラー上を搬送する際に、ローラー間に転落してしまうという事故は一切なかった。
【0036】
また、銅箔よりも大き目のドライフィルムレジストでラミネートすることで、積層体CCLはドライフィルムにより包まれた構造になり、この結果、次工程でエッチング又はメッキを行う際に薬液が浸入しない効果が得られた。
次に、図2の工程(8)に示すように、露光および現像を行った後にメッキを施すことで、各CCLの片面に銅のパターンを形成した。その後、図2の工程(9)に示すように、に示すように4辺をカットし、さらに図2の工程(10)に示すように、各CCLを分離した。
その後、図2の工程(11)に示すように、レジストを剥離することで、片面に銅パターンを形成した2枚のCCLを作製することができた。図2の(11)では、1枚のCCLのみに銅パターンが作成されたように見えるが、これは上下2枚に銅パターンを形成したCCLに作製したものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の銅箔積層体及び積層板の製造方法は、銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔の対向する2辺の端部で接着させた後、この接着した矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dの構造を備えているので、作業者のハンドリング性が向上し、剥離も容易となる。
銅箔とプリプレグの積層体(CCL)は、薄くなるほど基板自体にコシが無くなり、容易に変形して、特にエッチングまたはメッキ工程でローラー上を搬送する際にローラー間に転落してしまうため、量産工程において極薄コアレス基板を生産することは困難であった。一般に、これらの量産工程を流すためには全厚で、およそ100μm以上が必要であるとされる。
【0038】
本発明は、DCC(上側銅箔と下側銅箔の2層銅箔)を用い、その両面にそれぞれ50μm厚のCCL(両側で合計100μm厚)を一度に作製することにより、量産工程に流す搬送材としてのコシを有する厚みの下限100μm以上を確保することで、極薄コアレス基板の量産性を改善することが可能とするものである。また、この製法により、最終段階でDCCの接着面から分離することにより、1枚の搬送材から2枚の極薄コアレス基板が生産可能になるので、生産能力が2倍になり、コスト削減に寄与するという著しい効果があるので、プリント配線板に使用される銅箔積層体及び積層板の製造方法として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔の対向する2辺の端部で接着させた後、この接着した矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとしたことを特徴とする銅箔積層体。
【請求項2】
前記積層体Dの銅箔Cに金属パターンGが形成され、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGを有する2枚の積層板Hであることを特徴とする請求項1記載の銅箔積層体。
【請求項3】
接着剤Bが、エポキシ系、アクリル系、メタクリレート系、シリコンゴム系、セラミック系、ゴム系のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の銅箔積層体。
【請求項4】
積層体Dの厚みが100μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銅箔積層体。
【請求項5】
銅又は銅合金からなる矩形の箔Aを、接着強度5g/cm〜500g/cmである接着剤Bにより、前記矩形の箔Aの対向する2辺の端部で張り合わせた後、この接着した前記矩形の箔Aの両面に、プリプレグP及び銅箔Cを順に張り合わせて積層体Dとし、次にこの積層体Dの両面に、全面を覆う大きさのドライフィルムレジストFをラミネートし、ラミネート後にドライフィルムレジストFを露光・現像してパターンを形成し、さらにこのパターン部をエッチング及びめっきにより金属パターンGを形成した後、前記接着剤Bによる張り合わせた部分から剥離して、片面に金属パターンGが形成された2枚の積層板Hとすることを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項6】
前記積層体を搬送する際、接着剤Bの塗工方向と同一の向きで搬送することを特徴とする請求項5記載の積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235537(P2011−235537A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108996(P2010−108996)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】