説明

鋼桁と杭の剛結構造

【課題】耐久性、施工性及び耐力が向上した剛結部構造を提供する。
【解決手段】上部建築構造体部材である鋼桁30と下部建築構造体部材である杭(40)を剛結する鋼殻体構造であって、前記鋼殻体50は、密閉六面体であり、下面に前記杭(40)を挿通させる穴を備えた密閉六面空間の鋼殻体を有し、該穴に前記杭(40)の上部が貫入され、前記鋼殻体50に前記鋼桁30の端部が挿入され、少なくとも前記鋼殻体内部の空間部にコンクリート60が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部土木・建築構造体部材である鋼桁と下部土木・建築構造体部材である杭を連結するための鋼殻体構造に係る。特に、複合ラーメン橋の剛結部に用いるのに好適な、鋼桁と杭の剛結構造、該剛結構造で鋼桁と接合された橋台や橋脚、該橋台や橋脚を備えた複合ラーメン橋、及び、前記剛結部構造を実現するための鋼桁と杭の剛結方法に関する。
【0002】
ここで、下部土木・建築構造体部材とは、土木・建築構造体を構成する部材のうち、杭やフーチング等の下部(基礎)土木・建築構造体部材をいう。また、上部土木・建築構造体部材とは、土木・建築構造体の上部建築を構成する部材であって、杭やフーチング等の下部(基礎)土木・建築構造体部材を除く。
【背景技術】
【0003】
従来の橋台等の躯体に桁等の鋼構造及び杭基礎構造を剛結させる構造は、図19に例示する従来技術1の如く、躯体を鉄筋コンクリート(RC)構造14とした上で、鋼床版桁やI桁でなる主桁10等の鋼構造にはコンクリートとの結合作用のためのずれ止め(例えばスタッドジベル(孔あき鋼板ジベル(PBL)なども含む)等を設け、又、鋼管杭12等でなる杭基礎頭部には、剛体挙動する鉄筋コンクリート構造16を用いた剛結部構造が用いられていた。鉄筋コンクリート構造16には鋼管杭12の頭部が差し込まれ、鋼管杭12はコンクリートとリングジベルで連結される。図において、18はRC構造内の鉄筋である。
【0004】
又、特許文献1の図7や特許文献2の図1に記載された従来技術2では、図20に示す如く、主桁10に箱構造の横桁22を取り付けている。横桁22は、その上フランジ(上板)22A(=主桁10の上フランジ10A)、横桁22のウェブ板(前後板)22B、横桁22のダイヤフラム(左右の側板)(=主桁10のウェブ10B)、横桁22の下フランジ(下板)22C(=主桁10の下フランジ10C)でなる鋼殻を構成し、鋼管杭12の頭部を鋼殻内に差し込んで、鋼殻内にコンクリート24を充填することで、鋼管杭12と連結している。ここで、鋼管12側は充填コンクリート24とリングジベルで合成される。なお、下フランジ22C側はコンクリート型枠としての部材であればよく、密閉構造ではない。特に特許文献2では、I形式主桁10の上フランジ10A側を密閉しないために開放されている。図において、26は、主桁10上に配設されるRC床版である。
【0005】
又、特許文献2の図6に記載された従来技術3では、図21に示す如く、主桁10とは別構造の枕梁鋼殻(上面開放された鋼殻箱構造)28を主桁10の下に設置している。枕梁鋼殻28は、主桁10を支えるウェブ板(前後板)28A、同じくダイヤフラム(左右板)28B、同じく下フランジ(下板)28Cからなる5面箱構造を有する。図において、10Dは、主桁10の枕梁用横桁である。ここで、主桁鋼殻とは鋼殻同士の結合はせず、主桁側に配置した結合材(ジベル11等)により充填コンクリート24を通して、枕梁鋼殻28と主桁鋼殻が連結される。従って、ジベル11等の結合材が必須構造体となる。鋼管杭12の頭部は枕梁鋼殻28に差し込まれ、鋼殻内にコンクリート24が充填される。鋼管12側は、充填コンクリート24とリングジベル又は鋼管12に直接孔を開けた孔あき鋼板ジベルで合成される。
【0006】
又、非特許文献1の図11.1.3には、脚がRC構造で主桁から鋼殻を下に延ばし、これに合成機構体を配設して主桁と脚とを剛結した、密閉構造ではない従来技術4が記載されている。
【0007】
更に、本発明に類似するものとして、非特許文献2に記載された鋼とコンクリートのサンドイッチ構造の従来技術5がある。これも本発明と同様に充填コンクリートを持つ鋼殻六面体構造であり、その密閉構造による有利性を構造部材としてこれまでに利用されてきた。これまでは、鋼殻六面体構造を単独構造として、例えば床版セグメントやトンネル用覆工セグメント等として使われてきた。即ち、部材を一体化する構造としては用いられておらず、鋼殻六面体構造の外面から外力が働き、鋼殻六面体構造の一部でその外力を支持している構造である。
【0008】
【特許文献1】特開2005−139613号公報(図7)
【特許文献2】特開2003−313815号公報(図1、図6)
【非特許文献1】土木学会「鋼・コンクリート複合構造の理論と設計(1)基礎編:理論編」 173頁〜175頁
【非特許文献2】上田 多門他「鋼コンクリート系サンドイッチ構造」コンクリート工学 Vol.30,No.5(1992年5月)5頁〜20頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術1〜4においては、主構造が密閉されていないために、密閉の効果は期待できず、変形が大きく、耐力も低い。更に、連結のために、主桁構造側にジベル等を配設しなければならない。特に、従来技術1では、結合部がRC構造であることから変形が大きくなり、剛結部のひび割れによる耐久性の悪化、及び、十分な耐力を得るには内部に鉄筋を密に配置しなければならず、又、鉄筋が他の鋼材と交錯することになり、施工性の悪化や耐力の低下を避けることはできない。更に、施工時には型枠を必要とする。又、容積も大きくなる。又、従来技術2及び3においても、一部には鉄筋の配置が必要となり、一部には型枠が必要となる。更に合成機構体も必要となる。従来技術3では、更に主桁間に鋼杭が配置されることが条件となり、互いの配置に任意性が無い等の問題点を有していた。
【0010】
又、サンドイッチ構造の従来技術5においても、完全に密閉されておらず、効果は限定的であった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、耐久性、施工性及び耐力が共に向上した剛結部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上部建築構造体部材である鋼桁と下部建築構造体部材である杭を剛結する鋼殻体構造であって、前記鋼殻体は、密閉六面体であり、下面に前記杭を挿通させる穴を備えた密閉六面空間の鋼殻体を有し、該穴に前記杭の上部が貫入され、前記鋼殻体は前記鋼桁と一体化され、少なくとも前記鋼殻体内部の空間部にコンクリートが充填されていることを特徴とする鋼桁と杭の剛結構造により、前記課題を解決したものである。
【0013】
ここで、鋼殻体が鋼桁と一体化するとは、鋼殻体に鋼桁を挿入する形態の一部として、鋼殻と鋼桁の一部とを共有させる場合も含む。
【0014】
本発明は、又、前記密閉六面空間の上面の一部を前記鋼桁上面と同一として、前記密閉六面空間の上面を前記鋼桁上面と一体化したものである。
【0015】
又、前記鋼桁の上面を鋼殻体の上面と一体化した状態で、該鋼殻体内部に挿入し、前記鋼桁の端部を該鋼殻体の鉛直面と接合したものである。
【0016】
又、前記密閉六面空間の橋軸直交幅と橋軸方向幅を、前記鋼桁の桁高と同程度としたものである。
【0017】
本発明は、又、前記の剛結構造で鋼桁と接合されていることを特徴とする橋台や橋脚を提供するものである。
【0018】
又、前記の橋台又は橋脚を備えたことを特徴とする複合ラーメン橋を提供するものである。
【0019】
本発明は、又、鋼桁と杭を剛結する方法であって、密閉六面空間の鋼殻体の上面を鋼桁上面と一体化し、前記杭の上部を前記鋼殻体の下面に設けられた穴に通すことにより、該鋼殻体に挿入し、前記鋼桁の端部を鋼殻体の鉛直面と接合させた上で、少なくとも該鋼殻体内部の空間にコンクリートを充填させることを特徴とする鋼桁と杭の剛結方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の基本構造要素は、図1に示す鋼桁30と、例えば鋼管でなる杭(鋼杭)40と、橋台や橋脚の躯体の一部となる密閉鋼殻六面体(以下、鋼殻体又は六面体とも称する)50と、該六面体50内に充填されたコンクリート60であり、前記密閉鋼殻六面体50と該六面体50内に充填されたコンクリート60により、図2に示す如く、鋼桁30と鋼杭40を結合・一体化した構造を特徴とする。
【0021】
本発明は、鋼桁30と鋼杭40のそれぞれの断面力を伝達する結合構造であり、鋼桁30あるいは鋼杭40の塑性領域あるいは破壊域までも断面力が伝達できることが望ましい。
【0022】
本発明においては、コンクリート60を密閉鋼殻六面体50に充填するようにしたので、充填されるコンクリートのためだけの型枠を必要とせず、施工上有利である。
【0023】
断面力の伝達経路は、上載荷重−鋼桁30−密閉鋼殻六面体50−該六面体50内に充填されたコンクリート60−鋼杭40−基礎地盤となる。しかし一部の断面力については、鋼桁30から密閉鋼殻六面体50内に充填されたコンクリート60に直接流れるものも考えられ、この場合の伝達経路は、鋼桁30−密閉鋼殻六面体50内に充填されたコンクリート60−鋼杭40−基礎地盤となる。
【0024】
図3に示す前記鋼桁30と密閉鋼殻六面体50の結合方法には、
(1)鋼桁30の一部が密閉鋼殻六面体50の一部と共通部材であり、他の部分は溶接接合、あるいは高力ボルト接合された構造
(2)鋼桁30と密閉鋼殻六面体50は、それぞれ独立した構造で、それぞれが溶接接合、あるいは高力ボルト接合された構造など
が考えられる。
【0025】
鋼床版桁の場合は、(1)の結合方法が採られる場合が合理的で、共通部材は、デッキプレート(例えば密閉鋼殻六面体50の天板)とウェブプレート(密閉鋼殻六面体50の側面板)である。
【0026】
密閉鋼殻六面体50と鋼桁30は、溶接接合等により一体化される。このとき、図4に示す密閉鋼殻六面体50の各面の大きさ(高さh、長さb、奥行き幅d)と、各面の鋼板厚さtは、与えられた断面力を伝達するのに十分な大きさ、厚さを持つ必要がある。又、充填コンクリート60の打設圧力に十分耐え得る鋼板厚さtを持つ必要がある。
【0027】
更に、密閉鋼殻六面体50と充填されたコンクリート60を介しての鋼杭40との結合が、本願発明の基幹を成すものである。即ち、密閉鋼殻六面体50と鋼杭40とは、図5に示す如く、密閉構造の鋼殻六面体50の中に充填されたコンクリート60と、密閉鋼殻六面体50の密閉性によって一体化される。このとき、図6に示される鋼杭40の埋め込み長hp(図5参照)は、与えられた断面力を伝達するに十分な大きさでなければならず、充填コンクリート60と鋼杭40との関係で設計される。断面力として引抜力がある場合には、充填コンクリート60と鋼杭40との間の見掛け付着力を増すために、鋼管(40)に合成機構体等を配設することもできる。
【0028】
前記密閉鋼殻六面体50の各面の大きさh、b、dと、各面の構成厚さt、及び、各面の溶接接合部の強度は、充填コンクリート60によって伝達される断面力に対して十分な大きさ、厚さ、強度を持つようにされる。
【0029】
本発明においては、鋼殻六面体構造(50)の内部に鋼杭40を挿入して、充填コンクリート60を持つ密閉鋼殻六面体構造の有利性を利用して、鋼殻六面体構造と鋼杭の力(断面力)の伝達を行なう。このとき、前記したように、鋼殻六面体構造は橋梁桁に結合されているので、橋梁桁で受けた外力は、鋼殻六面体構造を通して基礎構造である鋼杭に伝達される。密閉構造による有利性とは、充填コンクリートを持つ鋼殻六面体構造の内部に挿入された鋼杭から断面力が作用したときに、その充填コンクリートを取り囲む鋼殻六面体構造が3次元的に拘束する密閉構造であるが故に、充填コンクリートが通常持ち合わせる強度が大きくなり、より大きな鋼杭の断面力に対して破壊を伴わず鋼殻六面体構造に伝達できることになる。又、同じく六面体構造の拘束により、鋼杭を拘束する剛性が高まり、同じ鋼杭の断面力に対して、鋼杭の変形を低く抑えられる。従って、鋼杭の持つ断面性能を損なうことなく、鋼殻六面体構造に受け渡すことが可能となる。
【0030】
即ち、図7に示す如く、Aの部分の充填コンクリート60は圧縮力を受けるが、鋼殻(50)により密閉されたコンクリートが3次元効果を発揮して破壊には至らず、見掛け上梃子の支点の役割を果たす。
【0031】
一方、Bの部分の充填コンクリート60は、見掛け上梃子の作用から圧縮力を受けるが、鋼殻(50)により密閉された3次元効果からコンクリートは破壊に至らず、高い断面力伝達能力を発揮する。
【0032】
本発明では、主桁との接合部の外側全てを鋼板で覆ってコンクリートを充填したので、別途ずれ止めを使う必要性は無い。更に、鋼殻の抗頭部挿入用開口部以外の外側全てを鋼板で覆ったので、その鋼殻による拘束によってコンクリートに対する鉄筋の役割を果たし、充填コンクリートには鉄筋が無くても良い。鋼板で覆ったことが、充填コンクリートに対して拘束効果を高め、ずれ止めなどの接合材を不要にしている。更には、コンクリートのひび割れを原因とする材料劣化も、鋼殻に覆われているために軽減され、構造物の耐久性を大幅に向上させる。又、充填コンクリートのための型枠の役割も果たすために、型枠が不要となり、現地作業が軽減される。更には、鉄筋あるいはずれ止めが不要であるため、構造容積も小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0034】
本実施形態は、図2に示す如く、例えば上フランジが鋼床版32とされた鋼床版桁でなる主桁30と、鋼杭40とを、内部にコンクリート60が充填された鋼殻六面体構造(鋼殻体とも称する)50で剛結したものである。
【0035】
前記主桁30は鋼殻体50の一部であり、主桁30の下部にも鋼殻箱52が作られ、主桁30と一体になって、鋼殻体構造を形成している。このように、鋼殻箱52を主桁30の下にも構成することで、主桁30の芯位置と、鋼杭40の位置を独立配置できる。主桁30は、鋼床版桁の他、I桁や合成床版桁であっても良い。
【0036】
前記鋼殻体50は、主桁30の鋼床版32でなる上板と、主桁30の横桁となる上側の前後板34、35と、下側の鋼殻箱52の前面板54及び背面板55でなる下側の前後板と、主桁30のウェブ36と鋼殻箱52のダイヤフラム56でなる左右の側板と、鋼殻箱52の床板58でなる下板で構成される六面密閉構造を有する。
【0037】
鋼殻箱53の側板は、主桁30のウェブ直下に配置したダイヤフラム56とすることが一般的であるが、必ずしもウェブとダイヤフラムとは一致させる必要なく、側板を独立させて鋼殻箱を形成することも考えられる。この場合は、主桁ウェブとは関係ない位置に、ダイヤフラムが立てられて、鋼殻の側板を形成することになる。
【0038】
前記鋼杭40の頭部は、鋼殻箱52に差し込まれ、鋼殻体50内にコンクリート60が充填される。この際、鋼殻体50と充填コンクリート60とは、ジベル等の積極的な合成材を設けなくても、鋼殻体六面の閉塞作用によって連結される。一方、鋼杭40側は、必要に応じて、合成材(例えばジベル)によって充填コンクリート60と合成することができる。
【0039】
次に、コンクリート充填鋼殻の設計方法について説明する。
【0040】
コンクリート充填鋼殻構造の標準的な設計手法は確立されていない。従って、近似する適切なモデルから既存の設計手法を用い断面寸法などを設計する。以下、鋼床版桁を主桁とする場合を例にとり簡単に設計手法例を示す。
【0041】
・ 上板、ダイヤフラム(側面板)の設計
上部工の設計によって決定された鋼床版桁の断面から、断面力伝達を考えて鋼殻の上板は鋼床版デッキ板厚を延長させるのがよい。ダイヤフラム(側面板)は、主桁からの断面力を確実に伝達させることを考慮して主桁直下に配置することがよく、その板厚も主桁ウェブ板厚と同等以上とするのがよい。
【0042】
・ 前面板、背面板の設計
a.立体フレーム計算より得られる剛結部に発生する断面力を用い、鋼材を鉄筋とみなしRC部材として設計する(設計荷重時)。
b.施工時のフレッシュコンクリート側圧に対して設計フレッシュコンクリート側圧の最大値を用い、主桁ウェブ(ダイヤフラム)、天板又は主桁下フランジ、底板で固定された垂直・水平リブを持つ4辺固定板として設計する(仮設時)。
c.鉛直リブや、水平リブがある場合は、これらを六面鋼殻体の剛性を増すことを期待して付加的に利用するために、それらのリブに孔を開けることもよい。また、積極的に、孔あき鋼板ジベル(PBL)として使用し剛結部の変形を抑えるという方法をとることもできる。
【0043】
・ 底板の設計
a.杭頭結合部に発生する水平支圧応力の合力が底板に作用するとみなし、断面を設計する(設計荷重時)。
b.フレッシュコンクリートの鉛直圧に対し、側面板、前面板、背面板とで固定された縦・横リブを持った4辺固定板として設計する(仮設時)。
【実施例1】
【0044】
図8に、主桁構造を鋼床版桁としたときの実施例1を示す。
【0045】
この実施例1では、主桁横桁と鋼殻箱の前面板54及び背面板55が同じ鋼板で構成されると共に、鋼杭40が全ての主桁30のウェブ36間に1本ずつ配設されている。
【実施例2】
【0046】
この実施例2では、図9に示す如く、鋼杭40が所定の主桁30のウェブ36間に、間を置いて配設されている。他の点については実施例1と同じである。
【実施例3】
【0047】
この実施例3では、図10に示す如く、鋼杭40が主桁30の位置と重なるため、側板56の一部を切り欠いている。このようにすることで、主桁30の間隔dにかかわらず、鋼杭40を任意の位置に所望の間隔lで配設できる。
【実施例4】
【0048】
図11に示す如く、主桁30の間隔dが、鋼殻体50を形成する高さh、幅bに比較して大きい場合は、実施例4のように、主桁30と主桁30の間に、主桁30のウェブ36とは別の側板(ダイヤフラム)57を受けることもできる。
【0049】
図においては、鋼杭40の頭部を逃げるため、側板57の下方が切り欠かれているが、側板57と鋼杭40が干渉しない場合には、切り欠きは不要である。
【実施例5】
【0050】
図12に示す如く、主桁30と主桁30との間に鋼杭40は配置される場合で、鋼杭40の本数が主桁間隔の数より少ない場合は、実施例5のように、密閉鋼殻体50を連続形成せず、不連続として、鋼杭40の頭部が挿入される所のみに設けることもできる。
【実施例6】
【0051】
図13に示す実施例6のように、鋼殻箱を主桁下フランジ38の下に設けることなく、密閉鋼殻体50の底板58を、主桁30の下フランジ38の位置に、下フランジ38の一部を補足するように形成して、密閉鋼殻体50を構成することもできる。
【実施例7】
【0052】
図14に、主桁構造をI桁70としたときの実施例7を示す。
【実施例8】
【0053】
図15に、主桁構造を合成床版桁80としたときの実施例8を示す。
【実施例9】
【0054】
図16に、本発明に係る剛結構造の橋台90を備えた実施例9を示す。
【実施例10】
【0055】
図17に、主桁30と、本発明に係る剛結構造の橋台90が採用された上下部一体型の単純ラーメン橋の実施例10を示す。
【実施例11】
【0056】
図18に、主桁30と、本発明に係る剛結部構造の橋台90が採用された上下部一体型の連続ラーメン橋の実施例11を示す。
【0057】
実施例10、11によれば、主桁30をコンクリート充填鋼殻構造(90)に剛結することで、桁高を小さくし、更にコンクリート充填鋼管構造(90)下部から基礎杭40を貫入して一体化することにより、耐震性を高めることができる。
【0058】
本発明は、主桁及び杭基礎との接合部を剛結とした橋台、橋脚、その他、桁や梁等の鋼構造との剛結部、及び、鋼管杭等の杭基礎との剛結部を有する土木・建築構造物一般に利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の基本構成要素を示す分解図
【図2】本発明の実施形態の構成を示す(A)斜視図及び(B)断面図
【図3】本発明による鋼殻と鋼桁の接合状態を模式的に示す断面図
【図4】同じく鋼殻の形状を示す断面図
【図5】同じく鋼殻と鋼杭の接続状態を模式的に示す断面図
【図6】同じく鋼杭の形状を示す断面図
【図7】同じく密閉構造の有利性を示す断面図
【図8】本発明の実施例1を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図9】同じく実施例2を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図10】同じく実施例3を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図11】同じく実施例4を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図12】同じく実施例5を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図13】同じく実施例6を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図14】同じく実施例7を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図15】同じく実施例8を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図16】同じく実施例9を示す、一部を切り欠いた斜視図
【図17】同じく実施例10の全体構成を示す模式図
【図18】同じく実施例11の全体構成を示す模式図
【図19】従来技術1の要部構成を示す断面図
【図20】従来技術2の要部構成を示す断面図
【図21】従来技術3の要部構成を示す断面図
【符号の説明】
【0060】
26…RC床版
30…主桁
32…鋼床版
40…鋼杭
50…密閉鋼殻六面体
60…充填コンクリート
70…I桁
80…合成床版桁
90…橋台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部土木・建築構造体部材である鋼桁と下部土木・建築構造体部材である杭を剛結する鋼殻体構造であって、
前記鋼殻体は、密閉六面体であり、下面に前記杭を挿通させる穴を備えた密閉六面空間の鋼殻体を有し、
該穴に前記杭の上部が貫入され、
前記鋼殻体は前記鋼桁と一体化され、
少なくとも前記鋼殻体内部の空間部にコンクリートが充填されていることを特徴とする鋼桁と杭の剛結構造。
【請求項2】
前記密閉六面空間の上面の一部が前記鋼桁上面と同一とされていることを特徴とする請求項1に記載の鋼桁と杭の剛結構造。
【請求項3】
前記鋼桁の上面が鋼殻体の上面と一体化された状態で、該鋼殻体内部に挿入され、前記鋼桁の端部が該鋼殻体の鉛直面と接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼桁と杭の剛結構造。
【請求項4】
前記密閉六面空間の橋軸直交幅と橋軸方向幅が、前記鋼桁の桁高と同程度とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼桁と杭の剛結構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の剛結構造で鋼桁と接合されていることを特徴とする橋台。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の剛結構造で鋼桁と接合されていることを特徴とする橋脚。
【請求項7】
請求項5に記載の橋台又は請求項6に記載の橋脚を備えたことを特徴とする複合ラーメン橋。
【請求項8】
鋼桁と杭を剛結する方法であって、
密閉六面空間の鋼殻体の上面を鋼桁上面と一体化し、
前記杭の上部を前記鋼殻体の下面に設けられた穴に通すことにより、該鋼殻体に挿入し、
前記鋼桁の端部を鋼殻体の鉛直面と接合させた上で、
少なくとも該鋼殻体内部の空間にコンクリートを充填させることを特徴とする鋼桁と杭の剛結方法。

【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−284914(P2007−284914A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110902(P2006−110902)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年11月21日 社団法人土木学会発行の「第6回複合構造の活用に関するシンポジウム講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年2月15日 北海道大学主催の「北海道大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻修士論文発表会」において文書をもって発表
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(506125775)和光技研株式会社 (2)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】