説明

錫またははんだプリコート皮膜の形成方法及びその装置

【課題】はんだ浴浸漬処理後のホットエアーレベラー方式やソルダーペーストのリフロー処理方式などにおいて、隣接回路へのブリッジを生じ難く、品質の安定した均一な厚さのはんだプリコート被膜を安定生産する。
【解決手段】下層に溶融錫液または溶融はんだ液がそれぞれ入った貯槽を備えた処理装置の上層中で被処理物を有機脂肪酸溶液と接触させ、表面に有機脂肪酸の保護被膜を形成した後、溶融錫液または溶融はんだ粒子を散布し、被処理物表面に溶融錫または溶融はんだを接着し、次いで、被処理物を下層の溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬して錫またははんだ被膜を形成する第1のステップと、錫液またははんだ被膜の形成された被処理物を引き上げながら、加熱した有機脂肪酸溶液を吹付けて余剰に付着した錫またははんだ被膜を吹き落す第2のステップとによりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、半導体チップ、半導体ウエハー、インターポーザー(配線基盤)、半導体装置、コンデンサー、キャパシタ、インダクタ、抵抗器、コネクタ、プリント回路板、実装基板、電子装置などの電子部品の電子回路上のパッドまたはリードに錫またははんだプリコート皮膜を形成させる方法及びその装置に関する技術である。
特に、微小面積のパッドまたはリードが狭ピッチで多数個配置された微細電子回路からなる前記電子部品または前記電子部品をマトリックス状に多数個配列した条帯または短冊板(以下、これを電子部品連結体という)の全てのパットまたはリードに、平滑で均一な比較的薄いはんだプリコート皮膜を形成させる技術及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器はますます高集積高密度小型軽量化され、品質的に高信頼性が要求されている。これに相応して、半導体チップ、ウエハー、半導体装置、抵抗器、コンデンサー、コネクタなどの電子部品はますます高密度小型化され、それらの電子回路上のパッドまたはリードは幅も隣接ピッチも微小狭小化が進んでいる。それに伴い、これらの電子部品を実装搭載する電子回路基板のパッドまたはリードもそれに対応してますます微小狭小化されてきている。
例えば、電子部品の中でも、特に半導体装置のBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)の半導体チップやインターポーザー(配線基板)は、小型微小化に伴い、マトリックス状に配列された電極パッドまたはリードの面積は微小化され、隣接ピッチも微小狭ピッチ化が進んでいる。
このため、はんだボールを接合してバンプを形成させるために必要な、パッドまたはリード上のはんだプリコート面積もますます微小狭小化されてきている。このほか、超ミニトランジスタ、超ミニダイオード、ミニコンデンサなどの微小な電子部品は多列多数個取りでマトリックス状に配列されたリードフレーム条帯として組立て成形されているものも多く、その電極パッドやリードも同様にますます微小狭小化している。
一方、これらの微小な電子部品を搭載して表面実装する電子回路基板側のパッドまたはリードも、当然、それに対応して微小化と微小狭ピッチ化が進み、これらの電子部品と良好なはんだ接合を容易にするために必要な錫またははんだプリコート面積、あるいはニッケルを下地めっきした上に薄い金めっきを施す面積もますま微小化されてきている。
【0003】
一般に、電子回路基板のパッドまたはリードにはんだプリコート皮膜を形成する方法としては、(A)溶融はんだ浴浸漬処理方式、(B)ソルダーペスト塗布・溶融方式、(C)錫またははんだめっき方式、(D)Ni/Auめっき方式などが広く普及している。
しかしながら、従来方法(A)と(B)によるはんだプリコートは比較的広幅のパッドまたはリードには問題なく適用できるが、パッドまたはリード幅が狭くなると、局部的に隣接パッドまたはリード間にブリッジを生ずるため、最小幅は0.15mm、隣接パッドまたはリード間ピッチは0.2mmが限界と言われており、これ以下の微小狭小幅・ピッチの電子回路の場合には、これらの方法ではブリッジが全くないはんだプリコート皮膜を形成させることは困難である。
【0004】
即ち、(A)溶融はんだ浴浸漬処理方式は、最も古くから実用普及している方法であり、一般に、パッドまたはリード以外の表面がソルダーレジスト膜で保護され、パッドまたはリード部のみが露出している電子回路基板を、フラックス液中に浸漬処理するか、もしくはパッドまたはリード表面にフラックスを塗布した後に、溶融したはんだ浴の中に浸漬して、フラックスの還元力を利用してパッド表面の酸化膜を除去して、はんだぬれ性を改善しながら、パッドまたはリードにはんだプリコート皮膜を形成する方法である。
この方法では、一般に、はんだが比較的厚く付着(数10〜100μm)するため、狭ピッチ回路やスルーホールを有する電子回路基板では局部的に隣接パッドまたはリード間でブリッジを生じ易く、微小なスルーホール内部にははんだ付着しにくい難点がある。
従って、特に、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小微細電子回路の場合には、溶融はんだ固有のぬれ角が小さいために、はんだレジスト膜の高い壁で囲まれた内底部の微小パッドまたはリード表面に、溶融はんだが殆ど接触接合できないため、はんだ被膜を形成することすら殆ど不可能な欠点がある。
【0005】
このため、0.2mm以下の電子回路表面に溶融はんだを吹付けてはんだ皮膜を形成させた後、比重の大きい高温の液体を吹き付けて余剰のはんだを吹き落とすホットリキッドレベリング方法(特許文献1)が提案されている。
しかしながら、この方法でも回路幅0.1mmが限界であり、例えば前記パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小狭小電子回路の場合には、溶融はんだ固有のぬれ角が小さいために、ソルダーレジスト膜の高い壁で囲まれた内底部の微小パッドまたはリード表面に、溶融はんだが殆ど接触接合できないため、はんだ不着(以下、ミッシングという)なく全ての微小パッドまたはリード表面に安定して均一なはんだ皮膜またはプリコート皮膜を形成することは非常に困難である。
【0006】
また、はんだプリコート皮膜形成を目的とする場合には、はんだ層形成後、前記はんだ層に高温のエアーを吹き付けて余剰のはんだを吹き落とすホットエアーレベリング方法(特許文献2)が提案されている。
しかしながら、この方法でも回路幅0.1mmが限界であり、例えば前記パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小狭小電子回路の場合には、ミッシングなく全ての微小パッドまたはリード表面安定して均一にはんだ被膜を形成することは殆ど不可能である。
【0007】
また、(B)ソルダーペースト塗布・融着方式も、かなり古くから広く普及し、現在でも広範囲に実用されている方法で、パッドまたはリード以外の表面がソルダーレジスト膜で保護され、パッドまたはリード部のみが露出している電子回路基板を、パッドまたはリード位置に相当する部分が開口しているマスクを利用して、スクリーン印刷等でソルダーペースト(クリームはんだ)をパッドまたはリードに塗布した後、リフロー処理をしてソルダーペースト中に存在するフラックスの還元力を利用してパッドまたはリード表面の酸化膜を除去してはんだぬれ性を改善しながら、ソルダーペースト中の20〜80μmφのはんだ粒子を溶融融合して30〜80μmのはんだ被膜を形成させている。(特許文献3,4、5)
しかしながら、このソルダーペースト塗布・融着方法では、スクリーン印刷等によるソルダーペースト塗布精度の限界(はんだ被膜形成可能限界)は、ソルダーペーストの粘度・はんだ粒子径および塗布条件にもよるが、一般にパッドまたはリードにはんだ皮膜形成可能な最小幅は高々0.1mm、隣接ピッチは0.15mmと言われており、特に、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小微細電子回路にブリッジやミッシングなく厚さ3〜15μmの均一性の良好なはんだプリコート皮膜を安定して形成させることは至難である。
【0008】
一方、(C)錫またははんだめっき方式、及び(D)Ni/Auめっき方式は、特に微小、微細回路のプリコートに優位な技術であり、近年、半導体ウエハーやインターポーザーの微小微細パッドのプリコートに適用されている。(特許文献2,3,6)
このうち(C)法は、パッドまたはリード以外の表面がはんだレジストで保護され、パッドまたはリード部のみが露出している電子回路基板を、はんだ成分の金属イオンを含有するめっき液中で所望の厚さにめっきしてはんだプリコート皮膜を形成させる方法で、例えば、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小微細電子回路に厚さ3〜15μmの均一性のはんだプリコート皮膜を形成させることは可能である。
しかしながら、主として水溶液を用いるため、電子回路基板中に水分子が浸透して、信頼性を低下させる品質上の問題と、前処理、水洗、後処理などを必要として、工程が長く複雑で処理時間も長く工程管理も大変なこと、従ってコストが高い難点がある。
【0009】
同様に、(D)法のNi/Auめっきの目的は主として、ウエハーなどのシリコン上のアルミ蒸着電極パッドの場合のように、電極内部に錫またははんだ成分中の元素が内部拡散するのを防止するために、拡散防止膜として下地ニッケルめっきなどを施した後、めっきされたニッケル表面の酸化防止とはんだ付け性を改善するためにその上に薄い金めっきを被覆するもので、この場合も(C)法と同様、例えば、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小微細電子回路に厚さ3〜15μmの均一性のはんだプリコート皮膜を形成させることは可能である。但し、(D)法の場合は金めっきの上に更に(B)法の手順を付加して、はんだプリコート皮膜を形成させることも広く行われているが、この場合は上記(B)法の説明で述べた通り、一般にパッドまたはリード最小幅0.1mm、隣接ピッチは0.15mmが限界であり、例えば、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmのような微小微細電子回路に厚さ3〜15μmの均一性のはんだプリコート皮膜をブリッジやミッシングなく安定して形成させることは殆ど不可能である。
【0010】
また更に、ホットエアーレベリング方法及びホットリキッドレベリング方法ではんだプリコート被膜を形成したものは、近年鉛フリーはんだ合金として広く普及している錫銅系はんだ合金、錫銀系はんだ合金、錫銀銅系はんだ合金などにおいては、凝固時に1〜10数μm程度の針状または粒状の錫銅または錫銀の金属間結晶(IMC)が偏析してはんだ接合界面近傍のはんだ層内部に散在するため、特にはんだプリコート厚さが10μm以下のレベリング後のはんだプリコート被膜の表面はデコボコになり、はんだ厚さのばらつきも大きく、表面外観もまだら模様を呈する難点がある。
【0011】
一方、前述の(A)と(B)法のようなはんだ接合技術では、被覆または接合の際に一般的にフラックスまたはソルダーペーストの使用は必須であり、そのためフラックスまたはソルダーペーストに含まれている溶剤や樹脂分がはんだ接合時に瞬間的に沸騰・気化・飛散するので、はんだ接合界面また接合はんだ層内に大気を巻き込み、所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生じやすい難点もある。(非特許文献1)
但し、色々な技術改善と工夫により、このマイクロボイドは殆ど皆無に出来る方法もあるが、譬えはんだ接合時にマイクロボイドがなくても、現行のはんだ接合技術により電子部品を電子回路基板にはんだ接合した電子装置は、通電発熱などにより120℃以上の高温に長時間暴露されると、はんだ接合部界面のIMC(金属間化合物)層内に経時的にマイクロボイド(微小な空隙)を生ずる。これを通常、カーケンダルボイドと称しており、これが経時的に多数発生すると、電子装置を落下させたりして衝撃力が加わったときに接合破断を生ずる危険性が高いことが知られており、電子機器の信頼性の観点から、近年大きな問題になっている。(非特許文献1,2,3,4)
また、従来方法ではフラックスを使用するので、フラックスの成分が接合界面やはんだプリコート皮膜内部に残留し、あるいは周囲に飛散したフラックス成分により、経時的腐食の原因にもなり、搭載された電子機器の故障を招くこともあり、長期品質信頼性の点でも必ずしも充分とは言えない。
【0012】
一方、電子装置が高温と低温とを繰り返す熱サイクル時に、半導体素子とプリント基板間に生ずる温度差による熱応力ではんだ接合部が疲労破壊することも知られており、この疲労破壊に起因した耐衝撃性劣化を改善するために、錫銀銅系はんだ合金をアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で溶解混錬して、はんだ合金中の固溶酸素濃度を10ppm以下にしたはんだ合金を使用することにより、はんだ自体の延性と強度を10%程度向上させ、はんだ接合部の耐熱疲労特性と耐衝撃性(簡易落下試験条件下)を改善する方法が提案されている。(特許文献7)
しかしながら、近年、微小微細小型化された半導体装置及び電子装置には、特許文献7で開示されている耐熱疲労特性と耐衝撃性(簡易落下試験条件下)よりも遥かに厳しい加速度重力による衝撃試験が課せられることが多く、上記特許文献7に記載のはんだ合金だけでは高温暴露(例えば120℃以上の高温雰囲気中に240時間以上放置した加速加熱エージング試験)後に接合界面付近に経時的に発生するカーケンダルボイドを抑制することは出来ない。従って、特許文献7だけでは加速度重力による耐衝撃性は到底満足できないことを発明者らは長年に亘る研究開発を通して知見した
【0013】
また一方、パッドまたはリード部以外がソルダーレジストなどの保護膜で覆われている電子回路基板のパッドまたはリードに、はんだ合金を接合する技術の1つとして、溶融はんだ液の上層に高温の有機脂肪酸溶液を配した上下2層構造の貯槽を用いてはんだ接合する技術が既に公開されている。(特許文献8、9)
この技術は、嘗て発明者らが長年の研究により開発したものであるが、まず前記電子回路基板などのワークを上層の有機脂肪酸溶液に浸漬して、パッドまたはリード表面の金属酸化物を洗浄除去し、清浄化された金属表面に有機脂肪酸による保護皮膜を形成させた後、下層の溶融はんだ液に浸漬して、前記パッドまたはリードにマイクロボイドのない良好なはんだ接合を行い、次いで再びワークを上層の有機脂肪酸溶液中を通過させて引き上げる際に接合されたはんだ表面に有機脂肪酸の保護被膜をコーティングするものである。
このはんだ接合方法ではフラックスを全く使用しないため、現行の前記(A)溶融はんだ浴浸漬処理方式と前記(B)ソルダーペースト塗布・融着方式の難点であるフラックスの沸騰飛散などによるはんだ接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)の発生は全くない。また、はんだ合金中の酸素濃度が10ppm以下のものを使用すると、経時的長期高温暴露後のカーケンダルボイドの発生が極めて少なく、接続信頼性が高く、耐衝撃破断性に優れたはんだ接合が得られることが判っている。(特許文献9)
尚、はんだ合金中の酸素濃度が10ppm以下に精製させる方法としては、アルゴン雰囲気中ではんだを溶解する方法(特許文献7)もあるが、それよりも更に効率的な方法として、発明者らは溶融はんだを有機脂肪酸溶液中で激しく撹拌処理することにより製造することを提案した。(特許文献10)
【0014】
しかしながら、製造効率が悪く信頼性に劣る前記(C)、(D)を除いて、現行のはんだ接合技術を組合わせても、現状では、はんだプリコート被膜形成可能な電子回路の最小幅は、パッドまたはリード幅で高々0.1mm、隣接回路ピッチとしては0.15mmが限界であり、それ以下の幅と隣接ビッチの微小微細はんだ接合電子回路形成は、(C),(D)の電気めっき方式以外は未だに完全には実用化されていない。
このため、特に高信頼性が求められる航空機用や車載用の電子回路基板、電子部品、半導体装置及び電子装置の更なる小型軽量化のためにも、例えば、パッド幅が0.08μm以下、隣接ピッチ120μm以下の微小微細回路が望まれているが、現行方式のはんだ被膜形成方法では、譬え局部的にはんだが付着してもブリッジを生ずる確率が高く、大半ははんだ不着(ミッシング)を多発するため、更なる微小微細小型軽量化のネックになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】 特開平8−37361号
【特許文献2】 特開平6−252542号
【特許文献3】 特開平11−307565号
【特許文献4】 特開平10−322007号
【特許文献5】 特開平9−307223号
【特許文献6】 特開2002−9425号
【特許文献7】 特開2002−239780号
【特許文献8】 特許第4203281号
【特許文献9】 特開WO2008−084673号
【特許文献10】 特開2009−197135号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】 R.Aspandiar ”Void in Solder Joints” SMTA Northwest Chapt.Meeting(September 21,2005)
【非特許文献2】 C.Hillman ”Long−term reliability of Pb−free electronics” Electronic Products p.69(September 2005)
【非特許文献3】 伴充行、島内優”電子部品の信頼性評価および不具合解析技術”JFE技報第13巻p.97−102、2006年8月
【非特許文献4】 石川信二他:”高温はんだとCu板の接合部におけるカーケンダルボイドの生成“、エレクトロニクス実装学会誌、第9巻4号p.269−277、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、電子部品のパッドまたはリードにはんだプリコート被膜を形成する方法における前記従来方法の難点、即ち、フラックス使用に起因する接合界面及びはんだ層内マイクロボイド、経時的接続信頼性劣化と耐食性、はんだプリコート皮膜の厚さのばらつきが大きいこと、更には長期高温暴露後の経時的マイクロボイド・カーケンダルボイドの発生、及びパッドまたはリード幅0.08mm以下・隣接ピッチが0.12mm以下の微小微細狭ピッチ高密度電子回路へのはんだプリコート皮膜形成困難な問題など、を解決して品質信頼性の高い均一な錫またははんだプリコート皮膜を形成させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、パッドまたはリード以外の表面がはんだレジスト膜で保護され、パッドまたはリードのみが露出している電子回路基板または電子部品連結体(以下、ワークという)を高温の有機脂肪酸溶液中に浸漬するか、あるいは前記ワークに高温の前記有機脂肪酸溶液を吹付けることにより、前記有機脂肪酸の化学作用で前記パッドまたは前記リード表面の酸化層を除去・清浄化し、かつ清浄化された前記パッドまたはリード金属表面に有機脂肪酸の化学吸着作用により保護被膜を形成した後に、上層に高温の有機脂肪酸溶液が、下層に溶融錫液または溶融はんだ液がそれぞれ入った貯槽を備えた処理装置の前記上層中で前記ワークを水平または傾斜させて加熱した有機脂肪酸溶液と接触した状態で、上部から錫またははんだ粒子を前記有機脂肪酸溶液中に散布して、前記電極パッド又は前記リード表面に溶融状態で前記錫またははんだ粒子を少なくとも1個以上付着させて核となした後、前記ワークを前記下層の前記溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬して、前記電極パッド又は前記リード表面に錫またははんだ皮膜を形成する第1のステップと、第1のステップにより錫液またははんだ皮膜の形成された前記ワークは、前記上層中を通過させて引き上げながら、表面に高温の有機脂肪酸溶液を吹付けて余剰に付着した前記錫またははんだを吹き落し除去する第2のステップにより、前記パッドまたは前記リードに厚さ2〜20μmで、かつ厚さのばらつきが±5μm以下の均一な錫またははんだプリコート皮膜を形成させるものである。
前記第1ステップにおいては、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配した貯槽に、ワークを上層→下層→上層の順に浸漬処理しても良いし、あるいは前記ワークに専用ポンプで高温の有機脂肪酸溶液と溶融錫液または溶融はんだ液とを、それぞれ吹付け処理を行って、前記パッドまたは前記リード表面に錫またははんだ接合皮膜を形成させてもよい。
【0019】
更に詳しく述べると、第1のステップ及び第2のステップで使用する有機脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキ酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、などがよい。
これらの内、望ましくは180〜300℃で使用する溶媒に溶解し分解などせず安定している有機脂肪酸がよい。沸点が低い有機脂肪酸の場合は高圧にして使用することも可能であるが、安全性、実用性の点で好ましくはない。
経済性や取扱い上から工業的により実用に適するものは、例えば、炭素数13〜20の有機脂肪酸、即ち、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸などであり、本発明の目的に合致した効果が大きく、特に有用である。
有機脂肪酸は炭素数12以下でも使用可能ではあるが吸水性があり、高温で使用する関係からあまり好ましくないこと、更に接合後のはんだ表面に保護膜としてコーティングされても吸水性があるため長期保存時の品質に障害をもたらすこともあり、必ずしも好ましくない。
また、炭素数21以上の有機脂肪酸でも使用は可能であるが、融点が高いこと及び浸透性が悪くまた取扱いし難く処理後のはんだ表面の防錆効果もやや不充分になる。特に望ましいのは、工業的にも大量に生産され、多分野で使用されていて、入手もしやすい炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸が最適であり、そのいずれか1種以上を1〜80重量%と残部が高温領域で安定な油系溶媒からなる、液温180〜300℃の溶液を使用すると本発明の効果も大きい。
本発明にカルボキシル基(−COOH)を有する有機脂肪酸溶液を使用する目的は、パッドの金属表面をケン化反応により酸化膜を除去し清浄活性化することと、同時に清浄活性化された表面に有機脂肪酸が化学吸着し酸化防止保護膜の役割を果たすこと、更には溶融錫または溶融はんだ液の酸化を防止する役割も果たすとともに、形成されたはんだプリコート皮膜表面の酸化防止化学吸着保護膜としてコーティングすることにある。この他に付随的にワークの表面に付着した不要な塵埃や錫またははんだ微粒子を洗い流し落とす効果もある。また特に微小微細回路の場合は、ワークを溶融錫または溶融はんだ液に浸漬すると錫またははんだが厚く余剰付着してブリッジを生ずるが、これをそのまま高温の有機脂肪酸溶液中に浸漬すると、有機脂肪酸の活性力により余剰の錫またははんだがある程度はじき落とされて、ブリッジもある程度解消できる効果もある。
【0020】
前記溶液中の有機脂肪酸の濃度については1質量%以下でも効果はあるが、連続して大量に処理する場合は補充管理などが煩雑なこと、また80質量%以上あるいは100質量%単体液でも本発明の効果はあり使用可能であるが、発煙性と臭気の問題もきつくなるため、好ましくは5〜80質量%である。
前記有機脂肪酸溶液の液温は使用する溶融錫または溶融はんだ液の温度と同温度以上であることが望ましい。上限温度は発火性、発煙性、安全性を考慮すると、320℃程度であるが、臭気の問題及び省エネの観点から、使用する溶融はんだ液の液温から、+20℃以内の範囲内で使用することが望ましい。例えば、融点が217℃近辺の錫銀銅(Ag3.0質量%、Cu0.5質量%、残部Sn)3元系はんだ合金の場合であれば、使用する溶融はんだ液の液温は240〜260℃、該有機脂肪酸溶液の液温は240〜280℃が最適である。この場合のはんだ接合の効率は、有機脂肪酸溶液の液温を280℃〜320℃まで上げた場合と有意差はない。同様に、錫/ビスマス系はんだのような融点が139〜160℃付近の低融点はんだの場合、使用する溶融はんだ液温は一般に融点+20〜40℃の範囲、有機脂肪酸溶液の液温は溶融はんだ液温と同じかそれより+20℃の範囲内で使用すると良い。
この点でも、本発明方法は、現行の前記(A)〜(D)法のようにはんだプリコート被膜形成効率を上げるために、はんだ浴温度、フロー炉、またはリフロー炉の実質ピーク温度を280〜350℃に上げて製造しているケースに較べて、エネルギー使用量は約5〜20%程度低減可能である。
【0021】
また本発明に使用する有機脂肪酸の溶媒は、前記有機脂肪酸を溶かし、かつ前記高温領域で安定な溶媒であれば、鉱物油、植物油、合成油のいずれでもよいが、特に安定性、安全性、経済性、取扱い性の点でエステル合成油が最適である。高温で安定な溶媒を使用する目的と理由は、前記有機化合物の高温発煙性ならびに臭気の緩和抑制、更にははんだ接合処理後に過剰に付着した有機脂肪酸溶液を洗い落とす際の洗浄性がよいこと、また、若干ではあるが液粘性を下げ浸透性も改善される効果が大きいからである。その濃度は前記有機化合物濃度により決まる。
【0022】
また本発明の第1ステップにおいて、パッドまたはリード以外の表面がソルダーレジスト膜で保護され、パッドまたはリード部のみが露出しているワーク1を高温の有機脂肪酸溶液と接触させる方法は、例えば、図3のように一定の高温度に維持されている有機脂肪酸溶液4が入っているステンレス製の槽10に単純に浸漬することでも良いし、あるいは図4、5、6、8のように下層に溶融錫液または溶融はんだ液5が配置され、その上層に高温の有機脂肪酸液4が入っている処理槽11または処理槽12に浸漬しても良い。後者の場合は前記ワーク1を上層の有機脂肪酸溶液4に浸漬後、下層の溶融はんだ液5に浸漬してパッドまたはリードに錫またははんだを皮膜し易いので好都合である。前者の場合は別に用意した溶融はんだ液槽に浸漬する。
あるいは、図13のように、移送用ポンプ6によりノズル3から有機脂肪酸溶液をワーク1のパッドまたはリード表面に吹付けるとともに、移送ポンプ18によりノズル38からも溶融錫液または溶融はんだ液を吹付け処理しても、前記浸漬処理と同様の効果が得られる。
処理時間は、いずれの処理の場合でも、有機脂肪酸溶液ならびに溶融錫液または溶融はんだ液とワークとの相対流速により異なるが、0.5〜10秒で充分であり、それ以上長時間処理しても清浄活性化効果、保護被膜形成効果、及びはんだ皮膜効果は変わらない。
【0023】
勿論、高温の有機脂肪酸溶液に浸漬処理だけ、または高温の有機脂肪酸溶液を吹付け処理だけを行い、その後、時間を置いて別槽の溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬処理することでも良い。
即ち、ワークを有機脂肪酸溶液に浸漬処理または吹付け処理後は、ワークのパッドまたはリードの金属表面には酸化防止と溶融錫または溶融はんだ液のぬれ性を改善する有機脂肪酸の保護被膜が形成されているので、気中に放置してから改めて溶融錫液または溶融はんだ液と接触させて、前記パッドまたはリード部に錫またははんだを付着させても問題はない。
但し、望ましくは例えば図4,5,6,8のように上層に有機脂肪酸溶液4、下層に溶融錫液または溶融はんだ液5を配置した処理槽11または12の上層で浸漬処理を行い、その後に下層の溶融錫液または溶融はんだ液5に浸漬して前記パッドまたはリードに錫またははんだ接合皮膜を形成させるとエネルギーロスも小さく効率的で良い。
【0024】
一方、本発明の第1ステップにおける錫またははんだ粒子の散布方法は、例えば、パッドまたはリード幅が0.08mm以下で、隣接回路ピッチが0.12mm以下の微小微細狭ピッチ高密度電子回路で構成されているワークの場合、上方から細かいメッシュの金網でできた篩、上部が広く下部に行くほど先端が細く狭まったロート状の容器、あるいは市販の粉末用散布装置や先端部に噴射散布ノズルを有する容器(図15)などに入れた固体の錫またははんだ粒子を上層の高温に加熱された有機脂肪酸溶液中に万遍なく分散沈降するように散布して、高温の前記有機脂肪酸溶液中を落下しながら溶融した前記粒子がパッドまたはリード表面に着地接着して錫またははんだ皮膜を形成させる(図10)。
噴射ノズルを使用する場合は、ノズルから溶融はんだ粒を高温の有機酸溶液中に噴射させて万遍なく分散散布することが有効であり、特に1〜30μmφの微細溶融はんだ粒子を噴射するには超音波を利用するとよい。また錫またははんだ粒子の散布は、前記上層中に水平または傾斜させて高温の有機脂肪酸溶液と接触した状態にあるワークの直上部から、全てのパッドまたはリード表面に錫またははんだ粒子が少なくとも1個以上沈着するように、万遍なく散布する必要がある。広く万遍なく散布するためには、噴射ノズルの角度を周期的かつ連続的に変えることも有効であり、あるいは噴射機自体を走査させると良い。
従って、散布する前記錫またははんだ粒子は、固体粒子であっても、溶融はんだ粒子であってもよい。
【0025】
しかしながら、通常、30μmφ以下の錫またははんだ粒子を製造することは可能ではあるが、生産効率は必ずしも高くないため、価格が高い難点がある。
このため、発明者らは試行錯誤でいろいろな方法を検討した結果、図9のように溶融錫または溶融はんだを噴射するノズル26に保持用ブースター22と超音波ホーン23を介して直接超音波振動子20を取付けて、溶融錫また溶融はんだ注入管路24中の溶融錫または溶融はんだ25に直接超音波振動を与え、前記ノズル26から前記上層の高温の有機脂肪酸溶液中4に溶融錫または溶融はんだ25を噴射すると、特定の周波数の超音波発振により1〜20μmφ程度の溶融はんだ粒子17が安定して散布できることを突き止めた。
これを利用して本発明の方法を行えば、隣接パッドまたはリード間ピッチ40μm、パッドまたはリード幅20μmの微小パッドまたはリードですら、良好な錫またははんだプリコート皮膜を形成させることが出来ることを実際に検証した。
この場合の、溶融はんだ粒子の粒径は超音波周波数に依存し、周波数が高ければ高いほど得られる微粒子の粒径は小さくなる傾向があり、例えば、周波数35kHzの場合は90質量%以上は3〜10μmφの微粒子が得られる。また、周波数22kHzの場合は粒度分布が広くなり3〜25μmφの粒子が90質量%以上を占める。
【0026】
超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置16の具体的構造事例としては、図9に示したように、超音波出力ケーブル19が接続された超音波振動子20が冷却用フィンブースター21を介して接続された保持用ブースター22の先端に溶融はんだ注入用管路25とノズル26が導通している超音波ホーン23が取り付けられた構造の装置が挙げられる。
【0027】
散布は図8、図10のように、上方から錫またははんだ微粒子17を下方に設置したワーク1の表面に向けて万遍なく散布することにより、高温の該有機脂肪酸液4中で溶融状態の錫またははんだ粒子17をはんだレジスト膜のない開口露出したパッドまたはリード表面28に落下到達せしめて沈着させ、それを「核」にして次々に後から前記パッドまたはリード表面に到達する溶融錫または溶融はんだ粒子が凝集融合して前記表面に接着させて、全てのパッドまたはリードにある程度の被膜厚まで錫またははんだ被膜29を形成させる。
【0028】
一方、散布する錫またははんだ粒子の大きさは、原理的にはワークのパッドまたはリード径または最小幅以下の粒径のはんだ粒子を散布すればよいが、現実的にはパッドまたはリード径または最小幅の少なくとも1/2以下がよい。粒径はあまり小さすぎると沈降速度が遅いため、パッドまたはリード表面への到達時間が長くなり効率が悪く、逆に粒径があまり大き過ぎるとはんだレジスト保護膜で囲まれたパッドまたはリード内底部に沈着できないか、沈着確率が小さくなり、効率が悪いため、望ましくはパッドまたはリード径または最小幅の少なくとも1/3以下がよい。
特に、ワークのパッドまたはリード最小幅が0.08mm以下の狭小幅回路の場合は、数10μmφ以下の微小な錫またははんだ粒子でないと、はんだレジスト保護膜開口部から電極パッドまたはリード表面に到達することが出来ない。しかも、少なくとも1個以上の錫またははんだ粒子を開口部内に沈着させなければならないので、望ましくは、1〜30μmφの大きさの粒子が開口した窪み(底部がパッド表面)内に入込むように、錫またははんだ粒子を沢山万遍なく散布する必要がある。また、粒子の形状は球状でその表面が平滑なものがよい。
【0029】
また、散布は前記開口部がほぼはんだで満たされるまで続けても良いし、あるいは全てのパッドまたはリードに少なくとも1個以上の「核」が接着したら、散布を中止して、下層の溶融錫または溶融はんだ液にワークを浸漬して全ての前記パッドまたはリードに充分なはんだ被膜を形成させた後、本発明の第2ステップの高温有機脂肪酸溶液吹付け処理を行い余剰の錫またははんだを除去して、所望の厚さの錫またははんだプリコート被膜を得る。
散布を全ての該開口部が錫またははんだで満たされるまで継続すると、当然、局部的にブリッジを生ずるし、また全てのパッドまたはリードの該被膜厚がある程度の厚さ以上になった後、溶融錫液浴または溶融はんだ液浴にそのまま浸漬処理すると、通常、やはり局部的にブリッジを生ずるが、本発明の第2ステップの高温有機脂肪酸溶液吹付けレベラー処理を行ことにより、余剰の錫またははんだが吹き落とされて除去され、ブリッジは完全に解消され、かつ、5〜20μmの範囲内で±3μm以内の厚さばらつきの少ない均一な錫またははんだプリコート被膜が得られる。
【0030】
図8においては、直上部から超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置16により、下方のワーク1に溶融錫または溶融はんだ粒子17を噴射している事例を示したが、超音波振動子付き溶融錫または溶融はんだ粒子発生装置16の向きは、連続的に2次元的に角度を自動的に変えながら、斜上方からワーク1のある下方に向けて、溶融錫または溶融はんだ粒子17を噴射することが有効である。いずれの場合でも、ワーク1の表面に出来るだけ広範囲にかつ極力均一に溶融錫または溶融はんだ粒子17を散布しなければならないため、専用の自動制御式3次元移動装置のアームに超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置16を取付けて、ワーク1に万遍なく溶融はんだ粒子が広がるようにするとよい。
【0031】
ワーク1は枠状の専用ホルダー14に固定して自動制御式3次元移動装置のロボットアーム13に取付けて、高温の有機脂肪酸溶液4の中に静置する。静置位置は水平でも良く、開口部のパッドまたはリード表面に該微粒子17が侵入し易くするためには、ワークを振動させると良い。また、ワークを水平に対し角度0〜30度程度の範囲で傾斜させて静置して、開口部以外(はんだレジスト膜表面)に着地した微粒子が傾斜により転がり落ちながら開口部に入込む確率(振込率)を高めることも有効である。
ワーク1と超音波振動子付き溶融錫または溶融はんだ粒子発生装置16の距離は、噴射するノズルの位置と形状あるいは溶融錫または溶融はんだ噴出量(溶融はんだの給液量)にも因るが、真上から真下に向けて溶融はんだを噴射する場合は、噴射される溶融はんだ粒子の拡がり角度が45〜90度の場合は、10〜30mm程度が、該微粒子のパッドまたはリード表面への到達時間が短くてすむので望ましいことが判った。
【0032】
電子回路基板または電子部品連結体の形状が平板状または短冊状の場合は、例えば図7、8のように、ワーク1のパイロットホールを自動制御式三次元移動装置のロボットアーム13の先端に取付けられている金属製の枠状専用ホルダー(ワーク固定治具)14のパイロットピン15を利用して固定して取付け、自動制御式三次元移動装置でロボットアーム13を操作して、図8のように貯槽12に蓄えられた高温の有機脂肪酸溶液4の中にワーク1を浸漬して静置する。このとき、露出している該ワークのパッドまたはリード表面は有機脂肪酸の化学作用により反応して表面の酸化層が除去清浄化されるとともに、清浄化された金属表面に有機脂肪酸の保護被膜が形成されるので、その後、上記微粒子散布・接着処理を行うことでパッドまたはリード表面に溶融錫または溶融はんだ被膜が形成される。その後、再び自動制御式三次元移動装置でロボットアーム13を操作して、3次元的に搬送し、本発明方法の第2ステップの処理を行う。
【0033】
一方、電子回路基板または電子部品連結体が長尺の条帯であれば、連続送りまたは間欠送りして搬送しながら、本発明方法の処理を行うことが出来る。
【0034】
本発明で使用する錫またははんだ種類としては、電子部品に広く使用されている通常のはんだ、即ち、純錫、錫鉛系合金、錫銀銅系合金、錫亜鉛系合金、錫ビスマス系合金、更にはこれらの母合金にニッケル、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、リンなど添加したはんだでも何ら問題はない。
しかしながら、長期高温暴露された場合に生じやすいカーケンダルボイド(マイクロボイド)を抑制するために、発明者らこれまで試行錯誤しながら種々研究した結果、例えば、酸素濃度が10ppm以下のはんだを使用し、有機脂肪酸溶液を上層に配した該溶融はんだ液に浸漬してはんだ接合させると、非常に効果があることを検証した。(特許文献7)
近年、分析機器の進歩により10ppm以下の元素分析も可能になったので、10ppm以下の酸素濃度を定量分析し、酸素濃度と長期高温暴露後のカーケンダルボイド発生の関係を調べた結果、酸素濃度が2ppm以下になるとカーケンダルボイドの発生を皆無にでき、更に一段と効果的であることを突き止めた。従って、本発明においてもこれを適用してはんだ接合すると、120℃以上の高温で長期加熱後の耐衝撃破断性に優れた品質信頼性の高い電子部品、半導体装置、及び電子装置が得られる。
【0035】
第1ステップで錫またははんだ粒子を散布してパッドまたはリードに1個以上沈着させて「核」とする理由を説明すると、
通常、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.12mm以下の微小微細電子回路基板または電子部品連結体においては、はんだレジスト膜とパッドまたはリードの高さの差(段差)が10〜50μmもあり、従来法である前記(A)法(溶融はんだ浴浸漬処理法)では該溶融錫液または溶融はんだ液の表面張力によるぬれ角の問題、あるいは窪みになっているパッドまたはリード上部に滞留する気泡の問題などで、パッドまたはリードに溶融錫または溶融はんだが極めて付着し難く、また、従来法の(B)法(ソルダーペースト塗布・融着方式)でもスクリーン印刷でソルダーペーストを前記微小幅のパッドまたはリード全てに完全に(100%)充填することはかなり至難である。
このことは、本発明でも第1ステップにおける高温の有機脂肪酸溶液とワークを接触させて、ワークのパッドまたはリード表面の酸化層除去・清浄化と保護被膜形成させた後、直接、溶融錫液または溶融はんだ液中に単に浸漬するだけでは、前記(A)法、(B)法の場合と同様、該溶融錫液または溶融はんだ液の表面張力によるぬれ角の問題、あるいは窪みになっているパッドまたはリード上部に滞留する気泡の問題などで、全てのパッドまたはリードに錫またははんだを100%付着被覆させること至難である。
このため、前記微小微細電子回路においては、溶融錫液または溶融はんだ液を呼び込む「核」が必要であり、そのための錫またははんだ粒子の沈着「核」形成が重要である。
【0036】
但し、パッドまたはリード幅が80μm以上の回路であれば、前記第1ステップで錫またははんだ粒子の散布は必ずしも行う必要はなく、省略して直接次の下層の溶融錫または溶融はんだ液層に浸漬することだけでも、ワークのパッドまたはリードに錫またははんだ皮膜形成ができる。
【0037】
散布する錫またははんだ粒子の材質は、通常実用されている錫またははんだ合金なら何でも良い。
但し、錫またははんだ接合部の耐熱耐衝撃性を重視する場合、例えば、半導体装置または電子装置が長期に亘り120℃以上の高温に暴露されることにより接合界面に経時的に発生するカーケンダルボイド(マイクロボイド)を抑止したい場合は、少なくとも酸素濃度が5ppm以下の錫またははんだ合金を用いることが望ましい。
このことは、その後に浸漬処理を行う前記下層の溶融錫液また溶融はんだ液にも言えることで、酸素濃度が5ppm以下の錫またははんだ合金を用いてプリコート被膜を形成させた電子部品ではんだ接合した半導体装置または電子装置はそれを組み込んだ電子機器が通電により発熱して譬え120℃以上の温度に長期間暴露されても接合部には殆どカーケンダルボイド(マイクロボイド)の経時的発生増加は見られず、耐衝撃破断性に優れ、品質信頼性が高いものが得られる。
【0038】
次に、第2ステップについて、詳細に説明すると、例えば図2のように、ノズル3から高温の有機脂肪酸溶液をワーク1に吹付けて、前記パッドまたは前記リードに余剰に付着している錫またははんだを吹き落として、前記パッドまたは前記リードに所望の均一な膜厚の錫またははんだプリコート皮膜を形成させる。
あるいは、図5のように、タンク12の上層の側壁に設けた配管から移送用(給液)ポンプ6を介して高温の有機脂肪酸溶液4をノズル7に給液して、ノズル7からワーク1のパッドまたはリードに前記有機脂肪酸溶液4を吹付けて、前記パッドまたは前記リードに余剰に付着している錫またははんだを吹き落として、前記パッドまたは前記リードに所望の均一な膜厚の錫またははんだプリコート被膜を形成させる。尚、図5では前記有機脂肪酸溶液4の吹付けは液外上部の気中で行う事例として示したが、上層の有機脂肪酸溶液中にノズル7を設置して吹付け処理を行っても同様の効果が得られる。
【0039】
ノズル7から吹付ける流速と吹付け処理時間は、所望する錫またははんだプリコート被膜の厚さによりノズルの形状と吹掛け角度などの条件により異なるが、例えば、所望のプリコート被膜厚さが5±2μm、ノズルの先端形状がスリット状開口幅0.5〜3mmX開口長さ50〜500mmで、吹掛け角度がワークである該電子回路基板または電子部品連結体1に対して45〜90度の場合、流速は0.5〜4m/秒、吹付け処理時間は0.5〜10秒で充分である。
吹付ける高温の前記有機脂肪酸溶液4の流速が速い程、得られるプリコート皮膜の膜厚は薄くなる。尚、ノズル形状は一般に市販されている散水用のノズルでも良く、その場合は噴射する有機脂肪酸溶液がワークの横幅に対して万遍なく一様に当たるように複数個のノズルを配置するか、1個以上のノズルを2次元的あるいは3次元的に走査させても良い。
【0040】
あるいは、図6のように、上層に高温の有機脂肪酸溶液4を、下層に溶融錫液または溶融はんだ液5を配置した処理槽12の上層部の液中に設置したリバースロール8(前記ワーク1の引上げ方向と逆向きに回転)により、前記有機脂肪酸溶液4を前記ワーク1のパッドまたはリード部に吹付けることでも、ノズル吹付けの場合と同じ効果が得られる。
この場合の吹付ける流速は、リバースロール8の直径と回転速度を所望の錫またははんだプリコートの膜厚により適宜調整する必要があるが、例えば、所望の該プリコート膜厚が5〜20μmの場合、リバースロール径は60〜200mmφ、回転速度は600〜3000rpmの範囲が良く、前記ロール径が大きい程、また回転速度が速い程、得られる該プリコート被膜の膜厚は薄くなる。
尚、このリバースロール8の回転によりかき落とされる余剰の錫またははんだは微粒子となって該有機脂肪酸溶液中に散乱して該パッド部に再付着する危険性があるので、それを防止するためにリバースロール8にバッフル9を設置すると良い。また、ワーク1とリバースロール8の間隙は0,1〜5mm程度でよい。
【0041】
但し、上記説明では、上層に加熱された高温の有機脂肪酸溶液を、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配置した処理槽を用いる方式で説明したが、勿論、有機脂肪酸溶液と溶融錫液または溶融はんだ液を別々の処理槽にして、工程を明確に区分して別槽処理しても特に問題はない。ただ、上下2層液にして1つの処理槽で処理した方が、簡潔明快で効率的である。特に、パッドまたはリード幅が0.15mm以上で隣接ピッチが0.02mm以上の電子回路基板または電子部品連結体の場合は上下2層液配置が効率的で良い。何故なら、パッドまたはリードに被覆される錫またははんだ膜厚として50μm以上でも可とする仕様であれば、従来法の(A)溶融はんだ浴浸漬方式ではブリッジしやすい回路パターンでも、有機脂肪酸溶液中を通過する際、有機脂肪酸の作用でブリッジは解消され、本発明の第2ステップの有機脂肪酸溶液吹付けレベラー処理の必要はなく、勿論、従来法のホットエアーレベラー処理またはホットリキッドレベラー処理の必要もない。
しかしながら、パッドまたはリードに被覆される錫またははんだ膜厚として5〜20μmを所望するプリコート皮膜の場合は、従来法のホットエアーレベラー処理またはホットリキッドレベラー処理をするか、本発明の第2ステップの処理をする必要があるが、特に、従来法のホッとレベラー処理またはホットリキッドレベラー処理では得られるプリコート皮膜の厚さのばらつきが非常に大きいのに対して、本発明方法では厚さのばらつきは遥かに小さく、均一なプリコート皮膜が得られ、有機脂肪酸溶液吹付けレベラー処理の効果が極めて大きいことが検証された。
【0042】
また、更に、ホットエアーレベリング方法及びホットリキッドレベリング方法ではんだプリコート被膜を形成したものは、近年鉛フリーはんだ合金として広く普及している錫銅系はんだ合金、錫銀系はんだ合金、錫銀銅系はんだ合金などにおいては、凝固時に1〜10数μm程度の針状または粒状の錫銅または錫銀の金属間結晶(IMC)が偏析してはんだ接合界面近傍のはんだ層内部に散在するため、特にはんだプリコート厚さが10μm以下のレベリング後のはんだプリコート被膜の表面はデコボコになり、はんだ厚さのばらつきが大きい難点もある。
【0043】
それを回避して、はんだプリコート厚さが10μm以下でもほぼ完全に平滑な光沢表面に仕上がるようにするために、発明者らは試行錯誤的にいろいろ研究した結果、錫または共晶はんだであれば良いことを突き止めた。例えば、純錫に微量のニッケル0.005〜0.1質量%を含有し、微量のゲルマニウム0.001〜0.05質量%またはリン0.003〜0.01質量%のいずれか1種以上を含有し、残部錫からなるはんだ合金を用いて、本発明方法ではんだプリコート皮膜形成すれば、平滑良好なプリコート皮膜が得られることが判った。
このほか、共晶はんだ、例えば、錫鉛合金(錫63質量%、鉛37質量%)、あるいは錫ビスマス合金(錫42質量%、ビスマス58質量%)、錫アンチモン合金などに、微量のニッケル0.005〜0.1質量%と、微量のゲルマニウム0.001〜0.05質量%またはリン0.003〜0.01質量%のいずれか1種以上とを添加したはんだを使用すれば、はんだプリコート皮膜厚さが20μm以下でもほぼ完全に平滑な光沢表面に仕上がる。
尚、低温はんだである錫ビスマス共晶合金に前記適正量の範囲内でニッケルと、ゲルマニウムまたはリンのいずれか1種以上を添加してプリコート皮膜を形成させた電子部品同志(例えば、半導体装置をプリント基板に実装する場合など)を通常の鉛フリーはんだ(例えば、錫銀銅系はんだ、錫銅系はんだ、錫銀系はんだなど)を介して、前記各電子部品のプリコート皮膜をはんだ接合した場合、錫ビスマスはんだプリコート皮膜は140〜180℃程度の低温で溶融するので、前記通常の鉛フリーはんだとの接合温度も若干低く目にして、かつ接合時間が従来法より短くて済むため、電子部品の熱的ダメージが小さいメリットがある。
【0044】
錫に微量のニッケルを添加する理由は、電子回路のパッドまたはリード表面に錫またははんだ被覆する際に、所謂「銅食われ」(パッドまたはリード表面の銅がはんだに溶け込む現象)を抑制することと、長期に亘り120℃以上に累積的に高温暴露された場合にはんだ接合界面近傍に生ずるカーケンダルボイド(マイクロボイド)を抑止し、組み込まれた半導体装置または電子装置の耐衝撃性、耐熱疲労性などの品質信頼性向上化効果を挙げるためである。添加量としては0.001質量%以下では前記効果が小さく、1質量%以上では溶融時の粘性が高くなり、ブリッジを生じ易いために好ましくない、
望ましいニッケルの添加量は0.005〜0.1質量%である。
前記効果をもたらすものは、ニッケルの他、コバルト、鉄などが挙げられる。
【0045】
また同様に、ゲルマニウムまたはリンを添加する理由は、はんだプリコート被膜表面の経時的酸化防止とはんだぬれ性の劣化防止が主目的である。これを添加しない場合には、はんだプリコート品を大気中に放置すると、経時的に酸化変色してはんだぬれ性が悪くなる。
その添加量は少ないと効果が小さく、多過ぎると物理的機械的特性が脆弱になり、割れやすいので好ましくない。従って、望ましい添加量はゲルマニウム0.001〜0.05質量%またはリン0.003〜0.01質量%である。
【発明の効果】
【0046】
上述の通り、本発明の方法によれば、従来方法では「ブリッジ」が出来て良好な回路形成が不可能なパッドまたはリード幅が0.08mm以下で、隣接ピッチが0.12mm以下の微細狭ピッチ高密度電子回路用の5〜20μmの任意の厚さ範囲で比較的自由に制御することが可能であり、しかも厚さのばらつきを±2μm以内に制御することすら可能な錫またははんだプリコート被膜を工業的に安定量産できる効果がある。
しかも、本発明方法により製造したはんだプリコート皮膜を有する電子部品と電子回路基板を使用してはんだ接合して搭載実装した高密度電子装置は、従来法の欠点であるフラックスの沸騰飛散による接合界面及びはんだ層内微小気泡・空隙発生がなく、かつ、有機脂肪酸溶液中ではんだ接合するので、その際、接合界面およびはんだ層内部への酸化物の巻き込みが全くないので、長期高温暴露後のカーケンダルボイド(マイクロボイド)の発生を殆ど皆無に出来る効果がある。特に、酸素濃度2ppm以下のはんだを使用すれば、長期高温暴露後のカーケンダルボイドの発生を皆無に出来る。従って、本発明方法によるはんだ接合部品は長期高温暴露後の耐衝撃破断性が格段に優れている。
更に、従来法では不可能なパッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmの微小・狭ピッチ電子回路のはんだプリコート皮膜形成が可能である。
この場合の処理方法は、ワークと溶融錫または溶融はんだ微粒子を有機脂肪酸溶液中で接合処理するため、その際大気を巻込むこともなく、常に錫またははんだ皮膜表面がぬれ性の良い状態に保持されているので、はんだ酸化物の巻き込みもなく、出来上がった錫またははんだ皮膜表面には有機脂肪酸保護膜が自動的にコーティングされていること、その後の第2ステップ処理でも有機脂肪酸溶液を吹付けてレベラー処理を行うため、出来上がった錫またははんだプリコート皮膜の表面も有機脂肪酸保護膜が自動的にコーティングされているので、後工程の電子装置組立時のはんだぬれ性が従来法で製造された物より安定して優れている。
【0047】
また、本発明方法では有機脂肪酸溶液中で錫またははんだ皮膜を形成させるメリットの1つに、隣接回路間のブリッジを生じにくいことが挙げられる。これは有機脂肪酸溶液が隣接パッドまたはリード間の溶融はんだ移動を抑制防止する効果を有することに起因している。このため、従来法では一般に0.1〜数%の頻度で発生する「隣接パッド間のはんだブリッジ不良」や「ミッシング不良」(パッドの一部にはんだが欠落している不良)は全く皆無にできるので、それによる従来必要とされて来た膨大な手直し再生加工も全く不要になる。
また、前述の通り、本発明方法は、現行方法より低温で、かつ効率よく錫またははんだプリコート皮膜形成が出来るため、エネルギー効率がよく、現行方法より少なくとも5〜20%程度の省エネ効果が期待できる。
以上の通り、本発明の効果は工業的に極めて価値が高いものである。
これを更に詳しく具体的事例で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来方法によるはんだプリコート皮膜形成工法であるホットエアーレベラー方式の実施形態事例、即ち、電子回路基板にノズルからホットエアーを吹付ける配置構成事例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明方法の有機脂肪酸溶液をノズルで吹付ける工程における実施形態事例として、電子回路基板または電子部品連結体とノズルの位置関係を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の第1ステップにおける実施形態事例として、高温の有機脂肪酸溶液中に電子回路基板または電子部品連結体を浸漬し、引上げる様子を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の第1ステップにおける実施形態事例として、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配した貯液槽中に、先ず電子回路基板または電子部品連結体を上層部分に浸漬し、その後、下層の溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬した後、該電子回路基板または電子部品連結体を再び上層を通過させて引上げている様子を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の第1ステップにおける実施形態事例として、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配した貯液槽中に、先ず電子回路基板または電子部品連結体を上層部分に浸漬し、その後、下層の溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬した後、該電子回路基板または電子部品連結条帯を再び上層を通過させて引上げ、上空で高温の有機脂肪酸溶液をノズルから該電子回路基板または電子部品連結体のパッドまたはリード部に該有機脂肪酸溶液を吹付ける様子を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の第1ステップにおける実施形態事例として、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配した貯液槽中に、先ず電子回路基板または電子部品連結体を上層部分に浸漬し、その後、下層の溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬した後、該電子回路基板または電子部品連結体を再び上層2設置されている2本のリバースロールに間を通過させながら、リバースロールの高速回転により有機脂肪酸溶液を該電子回路基板または電子部品連結体のパッドまたはリード部に該有機脂肪酸溶液を吹付ける様子を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の方法及び装置において、電子回路基板または電子部品連結体の搬送に使用するプログラム式自動3次元移動装置のロボットアーム部分と、ワークを取付けた治具(枠状専用ホルダー)部分の事例を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明の第1ステップにおいて、高温の有機脂肪酸溶液中に設置された電子回路基板または電子部品連結体に、上部から超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置により溶融錫または溶融はんだ微粒子を散布している事例を模式的に示した断面図である。
【図9】本発明の第1ステップにおける一実施形態として使用する超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置の内部構造事例を模式的に示した断面図である。
【図10】本発明の第1ステップにおける一実施形態として、超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置により散布された溶融錫または溶融はんだ微粒子が電子回路基板または電子部品連結体のパッドまたはリード表面に接着する過程の事例を模式的に示した拡大断面図で、10aは、該溶融錫または溶融はんだ微粒子が電子回路基板または電子部品連結体の電極パッドまたはリード表面に到達する様子を模式的に示した拡大断面図である。また、10b、10cは、パッドまたはリード表面に到達した溶融錫または溶融はんだ微粒子がパッドまたはリード表面に接着し、微粒子同志が凝集して錫またははんだ皮膜を形成した状態事例を模式的に示した拡大断面図である。
【図11】長期加熱暴露時に経時的に発生するカーケンダルボイド(マイクロボイド)の発生機構(仮説)の第1ケースの説明図として、錫と酸化銅が酸化第一錫と銅に変化する前後の体積比率を模式的に示した図である。
【図12】長期加熱暴露時に経時的に発生するカーケンダルボイド(マイクロボイド)の発生機構(仮説)の第2ケースの説明図として、酸化第一錫と酸化銅が酸化第二錫と銅に変化する前後の体積比率を模式的に示した図である。
【図13】本発明の第1ステップにおける一実施形態として、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融錫液または溶融はんだ液を配した貯液槽からそれぞれの液を専用ポンプでノズルに給液して、ノズルからそれぞれの液を電子回路基板または電子部品連結体に吹付けて、パッドまたはリード表面にはんだ被膜を形成させる様子を模式的に示した断面図である。
【図14】本発明の実施例に使用した酸素濃度1ppm以下のはんだ合金の製造方法の実施事例として、上層に高温の有機脂肪酸溶液、下層に溶融はんだ液を配した貯液槽からそれぞれの液を専用ポンプで撹拌器に循環給液して、撹拌器内で両液を激しく撹拌して、溶融はんだ液内部に存在する酸化物、不純物を除去しながら、混合液を元の貯槽に戻す処理を繰り返し循環継続しながら酸素濃度が1ppm以下になるまで精製する様子を模式的に示した断面図である。
【図15】本発明実施例に使用する細かいメッシュの金網を有する篩または市販の粉末散布装置から下部の高温に加熱された有機脂肪酸溶液中にワークに向かって錫またははんだの粒子を万遍なく散布している状態を模式的に示した断面図である。
【図16】本発明実施例および比較例で製造したはんだプリコート皮膜の加熱エージング(150℃、240時間)後の断面形態でで、a)は比較例2のプリコート皮膜の状態を模式的に示した図で、b)比較例2のプリコート皮膜の1部分の断面写真、同様にc)は実施例7のプリコート皮膜の状態を模式的に示した図で、d)は実施例7のプリコート皮膜の一部分の断面写真を示したものである
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施例と従来方法との比較例について以下に述べる。
先ず、共通の試供試料として、電子回路基板は以下の2種類を用いた。
試料P1: 外形寸法15mm×15mm×1.2mm、電極パッド数192、パッド径0.4mmφ、はんだレジスト保護皮膜で覆われていないパッド径0.35mmφ、パッド間ピッチ0.8mmのBGAが20mmピッチで2列各4個配列された電子回路基板
試料P2: 外形寸法10mm×10mm×1.0mm、電極パッド数304、パッド径0.1mmφ、はんだレジスト保護皮膜で覆われていないパッド径0.08mmφ、パッド間ピッチ0.15mmのBGAが20mmピッチで2列各4個配列された電子回路基板
また、はんだ中の酸素濃度を下げた低酸素はんだ合金の作製方法は、図14のように、銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫からなる鉛フリーはんだ合金を予め溶融させた溶融はんだ液5と、パルミチン酸30重量%と残部エステル合成からなる液温260℃の有機脂肪酸溶液4とを撹拌器41内に循環給液して、激しく撹拌して溶融はんだ内部に存在する金属酸化物、及び不純物をパルミチン酸のケン化作用を利用して、該パルミチン酸溶液中に取り込ませて、撹拌混合液を貯槽12に戻し、溶融はんだ液とパルミチン酸溶液の比重差を利用して両液を分離しながら、これを酸素濃度が1ppm以下になるまで繰り返し循環処理して精製作成した。これを母合金として、酸素濃度が2、5、10ppmになるように、この母合金に上記精製処理前の酸素濃度既知(120ppm)の同金属組成のはんだ合金を加えて溶融し、それぞれの酸素濃度のはんだ合金を作製し、以下の比較例と実施例の評価試験に供した。
【比較例1】
【0050】
従来方法、即ち、銀2.5質量%、銅0.5質量%、残部錫からなる組成の鉛フリーはんだ合金をそのまま溶融した浴温260℃のはんだ浴に、予めパッド部にロジン系フラックスが塗布されている試料1及び2を2秒間浸漬してパッド部にはんだ付け処理した後、通常のホットエアーレベラーで温度350℃、圧力(圧力計ゲージ)0.2MPaで処理した。
【比較例2】
【0051】
従来方法、即ち、市販の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫からなる鉛フリーはんだ合金をそのまま溶融した浴温265℃のはんだ浴に、予めパッド部にロジン系フラックスが塗布されている試料1及び2を3秒間浸漬してパッド部にはんだ付け処理した後、通常のホットエアーレベラーで温度350℃、圧力(圧力計ゲージ)0.2MPaで処理した。
【比較例3】
【0052】
従来から広く実用されている方法、即ち、銀2.5質量%、銅0.5質量%、残部錫からなる鉛フリーはんだ合金の粉末をフラックス成分などと混練した市販のクリームはんだ(ソルダーペースト)を用いて、試料1及び2に通常のシルクスクリーン印刷法でパッド部にソルダーペーストを塗布した後、該試料1,2をピーク温度350℃の通常のリフロー炉中を通過させて、パッドにはんだ被膜を形成させた。
【比較例4】
【0053】
銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度10ppm、残部錫からなる組成に調整した鉛フリーはんだ合金を溶融した浴温260℃の溶融はんだ浴に、従来方法、即ち、予めパッド部にロジン系フラックスが塗布されている試料1及び2を2秒間浸漬してパッド部にはんだ付け処理した後、通常のホットエアーレベラーで温度350℃、圧力(圧力計ゲージ)0.2MPaで処理した。
【比較例5】
【0054】
銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる組成に調整した鉛フリーはんだ合金を溶融した浴温260℃の溶融はんだ浴に、従来方法、即ち、予めパッド部にロジン系フラックスが塗布されている試料1及び2を2秒間浸漬してパッド部にはんだ付け処理した後、通常のホットエアーレベラーで温度350℃、圧力(圧力計ゲージ)0.2MPaで処理した。
【比較例6】
【0055】
銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる組成に調整した鉛フリーはんだ合金を溶融した浴温260℃の溶融はんだ浴に、従来方法、即ち、予めパッド部にロジン系フラックスが塗布されている試料1及び2を2秒間浸漬してパッド部にはんだ付け処理した後、液温230℃のグリセリンを吹き付けて余剰のはんだを吹き落とすホットリキッドレベラー処理を行った。
【実施例1】
【0056】
試料1については,そのまま図5のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬し、次に該上層を通過させて引き上げながら、上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の30mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約20倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例2】
【0057】
試料1については,そのまま図5のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液中に2秒間浸漬して、次に該上層を通過させて引き上げながら、上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速1.4m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが10μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の30mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約20倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速1.4m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが10μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例3】
【0058】
試料1については,そのまま図5のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度10ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に該上層を通過させて引き上げながら、上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の30mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度10ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約30倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2.1m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例4】
【0059】
試料1については,そのまま図5のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度5ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に該上層を通過させて引き上げながら、上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がパルミチン酸10質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の30mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度5ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約25倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2.1m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例5】
【0060】
試料1については,そのまま図4のような上層がステアリン酸45質量%、残部エステル合成油からなる液温265℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に該上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のステアリン酸溶液を流速1.4m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが10μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がステアリン酸45質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の20mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約30倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速1.4m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが10μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例6】
【0061】
試料1については,そのまま図4のような上層がステアリン酸20質量%、残部エステル合成油からなる液温265℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度1ppm以下、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に該上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のステアリン酸溶液を流速1.8m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がステアリン酸45質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の20mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の銀2.5質量%、銅0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度1ppm以下、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約40倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート被膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例7】
【0062】
試料1については,そのまま図4のような上層がステアリン酸20質量%、残部エステル合成油からなる液温265℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層にニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融錫液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のステアリン酸溶液を流速1.8m/秒で吹付けて、パッド部の錫プリコート皮膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰の錫を吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がステアリン酸45質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の20mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層のニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、酸素濃度2ppm、残部錫からなる液温260℃の溶融鉛フリーはんだ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約40倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート皮膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【実施例8】
【0063】
試料1については,そのまま図4のような上層がステアリン酸20質量%、残部エステル合成油からなる液温180℃の溶液中に10秒間浸漬した後、下層に錫42質量%、ビスマス58質量%、酸素濃度3ppm、からなる錫ビスマス共晶合金に、ニッケル0.07質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫とビスマスを添加した液温180℃の溶融はんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温170℃の前記組成のステアリン溶液を流速1.8m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート皮膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
一方、試料2については、図8のような上層がステアリン酸45質量%、残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に水平に試料を設置し、該試料の20mm直上に設置された超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置から出力0.5KW、周波数35KHzの超音波振動を利用して、前記溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子噴射される粒径1〜10μmφの溶融はんだ微粒子(組成は下層の前記溶融はんだ液と同じ)がワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約20倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバースコープを挿入して、各開口部パッド表面に溶融はんだ粒子が1個以上沈着していることを画像処理したモニター画面で確認した上で、試料を垂直に立てて、下層の前記溶融鉛フリーはんだ液の中に2秒間浸漬して、次に前記上層を通過させて引き上げながら、図5のように上部で液温260℃の前記組成のパルミチン酸溶液を流速2m/秒で吹付けて、パッド部のはんだプリコート皮膜の仕上がり厚さが5μmになるように、余剰のはんだを吹き落として除去した。
【0064】
評価試験は、外観については、顕微鏡(X20〜100倍)でブリッジやミッシング(はんだ不着)の有無を観察した。
上記各比較例および実施例の鉛フリーはんだ中の銅濃度、不純物濃度については、比較例1〜5、実施例1〜5の各試作実験に先立ち使用直前のはんだをサンプリングし、最新のTOF−SIMS分析装置により表面から深さ10μmの内部までの酸素濃度を測定した。
また、実施例1〜5、及び比較例1〜5の加熱エージング後の半導体装置の半田接合部のボイド観察試料および耐衝撃性試験試料の作成には、各試料に対応するバーンイン試験用プリント回路基板を使用して、実施例1〜5及び比較例1〜5の各試料1を搭載してリフロー炉ではんだ接合して評価用試料として評価試験に供した。
はんだ接合部界面付近のボイド有無の評価方法は、評価試験用試料を常態と、恒温加熱炉に150℃、240時間放置して加熱エージング加速試験後について、それぞれ半田接合部断面を研磨して、走査電子顕微鏡(SEM)及びX線マイクロアナライザー(EPMA)により、該半田接合部付近のマイクロボイドの数と大きさを観察ならびに分析し比較した。
また、同一条件下で同時に加熱エージング加速試験した上記実施例1,2及び比較例1,2、3の各試料1のBGA側のはんだ接合部界面付近のボイド有無の評価方法として、評価試験用試料を常態と、恒温加熱炉に150℃、240時間放置して加熱エージング加速試験後について、それぞれ半田接合部断面を研磨して、走査電子顕微鏡(SEM)及びX線マイクロアナライザー(EPMA)により、該半田接合部付近のマイクロボイドの数と大きさを観察ならびに分析し比較した。
一方、同一条件下で同時に加熱エージング加速試験をした上記実施例1,2、3および比較例1,2、3の試料を、市販のBGA等電子デバイス部品用全自動落下試験装置を用い、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)規格のNo.22−B111に準じて高さ1000mmから約1300Gで繰り返し落下させて、その都度各試験試料の導通試験を行い、導通不良が発生するまでの落下試験回数を調べた。(表1)
【0065】
その結果は下記[表1]の通り、特に、微細回路である試料2におけるはんだ形成部の外観検査において、実施例1と、比較例1及び比較例3との間、実施例2と比較例2との間のいずれにも明確な有意差があり、比較例1,2,3ではオーバーボリューム(ツノ、ツララ)、ブリッジ、ミッシング(はんだ未着)が多発した。
一方、比較的広幅の回路である試料1におけるはんだ膜厚は、本発明方法である実施例1〜5が5±2μm、または15±3μmの範囲に入っているのに対して比較例1〜5はいずれも1〜32μmで圧倒的に厚さのばらつきが大きく不均一であることが判った。
【0066】
更に、使用したはんだ中の酸素濃度とカーケンダルボイド(マイクロボイド)の関係について、比較例、実施例とも常態においては、比較例及び実施例とも全くマイクロボイドもないことを確認した上で、加熱エージング(150℃、240時間)を行ったが、表2の通り、比較例1〜3と、酸素濃度を10ppm以下に調整したはんだを使用した比較例4,5、6とも加熱エージング後にはカーケンダルボイドが多発し、耐衝撃性が低いことが判った。
これに対して、本発明である実施例では、酸素濃度が高いはんだを使用した実施例1、2ではカーケンダルボイドの発生が若干見られたが、比較例1〜5に較べると、発生数は圧倒的に少なく、かつボイドの大きさも小さいために、耐衝撃性は実用上で殆ど問題ないレベルであることが判った。
一方、酸素濃度を5ppm以下に調整したはんだを使用した実施例4〜8では、明らかに溶融はんだの粘性が一段と低くなり、所謂「はんだ切れ」が良くなり、カーケンダルボイドの発生は激減する。酸素濃度を2ppm以下にした実施例5〜8では加熱エージング後のカーケンダルボイド発生を皆無に出来ることが検証された。物理化学的な物性上の変曲点(臨界点)が酸素濃度5ppm付近にあると推定される。
【0067】
これは、はんだ接合界面に付近に多量の酸素または銅酸化物が存在すると、加熱エージング中において、はんだ被覆層内で原子拡散による次の反応に従い、体積集収縮が発生してボイドになると考えられる。(仮説)
即ち、カーケンダルボイドは一般に格子欠陥に起因する空隙と云われているが、加熱エージング後のカーケンダルボイド(マイクロボイド)は図11〜12に模式的に示したように酸化銅31の酸素が錫33と結合して酸化第一錫32と銅34になるケース1、即ち、
CuO+Sn→Cu+SnO
により約1.5%の体積収縮が生ずることによりマイクロボイド(空隙)36が発生するケース、または図12に模式的に示したように酸化銅31と酸化第一錫32が銅34と酸化第二錫35になるケース2、即ち
CuO+SnO→Cu+SnO
により約15%の堆積収縮を生ずることによりマイクロボイド(空隙)36が発生するものと発明者らは考えている(仮説)。また、ニッケル含有鉛フリーはんだにゲルマニウムを添加した場合は錫の酸化抑制効果が大きいので加熱エージング後のマイクロボイドと耐衝撃破断性改善の効果もより大きいと考えられる。
このことは、はんだ接合の際に如何に酸素を巻き込まないようにすることが大事かを示唆している。即ち、従来法のように大気中で沸騰状態のフラックスの飛散により、酸素を巻き込みはんだ中の金属及びパッドの金属表面に酸化物が取り込まれることが、比較例1〜5のカーケンダルボイド大量発生を引き起こした原因と考える。
また、耐衝撃性試験結果は表2の通り、比較例1〜6がいずれも1〜4回で導通不良を発生するのに対して、実施例1〜8とも40回でも全く不良を発生しないことが確認された。尚、衝撃試験は40回で一応打ち切ったので、それ以上どこまで正常性を保持できるかは未確認である。その理由は40回も持てば実用上、信頼性として充分なことに因る。
【0068】
尚、前記実施例では、対象として電子回路基板としてBGAとそれに対応するバーンインテスト用プリント回路基板を使用したが、それ以外の電子回路基板でも同様の効果が得られることは容易に類推できるし、超ミニトランジスタ、超ミニダイオード、ミニコンデンサなどの微小な電子部品は多列多数個取りでマトリックス状に連結して配列したリードフレーム条帯、短冊などの電子部品連結体、あるいは線棒または板状保持体に整列配列した電子部品配列体に本発明の方法ではんだ被膜またははんだプリコート被膜を形成させても、同じ効果が得られることは容易に類推される。従って、これらは本発明の範囲内である。
また、コイル状に巻いた微小な電子部品は多列多数個取りでマトリックス状に連結して配列したリードフレーム条帯は、本発明方法ではその移動処理と連続送りまたは間欠送りなどして処理することが出来る。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用の可能性】
【0071】
以上の通り、本発明は、従来法ならびにそれに類する先行技術の難点である、微細回路のはんだプリコート皮膜形成時のブリッジの問題、フラックス成分を含有するが故の接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)発生現象を回避し、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題、更には長期高温暴露後に経時的に発生するカーケンダルボイドの問題を解決するもので、パッドまたはリード幅0.02〜0.08mm、隣接ピッチ0.04〜0.12mmの微細狭ピッチ電子回路に3〜20μmの厚さ範囲で厚さのばらつきが±3μ以内の錫またははんだプリコート皮膜形成をも、安定的に量産可能にする技術を提供するものであり、工業的価値が極めて高い画期的な技術である。
【符号の説明】
【0072】
1 電子回路基板または電子部品連結体(ワーク)
2 ホットエアーレベラー(HAL)装置のノズル
3 高温の有機脂肪酸溶液吹付け用ノズル
4 高温の有機脂肪酸溶液
5 溶融錫液または溶融はんだ液
6 高温の有機脂肪酸溶液移送用ポンプ
7 高温の有機脂肪酸溶液吹付け用ノズル
8 リバースロール
9 バッフル
10 有機脂肪酸溶液貯槽
11 有機脂肪酸溶液(上層)と溶融錫液または溶融はんだ液(下層)用貯槽
12 有機脂肪酸溶液(上層)と溶融錫液または溶融はんだ液(下層)用貯槽
13 自動制御式3次元移動装置(ロボット)に取り付けられたロボットアーム
14 電子回路基板または電子部品連結体をロボットアーム先端部に取付けて固定する枠状専用ホルダー
15 パイロットピン
16 超音波発振機付き溶融錫または溶融はんだ微粒子発生装置
17 散布される溶融錫微粒子または溶融はんだ微粒子
18 溶融錫液または溶融はんだ液移送用ポンプ
19 超音波出力ケーブル
20 超音波振動子
21 冷却用フィンブースター
22 保持用ブースター
23 超音波ホーン
24 溶融錫または溶融はんだ液供給用管路
25 溶融錫または溶融はんだ噴射ノズル
26 電極パッドまたはリード
27 はんだレジスト
28 開口部
29 溶融錫微粒子または溶融はんだ微粒子が電極パッドまたはリード表面に付着接合し、かつ複数の微粒子同志が凝集結合して形成された錫またははんだ皮膜層
30 電極パッドまたはリード表面に接合した溶融錫微粒子またははんだ微粒子が融合して形成された溶融はんだ層
31 酸化銅 CuO
32 酸化第一錫 SnO
33 錫 Sn
34 銅 Cu
35 酸化第二錫 SnO
36 カーケンダルボイド(マイクロボイド・空隙)
37 有機脂肪酸溶液と溶融錫液または溶融はんだ液の貯槽
38 溶融錫液または溶融はんだ液次付けノズル
39 有機脂肪酸溶液と溶融錫液または溶融はんだ液吹付け後の溢流(オーバーフロー)液(混合液)
40 溢流混合液39を受ける金属製の受皿樋
41 撹拌器
42 有機脂肪酸溶液と溶融錫液または溶融はんだ液の混合液
43 バルブ
44 細かいメッシュの金網を持つ篩または市販の粉末散布装置
45 銅パットまたは銅リード
46 錫銀、錫銅などの金属間化合物(IMC)の偏析物
47 錫銅ニッケルの金属間化合物(IMC)層
48 鉛フリーはんだ層
49 錫銅ニッケル金属間合金層
50 錫ニッケル層金属間合金層
51 ガラスエポキシ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板又は電子部品の微小面積の電極パッド又は狭ピッチのリード表面に錫またははんだプリコート被膜を形成する方法において、
上層に加熱された高温の有機脂肪酸溶液が、下層に溶融錫液または溶融はんだ液がそれぞれ入った貯槽を備えた処理装置の前記上層中で前記電子回路基板又は前記電子部品を水平または傾斜させて前記有機脂肪酸溶液と接触させ、前記電極パッド又は前記リード表面に前記有機脂肪酸の保護被膜を形成した後、前記上層中で前記有機脂肪酸溶液と接触させた状態で、直上に設置された溶融錫液または溶融はんだ粒子を散布し、前記電極パッド又は前記リード表面に前記溶融錫または溶融はんだを接着し、次いで、前記電子回路基板又は前記電子部品を前記下層の前記溶融錫液または溶融はんだ液に浸漬して前記電極パッド又は前記リード表面に錫またははんだ被膜を形成する第1のステップと、
第1のステップにより錫液またははんだ被膜の形成された前記電子回路基板又は前記電子部品を前記上層を通過させて引き上げながら、表面に加熱した有機脂肪酸溶液を吹付けて余剰に付着した前記錫またははんだ被膜を吹き落し除去する第2のステップと、を具備し、
前記電極パッド又は前記リード表面に均一な錫またははんだプリコート被膜を形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の方法において、前記均一な錫またははんだプリコート被膜は、厚さが3〜30μmで、厚さのばらつきが5μm以下であることを特徴とする錫またははんだプリコート被膜の形成方法。
【請求項3】
前記請求項2に記載の方法において、前記有機脂肪酸溶液は、パルミチン酸またはステアリン酸5〜80質量%と残部エステル合成油とからなることを特徴とする錫またははんだプリコート被膜の形成方法。
【請求項4】
前記請求項2に記載の方法において、前記溶融錫または前記溶融はんだ粒子の散布は、噴射ノズル部を通過する溶融錫液または溶融はんだ液に直接超音波振動を与えることにより微粒子化して散布することを特徴とする錫またははんだプリコート被膜の形成方法。
【請求項5】
前記請求項2に記載の方法において、前記溶融錫液または前記溶融はんだ液は、ニッケル0.005〜0.1質量%と、ゲルマニウム0.001〜0.05質量%またはリン0.003〜0.01質量%のいずれか1種以上と、残部錫からなることを特徴とするはんだプリコート被膜の形成方法。
【請求項6】
前記請求項2に記載の方法において、前記溶融錫液または前記溶融はんだ液は、錫42質量%、ビスマス58質量%の錫ビスマス母合金に、ニッケル0.005〜0.1質量%と、ゲルマニウム0.001〜0.05質量%またはリン0.003〜0.01質量%のいずれか1種以上とを添加してなることを特徴とするはんだプリコート被膜の形成方法。
【請求項7】
電子回路基板又は電子部品の微小面積の電極パッド又は狭ピッチのリード表面に錫またははんだプリコート被膜を形成するための装置であって、
上層に加熱された有機脂肪酸溶液が、下層に溶融錫液または溶融はんだ液がそれぞれ入った貯槽を備えた処理装置と、
前記電子回路基板又は前記電子部品を把持して前記貯槽に出入りさせる移送装置と、
前記貯槽の前記上層において、前記電子回路基板又は前記電子部品の直上に設置され、前記電子回路基板又は前記電子部品を前記有機脂肪酸溶液と接触させた状態で、前記電極パッド又は前記リード表面に前記溶融錫または溶融はんだを付着させる散布装置と、
錫またははんだ被膜の形成された前記電子回路基板又は前記電子部品の表面に加熱した有機脂肪酸溶液を吹付けて余剰に付着した前記錫またははんだ被膜を吹き落し除去する除去装置と、を具備したことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の装置において、前記上層の有機脂肪酸溶液は、パルミチン酸またはステアリン酸5〜80質量%と、残部エステル合成油とからなることを特徴とする錫またははんだプリコート被膜形成装置。
【請求項9】
前記請求項7に記載の装置において、前記下層の溶融錫または溶融はんだ液は、ニッケル 0.005〜0.1質量%と、ゲルマニウム 0.001〜0.05質量%またはリン 0.003〜0.01質量%と、残部錫とからなることを特徴とする錫またははんだプリコート被膜形成装置。
【請求項10】
前記請求項7に記載の装置において前記溶融錫または溶融はんだを付着させる散布装置は、ノズルから溶融錫液または溶融はんだ液を超音波振動により微粒子化して散布することを特徴とする錫またははんだプリコート被膜形成装置。
【請求項11】
前記請求項7に記載の装置において、前記移送装置は、
前記電子回路基板又は前記電子部品をパイロットピンを介して固定する枠状治具と、前記枠状治具をロボットアームに取付け三次元移動搬送させる自動制御装置と、を備えることを特徴とする錫またははんだプリコート被膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−228608(P2011−228608A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111497(P2010−111497)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【特許番号】特許第4665071号(P4665071)
【特許公報発行日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(506356450)ホライゾン技術研究所株式会社 (8)
【Fターム(参考)】