説明

防塵浮動コネクタ、防塵浮動コネクタ構造および防塵浮動コネクタ付き電動工具

【課題】防塵機能と浮動機能を兼ね備えた防塵浮動コネクタと防塵浮動コネクタを用いた電動工具を提供を提供する。
【解決手段】相手基板BBと平行配置された対応基板BTに取付けられ、両基板間を電気接続するために相手基板に取付けられた相手コネクタが接続される防塵浮動コネクタであって、相手コネクタが嵌入される開口52を区画すると共に、開口52内に対応コネクタコンタクト90を臨ませて成る浮動ハウジング50と、上記対応基板BTに取付けられる固定ハウジング70とを有し、可撓部94は、浮動ハウジング50を固定ハウジング70との間に間隔を隔てて固定ハウジング70に対して浮動支持し、可撓部94が、相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である後面に位置し、その後面を、浮動ハウジング50と固定ハウジング70との間の隙間を防塵するために、カバー30で覆ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防塵浮動コネクタ、防塵浮動コネクタ構造および防塵浮動コネクタ付き電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動工具の一例としては、特許文献1の図1並びに段落[0023]、[0024]に明示される如く、「コードレス電動ドライバーは、胴部である略円筒状の外形の本体と、本体の一端部に装着されたチャック部と、本体の他端部に一体に形成された把持部とを備えている。本体の内部には、ブラシレス直流モータ(以下、単にモータという)と速度変換機構とが内蔵されている。把持部は作業者が手で把持できるように形成され、把持状態で指が位置する箇所に引き金状のトリガースイッチ及び回転方向指令スイッチが配置されている。トリガースイッチの投入により、モータを所定の回転速度に回転制御する各種回路素子が実装された制御回路の配線基板が、モータの下方に内蔵されている。また、把持部にはバッテリーが内蔵されている。」ものがある。なお、この公知例はドライバーに関するものであるが、この他にドリルなど、種々のコードレス電動工具も略同様の構造となっている。
【0003】
そして、多くのコードレス電動工具にあっては、例えば特許文献2に示されている如く、「バッテリーパックの装着部に、電動工具本体への機械的結合のためのL字型係合部を装着部の左右両サイドに少なくとも一対設ける。電動工具本体の被装着部にL字型係合部と個別に対応する複数個の被係合部を設ける。L字型係合部を、バッテリーパックの装着部と電動工具本体の被装着部とを互いに押し当てる方向のみに被係合部を挿入可能とする挿入規制部と、挿入規制部と直交方向に開口した装着保持部と、挿入規制部から装着保持部へと移動した被係合部に係合するフック係合部とを有する。」(特許文献2の[要約]における[解決手段]の記載)と言った構成の下、「電動工具本体の被装着部に対してバッテリーパックの装着部を押し当てた後で、電動工具本体又はバッテリーパックのいずれか一方を押し当て方向と直交する方向にずらすだけで、バッテリーパックの装着ができる。」(特許文献2の段落[0007]の記述)ようになっている。
【0004】
加えて、「また前記外ケースの装着部には、充放電用の電気的接合がなされる雄端子が挿入される3個の凹部が設けられている。3個の凹部の奥には、内ケースに固定したプリント基板に装着される3個の雌端子が配置されている。3個の雌端子は、正負の充放電用端子、サーモスイッチに接続される温度端子を構成しており、3個の凹部からそれぞれ挿入される3個の雄端子(正負の電源端子、温度信号検知用端子)が上記端子に各々接続可能とされている。内ケースに装着してあるプリント基板のコネクタは、セルの出力を伝える板金からリード線にて接続される電圧信号や、サーミスタから伝えられる温度信号等を出力したり、通信用端子として充電器との間で通信回路を形成したりする働きをする。」(特許文献2の[0022]の記述)ようになっており、前記電動工具本体とバッテリーパックの間には充放電用電気的接続(端子)と過放電や過熱防止のための制御用電気的接続(コネクタ)とが備えられている。
【0005】
上記充放電用端子(ソケット)の一例は、特許文献2の図2に明示されている通り、チューリップ型で、電動工具本体側の雄端子は棒状を呈しており、同工具本体にバッテリーパックを装着することによってこの両端子の接続も完了し、しかもこの接続は強固に行い得る。何となれば、両端子共、大きく、その剛性、弾性も強くすることができ、例え該電動工具が稼動中に激しく振動し、それがバッテリーパックに伝播するようなことがあっても、これに旨く追従して両者の電気的接続が損なわれるようなことはない。
【0006】
しかしながら、制御用の前記コネクタの如き一方の基板と他方の基板を電気接続するコネクタのセット(ソケット〈相手コネクタ〉とプラグ〈対応コネクタ〉のセット)にあっては、そのコンタクトは小さく、斯様な剛性や弾性を付与する事はできないので、上記振動対策としてプラグ若しくはソケットのいずれか一方に浮動機構を備えたものの採用が望まれる処、只単に公知の浮動機構をプラグ又はソケットに組み込めば良いと言う訳には行かない。
【0007】
何となれば、この浮動機構を備えたコネクタ(ソケット)としては、例えば、特許文献3が公知であり、その特許文献3の[要約]の[構成]には、「可動型コネクタは基板に取付け固定される略枠状の第1ハウジング及びこの第1ハウジングの開口内に隙間をもって挿入される第2ハウジングとを有する。第2ハウジングのコンタクト受容空洞と第1ハウジング間に多数のコンタクトを挿入保持する。このコンタクトは接触部、半田接続部及び歪吸収部を有する略平板状である。歪吸収部は好ましくは垂直及び水平方向に略U字状に複数の屈曲部を有する。」とある。
【0008】
即ち、第1ハウジングと第2ハウジングとは歪吸収部を備えたコンタクトで連結されており、第2ハウジングは第1ハウジングに対して浮動構造となっている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−9284号公報
【特許文献2】特開2006−326765号公報
【特許文献3】特開平4−370677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この様な浮動構造をコネクタセットに採用すれば、前記工具本体とバッテリーパックとが振動しても、上記歪吸収部がこれを旨く吸収し、両者の電気的接続を安定的に保持することができる。
【0011】
しかしながら、電動ドライバーや電動ドリルと言ったコードレス電動工具の場合、そのドライバーなりドリルが稼動する結果、周辺に木屑、金属屑、コンクリート屑等など、或いはその他の塵埃が飛散し、それらが前記電動工具本体とバッテリーパックの合わせ面の隙間から内部に浸入し、前記ソケット・プラグにまで達し、終には同ソケットとプラグの間に、或いは前記第1ハウジングと第2ハウジングの間にまで入り込む惧れがある。
【0012】
さらには、充電のため、バッテリーパックが工具本体から外された状態では、プラグ・ソケットの嵌合面が開放され、そこから同様に塵埃が入り込む惧れもある。
【0013】
塵埃がソケット・プラグの間に入り込んだ場合、前記電動工具本体とバッテリーパックの間の通信回路が遮断され、前記モーターが回転せず、ドライバーやドリルが稼動できない。
【0014】
さらに、同塵埃がソケットの上記第1ハウジングと第2ハウジングの間に入り込んだような場合には、その前記浮動機能が阻害されることになり、この状態でドライバーやドリルが稼動して前述の激しい振動を長時間に亘って受けると、最悪、ソケット又はプラグが破壊されるに至る。
【0015】
本発明は斯様な点に鑑みなされたもので、防塵機能と浮動機能を兼ね備えた防塵浮動コネクタと防塵浮動コネクタ構造と防塵浮動コネクタを用いた電動工具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、相手基板と平行配置された対応基板に取付けられ、上記両基板間を電気接続するために上記相手基板に取り付けられた相手コネクタが接続される防塵浮動コネクタであって、天井部、一対の側壁部および底板部によって上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である後面に位置し、その後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったものである。
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、一方の相手基板に相手コネクタを、他方の対応基板に防塵浮動コネクタをなす対応コネクタを各々取付け、該相手コネクタと対応コネクタの接続によって平行配置された上記両基板間を電気接続する防塵浮動コネクタ構造であって、上記相手コネクタは、上記相手基板に対して平行方向に突出した凸部を有し、且つそこに相手コネクタコンタクトを配してなり、上記対応コネクタは、天井部、一対の側壁部および底板部によって上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記対応コネクタにおける上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である対応コネクタ後面に位置し、その対応コネクタ後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったものである。
【0018】
好ましくは、上記浮動ハウジングの底板部の端部から上記対応基板方向に垂下して成るスカート部を設けて該浮動ハウジングの前面並びに両側面を上記スカート部で囲い、且つ上記カバーの下端に上記対応基板方向に延びる延設部を形成し、以って上記スカート部と延設部によって上記固定ハウジングの周囲を覆うようにしたものである。
【0019】
好ましくは、上記浮動ハウジングの側壁部に係止部が形成され、上記カバーに設けた被係止部を上記係止部に係合させて、上記浮動ハウジングに上記カバーを固着するようにしたものである。
【0020】
好ましくは、上記固定ハウジングは移動規制部を備え、該移動規制部に上記スカート部の内壁並びに上記カバーの延設部の内壁が接することにより、上記浮動ハウジングの移動量を制限するようにしたものである。
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、電動工具本体に着脱自在に工具駆動用のバッテリーパックを備えた電動工具であって、電動工具本体とバッテリーパックとのいずれか一方の相手基板に相手コネクタを、他方の対応基板に防塵浮動コネクタをなす対応コネクタを取付け、該相手コネクタと対応コネクタとの接続によって平行配置された上記両基板間を電気接続する電動工具において、上記相手コネクタは、上記相手基板に対して平行方向に突出した凸部を有し、且つそこに相手コネクタコンタクトを配してなり、上記対応コネクタは、天井部、一対の側壁部および底板部によって上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記対応コネクタにおける上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である対応コネクタ後面に位置し、その対応コネクタ後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、防塵機能と浮動機能を兼ね備えるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1及び図2(A)〜(C)に本実施形態の防塵浮動コネクタおよび防塵浮動コネクタ構造を本実施形態の電動工具に用いた場合の形態を示す。
【0025】
図1では、工具本体Tに工具駆動用のバッテリーパックBが嵌合状態にある。図2(A)〜(C)に示すように、工具本体T内に、工具モータ(図示せず)の回転を制御する回路基板BT(対応基板、図6参照)、及びバッテリーパックB内に電池の電圧状態を監視する基板BB(相手基板、図6参照)を配置してある。
【0026】
本実施形態の防塵浮動コネクタをなすプラグP(対応コネクタ)は工具本体Tの基板BTに取り付けられ、ソケットS(相手コネクタ)は脱着式のバッテリーパックBの基板BBに取り付けられる(固定される)。バッテリーパックB、工具本体Tの合わせ面には、各々係止フックf、Fが設けられ、これら係止フックf、Fにより、バッテリーパックBが工具本体Tが着脱される。この着脱の動作により、上記ソケットSとプラグPも嵌合と抜去とが行われる。ソケットSとプラグPとの両者が嵌合することによって工具本体TとバッテリーパックBの電気的接続が達成される。
【0027】
図3は相手コネクタであるソケットSを、図4は該ソケットSに嵌合する対応コネクタであるプラグPを、各々示している。なお、図4には、プラグPに組み付けられる防塵用のカバー30が、組み付けを解かれた状態で示されている。
【0028】
より詳細に説明するに、図3に示すように、上記ソケットSは、合成樹脂製であって断面コ字状のボディー11、該ボディー11に植設され且つプラグPのプラグコンタクト90(対応コネクタコンタクト、図4参照)に接触し得る複数のソケットコンタクト12(相手コネクタコンタクト)を備える。そしてこのボディー11は、基部13、凹部14、凸部15を有していて、上記ソケットコンタクト12は基部13の裏面16にその端部17を突出させており、該端部17を前記バッテリーパックB内の基板BBの導体(図示せず)にはんだ付けし、実装される。
【0029】
凹部14は、後述のプラグPの浮動ハウジング50の天井部51を受け入れる部位であり、凸部15はそこに保持された上記ソケットコンタクト12と共に、プラグPのソケット嵌合開口52(図4参照)に進入してソケットSのソケットコンタクト12とプラグPのプラグコンタクト90を接続させる部位である。
【0030】
また、プラグPは、図4〜図6に示すように、合成樹脂製の浮動ハウジング50、同樹脂製の固定ハウジング70、この両者の間に介在するプラグコンタクト90を備えている(固定ハウジング70は、図4に表れぬので図5、図6参照)。なお、図5では、後述するカバー30の断面が、浮動ハウジング50の断面に対してY方向にずらした位置で切断して示される。
【0031】
浮動ハウジング50は、ソケットSが嵌入される開口52(嵌合開口またはソケット嵌合開口)を区画する矩形の枠の如き構造で、天井部51、一対の側壁部53、天井部51に対向する底板部54、更に上記嵌合開口52を細分化するリブ57(図5参照)などを有し、これらで囲まれた小さな空間をソケット挿入室56とし、その各々にプラグコンタクト90の接触部91を位置付けしている。
【0032】
さらに、底板部54は側方(側壁部53方向)及び前方(ソケットSとの対向面側)が水平方向に、若干、延設されており、さらに延設された部分から取り付け基板(対応基板)BT方向に垂下してなる袴状のスカート部60が形成されている。
【0033】
また、この底板部54の図5における下、即ちスカート部60の中に配設される上記固定ハウジング70は略直方体状の合成樹脂部材で、プラグP即ち該固定ハウジング70を前記電動工具本体Tの基板BTに仮固定するための脚部71、上記プラグコンタクト90の基板部92(図5参照)が圧入される溝部72(同図5参照)を持ち、さらに上記スカート部60に内接し得る矩形状の移動規制部73(図7参照)が固定ハウジング70の両側端に設けてある。従ってスカート部60内に該固定ハウジング70の移動規制部73を遊嵌すると共に、前記底板部54との間にも的確なクリアランスを用意することにより、浮動ハウジング50のX、Y方向(図5参照)への移動は、スカート部60の内壁に移動規制部73が当接することで制限される。
【0034】
なお詳細には、浮動ハウジング50のX方向前方(ソケットSの対向面側)への移動は上記スカート部60で、X方向後方への移動は後述のカバー30で、夫々規制される。同様に、上記クリアランスがZ方向の相対的移動を許容する。
【0035】
両ハウジング50、70を繋ぐ前記プラグコンタクト90は、図5から明らかなように、上記接触部91、基板部92に加え、該基板部92から延設されて電動工具本体Tの基板BTの導体にはんだ付け接続される端子部93、基板部92から立ち上がって接触部91に連なる針金状の可撓部94、前記天井部51と底板部54の間に上記接触部91を固定するための固定部95などからなり、基板部92並びに接触部91を、夫々、嵌合開口52の後面側(背面側)から、すなわち図5中左方から右方に向けて固定ハウジング70の溝部72、浮動ハウジング50のソケット挿入室56に押し込み、そこに圧入・固定し、その間に可撓部94を用意して両ハウジング50、70を相対的に移動可能に連結している。
【0036】
カバー30は、図4に示す如く、合成樹脂製の平板部31の両端から垂直に被係止部32を各々延設したような形状で、そのカバー30の高さHはプラグPの高さhに、また、カバー30の幅WはプラグPの幅wに、各々対応しており、平板部31はプラグPの後面(ソケットが進入して来る面を前面とする)をピッタリ覆い、上記可撓部94を保護しつつ、その内部に塵埃が入り込まないようにしている。
【0037】
つまり、上記被係止部32には先端にフック33があって、このフック33をプラグPの後面から押し進めて行くと、浮動ハウジング50の側壁部53に形成したスロープ58を係止部32が弾性変形しつつ乗り越えてその先の係止穴(係止部)59に引っ掛かり、上記後面を塞いで係止されるようになっている。
【0038】
このようなカバー30を備えた浮動機能付きプラグPに対し、前述の如きソケットSが接続されると、プラグPの前面はソケットSで塞がれ、また後面はカバー30で覆われているため、その内部への塵埃の浸入を抑えることができる。
【0039】
即ち、図6から明らかなように、プラグPは、図6中上方に位置する電動工具本体Tの基板BTに実装され、またソケットSは同下方に位置するバッテリーパックBの基板BBに実装されていて、該ソケットSは同右方から左方に進入し、プラグPのソケット嵌合開口52に嵌り込み、両コンタクト12、90が接し、上記両基板BT、BB間の電気的接続が達成される(ソケットコンタクト12は例えばフォーク状或いはチューリップ状となっていて、例えば平板状のプラグコンタクト90を挟持することができるようになっている)。
【0040】
このとき、プラグPの図中左側、即ち後面は前記カバー30で覆われ、また同前面のソケット嵌合開口52はソケットSの凸部15によって塞がれるので、その内部への塵埃の浸入を防止することができる。より詳細に見るに、浮動ハウジング50の底板部54と上記ソケットの凸部15との間に、少なからず、隙間Cが存在するが、該隙間Cは大きくなく、且つソケットコンタクト12がプラグコンタクト90を強く挟持し、ソケットSと浮動ハウジング50が一体となって、固定ハウジング70に対して浮動、つまり相対移動を許容されているから、例えこの隙間Cに塵埃が浸入したとしても、何の悪影響も発生しない。また、プラグコンタクト90の可撓部94が位置付けされるプラグPの後面は、その全面をカバー30で覆われているので、塵埃が入り込む余地はない。
【0041】
さらに、浮動ハウジング50には、その前面及び両側面に底板部54から基板BTに向かって垂下するスカート部60が設けてあり、加えて前記カバー30の下部(図5参照)には延設部34が用意してあるので、図6又は図7から明らかなように、固定ハウジング70とそこに圧入されるプラグコンタクト90の基板部92並びに可撓部94の立ちあがり部は、該スカート部60、延設部34によって周囲を覆われ、ここへの塵埃の浸入も防止されている。
【0042】
従ってこのような本発明によれば、電動工具本体Tの基板BTに取り付けられるプラグPに浮動機構を付与したので、バッテリーパックBの基板BBに取り付けられるソケットSとの間に、該工具の稼動に基づく振動が伝達されて来て相対移動が生じても、これにプラグコンタクト90の可撓部94が追従し、ソケットコンタクト12と該プラグコンタクト90の確かな接続が維持され、そこに微振動磨耗などが発生して両者の導通を阻害するようなことを防止できる。
【0043】
そして、上記プラグPの浮動ハウジング50の後面をカバー30によって塞ぎ、或いは浮動ハウジング50にスカート部60を設けると共にカバー30に延設部34を形成したので、浮動ハウジング50と固定ハウジング70の間及びプラグコンタクト90の可撓部94の周辺に塵埃が侵入し、両ハウジング50、70の相対移動を阻害するようなことを防止することができる。
【0044】
加えて、充電のために工具本体TからバッテリーパックBを外したような場合には、前記嵌合開口52が開放され、そこに露出したコンタクト90の接触部91に塵埃が付着することが案じられるも、例えここに塵埃が付着したとしても、再びバッテリーパックBを工具本体Tに装着する際、前述のフォーク状或いはチューリップ状としたソケットコンタクト12によって該接触部91に付着した塵埃は掻き落とされ、両者の接続の支障となることはない。勿論、上記嵌合開口52の後面側(背面側)をカバー30で塞いだので、同後面側から侵入する塵埃が同接触部91に付着することは皆無で、結果として上記危惧を半減でき、さらに可撓部94の周辺へ塵埃が侵入して両ハウジング50、70の相対移動を阻害するようなことも防止できる。
【0045】
なお、前述のように、プラグコンタクト90は嵌合開口52の後面側から、すなわち図5中左方から右方に向けて固定ハウジング70及び浮動ハウジング50に押し込まれ、そこに圧入・固定され、且つそこをカバー30で塞がれているので、該カバー30はプラグコンタクト90の抜け止め機能も発揮する。すなわち、嵌合に際してソケットSは図5中右方から左方に向かって嵌合開口52に進入して来るので、プラグコンタクト90の上記圧入方向と逆となり、プラグコンタクト90をソケット挿入室56から押し返し、脱落させんとするが、このプラグコンタクト90の後面側にはカバー30が配してあるので、これがストッパーとなってこれを防ぐことができる。殊に、充電のために工具本体TからバッテリーパックBを外したような状態で放置され、前記嵌合開口52や凸部15に塵埃が付着し、そのまま再嵌合がなされたような場合には、両コンタクト12、90の間に不測の嵌合抵抗を発生させ、プラグコンタクト90を後退させて上記脱落を招き兼ねないところ、これをカバー30に当接させ、脱落を防止することができる。
【0046】
電動工具本体T側にプラグP、バッテリーパックB側にソケットSを取り付ける例について説明したが、逆でも良い。
【0047】
また、プラグPが浮動機能を有する例について説明したが、これをソケットS側に用意しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本実施形態の電動工具の側面図であり、電動工具本体にバッテリバックが取り付けられた状態を示す。
【図2】図2(A)は、本実施形態に係る電動工具本体の下方からの斜視図であり、図2(B)は、図2(A)と同様に電動工具本体の下方からの斜視図であり、図2(C)は、バッテリーパックの上方からの斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係る一実施形態によるソケット(相手コネクタ)の斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態のプラグ(対応コネクタ)の斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態のプラグの断面斜視図である。
【図6】図6は、本実施形態のソケットとプラグとの断面図であり、嵌合した状態を示す。
【図7】図7は、本実施形態のプラグの斜視図であり、後面側を示す。
【符号の説明】
【0049】
12 相手コネクタコンタクト
30 カバー
50 浮動ハウジング
51 天井部
52 開口
53 側壁部
54 底板部
70 固定ハウジング
90 対応コネクタコンタクト
91 接触部
92 基板部
93 端子部
94 可撓部
BB 相手基板
BT 対応基板
P プラグ(対応コネクタ、防塵浮動コネクタ)
S ソケット(相手コネクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手基板と平行配置された対応基板に取付けられ、上記両基板間を電気接続するために上記相手基板に取付けられた相手コネクタが接続される防塵浮動コネクタであって、
上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を天井部、一対の側壁部および底板部によって区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、
上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、
また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、
さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である後面に位置し、その後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったことを特徴とする防塵浮動コネクタ。
【請求項2】
一方の相手基板に相手コネクタを、他方の対応基板に防塵浮動コネクタをなす対応コネクタを各々取付け、該相手コネクタと対応コネクタの接続によって平行配置された上記両基板間を電気接続する防塵浮動コネクタ構造であって、
上記相手コネクタは、上記相手基板に対して平行方向に突出した凸部を有し、且つそこに相手コネクタコンタクトを配してなり、
上記対応コネクタは、上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を天井部、一対の側壁部および底板部によって区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、
また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、
さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記対応コネクタにおける上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である対応コネクタ後面に位置し、その対応コネクタ後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったことを特徴とする防塵浮動コネクタ構造。
【請求項3】
上記浮動ハウジングの底板部の端部から上記対応基板方向に垂下して成るスカート部を設けて該浮動ハウジングの前面並びに両側面を上記スカート部で囲い、且つ上記カバーの下端に上記対応基板方向に延びる延設部を形成し、以って上記スカート部と延設部によって上記固定ハウジングの周囲を覆うようにしたことを特徴とする請求項2に記載の防塵浮動コネクタ構造。
【請求項4】
上記浮動ハウジングの側壁部に係止部が形成され、上記カバーに設けた被係止部を上記係止部に係合させて、上記浮動ハウジングに上記カバーを固着するようにしたことを特徴とする請求項2または3に記載の防塵浮動コネクタ構造。
【請求項5】
上記固定ハウジングは移動規制部を備え、該移動規制部に上記スカート部の内壁並びに上記カバーの延設部の内壁が接することにより、上記浮動ハウジングの移動量を制限するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の防塵浮動コネクタ構造。
【請求項6】
電動工具本体に着脱自在に工具駆動用のバッテリーパックを備えた電動工具であって、電動工具本体とバッテリーパックとのいずれか一方の相手基板に相手コネクタを、他方の対応基板に防塵浮動コネクタをなす対応コネクタを取付け、該相手コネクタと対応コネクタとの接続によって平行配置された上記両基板間を電気接続する電動工具において、
上記相手コネクタは、上記相手基板に対して平行方向に突出した凸部を有し、且つそこに相手コネクタコンタクトを配してなり、
上記対応コネクタは、上記対応基板に対して平行方向に上記相手コネクタが嵌入される開口を天井部、一対の側壁部および底板部によって区画すると共に、該開口内に上記相手コネクタの相手コネクタコンタクトと接し得る対応コネクタコンタクトの接触部を臨ませて成る浮動ハウジングと、上記底板部と上記対応基板の間に設けられ、且つ上記対応コネクタコンタクトの基板部を固定すると共に該基板部から延びる端子部を介して上記対応基板に取付けられる固定ハウジングとを有し、
また、上記対応コネクタコンタクトは上記接触部と上記基板部との間に設けられた可撓部を備え、その可撓部は、上記浮動ハウジングを上記固定ハウジングとの間に間隔を隔てて該固定ハウジングに対して浮動支持し、
さらに、上記対応コネクタコンタクトの可撓部が、上記対応コネクタにおける上記相手コネクタが嵌入される側と反対側の面である対応コネクタ後面に位置し、その対応コネクタ後面を、上記浮動ハウジングと上記固定ハウジングとの間の隙間を防塵するために、カバーで覆ったことを特徴とする防塵浮動コネクタ付き電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−117117(P2009−117117A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287405(P2007−287405)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000205122)大宏電機株式会社 (78)
【Fターム(参考)】