防振ゴムの製造方法
【課題】防振ゴムの製造方法において、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させる。
【解決手段】第1パイプ部材23及び第1外筒体13と、これらの間に成形された第1ゴム弾性体33とを備えたトルクロッド1の製造方法である。第1ゴム弾性体33を加硫成形する際、下型71及び上型81に形成された、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと非平行な押圧部81aを、当該第1外筒体13の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該第1外筒体13の筒軸方向の端面13cへのゴムの侵入を抑え、且つ、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ゴム弾性体33の外周縁における筒軸方向端53bとの間に段差を設ける。
【解決手段】第1パイプ部材23及び第1外筒体13と、これらの間に成形された第1ゴム弾性体33とを備えたトルクロッド1の製造方法である。第1ゴム弾性体33を加硫成形する際、下型71及び上型81に形成された、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと非平行な押圧部81aを、当該第1外筒体13の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該第1外筒体13の筒軸方向の端面13cへのゴムの侵入を抑え、且つ、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ゴム弾性体33の外周縁における筒軸方向端53bとの間に段差を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンと車体との間に取り付けられてエンジンの変位等を抑制するトルクロッドや、車両のサスペンションのリンク部品等に用いられる防振ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内筒体及び外筒体と、それらの間に介設されるゴム弾性体とからなる防振ゴムが知られている。そして、かかる防振ゴムは、例えば、ゴム弾性体を内筒体と一体に加硫成形した一体成形品を、トルクロッド本体やリンク本体に設けられた外筒体に圧入することにより、トルクロッドやサスペンションのリンク部品等として広く用いられている。
【0003】
ところで、最近では、一体成形品を外筒体に圧入する工程を省略すべく、成形用金型に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形することにより、防振ゴムを製造する方法が採用されてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1及び第2外筒が一体に構成された連結部材と第1及び第2内筒とマス部材とを加硫金型に設置して型締めした後、加硫金型内にゴム状弾性材を注入して加硫成形したトルクロッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−094248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成形用金型に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形する方法では、ゴム弾性体を加硫成形する際、例えば外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑えるべく、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と平行な押圧部を、外筒体の開口部の内周縁部に筒軸方向から押し当ててシールを行うことが多い。
【0007】
しかしながら、かかるシール方法は、外筒体の端面にこれと平行な押圧部を単に押し当てるだけなので、外筒体の端面と押圧部との間に隙間が生じ易い。そうして、ゴム弾性体を加硫成形する際、外筒体の端面と押圧部との間に生じた隙間に高圧の未架橋ゴムが侵入すると、外筒体の筒軸方向の端面に塗布された接着剤が流されてしまい、図10に示すように、外筒体113の筒軸方向両端面113a,113cの内周縁部に、当該両端面113a,113cと加硫接着されていない略円環状のゴム膜143d,143eが生じるおそれがある。
【0008】
このように、外筒体113の筒軸方向両端面113a,113cに加硫接着されていないゴム膜143d,143eが生じると、ゴム弾性体143の外周面143cと外筒体113の内周面113eとが加硫接着されていても、かかるゴム膜143d,143eが起点となって、ゴム弾性体143が外筒体113から剥離したり、ゴム弾性体143に亀裂が生じたりするという問題がある。
【0009】
また、ゴム膜143d,143eが生じなくても、図11(a)に示すように、外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cと、ゴム弾性体143の外周面143cにおける筒軸方向端143a,143bとが略面一であり、且つ、外筒体113の開口部の内周エッジ113fが存在する場合には、図11(b)に示すように、荷重が入力し内筒体123と外筒体113とに挟まれることで変形したゴム弾性体143が外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cに乗り上げ、かかる乗り上がったゴム弾性体143が外筒体113の内周エッジ113fによって傷付けられるおそれがある。このような傷は亀裂発生の原因となり、これにより、ゴム弾性体143の耐久性が劣化するという問題がある。そうして、このような内周エッジ113fによる傷は、図12(a)及び(b)に示すように、荷重が入力し内筒体123と外筒体113とに挟まれることで変形したストッパゴム153が外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cに乗り上げた場合にも生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内筒体及び外筒体とゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法において、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることで確実にシールを行うようにしている。
【0012】
具体的には、第1の発明は、内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法を対象とする。
【0013】
そして、上記ゴム弾性体を加硫成形する際、成形用金型の上型及び下型にそれぞれ形成された、上記外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、当該外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、当該外筒体の筒軸方向の端面と当該ゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明によれば、外筒体の筒軸方向の端面にこれと平行な押圧部を筒軸方向から押し当てるシール方法とは異なり、外筒体の開口部の内周エッジが、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部によって押圧されて面取りされることで、外筒体の開口部の内周縁部と押圧部とが密着して両者の間の隙間が消失することから、そのスペースを確実にシールすることができる。
【0015】
また、外筒体の筒軸方向の端面とゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることにより、荷重が入力することで変形したゴム弾性体が外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、外筒体の開口部の内周エッジが面取りされていることから、ゴム弾性体が傷付き難くなる。
【0016】
以上により、内筒体及び外筒体とゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法において、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させることができる。
【0017】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記内周エッジを、R状に面取りすることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジは、押圧部により押し潰されて、滑らかな形状であるR状に面取りされるので、荷重が入力することで変形したゴム弾性体がより一層傷付き難くなる。
【0019】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記内周エッジを、傾斜面に面取りすることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジは、押圧部により押し潰されて、傾斜面に面取りされるので、荷重が入力することで変形したゴム弾性体は、かかる傾斜面に沿って筒軸方向外側に膨らむように変形することから、外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなる。
【0021】
また、外筒体の開口部の内周エッジを筒軸対称に面取りするような場合には、外筒体に寸法誤差があっても、筒軸方向に作用する型締力が、傾斜面によって外筒体を筒径方向外側に筒軸対称に押す力に変換されることから、外筒体がセンターに誘導されて位置決めが容易になる。
【0022】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記ゴム弾性体は、上記内筒体と上記外筒体とを連結する主バネ部と、当該外筒体と連結され、当該内筒体が当該外筒体に対して相対変位したときに当該内筒体に当接してストッパ作用をなすストッパ部とを有しており、上記内周エッジのうち上記主バネ部及びストッパ部に対応する部位を面取りすることを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジをその全周に亘って面取りするのではなく、ゴム弾性体の主バネ部及びストッパ部に対応する部位のみを面取りすることから、金型の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、防振ゴムを製造することができる。
【0024】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記外筒体は、アルミニウム合金からなることを特徴とするものである。
【0025】
第5の発明によれば、比較的柔らかいアルミニウム合金を用いることにより、金型の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、防振ゴムを製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る防振ゴムの製造方法によれば、外筒体の開口部の内周エッジが、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部によって押圧されて面取りされることで、外筒体の開口部の内周縁部と押圧部とが密着することから、シールを確実に行うことができる。
【0027】
また、外筒体の筒軸方向の端面とゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることにより、ゴム弾性体が外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも内周エッジが面取りされていることからゴム弾性体が傷付き難くなる。
【0028】
以上により、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るトルクロッドを示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は縦断面図である。
【図2】図1のII−II線の矢視断面図である。
【図3】トルクロッドのストッパ部の断面図である。
【図4】トルクロッド及び当該トルクロッドの製造に用いられる成形用金型を模式的に示す縦断面図である。
【図5】トルクロッドの製造方法を段階的に説明する模式図である。
【図6】変形例1のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図7】変形例1のトルクロッドにおけるストッパ部の断面図である。
【図8】変形例2のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図9】変形例2のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図10】従来のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図11】従来のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図12】従来のトルクロッドにおけるストッパ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。なお、図2、図3及び図6〜図9では、本実施形態の説明に必要な部分のみを示す。
【0031】
−防振ゴム−
図1は、本発明に係る防振ゴムを自動車のエンジンマウントの一種であるトルクロッドに適用した実施形態を示す。このトルクロッド1は、トルクロッド本体11と、内筒体としての第1及び第2パイプ部材23,25と、第1及び第2ゴム弾性体33,35とを備えている。
【0032】
トルクロッド本体11は、従来周知のように押出加工により製造されたアルミニウム合金製形材から切り出したものであり、略八角形筒状の第1外筒体13及び円筒状の第2外筒体15と、これらの外筒体13,15を繋ぐ2本のリブ7,7とを有している。より具体的には、第1及び第2外筒体13,15は、当該2本のリブ7,7によって、各々の軸線が平行になるように所定距離空けて連結されている。換言すると、トルクロッド1は、各々外筒体13,15とパイプ部材(内筒体)23,25とゴム弾性体33,35とを備える、大小2つのゴムブッシュ(第1ゴムブッシュ(防振ゴム)3及び第2ゴムブッシュ5)を2本のリブ7,7を介して組み合わせたものとなっている。
【0033】
第1及び第2パイプ部材23,25は、中央に貫通孔を有するアルミ製(鉄製でもよい)の丸パイプにより構成されている。第1パイプ部材23は第1外筒体13の内側に、また、第2パイプ部材25は第2外筒体15の内側にそれぞれ設けられており、これら第1及び第2パイプ部材23,25の外周に第1及び第2ゴム弾性体33,35がそれぞれ堅固に加硫接着されている。
【0034】
第1ゴム弾性体33は、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを連結するように、当該第1パイプ部材23と当該第1外筒体13との間に成形されている一方、第2ゴム弾性体35は、第2パイプ部材25と第2外筒体15とを連結するように、当該第2パイプ部材25と当該第2外筒体15との間に成形されている。
【0035】
換言すると、第1及び第2ゴムブッシュ3,5は、各々パイプ部材23,25と外筒体13,15とがゴム弾性体33,35によって連結されて、両者3,5間に作用する荷重を弾性的に支持するようになっている。そうして、例えば、図1及び図2の右側に示す相対的に大径の第1ゴムブッシュ3の第1パイプ部材23が車体側部材(図示せず)に連結され、図1の左側に示す相対的に小径の第2ゴムブッシュ5の第2パイプ部材25がパワープラント(図示せず)に連結されて、パワープラントのロール慣性主軸回りの揺動を規制するように構成されている。
【0036】
また、第1ゴム弾性体33には、筒軸方向に貫通するすぐり孔(空間部)33a,33bが、第1パイプ部材23を挟んで、第1パイプ部材23の中心と第2パイプ部材25の中心とを結ぶ方向であるロッド長手方向(以下単に長手方向という)に対向するように2つ形成されている。なお、小径の第2ゴムブッシュ5の構造は、大径の第1ゴムブッシュ3と同様であるが、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを連結する第2ゴム弾性体35には、すぐり孔35a,35aが第2パイプ部材25を挟んで、長手直角方向に対向するように2つ形成されている。
【0037】
このようにすぐり孔33a,33bが形成されていることによって、第1ゴム弾性体33は、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを長手直角方向で対称に連結する主バネ部43,43と、各々第1外筒体13と連結され、第1パイプ部材23が第1外筒体13に対して相対変位したときに当該第1パイプ部材23に当接してストッパ作用をなす、長手方向外側の第1ストッパ部53及び長手方向内側の第2ストッパ部63とに分断されている。そうして、第1ゴムブッシュ3は、例えばエンジン(図示せず)のアイドル運転時に発生するパワープラントのロール軸回り振動を、主バネ部43,43の変形によって吸収する一方、エンジンの始動時や急加速時などのようにパワープラントが大きくロールしたり、大きく揺れたりするときには、第1パイプ部材23が第1及び第2ストッパ部53,63に当接して、それ以上の第1パイプ部材23と第1外筒体13との相対変位が阻止されることにより、パワープラントの過度のローリングや揺れを規制するようになっている。
【0038】
さらに、本実施形態のトルクロッド1では、図2に示すように、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、主バネ部43,43に対応する部位の内周エッジ13f(図5参照)がR状に面取りされている。これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bとの間には、R状の面取り部13b,13dの高さの分だけ段差が形成されている。このように、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bとの間に段差を設けることにより、荷重が入力することで変形した主バネ部43が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fが滑らかな形状であるR状に面取りされていることから、主バネ部43が傷付き難くなっている。
【0039】
また、本実施形態のトルクロッド1では、図3に示すように、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、第1ストッパ部53に対応する部位の内周エッジ13fがR状に面取りされており、これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53a,53bとの間には、R状の面取り部13b,13dの高さの分だけ段差が形成されている。このように、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53a,53bとの間に段差を設けることにより、荷重が入力することで第1外筒体13に当接した第1ストッパ部53が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fが滑らかな形状であるR状に面取りされていることから、第1ストッパ部53が傷付き難くなっている。なお、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、第2ストッパ部63に対応する部位の内周エッジ13fも、同様にR状に面取りされている。
【0040】
−製造方法−
次に、本実施形態にかかるトルクロッド1の製造方法について説明するが、製造方法の説明に先立ち、先ず、トルクロッド1の製造に用いる成形用金型71,81について図4を用いて説明する。なお、図4では、成形用金型71,81のうち、本発明の製造方法に直接関連する部分のみを示す。
【0041】
図4に示すように、成形用金型は、筒軸方向と垂直な分割面を構成する下型71及び上型81を有しており、これら下型71及び上型81を組み合わせることで、かかる成形用金型には、上記第1パイプ部材23及び第1外筒体13をインサート材として装着するための空間と、第1パイプ部材23と第1外筒体13との間に主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63を成形するためのキャビティが形成されるようになっている。なお、図中の符号79及び89は、第1パイプ部材23をその軸方向を上下方向に向けた姿勢でそれぞれ保持するための中子ピンを示す。これらの中子ピン79,89は、下型71及び上型81にそれぞれ設けられていて、第1パイプ部材23の内側に挿入されることにより、第1パイプ部材23を上下方向から挟み込むように保持する。
【0042】
また、第1外筒体13を装着するための空間を区画する金型面には、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63に対応する部位に、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと非平行な、具体的には、断面4分の1円弧状に凹んだ押圧部71a,81aが形成されている。
【0043】
次に、この成形用金型71,81を用いた、トルクロッド1の製造方法について説明する。なお、以下では、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち第1ストッパ部53に対応する部位を、上型81によって面取りする場合について説明するが、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち主バネ部43,43及び第2ストッパ部63に対応する部位についても、また、下型71によって面取りする場合についてもほぼ同様に面取りが行われる。
【0044】
先ず、トルクロッド本体11並びに第1及び第2パイプ部材23,25に接着剤を塗布し、その後、下型71に、インサート材としてトルクロッド本体11並びに第1及び第2パイプ部材23,25を装着する。次いで、図5(a)に示すように、下型71に上型81を重ね、一般的な型締力である50〜150tonの型締力で成形用金型71,81を型締めする。
【0045】
そうすると、比較的柔らかいアルミニウム合金製の第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fは、図5(b)に示すように、断面4分の1円弧状に凹んだ押圧部81aによって押し潰されて、R状の面取り部13dが形成される。このように、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを、押圧部81aによって面取りすることにより、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gと押圧部81aとが密着して両者13g,81aの間の隙間が消失することから、そのスペースを確実にシールされ、これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cへのゴムの侵入を抑えることができる。
【0046】
次いで、図5(c)に示すように、キャビティ63内へ所定のゴム材を注入し、所定温度及び圧力の条件下に所定時間保持する。なお、加熱温度は150〜180℃とするのが好ましく、また、加熱時間は3〜30分程度とするのが好ましい。そうして所定時間保持した後脱型を行うが、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを面取りすることで、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53bとの間には、R状の面取り部13dの高さの分だけ段差が設けられることになる。
【0047】
以上のようにして、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cにゴム膜が形成されておらず、且つ、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ゴム弾性体33の外周縁における筒軸方向端53bとの間に面取り部13b,13dを介して段差が設けられたトルクロッド1を製造することができる。
【0048】
−効果−
本実施形態によれば、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cにこれと平行な押圧部を筒軸方向から押し当てるシール方法とは異なり、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fが、下型71及び上型81に形成された、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと非平行な押圧部71a,81aによって押圧されて面取りされることから、第1外筒体13の開口部の内周縁部13g,13gと押圧部71a,81aとが密着して両者13g,81aの間の隙間が消失するので、そのスペースが確実にシールされる。
【0049】
また、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63の外周縁43c,53cにおける筒軸方向端43a,43b,53a,53bとの間に段差を形成することにより、荷重が入力することで変形した主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fが滑らかな形状であるR状に面取りされるので、荷重が入力することで変形した主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63がより一層傷付き難くなる。
【0050】
また、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fをその全周に亘って面取りするのではなく、第1ゴム弾性体33の主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63に対応する部位のみを面取りするとともに、第1外筒体13として比較的柔らかいアルミニウム合金を用いることから、成形用金型71,81の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、トルクロッド1を製造することができる。
【0051】
(変形例1)
変形例1として、図6では、主バネ部43,43に対応する部位の内周エッジ13f,13fを、また、図7では、第1ストッパ部53に対応する部位の内周エッジ13f,13fを、それぞれ傾斜面に面取りにしている。これにより、荷重が入力することで変形した第1ゴム弾性体33は、かかる面取り部(傾斜面)13b,13dに沿って筒軸方向両外側に膨らむように変形することから、第1外筒体13の筒軸方向両端面13a,13cに乗り上げ難くなる。
【0052】
また、2つの主バネ部43,43は長手直角方向に関して、また、第1及び第2ストッパ部53,63は長手方向に関して略対称になっているので、第1外筒体13に寸法誤差があっても、筒軸方向に作用する型締力が、傾斜面によって第1外筒体13を筒径方向外側に略筒軸対称に押す力に変換されることから、第1外筒体13がセンターに誘導されて位置決めが容易になる。
【0053】
(変形例2)
変形例2として、図8では、主バネ部43に対応する部位の内周エッジ13f,13fをR状に面取りし、また、図9では、主バネ部43に対応する部位の内周エッジ13f,13fを傾斜面に面取りするとともに、主バネ部43からストレート部(第1外筒体13の内周面13eから筒径方向に真っ直ぐ延びる部分)を排して、主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bを面取り部13b,13dに擦り付けるようにしている。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0055】
上記実施形態並びに変形例1及び2では、防振ゴムをトルクロッド1に適用したが、これに限らず、下型71及び上型81に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形することにより製造される防振ゴムであれば、どのようなものにも適用できる。
【0056】
また、上記実施形態では、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを、R状又は傾斜面に面取りしたが、これに限らず、第1ゴム弾性体33を傷付けないような形状であれば、どのような形状に面取りしてもよい。
【0057】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法等について有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 トルクロッド(防振ゴム)
13 第1外筒体(外筒体)
13a,13c 端面
13f 内周エッジ
23 第1パイプ部材(内筒体)
33 第1ゴム弾性体(ゴム弾性体)
43 主バネ部
53 第1ストッパ部
43a,43b,53a,53b 筒軸方向端
43c,53c 外周縁
63 第2ストッパ部
71 下型(成形用金型)
81 上型(成形用金型)
71a,81a 押圧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンと車体との間に取り付けられてエンジンの変位等を抑制するトルクロッドや、車両のサスペンションのリンク部品等に用いられる防振ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内筒体及び外筒体と、それらの間に介設されるゴム弾性体とからなる防振ゴムが知られている。そして、かかる防振ゴムは、例えば、ゴム弾性体を内筒体と一体に加硫成形した一体成形品を、トルクロッド本体やリンク本体に設けられた外筒体に圧入することにより、トルクロッドやサスペンションのリンク部品等として広く用いられている。
【0003】
ところで、最近では、一体成形品を外筒体に圧入する工程を省略すべく、成形用金型に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形することにより、防振ゴムを製造する方法が採用されてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1及び第2外筒が一体に構成された連結部材と第1及び第2内筒とマス部材とを加硫金型に設置して型締めした後、加硫金型内にゴム状弾性材を注入して加硫成形したトルクロッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−094248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成形用金型に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形する方法では、ゴム弾性体を加硫成形する際、例えば外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑えるべく、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と平行な押圧部を、外筒体の開口部の内周縁部に筒軸方向から押し当ててシールを行うことが多い。
【0007】
しかしながら、かかるシール方法は、外筒体の端面にこれと平行な押圧部を単に押し当てるだけなので、外筒体の端面と押圧部との間に隙間が生じ易い。そうして、ゴム弾性体を加硫成形する際、外筒体の端面と押圧部との間に生じた隙間に高圧の未架橋ゴムが侵入すると、外筒体の筒軸方向の端面に塗布された接着剤が流されてしまい、図10に示すように、外筒体113の筒軸方向両端面113a,113cの内周縁部に、当該両端面113a,113cと加硫接着されていない略円環状のゴム膜143d,143eが生じるおそれがある。
【0008】
このように、外筒体113の筒軸方向両端面113a,113cに加硫接着されていないゴム膜143d,143eが生じると、ゴム弾性体143の外周面143cと外筒体113の内周面113eとが加硫接着されていても、かかるゴム膜143d,143eが起点となって、ゴム弾性体143が外筒体113から剥離したり、ゴム弾性体143に亀裂が生じたりするという問題がある。
【0009】
また、ゴム膜143d,143eが生じなくても、図11(a)に示すように、外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cと、ゴム弾性体143の外周面143cにおける筒軸方向端143a,143bとが略面一であり、且つ、外筒体113の開口部の内周エッジ113fが存在する場合には、図11(b)に示すように、荷重が入力し内筒体123と外筒体113とに挟まれることで変形したゴム弾性体143が外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cに乗り上げ、かかる乗り上がったゴム弾性体143が外筒体113の内周エッジ113fによって傷付けられるおそれがある。このような傷は亀裂発生の原因となり、これにより、ゴム弾性体143の耐久性が劣化するという問題がある。そうして、このような内周エッジ113fによる傷は、図12(a)及び(b)に示すように、荷重が入力し内筒体123と外筒体113とに挟まれることで変形したストッパゴム153が外筒体113の筒軸方向の端面113a,113cに乗り上げた場合にも生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内筒体及び外筒体とゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法において、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることで確実にシールを行うようにしている。
【0012】
具体的には、第1の発明は、内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法を対象とする。
【0013】
そして、上記ゴム弾性体を加硫成形する際、成形用金型の上型及び下型にそれぞれ形成された、上記外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、当該外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、当該外筒体の筒軸方向の端面と当該ゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることを特徴とするものである。
【0014】
第1の発明によれば、外筒体の筒軸方向の端面にこれと平行な押圧部を筒軸方向から押し当てるシール方法とは異なり、外筒体の開口部の内周エッジが、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部によって押圧されて面取りされることで、外筒体の開口部の内周縁部と押圧部とが密着して両者の間の隙間が消失することから、そのスペースを確実にシールすることができる。
【0015】
また、外筒体の筒軸方向の端面とゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることにより、荷重が入力することで変形したゴム弾性体が外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、外筒体の開口部の内周エッジが面取りされていることから、ゴム弾性体が傷付き難くなる。
【0016】
以上により、内筒体及び外筒体とゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法において、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させることができる。
【0017】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記内周エッジを、R状に面取りすることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジは、押圧部により押し潰されて、滑らかな形状であるR状に面取りされるので、荷重が入力することで変形したゴム弾性体がより一層傷付き難くなる。
【0019】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記内周エッジを、傾斜面に面取りすることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジは、押圧部により押し潰されて、傾斜面に面取りされるので、荷重が入力することで変形したゴム弾性体は、かかる傾斜面に沿って筒軸方向外側に膨らむように変形することから、外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなる。
【0021】
また、外筒体の開口部の内周エッジを筒軸対称に面取りするような場合には、外筒体に寸法誤差があっても、筒軸方向に作用する型締力が、傾斜面によって外筒体を筒径方向外側に筒軸対称に押す力に変換されることから、外筒体がセンターに誘導されて位置決めが容易になる。
【0022】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記ゴム弾性体は、上記内筒体と上記外筒体とを連結する主バネ部と、当該外筒体と連結され、当該内筒体が当該外筒体に対して相対変位したときに当該内筒体に当接してストッパ作用をなすストッパ部とを有しており、上記内周エッジのうち上記主バネ部及びストッパ部に対応する部位を面取りすることを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明によれば、外筒体の開口部の内周エッジをその全周に亘って面取りするのではなく、ゴム弾性体の主バネ部及びストッパ部に対応する部位のみを面取りすることから、金型の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、防振ゴムを製造することができる。
【0024】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記外筒体は、アルミニウム合金からなることを特徴とするものである。
【0025】
第5の発明によれば、比較的柔らかいアルミニウム合金を用いることにより、金型の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、防振ゴムを製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る防振ゴムの製造方法によれば、外筒体の開口部の内周エッジが、成形用金型に形成された、外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部によって押圧されて面取りされることで、外筒体の開口部の内周縁部と押圧部とが密着することから、シールを確実に行うことができる。
【0027】
また、外筒体の筒軸方向の端面とゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることにより、ゴム弾性体が外筒体の筒軸方向の端面に乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも内周エッジが面取りされていることからゴム弾性体が傷付き難くなる。
【0028】
以上により、外筒体の筒軸方向両端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、ゴム弾性体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るトルクロッドを示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は縦断面図である。
【図2】図1のII−II線の矢視断面図である。
【図3】トルクロッドのストッパ部の断面図である。
【図4】トルクロッド及び当該トルクロッドの製造に用いられる成形用金型を模式的に示す縦断面図である。
【図5】トルクロッドの製造方法を段階的に説明する模式図である。
【図6】変形例1のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図7】変形例1のトルクロッドにおけるストッパ部の断面図である。
【図8】変形例2のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図9】変形例2のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図10】従来のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図11】従来のトルクロッドにおける主バネ部の断面図である。
【図12】従来のトルクロッドにおけるストッパ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。なお、図2、図3及び図6〜図9では、本実施形態の説明に必要な部分のみを示す。
【0031】
−防振ゴム−
図1は、本発明に係る防振ゴムを自動車のエンジンマウントの一種であるトルクロッドに適用した実施形態を示す。このトルクロッド1は、トルクロッド本体11と、内筒体としての第1及び第2パイプ部材23,25と、第1及び第2ゴム弾性体33,35とを備えている。
【0032】
トルクロッド本体11は、従来周知のように押出加工により製造されたアルミニウム合金製形材から切り出したものであり、略八角形筒状の第1外筒体13及び円筒状の第2外筒体15と、これらの外筒体13,15を繋ぐ2本のリブ7,7とを有している。より具体的には、第1及び第2外筒体13,15は、当該2本のリブ7,7によって、各々の軸線が平行になるように所定距離空けて連結されている。換言すると、トルクロッド1は、各々外筒体13,15とパイプ部材(内筒体)23,25とゴム弾性体33,35とを備える、大小2つのゴムブッシュ(第1ゴムブッシュ(防振ゴム)3及び第2ゴムブッシュ5)を2本のリブ7,7を介して組み合わせたものとなっている。
【0033】
第1及び第2パイプ部材23,25は、中央に貫通孔を有するアルミ製(鉄製でもよい)の丸パイプにより構成されている。第1パイプ部材23は第1外筒体13の内側に、また、第2パイプ部材25は第2外筒体15の内側にそれぞれ設けられており、これら第1及び第2パイプ部材23,25の外周に第1及び第2ゴム弾性体33,35がそれぞれ堅固に加硫接着されている。
【0034】
第1ゴム弾性体33は、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを連結するように、当該第1パイプ部材23と当該第1外筒体13との間に成形されている一方、第2ゴム弾性体35は、第2パイプ部材25と第2外筒体15とを連結するように、当該第2パイプ部材25と当該第2外筒体15との間に成形されている。
【0035】
換言すると、第1及び第2ゴムブッシュ3,5は、各々パイプ部材23,25と外筒体13,15とがゴム弾性体33,35によって連結されて、両者3,5間に作用する荷重を弾性的に支持するようになっている。そうして、例えば、図1及び図2の右側に示す相対的に大径の第1ゴムブッシュ3の第1パイプ部材23が車体側部材(図示せず)に連結され、図1の左側に示す相対的に小径の第2ゴムブッシュ5の第2パイプ部材25がパワープラント(図示せず)に連結されて、パワープラントのロール慣性主軸回りの揺動を規制するように構成されている。
【0036】
また、第1ゴム弾性体33には、筒軸方向に貫通するすぐり孔(空間部)33a,33bが、第1パイプ部材23を挟んで、第1パイプ部材23の中心と第2パイプ部材25の中心とを結ぶ方向であるロッド長手方向(以下単に長手方向という)に対向するように2つ形成されている。なお、小径の第2ゴムブッシュ5の構造は、大径の第1ゴムブッシュ3と同様であるが、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを連結する第2ゴム弾性体35には、すぐり孔35a,35aが第2パイプ部材25を挟んで、長手直角方向に対向するように2つ形成されている。
【0037】
このようにすぐり孔33a,33bが形成されていることによって、第1ゴム弾性体33は、第1パイプ部材23と第1外筒体13とを長手直角方向で対称に連結する主バネ部43,43と、各々第1外筒体13と連結され、第1パイプ部材23が第1外筒体13に対して相対変位したときに当該第1パイプ部材23に当接してストッパ作用をなす、長手方向外側の第1ストッパ部53及び長手方向内側の第2ストッパ部63とに分断されている。そうして、第1ゴムブッシュ3は、例えばエンジン(図示せず)のアイドル運転時に発生するパワープラントのロール軸回り振動を、主バネ部43,43の変形によって吸収する一方、エンジンの始動時や急加速時などのようにパワープラントが大きくロールしたり、大きく揺れたりするときには、第1パイプ部材23が第1及び第2ストッパ部53,63に当接して、それ以上の第1パイプ部材23と第1外筒体13との相対変位が阻止されることにより、パワープラントの過度のローリングや揺れを規制するようになっている。
【0038】
さらに、本実施形態のトルクロッド1では、図2に示すように、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、主バネ部43,43に対応する部位の内周エッジ13f(図5参照)がR状に面取りされている。これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bとの間には、R状の面取り部13b,13dの高さの分だけ段差が形成されている。このように、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bとの間に段差を設けることにより、荷重が入力することで変形した主バネ部43が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fが滑らかな形状であるR状に面取りされていることから、主バネ部43が傷付き難くなっている。
【0039】
また、本実施形態のトルクロッド1では、図3に示すように、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、第1ストッパ部53に対応する部位の内周エッジ13fがR状に面取りされており、これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53a,53bとの間には、R状の面取り部13b,13dの高さの分だけ段差が形成されている。このように、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53a,53bとの間に段差を設けることにより、荷重が入力することで第1外筒体13に当接した第1ストッパ部53が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fが滑らかな形状であるR状に面取りされていることから、第1ストッパ部53が傷付き難くなっている。なお、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち、第2ストッパ部63に対応する部位の内周エッジ13fも、同様にR状に面取りされている。
【0040】
−製造方法−
次に、本実施形態にかかるトルクロッド1の製造方法について説明するが、製造方法の説明に先立ち、先ず、トルクロッド1の製造に用いる成形用金型71,81について図4を用いて説明する。なお、図4では、成形用金型71,81のうち、本発明の製造方法に直接関連する部分のみを示す。
【0041】
図4に示すように、成形用金型は、筒軸方向と垂直な分割面を構成する下型71及び上型81を有しており、これら下型71及び上型81を組み合わせることで、かかる成形用金型には、上記第1パイプ部材23及び第1外筒体13をインサート材として装着するための空間と、第1パイプ部材23と第1外筒体13との間に主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63を成形するためのキャビティが形成されるようになっている。なお、図中の符号79及び89は、第1パイプ部材23をその軸方向を上下方向に向けた姿勢でそれぞれ保持するための中子ピンを示す。これらの中子ピン79,89は、下型71及び上型81にそれぞれ設けられていて、第1パイプ部材23の内側に挿入されることにより、第1パイプ部材23を上下方向から挟み込むように保持する。
【0042】
また、第1外筒体13を装着するための空間を区画する金型面には、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63に対応する部位に、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと非平行な、具体的には、断面4分の1円弧状に凹んだ押圧部71a,81aが形成されている。
【0043】
次に、この成形用金型71,81を用いた、トルクロッド1の製造方法について説明する。なお、以下では、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち第1ストッパ部53に対応する部位を、上型81によって面取りする場合について説明するが、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gのうち主バネ部43,43及び第2ストッパ部63に対応する部位についても、また、下型71によって面取りする場合についてもほぼ同様に面取りが行われる。
【0044】
先ず、トルクロッド本体11並びに第1及び第2パイプ部材23,25に接着剤を塗布し、その後、下型71に、インサート材としてトルクロッド本体11並びに第1及び第2パイプ部材23,25を装着する。次いで、図5(a)に示すように、下型71に上型81を重ね、一般的な型締力である50〜150tonの型締力で成形用金型71,81を型締めする。
【0045】
そうすると、比較的柔らかいアルミニウム合金製の第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fは、図5(b)に示すように、断面4分の1円弧状に凹んだ押圧部81aによって押し潰されて、R状の面取り部13dが形成される。このように、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを、押圧部81aによって面取りすることにより、第1外筒体13の開口部の内周縁部13gと押圧部81aとが密着して両者13g,81aの間の隙間が消失することから、そのスペースを確実にシールされ、これにより、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cへのゴムの侵入を抑えることができる。
【0046】
次いで、図5(c)に示すように、キャビティ63内へ所定のゴム材を注入し、所定温度及び圧力の条件下に所定時間保持する。なお、加熱温度は150〜180℃とするのが好ましく、また、加熱時間は3〜30分程度とするのが好ましい。そうして所定時間保持した後脱型を行うが、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを面取りすることで、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ストッパ部53の外周縁53cにおける筒軸方向端53bとの間には、R状の面取り部13dの高さの分だけ段差が設けられることになる。
【0047】
以上のようにして、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cにゴム膜が形成されておらず、且つ、第1外筒体13の筒軸方向の端面13cと第1ゴム弾性体33の外周縁における筒軸方向端53bとの間に面取り部13b,13dを介して段差が設けられたトルクロッド1を製造することができる。
【0048】
−効果−
本実施形態によれば、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cにこれと平行な押圧部を筒軸方向から押し当てるシール方法とは異なり、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fが、下型71及び上型81に形成された、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと非平行な押圧部71a,81aによって押圧されて面取りされることから、第1外筒体13の開口部の内周縁部13g,13gと押圧部71a,81aとが密着して両者13g,81aの間の隙間が消失するので、そのスペースが確実にシールされる。
【0049】
また、第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cと主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63の外周縁43c,53cにおける筒軸方向端43a,43b,53a,53bとの間に段差を形成することにより、荷重が入力することで変形した主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63が第1外筒体13の筒軸方向の端面13a,13cに乗り上げ難くなるとともに、仮に乗り上げた場合にも、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fが滑らかな形状であるR状に面取りされるので、荷重が入力することで変形した主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63がより一層傷付き難くなる。
【0050】
また、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13f,13fをその全周に亘って面取りするのではなく、第1ゴム弾性体33の主バネ部43,43並びに第1及び第2ストッパ部53,63に対応する部位のみを面取りするとともに、第1外筒体13として比較的柔らかいアルミニウム合金を用いることから、成形用金型71,81の締付力を過度に大きくすることなく既存の設備を用いて、トルクロッド1を製造することができる。
【0051】
(変形例1)
変形例1として、図6では、主バネ部43,43に対応する部位の内周エッジ13f,13fを、また、図7では、第1ストッパ部53に対応する部位の内周エッジ13f,13fを、それぞれ傾斜面に面取りにしている。これにより、荷重が入力することで変形した第1ゴム弾性体33は、かかる面取り部(傾斜面)13b,13dに沿って筒軸方向両外側に膨らむように変形することから、第1外筒体13の筒軸方向両端面13a,13cに乗り上げ難くなる。
【0052】
また、2つの主バネ部43,43は長手直角方向に関して、また、第1及び第2ストッパ部53,63は長手方向に関して略対称になっているので、第1外筒体13に寸法誤差があっても、筒軸方向に作用する型締力が、傾斜面によって第1外筒体13を筒径方向外側に略筒軸対称に押す力に変換されることから、第1外筒体13がセンターに誘導されて位置決めが容易になる。
【0053】
(変形例2)
変形例2として、図8では、主バネ部43に対応する部位の内周エッジ13f,13fをR状に面取りし、また、図9では、主バネ部43に対応する部位の内周エッジ13f,13fを傾斜面に面取りするとともに、主バネ部43からストレート部(第1外筒体13の内周面13eから筒径方向に真っ直ぐ延びる部分)を排して、主バネ部43の外周縁43cにおける筒軸方向端43a,43bを面取り部13b,13dに擦り付けるようにしている。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0055】
上記実施形態並びに変形例1及び2では、防振ゴムをトルクロッド1に適用したが、これに限らず、下型71及び上型81に内筒体及び外筒体を装着し、ゴム弾性体をこれら内外筒体と一体に加硫成形することにより製造される防振ゴムであれば、どのようなものにも適用できる。
【0056】
また、上記実施形態では、第1外筒体13の開口部の内周エッジ13fを、R状又は傾斜面に面取りしたが、これに限らず、第1ゴム弾性体33を傷付けないような形状であれば、どのような形状に面取りしてもよい。
【0057】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法等について有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 トルクロッド(防振ゴム)
13 第1外筒体(外筒体)
13a,13c 端面
13f 内周エッジ
23 第1パイプ部材(内筒体)
33 第1ゴム弾性体(ゴム弾性体)
43 主バネ部
53 第1ストッパ部
43a,43b,53a,53b 筒軸方向端
43c,53c 外周縁
63 第2ストッパ部
71 下型(成形用金型)
81 上型(成形用金型)
71a,81a 押圧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法であって、
上記ゴム弾性体を加硫成形する際、成形用金型の上型及び下型にそれぞれ形成された、上記外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、当該外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、当該外筒体の筒軸方向の端面と当該ゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の防振ゴムの製造方法において、
上記内周エッジを、R状に面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の防振ゴムの製造方法において、
上記内周エッジを、傾斜面に面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の防振ゴムの製造方法において、
上記ゴム弾性体は、上記内筒体と上記外筒体とを連結する主バネ部と、当該外筒体と連結され、当該内筒体が当該外筒体に対して相対変位したときに当該内筒体に当接してストッパ作用をなすストッパ部とを有しており、
上記内周エッジのうち上記主バネ部及びストッパ部に対応する部位を面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の防振ゴムの製造方法において、
上記外筒体は、アルミニウム合金からなることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項1】
内筒体及び外筒体と、これらの内外筒体の間に成形されたゴム弾性体とを備えた防振ゴムの製造方法であって、
上記ゴム弾性体を加硫成形する際、成形用金型の上型及び下型にそれぞれ形成された、上記外筒体の筒軸方向の端面と非平行な押圧部を、当該外筒体の開口部の内周エッジに押し当てて、当該内周エッジを面取りすることにより、当該外筒体の筒軸方向の端面へのゴムの侵入を抑え、且つ、当該外筒体の筒軸方向の端面と当該ゴム弾性体の外周縁における筒軸方向端との間に段差を設けることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の防振ゴムの製造方法において、
上記内周エッジを、R状に面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の防振ゴムの製造方法において、
上記内周エッジを、傾斜面に面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の防振ゴムの製造方法において、
上記ゴム弾性体は、上記内筒体と上記外筒体とを連結する主バネ部と、当該外筒体と連結され、当該内筒体が当該外筒体に対して相対変位したときに当該内筒体に当接してストッパ作用をなすストッパ部とを有しており、
上記内周エッジのうち上記主バネ部及びストッパ部に対応する部位を面取りすることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の防振ゴムの製造方法において、
上記外筒体は、アルミニウム合金からなることを特徴とする防振ゴムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−42041(P2012−42041A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186471(P2010−186471)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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