説明

除電装置

【課題】 ガラス基板やウェーハの表面の帯電を効果的に除去する除電装置を提供する。
【解決手段】 除電装置7は搬送方向と直交する方向を長手方向としたスリット状の開口を有するノズル8をガラス基板Wの上方と下方に配置して構成され、スリット状の開口を分離板9で2つに分け、一方を帯電した微細な水滴mの噴出口10とし、他方を除電を行った後の水滴mの吸引口11とし、噴出口10の上流側には粒径10μm以下の水滴を生成する超音波振動装置と、この超音波振動装置によって生成された微細な水滴を帯電させるための電極が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば帯電した半導体ウェーハやガラス基板から静電気を除去したり、クリーンルーム内を除電する除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやガラス基板は搬送中にローラなどとの接触によって静電気が発生しやすく、静電気によって表面に微細なゴミなどが付着しやすい。このため、従来から除電バーを用いているが、スパークが発生して製品歩留りの低下を招いている。そこで、電荷を帯びた微細な水滴を帯電した対象物に接触させて除電することが特許文献1〜5に提案されている。
【0003】
特許文献1には、振動子の振動周波数を調製することで、0.5〜50μmの大きさのイオン化された水滴を発生させ、この微小な水滴を帯電物質の除電に用いることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、高純度の水を二流体ノズルに供給し、加圧空気または加圧窒素とともに噴出させることで、帯電した微小な水滴とし、この微小な水滴を帯電物質に接触させて除電することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、二流体ノズルの先端に環状誘電電極を配置し、この環状誘電電極の中を微小な水滴を通過させることで、微小な水滴を帯電させる内容が開示されている。
【0006】
特許文献4には、超音波霧化現象を利用して微小ミストの生成と帯電を同時に行い、得られた微小ミストを帯電体に吹きつけて除電する内容が開示されている。
【0007】
特許文献5には、二流体ノズルを用いて平均粒径が1〜10μmの帯電した微小ミストを発生させることが記載されている。特に、噴霧粒径が1〜10μmのように超微小の場合には、帯電体の除電を行う際に、帯電体を濡らすことがないと記載されている。
【特許文献1】特開平8−78136号公報
【特許文献2】特開平10−149893号公報
【特許文献3】特開2001−332398号公報
【特許文献4】特開2005−71899号公報
【特許文献5】特開2005−78980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
帯電した微小な水滴によって除電を行う場合には、除電に寄与した水滴が除電対象物に付着して除電対象物の表面を濡らすおそれがある。
【0009】
特許文献5によれば、噴霧粒径が超微小(1〜10μm)であれば、帯電体を濡らすことがないと記載されているが、常に上記の粒径の噴霧粒子とすることが困難であり、また液晶用ガラス基板や半導体ウェーハの表面に膜や回路を形成する場合には、若干でも水滴が残ることは好ましくなく、水滴の大きさのみに頼ることは信頼性に欠けることになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る除電装置は、電荷を帯びた微細な水滴を帯電した対象物に向けて噴出するノズルの一部またはノズルの近傍に、前記ノズルから噴出され除電を行った水滴を吸引する吸引手段が設けられた構成とした。
【0011】
前記水滴は純水に限らず、揮発しやすい溶剤などが添加されたものでもよい。
【0012】
前記微細な水滴の噴出及び吸引は同一の配管を介して行うようにしてもよい。また前記ノズルとしては通常のノズルの他にスリットノズルでもよく、配置例としては、ノズルと吸引手段とをセットにして除電対象物の上下に配置することが考えられる。
【0013】
更にノズルは移動可能としてもよい。移動のパターンとしては一定の範囲での往復動などが考えられる。このようなパターンとすることで、一箇所に水滴が集中して供給されることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る除電装置によれば、従来の除電バーに比べてスパークが発生するおそれはなく、また、除電後の微細な水滴が除電対象物の表面に残ることがないので、乾燥工程を後工程として追加する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る除電装置を適用したガラス基板搬送ラインの平面図、図2は同搬送ラインの側面図、図3は除電装置の拡大図、図4は図3のA−A方向矢視図、図5は除電装置を構成するノズルの拡大断面図である。
【0016】
ガラス基板搬送ラインはフレーム1,1間に搬送方向と直交する方向の軸2…を等間隔で複数回転自在に支持し、これら軸2の一端にプーリ3を設け、図示しないチェーンやギヤを介して、複数の軸2…が同期して回転するようにしている。
【0017】
また各軸2にはガラス基板Wの下面に接触してガラス基板Wを搬送するローラ4が取り付けられている。
【0018】
前記複数の軸2…のうち所定の軸2の長さを調製することで、平面視で搬送方向と斜めになる軸のない空白領域5を設け、この空白領域5の部分にエアーナイフ6を配置し、ガラス基板W裏面に洗浄の際に残っている水滴などを除去するようにしている。なお、ガラス基板W表面に残っている水滴などの除去には、ガラス基板W上方に設けたエアーナイフ(図示せず)により行うことができる。
【0019】
そして、前記エアーナイフ6の下流側で軸2,2間に本発明の除電装置7を配置している。除電装置7は搬送方向と直交する方向を長手方向としたスリット状の開口を有するノズル8をガラス基板Wの上方と下方に配置して構成される。
【0020】
本実施例にあっては、スリット状の開口を分離板9で2つに分け、一方を帯電した微細な水滴mの噴出口10とし、他方を除電を行った後の水滴mの吸引口11としている。
【0021】
因みに、噴出口10の上流側には粒径10μm以下の水滴を生成する超音波振動装置と、この超音波振動装置によって生成された微細な水滴を帯電させるための電極が配置されている。
【0022】
また、図6に示すように水滴mの噴出口10と水滴mの吸引口11とを別々に配置してもよい。但し、この場合は噴出口10と吸引口11との距離を水滴を吸引可能な距離にする。また、ガラス基板Wの搬送方向を基準として、噴出口10を上流側に、吸引口11を下流側に配置することが望ましい。
【0023】
図7は本発明に係る除電装置を適用したクールプレートの平面図、図8はクールプレートの吸引孔の部分の拡大断面図であり、この実施例では、クールプレート20の表面に吸引兼噴出ノズル21を所定の間隔で開口している。
【0024】
吸引兼噴出ノズル21は真空ポンプにつながるとともに、帯電した微細な水滴の供給源にもつながっており、これらをバルブによって切り替えている。即ち、ガラス基板を吸引する場合には、真空ポンプにつなげ、除電する場合には水滴の供給源につなげ、吸引兼噴出ノズル21からガラス基板下面に向けて帯電した微細な水滴を吹き付けるようにしている。
【0025】
但し、上記の除電の際に全ての吸引兼噴出ノズル21から帯電した微細な水滴を噴出せずに、隣接する一方のノズル21から水滴を噴出し、他方のノズルは真空ポンプにつなげ除電が終了した水滴を吸引するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る除電装置を適用したガラス基板搬送ラインの平面図
【図2】同搬送ラインの側面図
【図3】除電装置の拡大図
【図4】図3のA−A方向矢視図
【図5】除電装置を構成するノズルの拡大断面図
【図6】除電装置の別実施例を示す図5と同様の図
【図7】本発明に係る除電装置を適用したクールプレートの平面図
【図8】クールプレートの吸引孔の部分の拡大断面図
【符号の説明】
【0027】
1…搬送ラインのフレーム、2…軸、3…プーリ、4…ローラ、5…空白領域、6…エアーナイフ、7…除電装置、8…ノズル、9…分離板、10…帯電した微細な水滴の噴出口、11…除電を行った後の水滴の吸引口、20…クールプレート、21…吸引兼噴出ノズル、m…水滴、W…ガラス基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を帯びた微細な水滴をノズルから帯電した対象物に向けて噴出し、対象物に接触させて除電する除電装置において、前記ノズルの一部またはノズルの近傍に、前記ノズルから噴出され除電を行った水滴を吸引する吸引手段が設けられていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除電装置において、前記微細な水滴の噴出及び吸引は同一の配管を介して行うことを特徴とする除電装置。
【請求項3】
請求項1に記載の除電装置において、前記ノズルはスリットノズルであることを特徴とする除電装置。
【請求項4】
請求項1に記載の除電装置において、前記ノズルは移動可能とされていることを特徴とする除電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の除電装置において、前記ノズル及び前記吸引手段が搬送される対象物の上下にそれぞれ対をなして配置されていることを特徴とする除電装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−146626(P2009−146626A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320290(P2007−320290)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】