説明

難燃性の硬化性樹脂組成物

【課題】耐屈曲性及び絶縁性を損なうことなく、難燃性と耐ブリード性を備えた硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)と、
塩基性触媒(C)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、被覆材料に適した難燃性の硬化性樹脂組成物、特に、フレキシブル配線板等の回路基板に形成された導体回路パターンを被覆するための被覆材料に適した難燃性の硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線板に用いられる被覆材料であるソルダーレジストとしては、1)カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプ、2)ソルダーレジスト被膜を形成する紫外線硬化型・熱硬化型の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布するタイプが用いられている。
【0003】
しかしながら、カバーレイフィルムでは、回路部である銅箔との追随性に問題があるため、高精度・高密度なパターンを形成することができない。また、紫外線硬化型・熱硬化型の樹脂組成物をフレキシブル配線板のソルダーレジストに適用するには、その硬化塗膜が耐屈曲性に優れていることが必要である。
【0004】
そこで、特許文献1では、耐屈曲性に優れる硬化塗膜を提供するために、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン、及び(F)ポリウレタン微粒子を含有する感光性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
一方で、フレキシブル配線板は電子機器に搭載されるために、耐屈曲性に優れるだけでなく難燃性も要求される。しかしながら、紫外線硬化型・熱硬化型の樹脂組成物に難燃剤を添加すると、該樹脂組成物の硬化塗膜は耐屈曲性が損なわれて、フレキシブル配線板のソルダーレジストとしての適応性が低下してしまうという問題があった。さらには、難燃剤を添加すると、硬化塗膜の絶縁信頼性が低下してしまうという問題や硬化塗膜の表面部に樹脂組成物成分が滲み出す、いわゆるブリード現象が生じてしまうなどの問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−293882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、耐屈曲性、絶縁特性及び耐ブリード性を損なうことなく、難燃性を備えた硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を用いることにより得られる、耐屈曲性、絶縁特性、耐ブリード性及び難燃性を有するソルダーレジスト膜を備えたフレキシブル配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)と、塩基性触媒(C)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0009】
この態様では、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の少なくとも一部の側鎖に、少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのリン元素とを含んだ有機基(X)の構造が、組み入れられている。すなわち、該側鎖には、芳香環とリン元素を含んだ有機基(X)の構造が含まれている。
【0010】
本発明の態様は、前記有機基(X)が、一般式(i)または一般式(ii)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Zは置換基を表し、lは0〜5の整数、mは0〜4の整数、nは0〜1の整数である。)であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)が、側鎖にカルボキシル基を有する重合体の該カルボキシル基の一部に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させて得られ、一般式(iii)
【0014】
−Y−CO−X−C(O)O− (iii)
【0015】
(式中、Xは上記芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する有機基を表し、
Yは、
−(RO)o−(C(O)(CH)pO)q− 又は
−OR−(OC(O)−R)r−(OC(O)O−R)s−O−を表す。但し、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8個のアルキレン基を示し、oは1〜15の整数、pは3〜10の整数、qは0〜10の整数、rは0〜10の整数、sは1〜10の整数を表す。)で表される2価のリン元素含有有機基を側鎖に有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0016】
この態様では、少なくとも1つの芳香環とリン元素を含んだ有機基(X)の構造が組み入れられている側鎖とは、上記一般式(iii)の構造を有している。
【0017】
本発明の態様は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)が、固形分中にリン元素を0.5〜10質量%含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0018】
本発明の態様は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の固形分酸価が、30〜140mgKOH/gであることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0019】
本発明の態様は、前記エポキシ基含有不飽和化合物が、一般式(iva)、(ivb)および(ivc)
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R、R、R10およびR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)からなる化合物群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0022】
本発明の態様は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の二重結合当量が、400〜2000g/molであることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0023】
本発明の態様は、塩基性触媒(C)が、メラミンを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0024】
本発明の態様は、さらに、反応性希釈剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物である。
【0025】
本発明の態様は、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られたソルダーレジスト膜を有するフレキシブル配線板である。本発明の態様は、上記硬化性樹脂組成物を用いた層間絶縁材又はフレキシブル部材である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の態様では、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)が、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するので、樹脂(A)は難燃性に優れており、樹脂(A)を含有した硬化性樹脂組成物の硬化物は、難燃性と耐屈曲性の両方に優れている。樹脂(A)の側鎖が、リン元素を含有する有機基(X)を有するので、難燃成分の硬化物表面部への滲み出しを防止でき、硬化物の耐ブリード性が向上する。また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は絶縁特性に優れている。さらに、有機基(X)は少なくとも1つの芳香環を有することで、塗工した硬化性樹脂組成物が露光の際にフィルムへ貼り付くのを防止できる。
【0027】
本発明の態様では、少なくとも1つの芳香環とリン元素を含んだ有機基(X)を有する側鎖が、さらにY構造も有することで、難燃性、耐ブリード性及び絶縁性を損なうことなく、硬化物の耐屈曲性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物は、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)と、分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)と、塩基性触媒(C)と、を含有することを特徴とする。
【0029】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)は、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)である。
【0030】
有機基(X)がリン元素を含むことで、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)に難燃性が付与され、その結果、本発明の硬化性樹脂組成物が難燃性を有する。また、リン元素を含む有機基(X)が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の側鎖に組み入れられているので、難燃成分が硬化性樹脂組成物から滲み出てしまうのを防止できる。
【0031】
有機基(X)としては、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するものであれば特に限定されないが、塗工した硬化性樹脂組成物が露光の際にフィルムへ貼り付くのを確実に防止する点で、芳香環を複数有する有機基(X)が好ましく、芳香環を2つ有する有機基(X)が特に好ましい。上記有機基(X)は、例えば、一般式(i)、一般式(ii)
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、Zは置換基を表し、lは0〜5の整数、mは0〜4の整数、nは0〜1の整数である。)で表される基が好ましい。
【0034】
置換基Zとしては、特に限定されないが、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子から選択される基が好ましい。置換基Zが複数存在する場合には、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。有機基(X)は置換基Zの数量及び種類にかかわらず、少なくとも1つの芳香環を有することで、露光の際に塗工した硬化性樹脂組成物がフィルムへ貼り付くのを防止できる。
【0035】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の固形分中におけるリン元素含有率は、硬化性樹脂組成物の使用条件に応じて選択する。例えば、その下限値は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)に難燃性を確実に付与する点から0.5質量%であり、十分な難燃性を確保する点から1.0質量%が好ましく、難燃性のUL規格であるVTM‐0を満足させる点から2.0質量%が特に好ましい。また、その上限値は、硬化性樹脂組成物の硬化物について機械的強度の低下を抑える点から10質量%であり、機械的強度の低下を確実に抑える点から5.0質量%が好ましく、硬化性樹脂組成物中での相溶性の点から4.0質量%が特に好ましい。
【0036】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の酸価は、エポキシ化合物との反応を完結させる点から、30〜140mgKOH/gが好ましく、60〜120mgKOH/gが特に好ましい。二重結合当量は、感光性と柔軟性の点から、400〜2000g/molが好ましく、500〜1300g/molが特に好ましい。また、硬化性樹脂組成物を非感光性として使用する場合には、二重結合当量は、1300g/mol以上としてもよい。カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の数平均分子量は、粘度と塗工性の点から、2000〜50000が好ましく、5000〜20000が特に好ましい。また、重量平均分子量は、5000〜100000が好ましく、20000〜50000が特に好ましい。
【0037】
また、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する有機基(X)を有する側鎖は、側鎖にカルボキシル基を有する重合体の該カルボキシル基の一部に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させて得られ、一般式(iii)
【0038】
−Y−CO−X−C(O)O− (iii)
【0039】
(式中、Xは上記芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する有機基を表し、
Yは、
−(R1O)o−(C(O)(CH)pO)q− 又は
−OR−(OC(O)−R)r−(OC(O)O−R)s−O−を表す。但し、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8個のアルキレン基を示し、oは1〜15の整数、pは3〜10の整数、qは0〜10の整数、rは0〜10の整数、sは1〜10の整数を表す。)で表される2価の有機基を有することが好ましい。一般式(iii)で表される2価の有機基を有することで、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐屈曲性がより向上する。
【0040】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、特に限定されないが、反応性の点から、下記一般式(iva)、(ivb)及び(ivc)
【0041】
【化4】

【0042】
(式中、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R、R、R10およびR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R、R10及びR13はメチレン基が好ましく、Rは炭素数2〜10のアルキレン基、特にブチレン基が好ましい。)からなる化合物群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)は、例えば、下記の方法で得ることができる。
【0044】
すなわち、下記一般式(iiia)で表されるモノマー及び/又は(iiib)で表されるモノマーを構成単位とする重合体(a1)と、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するポリカルボン酸及び/又は該ポリカルボン酸の無水物(a2)と、を反応させ、必要に応じて、続いて、反応生成物に上述のエポキシ基含有不飽和化合物を付加させる方法である。また(メタ)アクリル酸を含むモノマーも使用する場合には、(メタ)アクリル酸を含むモノマーと、下記一般式(iiia)で表されるモノマー及び/又は(iiib)で表されるモノマーと、を構成単位とする共重合体(a1)と、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するポリカルボン酸及び/又は該ポリカルボン酸の無水物(a2)と、を反応させ、必要に応じて、続いて、反応生成物に上述のエポキシ基含有不飽和化合物を付加させる方法である。
【0045】
【化5】

【0046】
(上記式中、R、R、R、R、o、p、q、r及びsは前記定義の通りであり、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)。(メタ)アクリル酸を含むモノマーには、(メタ)アクリル酸及び必要に応じて他の重合性モノマーを含めてもよい。
【0047】
上記他の重合性モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等のスチレン系モノマー並びにフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族ビニルモノマー;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びN−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド;(メタ)アクリロニトリルなどがあげられる。これらのうち、硬化性樹脂組成物の良好な柔軟性を実現するために、アルキル(メタ)クリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル酸を含むモノマーの(メタ)アクリル酸の含有量(仕込量)は、硬化性樹脂組成物の良好な柔軟性の点から、(メタ)アクリル酸を含むモノマー全体に対して、20〜100質量%が好ましく、20〜75質量%が特に好ましい。
【0049】
一般式(iiia)で表されるモノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートのラクトン変性体等として知られているモノマーである。一般式(iiia)で表されるモノマーには、いずれも市販品を使用することができる。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとして、日油社製PE−200等、ラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、ダイセル化学工業社製プラクセルFA1DDM、同FA2D、同FM3D等を好適に使用することができる。
【0050】
一般式(iiib)で表されるモノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの、ラクトン及び/又はカーボネートによる変性体として通常公知のモノマーであり、例えば、ダイセル化学工業社製HEMAC等があげられる。
【0051】
一般式(iiia)で表されるモノマー及び/または一般式(iiib)で表されるモノマーの含有量(仕込量)は、硬化膜の良好な柔軟性を確保する点から、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂中に、合計で、50〜80質量%が好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
【0052】
芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するポリカルボン酸及び/又は該ポリカルボン酸の無水物(a2)は、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する化合物と、不飽和ポリカルボン酸及び/又は不飽和ポリカルボン酸無水物との反応生成物である。芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する化合物には、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド、ジフェニルフォスフィンオキサイド等の活性水素を有するホスフィンオキサイド系化合物等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
また、不飽和ポリカルボン酸には、例えば、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。また、不飽和ポリカルボン酸無水物には、上記不飽和カルボン酸の無水物を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
反応生成物である(a2)は、例えば、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する化合物と、不飽和ポリカルボン酸及び/又は不飽和ポリカルボン酸無水物とを、エチレングリコールやγブチロラクトンのような極性溶媒中で30℃〜130℃で1〜20時間反応させることにより得ることができる。なお、必要に応じて、反応性を向上させるために、トリフェニルホスフィンなどの塩基触媒を用いてもよい。
【0055】
なお、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造には、予め上記一般式(iiia)で表されるモノマー及び/又は上記一般式(iiib)で表されるモノマーと、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するポリカルボン酸及び/又は該ポリカルボン酸の無水物(a2)と、を反応させて得られるモノマーを、共重合させる方法を採用してもよい。また、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造に(メタ)アクリル酸を含むモノマーを使用する場合には、予め上記一般式(iiia)で表されるモノマー及び/又は上記一般式(iiib)で表されるモノマーと、芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有するポリカルボン酸及び/又は該ポリカルボン酸の無水物(a2)と、を反応させて得られるモノマーと、(メタ)アクリル酸を含むモノマーと、を共重合させる方法を採用してもよい。
【0056】
分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)
分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)を使用することにより、硬化塗膜の架橋密度を上げて十分な硬化塗膜を得ることができる。このような化合物として、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物の使用量は、硬化後に十分な塗膜を得る点から、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、10〜50質量部であり、20〜30質量部が好ましい。
【0057】
塩基性触媒(C)
塩基性触媒(C)を使用することにより、硬化性樹脂組成物の硬化を促進させることができる。塩基性触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等が挙げられる。これらのうち、反応性の点からメラミン、ジシアンジアミドが好ましく、メラミンが特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塩基性触媒の使用量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましく、1.0〜5.0質量部が特に好ましい。
【0058】
その他の成分
本発明では、必要に応じて、さらに、希釈剤(D)を配合してもよい。希釈剤は、例えば、反応性希釈剤である光重合性モノマーであり、一分子当たり少なくとも2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。希釈剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。
【0059】
希釈剤には、例えば、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
上記した希釈剤の配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、2.0〜60質量部であり、10〜50質量部が好ましい。
【0061】
本発明では、さらに、必要に応じて、光重合開始剤、溶媒、着色剤、体質顔料、消泡剤、難燃剤及び各種添加剤を配合してもよい。
【0062】
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐1‐〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。光重合開始剤の配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、5〜25質量部であり、8〜20質量部が好ましい。
【0063】
溶媒は、硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために使用する。溶媒としては、例えば、有機溶媒、具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。有機溶媒を用いる場合の配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、10〜500質量部が好ましい。
【0064】
着色剤には、公知のものを使用でき、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アントラキノン系、アゾ系等の有機顔料や酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料を挙げることができる。体質顔料には、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク及びマイカ等を挙げることができる。また、消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。難燃剤には、公知のものを使用でき、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム等を挙げることができる。
【0065】
添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤を挙げることができる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。
【0067】
次に、上記した本発明の硬化性樹脂組成物の塗工方法について説明する。ここでは、本発明の硬化性樹脂組成物を回路基板上にソルダーレジスト膜として塗工する場合を例にとって説明する。上記のようにして得られた本発明の硬化性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、スクリーン印刷法等を用いて所望の厚さに塗布し、硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行う。その後、塗布した硬化性樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、特に限定されず、例えば、0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、フレキシブル配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。なお、上記した写真現像法ではなく、スクリーン印刷法等を用いて所望の厚さに塗布後、予備乾燥工程と露光・現像工程を行わずに、直接、上記と同条件のポストキュアを行って硬化塗膜を形成してもよい。
【0068】
このようにして得られたソルダーレジスト膜にて被覆されたフレキシブル配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0070】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)について
物性測定条件
1.リン元素含有率は原料である各成分の配合量の理論値から算出した。固形分酸価は、まず、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の酸価を、アルカリ中和滴定に基づくフェノールフタレイン変色法により測定し、その後、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)を150℃で2時間乾燥させ、乾燥前後の質量比から求めた固形分比率を乗じることによって算出した。二重結合当量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の固形分重量(g)/エポキシ基含有不飽和化合物のモル数(g/mol)により算出した。
2.重量平均分子量は、以下のように測定した。
東ソー社製GPC装置を用いて測定した。測定条件は下記の通り。
カラム:TSK gel(東ソー社製、「SuperH4000」、「SuperHZ2500」)
検出器:示差屈折
展開溶媒:テトラヒドロフラン
溶質濃度:10mg/mL
標準物質:標準ポリスチレン(VARIAN社製、「EASICAL PS-2」(単分散試料))
流速:0.3mL/min
温度:40℃
【0071】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A‐1)〜(A‐9)及び比較樹脂(A‐10)〜(A‐11)の合成を、表1を用いながら説明する。
合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた1リットルセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(三洋化成品社製、EDGAC)400gを仕込み、100℃に昇温後、表1の配合量(質量)に示すように、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光社製、HCA)と無水マレイン酸との反応物156gを投入し、2−ヒドロキシエチルアクリレートのイプシロンカプロラクトン修飾付加物(ダイセル化学工業社製「プラクセルFA2D」)344g、ジメチル2,2’‐アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製「V‐601」)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下し、滴下後3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。酸無水物が重合体の末端に付加したことを、FT‐IR(赤外分光光度計)により確認した。これにより、表1に示すように、固形分酸価56.1mgKOH/g、リン元素含有率3.1質量%、重量平均分子量28000のカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A‐1)を得た。
【0072】
合成例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた1リットルセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(三洋化成品社製、EDGAC)400gを仕込み、100℃に昇温後、表1の配合量(質量)に示すように、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光社製、HCA)と無水イタコン酸との反応物101.6gを投入し、2−ヒドロキシエチルアクリレートのイプシロンカプロラクトン修飾付加物(ダイセル化学工業社製「プラクセルFA2D」)177.5g、アクリル酸89.1g及びジメチル2,2’‐アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製「V‐601」)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下し、滴下後3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。次に、空気雰囲気下でグリシジルメタアクリレート(GMA、ダイセル化学工業社製「ブレンマーGH」)131.9gを加えて110℃で8時間反応させた。酸無水物が共重合体の末端に付加したことを、FT‐IR(赤外分光光度計)により確認した。これにより、表1に示すように、固形分酸価80.2mgKOH/g、リン元素含有率2.2質量%、重量平均分子量30000、二重結合当量470g/molのカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A‐2)を得た。
【0073】
合成例3
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた1リットルセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(三洋化成品社製、EDGAC)400gを仕込み、100℃に昇温後、表1の配合量(質量)に示すように、ジフェニルフォスフィンオキサイド(三光社製、DPPO)と無水イタコン酸との反応物57.8gを投入し、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ダイセル化学工業社製「ブレンマーPE‐200」)104.5g、メタクリル酸150.3g、2‐フェノキシエチルメタクリレート(共栄化学社製「ライトエステルPO」56.8g及びジメチル2,2’‐アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製「V-601」)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下し、滴下後3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。次に、空気雰囲気下でグリシジルメタアクリレート(GMA、ダイセル化学工業社製「ブレンマーGH」)103.6gを加えて110℃で8時間反応させた。酸無水物が共重合体の末端に付加したことを、FT‐IR(赤外分光光度計)により確認した。これにより、表1に示すように、固形分酸価122.6mgKOH/g、リン元素含有率1.2質量%、重量平均分子量33000、二重結合当量500g/molのカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A‐3)を得た。
【0074】
合成例4〜9
合成例2と同様の製法にて、表1に示す原料を表1の配合量(質量(g))にて仕込み、表1の物性を有する合成例6〜8のカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A‐6、A‐7、A‐8)を得た。また、合成例3と同様の製法にて、表1に示す原料を表1の配合量(質量(g))にて仕込み、表1の物性を有する合成例4、5、9のカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A‐4、A‐5、A‐9)を得た。
【0075】
比較合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた1リットルセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(三洋化成品社製、EDGAC)400gを仕込み、100℃に昇温後、アクリル酸30.7g、2−ヒドロキシエチルアクリレートのイプシロン−カプロラクトン修飾付加物(ダイセル化学工業社製「プラクセルFA2D」)293.5g、2‐フェノキシエチルメタクリレート(共栄化学社製「ライトエステルPO」175.8g及びジメチル2,2’‐アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製「V-601」)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下し、滴下後3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。これにより、固形分酸価47.9mgKOH/g、重量平均分子量29000のカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A ‐10)を得た。
【0076】
比較合成例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた1リットルセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(三洋化成品社製、EDGAC)400gを仕込み、100℃に昇温後、アクリル酸89.2g、2−ヒドロキシエチルアクリレートのイプシロン−カプロラクトン修飾付加物(ダイセル化学工業社製「プラクセルFA2D」)213.0g、2‐フェノキシエチルメタクリレート(共栄化学社製「ライトエステルPO」127.5g及びジメチル2,2’‐アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製「V-601」)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下し、滴下後3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。次に、空気雰囲気下でグリシジルメタアクリレート(GMA、ダイセル化学工業社製「ブレンマーGH」)70.3gを加えて110℃で8時間反応させた。これにより、固形分酸価83.4mgKOH/g、重量平均分子量36000、二重結合当量1000g/molのカルボキシル基含有アクリル系樹脂(A ‐11)を得た。
【0077】
表1にて使用したその他の原料については、以下の通りである。
・「プラクセルFA1DDM」は、ダイセル化学工業社製、2−ヒドロキシエチルアクリレートのイプシロン−カプロラクトン修飾付加物。
・「プラクセルFM3D」は、ダイセル化学工業社製、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのイプシロン−カプロラクトン修飾付加物。
・「HEMAC」は、ダイセル化学工業社製、水酸基含有カーボネート変性メタクリレート。
・「ブレンマーPP‐800」は、ダイセル化学工業社製、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート。
・「アロニクスM‐140」は、東亞合成社製、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド。
・「4HBAGE」は、日本化成社製、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル。
【0078】
合成例1〜9の樹脂について、原料の配合量(仕込み量)(単位:質量(g))と物性を下記表1にまとめた。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例1〜9、比較例1〜3
下記表2に示す各成分を下記表2に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜9、比較例1〜3にて使用する硬化性樹脂組成物を調製した。なお、下記表2に示す配合量は質量部を表す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2中、
・「エピクロン860」は、大日本インキ化学工業(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
・「EXA‐4816」は、DIC社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
・「DICY7」は、ジャパンエポキシレジン社製、ジシアンジアミド。
・「HDDA」は、ダイセルサイテック(株)製、1,6‐ヘキサンジアクリレート。
・「EBECRYL3708」は、ダイセルサイテック(株)製、2官能エポキシアクリレート。
・「EBECRYL8405」は、ダイセルサイテック(株)製、4官能のアクリル化ウレタン樹脂。
・「TPP」は、大八工業化学社製、リン酸トリフェニル。
・「FP‐110」は、伏見製薬社製、フォスファゼン系。
・「イルガキュア907」は、チバスペシャルティ ケミカルズ社製。
・「KS‐66」は、信越シリコーン社製シリコーン系消泡剤。
【0083】
試験片作成工程
上記のように調製した硬化性樹脂組成物を、以下のように塗工して試験片を作成した。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製 カプトン100H)に回路パターンを形成したフレキシブル配線板用基板を希硫酸(3%)により表面処理後、スクリーン印刷法にて、各調製した硬化性樹脂組成物を塗布後、BOX炉にて80℃で20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを塗膜上に密着させ、その上から紫外線を露光装置(オーク社製HMW−680GW)にて500mJ/cm露光した。その後、30℃の1%炭酸ナトリウム現像液にて現像後、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、上記基板上に硬化塗膜を形成し、実施例2〜9、比較例2、3の試験片を得た。また、実施例1、比較例1の試験片は、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製 カプトン100H)に回路パターンを形成したフレキシブル配線板用基板を希硫酸(3%)により表面処理後、スクリーン印刷法にて、各調製した硬化性樹脂組成物を塗布後、予備乾燥工程と露光・現像工程ともに行なわず、直接、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、上記基板上に硬化塗膜を形成して、得た。硬化塗膜の厚みは、各実施例、比較例ともに、20〜23μmであった。
【0084】
評価項目
(1)難燃性
各試験片について、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0〜燃焼で表した。
(2)耐屈曲性
各試験片の露光後の塗膜について、円筒形マンドレル法により、塗膜の耐屈曲性を目視観察及び×200の光学顕微鏡観察から評価したものであり、○:直径2mmで異常なし、△:直径4mmで異常なしだが、直径2mmでクラック、剥離等の異常あり、×:直径4mmでクラック、剥離等の異常あり、の3段階で評価した。
(3)絶縁特性
各試験片について、IPC−TM−650のIPC−SM840B B−25テストクーポンのくし形電極を用い、85℃、85%R.H.で200時間加湿した後の絶縁抵抗を、DC50V、1分間印加して測定し、○:絶縁抵抗値1010Ω以上、×:絶縁抵抗値1010Ω未満、の2段階で評価した。
(4)耐ブリード性
各試験片を、乾燥炉で200℃にて3分間加熱した後、取り出した。その後、各試験片を室温になるまで放置し、硬化塗膜の表面状態を指触にて評価した。
○:硬化塗膜表面に変化無し、×:硬化塗膜表面に成分の滲み出し有り。
【0085】
実施例1〜9、比較例1〜3の評価結果を下記表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3に示すように、樹脂(A)の側鎖に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドまたはジフェニルフォスフィンオキサイドと無水マレイン酸または無水イタコン酸との反応物を有する実施例1〜9では、従来の難燃剤をVTM‐0の難燃性が得られる配合量まで配合した比較例1、2と同等の難燃性の硬化塗膜が得られた。また、実施例1〜9の硬化塗膜では、耐屈曲性、絶縁特性及び耐ブリード性のいずれにも優れていた。また、実施例3〜5に示すように、耐屈曲性、絶縁特性、耐ブリード性を損なわない範囲で少量(比較例1、2の1/10の配合量)の難燃剤を助剤として配合し、より確実な難燃性を得ることもできた。さらに、試験片の作成に当たり、実施例1〜9では、予備乾燥後にネガフィルムを接触させても、露光した際に、ネガフィルムへの塗膜の貼り付きは観察されなかった。
【0088】
一方、比較例1の硬化塗膜では、耐屈曲性と絶縁特性が低下した。これは、比較例1にて配合したトリスジエチルホスフィン酸アルミニウムは固形の難燃剤なので耐屈曲性を阻害し、またリン酸トリフェニルはリン酸エステル系なので加水分解して絶縁信頼性を低下させたためと考えられる。比較例2の硬化塗膜では、耐屈曲性と耐ブリード性が低下した。これは、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムが耐屈曲性を阻害し、フォスファゼン系難燃剤は反応性が低いので塗膜表面部へ滲み出したためと考えられる。また、難燃剤の配合量が比較例1、2の半分である比較例3の硬化塗膜では、難燃性が得られず、燃焼試験にて燃焼した。さらに、試験片の作成に当たり、比較例1〜3では、予備乾燥後にネガフィルムを接触させて、露光後ネガフィルムを引き剥がすと、ネガフィルムへの塗膜の付着が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐屈曲性、絶縁特性及び耐ブリード性のいずれも損なうことなく難燃性に優れているので、フレキシブル配線板のソルダーレジスト膜や、各種層の間(例えば、導体回路と導体回路の間)に設ける絶縁材、カバーレイ、アンダーコート等の絶縁性フレキシブル部材の分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する2価の有機基(X)を側鎖に有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物(B)と、
塩基性触媒(C)と、を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機基(X)が、一般式(i)または一般式(ii)
【化1】


(式中、Zは置換基を表し、lは0〜5の整数、mは0〜4の整数、nは0〜1の整数である。)であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)が、側鎖にカルボキシル基を有する重合体の該カルボキシル基の一部に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させて得られ、一般式(iii)
−Y−CO−X−C(O)O− (iii)
(式中、Xは上記芳香環を少なくとも1つ含み且つリン元素を含有する有機基を表し、
Yは、
−(R1O)o−(C(O)(CH)pO)q− 又は
−OR−(OC(O)−R)r−(OC(O)O−R)s−O−を表す。但し、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8個のアルキレン基を示し、oは1〜15の整数、pは3〜10の整数、qは0〜10の整数、rは0〜10の整数、sは1〜10の整数を表す。)で表される2価のリン元素含有有機基を側鎖に有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)が、固形分中にリン元素を0.5〜10質量%含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の固形分酸価が、30〜140mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基含有不飽和化合物が、一般式(iva)、(ivb)および(ivc)
【化2】


(式中、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R、R、R10およびR13は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)からなる化合物群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂(A)の二重結合当量が、400〜2000g/molであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
塩基性触媒(C)が、メラミンを含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、反応性希釈剤(D)を含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られたソルダーレジスト膜を有するフレキシブル配線板。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を用いた層間絶縁材又はフレキシブル部材。

【公開番号】特開2013−28725(P2013−28725A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165909(P2011−165909)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】