説明

難燃性成形用組成物

エポキシ樹脂と、メラミンシアヌレートと、加熱時に水を遊離することのできる1種または複数の水和金属塩とを含む難燃性成形用組成物。この水和金属塩は、金属ホウ酸塩、第IIB族の酸化物、ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物から選択される1種または複数の化合物を含んでもよい。この成形用組成物を電気または電子デバイスの被覆に使用してもよく、これは、該成形用組成物を、該成形用組成物が硬化して該デバイス表面に重合体を形成するのに十分な温度に加熱することによって行われる。また、この方法によって形成された電気および電子デバイスも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気および電子デバイス用の成形材料、具体的には、難燃性、耐湿性、低反り性、および低収縮性を示すエポキシ系成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は電気および電子デバイスを被覆するための成形材料に幅広く用いられている。封止用として用いられるこの種のエポキシ成形材料は、通常、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤とのブレンドに、充填剤、触媒、難燃剤材料、加工助剤、着色剤等の他の配合成分を加えたものから調製される。この種の成形材料に含まれるエポキシ樹脂は、従来、1分子内に2つのエポキシ基を含むジエポキシドであり、これが酸二無水物、ジアミン、またはジフェノールオリゴマーから構成される共反応体(架橋剤または硬化剤)と反応される。ジフェノールオリゴマー(例えば、ノボラックフェノール、クレゾールフェノール、ビスフェノールAから誘導されたもの)は信頼性が高いことから、当該技術分野における硬化剤として特に好ましい。
【0003】
エポキシ組成物の難燃剤は、典型的には安全目的で供されている。一般的な難燃剤系は、臭素含有難燃剤と難燃相乗剤である酸化アンチモンとの組合せである。しかし、これらの化合物は環境汚染物質である。臭素含有難燃剤(特に臭化ジフェニルエーテル)には、毒性を有するものや発癌性を有する恐れがあるものもある。国際癌研究機関(International Agency for Research on Cancer)は、三酸化アンチモンをクラス2Bの発癌性物質に分類している(すなわち三酸化アンチモンは、主として動物実験に基づき、発癌性を有することが疑われる)。また、この化合物は比較的高濃度(2〜4%)で使用される場合が多く、そのうえ僅かに水溶性も有していることから、さらなる環境問題の原因にもなる。この問題は、集積回路製造業者が、現在、使用されている成形用組成物全体の最大で半分の量を廃棄しているという事実によって注目されるようになった。
【0004】
リン含有化合物が難燃剤として提案されてきた。例えば、Asanoらに付与された米国特許第5739187号には、三酸化アンチモンおよび臭化化合物を使用しないことを目的としてリン含有難燃剤を含有させたエポキシ樹脂組成物が半導体封止材料として開示されている。しかし、従来のリン化合物を含む成形用組成物は、一般に、吸湿性が高いなどの望ましくない性状を有しており、これが高温下で封止材料に応力やクラックを生じさせる原因となる可能性がある。
【0005】
メラミンシアヌレートは難燃剤化合物として普通に販売されているものである。この物質は難燃剤として効果があるものの、これを高濃度で使用すると成形材料の流動性を大幅に低下させてしまう場合が多い。このことから、成形材料中にメラミンシアヌレートを適度な濃度で混合することにより、十分な難燃性と流動性との両方を達成するのは実際的でないと一般に考えられてきた。
【0006】
残念なことに、流動性の問題に対処しようとして難燃剤の量を低減させると難燃性が損なわれることになり、結果として得られる成形材料が難燃性の規格であるUL−94のV−O等級を満たさなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのことを克服するとともに、商業的に許容可能な物理的性質が得られる新規な難燃性成形用組成物が得られるとすれば望ましいであろう。さらに、低反り性や低収縮性等の応力特性に優れ、かつ硬化時の流動性が向上した成形用組成物が得られるとすれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、ハロゲン、リン、およびアンチモン元素を実質的に含まず、エポキシ樹脂と、メラミンシアヌレートと、加熱時に水を遊離させることのできる1種または複数の水和金属塩とを含む難燃性成形用組成物を提供する。本発明の一実施形態においては、この水和金属塩は、金属ホウ酸塩、第IIB族の酸化物、ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物から選択される1種または複数の化合物を含んでもよい。
【0009】
さらに本発明は、電気または電子デバイスを被覆するための方法を対象とする。本発明の方法は、上述の成形用組成物を、該成形用組成物を硬化させて該デバイスの表面に重合体を形成させるのに十分な温度に加熱することを含む。さらに本発明は、本方法によって形成された電気または電子デバイスを対象とする。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、好ましい実施形態の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施例以外で、または特段の指定がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される配合成分の量や反応条件等を示すあらゆる数値または表現は全ての場合において「約」という語で修飾されているものと理解されたい。本特許出願には様々な数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続的であり、その最小値と最大値との間のあらゆる値が含まれている。本出願において具体的に述べる様々な数値範囲は、特段の指定がない限り近似値である。
【0012】
本明細書において用いる「実質的に含まない」という用語は、その物質が偶然の不純物として存在することを示すという意味である。換言すれば、この物質は、示された組成物に意図的に添加されているわけではないが、その組成物に意図された成分の一部である不純物として取り込まれたために、より少量または無視できる程度に存在する可能性がある。
【0013】
本明細書において用いる「硬化した」という用語は、共有結合形成(例えば硬化剤の官能基と樹脂のエポキシ基との間の)によって三次元架橋網が形成されたことを表すという意味である。本発明の組成物が硬化する温度は様々であり、条件ならびに触媒(使用する場合)の種類および量にある程度依存する。
【0014】
本明細書において用いる「水和金属塩」という用語は、結晶水、すなわち、金属塩結晶中に一定の比率で存在する水(金属塩結晶の格子位置を占める水分子等)の形態にある水を含む金属塩を示すことを意味する。本発明に有用な水和金属塩は、含有している水の少なくとも一部を加熱により遊離させるものである。
【0015】
本発明は、ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まない難燃性成形用組成物を対象とする。本発明の成形用組成物は、エポキシ樹脂と、メラミンシアヌレートと、加熱時に水を遊離させることができる1種または複数の水和金属塩とを含む。
【0016】
この成形用組成物に使用することのできるエポキシ樹脂の種類に制限はない。望ましくは、このエポキシ樹脂は、2つ以上の反応性オキシラン基を含む。例えばこのエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;エポキシクレゾールノボラック樹脂およびフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;グリシジル型エポキシ樹脂;ビフェニルエポキシ樹脂;ナフタレン環を含むエポキシ樹脂;シクロペンタジエンを含有するエポキシ樹脂;多官能性エポキシ樹脂;ヒドロキノンエポキシ樹脂;およびスチルベンエポキシ樹脂から選択してもよいが、これらに限定されるものではない。この成形用組成物は、複数種のエポキシ樹脂、例えばエポキシクレゾールノボラック樹脂とビフェニルエポキシ樹脂との組合せを含んでもよい。
【0017】
上述したように、従来ジエポキシと呼ばれているビスフェノールおよびビフェニルエポキシ樹脂、ならびに従来多官能性エポキシと呼ばれているエポキシクレゾールノボラック樹脂が本発明に有用である。この種のエポキシは、ペンダントエポキシを有する2つのフェノール基が同じ炭素原子を介して結合しているので、その分岐度は2である。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルは2官能性であり、中心炭素原子から伸長する、ペンダントエポキシを有するフェノール基を2つ含んでいる。したがって、その分岐度は2である。エポキシクレゾールノボラック樹脂は重合体化合物であり、その重合鎖から伸長している場合もあるペンダントエポキシ部分を複数有していることからしばしば「多官能性」と称される。例えば、エポキシクレゾールノボラック樹脂は以下の構造を含むものである。
【0018】
【化1】

【0019】
n=0の場合、この構造の官能性は2となる。n=lの場合の官能性は3であり、n=4の場合は官能性が6、というようになる。このようなことから、従来この化合物は多官能性エポキシ樹脂と呼ばれている。しかし、同一の炭素または炭素の小集団から伸長するフェノール基は2つしかないので、この種の樹脂の分岐度は2に相当することになる。
【0020】
特に望ましい実施形態においては、エポキシ樹脂は、樹脂骨格内の分岐度が少なくとも3である多官能性エポキシ樹脂である。したがって、特に望ましい多官能性エポキシ樹脂はフェノールから誘導されたものであり、かつ同一の中心炭素原子または中心炭素集団ーから直接分岐している少なくとも3つのフェノール基を含み、その少なくとも3つのフェノール基それぞれにペンダントオキシラン基が結合しているものである。
【0021】
分岐度が少なくとも3である有用な多官能性エポキシ樹脂の非限定的な例としては、
【0022】
【化2】

【0023】
トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル(中心炭素原子から分岐する3つの末端グリシジルエーテル部分によって表されるように、分岐度は3である)、および
【0024】
【化3】

【0025】
テトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテル(中心の炭素2個の集団であるエチル部分から分岐する4つの末端グリシジルエーテル部分によって表されるように、分岐度は4である)が挙げられる。
【0026】
特に望ましくは、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル等の、トリスフェニロールメタンから誘導されたエポキシ樹脂である。
【0027】
分岐度が少なくとも3である多官能性樹脂は、単独で用いても、上述したものなどの従来の樹脂と組み合わせて用いてもよい。
【0028】
エポキシ樹脂は、典型的には、エポキシ当量の理論値が約150〜250である。
【0029】
本成形用組成物は、このエポキシ樹脂を成形用組成物の少なくとも1重量%、場合により少なくとも4重量%、他の場合においては少なくとも5重量%、状況によっては少なくとも5.5重量%の濃度で含む。また、このエポキシ樹脂は、成形用組成物の12重量%まで、場合により11重量%まで、他の場合においては9重量%まで、状況によっては8.5重量%までの量で存在する。この成形用組成物は、エポキシ樹脂を上述した値を含むいずれかの範囲で含んでいてもよい。
【0030】
本成形用組成物中には硬化剤(ハードナー)が含まれていてもよい。硬化剤は、成形用組成物が少なくとも135℃の温度に加熱されると該組成物の架橋を促進して重合体組成物を形成させるものである。本発明の成形用組成物に含まれ得る好適な硬化剤には、フェノールノボラック型硬化剤、クレゾールノボラック型硬化剤、ジシクロペンタジエンフェノール型硬化剤、リモネン型硬化剤、および無水物がある。キシロック(xylock)ノボラック型硬化剤等の、水酸基当量が約150を超える可撓性硬化剤が望ましい場合が多い。可撓性硬化剤の非限定的な例としては、ボーデンケミカル(Borden Chemical)から市販されているビスフェノールM、およびダウケミカル(Dow Chemical)から市販されているDEH85が挙げられる。この成形用組成物は、エポキシ樹脂成分と同様、複数種の硬化剤を含み得る。硬化剤のエポキシ当量は、典型的には約100〜150である。
【0031】
本発明の一実施形態においては、多官能性硬化剤の分岐度は、エポキシ樹脂成分と同様、少なくとも3であることが特に望ましい。エポキシド基と反応性を有する官能基を少なくとも3つ含む、トリスフェノールから誘導されたものが特に望ましい。
【0032】
本成形用組成物は、硬化剤を、成形用組成物の少なくとも1重量%、場合により少なくとも1.5重量%、他の場合においては少なくとも2重量%、状況によっては少なくとも2.5重量%の濃度で含む。また、硬化剤は、成形用組成物の10重量%まで、場合により9重量%まで、他の場合においては8重量%まで、状況によっては6重量%までの量で存在する。この成形用組成物は、硬化剤を上述した値を含むいずれかの範囲で含んでもよい。
【0033】
この組成物は、場合により、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進するための触媒も含んでもよい。従来、この種のエポキシ組成物には、第3級アミン、置換されたホスフィン、第4級有機ホスホニウム塩化合物、イミダゾール等の触媒が含まれており、特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(「DBU」)、ジシアンジアミド(「DICY」)、トリフェニルホスフィン(「TPP」)等が使用される触媒としてよく知られている。使用してもよい第4級有機ホスホニウム塩化合物としては、有機ホスホニウム官能基を含む酢酸エステル化合物、例えばロームアンドハース(Rohm and Haas)から市販されているエチルトリフェニルホスホニウム酸アセテート(ethyltriphenylphosphonium acid acetate)錯体(「EtTPPOAc」)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
さらに、本発明の組成物は、この組成物に難燃性を付与するための特に指定された成分をさらに含む。この組成物に難燃性を付与することを目的として含有させる成分の1つがメラミンシアヌレートである。さらに、本成形用組成物は、加熱時に水を遊離する水和金属塩を含む。本発明の一実施形態においては、この水和金属塩を100℃を超えて加熱、場合により125℃を超えて加熱、他の場合においては150℃を超えて加熱すると水が遊離する。一つの理論に限定するわけではないが、水和金属塩から水が遊離することが本成形用組成物に難燃性を付与するのに役立つと考えられる。
【0035】
本発明には任意の好適な水和金属塩を使用してもよい。本発明の一実施形態における好適な水和金属塩としては、金属ホウ酸塩、第IIB族の酸化物、ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
非限定的な例として、金属ホウ酸塩としてはホウ酸亜鉛が挙げられる。さらなる非限定的な例として、第IIB族酸化物としては酸化亜鉛が挙げられる。さらに追加の非限定的な例として、多価水酸化物としては酸化アルミニウム三水和物(A1(OH))および水酸化マグネシウム(Mg(OH))の一方または両方が挙げられる。
【0037】
本成形用組成物は、メラミンシアヌレートを、成形用組成物の少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも0.25重量%、他の場合においては少なくとも0.5重量%、状況によっては少なくとも1重量%の濃度で含む。メラミンシアヌレートは、所望の難燃性を付与するのに十分な濃度で存在する。また、メラミンシアヌレートは、成形用組成物の4重量%まで、場合により3.5重量%まで、他の場合においては3重量%まで、状況によっては2.5重量%までの量で存在する。メラミンシアヌレートの量が多過ぎると成形用組成物の粘度が高くなり過ぎる場合があり、成形用組成物の取り扱いが難しくなる可能性がある。成形用組成物は、メラミンシアヌレートを上述した値を含むいずれかの範囲で含むことができる。
【0038】
本成形用組成物は、金属ホウ酸塩を、成形用組成物の少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも0.2重量%、他の場合においては少なくとも0.3重量%、状況によっては少なくとも0.4重量%、他の状況においては少なくとも0.5重量%の濃度で含む。金属ホウ酸塩は、メラミンシアヌレートと一緒に所望の難燃性を付与するのに十分な濃度で存在する。金属ホウ酸塩は、成形用組成物の2重量%まで、場合により1.75重量%まで、他の場合においては1.5重量%まで、状況によっては1重量%までの量で存在する。金属ホウ酸塩の量が多過ぎると成形用組成物の粘度が高くなり過ぎる場合があり、成形用組成物の取り扱いが難しくなる可能性がある。この成形用組成物は、金属ホウ酸塩を上述したいずれかの値を含む範囲で含んでもよい。
【0039】
本成形用組成物は、場合により、IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物を含んでもよい。多価水酸化物が存在する場合、これは、成形用組成物の少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも0.15重量%、他の場合においては少なくとも0.2重量%、状況によっては少なくとも0.25重量%存在してもよい。多価水酸化物は、それ以外の難燃剤成分と一緒に所望の難燃性を付与するのに十分な濃度で存在する。多価水酸化物は、成形用組成物の1重量%まで、場合により0.85重量%まで、他の場合においては0.75重量%まで、状況によっては0.5重量%までの量で存在する。多価水酸化物の量が多過ぎると成形用組成物の粘度が高くなり過ぎる場合があり、成形用組成物の取り扱いが難しくなる可能性がある。この成形用組成物は、多価水酸化物を上述した値を含むいずれかの範囲で含んでもよい。
【0040】
本成形用組成物は、場合により、第IIB族金属の酸化物を含んでもよい。この金属酸化物が存在する場合、これは、成形用組成物の少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも0.15重量%、他の場合においては少なくとも0.2重量%、状況によっては少なくとも0.25重量%の濃度で含まれもよい。この金属酸化物は、それ以外の難燃剤成分と一緒に所望の難燃性を付与するのに十分な濃度で存在する。この金属酸化物は、成形用組成物の1重量%まで、場合により0.85重量%まで、他の場合においては0.75重量%まで、状況によっては0.5重量%までの量で存在する。金属酸化物の量が多過ぎると成形用組成物の粘度が高くなり過ぎる場合があり、成形用組成物の取り扱いが難しくなる可能性がある。この成形用組成物は、金属酸化物を上述した値を含むいずれかの範囲で含んでもよい。
【0041】
本発明の一実施形態においては、成形用組成物は、エポキシ樹脂と、メラミンシアヌレートと、ホウ酸亜鉛と、酸化亜鉛、酸化アルミニウム三水和物、および/または水酸化マグネシウムから選択される化合物とを含む。この実施形態の非限定的な例として、メラミンシアヌレートは成形用組成物の約0.1〜約3.5重量%の量で存在し、ホウ酸亜鉛は成形用組成物の約0.1〜約2重量%の量で存在し、酸化亜鉛は成形用組成物の約0〜約1重量%の量で存在し、かつ金属多価水酸化物は成形用組成物の約0〜約1重量%の量で存在する。
【0042】
本成形用組成物は、上述したものに加えて、当該技術分野において知られている他の好適な難燃剤を含んでもよい。好適な難燃剤の非限定的な例として、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、およびこれらの混合物等の遷移金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の他の難燃剤は、本発明の組成物中に、該組成物の総重量を基準として約3重量%まで、場合により約0.4重量%〜約2.8重量%存在してもよい。
【0043】
本発明の一実施形態においては、成形用組成物は、メラミンシアヌレートと一緒に、酸化亜鉛と、場合により、酸化アルミニウム三水和物および/または水酸化マグネシウムとを含む。この実施形態においては、メラミンシアヌレートの量を、成形用組成物に難燃性を付与するために必要とされている典型的な量よりも少なくすることができる。このことは、メラミンシアヌレートを高濃度にすることによって流動性等の他の特性および環境問題に及ぼされ得る悪影響を抑えるのにも役立つであろう。
【0044】
本発明の組成物は、当業者らによく知られている他の任意の添加剤を含んでもよい。例えば、この組成物中には、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、窒化ケイ素、クレー、タルク、雲母、カオリン、炭酸カルシウム、珪灰石、モンモリロナイト、スメクタイト、およびこれらの組合せ等の充填剤が、組成物の総重量を基準として、普通は約20〜90重量%、多くの場合、望ましくは約50〜90重量%、より望ましくは約60〜90重量%存在する。
【0045】
本発明の組成物中にカーボンブラック着色剤等の着色剤が存在する場合は、約0〜約2重量%、より多くの場合は、約0.1〜約1重量%の量で含まれていてもよい。
【0046】
本発明の組成物中に離型剤が存在する場合は、カルナウバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス(ヘキストケミカル(Hoechst Chemical)より市販されているイーワックス(EWAX)等)、酸ワックス(ヘキストケミカルより市販されているエスワックス(SWAX)等)、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸金属塩等が、約0〜約2重量%、より多くの場合は、約0.2〜約1重量%の量で含まれていてもよい。
【0047】
本発明の組成物中にシラン系カップリング剤等のカップリング剤が存在する場合は、約0〜約2重量%、より多くの場合は、約0.3〜約1重量%の量で含まれていてもよい。
【0048】
炭酸マグネシウムアルミニウム水和物(商品名「DHT−4A」として協和化学工業株式会社より商業的に入手可能)等のイオン捕捉剤は本発明の組成物に使用するのに好適であり、存在する場合は、約0〜約2重量%、より多くの場合は、約0.5〜約2重量%の量で存在してもよい。
【0049】
他の添加剤として、例えば、ポリフェニレンオキシド等の応力緩和剤、シリコーン粉末等のエラストマー、およびアジン接着促進剤等の接着促進剤が挙げられ、これらが存在する場合は、約0〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0050】
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、トリフェニルホスフィン(TPP)、ジシアンジアミド(DICY)、2−メチルイミダゾール等の助触媒は、本発明の組成物中に使用するのに好適であり、存在する場合は、約0〜約10重量%、より多くの場合は、約0.5〜約2重量%の量で存在してもよい。
【0051】
本発明の特定の実施形態においては、成形用組成物は、エポキシ樹脂を約4重量%〜約12重量%と、メラミンシアヌレートを約0.1重量%〜約3.5重量%と、ホウ酸亜鉛を約0.1重量%〜約2重量%と、酸化亜鉛と酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物との1種または複数から選択される化合物を約0.01重量%〜約1重量%と、フェノールノボラック硬化剤を約0.001重量%〜約10重量%と、1種または複数の溶剤を0重量%〜約90重量%と、1種または複数の他の添加剤を約0.1重量%〜約10重量%と、を含む。上記の他の添加剤としては、着色剤、離型剤、カップリング剤、触媒、イオン捕捉剤、金属酸化物、金属水酸化物、顔料、接着促進剤、高靭性化剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
この成形用組成物は、任意の従来法によって調製してもよい。例えば、当該技術分野において知られているように、化合物を全て一緒に混ぜ合わせたものを細かく粉砕してドライブレンドしてもよく、あるいは、均一混合性を高めるために配合成分を段階的に混合することも可能である。次いでこの混合物を、例えば大型の2本ロールミル(1本は約90℃に加熱され、他方は水道水で冷却されている)を備えたディファレンシャルホットロールミルで処理することによって均一なシートを形成し、次いでこれを冷却した後、粉砕して粉末にする。別法として、当該技術分野において知られているように、二軸スクリュー押出機を用いてこの混合物を押出成形してもよい。
【0053】
さらに本発明は、上述した成形用組成物を、この成形用組成物が硬化するのに十分な温度に加熱して電気または電子デバイス表面に重合体を形成することによって該デバイスを被覆する方法を対象とする。この成形用組成物は、任意の従来法、例えば、電子デバイスを被覆するための複数の成形キャビティを有する金型を備えたトランスファプレス等の成形装置を用いることによって様々な物品に成形してもよい。好適な成形条件としては、約150℃〜約200℃、場合により約165℃〜約195℃、他の場合においては約175℃〜約195℃の温度、および約400psi〜約1500psiの圧力が挙げられる。
【0054】
好ましい成形用組成物は、約0.5分〜約3分以内、より好ましくは約1分〜約2分以内に硬化する。硬化時間(すなわち、良好なカル(cull)硬化物を形成するために必要な最短時間)を決定するためには、この成形用組成物を190℃の成形プレス中に配置し、予め定めた時間(例えば3分間)が経過した後にこれを調べる。もし良好な硬化物(すなわち、強靭で脆くない)が形成されていたら、プレス時間を短くしていき、最短時間が決定されるまでこの実験を繰り返す。
【0055】
上述したように、本発明の特定の実施形態において、エポキシ樹脂は、樹脂骨格内の分岐度が少なくとも3である多官能性エポキシ樹脂であり、架橋剤は、分岐度が少なくとも3である、フェノールから誘導された多官能性硬化剤である。特に望ましいエポキシ樹脂は、トリフェノリルメタントリグリシジルエーテル等のトリスフェノールメタンから誘導された樹脂であり、特に望ましい硬化剤は、トリスフェノールメタン誘導体である。有用な樹脂としては、例えば、スミトモコーポレーション(Sumitomo Corp.)から市販されているスミエポキシ(SUMIEPOXY)TMH574、日本化薬から市販されているEPPN501H等の1−トリスヒドロキシフェニルメタングリシジルエーテルが挙げられる。有用な硬化剤は、例えば、明和化成から市販されているMEH7500である。
【0056】
本発明の難燃性成形用組成物の具体的な利点は、流動性に殆どまたは全く影響することなく商業的に望ましい難燃性が達成できることにある。本発明の組合せによってメラミンシアヌレートの使用量を大幅に低減することが可能となり、それによって、成形用組成物の難燃性を向上させる一方で優れた流動性を得ることが可能となる。非限定的な例として、メラミンシアヌレート対水和金属塩の重量比が2:1〜4:1、場合により3:1である場合、必要とされるメラミンシアヌレートの量が大幅に低減され、成形用組成物が優れた流動性および難燃性を示すものになる。この実施形態の延長として、水和金属塩を、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、Mg(OH)、およびAl(OH)から選択した場合は本発明の組合せに相乗性が認められるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
上述したように、本発明の組成物は、特に電気または電子デバイスの成形材料として有用である。さらなる実施形態においては、本発明は、電気または電子デバイスを被覆するための方法を提供する。この種の電気または電子デバイスの非限定的な例としては、半導体、トランジスタ、ダイオード、および集積回路が挙げられる。この方法は、上記の成形用組成物を提供することと、電子デバイスの表面をこの成形用組成物で被覆することなどによって該組成物と接触させることとを含む。次いで、成形用組成物をその上に含むデバイスは、成形用組成物が硬化してデバイス表面に重合体を形成するのに十分な温度に加熱される。望ましくは、成形用組成物の加熱温度は、典型的には少なくとも135℃、多くの場合は約165℃〜195℃である。
【0058】
ここで以下に示す実施例によって本発明を説明する。この実施例は例示のみを意図するものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0059】
以下に示す実施例の成形用組成物を、全配合成分を同時にドライブレンドし、この組成物を試験することによって、調製した。
【実施例】
【0060】
<実施例1>
以下の表1に示す配合に従い、試料1〜7として示される7種類の成形用組成物を調製した。各成形用組成物は、エポキシクレゾールノボラック樹脂と一緒に標準的なフェノールノボラック可撓性硬化剤を含むものとした。比較例1以外の各組成物には、難燃剤配合物として、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、および場合により水酸化マグネシウムを含むものとした。以下に示す重量%(wt.%)は、組成物の総重量を基準として計算したものである。
【0061】
【表1】

【0062】
成形用組成物の試料1〜7をそれぞれ硬化させた後、燃焼性、ゲル化時間、スパイラルフロー、合計燃焼時間、およびUL94等級について試験を行った。結果を表2に示す。硬化した組成物の燃焼性は、UL94試験に準拠する1/8インチの棒状成形体5本の合計燃焼時間によって決定した。ゲル化時間は、指定温度に調整されたサーモスタット制御のホットプレート上に成形材料を載置するという標準的な試験手順によって決定した。成形材料が硬くなるまでスパチュラを前後に往復させる。この硬くなるまでの時間がゲル化時間を表す。
【0063】
ASTM D−3123を用いたスパイラルフローは、トランスファ成形機内の175℃の半円状のスパイラル金型内に、流れが止まるまで組成物試料を流すことによって決定した。成形サイクル終了後に金型を開けて、連続した流れの最遠点を記録する。
【0064】
【表2】

【0065】
表2の結果は、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、および場合により水酸化マグネシウムを用いて調製された成形用組成物の難燃性が向上していることを示すものである。特に、試料1(メラミンシアヌレートおよび酸化亜鉛のみを用いて調製された比較用組成物を表す)と試料2〜7(メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、および場合により水酸化マグネシウムを用いて調製された本発明の組成物を表す)とを比較すると、燃焼性の等級が試料1(UL94V−O等級を達成できない)よりも向上していることがわかる。
【0066】
<実施例2>
以下の表3に示す配合に従い、試料8〜13で示される6種類の成形用組成物を調製した。この成形用組成物にはそれぞれ、標準的なエポキシクレゾールノボラック樹脂および標準的なフェノールノボラック硬化剤と一緒に、難燃剤であるメラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛、ならびに場合により酸化亜鉛および/または水酸化マグネシウムを含むものとした。以下に示す重量%(wt.%)は、組成物の総重量を基準として計算したものである。
【0067】
【表3】

【0068】
この成形用組成物試料8〜13をそれぞれ硬化させた後、実施例1と同様にして、燃焼性、ゲル化時間、およびスパイラルフローについて試験を行った。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
表4の結果から、難燃剤配合物として、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、および場合により水酸化マグネシウムを用いて調製された成形用組成物の難燃性が向上することが示される。
【0071】
本発明を、その特定の実施形態の具体的な詳細を参照しながら説明してきた。このような詳細は、添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除いて、本発明の範囲を制限するものとみなされることを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
加熱時に水を遊離することのできる1種または複数の金属塩水和物と
を含む難燃性成形用組成物。
【請求項2】
前記金属塩水和物が、金属ホウ酸塩、第IIB族の酸化物、ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物から選択される1種または複数の化合物を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項3】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含み、前記第IIB族の酸化物が酸化亜鉛を含み、かつ前記多価水酸化物がAl(OH)およびMg(OH)の一方または両方を含む、請求項2に記載の成形用組成物。
【請求項4】
フェノールノボラック硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項5】
前記成形用組成物がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項6】
前記成形用組成物がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む、請求項5に記載の成形用組成物。
【請求項7】
前記金属塩水和物が100℃を超えて加熱されると水を遊離する、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項8】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
1種または複数の金属ホウ酸塩と、
第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の1種または複数の多価水酸化物、1種または複数の第IIB族の酸化物、ならびにこれらの混合物から選択される化合物と
を含む難燃性成形用組成物。
【請求項9】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含む、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項10】
前記多価水酸化物が、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムの1種または複数を含む金属多価水酸化物であり、かつ前記第IIB族の酸化物が酸化亜鉛を含む、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項11】
前記メラミンシアヌレートが前記成形用組成物の約0.1〜約3.5重量%の量で存在し、前記金属ホウ酸塩が前記成形用組成物の約0.1〜約2重量%の量で存在し、前記多価水酸化物が前記成形用組成物の約0.1〜約1重量%の量で存在し、かつ前記第IIB族の酸化物が前記成形用組成物の約0.01〜1重量%の量で存在する、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項12】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含み、前記多価水酸化物が酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含み、かつ前記第IIB族の酸化物が酸化亜鉛を含む、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項13】
フェノールノボラック硬化剤をさらに含む、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項14】
前記フェノールノボラック硬化剤の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約1.5重量%〜約10重量%の範囲にある、請求項13に記載の成形用組成物。
【請求項15】
前記成形用組成物がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項16】
前記成形用組成物がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む、請求項15に記載の成形用組成物。
【請求項17】
前記エポキシ樹脂の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約4重量%〜約12重量%の範囲にある、請求項8に記載の成形用組成物。
【請求項18】
前記エポキシ樹脂の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約5.5重量%〜約8.5重量%の範囲にある、請求項17に記載の成形用組成物。
【請求項19】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、エポキシ樹脂と、メラミンシアヌレートと、ホウ酸亜鉛と、酸化亜鉛ならびに酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物から選択される化合物とを含む難燃性成形用組成物。
【請求項20】
前記メラミンシアヌレートが前記成形用組成物の約0.1〜約3.5重量%の量で存在し、ホウ酸亜鉛が前記成形用組成物の約0.1〜約2重量%の量で存在し、酸化亜鉛が前記成形用組成物の約0〜約1重量%の量で存在し、かつ前記金属多価水酸化物が前記成形用組成物の約0〜約1重量%の量で存在する、請求項19に記載の成形用組成物。
【請求項21】
フェノールノボラック硬化剤をさらに含む、請求項19に記載の成形用組成物。
【請求項22】
前記フェノールノボラック硬化剤の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約1.5重量%〜約10重量%の範囲にある、請求項21に記載の成形用組成物。
【請求項23】
前記成形用組成物がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む、請求項19に記載の成形用組成物。
【請求項24】
前記成形用組成物がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む、請求項23に記載の成形用組成物。
【請求項25】
前記エポキシ樹脂の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約4重量%〜約12重量%の範囲にある、請求項19に記載の成形用組成物。
【請求項26】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂を約4重量%〜約12重量%と、
メラミンシアヌレートを約0.1重量%〜約3.5重量%と、
ホウ酸亜鉛を約0.1重量%〜約2重量%と、
酸化亜鉛ならびに酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物の1種または複数から選択される化合物を約0.01重量%〜約1重量%と、
フェノールノボラック硬化剤を約0.001重量%〜約10重量%と、
1種または複数の溶剤を約0重量%〜約90重量%と、
着色剤、離型剤、カップリング剤、触媒、イオン捕捉剤、金属酸化物、金属水酸化物、顔料、接着促進剤、高靭性化剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤からなる群から選択される1種または複数の添加剤をそれぞれ約0.1重量%〜約10重量%と
から本質的に構成される難燃性成形用組成物。
【請求項27】
前記エポキシ樹脂がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む、請求項26に記載の成形用組成物。
【請求項28】
前記エポキシ樹脂がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む、請求項27に記載の成形用組成物。
【請求項29】
前記成形用組成物が硬化してデバイスの表面に重合体を形成するのに十分な温度に前記成形用組成物を加熱することを含む、電気または電子デバイスを被覆する方法であって、前記組成物が、ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
1種または複数の金属ホウ酸塩と、
酸化亜鉛ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の1種または複数の多価水酸化物から選択される化合物と
を含む方法。
【請求項30】
前記温度が約165℃〜約195℃の範囲にある、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記メラミンシアヌレートが、前記成形用組成物中に、前記成形用組成物の約0.1〜約3.5重量%存在し、前記金属ホウ酸塩が前記成形用組成物の約0.1〜約2重量%存在し、かつ酸化亜鉛および1種または複数の多価水酸化物から選択される前記化合物が前記成形用組成物の約0.01〜約1重量%存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含み、かつ前記多価水酸化物が酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記成形用組成物がフェノールノボラック硬化剤をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記フェノールノボラック硬化剤の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約1.5重量%〜約10重量%の範囲にある、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記成形用組成物がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記成形用組成物がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記成形用組成物中における前記エポキシ樹脂の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約4重量%〜約12重量%の範囲にある、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記成形用組成物中における前記エポキシ樹脂の量が、前記成形用組成物の総重量を基準として約5.5重量%〜約8.5重量%の範囲にある、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記デバイスが電気または電子デバイスである、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記電気または電子デバイスが半導体、トランジスタ、ダイオード、または集積回路から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項29に記載の方法によって形成された電気または電子デバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
金属ホウ酸塩と、
第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の多価水酸化物、1種または複数の第IIB族の酸化物、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる化合物と
を含む難燃性成形用組成物。
【請求項2】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含む請求項1記載の成形用組成物。
【請求項3】
前記多価水酸化物が、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムの1種または複数種を含む金属多価水酸化物であり、前記第IIB族の酸化物が、酸化亜鉛を含む請求項1記載の成形用組成物。
【請求項4】
フェノールノボラック硬化剤をさらに含む請求項1記載の成形用組成物。
【請求項5】
エポキシクレゾールノボラック樹脂を含む請求項1記載の成形用組成物。
【請求項6】
ビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む請求項5記載の成形用組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
金属ホウ酸塩と、
酸化亜鉛並びに酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物からなる群より選ばれる1種または複数種の化合物と
を含有する請求項1記載の成形用組成物。
【請求項8】
ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂を約4重量%〜約12重量%と、
メラミンシアヌレートを約0.1重量%〜約3.5重量%と、
ホウ酸亜鉛を約0.1重量%〜約2重量%と、
酸化亜鉛ならびに酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物の1種または複数から選択される化合物を約0.01重量%〜約1重量%と、
フェノールノボラック硬化剤を約0.001重量%〜約10重量%と、
1種または複数の溶剤を約0重量%〜約90重量%と、
着色剤、離型剤、カップリング剤、触媒、イオン捕捉剤、金属酸化物、金属水酸化物、顔料、接着促進剤、高靭性化剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤からなる群から選択される添加剤の1種または複数を約0.1重量%〜約10重量%と
から本質的になる難燃性成形用組成物。
【請求項9】
前記成形用組成物が硬化してデバイスの表面に重合体を形成するのに十分な温度に前記成形用組成物を加熱することを含む、電気または電子デバイスを被覆する方法であって、前記組成物が、ハロゲン、リン、およびアンチモンの元素を実質的に含まず、
エポキシ樹脂と、
メラミンシアヌレートと、
1種または複数の金属ホウ酸塩と、
酸化亜鉛ならびに第IIA族元素および第IIIB族元素から選択される1種または複数の元素の1種または複数の多価水酸化物から選択される化合物と
を含む方法。
【請求項10】
前記温度が約165℃〜約195℃の範囲にある請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記金属ホウ酸塩がホウ酸亜鉛を含み、そして前記多価水酸化物が酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む金属多価水酸化物である請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記成形用組成物がフェノールノボラック硬化剤をさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記成形用組成物がエポキシクレゾールノボラック樹脂を含む請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記成形用組成物がビフェニルエポキシ樹脂をさらに含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記電気または電子デバイスが半導体、トランジスタ、ダイオード、または集積回路から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項9の方法で製造された電気または電子デバイス。
【請求項17】
前記多価水酸化物が、酸化アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムの一方または両方を含む請求項1記載の成形用組成物。
【請求項18】
前記IIB族の酸化物が酸化亜鉛を含む請求項1記載の組成物。

【公表番号】特表2006−525377(P2006−525377A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571722(P2004−571722)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/038155
【国際公開番号】WO2004/099313
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】