説明

電動パーキングブレーキ制御装置、電動パーキングブレーキ装置、及び、電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法

【課題】目標張力の低下を防止すると共に、ケーブルを巻き上げるアクチュエータの小型化等の省力化が可能な電動パーキングブレーキ制御装置等を提供すること。
【解決手段】車輪の駐車ブレーキユニット35R、35Lにそれぞれ接続されたケーブル34R、34Lを巻き上げる電動PKBアクチュエータ30と、車輪のサービスブレーキによる制動圧を制御するブレーキアクチュエータ10と、を制御する電動パーキングブレーキ制御装置9において、所定の目標張力になるまでケーブルを巻き上げた後、目標張力未満に張力が低下した場合、ブレーキアクチュエータ10を制御して制動圧を所定値まで増圧する増圧制御手段9aと、増圧制御手段により増圧した後、電動PKBアクチュエータ30を制御して目標張力よりも大きい張力になるまでケーブルを巻き上げる張力増大制御手段9bと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動パーキングブレーキ装置を制御する電動パーキングブレーキ制御装置、電動パーキングブレーキ装置、及び、電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置は、走行中に車両を減速・停止するサービスブレーキ(以下、液圧ブレーキという)と停止状態を維持するための駐車ブレーキの2つの機能が要求され、部品数やコストを考慮してこの2つの機能を一体に構成するブレーキ装置が提案されている。構成をより簡略化してコスト低減を図るため駐車ブレーキを液圧ブレーキの液圧により制動することが考えられるが、駐車中に液圧が徐々に低下した場合の制動力の確保や液漏れの対策などから駐車ブレーキについてはケーブルに張力を作用させ制動部材をディスクやドラムに押圧する方式が採用されることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1記載の車両用ブレーキシステムは、液圧を維持可能な液圧ブレーキと自動的にケーブルに張力を作用させ停車状態を維持する駐車ブレーキとを有し、アクセルペダルのオフ及び車速ゼロを検知すると、液圧ブレーキの液圧を維持しながら駐車ブレーキを作用させる。かかる構成により、駐車ブレーキの作動が必要な場合にのみ駐車ブレーキを自動で作用させることができ、作動後は液圧でなく機械式に停止状態を維持することができる。
【特許文献1】特開2005−280640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動的に作動する駐車ブレーキはアクチュエータの駆動力により張力を作用させるものであるが、決定された目標張力は例えば傾斜などを考慮して決定され、アクチュエータは目標張力になるまで張力センサにより張力を検出しながらケーブルを巻き上げる。しかしながら、張力センサが検出する張力はケーブルや伝達系の摩擦による損失を含むものであるため、実際には目標張力が車輪に作用していない場合がある。この点、特許文献1記載の車両用駐車ブレーキシステムは、駐車ブレーキが作用した後、液圧ブレーキは解除してもよいししなくてもよいとしているが、解除した場合には、損失による張力不足により車両が移動するおそれがあり、液圧ブレーキを解除しない場合には液圧が徐々に低下していずれ車両が移動するおそれがある。
【0005】
このような、目標張力からの張力の低下や不足を見込んで、予め目標張力よりも高い張力を作用させることが考えられるが、そのためにはケーブルを巻き上げるアクチュエータの能力を増強することが必要となるため、コストや車載スペースの観点から好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、目標張力の低下を防止すると共に、ケーブルを巻き上げるアクチュエータの小型化等の省力化が可能な電動パーキングブレーキ制御装置、電動パーキングブレーキ装置、及び、電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、車輪の駐車ブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを巻き上げる電動PKBアクチュエータと、車輪のサービスブレーキによる制動圧を制御するブレーキアクチュエータと、を制御する電動パーキングブレーキ制御装置において、所定の目標張力になるまで前記ケーブルを巻き上げた後、目標張力未満に張力が低下した場合、ブレーキアクチュエータを制御して制動圧を所定値まで増圧する増圧制御手段と、増圧制御手段により増圧した後、電動PKBアクチュエータを制御して目標張力よりも大きい張力になるまでケーブルを巻き上げる張力増大制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、制動圧を増加させた上で増し引き制御を行うので、アクチュエータを大型化することなくケーブルの増し引きを確実に実行することができる。
【発明の効果】
【0009】
目標張力の低下を防止すると共に、ケーブルを巻き上げるアクチュエータの小型化等の省力化が可能な電動パーキングブレーキ制御装置、電動パーキングブレーキ装置、及び、電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。本実施形態の電動パーキングブレーキ装置1は、ドラムタイプ又はディスクインタイプであって電動で作動及び解除が可能である。そして、作動時又は解除時にサービスブレーキ(以下、液圧ブレーキという)の液圧を利用することで、作動又は解除に使用するアクチュエータを小型化・省力化・低騒音化することを可能にする。
【0011】
図1は、ブレーキECU(特許請求の範囲における電動パーキングブレーキ制御装置に相当する。)9により制御される電動パーキングブレーキ装置1の構成図を示す。電動パーキングブレーキ装置1は、運転者により減速時に操作される液圧ブレーキの操作部材となるブレーキペダル11と、ブレーキペダル11に加えられた踏力を液圧に変換するマスタシリンダ13と、ブレーキ液を貯留するリザーバ12と、各輪FL、RR、RL、FRのホイルシリンダ圧を独立に制御するブレーキアクチュエータ10と、後輪RR,RLのドラムに設けられた駐車ブレーキユニット35R、35Lと、駐車ブレーキユニット35R、35Lを解除又は作動する電動PKBアクチュエータ30と、を有する。
【0012】
本実施形態では、液圧ブレーキ及び駐車ブレーキユニット35R、35Lをドラムブレーキにより構成することで液圧ブレーキと駐車ブレーキを一体に構成している。一体に構成するとは、液圧ブレーキと駐車ブレーキユニット35R、35Lが同じブレーキパッド(摩擦材)を被制動部材に押圧して制動力を発生させる構成をいうものであり、後述するように液圧ブレーキ及び駐車ブレーキユニット35R、35Lをディスクブレーキにより構成してもよい。なお、液圧ブレーキは、電動式のアクチュエータにより制動トルクを生じさせるECB(Electronically Controlled Brake. System)で構成してもよい。
【0013】
マスタシリンダ13は2つの加圧室を備え、2つの加圧室の一方は左後輪RLのホイルシリンダ25と右前輪FRのホイルシリンダ26に液圧を加える油圧回路13bが接続され、他方の加圧室には右後輪RRのホイルシリンダ24と左前輪FLのホイルシリンダ23に作動流体を加える油圧回路13aが接続されている。
【0014】
油圧回路13bは、常開のマスタカット弁15b、同じく常開の保持弁17dを介して、ホイルシリンダ26と連通すると共に、常開のマスタカット弁15b、同じく常開の保持弁17cを介して、ホイルシリンダ25と連通している。保持弁17dの下流側にはホイルシリンダ26に連通する回路と分岐して常閉の減圧弁18dが接続され、保持弁17cの下流側にはホイルシリンダ25に連通する回路と分岐して常閉の減圧弁18cが接続されている。減圧弁18c、18dの下流側は共にポンプ19bの吸入側に接続され、ポンプ19bの吸入側にはリザーバ21b及び常閉の吸入弁16bを介してマスタシリンダ13と接続されている。また、ポンプ19bの吐出側は、マスタカット弁15bの下流側に接続されている。油圧回路13aにはマスタシリンダ13の圧力を検出するM/Cセンサ14が接続されているが、それ以外の構造は油圧回路13bと同一である。
【0015】
運転者がブレーキペダル11を踏み込むとリザーバタンク13の作動流体が圧縮され、踏力に応じた液圧が常開のマスタカット弁15a、15b、保持弁17a〜dを介してホイルシリンダ23〜26に加えられる。
【0016】
また、運転者がブレーキペダル11を操作しない場合であっても、ブレーキECU9がブレーキアクチュエータ10を制御することで、油圧回路を増圧・保持・減圧の3つのモードに切り替えホイルシリンダ23〜26のホイルシリンダ圧を制御する。例えば、ホイルシリンダ26を増圧する場合、ブレーキECU9は、マスタカット弁15bを閉弁すると共に、保持弁17dを開弁状態、減圧弁18dを閉弁状態のままとする。これによりポンプ19bの発生する液圧によりホイルシリンダ26のホイルシリンダ圧が増圧される。ホイルシリンダ圧を保持する場合、ブレーキECU9は減圧弁18dを閉弁状態のまま保持弁17dを閉弁することで、ホイルシリンダ26に連通する回路が閉塞されホイルシリンダ圧が保持される。ホイルシリンダ圧を減圧する場合、ブレーキECU9は、保持弁17dを閉弁状態のまま減圧弁18dを開弁することで、ホイルシリンダ26とリザーバ21bが連通するためホイルシリンダ圧が減圧される。他のホイルシリンダ23〜25のホイルシリンダ圧も同様に制御される。なお、吸入弁16a、16bはリザーバ21a、21bの作動流体が少なくなった場合に開弁して、マスタシリンダ13からポンプ19a、19bへの作動流体の流通をオン/オフする。
【0017】
以上のような構成から、ブレーキECU9はブレーキアクチュエータ10を制御することで、車輪毎に液圧を独立に制御することができる。
【0018】
後輪RR、RLに設けられた駐車ブレーキユニット35R、35Lについて説明する。図2は、駐車ブレーキユニット35Rの平面図を示すが、駐車ブレーキユニット35Lについても同様である。
【0019】
駐車ブレーキユニット35Rは、車輪と一体的に回転する被制動部材であるドラム101と、車体側部材であるバッキングプレート102に回転不能に保持されるとともにドラム101に対して所定のクリアランスを有する制動部材としてのブレーキシュー103a、103b及びライニング材104a、104b(以下、これらを単にブレーキシュー103a、103bという)とを有し、ホイルシリンダ24の加圧又は電動PKBアクチュエータ30の作動によりブレーキシュー103a、103bがドラム101の内周面に押圧され車輪の回転を抑制する制動トルクを発生するようになっている。
【0020】
一対のブレーキシュー103a,103bは、それぞれ互いに対向する一端部(図では上側)においてそれぞれホイルシリンダ24の両端に接続されていて、ホイルシリンダ24の加圧により開拡する。また、一対のブレーキシュー103a,103bの他端は、バッキングプレート102に固定されたアンカピン108に係合することによって、制動時にブレーキシュー103a、103bの摩擦力によりドラム101と共に回転することを防止され、制動トルクを生じさせる。
【0021】
一対のブレーキシュー103a,103bは、リターンスプリング105、106により互いに接近する向きに付勢されているため、ホイルシリンダ24へ作動流体の供給が停止されると、この付勢力によりライニング材104a、104bがドラム101の内周面から離間する。
【0022】
また、一対のブレーキシュー103a、103bのアンカピン108側にはアジャスタ107が介設されていて、ブレーキライニング104a,104bの摩耗に応じてドラム101との隙間を調整できるようになっている。
【0023】
一方のブレーキシュー103aのアンカピン108側の一端に、ピン109により駐車レバー110が揺動可能に回動支持されている。駐車レバー110とブレーキシュー103bとはストラット111により介設されていて、ストラット111は互いに離間するよう付勢するスプリング111aを備える。また、駐車レバー110の他端はケーブル34Rが接続されていて、このケーブル34Rが電動PKBアクチュエータ30に連結される。したがって、電動PKBアクチュエータ30がケーブル34Rを巻き上げると駐車レバー110がピン109を中心に揺動し、ストラット111を介してブレーキシュー103bをドラム101に押圧すると共に、その反力によりブレーキシュー103aがドラム101に押圧される。この摩擦力により制動トルクを生じさせる。
【0024】
電動PKBアクチュエータ30について説明する。電動PKBアクチュエータ30は電気モータ31の回転軸と同軸に回転するウォームホイール36がウォームギア37と嵌合し、電気モータ31の回転駆動力がウォームギア37に伝達される。ウォームギア37には勘合するナット部材が設けられ、ウォームギア37の回転駆動力がナット部材の直線駆動力に変換される。この直線駆動力はナット部材に2本のケーブルによって連結されたイコライザ機構38により二つのケーブル34R、34Lに均等に分配される。ケーブル34R、34Lはそれぞれ左右後輪RR、RLのブレーキレバー110に接続されると共に、ケーブル34Lにはケーブル34Lの張力を検出する張力センサ33が配置されている。
【0025】
電気モータ31を正回転駆動すると、イコライザ機構38が直線駆動力を二つのケーブル34R、34Lに分配しながら電気モータ31側の方に移動するため、ケーブル34R、34Lに張力が生じ、ブレーキシューがドラムに押圧されて駐車ブレーキユニット35Rが制動状態となる。また、電気モータ31を逆回転駆動すると、イコライザ機構38が張力を二つのケーブル34R、34Lに分配しながら電気モータ31と反対側の方に移動するため、ケーブル34R、34Lの張力が低減し駐車ブレーキユニット35R、35Lは解除状態となる。
【0026】
駐車する場合、ブレーキECU9は車両が停車している路面の傾斜、シフトポジション等に基づき駐車するために必要な目標張力を演算し、目標張力になるまで電気モータ31を回転駆動する。なお、液圧ブレーキ及び駐車ブレーキユニット35R、35Lは、図2のようなドラムブレーキでなくディスクブレーキであってもよい。
【0027】
以上のような構成の液圧ブレーキ及び駐車ブレーキユニット35R、35Lは、CPU、RAM、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、入出力インターフェイス、他のECUと通信する通信コントローラ、及び、ROM等がバスにより接続されたマイコンを本体とするブレーキECU9により制御される。CPUがプログラムを実行することで、増圧制御手段9a、ケーブル34R,34Lの目標張力をかさ上げして巻き上げる張力増大制御手段9b、駐車ブレーキユニット35R、35Lの異常を検出し運転者に報知する異常検出手段9cが実現される。
【0028】
ブレーキECU9には、張力センサ33が検出する張力、各輪FL、RR、RL、FRの車輪速、各輪のホイルシリンダ圧、マスタシリンダ圧、シフトポジション、アクセルペダルストローク(アクセル開度)、前後方向(ピッチング方向)の車両の傾斜、の各信号が入力される。
【0029】
ブレーキECU9に接続されたスイッチ8は、電動パーキングブレーキ装置1の制動状態と解除状態を切り替える操作部材である。電動パーキングブレーキ装置1は、自動的に作動及び解除する自動モードとスイッチ8の操作により作動及び解除するマニュアルモードとが設定により選択可能となっている。自動モードでは、例えば、シフトポジションが指示するシフトレバーの位置がP(パーキング)又はN(ニュートラル)であり、かつ、車速がゼロである場合にブレーキECU9は電動パーキングブレーキ装置1が作動状態とする。さらに、マスタシリンダ圧が所定値以上であることを条件としてもよい。
【0030】
なお、ブレーキECU9は電動パーキングブレーキ装置1の作動又は解除に応じた信号をメータECUに送信するので、メータECUは電動パーキングブレーキ装置1の作動又は解除の状態をコンビネーションメータの対応するランプを点灯して運転者に知らせる。
【0031】
ケーブル34R、34Lや伝達系の摩擦による張力の損失について説明する。図3は液圧ブレーキ及び駐車ブレーキをディスクブレーキにより構成した場合の張力発生モデルの一例を示す。
【0032】
ディスクブレーキは、ブレーキパッド41を車輪と一体に回転するディスクロータに押圧して制動する制動装置の一形態である。運転者がブレーキペダル11を踏み込むと図1と同様の油圧回路により作動流体がブレーキピストン42を移動させ、ブレーキピストン42と接合したブレーキパッド41、及びブレーキパッド41と一対のブレーキパッドがディスクロータを狭持して、車輪を制動する。
【0033】
また、ブレーキピストン42のブレーキパッド41と反対側の底面には、ピン43aにより回動可能に軸支されたPKBレバー43の一端が当接すると共に、PKBレバー43の他端はケーブル34Rが接続されている。駐車ブレーキが作動する場合、張力Tによりケーブル34Rの荷重中心が張力Tの方向に移動するので、PKBレバー43がピン43aを中心に時計回りに回動しPKBレバー43の一端がブレーキピストン42を移動させる。これにより、液圧ブレーキと同様にブレーキピストン42と接合したブレーキパッド41、及びブレーキパッド41と一対のブレーキパッドがディスクロータを狭持して、車輪を制動する。
【0034】
なお、このとき張力センサ33が検出する張力Tに対し、PKBレバー43に作用する張力はT1となり、T>T1の関係がある。これは、ケーブル34Rや伝達系の摩擦により張力Tに対し摩擦力F1の損失が発生するためである。したがって、T=T1+F1が成立する。
【0035】
この摩擦力F1は見かけの張力Tの低下をもたらすため、電気モータ31により所望の制動力を得ようとすると損失分を見込んで高めの張力Tを目標張力とする必要が生じ、電気モータ31の大型化、高トルク化、騒音の増大を招くという課題を生じさせる。
【0036】
また、液圧ブレーキと駐車ブレーキが一体に構成された電動パーキングブレーキ装置1ではさらに次のような課題がある。図3(b)は張力Tによりすでに駐車ブレーキが作動状態の場合にさらに液圧ブレーキが作動した様子を示す。駐車ブレーキが作動状態の場合に液圧が付加されるとさらにブレーキピストン42がディスクロータの方向に移動するのでPKBレバー43がさらに回転し、この結果、張力T1はT1’に低下する。張力T1が低下すると、ケーブル34Rの荷重中心はPKBレバー43の方向に移動するが、ケーブル34Rの荷重中心には摩擦力F1が作用しているためヒステレシスが発生し、張力T1→T1’の低下分ほどには荷重中心は移動しない。したがって、張力センサ33の検出する張力Tの低下分よりもPKBレバー43に作用する張力T1’は低下していることになる。特に、液圧ブレーキの付加により低下した摩擦力F1’が十分に大きい場合には、荷重中心が移動せず張力センサ33では張力Tの変化を検出することができない。ブレーキECU9が張力の低下を正確に検出しない場合、運転者がブレーキペダル11の踏み込みを止めると低下した張力T1’では十分な制動力が得られず傾斜面などで車両が移動するおそれがある。
【0037】
本実施形態の電動パーキングブレーキ装置1はかかる課題を電動PKBアクチュエータ30を大型化することなく解決する。以下、実施例を挙げて説明する。なお、以下では、ドラムブレーキ型の電動パーキングブレーキ装置1をマニュアルモードで作動させるものとする。
【実施例1】
【0038】
図4(a)は、スイッチ8のオン信号、電気モータ31のオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図を、図4(b)はブレーキECU9がホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図をそれぞれ示す。
【0039】
(S1)
ブレーキECU9はスイッチ8がオンか否かを判定して、スイッチ8がオンに操作されるとオン信号を検出する。
【0040】
(S2)
増圧制御手段9aはスイッチ8のオンを検出すると、ブレーキアクチュエータ10を制御して後輪RR、RLのホイルシリンダ圧を目標値まで増圧する。
【0041】
(S3)
ホイルシリンダ圧が目標値に達すると、張力増大制御手段9bは電気モータ31を駆動して目標張力になるまでケーブル34R、34Lを巻き上げる。
【0042】
(S4)
目標張力に達すると張力増大制御手段9bは電気モータ31を停止する。
【0043】
(S5)
そして、電気モータ31を停止しても、張力センサ33により検出される張力の変化が所定内に治まれば、後輪のホイルシリンダ圧を減圧する。なお、ホイルシリンダ圧の減圧後に再度張力を検出し、張力が所定値以上低下している場合、電気モータ31を駆動してもよい。
【0044】
本実施例によれば、電気モータ31を駆動する前にホイルシリンダ圧を増圧するので、電気モータ31のみで駐車ブレーキユニット35R、35Lを制動状態にする場合よりも電気モータ31の小型化、省力化、低騒音化が可能になる。
【実施例2】
【0045】
本実施例では、ホイルシリンダ圧の目標値を実際に運転者が操作したホイルシリンダ圧とすることで、さらに電気モータ31の負荷を低減する電動パーキングブレーキ装置1について説明する。
【0046】
図5(a)は、スイッチ8のオン信号、電気モータ31のオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図を、図5(b)はブレーキECU9がホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図をそれぞれ示す。なお、図5(b)において図4(b)と同一ステップには同一の符号を付した。図5(b)では、ステップS12のみが異なるのでS12について詳述する。
【0047】
(S12)
スイッチ8のオンを検出すると、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して後輪RR、RLのホイルシリンダ圧をそれまでのホイルシリンダ圧の最高値まで増圧する。「それまで」とは、例えば、エンジン始動からスイッチ8がオンされるまでや、過去の所定時間内など、ホイルシリンダ圧の最高値を検出するために十分な期間である。また、前回、駐車ブレーキユニット35R、35Lを作動状態にする場合に運転者がブレーキペダル11を操作して検出されたホイルシリンダ圧を目標値としてもよい。このような、ホイルシリンダ圧(図4(a)の目標ホイルシリンダ圧よりも大きい)を目標値とすることで、確実に車両を制動することができる。
【0048】
本実施例によれば、スイッチ8をオンしてからケーブル34R、34Lに目標張力が作用するまでの応答遅れを液圧ブレーキにより確保することができ、さらに、電気モータ31は液圧ブレーキによりたるんだ状態のケーブル34R、34Lを巻き上げればよいので実施例1と比較してもさらに電気モータ31の小型化、省力化、低騒音化が可能になる。
【実施例3】
【0049】
本実施例では、スイッチ8がオンに操作された時にすでに液圧ブレーキが制動状態である場合は、そのホイルシリンダ圧を目標値にして駐車ブレーキユニット35R、35Lを制動状態にする電動パーキングブレーキ装置1について説明する。
【0050】
図6(a)は、スイッチ8のオン信号、電気モータ31のオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図を、図6(b)はブレーキECU9がホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図をそれぞれ示す。
【0051】
(S21)
ブレーキECU9はスイッチ8がオンか否かを判定して、スイッチ8がオンに操作されるとオン信号を検出する。
【0052】
(S22)
オン信号を検出するとブレーキECU9は液圧ブレーキが制動状態か否かを判定する。液圧ブレーキが制動状態か否かは、例えばホイルシリンダ圧又はマスタシリンダ圧が所定値以上か否か、又は、ブレーキペダル11の踏み込み量等に基づき判定する。
【0053】
なお、液圧ブレーキが制動状態でなければ(S22のNo)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を目標値まで増圧するが(S27)、この場合の処理は実施例1又は2と同様になる。
【0054】
(S23)
液圧ブレーキが制動状態の場合(S22のYes)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を保持する。すなわち、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して(減圧弁18b、18cを閉弁状態のまま保持弁17b、17cを閉弁)ホイルシリンダ圧をそのまま保持する。
【0055】
(S24)
ついで、張力増大制御手段9bは電気モータ31を駆動して目標張力になるまでケーブル34R、34Lを巻き上げる。
【0056】
(S25)
目標張力に達すると張力増大制御手段9bは電気モータ31を停止する。
【0057】
(S40)
そして、電気モータ31を停止しても、張力センサ33により検出される張力の変化が所定内に治まれば、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を減圧する。ホイルシリンダ圧の減圧後に再度張力を検出し、張力が所定値以上低下している場合、電気モータ31を駆動してもよい。これにより、ホイルシリンダ圧による制動を張力による制動に置き換えたことになる。
【0058】
なお、ステップS40のホイルシリンダ圧の減圧は、運転者がブレーキペダル11を操作していても実行される。また、ホイルシリンダ圧を減圧する車輪は駐車ブレーキユニット35R、35Lを備える後輪のみである。したがって、運転者がブレーキペダル11を踏み込んでいる場合は、前輪FR、FLは液圧ブレーキにより制動され後輪RR、RLは駐車ブレーキユニット35R、35Lにより制動される。運転者がブレーキペダル11を踏み込んでいない場合は、前輪FR、FLは制動されず後輪RR、RLは駐車ブレーキユニット35R、35Lにより制動される。
【0059】
本実施例によれば、後輪RR、RLの制動を張力に置き換えるので、ECBのように制動に常に電力が必要なシステムや、ESC(Electronic Stability Control)のように制動力の保持にさえ電力が必要なシステムにおいて消費電力を低減することができる。
【実施例4】
【0060】
本実施例では、電気モータ31を駆動して目標張力に達した後、張力センサ33が張力の低下を検出した場合に、ホイルシリンダ圧を増圧すると共に、再度、電気モータ31を駆動してケーブル34R、34Lを巻き上げる電動パーキングブレーキ装置1について説明する。
【0061】
図7は、スイッチ8のオン信号、電気モータ31のオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図を、図8はブレーキECU9がホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図をそれぞれ示す。なお、図8において図6(b)と同一ステップには同一の符号を付した。
【0062】
(S21)
ブレーキECU9はスイッチ8がオンか否かを判定して、スイッチ8がオンに操作されるとオン信号を検出する。
【0063】
(S22)
オン信号を検出するとブレーキECU9は液圧ブレーキが制動状態か否かを判定する。液圧ブレーキが制動状態か否かは、例えばホイルシリンダ圧又はマスタシリンダ圧が所定値以上か否か、又は、ブレーキペダル11の踏み込み量等に基づき判定する。図7は液圧ブレーキが制動状態の場合を示すが、液圧ブレーキが制動状態でなければ(S22のNo)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を目標値まで増圧する。
【0064】
(S23)
液圧ブレーキが制動状態の場合(S22のYes)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を保持する。すなわち、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して(減圧弁18b、18cを閉弁状態のまま保持弁17b、17cを閉弁)ホイルシリンダ圧をそのまま保持する。
【0065】
(S24)
ついで、張力増大制御手段9bは電気モータ31を駆動して目標張力になるまでケーブル34R、34Lを巻き上げる。なお、ホイルシリンダ圧の保持はほとんど時間がかからないので、ステップS22の判定からS24の巻き上げ開始まではほとんど時間経過なく実行される。
【0066】
(S25)
目標張力に達すると張力増大制御手段9bは電気モータ31を停止する。
【0067】
(S31)
張力増大制御手段9bは張力を監視して、張力が低下したか否かを判定する。上述したように、液圧ブレーキを付加するとPKBレバー43が低下して張力が低下するため、増圧制御手段9aは液圧ブレーキの付加による張力の低下を検出する。
【0068】
(S32)
張力が低下した場合(S31のYes)、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して所定値までホイルシリンダ圧をかさ上げする。すなわち、増圧制御手段9aは、マスタカット弁15a、15bを閉弁し、保持弁17b、17cを開弁状態、減圧弁18b、18cを閉弁状態のままとする。するとポンプ19a、19bの発生する液圧によりホイルシリンダ24、25のホイルシリンダ圧が増圧される。増圧は張力の低下に対し実行されるので、増圧されるホイルシリンダは後輪のみでよい。かさ上げ後のホイルシリンダ圧は、例えば10〜50%などかさ上げ前のホイルシリンダ圧を目標としてもよいし、それまでのホイルシリンダ圧の最高値としてもよい。
【0069】
(S33)
所定値までホイルシリンダ圧がかさ上げされると、張力増大制御手段9bは、再度、電気モータ31を駆動して目標張力をかさ上げする。すなわち、ステップS24でケーブル34R、34Lを巻き上げた際の目標張力よりも高い張力でケーブル34R、34Lを巻き上げる。張力の低下が検出されたステップS24の目標張力よりも高い張力でケーブル34R、34Lを巻き上げるので張力の低下を防止することができる。
【0070】
(S40)
そして、電気モータ31を停止しても、張力センサ33により検出される張力の変化が所定内に治まれば、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を減圧する。以上により、ホイルシリンダ圧による制動を張力による制動に置き換えたことになる。
【0071】
本実施例によれば、目標張力をかさ上げすることで張力の低下を防止でき、また、張力が低下した場合にはかさ上げすることができるので当初(ここではステップS24)の目標張力を過度に大きく設定する必要がなく、電気モータ31のモータ定格負荷の低減や作動音を抑制することができる。
【実施例5】
【0072】
本実施例では、実施例4の制御を各輪毎に行う。
【0073】
電動パーキングブレーキ装置1のタイミングチャート図は図7と、フローチャート図は図8とそれぞれ同じであるので図は省略した。
【0074】
(S21)
ブレーキECU9はスイッチ8がオンか否かを判定して、スイッチ8がオンに操作されるとオン信号を検出する。
【0075】
(S22)
オン信号を検出するとブレーキECU9は液圧ブレーキが制動状態か否かを判定する。液圧ブレーキが制動状態か否か、例えばホイルシリンダ圧又はマスタシリンダ圧が所定値以上か否か、ブレーキペダル11の踏み込み量等に基づき判定する。図7(a)は液圧ブレーキが制動状態の場合を示すが、液圧ブレーキが制動状態でなければ(S22のNo)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を目標値まで増圧する。
【0076】
(S23)
液圧ブレーキが制動状態の場合(S22のYes)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を保持する。すなわち、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して(減圧弁18b、18cを閉弁状態のまま保持弁17b、17cを閉弁)ホイルシリンダ圧をそのまま保持する。
【0077】
(S24)
ついで、張力増大制御手段9bは電気モータ31を駆動して目標張力になるまでケーブル34R、34Lを巻き上げる。なお、ホイルシリンダ圧の保持はほとんど時間がかからないので、ステップS22の判定からS24の巻き上げ開始まではほとんど時間経過なく実行される。
【0078】
(S25)
目標張力に達するとブレーキECU9は電気モータ31を停止する。
【0079】
(S31)
張力増大制御手段9bは張力を監視して、張力が低下したか否かを判定する。上述したように、液圧ブレーキを付加するとPKBレバー43が低下して張力が低下するため、増圧制御手段9aは液圧ブレーキの付加による張力を検出する。
【0080】
(S32)
張力が低下した場合(S31のYes)、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して必要輪のホイルシリンダ圧を所定値までかさ上げする。「必要輪」とは、例えば、より張力の低下しやすい後輪RR、RLの一方である。ケーブル34R、34Lや伝達系の摩擦力F1は一定の傾向を示すものであるため、例えば予め検出しておいた摩擦力F1の大きい方の後輪が必要輪となる。また、張力センサ33がケーブル34R、34Lにそれぞれ配置されている場合は、張力センサ33が検出する張力に基づき後輪RR、RLの一方又は両方を選択する。
【0081】
増圧制御手段9aは、ブレーキアクチュエータ10を制御して選択した後輪のホイルシリンダ圧をかさ上げする。
【0082】
(S33)
所定値までホイルシリンダ圧がかさ上げされると、張力増大制御手段9bは、再度、電気モータ31を駆動して目標張力をかさ上げする。ホイルシリンダ圧がかさ上げされた後輪はかさ上げされない後輪よりも張力が低下しているが、電動PKBアクチュエータ30はケーブル34R、34Lの張力を均等に分配しながら巻き上げるため、ホイルシリンダ圧がかさ上げされた後輪はケーブル34R、34Lの巻き上げ量がより多くなり結果的にいずれの後輪も、ステップS24でケーブル34R、34Lを巻き上げた際の目標張力よりも高い張力で巻き上げられる。
【0083】
(S40)
そして、電気モータ31を停止しても、張力センサ33により検出される張力の変化が所定内に治まれば、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を減圧する。以上により、ホイルシリンダ圧による制動を張力による制動に置き換えたことになる。
【0084】
本実施例によれば、実施例4の効果に加え、不要な車輪のホイルシリンダ圧はかさ上げしないので、省力化・低騒音化することができる。
【実施例6】
【0085】
本実施例では、張力低下が検出された場合、実施例4,5と同様にホイルシリンダ圧及び目標張力をかさ上げするが、継続して張力の低下が検出される場合には異常判定を行い、異常と判定された場合その旨を運転者に報知する電動パーキングブレーキ装置1について説明する。
【0086】
図9は、スイッチ8のオン信号、電気モータ31のオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図を、図10はブレーキECU9がホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図をそれぞれ示す。なお、図10において図8(b)と同一ステップには同一の符号を付した。
【0087】
(S21)
ブレーキECU9はスイッチ8がオンか否かを判定して、スイッチ8がオンに操作されるとオン信号を検出する。
【0088】
(S22)
オン信号を検出するとブレーキECU9は液圧ブレーキが制動状態か否かを判定する。液圧ブレーキが制動状態か否か、例えばホイルシリンダ圧又はマスタシリンダ圧が所定値以上か否か、ブレーキペダル11の踏み込み量等に基づき判定する。図7(a)は液圧ブレーキが制動状態の場合を示すが、液圧ブレーキが制動状態でなければ(S22のNo)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を目標値まで増圧する。
【0089】
(S23)
液圧ブレーキが制動状態の場合(S22のYes)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を保持する。すなわち、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御して(減圧弁18b、18cを閉弁状態のまま保持弁17b、17cを閉弁)ホイルシリンダ圧をそのまま保持する。
【0090】
(S24)
ついで、張力増大制御手段9bは電気モータ31を駆動して目標張力になるまでケーブル34R、34Lを巻き上げる。なお、ホイルシリンダ圧の保持はほとんど時間がかからないので、ステップS22の判定からS24の巻き上げ開始まではほとんど時間経過なく実行される。
【0091】
(S25)
目標張力に達すると張力増大制御手段9bは電気モータ31を停止する。
【0092】
(S31)
張力増大制御手段9bは張力を監視して、張力が低下したか否かを判定する。上述したように、液圧ブレーキを付加するとPKBレバー43が低下して張力が低下するため、増圧制御手段9aは液圧ブレーキの付加による張力を検出する。
【0093】
(S32)
張力が低下した場合(S31のYes)、増圧制御手段9aはブレーキアクチュエータ10を制御してホイルシリンダ圧を所定値までかさ上げする。すなわち、増圧制御手段9aは、マスタカット弁15a、15bを閉弁し、保持弁17b、17cを開弁状態、減圧弁18b、18cを閉弁状態のままとする、するとポンプ19a、19bの発生する液圧によりホイルシリンダ24、25のホイルシリンダ圧が増圧される。増圧は張力の低下に対し実行されるので、増圧されるホイルシリンダは後輪のみでよいし、後輪RR、RLの一方のみでもよい。
【0094】
(S33)
所定値までホイルシリンダ圧がかさ上げされると、張力増大制御手段9bは、再度、電気モータ31を駆動して目標張力をかさ上げする。すなわち、ステップS24でケーブル34R、34Lを巻き上げた際の目標張力よりも高い張力でケーブル34R、34Lを巻き上げる。張力の低下が検出されたステップS24の目標張力よりも高い張力でケーブル34R、34Lを巻き上げるので張力の低下を防止することができる。
【0095】
(S34)
ついで、張力増大制御手段9bは張力の低下が継続的かつ連続して発生しているか否かを判定する。継続的か否かは、例えば一定期間内に所定回数以上であるか否かにより、また、連続しているか否かは、例えば駐車ブレーキを作動させる場合に常に起こるか否かにより判定する。
【0096】
張力の低下が継続的かつ連続していない場合、張力増大制御手段9bはステップS31に戻り、再度、張力が低下したか否かを判定を繰り返すので、張力の低下が継続的かつ連続して発生するか否かを判定することができる。
【0097】
(S35)
張力の低下が継続的かつ連続して発生している場合(S34のYes)、異常検出手段9cは駐車ブレーキユニット35R、35Lの異常判定を実行する(S35)。異常判定は、例えば車両出荷時の電気モータ31の駆動時間と張力Tの関係、及び、駆動時間とイコライザ機構38の変位量などが現在と異なっているか否か等に基づき判定する。これらの関係は、ケーブル34R、34Lが完全に切断したり切れかけたり、引っかかってロックしたような場合に大きく変動するものであるため、これらの関係により異常判定することができる。
【0098】
(S36)
異常であると判定された場合(S35のYes)、異常検出手段9cは駐車ブレーキユニット35R、35Lに異常が生じていることを運転者に報知する。報知は、例えば、コンビネーションメータのランプを点灯することで行う。
【0099】
(S40)
張力が低下しない場合(S31のNo)、増圧制御手段9aは後輪のホイルシリンダ圧を減圧する。以上により、ホイルシリンダ圧による制動を張力による制動に置き換えたことになる。
【0100】
本実施例によれば、張力の低下を検出することで、電動パーキングブレーキ装置1の以上(劣化)を検出し、運転者に報知することができる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態のブレーキECU9によれば、駐車中に目標張力が低下することを防止すると共に、ケーブル34R、34Lを巻き上げるアクチュエータの小型化・省力化・低騒音化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】ブレーキECUにより制御される電動パーキングブレーキ装置の構成図である。
【図2】駐車ブレーキユニットの平面図である。
【図3】液圧ブレーキ及び駐車ブレーキによりディスクブレーキを構成した場合の張力発生モデルの一例を示す図である。
【図4】スイッチのオン信号、電気モータのオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図である(実施例1)。
【図5】スイッチのオン信号、電気モータのオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図である(実施例2)。
【図6】スイッチのオン信号、電気モータのオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図である(実施例3)。
【図7】スイッチのオン信号、電気モータのオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図である(実施例4)。
【図8】ブレーキECUがホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図である。
【図9】スイッチのオン信号、電気モータのオン信号、ホイルシリンダ圧及び張力センサ出力のタイミングチャート図である(実施例6)。
【図10】ブレーキECUがホイルシリンダ圧及び張力を制御する手順のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0103】
1 電動パーキングブレーキ装置
8 スイッチ
9 ブレーキECU
9a 増圧制御手段
9b 張力増大制御手段
9c 異常検出手段
10 ブレーキアクチュエータ
11 ブレーキペダル
23、24、25、26 ホイルシリンダ
30 電動PKBアクチュエータ
31 電気モータ
33 張力センサ
34R、34L ケーブル
35R、35L 駐車ブレーキユニット
38 イコライザ機構
41 ブレーキパッド
42 ブレーキピストン
43 PKBレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の駐車ブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを巻き上げる電動PKBアクチュエータと、前記車輪のサービスブレーキによる制動圧を制御するブレーキアクチュエータと、を制御する電動パーキングブレーキ制御装置において、
所定の目標張力になるまで前記ケーブルを巻き上げた後、前記目標張力未満に張力が低下した場合、前記ブレーキアクチュエータを制御して前記制動圧を所定値まで増圧する増圧制御手段と、
前記増圧制御手段により増圧した後、前記電動PKBアクチュエータを制御して前記目標張力よりも大きい張力になるまで前記ケーブルを巻き上げる張力増大制御手段と、
を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ制御装置。
【請求項2】
所定の目標張力になるまで前記ケーブルを巻き上げた後、前記目標張力未満に張力が低下した場合、前記駐車ブレーキユニットの異常を検出し、運転者に報知する異常検出手段を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の電動パーキングブレーキ制御装置。
【請求項3】
車輪の駐車ブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを巻き上げる電動PKBアクチュエータと、前記車輪のサービスブレーキによる制動圧を制御するブレーキアクチュエータと、有する電動パーキングブレーキ装置において、
電動パーキングブレーキ制御装置が、
所定の目標張力になるまで前記ケーブルを巻き上げた後、前記目標張力未満に張力が低下した場合、前記ブレーキアクチュエータを制御して前記制動圧を所定値まで増圧する増圧制御手段と、
前記増圧制御手段により増圧した後、前記電動PKBアクチュエータを制御して前記目標張力よりも大きい張力になるまで前記ケーブルを巻き上げる張力増大制御手段と、
を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項4】
車輪の駐車ブレーキユニットにそれぞれ接続されたケーブルを巻き上げる電動PKBアクチュエータと、前記車輪のサービスブレーキによる制動圧を制御するブレーキアクチュエータと、を制御する電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法において、
増圧制御手段が、所定の目標張力になるまで前記ケーブルを巻き上げた後、前記目標張力未満に張力が低下した場合、前記ブレーキアクチュエータを制御して前記制動圧を所定値まで増圧するステップと、
張力増大制御手段が、前記制動圧が増圧された後、前記電動PKBアクチュエータを制御して前記目標張力よりも大きい張力になるまで前記ケーブルを巻き上げるステップと、
を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ制御装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189063(P2008−189063A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23379(P2007−23379)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】