説明

電動作業車両の出力制御装置

【課題】所定の作業回数の動作を確実に実行可能な電動作業車両の出力制御装置を提供する。
【解決手段】車載バッテリ220から電源供給される電動アクチュエータ210によって駆動され周期的な作業を実行する作業装置1が搭載された電動作業車両において電動アクチュエータの出力を制御する出力制御装置240を、車載バッテリの現在の残存電力量を検出する残存電力量検出手段と、予め設定された総作業サイクル数に達するまでの予定サイクル数を算出する予定サイクル数算出手段と、残存電力量及び予定サイクル数に応じて電動アクチュエータに供給される電力を制限する電力制限手段とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動式塵芥収集車等の電動作業車両の出力制御装置に関し、特に所定の作業回数の動作を確実に実行可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の一種である塵芥収集車においては、走行用のエンジンからの動力を、パワー・テイク・オフ(PTO)機構によって抽出して油圧ポンプを駆動し、発生した油圧を用いて作業装置の油圧シリンダ等を駆動する構成が一般的であった。
また、近年は、車両の搭載されたバッテリを電源とし、インバータ制御によって電動モータを駆動して油圧ポンプを回転させる、いわゆる電動作業車両が普及しつつある。
例えば、特許文献1には、このような電動作業車両の一例が記載されている。
【0003】
このような電動作業車両においては、バッテリの電力消費が過大であった場合、予定された作業を完遂できないことが懸念される。例えば、塵芥収集車の場合には、予定された積込場所を巡回する作業ルートの途中でバッテリの残存電力量が低下すると、全ての積込を電動モータによって終了することができず、車両の運用に支障が生じる。
これに対し、特許文献2には、電源容量の増減を監視し、監視結果に基づいて予め設定された領域ごとに作業機器の出力の増減を制御するようにした作業機器の駆動制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−262759号公報
【特許文献2】特開2004−189409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載された技術においては、単にバッテリの残量に応じて電動モータのトルクを制御するのみであって、残りの積込回数は考慮されておらず、複数の積込場所を巡回して実行する積込作業全てにおいて、電動モータにより作業を完了させることを担保することはできない。
本発明の課題は、所定の作業回数の動作を確実に実行可能な電動作業車両の出力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、車載バッテリから電源供給される電動アクチュエータによって駆動され周期的な作業を実行する作業装置が搭載された電動作業車両において前記電動アクチュエータの出力を制御する出力制御装置であって、前記車載バッテリの現在の残存電力量を検出する残存電力量検出手段と、予め設定された総作業サイクル数に達するまでの予定サイクル数を算出する予定サイクル数算出手段と、前記残存電力量及び前記予定サイクル数に応じて前記電動アクチュエータに供給される電力を制限する電力制限手段とを備えることを特徴とする電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、残存電力量及び予定サイクル数に応じて電動アクチュエータに供給される電力を制限することによって、予定サイクル数の終了前に残存電力量が過度に低下して作業不能になることを防止することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記電力制限手段は、作業サイクルあたりの平均消費電力量を算出する平均値算出手段を有し、前記残存電力量を前記予定サイクル数で除した値、及び、前記平均消費電力量に基づいて前記電動アクチュエータに供給される電力を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、作業サイクルあたりの消費電力量がほぼ一定で推移する場合に、適切な制御を行なうことができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記電力制限手段は、前記車載バッテリの残存電力量と実行可能な作業サイクル数とを関連付けたデータベースを有し、前記残存電力量検出手段が検出した残存電力量に応じて前記データベースから求められる実行可能な作業サイクル数が、前記予定サイクル数を下回った場合に、前記電動アクチュエータに供給される電力を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、作業サイクルあたりの消費電力量が作業の進行とともに変化する場合であっても、このような影響を反映させた適切な出力制御を行なうことができる。
【0009】
請求項4に係る発明は、実作業における作業サイクル数と前記車載バッテリの残存電力量の推移との相関を用いて前記データベースを更新する学習手段を有することを特徴とする請求項3に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、実作業の実績を反映させたより精度の高い出力制御を実行することができる。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記総作業サイクル数をユーザが設定入力する入力手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、ユーザが任意に総作業サイクル数を設定することが可能となり、利便性が向上する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記総作業サイクル数を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、ユーザが現在設定されている総作業サイクル数を容易に確認することが可能となり、利便性が向上する。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記作業装置は、1サイクル中に複数の作業工程を順次実行するものであり、前記車載バッテリの残存電力量が所定の閾値より大きい場合には被駆動部材のストローク終端を検出するスイッチの出力に基づいて次の作業工程に移行するとともに、前記車載バッテリの残存電力量が所定の閾値より小さい場合には前記被駆動部材の駆動時間が予め設定された所定時間を経過した後に次の作業工程に移行することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置である。
これによれば、例えば塵芥収集車において、積込作業の後期に塵芥の圧縮に過度な電力を消費して1サイクルあたりの消費電力量が急増することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、所定の作業回数の動作を確実に実行可能な電動作業車両の出力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した電動作業車両の出力制御装置の実施例1を有する塵芥収集車の側面視図である。
【図2】実施例1の塵芥収集車の後方斜視図である。
【図3】実施例1の塵芥収集車の油圧回路の構成を示す図である。
【図4】実施例1の塵芥収集車の作動制御バルブの構成を示す図である。
【図5】実施例1の塵芥収集車の油圧ポンプ駆動機構の構成を示す模式図である。
【図6】実施例1の塵芥収集車における出力制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用した電動作業車両の出力制御装置の実施例2における作業回数に対するSOC及び消費電力量の基準履歴データの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、所定の作業回数の動作を確実に実行可能な電動作業車両の出力制御装置を提供する課題を、現在のバッテリのSOCと、残り作業回数に基づいて、モータへの出力電力を制限することによって解決した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明を適用した電動作業車両の出力制御装置の実施例1について説明する。
実施例1において、電動作業車両は、例えばプレス式の塵芥収集装置を備える塵芥収集車である。
図1、図2に示すように、塵芥収集装置1は、トラックシャーシ2に架装され、電動作業車両の一種である塵芥収集車を構成するものである。
トラックシャーシ2は、フレーム3、エンジン4、トランスミッション5、パワーテイクオフ(PTO)機構6等を備えている。
フレーム3は、キャビン及び塵芥収集装置1が搭載されるとともに、パワートレーンやサスペンション等が取り付けられる構造部材である。
エンジン4は、車両の走行用動力源であって、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関である。
トランスミッション5は、エンジン4の回転出力を増減速し、プロペラシャフト及び最終減速装置を介して後輪車軸に伝達するものである。
PTO機構6は、トランスミッション5に併設され、エンジン4の回転出力を抽出してポンプ120に伝達するものである。
【0017】
塵芥収集装置1は、ボデー10、テールゲートホッパ20、逆流防止シリンダC1、リフトシリンダC2、自動ロックシリンダC3、上下動シリンダC4、カキ込シリンダC5、排出シリンダC6等を備えている。
【0018】
ボデー10は、車両後方側に開口が設けられたボックス状に構成されている。
ボデー10は、回収された塵芥が内部に収容される部分(荷箱)である。
また、ボデー10の内部には、収容された塵芥を後方側へ押し出す排出パネル11が設けられている。
【0019】
テールゲートホッパ20は、ボデー10の後部開口を実質的に閉塞するように配置されている。
テールゲートホッパ20は、ボデー10の開口上端部に設けられたヒンジ回りに回動し、ボデー10の開口を開閉可能となっている。
テールゲートホッパ20は、積込パネル21によって投入した塵芥を圧縮しつつボデー10内に押し込む積込装置を備えている。
積込装置は、テールゲートホッパ20の下部に投入された塵芥を、所定の軌跡に沿って駆動される積込みパネル21によってすくい上げ、ボデー10内にかき込む。
【0020】
逆流防止シリンダC1は、積み込まれた塵芥の逆流を防止するため、逆流防止用のパネルのカキ込及び反転動作を行なう油圧シリンダである。
リフトシリンダC2は、テールゲートホッパ20を回動させてボデー10の開口を開閉する油圧シリンダである。
自動ロックシリンダC3は、テールゲートホッパ20をロックしてボデー10に対する相対回転を規制するロック機構を駆動する油圧シリンダである。
上下動シリンダC4は、テールゲートホッパ20の積込パネル21を上下させる油圧シリンダである。
カキ込シリンダC5は、積込パネル21のカキ込動作及び反転動作を行なう油圧シリンダである。
排出シリンダC6は、ボデー10内に積み込まれた塵芥を車両後方側へ押し出して排出する排出パネルの排出及び戻し動作を行なう油圧シリンダである。
【0021】
以上説明した各シリンダC1〜C6は、以下説明する油圧回路によって駆動される。
図3は、実施例の塵芥収集装置の油圧回路の構成を示す図である。
油圧回路100は、作動油タンク110、ポンプ120、アキュムレータ130、フィルタ140、レギュレータ150、作動制御バルブ160等を備えて構成されている。
作動油タンク110は、各シリンダC1〜C6を駆動する作動油が貯留される容器である。
ポンプ120は、作動油タンク110に貯留された作動油を加圧して吐出する例えばギヤポンプ等のポンプである。
アキュムレータ130は、ポンプ120から吐出された高圧の作動油を蓄積する蓄圧容器である。
アキュムレータ130は、レギュレータ150と作動制御バルブ160との間に設けられている。
フィルタ140は、作動制御バルブ160及びレギュレータ150から作動油タンク110に戻る作動油を濾過するものである。
レギュレータ150は、ポンプ120から作動制御バルブ160に送られる作動油の流量を制御するものである。
【0022】
作動制御バルブ160は、ポンプ120から、レギュレータ150及びアキュムレータ130を介して供給される作動油を、油圧ラインLを介して各シリンダC1〜C6に供給するものである。
図4は、作動制御バルブ160の構成を示す図である。
作動制御バルブ160は、三位置の方向制御弁であるソレノイドバルブSV1〜SV5等を備えて構成されている。
各ソレノイドバルブSV1〜SV5は、図示しない制御装置から供給される駆動電力に応じて、各シリンダC1〜C6への油圧の供給有無及び方向を切換えるものである。
【0023】
ソレノイドバルブSV1は、逆流防止シリンダC1に油圧を供給するものである。
ソレノイドバルブSV2は、リフトシリンダC2及び自動ロックシリンダC3に油圧を供給するものである。
ソレノイドバルブSV3は、上下動シリンダC4に油圧を供給するものである。
ソレノイドバルブSV4は、カキ込シリンダC5に油圧を供給するものである。
ソレノイドバルブSV5は、排出シリンダC6に油圧を供給するものである。
また、ソレノイドバルブSV1、SV2、SV4、SV5から各シリンダへ油圧を供給する油路には、圧力が所定値以上となったときに作動油を作動油タンク110側へブリードオフさせるリリーフ弁等が設けられている。
【0024】
図5に示すように、実施例1において、ポンプ120は、PTO機構6を用いたエンジン4の出力による駆動、及び、電動モータによる駆動が選択可能となっている。
塵芥収集装置1は、モータ210、バッテリ220、インバータ230、制御装置240、入出力装置250等を備えている。
モータ210は、ポンプ120のPTO機構6側の端部に、ポンプ120の入力軸と同軸に設けられた例えばACモータである。
モータ210の回転軸(出力軸)は、ポンプ120の入力軸に接続されている。
モータ210の回転軸のポンプ120側と反対側の端部には、動力伝達軸を介してPTO機構6が接続されている。
【0025】
バッテリ220は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の2次電池であって、モータ210の駆動用の電力を供給するものである。
バッテリ220は、例えばステーションにおいて充電されるほか、回生発電手段を用いて車両の運用中に追加充電を行なってもよい。
バッテリ220は、例えば塵芥収集装置1の下部などに搭載される。
また、バッテリ220は、その充電状態であるState of Charge(SOC)を検出するSOC検出手段を備えている。
【0026】
インバータ230は、バッテリ220が出力する電力をDC−AC変換してモータ210に供給してモータ210を駆動させるとともに、モータ210の出力を制御するものである。
また、インバータ230は、塵芥収集装置1の1サイクルの動作(1回の積込作業)に消費した電力量をモニタする機能を備えている。
【0027】
制御装置240は、インバータ230を制御することによって、モータ210の出力を制御するものである。
制御装置240は、ユーザによって設定された積込作業の予定回数(総作業サイクル数)と、実際に実行された作業回数のカウント値に基づいて、今後予定される積込作業の回数(予定サイクル数)を求め、現在のバッテリのSOCに応じて、SOCが低い場合であっても残り作業回数の動作が可能なようにモータ210に供給される電力を制限する出力制御機能を備えている。
この点については、後に詳しく説明する。
【0028】
入出力装置250は、ユーザが積込作業の予定回数を入力する入力手段、及び、この予定回数、実行済みの作業回数及び残り作業回数などを表示する画像出力手段などを備えている。
【0029】
以下、上述した塵芥収集装置1における出力制御機能について説明する。
図6は、この出力制御機能を示すフローチャートである。以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0030】
<ステップS01:モータ回転指令オン>
制御装置240は、ユーザからの電動スイッチオン操作に応じてモータ回転指令をオンにし、ステップS02に進む。
【0031】
<ステップS02:SOC確認>
制御装置240は、バッテリ220のSOC検出手段を用いて、現在のSOCを確認する。
その後、ステップS03に進む。
【0032】
<ステップS03:SOCレベル判断>
制御装置240は、現在のSOCが予め設定された所定の閾値以上であるか判別し、閾値以上である場合はステップS04に進む。
一方、現在のSOCが閾値未満である場合は、ステップS06に進む。
【0033】
<ステップS04:通常出力>
制御装置240は、インバータ230に対し、出力制限を行なわない通常出力でのモータ駆動を指示する。
その後、ステップS05に進む。
【0034】
<ステップS05:モータ駆動・通常作業実行>
インバータ230は、モータ210に電力を供給してモータ210を駆動させ、塵芥収集装置1に積込作業を実行させる。
このとき、塵芥収集装置1は、順次作動する各シリンダのストローク終端に設けられたスイッチを用いて、スイッチが作動したシリンダの駆動を停止し、次のシリンダの駆動に移行する通常作業を実行する。これらのスイッチは、例えば積込みパネル21等の被駆動部材のストローク終端を検出するものである。
その後、ステップS06に進む。
【0035】
<ステップS06:1サイクルの消費電力量記憶>
制御装置240は、インバータ230からの情報に基づいて、1サイクルの駆動に消費された消費電力量を記憶する。
その後、一連の処理を終了(リターン)し、ステップS01に戻り以降の処理を繰り返す。
【0036】
<ステップS07:作業予定回数駆動可否判断>
制御装置240は、現在のSOC及び残り作業回数に基づいて、通常出力で全ての積込作業を完了できるか否かを判別する。
制御装置240は、従前の積込作業での消費電力量の平均値を、積込作業1サイクルあたりの消費電力量であると推定し、SOCに基づいて推定されるバッテリ220の残存電力量をこの平均値で除して、作業可能回数を推定する。
そして、作業可能回数が残り作業回数以上であった場合は、通常出力による積込作業完了が可能であると判断してステップS08に進む。
一方、作業可能回数が残り作業回数未満であった場合は、通常出力による積込作業完了が不可能であると判断してステップS10に進む。
【0037】
<ステップS08:通常出力>
制御装置240は、インバータ230に対し、出力制限を行なわない通常出力でのモータ駆動を指示する。
その後、ステップS09に進む。
【0038】
<ステップS09:モータ駆動・通常作業実行>
インバータ230は、モータ210に電力を供給してモータ210を駆動させ、塵芥収集装置1に通常の積込作業を実行させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)し、ステップS01に戻り以降の処理を繰り返す。
【0039】
<ステップS10:電流調整出力>
制御装置240は、インバータ230に対し、通常出力に対して電流値を制限した制限出力でのモータ駆動を指示する。
その後、ステップS11に進む。
【0040】
<ステップS11:モータ駆動・タイマ制御作業実行>
インバータ230は、モータ210に制限された電力を供給してモータ210を駆動させ、塵芥収集装置1に積込作業を実行させる。
このとき、塵芥収集装置1は、各シリンダの駆動時間が予めシリンダ毎に設定された所定時間を経過した場合、当該シリンダの駆動を、スイッチ作動を待たずに終了して、次のシリンダ駆動を開始するタイマ制御を実行する。
このようなタイマ制御を実行することによって、塵芥の圧縮に過度な電力が消費されることを防止できる。
その後、一連の処理を終了(リターン)し、ステップS01に戻り以降の処理を繰り返す。
【0041】
以上説明した実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)バッテリ220のSOC及び残り作業回数に応じてモータ210に供給される電力を制限することによって、残り作業回数の終了前に残存電力量が過度に低下して作業不能になることを防止することができる。
(2)1サイクルあたりの平均消費電力量を用いて上述した制御を行なうことによって、作業サイクルあたりの消費電力量がほぼ一定で推移する場合に、適切な制御を行なうことができる。
(3)入出力装置250を用いてユーザが任意に積込作業の予定回数を設定することが可能であり、また、この予定回数、実行済みの作業回数、残り作業回数などを確認することも可能であり、利便性が向上する。
(4)ストロークの終端までシリンダを駆動せず、所定の駆動時間後に次の動作に移行するタイマ制御を実行することによって、積込作業の後期に塵芥の圧縮に過度な電力を消費して1サイクルあたりの消費電力量が急増することを防止することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明を適用した電動作業車両の出力制御装置の実施例2について説明する。
なお、上述した実施例1と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
実施例2の出力制御装置においては、以下説明する作業回数に応じた電力消費量及びSOCの基準履歴データに基づいて、出力制御の実行要否を判別することを特徴とする。
図7は、積込回数に応じた消費電力及びSOCの基準履歴データの一例を示すグラフである。
図7において、横軸は作業回数(積込回数)を示し、実線はSOCの推移を示し、破線は累積消費電力量を示している。
図7に示すように、累積消費電力量は作業回数に応じて増加し、SOCは作業回数に応じて減少する。
【0043】
また、塵芥収集車においては、作業回数の増加に応じて塵芥の圧縮に要する電力が増加するため、一作業あたりの消費電力量(SOC低下量)が増加する場合があるが、このような消費電力量増大の影響も基準履歴データには反映されている。
制御装置240は、内蔵された記憶装置に、このような基準履歴データをデータベースとして保持している。
こうした基準履歴データは、塵芥収集車が運用される作業ルートの標準的な消費電力量の履歴に基づいて生成され、さらに、その後の作業車両の運用によって得られたデータによって適宜学習補正されている。
【0044】
実施例2においては、制御装置240は、保持している基準履歴データを参照することによって、現在のSOCに基づく残り作業可能回数(SOCが塵芥収集装置1を駆動困難なレベルまで低下するまでの作業回数)を求めることができる。
そして、現在のSOCに基づいて求められる残り作業可能回数が、実際の残り作業回数(今後作業が予定される回数)に対して少ない場合は、通常出力でモータ210を駆動した場合には全積込作業を電動により完遂することが困難であると判定し、モータ210への供給電流を制限する電流調整出力を実行する。
以上説明した実施例2においては、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果に加えて、積込作業回数の増加に応じた電力消費の増加などの影響を加味した緻密な制御を行なうことによって、より適切にモータ出力の制御を行なうことができる。
【0045】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)各実施例において、電動作業車両は例えば塵芥収集車であったが、本発明はこれに限らず、他種類の電動作業車両にも適用することが可能である。
また、各実施例のように、電動アクチュエータで油圧を発生させて油圧アクチュエータの駆動を行なうものに限らず、電動アクチュエータのみで動作するものであっても本発明を適用することができる。
(2)塵芥収集装置の構成は各実施例のものに限らず、適宜変更することが可能である。例えば、各実施例の塵芥収集装置は例えばプレス式(圧縮板式)のものであったが、これに限らず、回転板式のものであってもよい。
(3)各実施例では、入出力装置によってユーザが作業サイクル数を設定しているが、本発明はこれに限らず、予め設定された作業サイクル数に基づいて、インバータ及びその制御装置が自動的にSOCに応じた出力調整を行なう構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 塵芥収集装置 2 トラックシャーシ
3 フレーム 4 エンジン
5 トランスミッション 6 PTO機構
10 ボデー 11 排出パネル
20 テールゲートホッパ 21 積込みパネル
C1 逆流防止シリンダ C2 リフトシリンダ
C3 自動ロックシリンダ C4 上下動シリンダ
C5 カキ込シリンダ C6 排出シリンダ
100 油圧回路 110 作動油タンク
120 ポンプ 130 アキュムレータ
140 フィルタ 150 レギュレータ
160 作動制御バルブ SV1〜SV5 ソレノイドバルブ
210 モータ 220 バッテリ
230 インバータ 240 制御装置
250 入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリから電源供給される電動アクチュエータによって駆動され周期的な作業を実行する作業装置が搭載された電動作業車両において前記電動アクチュエータの出力を制御する出力制御装置であって、
前記車載バッテリの現在の残存電力量を検出する残存電力量検出手段と、
予め設定された総作業サイクル数に達するまでの予定サイクル数を算出する予定サイクル数算出手段と、
前記残存電力量及び前記予定サイクル数に応じて前記電動アクチュエータに供給される電力を制限する電力制限手段とを備えること
を特徴とする電動作業車両の出力制御装置。
【請求項2】
前記電力制限手段は、作業サイクルあたりの平均消費電力量を算出する平均値算出手段を有し、前記残存電力量を前記予定サイクル数で除した値、及び、前記平均消費電力量に基づいて前記電動アクチュエータに供給される電力を制限すること
を特徴とする請求項1に記載の電動作業車両の出力制御装置。
【請求項3】
前記電力制限手段は、前記車載バッテリの残存電力量と実行可能な作業サイクル数とを関連付けたデータベースを有し、前記残存電力量検出手段が検出した残存電力量に応じて前記データベースから求められる実行可能な作業サイクル数が、前記予定サイクル数を下回った場合に、前記電動アクチュエータに供給される電力を制限すること
を特徴とする請求項1に記載の電動作業車両の出力制御装置。
【請求項4】
実作業における作業サイクル数と前記車載バッテリの残存電力量の推移との相関を用いて前記データベースを更新する学習手段を有すること
を特徴とする請求項3に記載の電動作業車両の出力制御装置。
【請求項5】
前記総作業サイクル数をユーザが設定入力する入力手段を備えること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置。
【請求項6】
前記総作業サイクル数を表示する表示手段を備えること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置。
【請求項7】
前記作業装置は、1サイクル中に複数の作業工程を順次実行するものであり、前記車載バッテリの残存電力量が所定の閾値より大きい場合には被駆動部材のストローク終端を検出するスイッチの出力に基づいて次の作業工程に移行するとともに、前記車載バッテリの残存電力量が所定の閾値より小さい場合には前記被駆動部材の駆動時間が予め設定された所定時間を経過した後に次の作業工程に移行すること
を特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電動作業車両の出力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250841(P2012−250841A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126899(P2011−126899)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】