説明

電子デバイス

【課題】本発明は電子デバイスに関し、特に、振動片が気密に封止された振動子とIC部品とが並設して配置された低背化に有利な電子デバイスに関するものである。
【解決手段】水晶デバイス1は、基板10上に、水晶振動片21が接合された凹部空間Tをリッド29をシーム溶接することにより気密封止した水晶振動子20と、ICチップ31が搭載されたIC部品搭載部30とが水平方向に並設して配置されている。ICチップ31は、集積回路が形成された一方の主面側(能動面側)の周縁部近傍に設けられたバンプ36を介して、基板10のIC部品接合端子16にフェースダウン接合されている。水晶振動子20の基板10の底面からリッド29の外部側の主面までの高さt1と、IC部品搭載部30の基板10の底面からICチップ31のフェースダウン接合面とは異なる側の主面までの高さt2とが、等しい高さを有して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の電子デバイスに関し、特に、低背化に適した電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動片とIC部品とを一体に備えた表面実装用の電子デバイスとして、例えば、圧電振動片と、発振回路などを含むIC部品とをパッケージ内に接合して気密に封止した圧電デバイスが、各種電子機器の信号源として広く用いられている。圧電振動片は、水晶などの圧電基板を所定の角度および厚さに切り出した薄板が固有の共振周波数を有する特性を利用し、その薄板の表面に励振電極などの電極を形成して該電極に電圧を印加し、その電圧による圧電効果によって所定の振動モードで励振させるものである。圧電振動片としては、例えば、圧電基板を所謂ATカットと呼ばれるカット角にて切り出した薄板を用いた厚み滑り振動をするATカット水晶振動片や、切り出された圧電基板の外形加工により、基部と、その基部の一端部から略平行に延出する二つの振動腕が形成され、それら振動腕が屈曲振動をする音叉型圧電振動片などが利用される。
【0003】
近年、広く普及している携帯電話や、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、あるいはGPS(Global Positioning System)として広く知られる汎地球測位システムなどの小型の通信機器などにおいては、より一層の小型・薄型化の要望が強くなっており、これに伴って、通信機器内に搭載される表面実装用の電子デバイスをより小型・薄型化する要求が高まっている。このような低背化に有利な電子デバイスとして、振動片が気密に封止された振動子とIC部品とが水平方向に一体配置された電子デバイスが紹介されている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の水晶発振器は、基板と、その基板の一方の主面上に設けられたIC部品接合端子(回路端子)、および前記一方の主面と水平な凹底面を有する凹部空間と、を有している。そして、凹部空間内に接合された振動片(水晶片)が、凹部空間の開口部を封鎖する蓋体が接合されることにより気密に封止されている。また、IC部品接合端子にはIC部品(ICチップ)がフェースダウンボンディング(フリップチップボンディング)されている。このように、振動片が凹部空間に気密封止された振動子とIC部品とを水平方向に配置することにより低背化が測られている。
【0005】
このような表面実装用の電子デバイスを通信機器などに搭載する実装工程においては、まず、通信機器の実装基板(外部実装基板)の電子デバイス接合端子に半田ペーストを印刷してから、その電子デバイス接合端子と対応する電子デバイスの実装端子とを位置決めして仮止めするマウント工程の後で、リフロー炉を通して半田ペーストによる半田接合を行う。そのマウント工程では、電子デバイスの頂面側の両側縁部を保持してパッケージに押圧する治具として例えば二面角錐型のコレットが用いられる(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−301196号公報
【特許文献2】特開2001−257221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の電子デバイスでは、水晶振動片が凹部空間内に気密封止された水晶振動子と、その水晶振動子に並設されたIC部品とが、異なる高さを有して配置され、電子デバイスの頂面が水平でない。このため、電子デバイスの実装工程におけるマウント工程で、コレットにより電子デバイスを保持した際に電子デバイスに傾きが生じて電子デバイスの保持が不安定になるとともに、通信機器などの実装基板の電子デバイス接合端子に電子デバイスを位置決めする際に電子デバイスが傾いた状態で配置されてコレットからリリースされるので、電子デバイスの搭載位置が正規の位置からずれて、ショートやオープンなどの電気的な不良が生じる虞があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
〔適用例1〕本適用例にかかる電子デバイスは、基板と、前記基板の一方の主面上に設けられたIC部品接合端子と、前記IC部品接合端子に接合したIC部品と、前記一方の主面上であって前記IC部品を搭載した領域の外に前記IC部品と並設された振動片と、前記振動片を覆う主面を有した蓋体と、を有し、前記振動片が前記一方の主面上に前記蓋体を固定して得られた凹部空間内に収容された構成を有する振動子と、前記IC部品接合端子に接合された前記IC部品とが、並設して配置された電子デバイスであって、前記振動子の前記蓋体の前記凹部空間側と異なる外部側の主面の高さと、その前記蓋体の前記外部側の主面と平行な前記IC部品の主面の高さとが略同じであることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、基板上に並設して配置された振動子の頂面とIC部品の頂面とが略等しい高さで配置されるので、電子デバイスの頂面が略水平となる。これにより、電子デバイスを外部実装基板に搭載する実装工程において、コレットや吸着ノズルなどにより電子デバイスを保持して移動させる際に、安定した姿勢で確実に保持することができるので、外部実装基板上に位置決めして電子デバイスをリリースしたときの位置ずれを防止することができる。したがって、搭載位置ずれによるオープンやショートなどの電気的な不良を防止することが可能な電子デバイスを提供することができる。
【0011】
〔適用例2〕上記適用例にかかる電子デバイスにおいて、前記凹部空間が、前記基板上に枠体を設けることによって形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、基板の一主面が凹部空間の凹部の凹底面となるので、電子デバイスの低背化に特に顕著な効果を奏する。
【0013】
〔適用例3〕上記適用例にかかる電子デバイスにおいて、前記蓋体の前記外部側の主面と平行な前記IC部品の主面がモールド樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成では、IC部品が、基板上に実装されたICチップをモールド樹脂によりモールドされている。これにより、IC部品搭載部の信頼性の向上を図ることができるとともに、モールドの塗布量によるIC部品の高さ調整、あるいは、モールド硬化後にモールドを研削することによるIC部品の高さ調整により、比較的容易に、振動子の蓋体の頂面の高さとIC部品の頂面の高さとを略等しく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本実施形態の水晶デバイスを頂面側となる主面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のA−A'線断面を示す模式断面図。
【図2】(a)は、水晶デバイスの実装工程においてコレットにより水晶デバイスをピックアップした様子を正面からみた図、(b)は、(a)のD方向側面からみた図。
【図3】(a)は、実装されたICチップをモールドした形態のIC部品搭載部を有する水晶デバイスを頂面となる主面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のB−B'線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電子デバイスとしての水晶デバイスの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の水晶デバイスを説明するものであり、図1(a)は頂面側となる主面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のA−A'線断面を示す模式断面図である。なお、図1(a)では、水晶デバイスの内部構造を説明するために蓋体としてのリッドを取り去った状態を図示しており、リッドの搭載位置を破線で示している。
【0017】
図1に示すように、水晶デバイス1は、基板10上に、振動片としての水晶振動片21が凹部空間T内に気密封止された振動子としての水晶振動子20と、IC部品としてのICチップ31が搭載されたIC部品搭載部30とが水平方向に並設して配置されている。ここで、凹部空間Tは、基板10上に矩形環状の枠体12を設けることにより、枠体12の内壁を枠壁として、枠体12に囲まれた基板10の上側の主面を凹底面として形成されている。そして、枠体12上には、例えば金属からなるリッド29が接合され、凹部空間T内に接合された水晶振動片21が気密に封止されている。
【0018】
まず、水晶振動子20について詳細に説明する。
図1において、枠体12に囲まれた基板10の上側の主面には、水晶振動片21が接合される振動片接合端子15が設けられている。また、基板10の上側の主面のうち枠体12が設けられた領域と異なる領域には、ICチップ31が接合されるIC部品接合端子16が設けられている。さらに、基板10の振動片接合端子15およびIC部品接合端子16が設けられた主面と異なる主面側には、外部の実装基板と実装する際に用いられる複数の実装端子17が設けられている。これらの振動片接合端子15やIC部品接合端子16、あるいは実装端子17は、基板10に一つの回路配線を形成するように形成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により、それぞれ対応する端子どうしが接続されている。
【0019】
なお、基板10および枠体12は、例えばセラミックス絶縁材料などからなる。また、基板10に設けられた振動片接合端子15、IC部品接合端子16、実装端子17、あるいはそれらを接続する配線パターンまたは層内配線パターンは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0020】
水晶振動片21は、本実施形態では、水晶基板を所謂ATカットと呼ばれるカット角にて切り出した薄板を用いた厚み滑り振動をするATカット水晶振動片を用いた例を説明する。すなわち、水晶振動片21は、水晶基板をATカットして切り出した水晶の薄板(ATカット水晶板)の一方の主面に、駆動用の電極である励振電極25が設けられている。同様に、ATカット水晶板の他方の主面には励振電極25の対向電極である励振電極(不図示)が設けられ、引き回し配線により外部接続電極26と接続されている。
このような電極や配線などの電極パターンは、水晶ウェハをエッチングして水晶振動片21の外形を形成した後で、蒸着またはスパッタリングにより、例えばニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に例えば金(Au)による金属膜を成膜し、その後フォトリソグラフィを用いてパターニングすることにより形成できる。
【0021】
水晶振動片21は、その一端部分に設けられた外部接続電極26と、凹部空間Tの凹底面となる基板10の一方の主面上に設けられた対応する振動片接合端子15とが位置合わせされ、例えば導電性接着剤45などの接合部材により接合されている。これにより、水晶振動片21は、導電性接着剤45による接合部分側の一端部分を支持部として、他端部側が基板10と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている。
ここで、接合部材としての導電性接着剤45は、一般に、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ系などの樹脂に、銀(Ag)フィラメント、またはニッケル(Ni)粉を混入したものが使用される。また、水晶振動片21を接合する接合部材は導電性接着剤45に限らず、半田などの他の接合部材を用いて接合することもできる。
【0022】
水晶振動片21が接合された凹部空間Tの枠体12上には、例えば金属製の蓋体としてのリッド29が、コバール(Fe−Ni−Co)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング28を介してシーム溶接され、これにより、凹部空間Tの凹底部分に接合された水晶振動片21が気密に封止された水晶振動子20が構成されている。
【0023】
次に、IC部品搭載部30について説明する。
図1において、基板10上の枠体12が設けられた領域と異なる領域に設けられた複数のIC部品接合端子16には、ICチップ31が、接合部材としての複数のバンプ36を介して接合されている。このバンプ36は、ICチップ31の集積回路が形成された一方の主面側(能動面側)の周縁部近傍に設けられた複数の電極パッド35上に高さを揃えて予め設けられている。本実施形態では、平面視で矩形状のICチップ31の周縁部のうち、長辺側の二辺の周縁部近傍に電極パッド35が配設され、それら電極パッド35上にバンプ36が設けられている。
【0024】
バンプ36は、例えば金や半田などからなり、これらのバンプ36と、基板10の対応するIC部品接合端子16とを位置合わせしてから、所定の温度および圧力の熱圧着ツールをICチップ31の裏面側から押し当てて加熱および押圧する所謂フェースダウン接合により接合される。
なお、バンプ36は、金や半田などからなる金属バンプに限らず、樹脂や金属のコアの表面に導電膜が形成された樹脂コアバンプや金属コアバンプを用いてもよい。また、バンプの他に、例えば導電性接着剤などの別の接合部材を用いて基板10にICチップ31を接合する構成としてもよい。
【0025】
フェースダウン接合されたICチップ31と基板10との間には、液状のアンダーフィル材を充填させて固化させたアンダーフィル46が形成されている。これにより、基板10とICチップ31との接合強度が確保され、耐衝撃性や信頼性の向上が図られている。
また、本実施形態の水晶デバイス1では、基板10上のIC部品搭載部30において、フェースダウン接合されたICチップ31を水晶振動子20の枠体12のうちの一辺の壁面とともに囲む包囲体13が設けられている。この包囲体13は、IC部品搭載部30の硬化前のアンダーフィル46の流れ出しを防止するダム材として機能するものである。なお、包囲体13は、IC部品搭載部30の面積が十分に広く確保されていたり、硬化前のアンダーフィル46の粘度やチクソ性などの物性が流れ出し難い状態であったりして、アンダーフィル46の流れ出しが悪影響を及ぼさないのであれば設けない構成としてもよい。
【0026】
上記した構成の水晶デバイス1において、図1(b)に示すように、基板10上に並設して配置された水晶振動子20の高さt1とIC部品搭載部30の高さt2とは、t1≒t2の関係にある。すなわち、水晶振動子20の基板10の底面からリッド29の凹部空間T側と異なる外部側の主面までの高さt1と、IC部品搭載部30の基板10の底面からICチップ31のフェースダウン接合面(能動面)とは異なる側の主面(裏面)までの高さt2とが、略同じであり、好ましくは等しい高さを有して配置されている。
【0027】
このように、水晶振動子20の高さt1とIC部品搭載部30の高さt2を同じ高さで並設させるために、本実施形態では、ICチップ31の製造工程において、ICチップ31(ICウェハー)の厚みを調整する。すなわち、ICチップ31(ICウェハー)を所望の厚みに研削するラッピング工程において、基板10にICチップ31をフェースダウン接合したときのICチップ31のフェースダウン接合面とは異なる側の主面の高さが、水晶振動子20のリッド29の外部側の主面の高さと等しくなるようにICチップ31(ICウェハー)の厚みを調整してラッピングを行う。
なお、ICチップ(ICウェハー)の厚みが先に決定していて、これを基準として水晶デバイスを設計する場合には、水晶振動子20のリッド29や枠体12などの高さを調整することにより、基板10にフェースダウン接合されたときのICチップ31の高さと水晶振動子20との高さを一致させてもよい。
【0028】
水晶デバイス1を通信機器などの外部実装基板に搭載する実装工程では、外部実装基板の水晶デバイス接合端子に半田ペーストを印刷してから、その水晶デバイス接合端子と対応する水晶デバイス1の実装端子17とを位置合わせして仮止めするマウント工程の後で、リフロー炉を通して半田ペーストによる半田接合を行う。そのマウント工程では、水晶デバイス1をピックアップして外部実装基板の実装位置に位置合わせして押圧する押え治具として、例えば、図2に示すようなコレット80が用いられる。図2は、水晶デバイス1の実装工程(マウント工程)においてコレット80により水晶デバイス1をピックアップした様子を説明するものであり、(a)は、正面からみた図、(b)は、(a)のD方向側面からみた図である。
【0029】
図2において、コレット80は、その下端部に、稜線82を頂部とする山形のテーパー面81を有している。そして、そのテーパー面81によって水晶デバイス1の頂面の対向する両端縁部分を保持しながら、テーパー面81の稜線82近傍に設けられた図示しない真空孔から真空吸引することによって水晶デバイス1をピックアップする。そして、ピックアップした水晶デバイス1を図示しない外部実装基板の実装位置に位置決めし、テーパー面81により水晶デバイス1を実装位置に押圧し、上記した外部実装基板の水晶デバイス接合端子に印刷された半田ペーストの粘着力により仮固定させる。
【0030】
ここで、本実施形態の水晶デバイス1は、押さえ治具が水晶振動子20とICチップ31とをまたがって水晶デバイス1の吸着と外部実装基板への搭載が実質的に可能な程度に基板10上に並設して配置された水晶振動子20とICチップ31との高さが等しいもしくは略同じなので、水晶デバイス1の頂面が略水平となっている。これにより、コレット80に対して水晶デバイス1が水平に安定した姿勢で保持されるので、外部実装基板上に位置合わせしてリリースした際の位置ずれが防止され、水晶デバイス1を精度よく配置して接合することが可能になる。したがって、搭載位置ずれによるオープンやショートなどの電気的な不具合を防止することが可能な水晶デバイス1を提供することができる。
【0031】
また、上記実施形態の水晶デバイス1では、水晶振動片21を気密封止する凹部空間Tを、基板10上に枠体12を設けることによって形成した。
この構成によれば、基板10の一方の主面が凹部空間Tの凹部の凹底面となるので、水晶デバイス1の低背化に特に顕著な効果を奏する。
【0032】
また、上記実施形態の水晶デバイス1では、ICチップ31を、基板10のIC部品接合端子16にフェースダウン接合する構成とした。
フェースダウン接合は、ワイヤボンディング法などの他の接合法を用いてICチップ31を基板10に接合する場合に比して水晶デバイス1の低背化に有利である。
【0033】
上記実施形態で説明した電子デバイスとしての水晶デバイスは、以下の変形例として実施することも可能である。
【0034】
(変形例)
上記実施形態の水晶デバイス1では、IC部品搭載部30の高さは、フェースダウン接合されたICチップ31のファースダウン接合面とは異なる主面(裏面)であった。このように、ベアチップ実装されたIC部品としてのICチップ31の接合面とは異なる主面そのものがIC部品搭載部30の頂面となる形態に限らず、IC部品(ICチップ)にモールドが施された形態であってもよい。
図3は、実装されたICチップをモールドした形態のIC部品搭載部を有する水晶デバイスを説明するものであり、(a)は、頂面となる主面側からみた模式平面図、(b)は、(a)のB−B'線断面図である。なお、本変形例の水晶デバイスの構成のうち、上記実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図3において、本変形例の水晶デバイス50は、基板10上に、水晶振動片21が凹部空間T内に気密封止された上記実施形態と同一構成の水晶振動子20と、IC部品としてのICチップ31が搭載されたIC部品搭載部60とが水平方向に並設して配置されている。
【0036】
IC部品搭載部60は、基板10上の水晶振動子20と並設して配置される領域に設けられた複数のIC部品接合端子16と、そのIC部品接合端子16に対応するバンプ36を介してフェースダウン接合されたICチップ31とが、モールド樹脂66によりモールドされて構成されている。ここで、モールド樹脂66は、フェースダウン接合されたICチップ31を、水晶振動子20の枠体12のうちの一辺の壁面とともに囲むように設けられた包囲体63により、未硬化状態で流れ出さないように堰き止められて充填された後に固化されて形成される。
【0037】
上記した構成の水晶デバイス50において、図3(b)に示すように、基板10上に並設して配置された水晶振動子20の高さt'1とIC部品搭載部60の頂面となるモールド樹脂66の高さt'2とは、t'1=t'2の関係にある。すなわち、水晶振動子20の基板10の底面からリッド29の外部側の主面までの高さt'1と、IC部品搭載部60の基板10の底面からモールド樹脂66の頂面側となる主面までの高さt'2とが等しい高さを有して配置されている。
【0038】
上記変形例の水晶デバイス50の構成によれば、モールド樹脂66によって接合されたICチップ31を保護あるいは補強できるとともに、モールド樹脂66の塗布量によるIC部品搭載部60の高さ調整、あるいは、モールド硬化後にモールド樹脂66を研削することによるIC部品搭載部60の高さ調整により、比較的容易に、水晶振動子20の高さt'1とIC部品搭載部60の高さt'2とを略等しく調整することができる。
【0039】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態および変形例では、凹部空間T内に水晶振動片21を気密に封止するときに、枠体12上に蓋体としてのリッド29をシールリング28を介して接合するシーム溶接を用いた。これに限らず、リッドの接合は、金属共晶や、金属結合、あるいは低融点ガラスを用いた接合などでもよい。
またさらに、蓋体に凹部空間を形成したキャップ形状の構成を採用し、これを基板に金属ロウ材または溶接などで接合しても良い。ただし、このような構成の蓋体は、金属板に凹みを形成するための例えば絞り加工が必要となる。そのため、このような絞り加工を必要としない平板形状のリッド29を用いた方が個体間での水晶振動子20の高さが整い易いので水晶振動子20とICチップ31との高さを等しくし易いという点で有効である。
【0041】
また、上記実施形態および変形例では、振動片として、ATカットされた水晶振動片21を使用する構成について説明した。これに限らず、BT、FC、IT、SCカットなどの他のカット角で切り出された厚みすべり水晶振動片や、音叉型の水晶振動片、あるいは、SAW共振子などを使用しても、上記実施形態および変形例の水晶デバイス1,50およびその製造方法において説明した効果と同様な効果を奏する。
【0042】
また、上記実施形態および変形例では、水晶振動片21を、凹部空間Tの凹部の凹底部分となる基板10上に設けられた振動片接合端子15上に接合する構成を説明した。これに限らず、凹部空間Tの凹部内に複数の段差を設け、この段差のうちのいずれかの段差上に振動片接合端子を設けて、その振動片接合端子に振動片を接合する構成としてもよい。この場合には、振動片の励振電極が設けられた自由端側を、振動片接合端子が設けられた段差の高さ分だけ浮かすことができるので、振動や落下などの衝撃などにより振動片が凹部内の壁面に衝突して破損するなどの不具合を回避することができ、耐衝撃性を向上させることができる。
また、凹部空間Tは、上記実施形態および変形例で説明した基板10上に枠体12を積層させて設けた構造だけでなく、初めから一体化した形のものを成形して使用するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態および変形例では、水晶振動片21の励振電極25などの電極形成用の金属材料として、ニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層としてその上に蒸着またはスパッタリングにより、例えば金(Au)による電極層を成膜したものを用いる例を説明した。これに限定されず、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)などの金属材料を用いることもできる。また、マグネシウム(Mg)などを用いることも可能である。
【0044】
また、上記実施形態および変形例では、水晶からなる水晶振動片21を振動片として備えた水晶デバイスについて説明した。これに限らず、水晶以外に、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)などの薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いた圧電デバイスとすることもできる。
また、本発明の構成を、圧電振動片以外の振動片を搭載した電子デバイスに用いることもできる。
【0045】
また、上記実施形態および変形例では、水晶デバイス1の用途について特に説明していないが、信号の基準周波数を発振する発振器と時刻の基準信号を発振する発振器の両方に併用できるのは勿論であり、あるいは、基準周波数を発振する発振器として単独に用い、また、時刻の基準信号を発振する発振器として単独に用いることも自在にできる。
また、発振器以外にも、水晶などの圧電性単結晶物からなるジャイロ振動片を振動片として有し、物体の揺れや回転などの振動によってジャイロ振動片の一部に発生する電気信号を角速度として検出して、回転角を算出することによって物体の変位を求めるジャイロセンサー(角速度センサー)や、加速度センサーなどのセンサーを構成することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1,50…電子デバイスとしての水晶デバイス、10…基板、12…枠体、13,63…包囲体、15…振動片接合端子、16…IC部品接合端子、17…実装端子、20…振動子としての水晶振動子、21…振動片としての水晶振動片、25…励振電極、26…外部接続電極、28…シールリング、29…蓋体としてのリッド、30,60…IC部品搭載部、31…IC部品としてのICチップ、35…電極パッド、36…バンプ、45…導電性接着剤、46…アンダーフィル、66…モールド樹脂、T…凹部空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一方の主面上に設けられたIC部品接合端子と、前記IC部品接合端子に接合したIC部品と、前記一方の主面上であって前記IC部品を搭載した領域の外に前記IC部品と並設された振動片と、前記振動片を覆う主面を有した蓋体と、を有し、
前記振動片が前記一方の主面上に前記蓋体を固定して得られた凹部空間内に収容された構成を有する振動子と、前記IC部品接合端子に接合された前記IC部品とが、並設して配置された電子デバイスであって、
前記振動子の前記蓋体の前記凹部空間側と異なる外部側の主面の高さと、その前記蓋体の前記外部側の主面と平行な前記IC部品の主面の高さとが略同じであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
前記凹部空間が、前記基板上に枠体を設けることによって形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子デバイスにおいて、
前記蓋体の前記外部側の主面と平行な前記IC部品の主面がモールド樹脂により形成されていることを特徴とする電子デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−283421(P2010−283421A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132835(P2009−132835)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】