説明

電子写真機能部品用正荷電性制御樹脂

【目的】 トナーと接触する電子写真機能部品をトナーと同極性の帯電性にすることができ、なおかつ表面に硬化層を形成しうる正荷電制御樹脂を提供するものである。
【解決手段】 式(1)で示される水酸基含有モノマー及び式(2)で示されるアミノ基含有モノマーを含有するモノマーを有するモノマー組成物を重合した共重合体の架橋物であることを特徴とする正荷電性制御樹脂に関する。
【化1】


(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは炭素数2〜6のアルキレン基、ZはOまたはNHを表す。R1は炭素数1〜7の二価の有機基、R2及びR3は、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R2及びR3が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R2及びR3が化学的に結合した、窒素原子、酸素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真法において静荷電潜像を可視像とする際に用いる電子写真機能部品用正荷電性制御樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電子写真法においては、ブレード、ローラーなどの電子写真機能部品に対するトナーや外添剤等の付着を防止することは重要な課題である。
【0003】
前記課題を解決するために、例えば現像装置のトナー接触部に、トナーと同極性に帯電する材料で形成することで、トナーと当接部の静電反発力によりトナーの付着を防止する方法(特許文献1)、クリーニングブレードのトナー担持体当接部に、所定の形状を有する硬化層を形成することにより、トナーの融着を抑制する方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−79773号公報
【特許文献2】特開2001−343874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、トナーと接触する電子写真機能部品をトナーと同極性の帯電性にすることができ、なおかつ表面に硬化層を形成しうる正荷電制御樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(1)で示される水酸基含有モノマー及び式(2)で示されるアミノ基含有モノマーを含有するモノマーを有するモノマー組成物を重合した共重合体の架橋物であることを特徴とする正荷電性制御樹脂に関する。
【0007】
【化1】

(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは炭素数2〜6のアルキレン基、ZはOまたはNHを表す。R1は炭素数1〜7の二価の有機基、R2及びR3は、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R2及びR3が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R2及びR3が化学的に結合した、窒素原子、酸素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の正荷電性制御樹脂は、トナーと接触する電子写真機能部品をトナーと同極性の帯電性にすることができ、なおかつ表面に硬化層を形成しうる正荷電制御樹脂を提供し得ることがわかった。また、電子写真装置部材への適用においても、良好な画像を得ることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者の検討によれば、式(1)で示される水酸基含有モノマー及び式(2)で示されるアミノ基含有モノマーを含有するモノマーとからなるモノマー組成物を重合した共重合体の架橋物であることを特徴とする正荷電性制御樹脂を用いることで、正帯電性と高硬度を両立しうることが分かった。
【0010】
【化2】

(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは炭素数2〜6のアルキレン基、ZはOまたはNHを表す。R1は炭素数1〜7の二価の有機基、R2及びR3は、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R2及びR3が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R2及びR3が化学的に結合した、窒素原子、酸素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【0011】
本発明では、式(1)で示される水酸基含有モノマーとしては、具体的には例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が例示される。2種以上のモノマーを共重合することもできる。
【0012】
式(2)で示されるアミノ基含有モノマーの例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド等が例示される。これらのモノマーは単独あるいは2種以上併用して使用できる。なお、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートあるいはアクリレートを、「(メタ)アクリルアミド」はメタクリルアミドあるいはアクリルアミドを意味する(以下、同様)。
【0013】
本発明の共重合体の水酸基価は5乃至350mgKOH/gが好ましく、より好ましくは10乃至325mgKOH/gの場合であり、さらに好ましくは25乃至300mgKOH/gの場合である。もし、共重合体の水酸基価が5mgKOH/g未満となる場合には、正荷電性制御樹脂の硬度が不充分となる場合があり、350mgKOH/g超となる場合には正荷電性制御樹脂の帯電量が不充分となる場合があり好ましくない。
【0014】
本発明の共重合体のアミノ価は5乃至350mgKOH/gが好ましく、より好ましくは10乃至325mgKOH/gの場合であり、さらに好ましくは25乃至300mgKOH/gの場合である。もし、共重合体のアミノ価が5mgKOH/g未満となる場合には、正荷電性制御樹脂の帯電量が不充分となる場合があり、350mgKOH/g超となる場合には正荷電性制御樹脂の硬度が不充分となる場合があり好ましくない。
【0015】
本発明の共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000乃至50万が好ましく、より好ましくは3000乃至30万の場合であり、さらに好ましくは5000乃至20万の場合である。もし、重量平均分子量(Mw)が2000未満となる場合、及び50万超となる場合、正荷電性制御樹脂の帯電量、硬度のいずれか一方、または両方が低下する場合があり好ましくない。
【0016】
本発明の共重合体のガラス転移温度(Tg)は−100乃至180℃が好ましく、より好ましくは−90乃至170℃の場合であり、さらに好ましくは−80乃至160℃の場合である。もし、ガラス転移温度(Tg)が−100℃未満となる場合、及び180℃超となる場合、正荷電性制御樹脂の帯電量、硬度のいずれか一方、または両方が不十分となる場合があるため好ましくない。
【0017】
本発明の共重合体は、上述のような成分と、それと共重合可能なモノマーとを共重合させることで得られる。共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシルの如き(メタ)アクリル酸エステル等;スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン等が挙げられる。共重合可能なモノマーは1種類であっても2種類以上用いても良い。
【0018】
本発明の共重合体を得るための重合方法としては、特に限定されるものではないが、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましく、溶媒としては、特に限定されるものではないが、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソプロピルアルコール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等が用いられ、溶媒とモノマーの比は、特に限定されるものではないが、溶媒100質量部に対してモノマー30〜400質量部で行うのが好ましい。
【0019】
本発明の共重合体を重合するために使用する重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられ、これらが単独あるいは併用して使用できる。
【0020】
重合開始剤はモノマー100質量部に対し、0.05〜30質量部(好ましくは0.1〜15質量部)の濃度で用いられ、反応温度としては、特に限定するものではなく、使用する溶媒、開始剤、モノマーに応じて設定することができるが、40℃〜150℃で行うのが好ましい。
【0021】
本発明の正荷電性制御樹脂は、前記共重合体の架橋物である。架橋方法としては特に限定されるものではなく、加熱、放射線照射等で行うことが出来る。共重合体に適した条件で行えばよいが、例えば120〜250℃で加熱架橋を行うことが好ましい。
【実施例】
【0022】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。実施例記載の水酸基含有モノマーA1〜A3の構造式を(3)〜(5)に、アミノ基含有モノマーB1〜B3の構造式を(6)〜(8)に、共重合モノマーC1〜C3を(9)〜(12)に示す。
【0023】
【化3】

【0024】
〔実施例1〕
共重合体1の製造
撹拌機、冷却器、温度計および窒素導入管を付した4つ口セパラブルフラスコに、水酸基含有モノマーとして2−ヒドロキシエチルメタクリレート(A1)20g、アミノ基含有モノマーとしてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(B1)15g、共重合モノマーとしてメチルメタクリレート(C1)15g、溶媒としてトルエン37.5gおよびエタノール12.5g、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を2.0g仕込み、撹拌し、窒素下80℃で8時間溶液重合した。その後、減圧乾燥することで共重合体1を得た。
【0025】
得られた共重合体1の水酸基価、アミノ価、重量平均分子量(Mw)、Tgをそれぞれ全自動滴定装置(京都電子工業(株)製AT−510)、GPC測定(装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC、カラム:昭和電工(株)製KF−805L×2本)、DSC測定(セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200)により測定した。結果を表1に示す。
【0026】
CCR1の製造
得られた共重合体1を固形分濃度10%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、評価用のSUS板に均一に塗り、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで4時間硬化することで、共重合体1の架橋物であるCCR1の評価用試料板を作製した。
【0027】
CCR1の評価
CCR1の評価は、帯電量を傾斜帯電量で、硬度を鉛筆硬度で行った。
【0028】
傾斜帯電量の測定は、N/N(22℃、55%RH)環境下、カスケード式表面帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製)〔図1〕の装置を使用して行った。図1において、1は基準粉体投入口、2は傾斜板(サンプル台)、3は基準粉体、4は受け皿、5は絶縁板、6はエレクトロメーター、7はメーター接続端子である。
【0029】
傾斜勾配60度の傾斜板2に測定用試料板を固定し、基準粉体投入口1から基準粉体3を20秒間落下させた。基準粉体落下後、測定用試料板の電荷をエレクトロメーター6で測定し、Q〔nC〕とした。
【0030】
1サンプルにつき3点とり、平均値を帯電量とした。結果を表2に示す。
【0031】
鉛筆硬度は、評価用試料板をそのまま使用してJIS K5400に従って測定した。結果を表2に示す。
【0032】
〔実施例2〜9、比較例1、2〕
共重合体2〜11の製造、評価
水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、共重合モノマー、重合開始剤を表1に従って使用した以外は実施例1と同様にして、共重合体2〜11を得た。得られた共重合体2〜11の酸価、Mw、Tgをそれぞれ実施例1の共重合体1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0033】
CCR2〜11の製造、評価
共重合体2〜11から実施例1と同様にしてCCR2〜11の評価用試料板を作製した。傾斜帯電量、鉛筆硬度をそれぞれ実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
{応用例}
本発明の正荷電制御樹脂を実際に、電子写真機能部品に含有せしめて用いる場合には、実機との対応で、その都度、適正な帯電量、硬度の調整が必要となる。
【0037】
本発明に係る電子写真機能部品を画像形成装置に利用した一例を示す。ここではクリーニングブレードについての説明であるが、現像ブレード等他のブレードタイプの部品や、帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー等のローラータイプの部品に対しても適用可能である。ここでの画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用した電子写真装置であり、クリーニングブレードを有する現像装置が装着されている。
【0038】
図2に本発明のクリーニングブレードの例を示した。この例では、自由長方向11及びクリーニングブレードの厚み方向12にL字の断面形状を有する硬化層15が、端部16を含むトナー担持体との当接部14のみに、クリーニングブレードの長手方向10に対して一様に形成されている。ここで本発明の硬化層とは正荷電性制御樹脂からなる硬化層である。
【0039】
本発明においては、硬化層が当接部14のみに形成されているため、自由長部13のゴム弾性が保持される。このため、クリーニングブレード全体としての剛性が高くなり過ぎることが抑制され、トナー担持体に対して良好な追従性が実現でき、優れたクリーニング性が実現できる。また、トナー担持体とクリーニングブレードとの間の良好な密着性が実現され、トナー担持体がクリーニングブレードにより損傷されることが抑制される。
【0040】
なお、自由長部とは、硬化層が形成されていない部分を意味しており、未処理部とも記載する。
【0041】
硬化層の断面形状は特に制限されないが、図3に示す様に、L字形(a及びb)、矩形(c及びd)、三角形(e)、台形(f)、コ字形(g〜i)等を例示することができる。ここで、L1は硬化層の自由長方向の長さ、L2はクリーニングブレードの厚み方向の長さ、Tは硬化層の厚みを意味する。c〜fに示す様に、断面形状に依っては、TがL1及び/又はL2と等しい場合もある。図2に示す様な断面形状は、製造が容易であり、端部に十分な厚みの硬化層が形成されており、自由長部のゴム弾性が損なわれることが抑制されているため好ましい。
【0042】
L1は、硬化層の効果を十分なものとするため、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。また、自由長部の十分なゴム弾性を実現するために、自由長の50%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。L1を、ここに記載の範囲内とすることにより、当接部の進入による線圧の急峻な増加を抑制できるため、安定した線圧を得ることができる。
【0043】
なお、自由長とはクリーニングブレードが支持部材から露出している自由長方向の長さをいい、一般に5mm以上15mm以下とされる。
【0044】
L2は、硬化層の効果を十分なものとするため、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。また、クリーニングブレードの厚み以下とされる。
【0045】
Tは0.12mm以上とされ、0.13mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましく、1.2mm以下とされ、1.1mm以下がより好ましく、1.0mm以下が更に好ましい。硬化層の厚みが、この様な範囲であれば、たとえクリーニングブレードの表面が摩耗したとしても、クリーニングブレードの表面の良好な特性は長期間維持される。更に、硬化層が十分な厚みを有しているため、トナー担持体との摺動によりクリーニングブレードの表面が大きく変形することが抑制されるため、近年頻繁に用いられつつある微小なトナーや球形トナーも効果的に除去することができる。
【0046】
〔実施例10〕
クリーニングブレード1の製造
下記の要領で、本発明の、表面層に硬化層を形成したクリーニングブレード1を作製した。
【0047】
重量平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート系ポリエステルポリオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとより製造したNCO%が7.0%のプレポリマーに、1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンが質量比で65:35に混合されたトリエチレンジアミン触媒を含む架橋剤を、水酸基/イソシアネート基のモル比が0.9になるように混合し、国際ゴム硬度(IRHD)70°の熱硬化性ポリエステル系ポリウレタン樹脂製ブレードを作製した。
【0048】
得られたポリウレタン樹脂製ブレード40を、図4に示すように耐薬品性テープよりなるマスク部材41で、L1及びL2が3mmとなるようマスキングし(L1は自由長の38%)、実施例1で作製した共重合体1のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度25%)に浸漬後、ポリウレタン樹脂製ブレードを引き上げ、余分な溶液を拭き取り、マスキングを取り外した。その後、140℃のオーブンで4時間加熱することで、CCR1からなる硬化層として形成したクリーニングブレード1を作製した。
【0049】
(クリーニングブレード1の評価)
次に、クリーニングブレード1を、正荷電性トナーを使用する評価用複写機(キヤノン製NP6035、商品名)に取付け、実際にコピーすることによって実装試験を行った。トナーのクリーニング性を調べたところ、良好なクリーニング性であった。40万枚のコピーを行った後も、良好なクリーニング性が維持され、良好なコピーが得られた。
【0050】
以上より、本発明によれば、クリーニングブレードのトナー担持体当接部に硬化層を形成することで、トナー担持体当接部をトナーと同極性の帯電性にすることができ、なおかつ高硬度とできるため、良好なクリーニング性と耐久性が実現できることが示された。
【0051】
〔比較例3〕
クリーニングブレード2の製造
CCR1からなる硬化層を形成しなかった以外は実施例10と同様にクリーニングブレード2を製造し、評価したところ、1万枚のコピーを行った時点で、トナーのスリ抜けが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】傾斜帯電量測定に利用した装置の概略図である。
【図2】本発明のクリーニングブレードを説明するための模式図である。
【図3】本発明のクリーニングブレードを説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明のクリーニングブレードを製造するための工程説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基準粉体投入口
2 傾斜板(サンプル台)
3 基準粉
4 受け皿
5 絶縁版
6 エレクトロメーター
7 メーター接続端子
10 長手方向
11 自由長方向
12 厚み方向
13 自由長部
14 当接部
15 硬化層
16 端部
40 ポリウレタン樹脂製ブレード
41 マスク部材
42 共重合体1のメチルエチルケトン溶液
L1 自由長方向の長さ
L2 厚み方向の長さ
T 硬化層の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される水酸基含有モノマー及び式(2)で示されるアミノ基含有モノマーを含有するモノマーを有するモノマー組成物を重合した共重合体の架橋物であることを特徴とする正荷電性制御樹脂。
【化1】

(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは炭素数2〜6のアルキレン基、ZはOまたはNHを表す。R1は炭素数1〜7の二価の有機基、R2及びR3は、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R2及びR3が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R2及びR3が化学的に結合した、窒素原子、酸素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【請求項2】
該共重合体が、5乃至350mgKOH/gの水酸基価を有することを特徴とする請求項1に記載の正荷電性制御樹脂。
【請求項3】
該共重合体が、5乃至350mgKOH/gのアミノ価を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の正荷電性制御樹脂。
【請求項4】
該共重合体の重量平均分子量(Mw)が、2000乃至50万であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の正荷電性制御樹脂。
【請求項5】
該共重合体のガラス転移温度(Tg)が、−100乃至180℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の正荷電性制御樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−78611(P2006−78611A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260437(P2004−260437)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】