説明

電子回路装置及びその製造方法

【課題】本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、基板と樹脂封止体との密着性を向上し、エレクトロマイグレーションに起因する導電体間の短絡を防止することができ、電気的信頼性を向上することができる電子回路装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電子回路装置において、絶縁基材111〜113に導電体115〜118が配設された基板11と、基板11上に配設された電子部品と、基板11及び電子部品を覆う樹脂封止体17と、基板11の端面11Cと樹脂封止体17との間に配設され、基板11と樹脂封止体17との密着性に比べて高い密着性を有する樹脂被膜37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置及びその製造方法に関し、特に絶縁基材に導電体が配設された基板を有し、この基板を樹脂封止体により封止する電子回路装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汎用テレビジョンの電源ユニットには、直流−直流(DC−DC)コンバータが組み込まれている。DC−DCコンバータは、例えば一般家庭用100Vの交流電圧から変換された直流電圧を、更に制御回路ユニット、駆動回路ユニット等に使用される直流電圧に変換する。DC−DCコンバータは、最終的に12Vや24Vの直流電圧を生成する。
【0003】
薄型化並びに大画面化の傾向にある液晶テレビジョン、プラズマテレビジョン等の汎用テレビジョンの開発には電源ユニットの薄型化並びに小型化が重要な課題になっている。下記特許文献1には電源ユニットの薄型化並びに小型化に最適な発明が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、基板と、この基板に搭載されたシートトランス構造を採用するトランスと、基板及びトランスを被覆する樹脂封止体とを備えた電子回路装置である。基板は絶縁基材に導電体を形成した配線基板(回路基板)である。絶縁基材にはガラスエポキシ樹脂が使用されている。導電体には銅等の電気電導性に優れた例えばCuが使用されている。また、樹脂封止体にはエポキシ樹脂が使用され、このエポキシ樹脂はトランスファモールド法を用いて成形されている。このように製作される電子回路装置においては、基板やトランス等の回路素子を1つのパッケージ内に組み込むことができるので、薄型化並びに小型化を実現することができる特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−141077号公報
【特許文献2】特開平5−198948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に開示された電子回路装置においては、以下の点について配慮がなされていなかった。道路脇や電柱等、高温度、高湿度に晒される過酷な外部環境下において使用される電子回路装置の開発に先立ち、電子回路装置に高温高湿バイアス試験(寿命試験)を実施したところ、不具合が発生した。具体的には、電子回路装置の基板と樹脂封止体との界面における密着性が十分ではなく、樹脂封止体の外部から樹脂封止体と基板との界面を通じて樹脂封止体内に水分が浸入し、基板の絶縁基材の表面上に導電性析出物が析出するエレクトロマイグレーションが発生した。絶縁基材と導電体とを交互に複数積層した多層配線構造を有する基板においては、積層された絶縁基材間の導電体にもエレクトロマイグレーションの発生が確認され、絶縁基材間の界面に導電体が析出し、基板の端面を通じて互いに近くに配設された導電体間に短絡が発生した。導電体間に短絡が生じた場合には、電子回路装置は電気的信頼性の劣化に至る。
【0007】
上記特許文献2には、上下絶縁層の端面に金属膜を形成し、この金属膜を用いて上下絶縁層の界面を封止した厚膜薄膜混成多層回路基板に関する発明が開示されている。絶縁層の密着力に対して金属膜の密着力が大きいので、上下絶縁層の界面の剥離を防止することができ、水分の浸入に起因するエレクトロマイグレーションを防止することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された発明においては、水分の浸入に起因するエレクトロマイグレーションを防止することができるものの、数百V程度の高電圧の通電に伴うエレクトロマイグレーションは発生するので、上下絶縁層の界面に発生する導電性析出物が金属膜に接触した場合、上記のように導電体間に短絡が発生する。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、基板と樹脂封止体との密着性を向上し、エレクトロマイグレーションに起因する導電体間の短絡を防止することができ、電気的信頼性を向上することができる電子回路装置を提供することである。
【0010】
更に、本発明は、上記電子回路装置を簡易に製作することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1の特徴は、電子回路装置において、絶縁基材に導電体が配設された基板と、基板上に配設された電子部品と、基板及び電子部品を覆う樹脂封止体と、基板の端面と樹脂封止体との間に配設され、基板と樹脂封止体との密着性に比べて高い密着性を有する樹脂被膜とを備える。
【0012】
第1の特徴に係る電子回路装置において、基板は絶縁基材と導電体とを交互に複数積層した多層構造を有し、樹脂被膜は絶縁基板の端面からそれに積層される他の絶縁基板の端面に渡って配設されていることが好ましい。
【0013】
第1の特徴に係る電子回路装置において、基板の絶縁基材は熱硬化型樹脂接着剤を含浸させたガラス繊維クロスにより構成され、樹脂被膜は、その一部をガラス繊維クロスに含浸させ、絶縁基板間の界面の一部に含浸領域を構成していることが好ましい。
【0014】
第1の特徴に係る電子回路装置において、樹脂被膜の絶縁基材の端面上の膜厚寸法に対して、樹脂被膜の絶縁基材の端面から界面の一部に至る含浸寸法が大きいことが好ましい。
【0015】
第1の特徴に係る電子回路装置において、樹脂封止体はオルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂により構成され、樹脂被膜は、ポリイミド樹脂、速硬化型液性エポキシ樹脂、シロキシサン樹脂のいずれか1つにより構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の実施例に係る第2の特徴は、電子回路装置の製造方法において、絶縁基材に導電体を有し、複数の基板形成領域が規則的に配列された製作用基板を形成する工程と、製作用基板において基板形成領域間の一部に絶縁基材の端面の少なくとも一部が露出するスリットを形成する工程と、製作用基板においてスリット内壁面の絶縁基材の端面に絶縁性を有する樹脂被膜を形成する工程と、製作用基板において基板形成領域間の他の一部を切断し、製作用基板の切断された基板形成領域から複数の基板を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄型化並びに小型化を実現しつつ、基板と樹脂封止体との密着性を向上し、エレクトロマイグレーションに起因する導電体間の短絡を防止することができ、電気的信頼性を向上することができる電子回路装置を提供することができる。
【0018】
更に、本発明によれば、上記電子回路装置を簡易に製作することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る電子回路装置の回路システムブロック図である。
【図2】一実施例に係る電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた平面図(上面図)である。
【図3】図2に示す電子回路装置の一部樹脂封止体を取り除いた底面図(下面図)である。
【図4】図2及び図3に示す電子回路装置の側面断面図である。
【図5】図2乃至図3に示す電子回路装置の樹脂封止体を含む全体斜視図である。
【図6】図4に示す基板の要部断面図である。
【図7】一実施例に係る電子回路装置の第1のトランスの分解斜視図である。
【図8】一実施例に係る電子回路装置の製造方法を説明する、第1工程における製作用基板の平面図である。
【図9】第2の工程における製作用基板の平面図である。
【図10】第3の工程における製作用基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
本発明の一実施例は、特に外部環境下において使用される電源ユニットに組み込まれる電源モジュール(インテリジェントパワーモジュール:IPM)としての電子回路装置に本発明を適用した例を説明するものである。ここでは、電子回路装置はDC−DCコンバータである。
【0023】
[電子回路装置の電子回路システムブロック構成]
図1に示すように、一実施例に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの電源モジュールとして構築されている。この電子回路装置1は、トランジスタ部2、第1のトランス(メイントランス)3、コンデンサ41、42、43(電子部品)、ダイオード(電子部品)5、制御部6、第2のトランス(ドライブ用トランス)7及び温度検出部8の複数の電子部品を少なくとも備えている。また、電子回路装置1においては、入力端子Vin+、Vin-、出力端子Vout+、Vout-、直流電圧端子DCIN、切換信号端子ON/OFF、出力電圧調整端子TRM、リモートセンシング端子Vs+、Vs-が配設されている。
【0024】
トランジスタ部2は、第1の絶縁ゲート型トランジスタ(以下、単にIGFET(insulated gate field effect transistor)という。)21と、第2のIGFET22と、ダイオード23及び24とを備えている。ここで、IGFETとは、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、MISFET(metal insulated semiconductor field effect transistor)のいずれも含む意味において使用される。なお、トランジスタ部2においては、同等の機能を有していれば、IGFETに限定されるものではなく、例えばIGBT(insulated gate bipolar transistor)、バイポーラトランジスタ等を使用することができる。
【0025】
第1のIGFET21の主電極の一端は入力端子Vin+に接続され、主電極の他端は第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第1のIGFET21の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード23が設けられている。第2のIGFET22の主電極の他端は入力端子Vin-に接続され、ゲート電極は第2のトランス7に接続されている。第2のIGFET22の主電極の一端と他端との間には逆バイアス方向にダイオード24が設けられている。また、入力端子Vin+とVin-との間にはコンデンサ42が挿入されている。
【0026】
第1のトランス3は、一次側巻線(コイル)31、二次側巻線(コイル)32及びコア33を備えている。一次側巻線31の一端はトランジスタ部2の出力つまり第1のIGFET21の主電極の他端及び第2のIGFET22の主電極の一端に接続され、他端はコンデンサ41を電気的に直列に介在させて入力端子Vin-に接続されている。二次側巻線32の一端はダイオード5を電気的に直列に介在させて出力端子Vout+に接続され、他端は出力端子Vout-に接続されている。
【0027】
出力端子Vout+とVout-との間には、コンデンサ43、温度検出部8のそれぞれが電気的に並列に挿入されている。温度検出部8は、電子回路装置1の温度を検出し、その検出結果を制御部6に出力する。制御部6においては、温度検出部8からの検出結果に基づき予め設定された温度上昇が検出された場合には、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の動作を停止させる制御、すなわちこの電子回路システムの動作を停止させる制御を行うことができる。
【0028】
制御部6は、図示しないが、制御用ICとフォトカプラとを少なくとも備えている。この制御部6は、切換信号端子ON/OFFから入力される切換信号に基づき、この電子回路装置1のDC−DCコンバータの動作の制御を行う。
【0029】
[電子回路装置の動作]
図1に示す一実施例に係る電子回路装置1において、まず入力端子Vin+、Vin-間に変換前の直流電圧が与えられ、更に直流電圧端子DCINには直流電圧例えば12Vが供給され、切換信号端子ON/OFFには電子回路装置1の切換信号(起動信号)が与えられる。切換信号端子ON/OFFにON信号が与えられると、制御部6は、第2のトランス7を介してトランジスタ部2の第1のIGFET21のON動作を行い、第2のIGFET22のOFF動作を行う。第1のIGFET21のON動作が行われると、トランジスタ部2(第1のIGFET21の主電極の他端)から第1のトランス3の一次側巻線31に直流電流が流れる。この一次側巻線31に直流電流が流れると、電磁誘導作用によって二次側巻線32に直流電流が発生する。この直流電圧は出力端子Vout+、Vout-間に変換後の直流電圧として出力される。
【0030】
一実施例に係る電子回路装置1においては、変換前の直流電圧は例えば385Vであり、変換後の直流電圧は例えば12V又は24Vである。
【0031】
[電子回路装置の基本デバイス構造]
一実施例に係る電子回路装置1の基本的なデバイス断面構造は図2乃至図5に示す通りである。電子回路装置1は、第1の表面11A及びそれに対向する第2の表面11Bを有する基板(回路基板)11と、基板11に第1の表面11Aから第2の表面11Bに渡って配設された磁性体と、この磁性体の底面(図4中、下側表面であって、電子回路装置1の実装面側)に向かい合わせて配設され、金属製板材により構成された応力緩衝体91と、基板11、磁性体及び応力緩衝体91の少なくとも磁性体側を被覆する樹脂封止体17とを備えている。
【0032】
一実施例において、電子回路装置1の磁性体は、前述の第1のトランス3又は第2のトランス7を構築する強磁性体である。この第1のトランス3(及び第2のトランス7)の詳細な構造は後述する。また、一実施例において、磁性体は第1のトランス3及び第2のトランス7を構築するが、これに限定されるものではなく、磁性体はリアクタンス、インダクタ等を構築してもよい。
【0033】
一実施例において、応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮によって磁性体に及ぼす応力を減少することができる機能を有し、更に磁性体(第1のトランス3及び第2のトランス7)から発生する熱を樹脂封止体17の外部に放出する機能を有する。
【0034】
[基板(回路基板)の構成]
図2乃至図4及び図6、特に図6に示すように、電子回路装置1の基板11には、一実施例において、第1の絶縁基材111、112、第2の絶縁基材と第1の導電体115、116、第2の導電体117、118とを交互に積層した多層配線基板(多層回路基板)が使用されている。基板11の第1の表面11A(図4中及び図6中、上側表面)となる第1の絶縁基材111の表面上には第1の導電体115が配設されている。基板11の第1の表面11Aとは対向する第2の表面11B(図4中及び図6中、下側表面又は裏面)となる第1の絶縁基材112の表面上(裏面上)には第1の導電体116が配設されている。第2の絶縁基材113は第1の絶縁基材111と112との間に配設されている。この第2の絶縁基材113の第1の表面11A側の表面上には第2の導電体117が配設され、第2の絶縁基材113の第2の表面11A側の表面上(裏面上)には第2の導電体118が配設されている。
【0035】
第1の導電体115、116はいずれも電子部品を基板11に実装しかつ電気的に接続するための端子、電子部品間や電子部品と後述するリード180等との間を電気的に接続する配線等として機能する。第2の導電体117、118はいずれも第1の導電体115と116との間を電気的に接続する機能を有する。
【0036】
第1の導電体115、116、第2の導電体117、118にはここでは同一導電性材料が使用されている。例えば、これらの導電体にはCu、Cu合金、Au等の導電性に優れた金属箔又は金属膜が使用されている。第1の導電体115、116、第2の導電体117、118において、例えばCu箔により構成される場合、その膜厚は例えば20μm−80μmに設定されている。また、特に、第1の導電体115、116においては、ボンダビリティを向上するために、上記金属箔又は金属膜の表面上に例えばNiめっき膜を形成した複合膜を使用することができる。
【0037】
第1の絶縁基材111、112は、少なくとも電気的絶縁機能を有し、かつ接着機能を有する。一実施例において、第1の絶縁基材111、112には、積層のときに硬化されておらず、積層後に硬化される、例えば熱硬化型樹脂接着剤を含浸させたガラス繊維クロス、いわゆるプリプレグが使用されている。ガラス繊維クロスには、例えばSiO2を主成分とし、Al23、CaO、MgO、R2O、B23等の少なくともいずれかが添加された3μm−10μm径を有する単糸を数十本から数百本程度束ね、これを平織りしたものである。熱硬化型樹脂接着剤には例えばエポキシ樹脂が使用されている。第1の絶縁基材111、112の膜厚は例えば180μm−220μmに設定されている。
【0038】
第2の絶縁基材113は、同様に、少なくとも電気的絶縁機能を有し、かつ接着機能を有する。第2の絶縁基材113は、一実施例において、表面上に第2の導電体117、裏面上に第2の導電体118をそれぞれ接着し、このときに硬化されているので、積層のときには既に硬化されている。第2の絶縁基材113には、第1の絶縁基材111及び112と同様に、例えば熱硬化型樹脂接着剤を含浸させたガラス繊維クロスが使用されている。第2の絶縁基材113の膜厚は例えば50μm−70μmに設定されている。
【0039】
なお、特に符号を付けて説明しないが、第1の導電体115、第2の導電体117、118、第1の導電体116のそれぞれの間の電気的接続は、第1の絶縁基材111、第2の絶縁基材113、第1の絶縁基材112のそれぞれに配設された接続孔内に埋設された接続孔配線(スルーホール配線又はビア配線)を通じて行われている。この接続孔配線には、電気導電性に優れ、半導体製造過程において製作し易い、例えばCu、Cu合金、Au等の金属材料が使用されている。また、一実施例において、基板11は、第1の絶縁基材111、第2の絶縁基材113、第1の絶縁基材112の3層の絶縁基材と、第1の導電体115、第2の導電体117、118、第1の導電体118の4層の導電体とを備えているが、これらの積層数に限定されるものではない。すなわち、基板11は、1層、2層若しくは4層以上の層数を有する絶縁基材と、1層乃至3層若しくは5層以上の層数を有する導電体とを備えた、単層配線基板又は多層配線基板であってもよい。
【0040】
このように構成される基板11には、図2、図3、図4及び図6に示すように、側面11Cの実質的に全域に、基板11と樹脂封止体17との密着性に比べて高い密着性を有し、かつ絶縁性を有する樹脂被膜37が配設されている。ここで、実質的に全域とは、後の製造方法において説明する製作用基板1100に配設した連結部1103を少なくとも除く、基板11の周囲のほぼ全域並びに基板11の厚さ方向のほぼ全域という意味で使用されている。結果的に、樹脂被膜37は、基板11の第1の絶縁基材111の端面から第2の絶縁基材113の端面に渡って、更に第2の絶縁基材113の端面から第1の絶縁基材112の端面に渡って配設されている。基板11の側面11Cにおいて、第1の絶縁基材111と第2の絶縁基材113との界面並びに第2の絶縁基材113と第1の絶縁基材112との界面は樹脂被膜37によって覆われる。また、樹脂被膜37は、特に基板11の側面11Cから離間距離を十分に確保することができない領域には積極的に配設されている。
【0041】
更に、基板11の第1の絶縁基材111、112、第2の絶縁基材113のそれぞれの樹脂被膜37が配設された端面から内部に向かって、特にそれぞれの界面の端面から内部に至る一部には、樹脂被膜37の一部をこれら絶縁基材に含浸させた含浸領域37Aが配設されている。ここでは、前述のように、第1の絶縁基材111、112、第2の絶縁基材113のそれぞれにはガラス繊維クロスが使用されているので、含浸領域37Aはガラス繊維クロスに樹脂被膜37の一部の樹脂を含浸させることにより構成されている。
【0042】
一実施例において、樹脂被膜37には、基板11の特に第1の絶縁基材111、112、第2の絶縁基材113のそれぞれと樹脂封止体17との密着性を高め、かつ各層の絶縁基材間の接合を主目的として、少なくとも絶縁基材間の界面の一部に含浸させることができる、ポリイミド系樹脂が使用されている。このポリイミド系樹脂は、各層の絶縁基材の端面に塗布した後、例えば150℃の温度において1時間の加熱を行い、ポリアミド酸形態として形成される。ポリイミド系樹脂は、絶縁材料として使用する場合、例えば250℃〜350℃の高温度において2時間〜6時間の加熱を行い硬化させ、ポリイミド形態として形成されるが、ここでは低温度において短時間の加熱を行い、粘度が低い性質を利用して含浸効果が優先されている。
【0043】
図6において、樹脂被膜37の基板11の側面11Cからそれに垂直方向の膜厚t1は例えば1μm−5μmの範囲内に設定されている。このとき、含浸領域37Aの基板11の側面11Cからそれに垂直方向の含浸寸法(含浸幅)t2を、樹脂被膜37の膜厚t1に比べて大きく、例えば20μm−50μmの範囲内に設定することができる。
【0044】
また、同様の趣旨から、樹脂被膜37には、例えば耐熱性を有する速硬化型液性エポキシ樹脂を使用することができる。このとき、樹脂被膜37の膜厚t1は例えば5μm−20μmの範囲内に設定され、含浸領域37Aの含浸寸法t2を例えば10μm−30μmの範囲内に設定することができる。更に、樹脂被膜37にはシロキサン樹脂を使用することができる。なお、後述する樹脂封止体17にはエポキシ系樹脂が使用されるが、このエポキシ系樹脂はオルソクレゾールノボラックエポキシ系樹脂であり、このエポキシ系樹脂には離型剤が含まれるので、基板11との間の密着性が弱く、実効的な含浸効果を期待することができない。
【0045】
基板11は、一実施例において、必ずしもこの数値に限定されるものではないが、長辺を例えば60mm−62mmに設定し、短辺を例えば42mm−44mmに設定した長方形の平面形状を有する。図4及び図6に示す基板11の厚さは例えば0.8mm−1.6mmに設定されている。
【0046】
[電子部品の構成]
図2及び図4に示すように、基板11の第1の表面11A上には、電子部品として、前述の図1において説明したトランジスタ部2、第1のトランス(磁性体)3、コンデンサ42、43、ダイオード5、制御部6、第2のトランス(磁性体)7及び温度検出部8等が実装されている。図3及び図4に示すように、基板11の第2の表面11Bには、前述の図1において説明した電子部品として、例えばコンデンサ41等が実装されている。
【0047】
図1、図2及び図4に示すように、トランジスタ部2は、第1のIGFET21及びダイオード23を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置と、同様に第2のIGFET22及びダイオード24を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置とを備え、構築されている。トランジスタ部2は、第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の右下側に配設されている。
【0048】
コンデンサ42は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。樹脂封止体には一実施例においてガラスエポキシ樹脂を実用的に使用することができる。コンデンサ42は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の右下側に4個配設されている。コンデンサ43は例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ43は、同様に目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の左下側に6個配設されている。
【0049】
また、コンデンサ41は、前述のコンデンサ42及び43と同様に、例えばコンデンサ本体を樹脂封止体により封止して構成されている。コンデンサ41は、目的とする容量値によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第2の表面11Bにおいて、図3中、周辺領域の左下側に4個配設されている。このコンデンサ41はコンデンサ42の配置位置に対向する位置に配置されている。
【0050】
ダイオード5は例えばダイオード本体具体的にはダイオードチップ(半導体素子)を樹脂封止体により封止して構成されている。ダイオード5は、目的とする整流特性によりその搭載個数は限定されるものではないが、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の左上側に1個配設されている。
【0051】
制御部6は、トランジスタ、論理回路、抵抗、容量等、少なくともトランジスタ部2の制御を行う回路を有する半導体チップを樹脂封止体により封止した半導体装置(制御用IC)61と、フォトカプラ62及び63とを備え、構築されている。制御部6の半導体装置61は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の右上側に配設されている。フォトカプラ62及び63は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、左上側に配設されている。
【0052】
温度検出部8は、基板11の第1の表面11Aにおいて、図2中、周辺領域の左上側であって、ダイオード5とフォトカプラ62及び63との間に配設されている。この温度検出部8はダイオード5を配設した領域から離間した位置に配設され、温度検出部8自体の熱による破損や誤動作を防止するようになっている。
【0053】
[磁性体(第1のトランス及び第2のトランス)の構成]
一実施例に係る電子回路装置1において、第1のトランス3並びに第2のトランス7は磁性体詳細には強磁性体により構築されている。第1のトランス3は、図2、図3、図4及び図7に示すように、基板11の第1の表面11Aの中央領域において、開口15内に挿入されて配設されている。開口15は、一実施例において、基板11の第1の表面11Aからそれに対向する第2の表面11Bに貫通する貫通穴として構成されている。
【0054】
図7に示すように、一実施例において第1のトランス3にはシートトランス構造が採用されている。詳細な断面構造の説明は省略するが、第1のトランス3は、一次側巻線31及び二次側巻線32を有し、中央部分に貫通穴を有するトランス基板12と、トランス基板12の表面12A(第1のトランス3の表面3A側)、それに対向する裏面12B(表面3B側)及び側面12Cの一部に沿って配設され中央部分の貫通穴125にもトロイダルコアの磁心として配設されたコア33とを備えている。
【0055】
トランス基板12は、例えばガラスエポキシ樹脂により構成された絶縁基材121と、一次側巻線31及び二次側巻線32を構築する例えば導電体122とを備えている。この導電体122には例えばCu、Cu合金、Au等の導電性に優れた材料が使用されている。特に、絶縁基板121には、前述の基板11と同様に熱硬化型樹脂接着剤を含浸させたガラス繊維クロスにより構成することが好ましい。
【0056】
コア33は、例えば金属酸化物をセラミックとして燒結したフェライト磁性材により形成された強磁性体である。金属酸化物には、例えば酸化鉄(Fe22)を主成分とし、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等の金属化合物を混合したものを実用的に使用することができる。また、コア33は他にアモルファス磁性材料により形成してもよい。コア33は、磁心331Cを一体に構成しかつ突出させ、この磁心331Cを中心としてトランス基板12の両方の側面12Cに沿って突出し、トランス基板12の裏面12B側に配設された第1のコア(下部コア材)331と、第1のコア331の磁心331C及び突出した両側に磁気的に接続され、トランス基板12の表面12A側に配設された第2のコア(上部コア材)332とを備えている。第1のコア331の断面形状はE型形状であり、第2のコア332の断面形状が板材であってI型形状であることから、コア33はE−I型コア形状を有する。図7中、第1のコア331の底面は磁性体の表面3Bになり、第2のコア332の上面は磁性体の表面3Aになる。なお、コア33はE−E型コア形状であってもよい。
【0057】
第2のトランス7は、第1のトランス3に対して誘導起電力並びに全体のサイズを小さく設定しているが、第1のトランス3の構造と同様にシートトランス構造により構成されている。また、第1のトランス3の基板11への実装方法と同様に、第2のトランス7は、基板11に配設された開口16に挿入された状態において実装されている。
【0058】
第2のトランス7のコア73の表面7Aは第1のトランス3のコア33の表面3Aに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。また、コア73の表面7Aに対向する裏面7Bはコア33の表面3Bに対応する(双方の表面は同等の方向に存在する表面である)。
【0059】
[硬化型応力緩和材の構造及び特性]
図2乃至図4に示すように、一実施例に係る電子回路装置1においては、第1のトランス3のコア33の側面周囲、つまりトランス基板12の2つの長辺及び2つの短辺に沿う4つの側面12Cに対応しそれぞれに平行な4つの側面にのみその全域に少なくとも硬化型応力緩和材35が配設されている。ここでは、図4に示すように、コア33の上面3A並びに下面3Bには硬化型応力緩和材35は配設されていない。硬化型応力緩和材35の膜厚はコア33の側面から離れるに従って薄く設定されている。コア33の側面から最も離れた位置(終端)の硬化型応力緩和材35の膜厚は実質的にゼロである。第1のトランス3のコア33の側面に配設された硬化型応力緩和材35は、第1のトランス3とそれを実装する基板11との接続領域まで引き延ばされ、この接続領域における応力の減少に寄与する。
【0060】
一実施例において、硬化型応力緩和材35には、例えば白色半流動性を有する加熱硬化型接着性液状シリコーンゴム(熱硬化型シリコーン樹脂)が使用されている。この加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、硬化前、白色半流動性を有し、例えば23℃の温度において約3.5Pa・s−4.5Pa・sの粘度を有する。加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、コーティング技術、ポッティング技術等を用いて塗布した後、例えば150℃、1時間の熱処理を行い硬化される。硬化後において、加熱硬化型接着性液状シリコーンゴムは、白色ゴム状に変化し、例えば20−22の硬さ(タイプA)を有し、例えば2.0×10-4/℃−2.2×10-4/Kの線膨張係数を有する。
【0061】
なお、硬化型応力緩和材35は熱硬化型シリコーン樹脂に限定されない。第1のトランス3のコア33に樹脂封止体17の収縮により発生する応力を減少する材料であれば、紫外線硬化型シリコーン樹脂(ゴム)若しくは室温硬化型シリコーン樹脂(ゴム)、又は熱硬化型、紫外線硬化型、室温硬化型のいずれかのエポキシ樹脂を、硬化型応力緩和材35として使用することができる。硬化型でない例えばゲル状の樹脂はトランスファモールド法を用いた樹脂封止体17の製造工程において流出してしまい、コア33の側面にゲル状の樹脂を確実に付着させることは難しい。
【0062】
[リードの構造]
図2乃至図5に示すように、基板11の長辺に沿った一側面(図2中及び図3中下側側面、図5中左側側面)にはリード(外部端子)180−189が配列され、一側面に対向する他の一側面(図2中及び図3中上側側面、図5中右側側面)にはリード190−193が配列されている。これらのリード180−193において、樹脂封止体17内の部分はインナー部であり、樹脂封止体17外に突出した部分はアウター部である。
【0063】
リード180は直流電圧端子DCINとして使用される。リード181は切換信号端子ON/OFFとして使用される。リード182は入力端子Vin+として使用される。リード183は入力端子Vin-として使用される。リード184は出力端子Vout-として使用される。リード185は負極のリモートセンシング端子Vs-として使用される。リード186は空き端子NCである。リード187は出力電圧調整端子TRMとして使用される。リード188は正極のリモートセンシング端子Vs+として使用される。リード189は出力端子Vout-として使用される。空き端子NCとして使用されるリード186は一実施例において放熱経路としての機能を有する。
【0064】
また、リード190−193は空き端子NCである。この空き端子NCとして使用されるリード190−193は同様に放熱経路としての機能を有する。
【0065】
リード180−193は電気伝導性に優れた例えばCu又はCu合金により構成されている。この導電性材料は、熱抵抗も小さく、熱伝導性にも優れている。リード180−193の厚さは例えば0.3mm−0.5mmに設定されている。
【0066】
リード180−193は符号は付けないが基板11に配設された端子に接着層を介して電気的かつ機械的に接続されている。この接着層には、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れた例えば半田、ペースト等を使用することができる。半田としては例えばSn−Ag−Cu系半田を実用的に使用することができる。また、ペーストには例えば導電性ペーストとして用いられるAgペーストを実用的に使用することができる。
【0067】
[応力緩衝体の構造]
図3乃至図5に示すように、応力緩衝体91は、その表面91A(図4中、上側表面)に接着層4を介在して第1のトランス3のコア33の第1のコア331の下面3Bを接着し、第1のトランス3に取り付けられている。この応力緩衝体91は、例えば製造過程においてトランスファモールド法を用いて電子回路装置1の樹脂封止体17を成形した直後の温度収縮に伴い第1のトランス3のコア(磁性体)33に与える応力を、応力緩衝体91の剛性によって減少する機能を有する。すなわち、応力緩衝体91は、樹脂封止体17の熱収縮に伴う圧縮応力に反発する機能を有し、実効的にコア33に加わる応力を減少する。また、応力緩衝体91は、電子回路装置1の製品として完成した後の実稼働における温度上昇並びに温度下降の温度サイクルによって生じると樹脂封止体17の熱膨張並びに熱収縮に伴うコア33に与える応力を減少する機能を有する。
【0068】
このようなコア33に与える応力を極力減少し、かつ電子回路装置1の薄型化並びに小型化を図るために、応力緩衝体91は、表面91Aのサイズをそれに対向するコア33の下面3Bのサイズに比べて出来る限り大きく設定している。応力緩衝体91のサイズが大きい方が樹脂封止体17の割合に対する応力緩衝体91の割合が多くなるので、応力緩衝体91によってコア33に加わる応力を確実に減少することができる。また、換言すれば、樹脂封止体17の割合が少なくなるので、応力の発生要因そのものを減少することができる。また、応力緩衝体91は、特に薄型化される樹脂封止体17の機械的強度を向上することができる。
【0069】
応力緩衝体91は金属製板材により構成され、この金属製板材には、樹脂封止体17に比べて高い適度な剛性を有し、樹脂封止体17に比べて遙かに熱伝導性に優れ、更にコア33の線膨張係数に近い、例えばCu(線膨張係数:1.7×10-6)板又はCu合金板を使用することが好ましい。このCu板又はCu合金板は、そのまま(無垢状態)でも使用可能であるが、表面に例えばNi膜等のめっき膜を形成してもよい。
【0070】
図4に示すように、接着層4は、第1のトランス3と応力緩衝体91とを機械的に装着する機能に加えて、双方の間を電気的に絶縁する機能を備えている。この接着層4には、一実施例において、例えばガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグが使用される。なお、ガラス繊維クロスに熱硬化型接着剤を含浸させたプリプレグに代えて、接着層4には例えば熱硬化性接着剤を両面に塗布したガラス繊維クロスを使用することができる。
【0071】
[樹脂封止体の構造]
図2乃至図5に示すように、一実施例に係る電子回路装置1においては、前述のように複数の電子部品を実装した基板11が樹脂封止体17により気密封止されている。樹脂封止体17はトランスファモールド法により成形されている。一実施例に係る電子回路装置1は、DC−DCコンバータを1つの部品としてフルモールド化されたものである。前述のように、樹脂封止体17には離型剤が含まれるオルソクレゾールノボラックエポキシ系樹脂が使用されている。
【0072】
一実施例に係る電子回路装置1においては、基板11の側面12Cに前述のように樹脂被膜37が配設されているので、基板11の側面12Cと樹脂封止体17との密着性が改善されている。更に、基板11の第1の絶縁基材111と第2の絶縁基材113との界面及び第2の絶縁基材113と第2の絶縁基材112との界面の一部に、樹脂被膜37の一部を含浸させた含浸領域37Aが生成されているので、界面における接着力が改善されている。この一実施例に係る電子回路装置1においては、高温高湿バイアス試験を実施し、試験開始から1500時間を経過しても、電気的信頼性を損なう結果は得られなかった。試験条件は、温度85℃、湿度85%、印加される直流電圧500Vである。すなわち、基板11と樹脂封止体17との密着性の劣化に基づく水分の浸入、基板11の上下絶縁基材間の界面の水分の浸入等によって生成されたエレクトロマイグレーションに起因する短絡経路の発生がみられず、近接した導電体間や上下導電体間に短絡が発生することを防止することができた。
【0073】
[基板の製造方法]
前述の基板12は以下の製造方法を用いて製作されている。
【0074】
まず最初に、図8に示すように、複数の基板11を一度に製作するための製作用基板1100が製作される。製作用基板1100は、前述の図6に示すように、下層から上層に向かって、第1の絶縁基材112、第2の絶縁基材113、第1の絶縁基材111のそれぞれを順次積層して形成されたものである。第1の絶縁基材111の表面上には第1の導電体115が接着され、第2の絶縁基材113の両面上には第2の導電体117及び118が接着され、第1の絶縁基材112の表面上には第1の導電体116が接着されている。
【0075】
この製作個数に限定されるものではないが、一実施例において、製作用基板1100には、一方向に5個の基板形成領域1101が配列されている。1つの基板形成領域1101は1つの基板11に相当し、最終的には1つの製作用基板1100から合計5個の基板11が製作される。
【0076】
図9に示すように、製作用基板1100のそれぞれの基板形成領域1101に第1のトランス3を挿入する開口15、第2のトランス7を挿入する開口16が形成されるとともに、基板形成領域1101間の周囲の一部を連結部1103として残して周囲の他部にスリット1102が形成される。
【0077】
スリット1102は、ここでは製作用基板1100の表面からそれに対向する裏面に貫通するスリットであり、主に側面11Cを露出させここに樹脂被膜37を形成するために製作される。スリット1102は、各層の導電体から基板形成領域1101間までの離間寸法を十分に確保することができない領域、つまり上下に積層される導電体間の短絡経路が短い領域に配設されている。スリット1102の形成方法は特に限定されるものではないが、ここではスリット1102はルータを用いた機械加工によって形成されている。また、ここでは、スリット1102、開口15、16のそれぞれを形成する工程は同一製造工程であるが、別の製造工程を用いて双方を形成することができる。
【0078】
連結部1103は、基板形成領域1101間を相互に連結し、同一製造工程において製作用基板1100のすべての基板形成領域1101に樹脂被膜37を形成することができる機能を有する。連結部1103は、各層の導電体から基板形成領域1101間までの離間寸法を十分に確保することができる領域、つまり上下に積層される導電体間の短絡経路が長い領域に配設されている。連結部1103は1つの基板形成領域1101に対して3カ所以上配設されていれば、製造過程中に発生する応力に対する機械的強度を確保することができる。
【0079】
図10に示すように、少なくとも製作用基板1100の少なくともスリット1102の内壁に相当する側面11Cに樹脂被膜37が形成される。ここでは、樹脂被膜37には前述のようにポリイミド系樹脂が使用される。ポリイミド系樹脂は、ポッティング法を用いて塗布(コーティング)を行うか、フォトレジスト技術によって製作したマスクを用いて選択的に形成するか、又は刷毛塗りによって塗布を行う。ポリイミド系樹脂は、前述の条件を用いて側面11Cに形成することにより、図6に示すように樹脂被膜37として形成されるとともに、一部を各層の絶縁基材に含浸させて含浸領域37Aを形成する。
【0080】
引き続き、製作用基板1100のそれぞれの基板形成領域1101間、つまりスリット1102の中心部分並びに連結部1103を切断し、製作用基板1100から個々に個片化された複数の基板11が製作される。切断には例えばダイシングカッタが使用され、機械的加工を用いて切断が行われる。
【0081】
[電子回路装置の特徴]
このように構成される一実施例に係る電子回路装置1においては、基板11の側面11Cに樹脂被膜37を配設し、基板11と樹脂封止体17との密着性を向上するとともに、基板11の側面11C部分に樹脂被膜37の一部を含浸させた含浸領域37Aを配設したので、薄型化並びに小型化を実現しつつ、水分の浸入等に起因するエレクトロマイグレーションによる導電体間の短絡を防止することができ、電気的信頼性を向上することができる。
【0082】
更に、電子回路装置1の製造方法においては、基板11の側面11Cに樹脂被膜37を形成し、この樹脂被膜37の一部を絶縁基材に含浸させて含浸領域37Aを形成することができるので、簡易な方法によって電気的特性を向上することができる。
【0083】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を一実施例及び実施例2によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【0084】
例えば、本発明は、電子回路装置1としてDC−DCコンバータに限定されるものではなく、DC−DCコンバータとその前段にそれとともに電源モジュールを構築する高周波対策用力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を電子回路装置1としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、薄型化並びに小型化を実現しつつ、基板と樹脂封止体との密着性を向上し、エレクトロマイグレーションに起因する導電体間の短絡を防止することができ、電気的信頼性を向上することができる電子回路装置及びその製造方法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…電子回路装置
11…基板
12…トランス基板
111、112…第1の絶縁基材
113…第2の絶縁基材
115、116…第1の導電体
117、118…第2の導電体
1100…製作用基板
1101…基板形成領域
1102…スリット
1103…連結部
17…樹脂封止体
180−193、1800−1808、1900−1903…リード
2…トランジスタ部
21…第1のIGFET
22…第2のIGFET
3…第1のトランス
33…コア
37…樹脂被膜
37A…含浸領域
4…接着層
41−43…コンデンサ
5…ダイオード
6…制御部
7…第2のトランス
8…温度検出部
91…応力緩衝体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材に導電体が配設された基板と、
前記基板上に配設された電子部品と、
前記基板及び前記電子部品を覆う樹脂封止体と、
前記基板の端面と前記樹脂封止体との間に配設され、前記基板と前記樹脂封止体との密着性に比べて高い密着性を有する樹脂被膜と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記基板は前記絶縁基材と前記導電体とを交互に複数積層した多層構造を有し、前記樹脂被膜は前記絶縁基板の端面からそれに積層される他の前記絶縁基板の端面に渡って配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記基板の前記絶縁基材は熱硬化型樹脂接着剤を含浸させたガラス繊維クロスにより構成され、前記樹脂被膜は、その一部を前記ガラス繊維クロスに含浸させ、前記絶縁基板間の界面の一部に含浸領域を構成していることを特徴とする請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記樹脂被膜の前記絶縁基材の端面上の膜厚寸法に対して、前記樹脂被膜の前記絶縁基材の端面から前記界面の一部に至る含浸寸法が大きいことを特徴とする請求項3に記載の電子回路装置。
【請求項5】
樹脂封止体はオルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂により構成され、前記樹脂被膜は、ポリイミド樹脂、速硬化型液性エポキシ樹脂、シロキシサン樹脂のいずれか1つにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子回路装置。
【請求項6】
絶縁基材に導電体を有し、複数の基板形成領域が規則的に配列された製作用基板を形成する工程と、
前記製作用基板において前記基板形成領域間の一部に前記絶縁基材の端面の少なくとも一部が露出するスリットを形成する工程と、
前記製作用基板において前記スリット内壁面の前記絶縁基材の端面に絶縁性を有する樹脂被膜を形成する工程と、
前記製作用基板において前記基板形成領域間の他の一部を切断し、前記製作用基板の切断された基板形成領域から複数の基板を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする電子回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79760(P2012−79760A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220939(P2010−220939)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】