説明

電子材料用洗浄剤組成物及び電子材料の洗浄方法

【課題】洗浄性に優れた電子材料用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明の電子材料用洗浄剤組成物は、(A)炭素数が8〜22の脂肪酸の塩を0.5〜30質量%、並びに(B)オキシカルボン酸及びポリカルボン酸の塩(但し、アンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を1〜50質量%含有することを特徴とする。本発明の電子材料の洗浄方法は、被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、本発明の電子材料用洗浄剤組成物を用い、加工後の電子材料を洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料(半導体、フォトマスク基板、LCD基板、光学ガラス、及びガラスディスク等)を洗浄する電子材料用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体材料、磁気記録材料、及び光学部品材料として、ガラス、セラミックス、及びシリコン等の高脆性材料が多用されている。高脆性材料は、硬く脆い性質がある。高脆性材料を切削、研削、又は研磨等の方法により加工すると、微細な切り屑又は研磨粉が発生し易い。これらの微細な切り屑又は研磨粉は「パーティクル」と呼ばれている。該パーティクルが工具又は被加工材に付着すると、後工程で、傷及び腐食等の不都合が、被加工物及びアルミパッド等に発生するおそれがある。よって、上記パーティクルは、加工後に、洗浄により除去する必要がある。
【0003】
また、半導体材料、磁気記録材料、及び光学部品材料を研磨する工程では、化学的機械研磨(CMP)が多用されている。CMPでは、一般に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及び酸化マンガン等の金属酸化物砥粒が、単独又は2種以上組み合わせて使用されている。これらの砥粒も、CMP後に、洗浄により除去する必要がある。
【0004】
従来より、これらの半導体材料、磁気記録材料、及び光学部品材料を洗浄するための洗浄剤が知られている。例えば、特許文献1には、有機酸化合物と、分散剤及びあるいはそのアンモニウム塩と界面活性剤を用いた電子材料用基板洗浄液が開示されている。特許文献2には、特定の物性の高分子凝集剤と、界面活性剤とを含有する洗浄剤組成物が開示されている。特許文献3には、特定の構造の共重合ポリマー又はその塩を主成分とする洗浄剤組成物が開示されている。特許文献4には、カチオン界面活性剤及びアルカリ剤を含有する洗浄剤組成物が開示されている。特許文献5には、光学部材を酸化セリウム系研磨剤で研磨した後、該光学部材を、加熱した硫酸を主成分とする水溶液で洗浄することが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−7071号公報
【特許文献2】特開平11−43791号公報
【特許文献3】特開2001−64688号公報
【特許文献4】特開平9−241676号公報
【特許文献5】特開2001−342041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、電子材料の洗浄は、電子部品の品質確保及び電子材料の加工装置の損傷防止の観点から重要である。そして従来より、より高性能で、且つ被加工物及び加工装置に対する悪影響を抑制できる電子材料用洗浄剤組成物が求められていた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものである。本発明は、電子材料を洗浄する電子材料用洗浄剤組成物、及び該洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕(A)炭素数8〜22の脂肪酸(但し、オキシカルボン酸は除く。)の塩、並びに(B)オキシカルボン酸の塩及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、いずれもアンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を含有し、全量を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が0.5〜30質量%、上記(B)成分の含有量が2〜50質量%であることを特徴とする電子材料用洗浄剤組成物。
〔2〕(A)炭素数8〜22の脂肪酸(但し、オキシカルボン酸は除く。)の塩、並びに(B)オキシカルボン酸の塩及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、いずれもアンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を含有し、上記(A)成分と上記(B)成分の合計を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が20〜70質量%、上記(B)成分の含有量が30〜80質量%であることを特徴とする電子材料用洗浄剤組成物。
〔3〕全量を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が0.5〜30質量%、上記(B)成分の含有量が2〜50質量%である上記〔2〕記載の電子材料用洗浄剤組成物。
〔4〕上記(A)成分と上記(B)成分との質量比が1:(0.1〜30)である上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物。
〔5〕被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物を用い、加工後の電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法。
〔6〕上記洗浄により、研磨用砥粒及び/又は研磨により発生する微粒子を除去する上記〔5〕記載の電子材料の洗浄方法。
〔7〕被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物を用いて、上記電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の製造方法。
〔8〕上記電子材料が、半導体基板、フォトマスク基板、LCD基板、光学ガラス、又はガラスディスクである上記〔7〕記載の電子材料の製造方法。
〔9〕上記洗浄により、研磨用砥粒及び/又は研磨により発生する微粒子を除去する上記〔7〕又は〔8〕記載の電子材料の製造方法。
〔10〕上記〔7〕乃至〔9〕のいずれかに記載の電子材料の製造方法により得られた上記電子材料を用いて電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子材料用洗浄剤組成物及び本発明の電子材料の洗浄方法によれば、被加工物及び加工装置に対する悪影響を抑制し、且つ砥粒等を効率よく除去することができる。本発明の電子材料の製造方法によれば、傷及び腐食等の不都合の原因となり得るパーティクル等が除去された電子材料を得ることができる。本発明の電子部品の製造方法によれば、パーティクル等に起因する傷及び腐食等の不都合が少ない電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)電子材料用洗浄剤組成物(以下、単に「洗浄剤組成物」という。)
本発明の洗浄剤組成物は、(A)炭素数8〜22の脂肪酸の塩を0.5〜30質量%、並びに(B)オキシカルボン酸及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、アンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を3〜50質量%含有することを特徴とする。また、他の本発明の洗浄剤組成物は、(A)炭素数8〜22の脂肪酸(但し、オキシカルボン酸は除く。)の塩、並びに(B)オキシカルボン酸の塩及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、いずれもアンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を含有し、上記(A)成分と上記(B)成分の合計を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が20〜70質量%、上記(B)成分の含有量が30〜80質量%であることを特徴とする。
【0011】
(A)成分
上記脂肪酸の炭素数は8〜22、好ましくは8〜20、更に好ましくは8〜18である。上記脂肪酸の炭素数が上記範囲未満であると、洗浄性が低下するので好ましくない。また、上記脂肪酸の炭素数が上記範囲を超えると、上記(A)成分の溶解性が低下し、溶解不良又は洗浄剤組成物のゲル化を引き起こすので好ましくない。
【0012】
上記脂肪酸の具体的な構造については特に限定はない。上記脂肪酸は、飽和脂肪酸でもよく、1又は2以上の不飽和結合を有する不飽和脂肪酸でもよい。また、上記脂肪酸は、直鎖脂肪酸でもよく、側鎖を有する分枝脂肪酸でもよい。更に、上記脂肪酸に含まれるカルボキシル基の数にも特に限定はない。上記脂肪酸はモノカルボン酸でもよく、ジカルボン酸又はトリカルボン酸でもよい。更に、上記脂肪酸は、他の官能基を有していてもよい。但し、上記(A)成分は、「オキシカルボン酸」を含まない。
【0013】
上記脂肪酸としてより具体的には、例えば、以下の脂肪酸が挙げられる。直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸が挙げられる。また、直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、及びリノレン酸が挙げられる。上記分枝脂肪酸としては、例えば、イソノナン酸、イソラウリン酸、イソパルミチン酸、及びイソステアリン酸が上げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸及びドデカン二酸が上げられる。
【0014】
上記塩の種類には特に限定はない。上記塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、Li塩、Na塩及びK塩等が挙げられる。また、上記アルカリ土類金属塩としては、Ca塩、Mg塩及びBa塩等が挙げられる。更に、上記アミン塩としては、例えば、(1)モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、及びモノプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、(2)メチルアミン塩、エチルアミン塩、及びプロピルアミン塩等のアルキルアミン塩、(3)モルホリン等の有機アミン塩、並びに(4)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機ポリアミンが挙げられる。上記塩の種類として、アルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩が、水に対する溶解性が高いので好ましい。更に、高脆性材料への影響を抑える上で、アンモニウム塩が特に好ましい。
【0015】
上記(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。例えば、上記脂肪酸又は上記塩の種類が異なる2種以上の上記(A)成分を用いることができる。
【0016】
本発明の電子材料用洗浄剤組成物の全量を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量は0.5〜30質量%、好ましくは1〜25質量%、更に好ましくは1.5〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。上記(A)成分の含有量が上記範囲未満であると、洗浄性が低下するので好ましくない。また、上記(B)成分の含有量が上記範囲を超えると、発泡が生じ、すすぎが困難となるおそれがあることから好ましくない。
【0017】
上記(B)成分を構成する上記オキシカルボン酸は、水酸基及びカルボキシル基を有する限り、その種類及び構造に特に限定はない。上記オキシカルボン酸は、脂肪族オキシカルボン酸でもよく、芳香族オキシカルボン酸でもよい。上記脂肪族オキシカルボン酸として具体的には、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びグルコン酸が挙げられる。上記芳香族オキシカルボン酸として具体的には、例えば、サリチル酸及び没食子酸が挙げられる。上記オキシカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
上記(B)成分を構成する上記ポリカルボン酸の種類及び構造に特に限定はない。例えば、上記ポリカルボン酸は、カルボキシル基を有する単量体の単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体の場合、単量体はカルボキシル基を有する2種以上の単量体のみからなる共重合体でもよく、あるいは、カルボキシル基を有する単量体の1種又は2種以上と、カルボキシル基を有しない他の単量体の1種又は2種以上からなる共重合体でもよい。また、上記ポリカルボン酸は、単独重合体又は共重合体に対し、グラフト重合、酸化、又は付加等の反応、特には高分子化合物の主鎖又は側鎖の官能基の酸化又は加水分解等の反応を行うことにより、分子中にカルボキシル基を導入した化合物でもよい。この化合物として具体的には、例えば、ポリアクリロニトリル等の主鎖又は側鎖の官能基(ニトリル基等)を加水分解によりカルボン酸に変換した化合物が挙げられる。
【0019】
また、上記ポリカルボン酸は、分子中に他の官能基としてカルボキシル基のみを有する化合物の他、メチル基及びエチル基等の炭化水素基(直鎖又は分岐炭化水素基、不飽和又は飽和炭化水素基、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基等。尚、上記炭化水素基はO、S、並びにCl及びBr等のハロゲン等のヘテロ原子を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、上記炭化水素基の炭素数は通常1〜15、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6である。)、水酸基、フェノール性水酸基、カルボニル基、アミノ基、スルホニル基等のカルボキシル基以外の他の官能基を有する化合物でもよい。また、上記ポリカルボン酸では、分子中の一部のカルボキシル基がエステル、イミド、アミド、及び無水物等のようなカルボン酸誘導体に変化していてもよい。
【0020】
上記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸及びウンデシレン酸等の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸等が挙げられる。また、上記カルボキシル基を有する単量体としては、加水分解等によりカルボキシル基に変化する基を有するカルボン酸誘導体でもよい。該カルボン酸誘導体としては、エステル、イミド、アミド及び無水物等が挙げられる。上記カルボン酸誘導体として具体的には、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル(モノメチルエステル、ジメチルエステル、モノエチルエステル、ジエチルエステル等)、アミド及びイミド、並びにマレイン酸イミド、2−メチルマレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル及びマレイン酸モノフェニルエステル等の無水マレイン酸誘導体等の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸の誘導体等が挙げられる。また、上記カルボキシル基を有する単量体として、窒素原子を有しない単量体を用いることができる。
【0021】
また、上記のように、上記ポリカルボン酸が共重合体の場合、単量体として、カルボキシル基を有しない他の単量体の1種又は2種以上を用いることができる。かかる他の単量体の種類に特に限定はない。上記他の単量体としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等のα−オレフィン、スチレン等の芳香族ビニル化合物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物等が挙げられる。尚、上記他の単量体として、窒素原子を有しない単量体を用いることができる。
【0022】
上記ポリカルボン酸として具体的には、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、
、ポリアクリル酸−マレイン酸共重合物、スチレン−マレイン酸共重合物が挙げられる。
【0023】
上記ポリカルボン酸の重量平均分子量は100000未満、好ましくは70000以下(例えば、500〜50000)、好ましくは500〜30000、更に好ましくは1000〜20000、より好ましくは1000〜18000、特に好ましくは1500〜15000である。上記ポリカルボン酸の重量平均分子量が上記範囲であると、電子材料、特に高脆性材料の加工性及びパーティクル等の洗浄性を向上させるのに十分であり、また、洗浄剤組成物の安定性も十分となるので好ましい。
【0024】
上記(B)成分の上記塩の種類には特に限定はない。上記塩としては、例えば、上記(A)成分の塩として例示した塩が挙げられる。但し、上記塩としてアンモニウム塩は除く。上記塩の種類は、上記(A)成分の塩の種類と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物の全量を100質量%とした場合、上記(B)成分の含有量は1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは2〜25質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。上記(B)成分の含有量が上記下限値未満であると、洗浄効果が十分でないことから好ましくなく、上記上限値を超えると、本発明の洗浄剤組成物を均一に配合できず、本発明の洗浄剤組成物が分離するため好ましくない。
【0026】
上記(A)成分と上記(B)成分の割合にも特に限定はない。上記(A)成分と上記(B)成分の割合((A)成分の量/(B)成分の量)は、質量基準で1/(0.1〜30)、好ましくは1/(0.3〜20)、更に好ましくは1/(0.5〜10)、より好ましくは1/(0.5〜5)、更に好ましくは1/(0.5〜3)である。上記割合が上記範囲内であると、洗浄効果が優れるので好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物の溶媒は、高脆性材料に対する影響等の観点から、通常は水(純水、精製水等)が使用される。この水の配合量については特に限定はない。上記水の配合量は、通常、本発明の洗浄剤組成物100質量%中、1〜99質量%、好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜90質量%である。また、上記溶媒は、油剤等の水以外の媒体、又は水と油剤等の水以外の媒体との混合溶媒でもよい。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、原液をそのまま使用することができる。また、本発明の洗浄剤組成物は、必要に応じて希釈剤により希釈して使用することができる。上記希釈剤の種類については特に限定はない。上記希釈剤として、通常は水が用いられる。また、希釈倍率にも特に限定はない。該希釈倍率は通常1.5〜500倍、好ましくは2〜100倍、更に好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜50倍である。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物には、他の添加剤の1種又は2種以上を適宜含有させることができる。上記添加剤としては、例えば、ビルダー、防錆剤、腐食防止剤、浸透性向上剤、及び消泡剤の1種又は2種以上が挙げられる。上記他の添加剤は、洗浄性能を著しく低下させず、被加工物及び装置に悪影響を与えない範囲で添加することが好ましい。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物の物性は、必要に応じて適宜調整することができる。例えば、本発明の洗浄剤組成物のpHは、通常6〜14、好ましくは7〜14、更に好ましくは8〜14とすることができる。
【0031】
(2)電子材料の洗浄方法,電子材料の製造方法、及び電子部品の製造方法
本発明の電子材料の洗浄方法及び本発明の電子材料の製造方法は、被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、本発明の洗浄剤組成物を用い、加工後の電子材料を洗浄することを特徴とする。本発明の電子部品の製造方法は、本発明の電子材料の製造方法により得られた電子材料を用いて電子部品を製造することを特徴とする。
【0032】
上記被加工材の種類及び材質には特に限定はない。上記被加工材の材質としては、電子材料として一般に用いられる各種材質が挙げられる。上記被加工材の材質としては、例えば、ガラス、セラミックス、又はシリコンを含む高脆性材料等が挙げられる。上記被加工材の材質として、その他には、例えば、(1)半導体基板材料として用いられる水晶、サファイア、ガリウムヒ素、及び金属酸化物(酸化ケイ素及び酸化アルミニウム等)、並びに(2)各種磁性材料(フェライト、ネオジム磁石、サマリウム・コバルト磁石等)が挙げられる。
【0033】
上記被加工材の加工方法には特に限定はない。上記被加工材の加工方法としては、各種公知の方法が挙げられる。該加工方法として具体的には、例えば、切削加工、研削加工、及び研磨加工が挙げられる。上記加工方法としてより具体的には、例えば、切断加工(ワイヤーソーによる切断加工等)、精密研磨加工、及び化学的機械研磨が挙げられる。
【0034】
本発明の方法によれば、通常、上記電子材料から、研磨用砥粒(以下、単に「砥粒」という。)及び/又は研磨により発生する微粒子(以下、単に「微粒子」という。)が除去される。上記砥粒の種類及び材質には特に限定はない。上記砥粒は、電子材料の研磨に用いられている各種砥粒が挙げられる。上記砥粒の材質としては、例えば、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化マンガン等の金属酸化物、ダイヤモンド、窒化ケイ素、並びに窒化ホウ素が挙げられる。また、上記微粒子の種類及び材質にも特に限定はない。上記微粒子として具体的には、例えば、研磨された被加工材に由来する粒子、ガラス粉、セラミック粉、シリコン粉、石英粉、水晶粉、サファイア粉が挙げられる。
【0035】
上記電子材料を洗浄する手段及び条件についても特に限定はない。例えば、上記洗浄剤組成物は、原液のまま使用してもよい、また、上記洗浄剤組成物は、必要に応じて希釈剤により希釈して使用してもよい。上記希釈剤の種類については特に限定はない。上記希釈剤として、通常は水が用いられる。また、希釈倍率にも特に限定はない。該希釈倍率は通常1.5〜500倍、好ましくは2〜100倍、更に好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜50倍である。また、上記洗浄方法としては、例えば、上記電子材料を上記洗浄剤組成物に浸漬する方法、上記電子材料に対して上記洗浄剤組成物を噴霧又は散布する方法、及び上記電子材料を上記洗浄剤組成物に浸漬し、超音波洗浄を行う方法が挙げられる。尚、該超音波洗浄の条件及び方法には特に限定はない。
【0036】
本発明では、被加工材を加工して電子材料を得る工程と、本発明の洗浄剤組成物を用い、加工後の電子材料を洗浄する工程を必ずしも分離する必要はない。本発明において、両工程は、同時期に行ってもよい。例えば、被加工材を加工すると共に、該被加工材に本発明の洗浄剤組成物を噴霧又は散布により供給することにより、上記電子材料の製造及び洗浄を同時期に行うことができる。また、本発明の洗浄剤組成物に研磨材(上記砥粒等)及び必要に応じて研磨助剤を含有させ、これを被加工材に供給することにより、上記電子材料の製造(化学的機械研磨等)及び洗浄を同時期に行うことができる。
【0037】
上記電子材料の種類及び構造には特に限定はない。上記電子材料として具体的には、例えば、半導体基板(Siウエハ等)、フォトマスク基板、LCD基板、光学ガラス、ガラスディスク、磁気記録材料、及び水晶発信子が挙げられる。また、本発明の方法により得られる電子部品の種類には特に限定はない。該電子部品としては、例えば、半導体、フォトマスク、LCD、磁気記録媒体、及び水晶発信子が挙げられる。上記電子材料を用いて電子部品を製造する方法にも特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示すものに限られない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0039】
(1)洗浄剤組成物の調製
表1に示す各成分を、表1に示す割合で配合することにより、実験例1〜8の各洗浄剤組成物を調製した。表1において、各成分の量を示す単位は質量%である。尚、表1に記載した各成分の詳細は、以下の通りである。
「XL60」;ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬社製、HLB:13.8)
ポリアクリル酸Na;BASF社製、商品名「Sokalan PA 30CL」(重量平均分子量:8000、有効成分濃度:45%)。
ポリアクリル酸;BASF社製、商品名「Sokalan PA 110S」(重量平均分子量:25万、有効成分濃度:35%)。
トリポリリン酸Na;リン化学工業社製、商品名「トリポリリン酸ナトリウム」
p−tert−ブチル安息香酸;扶桑化学社製、商品名「PBA」
ドデカン二酸;宇部興産社、商品名「ドデカン二酸」
【0040】
(2)評価方法
上記実験例1〜8の各洗浄剤組成物を純水で希釈し、試料溶液を調整した。該試料溶液中の上記洗浄剤組成物の濃度は2%である。スライドガラスに酸化セリウム含有スラリーを塗布した。次いで、該スライドガラスを50℃で1時間乾燥させた。その後、該スライドガラスを上記試料溶液に浸漬し、60℃で1分間、超音波洗浄(35kHz、0.09w/cm)を行った。
【0041】
上記洗浄後、上記スライドガラスを純水ですすいだ。その後、該スライドガラスの汚れ度合いを目視で観察することにより、洗浄性を評価した。その結果を表1に示す。尚、洗浄性の評価は以下の基準で行った。
◎;除去率90%以上、○;除去率70〜89%、△;除去率40〜69%、×;除去率39%以下
【0042】
【表1】

【0043】
(3)評価結果
表1より、本発明の洗浄剤組成物である実験例1〜7は、いずれも除去率が高く、洗浄性に優れていることが分かる。
【0044】
一方、実験例8は、上記(A)成分及び上記(B)成分のいずれも含んでいない。実験例9は上記(A)成分を含んでいない。実験例10は上記(B)成分として「トリポリリン酸Na」を使用している。表1より、実験例8〜10は、いずれも除去率が低く、洗浄性に劣ることが分かる。
【0045】
また、実験例11は、上記(B)成分の含有量が少なく、実験例12は上記(B)成分の含有量が多い。実験例13は上記(A)成分の炭素数が少なく、実験例14は上記(A)成分の炭素数が多い。実験例15は、上記(B)成分の重量平均分子量が大きい。表1より、実験例11〜15は、いずれも除去率が低く、洗浄性に劣ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8〜22の脂肪酸(但し、オキシカルボン酸は除く。)の塩、並びに(B)オキシカルボン酸の塩及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、いずれもアンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を含有し、
全量を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が0.5〜30質量%、上記(B)成分の含有量が2〜50質量%であることを特徴とする電子材料用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)炭素数8〜22の脂肪酸(但し、オキシカルボン酸は除く。)の塩、並びに(B)オキシカルボン酸の塩及び重量平均分子量が100000未満のポリカルボン酸の塩(但し、いずれもアンモニウム塩を除く。)の少なくとも一方を含有し、
上記(A)成分と上記(B)成分の合計を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が20〜70質量%、上記(B)成分の含有量が30〜80質量%であることを特徴とする電子材料用洗浄剤組成物。
【請求項3】
全量を100質量%とした場合、上記(A)成分の含有量が0.5〜30質量%、上記(B)成分の含有量が2〜50質量%である請求項2記載の電子材料用洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記(A)成分と上記(B)成分との質量比が1:(0.1〜30)である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物。
【請求項5】
被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物を用い、加工後の電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【請求項6】
上記洗浄により、研磨用砥粒及び/又は研磨により発生する微粒子を除去する請求項5記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項7】
被加工材を加工して電子材料を得て、次いで、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤組成物を用いて、上記電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の製造方法。
【請求項8】
上記電子材料が、半導体基板、フォトマスク基板、LCD基板、光学ガラス、又はガラスディスクである請求項7記載の電子材料の製造方法。
【請求項9】
上記洗浄により、研磨用砥粒及び/又は研磨により発生する微粒子を除去する請求項7又は8記載の電子材料の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の電子材料の製造方法により得られた上記電子材料を用いて電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2009−21377(P2009−21377A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182617(P2007−182617)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000115083)ユシロ化学工業株式会社 (69)
【Fターム(参考)】