説明

電子部品およびその製造方法、並びに電子部品を備えた電子デバイス

【課題】特性が劣化することを抑制しつつ、低背化を実現すること。
【解決手段】本発明は、圧電基板10上に設けられた直列共振子12および並列共振子14と、圧電基板10上に設けられた、直列共振子12および並列共振子14と電気的に接続する信号配線20と、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極18の電極指上に空洞32を有し空洞32の上面を覆うように設けられた金属板28と、圧電基板10上に、信号配線20上に位置しない部分に設けられた、金属板28を支持する支持柱30と、金属板28と支持柱30とを覆うと共に、空洞32の側面に接する絶縁部34と、を備える電子部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法、並びに電子部品を備えた電子デバイスに関し、特に、素子の機能部上に空洞を有する電子部品およびその製造方法、並びに電子部品を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの小型化の要求が強く、それに伴い電子部品の小型化も求められている。例えば、弾性波を用いたフィルタや分波器等においても小型化が求められている。弾性波を用いた弾性波素子として、弾性表面波を用いた弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子、圧電薄膜を用いた圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)素子等がある。
【0003】
電子部品の小型化の要求に対して、基板上に設けられた素子を覆うように樹脂を設けることで素子を封止し、樹脂をパッケージの代わりとして利用するウエハレベルパッケージが開発されている。また、例えば素子として弾性波素子を用いる場合には、弾性波素子の特性を維持するために、弾性波素子の機能部上に空洞を設けることが求められ、例えば弾性波素子の機能部上に空洞を有する樹脂部を設けた構造(いわゆる中空構造)が提案されている。弾性波素子の機能部としては、弾性表面波素子では櫛型電極(IDT:Interdigital Transducer)の電極指であり、圧電薄膜共振器素子では圧電薄膜を挟み込む上下電極の重なる領域である。
【0004】
弾性波素子の機能部上に空洞を有する樹脂部を形成する方法として、空洞となる凹部が形成された樹脂シートを、弾性波素子が形成された基板に貼り合わせる方法が知られている(例えば、特許文献1)。また、弾性波素子の機能部上に空洞を有する樹脂部を形成し、空洞上に位置する樹脂部内に金属層を形成することが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−175345号公報
【特許文献2】特開2008−227748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、小型化に伴う低背化により、十分な強度の空洞が得られない場合がある。一方、特許文献2のように、空洞の上方に位置する樹脂部内に金属層を設ける構成とすることで、空洞の強度を強くすることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2では、金属層を含む樹脂を、弾性波素子が形成された圧電基板に貼り付けることで形成しているが、この方法では、樹脂は柔らかいことから、弾性波素子に対して高さ方向および水平方向で、金属層の位置がずれてしまう場合がある。低背化により、弾性波素子と金属層との距離が近い場合には、金属層の位置ずれにより容量が変動してしまい、特性が劣化する場合がある。また、金属層を支える樹脂が信号配線上に位置するため、信号配線と樹脂との間の容量の影響による特性の劣化もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、特性が劣化することを抑制しつつ、低背化を実現することが可能な電子部品およびその製造方法、並びに電子部品を備えた電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板上に設けられた素子と、前記基板上に設けられた、前記素子と電気的に接続する信号配線と、前記素子の機能部上に空洞を有し前記空洞の上面を覆うように設けられた金属板と、前記基板上に、前記信号配線上に位置しない部分に設けられた、前記金属板を支持する支持柱と、前記金属板と前記支持柱とを覆うと共に、前記空洞の側面に接する絶縁部と、を備えることを特徴とする電子部品である。本発明によれば、金属板の位置ずれを抑制でき、また、支持柱と信号配線との間の容量を低減できるため、特性が劣化することを抑制できる。また、金属板で空洞を形成するため、空洞の強度を強くでき、低背化が実現できる。
【0010】
上記構成において、前記支持柱は、金属製である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記支持柱は、前記金属板の対向する辺夫々に沿って、前記辺の長さよりも短い長さで設けられている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記基板上に前記絶縁部を貫通して設けられた、前記素子と外部とを電気的に接続する接続端子を備え、前記基板から前記接続端子の上面までの高さと、前記基板から前記金属板の上面までの高さと、は同じである構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記金属板は、グランドに接続する前記接続端子と電気的に接続する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記金属板は、前記グランドに接続する接続端子上に延在して、前記グランドに接続する接続端子と接することで、前記グランドに接続する接続端子と電気的に接続する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記絶縁部は、前記空洞の側面に接する樹脂膜を有する構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記絶縁部は、前記空洞の側面に接する無機膜を有する構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記金属板に貫通孔が設けられている構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記金属板は、分割された複数の分割板で構成される構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記基板は圧電基板であり、前記素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記弾性波素子は弾性表面波素子であり、前記支持柱の高さは、前記弾性表面波素子の電極指の厚さの5倍以上である構成とすることができる。
【0021】
本発明は、上記記載の電子部品が実装されたプリント配線基板を備えることを特徴とする電子デバイスである。本発明によれば、特性が劣化することを抑制し、且つ低背化を実現することができる。
【0022】
上記構成において、前記電子部品は、前記プリント配線基板に埋め込まれていて、前記絶縁部は、前記電子部品全体を覆うように設けられている構成とすることができる。
【0023】
本発明は、基板上に素子を形成する工程と、前記基板上に前記素子と電気的に接続する信号配線を形成する工程と、前記基板上に、前記信号配線上に位置しない部分に、支持柱を形成する工程と、前記支持柱上に、前記素子の機能部上に空洞を有し前記空洞の上面を覆う金属板を形成する工程と、前記支持柱を形成する工程と前記金属板を形成する工程との後、前記金属板と前記支持柱とを覆うと共に、前記空洞を保つように前記空洞の側面に接する絶縁部を形成する工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法である。本発明によれば、金属板の位置ずれを抑制でき、また、支持柱と信号配線との間の容量を低減できるため、特性が劣化することを抑制できる。また、金属板で空洞を形成するため、空洞の強度を強くでき、低背化が実現できる。
【0024】
上記構成において、前記支持柱を形成する工程は、前記金属板の対向する辺夫々に沿って、前記辺の長さよりも短い長さの前記支持柱を形成する構成とすることができる。
【0025】
上記構成において、前記絶縁部を形成する工程は、前記金属板と前記支持柱とを覆い、前記空洞の側面に接するように樹脂シートを前記基板に圧着する工程を有する構成とすることができる。
【0026】
上記構成において、前記絶縁部を形成する工程は、前記金属板と前記支持柱とを覆い、前記空洞の側面に接するように無機膜を成膜する工程を有する構成とすることができる。
【0027】
上記構成において、前記基板上に、前記素子と外部とを電気的に接続する接続端子を形成する工程を有し、前記支持柱を形成する工程および前記金属板を形成する工程と、前記接続端子を形成する工程と、は同時に実行される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、特性が劣化することを抑制し、且つ低背化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの上面図の例であり、図1(b)は、図1(a)における金属板を透視した上面図の例である。
【図2】図2(a)は、図1(a)のA−A断面図の例であり、図2(b)は、図1(a)のB−B断面図の例であり、図2(c)は、図1(a)のC−C断面図の例である。
【図3】図3(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その1)の例であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図の例、図3(c)は、図3(a)のB−B断面図の例である。
【図4】図4(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その2)の例であり、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図の例、図4(c)は、図4(a)のB−B断面図の例である。
【図5】図5(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その3)の例であり、図5(b)は、図5(a)のA−A断面図の例、図5(c)は、図5(a)のB−B断面図の例である。
【図6】図6(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その4)の例であり、図6(b)は、図6(a)のA−A断面図の例、図6(c)は、図6(a)のB−B断面図の例である。
【図7】図7(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その5)の例であり、図7(b)は、図7(a)のA−A断面図の例、図7(c)は、図7(a)のB−B断面図の例である。
【図8】図8(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その6)の例であり、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図の例、図8(c)は、図8(a)のB−B断面図の例である。
【図9】図9(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その7)の例であり、図9(b)は、図9(a)のA−A断面図の例、図9(c)は、図9(a)のB−B断面図の例である。
【図10】図10(a)から図10(d)は、金属柱と金属板との1回のめっきにより形成する製造方法を示す断面図の例である。
【図11】図11(a)から図11(c)は、実施例2に係るラダー型フィルタの断面図の例である。
【図12】図12(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その1)の例であり、図12(b)は、図12(a)のA−A断面図の例、図12(c)は、図12(a)のB−B断面図の例である。
【図13】図13(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その2)の例であり、図13(b)は、図13(a)のA−A断面図の例、図13(c)は、図13(a)のB−B断面図の例である。
【図14】図14(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その3)の例であり、図14(b)は、図14(a)のA−A断面図の例、図14(c)は、図14(a)のB−B断面図の例である。
【図15】図15(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その4)の例であり、図15(b)は、図15(a)のA−A断面図の例、図15(c)は、図15(a)のB−B断面図の例である。
【図16】図16(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その5)の例であり、図16(b)は、図16(a)のA−A断面図の例、図16(c)は、図16(a)のB−B断面図の例である。
【図17】図17(a)は、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を示す上面図(その6)の例であり、図17(b)は、図17(a)のA−A断面図の例、図17(c)は、図17(a)のB−B断面図の例である。
【図18】図18は、実施例3に係るラダー型フィルタの上面図の例である。
【図19】図19は、実施例4に係るラダー型フィルタの上面図の例である。
【図20】図20は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面図の例である。
【図21】図21は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
図1(a)は、実施例1に係るラダー型フィルタの上面図(絶縁部を透視して図示)の例であり、図1(b)は、図1(a)における金属板28を透視した上面図の例である。図1(b)のように、直列に接続された共振子(これを直列共振子12という)と、直列共振子12に対して並列に接続された共振子(これを並列共振子14という)と、が設けられている。直列共振子12および並列共振子14は共に、一対の反射電極16とそれらの間に設けられた櫛型電極(IDT)18とで構成された弾性表面波素子である。櫛型電極18は、入力側および出力側の2つの電極が向き合って、それぞれの電極指が互い違いに並ぶように配置されている。
【0032】
直列に接続された複数の直列共振子12のうち両端に位置する直列共振子12の一方の直列共振子12の入力側の電極には直列配線19と端子電極42とを介して入力端子22が接続され、他方の直列共振子12の出力側の電極には直列配線19と端子電極42とを介して出力端子24が接続されている。直列共振子12同士は、夫々の出力側の電極と入力側の電極とが直列配線19により互いに接続している。並列共振子14の入力側の電極は、直列配線19に接続する並列配線21に接続している。並列共振子14の出力側の電極は、グランド配線23と端子電極42とを介してグランド端子26に接続している。直列配線19と並列配線21とは、入力端子22から入力された高周波信号を伝搬する。ここで、入力端子と共振子、共振子同士、および共振子と出力端子を接続する配線を信号配線といい、信号配線は入力端子から入力された高周波信号を伝搬する。したがって、直列配線19と並列配線21とは信号配線20である。入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26は、共振子と外部とを電気的に接続させる接続端子である。
【0033】
直列共振子12および並列共振子14の上方に配置される金属板28(図1(a)を参照)を支持する複数の金属製の支持柱30が、金属板28の対向する辺29、31夫々に沿って、辺29、31の長さよりも短い長さで、散在して設けられている。支持柱30は、直列共振子12および並列共振子14に、直列共振子12および並列共振子14を伝搬する弾性波の伝搬方向で隣接して設けられている。即ち、支持柱30は、信号配線20上には設けられておらず、信号配線20から離れている。支持柱30の高さは、例えば10μmから30μmであり、これにより、金属板28と直列共振子12および並列共振子14とは、例えば10μmから30μm離れている。
【0034】
図1(a)のように、金属板28は、グランド端子26上に延在しており、グランド端子26に接している。また、金属板28は、グランド端子26によっても支持されている。これにより、金属板28とグランド端子26とは電気的に接続している。一方、金属板28は、入力端子22および出力端子24上には延在していない。つまり、金属板28と入力端子22および出力端子24とは電気的に非接続である。
【0035】
図2(a)は、図1(a)のA−A断面図の例であり、図2(b)は、図1(a)のB−B断面図の例であり、図2(c)は、図1(a)のC−C断面図の例である。なお、図2(a)から図2(c)においては、図1(a)で透視した絶縁部34についても図示している。図2(a)のように、圧電基板10上に、直列共振子12および並列共振子14が設けられている。直列共振子12および並列共振子14夫々の櫛型電極18の電極指上に空洞32が形成されるよう、圧電基板10上に設けられた支持柱30により支持されて金属板28が設けられている。つまり、金属板28は、直列共振子12および並列共振子14夫々の櫛型電極18の電極指上に空洞32を有し空洞32の上面を覆うように設けられている。図2(c)のように、信号配線20上には支持柱30が設けられてなく且つ金属板28が支持柱30により支持されていることで、金属板28と信号配線20との間には空洞32が形成されている。
【0036】
図2(a)から図2(c)のように、金属板28および支持柱30を覆うように、圧電基板10上に絶縁部34が設けられていて封止している。絶縁部34は、例えば樹脂膜で形成されている。また、絶縁部34は、櫛型電極18の電極指上に設けられた空洞32の側面の一部に接して覆うように設けられている。入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26は、絶縁部34を貫通して設けられていて、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の夫々の上面には、半田ボール36が設けられている。半田ボール36は絶縁部34の上面よりも突出している。これにより、直列共振子12および並列共振子14と外部とを電気的に接続することができる。
【0037】
図2(a)のように、支持柱30と圧電基板10との間には、給電配線38と下地電極40とが設けられている。図2(b)のように、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26と圧電基板10との間には、給電配線38と端子電極42とが設けられている。図2(a)および図2(b)のように、圧電基板10の上面から金属板28の上面までの高さX1と、圧電基板10の上面から入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26夫々の上面までの高さX2とは、ほぼ同じである。
【0038】
次に、図3(a)から図9(c)を用いて、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を説明する。実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法は、多面取り構造を用いた製造方法であり、量産性の向上およびチップ単価の製造コストを下げることが可能である。
【0039】
図3(a)から図3(c)のように、ウエハ状の例えばLiTaO(LT)である圧電基板10の上面に、例えばアルミニウム(Al)等の金属のパターンからなる直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、およびめっき用の給電配線38を形成する。直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、および給電配線38の形成は、例えば蒸着法またはスパッタ法によりAlを成膜した後、所望の形状にドライエッチングすることで形成できる、また、リフトオフ法を用いてもよい。
【0040】
図4(a)から図4(c)のように、支持柱30を形成すべき領域に下地電極40を、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域に端子電極42を形成する。下地電極40および端子電極42は、例えばCu(銅)等の金属からなる。下地電極40および端子電極42の形成は、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて形成できる。
【0041】
図5(a)から図5(c)のように、圧電基板10上に、例えばネガ型感光性のめっきレジスト44を塗布して、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングをする。めっきレジスト44の厚さは、例えば10μmから30μmである。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成する。これにより、支持柱30と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aと、が形成される。支持柱30は、信号配線20上に位置しない部分に、金属板28の対向する辺夫々に沿って、その辺の長さよりも短い長さで散在するように複数形成する。
【0042】
図6(a)から図6(c)のように、例えば蒸着法またはスパッタ法を用いて、全面にCuめっき等のめっき金属用のシードメタル46を成膜する。シードメタル46の厚さは、例えば100nm程度である。その後、厚さが例えば5μmから30μmのめっきレジスト44を塗布して、金属板28、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングをする。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成し、金属板28と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22b、出力端子24b、およびグランド端子26bと、を形成する。
【0043】
図7(a)から図7(c)のように、例えばレジスト剥離液による超音波洗浄、あるいは、さらに酸素プラズマアッシングを併用する方法を用いて、めっきレジスト44を除去する。金属板28は、複数の支持柱30で支持されていることから、圧電基板10と金属板28との間にもレジスト剥離液等が浸透し、圧電基板10と金属板28との間のめっきレジスト44も除去できる。これにより、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極の電極指上に空洞32が形成される。また、めっきレジスト44に挟まれたシードメタル46は、膜厚が薄いことから、めっきレジスト44の剥離時に同時に除去される。なお、入力端子22a、22bとその間のシードメタル46とにより、入力端子22が構成される。同様に、出力端子24a、24bとその間のシードメタル46とにより出力端子24が構成され、グランド端子26a、26bとその間のシードメタル46とによりグランド端子26が構成される。また、金属板28下のシードメタル46を含めて、金属板28となる。
【0044】
図8(a)から図8(c)のように、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆うように、例えば熱可塑性の液晶ポリマーシートからなる樹脂シートを圧電基板10上に熱圧着し、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆う樹脂膜からなる絶縁部34を形成する。圧電基板10上に樹脂シートを熱圧着させることで、金属板28と直列共振子12および並列共振子14との間の空洞32に樹脂が流れ込むことが抑制されて空洞32を保つことができる。これにより、樹脂膜からなる絶縁部34は空洞32の側面に接することとなる。なお、樹脂シートは、熱可塑性の樹脂シートに限らず、熱硬化性の樹脂シートである場合でもよく、吸湿性が低く、接着性が高い樹脂シートである場合が好ましい。また、感光性を有していてもよい。
【0045】
図9(a)から図9(c)のように、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の絶縁部34を、例えばレーザドリリングにより除去し、その後、樹脂の残渣を取り除くために、例えばデスミア処理を行う。絶縁部34を構成する樹脂膜が感光性を有する場合は、露光現像により各端子上の樹脂を取り除いてもよい。この場合、デスミア処理は必要ない。レーザドリリング等の方法により除去した領域に、例えば半田ペーストの印刷およびリフローにより、半田ボール36を形成する。または、給電配線38を再度用いて、SnAgめっきを行ってレーザドリリング等の方法により除去した領域に半田の充填を行い、その後、リフローして半田ボール36を形成してもよい。さらにまた、フラックスの印刷および半田ボールの実装およびリフローで半田ボール36を形成してもよい。その後、ダイシングによりウエハ状から個片化する。個片化することで、余分な給電配線38が除去される。以上により、実施例1に係るラダー型フィルタが完成する。
【0046】
以上のように、実施例1によれば、図5(a)から図6(c)で説明したように、圧電基板10上に複数の支持柱30を形成した後、支持柱30上に、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極18の電極指上に空洞32を有し空洞32の上面を覆う金属板28を形成する。そして、図8(a)から図8(c)で説明したように、支持柱30および金属板28を形成した後、金属板28と支持柱30とを覆い、空洞32を保つように空洞32の側面に接する樹脂膜からなる絶縁部34を形成する。これにより、図2(a)のように、圧電基板10上に形成された直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極18の電極指上に空洞32が形成される。空洞32の上面は、支持柱30に支持された金属板28が接して覆うように設けられ、空洞32の側面は、樹脂膜からなる絶縁部34が接して覆うように設けられる。
【0047】
発明が解決しようとする課題で述べたように、金属層を有する樹脂を、弾性表面波素子が形成された圧電基板上に貼り付ける場合は、樹脂が柔らかいため、金属層が弾性表面波素子に対して高さ方向および水平方向に位置ずれする場合がある。しかしながら、実施例1のように、支持柱30上に金属板28を形成することで、金属板28の形成位置を精度よく制御でき、金属板28に位置ずれが生じることを抑制できる。例えば、めっき法を用いて金属製の支持柱30とその上の金属板28を形成することで、金属板28の位置ずれを抑制できる。これにより、ラダー型フィルタの特性劣化をより抑制できる。また、金属板28で空洞32を形成することで、空洞32の強度を強くすることができ、ラダー型フィルタの低背化が実現できる。
【0048】
支持柱30は、金属製である場合に限られず、絶縁材で形成されている場合でもよい。また、樹脂からなる支持柱上に金属板を形成した場合、樹脂が柔らかいために、金属板が共振子に対して高さ方向および水平方向で位置ずれする場合がある。よって、支持柱30は、樹脂以外の材料で形成されている場合が好ましい。金属板28の位置ずれを抑制する観点から、支持柱30は、樹脂よりも硬い材料で形成されている場合が好ましい。
【0049】
また、図2(c)のように、支持柱30は、信号配線20上に位置しない部分に形成されている。例えば、金属板28を支持するために、直列共振子12および並列共振子14の周囲を完全に取り囲むように支持柱30を設けることが考えられる。この場合、支持柱30は信号配線20上にも設けられるため、支持柱30と信号配線20との間の容量の影響が生じ、フィルタ特性が劣化する場合がある。支持柱30が金属製の場合に限らず、絶縁材で形成した場合であっても、信号配線20上に支持柱30を設けると、誘電率の影響により、支持柱30と信号配線20との間に容量が生じて、フィルタ特性が劣化する場合がある。したがって、実施例1のように、信号配線20上に支持柱30を設けない構造とすることで、信号配線20と支持柱30との間の容量を低減でき、フィルタ特性の劣化を抑制できる。
【0050】
支持柱30は、フィルタ特性の劣化を抑制する観点からは、全ての信号配線20上に設けられていない場合が好ましいが、一部の信号配線20上に支持柱30が設けられている場合でもよい。この場合、フィルタ特性への影響が大きい箇所の信号配線20上には支持柱30が設けられてなく、フィルタ特性への影響が小さい箇所の信号配線20上に支持柱30が設けられている場合が好ましい。例えば、直列配線19上には支持柱30が設けられてなく、並列配線21上に支持柱30が設けられていてもよい。
【0051】
図2(a)および図2(c)のように、金属板28と、直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20と、の間は、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)離れている。金属板28がグランドに接続されていない場合またはグランドへの接続が不十分の場合、金属板28が直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20に近づくほど、金属板28と直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20との間の容量が大きくなり、ラダー型フィルタの特性に影響を及ぼすこととなる。電極指の膜厚は、使用される周波数に影響し、周波数が高くなるほど電極指の膜厚は小さくなる。支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、使用される周波数によって適切な高さも影響を受ける。したがって、ラダー型フィルタの特性を考慮すると、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の50倍以上離れている場合が好ましく、75倍以上離れている場合がより好ましい。例えば、10μm以上離れている場合が好ましく、15μm以上離れている場合がより好ましい。また、支持柱30が高くなると、絶縁部34を形成する際に、樹脂が空洞32内に流れ込む場合がある。したがって、支持柱30の高さは、樹脂膜からなる絶縁部34の形成において、樹脂が空洞32内に形成された共振子に接触しない程度の流れ込みに抑えられる高さ以下である場合が好ましい。例えば、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の150倍以下である場合が好ましく、100倍以下である場合がより好ましい。
【0052】
一方、金属板28が確実にグランドに接続され、グランドに確実に落ちている場合は、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)が、電極指の膜厚の5倍である場合でも、良好なフィルタ特性を得ることができる。即ち、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の5倍以上とすることができ、7.5倍以上とする場合がより好ましく、例えば1μm以上とすることができ、1.5μm以上とすることがより好ましい。
【0053】
金属板28をグランドに落とすために、金属板28をグランド端子26に電気的に接続する場合が好ましい。例えば、図1(a)のように、金属板28が、グランド端子26上に延在して設けられ、グランド端子26と接することで、グランドに落ちている場合が好ましい。この場合、支持柱30が金属製であっても絶縁材で形成されている場合であっても、金属板28をグランドに落とすことができる。また、金属板28をグランド端子26上に延在して設けることができない場合は、他のルートにより金属板28をグランドに落とす場合でもよい。例えば、支持柱30が金属製である場合は、支持柱30をグランド配線23上に設ける構造として、金属板28をグランドに落としてもよい。このように、金属板28をグランドに落とすことで、金属板28に覆われた直列共振子12および並列共振子14をシールドする効果も得られる。
【0054】
図8(a)から図8(c)で説明したように、熱可塑性の液晶ポリマーシートからなる樹脂シートを、金属板28および支持柱30を覆い、空洞32の側面に接するように圧電基板10に圧着することで、金属板28と支持柱30とを覆って封止する樹脂膜からなる絶縁部34を形成している。液晶ポリマーシートからなる樹脂シートは粘度がある程度大きいため、空洞32内部への流れ込みが抑制され、空洞32を保つように空洞32の側面に接する絶縁部34を形成することができる。この観点から、絶縁部34の形成に当っては、樹脂シートを圧電基板10に圧着させる場合に限らず、空洞32内部の共振子に接触しない程度にしか流れ込まない高い粘度を有する液状樹脂を、金属板28と支持柱30とを覆うように塗布する場合でもよい。また、例えばフィラー等を混入させた液状樹脂を用いる場合でもよい。フィラーは、例えば空洞32の高さよりも大きな直径を有する場合が好ましい。これらの場合でも、空洞32内には、樹脂が空洞32内部の共振子に接触しない程度にしか流れ込まずに、空洞32を保つように空洞32の側面に接する絶縁部34を形成できる。
【0055】
図5(a)から図5(c)で説明したように、支持柱30は、めっき法により、金属板28の対向する辺29、31夫々に沿って、辺29、31の長さよりも短い長さで、散在して複数形成している。このような支持柱30を形成することで、図7(a)から図7(c)で説明しためっきレジスト44の除去において、金属板28と圧電基板10との間にもレジスト剥離液等が入り込み易くなり、金属板28と圧電基板10との間のめっきレジスト44を容易に除去できる。したがって、支持柱30の長さは、金属板28の対向する辺29、31の長さの半分よりも短い長さである場合が好ましく、1/4よりも短い長さである場合がより好ましい。また、支持柱30を、金属板28の対向する辺29、31夫々に設けることで、金属板28を安定して支持することができる。
【0056】
図5(a)から図6(c)で説明したように、支持柱30とその上の金属板28との形成と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の接続端子の形成と、は同時に行われる。したがって、図2(a)および図2(b)に示したように、圧電基板10の上面から金属板28の上面までの高さX1と、圧電基板10の上面から入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の上面までの高さX2とは、ほぼ同じ高さになる。このように、支持柱30とその上の金属板28との形成と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の接続端子の形成と、を同時に実行することで、製造工程の簡略化ができる。
【0057】
実施例1では、図5(a)から図6(c)で説明したように、支持柱30を形成するためのめっき工程と、金属板28を形成するためのめっき工程と、を別々の工程に分けて行ったが、支持柱30と金属板28とを1回のめっき工程で行う場合でもよい。図10(a)から図10(d)に、1回のめっき工程により支持柱30と金属板28とを形成する例を示す。図10(a)のように、圧電基板10上に、支持柱30を形成すべき領域が開口しためっきレジスト44を形成する。図10(b)のように、全面にCuめっき用のシードメタル46を形成する。図10(c)のように、シードメタル46上に、金属板28を形成すべき領域が開口しためっきレジスト44を形成する。図10(d)のように、例えば電解めっき法により、めっきレジスト44の開口部にCu膜を埋め込み、支持柱30と金属板28とを同時に形成する。
【0058】
また、ラダー型フィルタに接続するコイル、コンデンサ、あるいは伝送線路等の受動素子を、支持柱30と金属板28との形成と同時に、支持柱30と金属板28と同じ金属で形成してもよい。
【0059】
図1(a)のように、金属板28は、複数の直列共振子12および並列共振子14をまとめて覆うように設けられている場合を例に示したが、これに限られない。複数の直列共振子12および並列共振子14夫々を個別に覆う金属板28が複数設けられている場合でもよい。
【0060】
また、圧電基板10は、LTのほかにLiNbO(LN)、ZnO、KNbO、およびLBO等を用いることもできる。また、櫛型電極18および反射電極16は、Alの他に、Au、Ag、W、Cu、Ta、Pt、Mo、Ni、Co、Cr、Fe、Mn、およびTiを用いて形成することもできる。
【0061】
実施例1では、圧電基板10上に弾性表面波素子である直列共振子12と並列共振子14とが形成されたラダー型フィルタの場合を例に示したが、多重モード型フィルタ、デュアルフィルタ、分波器の場合でもよい。また、素子としては、弾性表面波素子を用いた場合に限らず、圧電薄膜共振器素子等を用いた場合でもよい。さらに、弾性波を利用しない電子部品の場合であっても、基板上に形成された素子の機能部上に空洞を設ける電子部品の場合であればよい。この場合、信号配線は、基板上に設けられた素子同士を接続する配線、素子と入力端子を接続する配線、素子と出力端子を接続する配線等が相当し、電気信号を伝搬する。
【実施例2】
【0062】
図11(a)から図11(c)は、図1(a)のA−A間からC−C間に相当する箇所における実施例2に係るラダー型フィルタの断面図の例である。図11(a)から図11(c)のように、実施例2に係るラダー型フィルタは、絶縁部34が、例えばシリコン酸化膜等の無機膜49とそれを覆う樹脂膜51とで構成されていて、無機膜49が、空洞32の側面の一部に接して覆うように設けられている。また、金属板28と直列共振子12、並列共振子14、および信号配線20との間の距離は、例えば1μm程度である。その他の構成は、図1(a)から図2(c)で示した実施例1に係るラダー型フィルタと同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
図12(a)から図17(c)を用いて、実施例2に係るラダー型フィルタの製造方法を説明する。まず、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法で説明した図3(a)から図4(c)の工程を実施して、圧電基板10上に、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、グランド配線23、給電配線38、下地電極40、および端子電極42を形成する。
【0064】
図12(a)から図12(c)のように、圧電基板10上に、例えばフォトレジスト47を塗布して、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングする。フォトレジスト47の厚さは、例えば3μmから6μmである。その後、例えば蒸着法を用いて、フォトレジスト47の開口部に埋め込まれるように総膜厚が1μmとなるCu膜等の金属膜を形成する。これにより、支持柱30と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aと、が形成される。
【0065】
図13(a)から図13(c)のように、フォトレジスト47をリフトオフして不要な金属膜を除去する。次に、再度フォトレジスト47を1μm程度の厚さで塗布する。エッチバック等の手法を用いて、支持柱30、入力端子22a、出力端子24a、およびグランド端子26aの表面を露出させる。
【0066】
図14(a)から図14(c)のように、例えば蒸着法またはスパッタ法を用いて、全面にCuめっき等のめっき金属用のシードメタル46を成膜する。その後、厚さが例えば5μmから30μmのめっきレジスト44を塗布して、金属板28、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を形成すべき領域が開口するようにパターニングする。その後、例えば電解めっき法を用いて、めっきレジスト44の開口部に埋め込まれるようにCu膜等の金属膜を形成し、金属膜28と、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26の一部である入力端子22b、出力端子24b、およびグランド端子26bと、を形成する。
【0067】
図15(a)から図15(c)のように、例えばレジスト剥離液による超音波洗浄等を用いて、めっきレジスト44およびフォトレジスト47を除去する。金属板28は、複数の支持柱30で支持されていることから、圧電基板10と金属板28との間にもレジスト剥離液等が浸透し、圧電基板10と金属板28との間のフォトレジスト47も除去できる。これにより、直列共振子12および並列共振子14の櫛型電極の電極指上に空洞32が形成される。また、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26が形成される。
【0068】
図16(a)から図16(c)のように、例えばスパッタ法またはSOG(spin coating on glass)塗布法により、金属板28、支持柱30、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26を覆い、空洞32の側面に接するように、酸化シリコン膜等の無機膜49を例えば2〜3μm程度成膜する。支持柱30の高さが1μmと低いことから、金属板28と直列共振子12および並列共振子14との間の空洞32に無機膜49が入ってきても、直列共振子12および並列共振子14に接触しない程度に抑制され、空洞32を保つことができる。
【0069】
図17(a)から図17(c)のように、表面の平坦性を兼ねた感光性の樹脂膜51を塗布する。これにより、無機膜49と樹脂膜51とからなる絶縁部34が形成される。露光現像により、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の樹脂膜51を除去する。続いて、入力端子22、出力端子24、およびグランド端子26上の無機膜49を、CF等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより除去する。次いで、前述したような方法により、半田ボール36を形成する。その後、ダイシングによりウエハ状から個片化して、実施例2に係るラダー型フィルタが完成する。
【0070】
実施例2によれば、図16(a)から図16(c)に示したように、金属板28や支持柱30等を覆うように酸化シリコン膜等の無機膜49を成膜している。つまり、絶縁部34は、酸化シリコン膜等の無機膜49を含み、無機膜49と樹脂膜51とで形成される。そして、無機膜49が空洞32の側面に接して覆うように設けられている。このように、無機膜49が空洞32の側面に接して覆うように設けられていることで、空洞32の気密性を向上できるため、共振子の信頼性をより向上させることができる。このように絶縁部34は、樹脂以外の絶縁材を含んで形成されている場合でもよく、樹脂以外の絶縁材のみで形成されている場合でもよい。
【0071】
また、支持柱30の高さは、無機膜49の成膜において、無機膜49が空洞32内に形成された共振子に接触しない程度の流れ込みに抑えられる高さ以下である場合が好ましい。例えば、支持柱30の高さ(空洞32の高さ)は、電極指の膜厚の15倍以下である場合が好ましく、10倍以下である場合がより好ましい。
【実施例3】
【0072】
図18は、実施例3に係るラダー型フィルタの上面図(絶縁部を透視して図示)の例である。図18のように、金属板28に複数の貫通孔48が設けられている。その他の構成は、実施例1に係るラダー型フィルタと同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
複数の貫通孔48が設けられた金属板28は、図6(a)から図6(c)に示した製造工程において、貫通孔48を形成すべき箇所にめっきレジスト44を残存させて、Cuめっきを実行することで形成できる。
【0074】
このように、実施例3によれば、金属板28に貫通孔48が設けられている。これにより、図7(a)から図7(c)に示しためっきレジスト44の除去において、圧電基板10と金属板28との間に形成されためっきレジスト44を容易に除去することができる。また、金属板28の強度が高すぎる場合、金属板28とそれを支える支持柱30との間に応力が集中してしまい、金属板28の剥離が生じる場合がある。よって、金属板28に貫通孔48を設けて、金属板28の強度を下げることで、金属板28の剥離を抑制できる。
【0075】
貫通孔48は、めっきレジスト44の除去を容易にする点および金属板28の剥離を抑制する点から、複数設けられている場合が好ましい。複数の貫通孔48は、規則的に配置されていても、不規則に配置されていてもよいが、めっきレジスト44の除去を容易にする点および金属板28と支持柱30との間の応力の集中を抑制する点からは、規則的に配置されている場合が好ましい。また、金属板28を覆うように絶縁部34が設けられることから、金属板28に設けられる貫通孔48の大きさは、樹脂が流れ込まない程度の大きさである場合が好ましい。例えば、貫通孔48の直径は、支持柱30の高さと同程度かそれ以下である場合が好ましい。
【実施例4】
【0076】
図19は、実施例4に係るラダー型フィルタの上面図(絶縁部を透視して図示)の例である。図19のように、金属板28は、分割された金属製の分割板28aと28bとで構成される。即ち、分割板28aと28bとは、物理的且つ電気的に分離されている。その他の構成は、実施例1に係るラダー型フィルタと同じであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0077】
分割板28aと28bとに分割された金属板28は、図6(a)から図6(c)に示した製造工程において、分割させたい箇所にめっきレジスト44を残存させて、Cuめっきを実行することで形成できる。
【0078】
このように、実施例4によれば、金属板28は、分割された2つの分割板28aと28bとで構成される。グランド端子26にはインダクタンス成分があり、フィルタ設計では、このインダクタンス成分を使ってフィルタ特性の抑圧成分を改善させる場合がある。このため、グランド端子26のインダクタンス成分を調整することが行われている。したがって、グランド端子26に電気的に接続する金属板28を2つの分割板28aと28bとに分割することで、グランド端子26のインダクタンス成分を分離することができ、フィルタ特性の調整を容易に行うことができる。
【0079】
実施例4では、金属板28が、2つの分割板28aと28bとに分割されている場合を例に示したが、グランド端子の数に応じて3つ、4つ等、複数の分割板に分割されている場合でもよい。
【実施例5】
【0080】
実施例5は、実施例1から4のいずれかに係るラダー型フィルタを備える弾性波デバイスの例である。図20は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面図の例を示す。図20のように、例えば樹脂製のプリント配線基板50が複数積層されている。積層されたプリント配線基板50の各層には、配線52が形成されている。配線52は、例えばAu(金)めっきが施されたCu配線等の金属である。プリント配線基板50の各層に形成された配線52は、ビア54により互いに接続している。ラダー型フィルタ60は、最上層のプリント配線基板50に形成された配線52にフリップチップ実装されている。最上層のプリント配線基板50上には、ラダー型フィルタ60を覆うモールド樹脂56が設けられている。
【0081】
実施例5によれば、実施例1から4に係るラダー型フィルタがプリント配線基板50にフリップチップ実装されていることから、特性の劣化が抑制され、且つ低背化が可能な弾性波デバイスを得ることができる。
【実施例6】
【0082】
実施例6は、プリント配線基板に埋め込まれたラダー型フィルタを備えた弾性波デバイスの例である。ラダー型フィルタは、実施例1から4のいずれかに係るラダー型フィルタから絶縁部34を取り除いたラダー型フィルタを用いることができる。図21は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面図の例である。図21のように、例えば樹脂製のプリント配線基板50が複数積層されている。積層されたプリント配線基板50の各層には、配線52が形成されている。プリント配線基板50の各層に形成された配線52は、ビア54により互いに接続している。ラダー型フィルタ62は、積層されたプリント配線基板50に埋め込まれるように設けられている。ラダー型フィルタ62は、配線52にフリップチップ実装されている。ラダー型フィルタ62全体を覆うように、樹脂膜からなる絶縁部58が設けられている。絶縁部58によりラダー型フィルタ62は封止され固定されている。
【0083】
実施例6によれば、ラダー型フィルタ62は、プリント配線基板50に埋め込まれていて、絶縁部58が、ラダー型フィルタ62全体を覆うように設けられている。つまり、絶縁部58は、金属板28と支持柱30とを覆っている。絶縁部58に用いられる樹脂の粘度が、直列共振子12および並列共振子14と金属板28との間の空洞32に流れ込まない程度に高い場合は、空洞32を保つことができ空洞32の側面に絶縁部58が接することとなる。
【0084】
実施例6によっても、特性の劣化が抑制され、且つ低背化が可能な弾性波デバイスを得ることができる。
【0085】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 圧電基板
12 直列共振子
14 並列共振子
16 反射電極
18 櫛型電極
20 信号配線
23 グランド配線
22 入力端子
24 出力端子
26 グランド端子
28 金属板
28a 分割板
28b 分割板
30 支持柱
32 空洞
34 絶縁部
36 半田ボール
38 給電配線
40 下地電極
42 端子電極
44 めっきレジスト
46 シードメタル
48 貫通孔
49 無機膜
50 プリント配線基板
51 樹脂膜
52 配線
54 ビア
56 モールド樹脂
58 絶縁部
60 ラダー型フィルタ
62 ラダー型フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた素子と、
前記基板上に設けられた、前記素子と電気的に接続する信号配線と、
前記素子の機能部上に空洞を有し前記空洞の上面を覆うように設けられた金属板と、
前記基板上に、前記信号配線上に位置しない部分に設けられた、前記金属板を支持する支持柱と、
前記金属板と前記支持柱とを覆うと共に、前記空洞の側面に接する絶縁部と、を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記支持柱は、金属製であることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記支持柱は、前記金属板の対向する辺夫々に沿って、前記辺の長さよりも短い長さで設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品。
【請求項4】
前記基板上に前記絶縁部を貫通して設けられた、前記素子と外部とを電気的に接続する接続端子を備え、
前記基板から前記接続端子の上面までの高さと、前記基板から前記金属板の上面までの高さと、は同じであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項5】
前記金属板は、グランドに接続する前記接続端子と電気的に接続することを特徴とする請求項4記載の電子部品。
【請求項6】
前記金属板は、前記グランドに接続する接続端子上に延在して、前記グランドに接続する接続端子と接することで、前記グランドに接続する接続端子と電気的に接続することを特徴とする請求項5記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁部は、前記空洞の側面に接する樹脂膜を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項8】
前記絶縁部は、前記空洞の側面に接する無機膜を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項9】
前記金属板に貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項10】
前記金属板は、分割された複数の分割板で構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項11】
前記基板は圧電基板であり、前記素子は弾性波素子であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項12】
前記弾性波素子は弾性表面波素子であり、
前記支持柱の高さは、前記弾性表面波素子の電極指の厚さの5倍以上であることを特徴とする請求項11記載の電子部品。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項記載の電子部品が実装されたプリント配線基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項14】
前記電子部品は、前記プリント配線基板に埋め込まれていて、
前記絶縁部は、前記電子部品全体を覆うように設けられていることを特徴とする請求項13記載の電子デバイス。
【請求項15】
基板上に素子を形成する工程と、
前記基板上に前記素子と電気的に接続する信号配線を形成する工程と、
前記基板上に、前記信号配線上に位置しない部分に、支持柱を形成する工程と、
前記支持柱上に、前記素子の機能部上に空洞を有し前記空洞の上面を覆う金属板を形成する工程と、
前記支持柱を形成する工程と前記金属板を形成する工程との後、前記金属板と前記支持柱とを覆うと共に、前記空洞を保つように前記空洞の側面に接する絶縁部を形成する工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記支持柱を形成する工程は、前記金属板の対向する辺夫々に沿って、前記辺の長さよりも短い長さの前記支持柱を形成することを特徴とする請求項15記載の電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁部を形成する工程は、前記金属板と前記支持柱とを覆い、前記空洞の側面に接するように樹脂シートを前記基板に圧着する工程を有することを特徴とする請求項15または16記載の電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記絶縁部を形成する工程は、前記金属板と前記支持柱とを覆い、前記空洞の側面に接するように無機膜を成膜する工程を有することを特徴とする請求項15または16記載の電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記基板上に、前記素子と外部とを電気的に接続する接続端子を形成する工程を有し、
前記支持柱を形成する工程および前記金属板を形成する工程と、前記接続端子を形成する工程と、は同時に実行されることを特徴とする請求項15から18のいずれか一項記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−70098(P2012−70098A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211372(P2010−211372)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】