説明

電気エネルギを形成する装置および方法

本発明は、第1の電極および第2の電極と、これらの第1の電極および第2の電極の上に設けられている固体電解質とを備えた少なくとも1つの電気化学的なセルを有する電気エネルギを形成する装置(22)に関する。第1の電極(32)は空気を含有する混合気(62)と接触しており、第2の電極(33)は燃焼排ガス(60)および/または気体状の燃料(61)と接触しており、第1の電極(32)および第2の電極(33)は、電気的なエネルギ蓄積器(50)または、機械的なエネルギまたは化学的なエネルギまたは熱的なエネルギの形成部を介して相互に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載されている、電気エネルギを形成する装置、この装置を制御する方法およびその使用に関する。
【0002】
背景技術
今日では、殊に可動の用途において、しかしながらまた暖房装置のような固定のシステムまたは発電所の用途においても、電気エネルギを形成するためのジェネレータが使用されている。ジェネレータを駆動させるためには、例えば内燃機関が付加的な機械エネルギを供給しなければならない。この場合、システム全体にわたり、内燃機関の運転を介してジェネレータにまで燃料が及ぶことに基づいて効率は比較的低くなる。この効率は燃料を電気エネルギに変換する際に、内燃機関の動作状態に応じて10%〜40%のオーダである。自動車の運転時には、殊に内燃機関の部分負荷領域では、付加的なジェネレータ運転によって負荷が顕著に高まり、このような付加的な負荷はジェネレータを運転させていない場合の負荷の10%〜20%のオーダにある。
【0003】
古典的な機関燃料のリソースが制限されていることによって、車両における内燃機関の負荷を低減するために多くの努力が払われるので、付加的なジェネレータの動作は不経済的なものである。
【0004】
発明の課題および利点
本発明の課題は、簡単なやり方で燃焼排ガスの残留エネルギの利用を実現する、電気エネルギを形成する装置を提供することである。この課題は、有利には請求項1の特徴部分に記載されている構成を有する装置によって解決される。
【0005】
本発明は、燃焼排ガスと接触しており、且つ、燃焼排ガスの気体成分と空気を含有する混合気との濃度勾配に基づき電気エネルギを供給することができる、電気化学的なセルを有する装置を基礎とする。この配置構成の格別な利点は、燃焼排ガス内に技術的な理由によりいずれにせよ存在する、空気または空気を含有する混合気との濃度差を洗練されたやり方でエネルギ取得に利用できることである。さらには、燃焼排ガスの所定の不所望な排ガス成分を選択的に電気化学的に変換し、未燃焼の排ガス成分内に含まれるエネルギを同時に利用しながら燃焼排ガスの浄化を達成することができる。
【0006】
本発明の装置の別の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
つまり有利には、電気エネルギを形成する装置が内燃機関の燃焼排ガスが供給される排ガスシステムと接触する電気化学的なセルを有し、電気化学的なセルは燃焼ガスの流れ方向において内燃機関または排ガス後処理用の触媒の下流側の直近に配置されるか、排ガス触媒のケーシングに組み込まれる。排ガスシステムのこの領域においては動作に起因して燃焼排ガスが高温であるため、装置の電気化学的なセルの最適な動作温度が保証されている。これを装置の熱絶縁性のカバーによって支援することができる。
【0008】
さらに有利には、電気化学的なセルが排ガスシステムにおいて燃料供給部の上流側に接続されている場合には最適な動作を保証することができる。このようにして、燃焼排ガスに曝されている電極の化学的な電位が高まり、電気化学的なセルから供給される電力を、相応の内燃機関ないし加熱装置またはタービンの動作状態に依存せずに調整することができる。燃料供給部が燃料の部分的な酸化のためのリフォーマを有する場合には殊に有利である。何故ならばこのようにして、電気化学的に僅かに変換された気体、例えば水素を形成することができるからである。
【0009】
装置が空気を含有する混合気の供給部を有し、この供給部が例えば、空気を含有する供給すべき混合気、燃焼排ガスおよび/または冷却水用の吸気管および排気管を有する熱交換器を有する場合には有利である。付加的に、空気を含有する混合気用の供給部は圧力形成手段を有することができるので、空気を含有する混合気を電気化学的なセルに高い圧力で供給することができる。このようにして、装置の電気化学的なセルに空気を含有する混合気を事前に加熱および加圧された状態で供給することができる。このことは電気化学的なセルにおける熱損失を阻止し、それと同時に効率も高める。
【0010】
本発明の殊に有利な実施形態においては、空気を含有する混合気および燃焼排ガスの電気化学的なセルへの供給は実質的にクロスフロー原理で行われる。このようにして、装置の構成が技術的に簡単であるのと同時に、電気化学的なセルの均等な負荷を達成することができる。
【0011】
有利には、装置の電気化学的なセルが、低い排ガス温度および/または高い電流需要での第1の動作モードでは燃焼セルとして動作され、高い排ガス温度が存在する第2の動作モードでは電気化学的な濃度セルとして動作されるように装置の制御が行われる。このために、高いセル電圧が期待される第1の動作モードにおいては、複数の電気化学的なセルが、直列に接続されている電気化学的なセルの相互に並列に接続されている少なくとも2つのグループに分割され、第2の動作モードにおいては全ての電気化学的なセルが相互に直列に接続されている電気化学的なセルの1つのグループに接続される。
【0012】
実施例
添付の図面および以下の図面に関する説明に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気エネルギを形成する装置が組み込まれている排ガスシステムの概略図を示す。
【図2】電気エネルギを形成する装置が組み込まれている排ガスシステムの別の実施形態を示す。
【図3】第1の実施例による、電気エネルギを形成する装置の概略図を示す。
【図4】図3に示した装置の一部の概略的な分解図と接続形態を示す。
【図5】第2の実施例による、電気エネルギを形成する装置の概略図を示す。
【図6】図5に示した線分A−Aに沿った、図5に示した装置の断面図を示す。
【図7】燃料セルとして動作する際の電気エネルギを形成する装置の概略的な結線を示す。
【図8】濃度セルとして動作する際の電気エネルギを形成する装置の概略的な結線を示す。
【0014】
図1から図8に使用されている参照番号は、特に記載が無い限りは、常に同一の機能の構造要素およびシステム要素を表す。
【0015】
図1には、本発明による電気エネルギを形成する装置22が組み込まれている排ガスシステムの第1の実施形態の原理構造が示されている。図1による排ガスシステムは内燃機関10を有し、この内燃機関10は吸気側11ならびに排気側12を有する。燃焼排ガスの流れ方向において、排気管16内には排ガス後処理用の第1の触媒18、殊に三元触媒、ならびにマフラー14が設けられている。さらに、排ガスの流れ方向において排ガス後処理用の第1の触媒18の下流側には、電気エネルギを形成する装置22が設けられており、この装置22は例えば燃料セルまたは電気化学的な濃度セルとして、殊に高温燃料セルとして構成されている。
【0016】
電気エネルギを形成する装置22を有する排ガスシステムの別の実施形態が図2に示されている。排ガスシステムは付加的に、排ガス後処理用の第2の触媒20を有し、この第2の触媒20は例えば、排気管16内の排ガスの流れ方向において電気エネルギを形成する装置22の下流側に配置されている。この実施例においては、排ガス後処理用の第1の触媒18が有利には酸化触媒として構成されており、排ガス後処理用の第2の触媒20が例えば三元触媒として構成されている。
【0017】
図3には、本発明の第1の実施例による、電気エネルギを形成する装置22の構造が概略的に示されている。電気エネルギを形成する装置22は殊に燃料セルまたは電気化学的な濃度セルまたはネルンストセルとして構成されている。電気エネルギの形成は、電気化学的な濃度セルまたはネルンストセルとしての回路では、排ガスシステムに案内される排ガスと、空気または空気を含有する雰囲気との酸素部分圧の差の電気化学的な利用に起因する。電気エネルギの別のソースとして、燃料セルとしての回路では、排ガス中の未燃焼の燃料成分の電気化学的な酸化が挙げられる。
【0018】
排ガスシステムに案内される排ガスと空気または空気を含有する雰囲気との酸素部分圧の差が電気エネルギを取得するために使用される場合には、電気エネルギを形成する装置22は殊に、空燃比λ=1で動作する機関、例えばオットー機関と協働して殊に高い効率で動作する。何故ならば、そのような機関の燃焼排ガスは通常の場合、殊に低い酸素部分圧力を有するからである。
【0019】
電気エネルギを形成する装置22は有利には、電気化学的な濃度セルの組合せとして構成されており、これは高温燃料セルと同等の形態で使用される。各電気化学的なセルは、空気または空気を含有する混合気と接触するカソード32なたびに排ガスに曝されているアノード33を有する。カソード32およびアノード33はイオン伝導性に固体電解質31を介して相互に接続されている。固体電解質として、比較的高い温度では酸素イオン伝導体として機能する材料、例えばCaO,MgO,Sc23またはY23で安定化されたZrO2または、プラチナまたはパラジウムで付活されたセリウム−ジルコニウム−ペロフスカイト、例えばPt/Ce0.67Zr0.332ないしPd/Ce0.67Zr0,332が使用される。殊に前述のペロフスカイトの利点は、ペロフスカイトが内燃機関10の部分負荷運転時に排ガス流において既に達する温度において酸素イオンに対する顕著な伝導性を既に実現することである。
【0020】
これに対して、典型的なSOFC電解質、例えばイットリウムで安定化された二酸化ジルコニウムまたはLaGaO3は600℃以上の動作温度を必要とする。さらには、上述のペロフスカイトはメタンの酸化を可能にする。メタンは選択された燃焼方式に依存して高い濃度で生じる可能性があり、350〜450℃においては既に90〜100%になる。さらにこの温度においては、COの酸化も触媒作用を惹起する。この実施形態においては、酸化可能な排ガス成分を十分に除去することができるので、電気エネルギを形成する装置22は排気管内に別個に設けられる酸化触媒を省略することができる。
【0021】
カソード32ないしアノード33の電極材料として、スピネル構造、ペロフスカイト構造または擬板チタン石構造を有する金属酸化物が考えられる。つまり、スピネル構造ABx(2-x)’O4、ただし0<x<2を有する金属酸化物として、Bが酸化数+IIの遷移金属陽イオンに相当し、B’が酸化数+IIIの遷移金属陽イオンに相当する、いわゆる2,3−スピネルが適しているか、B’が酸化数+IVの遷移金属陽イオンに相当し、B’が酸化数+IIの遷移金属陽イオンに相当する、いわゆる4,2−スピネルが適している。2,3−スピネルの場合には、例えばAはコバルトまたはニッケルまたは銅を表し、Bはクロムまたは鉄またはマンガンを表し、またB’はマンガンまたはクロムを表す。4,2−スピネルの場合には、例えばAはチタンを表し、BないしB’はコバルトまたはニッケルを表す。
【0022】
擬板チタン石構造ABx(2-x)’O5、ただし0<x<2を有する金属酸化物として、Bが酸化数+IVの遷移金属陽イオンに相当し、B’が酸化数+IIIの遷移金属陽イオンに相当する金属酸化物が適している。この場合、例えばAはチタンを表し、BないしB’はクロムまたは鉄またはコバルトまたはマンガンを表す。
【0023】
ペロフスカイト構造A(1-x)A’xy(2-y)’O(3-δ)、ただし0<x<2を有する金属酸化物として、例えばAがスカンジウムまたはイットリウムまたはランタンを表し、A’がアルカリ土類金属陽イオンを表し、Bがコバルトまたはマンガンまたはニッケルを表し、またB’が銅またはマンガンを表す金属酸化物が適している。変数δは、化合物の電荷の中性を保証するための、金属酸化物の酸素含有量の補正係数を表す。
【0024】
さらに、電極材料として、プラチナのグループの金属、例えばプラチナまたはパラジウムまたはロジウムまたはルテニウムないしそれらの混合物、ならびにそれらと銀、金、コバルトおよびニッケルとの合金が適している。例えば、空気と接しているカソード32は、永久的に作用する酸化ガス雰囲気に基づき、有利には金属酸化物電極として構成され、これに対し、排ガス側に位置決めされているアノード33は有利には金属電極として構成される。
【0025】
空気または空気を含有するガス雰囲気と排ガスとの酸素部分圧の差を利用する場合には、電気エネルギを形成する装置22の電極32,33において電気エネルギを取得するために、アノード33とカソード32との間の電流回路が電子導体を用いて、必要に応じて電気的な負荷50の中間回路を使用して閉じられる場合には、以下の電気化学的な反応が成り立つ:
空気側/カソード:O2+4e-→2O2-
排ガス側/アノード:2O2-→O2+4e-
このプロセスの間、固体電解質31を通る酸素イオン流が生じ、これは電極32,33の図示していない端子、またはそれに接続されている電気的な負荷50を介する電流の流れを生じさせる。
【0026】
燃料セルないし濃度セルが本発明によりオットー機関の排気管16内に配置されている場合には、ネルンストの式に従い、電極32,33から形成されている電気化学的なセルにおいてアイドリング時に、すなわち電気エネルギが取り出されることなく電圧が測定される。気体成分:
【数1】

ただし、
Eは電極電位であり、
Rは気体定数、8.314Jmol-1K-1であり、
nは同値(伝達される電子の数)、以下では4、
Fはファラデー定数、9.6485Cmol-1であり、
Tは絶対温度であり、
aは反応種の活性度であり、気体においてこれは気体の部分圧に相当する、
に関する一般的なネルンストの式から
【数2】

が得られる。
【0027】
燃焼排ガスにおいて実現される典型的な値として、温度T=600℃および酸素部分圧p(O2)=10-14barを上記の式に代入すると以下の電圧が得られる。
【数3】

【0028】
このセル電圧は温度に依存する。個々のセルの直列回路によって、形成可能な電圧を高めることができる。つまり、例えば23個のセルの直列回路によって、600℃の動作温度では、自動車において使用可能な13.3Vの電圧を達成することができる。
【0029】
固体電解質31としてY23で安定化されたZrO2が使用され、且つ電極材料としてプラチナが使用される場合には、100cm2のアノードないしカソードの電極面につき、600℃の動作温度では数アンペアの電流が形成される。個々の電気化学的なセルの代わりに、図3に示されているように、直列に接続された濃度セルから成り、約500cm2の基底面ないし電極面を有する積層体が使用される場合には、600℃の動作温度において約10Aの電流が実現される。すなわち13.3Vの総電圧を想定すると、100Wよりも高い電力を期待することができる。
【0030】
相応に高い動作温度を保証するために、電気エネルギを形成する装置22が、機関の近傍に配置されている排ガス後処理用の第1の触媒18の領域において、内燃機関の排ガスの流れ方向でこの第1の触媒18の下流側に配置されており、排気管16と接触するように配置されている。何故ならば、この領域においては燃焼排ガスの温度は内燃機関10の近傍であることに基づき依然として比較的高く、したがって電気エネルギを形成する装置22は燃焼排ガスによって十分によって加熱されるからである。電気エネルギ22を形成する装置の可能な限り500℃を上回る動作温度、理想的には700℃〜900℃である動作温度が達成される。択一的に、電気エネルギを形成する装置22を内燃機関10の排気弁の下流側の直近に配置することができる。
【0031】
さらに、排ガス後処理用の第1の触媒18の下流側の領域における燃焼排ガスでは時間的に比較的一定の酸素部分圧が生じる。この一定の酸素部分圧は三元触媒として構成されている排ガス後処理用の第1の触媒18の酸素蓄積作用によって実現される。さらには、この領域における排ガスの酸素部分圧は、通常の場合機関制御に使用されるラムダ制御部を用いて能動的に平均化され、このラムダ制御部において酸素濃度が排ガス後処理用の第1の触媒18の下流側に配置されているラムダセンサを用いて、内燃機関に供給される燃料混合気の時間的な適合が十分に一定に維持される。ラムダ値1に関して僅かに酸素が多い相および僅かに酸素が少ない相は、排ガス後処理用の第1の触媒18の下流側の排気管16の領域において一定の酸素信号が検出されるように補償調整される。
【0032】
排ガスの流れ方向において電気エネルギ22を形成する装置22の上流側には燃料供給部を接続することができる。このことは、カソードとアノードとの間の相応に高い電位差を有する燃料セルとしての電気エネルギを形成する装置22の動作を実現する。燃料(61)の供給部(24)として使用される調量装置内では、調量すべき燃料の部分的な酸化を行うことができ、この酸化により主生成物61としてCOおよびH2が生じる。この場合、付加的な燃料を用いる動作は燃料セルとしての動作または、純粋な濃度セルと燃料セルの複合動作に相当する。未燃焼の燃料成分を含有する燃焼排ガスである場合には、燃料調量も省略することができる。
【0033】
電気エネルギを形成する装置22は有利には、熱エネルギが可能な限り効果的に、電気エネルギを形成する装置22の電気化学的な濃度セルを加熱するよう排気管16に組み込まれている。このために、電気エネルギを形成する装置22は有利には熱絶縁性のカバー34を有する。さらに、電気エネルギを形成する装置22に供給される空気ないし空気を含有する混合気は、有利には上流側に接続されている熱交換器35によって事前加熱される。熱交換器35は例えば、排気管16の二重壁区間として構成されており、また有利には、排ガスの流れ方向において電気エネルギを形成する装置22の下流側に配置されている。例えば、熱交換器35の内側部分52には燃焼排ガスが流れ、これに対して熱交換器の内側部分52を包囲する被覆部51内には空気または空気を含有する混合気が有利には向流原理に従い案内される。さらには、電気エネルギを形成する装置22に供給される空気のための流入開口部は有利には、供給される空気の十分な事前加熱を達成するために、この電気エネルギを形成する装置22を有する車両の図示していない車両クーラーの下流側に配置されている。
【0034】
さらに有利には、電気エネルギを形成する装置22に供給される空気または空気を含有する混合気の圧力は高められている。高められた空気圧を形成するための相応の装置は例えば、空気流の方向に関して熱交換器35の上流側に接続されており、また最も簡単な場合には、空気流における背圧を形成する装置として実施することができ、このような装置においては、例えば図3に示されているように、空気流は小さい曲率半径で反対方向へと転じられる。
【0035】
より詳細に説明するために、図4には図3に示した電気エネルギを形成する装置22の拡大図が示されている。
【0036】
個々の電気化学的な濃度セルの大きい面は有利には同一の基本形状を有し、また例えば矩形に構成されている。個々の電気化学的な濃度セルは結線48を介して相互に電気的に接続されており、第1の濃度セルの第1のカソード32aは第2の濃度セルの第2のアノード33bと接続されており、第2の濃度セルの第2のカソード32bは第3の濃度セルの第3のアノード33cと接続されており、以下これと同様の結線が行われる。これによって、電極32a,32b,33a,33cにそれぞれ印加される電圧は適切に合算される。
【0037】
第2の電気化学的な濃度セルのアノード33a,33bが排ガス60の供給空間によってそれぞれ相互に間隔を空けて配置されており、且つ、第2の電気化学的な濃度セルのカソード32b,32cが空気62の供給空間によってそれぞれ相互に間隔を空けて配置されている場合には、構造空間の最小化を達成することができる。それぞれの固体電解質31a,31b,31cは気密な電気絶縁性の接続素子46によって相互に接続されている。
【0038】
択一的に、電気エネルギを形成する装置22内への個々の濃度セルの配置は、個々の濃度セルの空気吸入開口部38および空気排出開口部40が対応する排ガス吸入開口部42および排ガス排気開口部44とは反対側または反対の個所に設けられるように行われる。
【0039】
これに関して、図5および図6に示したようなクロスフロー原理に従った電気エネルギを形成する装置22の実施形態が考えられる。これに関して同一の参照番号は同一の構成要素を表す。
【0040】
電気エネルギを形成する装置22のこの第2の実施形態においては、燃焼排ガス60および空気62がほぼ90°の角度で交差するように相互に案内されている。この場合、燃焼排ガス60は、空気62が充填されており、ここでは図示されていない固体電解質に取り付けられたアノードおよびカソードから形成されている濃度セル64によって境界付けられている空間を流れる。
【0041】
電気エネルギを形成する装置22を有する相応の排ガスシステムの全体の構造を簡略化するために、電気エネルギを形成する装置22を排ガス後処理システム用の第1の触媒18または排ガス後処理用の第2の触媒20に組み込むことも可能である。このようにして、電気エネルギ22を形成する装置の殊に効果的な加熱が保証される。
【0042】
燃料セルまたは濃度セルとしての動作方法に依存する電気エネルギを形成する装置22の電気化学的なセルの結線の例は図5および図6に示されている。
【0043】
電気エネルギを形成する装置22は殊に高い動作温度、例えば700℃以上の動作温度においては濃度セルとして動作する。何故ならば、装置22はこの温度において僅かな内部抵抗を有し、したがって空気と排ガスの酸素部分圧の差のみから高い電力を提供することができるからである。この動作モードにおいては、濃度セルのアノード側には切り替え装置56を用いて排ガスが供給される。
【0044】
燃焼セルとしての動作においては確かに燃料が付加的に消費されるが、このモードにおいては水素のような燃料の電気エネルギへの直接的な変換が、別の中間装置無しで、したがって付加的な変換損失を伴わずに実現される。したがって、内燃機関10の動作状態およびシステム全体の電力の需要に応じて2つの動作モードを組み合わせることが有効である。
【0045】
つまり、電気エネルギを形成する装置22は有利には所定の温度を下回った際に濃度セルとして動作する。この動作状態においては、図8に示されているように、積層体の全ての電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)が有利にはスイッチ55を閉じることによって完全に直列に接続される。
【0046】
電気エネルギを形成する装置22の電気化学的なセルが、必要に応じて燃料が供給されて燃焼セルとして動作する場合には、個々の電気化学的なセルの電極における電位差が相応に供給される燃料に依存して高まる。この場合、図7に示されているように、積層体の電気化学的なセルの接続がスイッチ55の相応の位置によって、例えば個々のセルの2重、場合によっては3重またはそれ以上の直列接続の形態で行われる。直列に接続されているセルからなる複数のセルグループは相互に並列に接続されている。
【0047】
スイッチ55ならびに切り替え装置56の駆動制御は有利には制御部57を用いて行われ、排ガス60への燃料61の供給部の切り替えまたは接続は、有利には積層体の電気化学的なセルの電気的な接続の変更と同時に行われる。つまり、電気エネルギを形成する装置22が燃焼セルとして動作する際には、2つまたはそれ以上の積層体部分が並列に接続される。濃度セルとしての動作へと切り替えた後には、並列に接続されている積層体の数が低減される。例えば2つの積層体部分から積層体全体の1つの直列回路に低減される。相応に、直列に接続されている電気化学的な個々のセルの数が増加する。切り替え自体は有利には、排ガス温度および/または排ガス体積流の大きさに関して、また排ガスのラムダ値に依存して制御される。しかしながら基本的に、高温時に電気エネルギ22を形成する装置を燃焼セルとして動作させることも可能である。さらには、電気エネルギを形成する装置22を燃焼セルモードにおいて定電圧で作動させることができ、排ガス内に存在する未燃焼の燃料成分の量に応じて変動する電流が期待される。
【0048】
電気エネルギを形成する装置22によって形成された電気エネルギを、内燃機関を使用せずに自動車に対して単独で電気エネルギを供給するため、または内燃機関を使用して自動車に対して付加的に電気エネルギを供給するために使用することができる。制御ユニットを用いることにより、車両バッテリまたは搭載電源に適切な高さの一定の電圧の電流が供給されることを保証することができる。さらには、例えば1より小さいラムダ値を有するリッチな排ガスの適切な組成を有する燃焼排ガスを供給することによって、電気エネルギ22を形成する装置が最適な動作状態に維持されるように、内燃機関の制御を時折または必要に応じて行うことができる。
【0049】
択一的に、火力発電所または発電所のために固定の燃焼システムの排気管内への電気エネルギを形成する装置の組み込みも可能である。いずれの場合にも、電気化学的な濃度セルの電極において酸化可能な排ガス成分、例えば炭化水素、水素および一酸化炭素が酸化されるので、可動または固定の燃焼システムの排気管内への電気エネルギを形成する装置22の配置は、相応の燃焼排ガスの浄化に付加的に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極および第2の電極と、該第1の電極および該第2の電極の上に設けられている固体電解質とを備えた少なくとも1つの電気化学的なセルを有する、電気エネルギを形成する装置(22)、例えば燃料セルにおいて、
前記第1の電極(32)は空気を含有する混合気(62)と接触しており、
前記第2の電極(33)は燃焼排ガス(60)および/または気体状の燃料(61)と接触しており、
前記第1の電極(32)および前記第2の電極(33)は、電気的なエネルギ蓄積器(50)または、機械的なエネルギまたは化学的なエネルギまたは熱的なエネルギの形成部を介して相互に接続されていることを特徴とする、電気エネルギを形成する装置。
【請求項2】
前記電気化学的なセル(64)は、内燃機関(10)の燃焼排ガス(60)が供給される排ガスシステムに設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
熱絶縁性のカバー(34)が設けられている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記電気化学的なセル(64)は前記燃焼排ガス(60)の流れ方向において前記内燃機関(12)または排ガス後処理用の触媒(18)の下流側で該内燃機関(12)または該排ガス後処理用の触媒(18)の直近に位置決めされて前記排ガスシステムに配置されているか、排ガス後処理用の触媒(18,20)のケーシングに組み込まれている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記燃焼排ガス(60)の流れ方向において前記電気化学的なセル(64)の上流側では燃料(24)の供給部が前記排ガスシステムに接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
燃料(61)の供給部(24)が燃料を部分的に酸化させるためのリフォーマを有する、請求項5記載の装置。
【請求項7】
空気を含有する混合気の供給部が設けられており、該供給部は、供給すべき空気を含有する混合気(62)用の吸気管および排気管ならびに燃焼排ガス(60)および/または冷却水用の吸気管および排気管を有する熱交換器を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記空気を含有する混合気(62)用の前記供給部は圧力形成手段(53)を有し、前記空気を含有する混合気(62)が前記電気化学的なセル(64)に高い圧力で供給される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
装置が自動車に組み込まれているか、前記空気を含有する混合気(62)用の前記供給部が車両の冷却水用の冷却装置の領域に設けられている気体吸入部を有する、請求項7または8記載の装置。
【請求項10】
前記第1の電極(32)はペロフスカイト構造またはスピネル構造または擬板チタン石構造を有する金属酸化物電極として構成されており、前記第2の電極(33)はプラチナのグループの金属を含有するか、銀または金またはコバルトまたはニッケルを含む合金を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記固体電解質(31)は、カルシウムまたはマグネシウム、またはスカンジウムまたは酸化イットリウムで安定化された二酸化ジルコニウムを含むか、貴金属で付活されたセリウム−ジルコニウム−ペロフスカイトを含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記空気を含有する混合気(62)および前記燃焼排ガス(60)の供給は実質的にクロスフロー原理で行われる、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記燃焼排ガスを形成する固定的な暖房装置またはタービンまたは内燃機関を少なくとも時折制御し、λ≦1の値を有する燃焼排ガスを生じさせる制御ユニットが設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
複数の電気化学的なセル(64)が相互に並列に接続されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
相互に直列に結線されている電気化学的なセル(64,32a〜32f;33a〜33f)を実質的に同数有している2つまたは複数の電気化学的なセルのグループが並列に接続されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
第1の電極(32a〜32f)および第2の電極(33a〜33f)と、該第1の電極(32a〜32f)および該第2の電極(33a〜33f)の上に設けられている固体電解質(31)とを備えた少なくとも2つの電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)を有する、電気エネルギを形成する装置(22)、例えば燃料セルを制御する方法において、
第1の動作モードにおいて前記電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)を燃料セルとして動作させ、第2の動作モードにおいて電気化学的な濃度セルとして動作させることを特徴とする、電気エネルギを形成する装置(22)を制御する方法。
【請求項17】
少なくとも4つの電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)を設け、前記第1の動作モードにおいては前記電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)によって、直列に接続されている電気化学的なセルを有し、且つ並列に接続されている少なくとも2つのグループを形成し、第2の動作モードにおいては全ての電気化学的なセル(32a〜32f;33a〜33f)によって、相互に直列に接続されている電気化学的なセルの1つのグループを形成する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
内燃機関または暖房装置または発電所タービンの排気ガスから電気的なエネルギを形成する、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置または方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−522956(P2010−522956A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500210(P2010−500210)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053184
【国際公開番号】WO2008/116781
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】