説明

電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法及びその装置

【課題】電気抵抗式灰溶融炉の立ち上げにおいて、耐火物を損傷することなく、最適な量の焼却灰を投入でき、自動的に立ち上げることができる電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法及びその装置を提供する。
【解決手段】炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定する工程と、炉内温度の昇温目標値をプログラム式に設定する工程と、炉内温度を測定する工程と、前記設定された投入量目標値のタイムスケジュールに基づいて炉内へ灰を投入する工程と、前記設定された昇温目標値と測定された炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御する工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に装入された電極に通電して灰を溶融する電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法及びその装置に関し、特に、電気抵抗式灰溶融炉の立ち上げ時の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ焼却灰等の焼却灰を溶融するための電気抵抗式灰溶融炉の一例を図4に示す。図4に示されるように、電気抵抗式灰溶融炉は、溶融炉53、焼却灰の投入装置54、電力供給装置55、及び溶融スラグの固化装置56から構成されている。溶融炉53の主構成物である炉本体57の側壁には、スラグ出口ゲート60にて開閉されるスラグ出口59及び溶融金属排出口61(通常は閉鎖されている)が設置され、また、投入装置54は、ホッパー62、切出装置63、シュート64及び投入量設定器65から構成される。電力供給装置55は、電力演算器66、電力制御器67、電源トランス68、及び電極58a、58b、58cから構成されている。この電気抵抗式灰溶融炉は、溶融炉53の上部から挿入された3本の電極58a、58b、58cに交流電力を供給し、投入装置54により投入された焼却灰50及び溶融スラグ51に通電し、通電時のジュール熱による発熱を利用して溶融する。
【0003】
このように構成された電気抵抗式灰溶融炉は、次のようにして操業される。投入量設定器65により設定された投入量に基づき、時間当たり一定量の焼却灰50が炉本体57内に投入される。電力演算器66は、焼却灰50の投入量に応じた電力を演算して電極58a、58b、58cに溶融に必要な電力を供給する。溶融が進み、炉本体57内の溶融スラグ51の湯面が所定位置まで上昇したら、スラグ出口ゲート60を開き、溶融スラグ51を排出して固化装置56で固化させる。これを繰り返して焼却灰50を溶融する。この操業中、電力供給量は排出される溶融スラグ51の温度又は炉本体57の炉内温度、若しくは炉本体57の冷却水温度等を監視して、一定温度が維持されるように設定・調整される。このようにして操業することで、溶融スラグ51を適度な温度に比較的容易に自動制御することができる。なお、炉本体57内に溶融金属52が所定量以上溜まったら、溶融金属排出口61を開けて排出させる。
【0004】
一方、炉本体を構成する耐火物は消耗品であり、一定期間の操業を行えば、炉本体内の溶融スラグ及び溶融金属を全て排出して、炉内の点検・補修が必要になる。この場合には、炉本体を常温まで冷却した後に、点検・補修作業が行われるので、再度操業状態に立ち上げる必要がある。この立ち上げの際には、炉底に敷かれた炭素粉等の導電性物質の上に電極を下ろし、その上に焼却灰を被せて通電し、焼却灰の一部を溶融させる。その後、電極高さや焼却灰の投入量を調整しながら連続操業すべき炉内温度と電力値に徐々に上昇させる。
【0005】
立ち上げ時の炉内温度調整は操作員の手動操作で行われているので、熱応答の遅れや急速加熱によって炉内耐火物に熱衝撃が作用し、耐火物の割れや落下等の損傷が発生して、溶融炉の使用可能期間を低減させることがある。
【0006】
この問題を解決する方法として、例えば、炉内温度目標値と実測温度値との偏差に応じて炉内への焼却灰投入量を制御することにより、炉内温度を適正値に自動制御することができ、耐火物の損傷を未然に防止することができる、というものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−213728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、炉内温度目標値と実測値との偏差に応じて炉内への焼却灰投入量を制御するため、その偏差によっては過剰、又は不足となる量の焼却灰を投入することがあり、灰溶融炉の立ち上げ時に最適量の焼却灰が投入できないという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、電気抵抗式灰溶融炉の立ち上げにおいて、耐火物を損傷することなく、最適な量の焼却灰を投入でき、自動的に立ち上げることができる電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法は、炉内に装入された電極に通電して灰を溶融する電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法であって、炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定する工程と、炉内温度の昇温目標値をプログラム式に設定する工程と、炉内温度を測定する工程と、前記設定された投入量目標値のタイムスケジュールに基づいて炉内へ灰を投入する工程と、前記設定された昇温目標値と測定された炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御する工程とを備えたものである。
【0010】
本発明に係る電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御装置は、炉内に装入された電極に通電して灰を溶融する電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御装置であって、炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定する投入量設定手段と、炉内温度の昇温目標値をプログラム式に設定する温度設定手段と、炉内温度を測定する温度計と、前記投入量設定手段により設定された投入量目標値のタイムスケジュールに基づいて灰を炉内へ投入する投入手段と、前記温度設定手段により設定された昇温目標値のタイムスケジュールと前記温度計により測定された炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御する供給電力制御手段とを備えたものである。
なお、本発明において、灰の投入目標量又は昇温目標値をプログラム式に設定するとは、経過時間とともにその目標値を変化させて設定することを意味しており(タイムスケジュールの設定)、マイクロプロセッサ等によりデジタル処理する場合だけでなく、アナログ処理する場合も含まれているものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定し、投入量目標値のタイムスケジュールを設定するので、最適な量で焼却灰を投入できる。そして、同時に、温度設定手段により、起動時から定常操業状態までの炉内温度の昇温目標値を予めプログラム式に設定し、この昇温目標値と炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御することで、炉内温度を目標値に制御することができる。このため、炉内耐火物の熱衝撃が抑えられ、耐火物の損傷を未然に防止することができ、電気抵抗式灰溶融炉の新設時や耐火物の改修時の立ち上げを自動的に行うことができる。また、灰投入量と炉内温度をともに自動制御することができるので、立ち上げ時の操業を極めて少数の操作員で、且つ熟練した操作員を必要とせずに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を図面に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態の一例を示す図であり、電気抵抗式灰溶融炉の概略系統図である。
【0013】
図1に示されるように、その内部で都市ごみ焼却灰等の焼却灰1を溶融する炉本体4は、外殻が鉄皮28で覆われ、その内部に耐火物29が設置されている。炉本体4の側壁には、焼却灰1の溶融により生成する溶融スラグ2を排出するためのスラグ出口23と、焼却灰1の溶融に伴い生成される溶融金属3を排出するための溶融金属排出口25とが設置されており、スラグ出口23はスラグ出口ゲート24により、また、溶融金属排出口25は溶融金属出湯ゲート26により、それぞれ開閉されるようになっている。そして、炉本体4の上部開口部は炉蓋5で覆われており、炉蓋5には、集塵機(図示せず)に連結するダクト27が設置されている。
【0014】
炉本体4の上方には、内部に焼却灰1を収納するホッパー19が設置されており、ホッパー19内の焼却灰1は、ホッパー19の下部に設置した切出装置21により切出され、炉蓋5を貫通するシュート22を通って炉本体4内に投入される。ホッパー19はロードセル20に支持されており、焼却灰1を含むホッパー19の重量はロードセル20で測定され、この重量測定値は、焼却灰1の炉本体4への投入量を制御する投入量制御盤18に送信される。
【0015】
投入量制御盤18には、焼却灰1の炉本体4への投入量をプログラム式に設定する投入量プログラム設定器17が接続されている。この投入量プログラム設定器17は、予め入力された投入量目標値のタイムスケジュールに基づき、投入開始からの各経過時間における投入量目標値を投入量制御盤18に出力する。
【0016】
投入量制御盤18は、投入量プログラム設定器17から入力された各経過時間毎の投入量の目標値と、ロードセル20で計測された投入量の実測値とを比較して、その偏差に応じて、その偏差が少なくなるように、切出装置21への制御出力を変更する。切出装置21はこの指令に基づき、切出量を調整して投入量を調整する。
【0017】
また、炉蓋5にはそれを貫通して3本の電極6a、6b、6cが設置されている。電極6a、6b、6cはそれぞれ電極支腕9にて把持されており、電極支腕9に連結する油圧シリンダー10を作動させることで、電極6a、6b、6cを炉本体4内で上下移動させることが可能となっている。なお、図1では、電極6b、6cを把持する電極支腕と、これらの電極支腕に連結する油圧シリンダーとが省略されている。
【0018】
電極6a、6b、6cは電源トランス7に接続されており、電源トランス7から3相交流電源が供給される。電源トランス7の1次側には1次電圧調整装置8が設置されており、1次電圧調整装置8にて電源トランス7の1次側電圧を調整することで、電源トランス7の2次側の電圧が調整され、2次側の電極6a、6b、6cに供給する電力が調整される。
【0019】
電極6a、6b、6cには、それぞれ電流計11、電圧計12及び電力計13が設置されており、電流計11及び電圧計12により各電極6a、6b、6cに供給される電流及び電圧がそれぞれ計測される。計測された電流値及び電圧値は電力計13に入力されて、各電極6a、6b、6cに供給される電力が計測される。そして、電極6a、6b、6cで計測された電力の総和が電力制御盤15に入力される。なお、図1では、電極6b、6cに供給される電力を測定するための電流計、電圧計及び電力計が省略されている。
【0020】
電力制御盤15には、電極6a、6b、6cに供給する電力の目標値を電力制御盤15に出力する温度プログラム設定器・電力演算器14が接続されている。電力制御盤15は、温度プログラム設定器・電力演算器14から入力された各経過時間毎の電力の目標値と、電力計13で計測された電極6a、6b、6cの総和の電力とを比較して、その偏差に応じて、その偏差が少なくなるように、1次電圧調整装置8への制御出力を変更する。1次電圧調整装置8はこの指令に基づき、電源トランス7の1次側電圧を調整して、電極6a、6b、6cに供給する電力を調整する。なお、本実施の形態では、それに代えて又はそれに加えて、例えば、電力制御盤15の指令を油圧シリンダー10に与えて、電極6a、6b、6cの高さを変更して、供給電力を制御するようにしてもよい。
【0021】
温度プログラム設定器・電力演算器14には、通電開始からの各経過時間における炉内温度の昇温目標値が昇温目標値のタイムスケジュールとして予め入力設定される。また、温度プログラム設定器・電力演算器14には、炉内温度を測定するための温度計16が接続されており、温度計16による炉内温度の測定値が送信される。温度計16は、熱電対等で構成されており、炉蓋5を貫通して炉内に設置されている。測温位置は、投入された焼却灰1や溶融スラグ2に浸漬されない、炉内空間位置とすることが好ましい。このようにすることで、投入した直後の温度の低い焼却灰1や加熱された溶融スラグ2の影響を直接受けることがなく、安定して炉内温度を制御することが可能となるからである。
【0022】
温度プログラム設定器・電力演算器14は、予め入力設定された各経過時間毎の昇温目標値と、温度計16で測定された炉内温度の実測値とを比較して、その偏差に応じて、その偏差が少なくなるように、すなわち炉内温度の実測値を昇温目標値に近づけるように電極へ供給する電力の各経過時間における最適な電力目標値を演算し、電力目標値を電力制御盤15に出力する。
【0023】
このように灰溶融炉の制御装置を構成することにより、起動時から定常操業状態まで予め入力された投入量目標値のタイムスケジュールに基づき、投入開始からの各経過時間において過不足のない最適な量で焼却灰を投入できるとともに、予め入力された炉内温度の昇温目標値のタイムスケジュールに基づき、炉内温度を昇温するように電極に供給する電力を制御することができる。
【0024】
なお、本実施の形態において、上記の温度プログラム設定・演算器14は本発明の温度設定手段に相当し、電極6a,6b,6c、電流計11、電圧計12、電力計13、1次電圧調整装置8、油圧シリンダー10及び電力制御盤15は本発明の供給電力制御手段に相当し、投入量プログラム設定器17は本発明の投入量設定手段に相当し、投入量制御盤18、ロードセル20、切出装置21及びシュート22は本発明の投入手段に相当する。
【0025】
上記構成の電気抵抗式灰溶融炉の立ち上げ方法を以下に説明する。
先ず、立ち上げる前に予め、投入量プログラム設定器17に灰投入量の目標値のタイムスケジュールを入力すると共に、温度プログラム設定器・電力演算器14に炉内温度の昇温目標値のタイムスケジュールを入力しておく。これに前後して、炉本体4の炉底に炭素粉等の伝導性物質を敷き、この上に電極6a、6b、6cの先端を接触させ、その上に焼却灰1を予め装入しておく。焼却灰1の装入量は例えば炉本体4の深さ150mm程度とする。
【0026】
炉内温度の昇温目標値のタイムスケジュールは、熱衝撃により耐火物29が損傷しないように設定する必要があるが、この熱衝撃は耐火物29の材質や炉本体4の大きさ等により変化するので、一概に決定することは困難であるので、最初の立ち上げ時は緩やかな昇温パターンとして試行し、数回の立ち上げを経験して最適昇温パターンを把握することが重要である。同様に、灰投入量の目標値のタイムスケジュールも数回の立ち上げを経験して最適パターンを把握することが重要である。
【0027】
次いで、電極6a、6b、6cへの通電を開始する。電極6a、6b、6cへの供給電力の調整は、上述したように、温度プログラム設定器・電力演算器14により演算された電力目標値と電力計13により計測される電力とを比較して偏差が少なくなるように、1次電圧調整装置8が電源トランス7の1次側電圧を調整することと、油圧シリンダー10によって電極6a、6b、6cの昇降位置を制御することとにより行う。
【0028】
上記の通電開始に伴い炉内温度が上昇する。上述したように、炉内温度の調整は、温度プログラム設定器・電力演算器14に入力された昇温目標値と温度計16で測定された炉内温度の実測値とを比較して、その偏差が少なくなるように最適な電力目標値を演算して、電力目標値を電力制御盤15に出力し、電極への供給電力を制御して行う。
【0029】
この炉内温度制御方法の例を図2に基づき詳細に説明する。図2は、温度プログラム設定器・電力演算器14と電力制御盤15に組み込まれた電力制御方法のフローチャートの一例である。
【0030】
図2に示されるように、温度計16による炉内温度の実測値と、温度プログラム設定器・電力演算器14から入力される各経過時間毎の温度の目標値とを比較する(S11)。そして、実測値が目標値よりも高い(YES)場合には、その偏差に応じた電力目標値を演算して求める(S12)。そして、その演算の結果、減少した電力目標値を出力し、電力制御盤15から1次電圧調整装置8への制御出力を変更して電圧を下げることにより、或いはそれに代えて又はそれに加えて、電力制御盤15が油圧シリンダー10への制御出力を変更して電極6a、6b、6cの位置を上昇させることにより、電極6a、6b、6cに供給する電力を減少するように調整する(S13,S14)。また、実測値が目標値よりも低い(NO)場合には、その偏差に応じた電力目標値を演算して求める(S15)。そして、その演算の結果、増加した電力目標値を出力し、電力制御盤15から1次電圧調整装置8への制御出力を変更することにより電圧を上げることにより、或いはそれに代えて又はそれに加えて、電力制御盤15が油圧シリンダー10への制御出力を変更して電極6a、6b、6cの位置を降下させることにより、電極6a、6b、6cに供給する電力を増加するように調整する(S16,S17)。そして、終了の指令がない限り(S18)、上記の処理(S11)に戻って一連の処理を繰り返す。
【0031】
また、投入制御盤18は灰投入量の目標値のタイムスケジュールに基づき、切出装置21を制御して所定量の焼却灰1を炉本体4内に投入させる。その際、焼却灰1を切出す前に、ホッパー19の重量をロードセル20にて測定し、切出し前のホッパー19の重量の現在値(W1 )を把握する。その後、切出装置21を起動させて焼却灰1の投入を開始する。切出し中、ロードセル20でホッパーの重量(Wi )を測定して、焼却灰1の投入量を演算する。焼却灰1の投入量(Wn )は、切出し開始前のホッパー重量(W1)から切出し中のホッパー重量(Wi )を差し引くことで演算することができる。
【0032】
このような炉内温度制御及び灰投入量制御を継続して行い、炉内温度が所定の温度に達した時点で、通常の焼却灰1の溶融操業に移行する。
【0033】
以上のように本実施の形態においては、電気抵抗式灰溶融炉の新設時や耐火物の改修時の立ち上げにおいて、灰投入量を自動制御すると共に炉内温度を自動制御することで、炉内温度の上昇パターンを適正化することができ、耐火物29の損傷を防止することが可能となる。また、灰投入量及び炉内温度共に自動制御することができるので、立ち上げ時の操業を極めて少数の操作員で行うことができる。
【0034】
なお、上記説明は3本の電極を具備した電気抵抗式灰溶融炉について説明したが、これに限るものではなく、本発明は2本以上の電極を具備する電気抵抗式灰溶融炉に適用することができる。
【実施例】
【0035】
図1に示された電気抵抗式灰溶融炉において、図2に示すフローチャートの処理を行って立ち上げた時の実施例を以下に説明する。
【0036】
本実施例では耐火物を改修した後の立ち上げであったので、昇温目標値のタイムスケジュールは比較的緩やかな昇温パターンとした。具体的には、常温(25℃)から375℃までを25℃/hrの上昇速度とし、375℃で48時間保持し、その後375℃から600℃まで再び25℃/hrの上昇速度とし、600℃に到達した時点で昇温を完了して、定常操業に移行するパターンとした。
【0037】
また、灰投入量の目標値のタイムスケジュールは、昇温目標値のタイムスケジュールに対応させて、常温から375℃までの昇温時には200kg/hまで直線的に増加させ、375℃の保持時には200kg/hの一定値とし、375℃から600℃までの昇温時には200kg/hから400kg/hまで直線的に増加させるパターンとした。そして、炉本体内に約150mm厚みの焼却灰を予め装入して、通電を開始した。
【0038】
図3は、この立ち上げにおける炉内温度、供給電力、及び焼却灰の投入量の推移を示した図である。図3において、直線aが昇温目標値、曲線bが炉内温度の実測値、直線cが炉内温度偏差により演算した供給電力の目標値、曲線dが供給電力の実績値、直線eが焼却灰の投入量目標値、曲線fが焼却灰の投入量の実測値である。図3に示されるように、焼却灰は過剰にまたは不足して投入されることなくタイムスケジュールに基づき投入した場合にも、炉内温度はほぼ昇温目標値にそって制御されており、本発明の適用により炉内温度が適性に自動制御されることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す図であり、電気抵抗式灰溶融炉の概略系統図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例を示す図であり、炉内温度制御方法のフローチャートの1例である。
【図3】本発明を適用したときの炉内温度、供給電力及び灰投入量の推移を示す図である。
【図4】従来の電気抵抗式灰溶融炉の概略系統図である。
【符号の説明】
【0040】
1 焼却灰
2 溶融スラグ
3 溶融金属
4 炉本体
5 炉蓋
6a、6b、6c 電極
7 電源トランス
8 1次電圧調整装置
9 電極支腕
10 油圧シリンダー
11 電流計
12 電圧計
13 電力計
14 温度プログラム設定・演算器
15 電力制御盤
16 温度計
17 投入量プログラム設定器
18 投入量制御盤
19 ホッパー
20 ロードセル
21 切出装置
22 シュート
23 スラグ出口
24 スラグ出口ゲート
25 溶融金属排出口
26 溶融金属排出口ゲート
27 ダクト
28 鉄皮
29 耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に装入された電極に通電して灰を溶融する電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法であって、
炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定する工程と、
炉内温度の昇温目標値をプログラム式に設定する工程と、
炉内温度を測定する工程と、
前記設定された投入量目標値のタイムスケジュールに基づいて炉内へ灰を投入する工程と、
前記設定された昇温目標値と測定された炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御する工程と
を備えたことを特徴とする電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御方法。
【請求項2】
炉内に装入された電極に通電して灰を溶融する電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御装置であって、
炉内への灰の投入量目標値をプログラム式に設定する投入量設定手段と、
炉内温度の昇温目標値をプログラム式に設定する温度設定手段と、
炉内温度を測定する温度計と、
前記投入量設定手段により設定された投入量目標値のタイムスケジュールに基づいて灰を炉内へ投入する投入手段と、
前記温度設定手段により設定された昇温目標値のタイムスケジュールと前記温度計により測定された炉内温度の実測値との偏差に応じて電極に供給する電力を制御する供給電力制御手段と
を備えたことを特徴とする電気抵抗式灰溶融炉の溶融制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−285671(P2007−285671A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116451(P2006−116451)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(593141481)JFE環境ソリューションズ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】