説明

電気自動車用バッテリケースの空調装置、および、その製造方法

【課題】電気自動車用バッテリケースの空調装置の製作コストや製作期間の増大を抑制することが出来るようにする。
【解決手段】電気自動車10用のバッテリ17を内蔵するバッテリケース13に形成されたプラグ穴49と、車内11と車外とを連通させる車両側ダクト18と、車外とバッテリケース13内とを連通させるケース側ダクト19と、プラグ穴49に嵌入され車両側ダクト18に接続される断面中空の接続プラグ29とを備える。そして、接続プラグ29が、ケース側ダクト19と一体に形成され、且つ、プラグ穴49の内径d49よりも大きな外径d51を有するように形成され、且つ、バッテリケース13の外側からプラグ穴49の縁部に密着するプラグフランジ52を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用バッテリケースの空調装置と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車に用いられるバッテリを内蔵するバッテリケース内の温度を調節する技術が知られている。このような技術は、バッテリの温度が過度に低下または上昇することで、バッテリ性能が低下することを抑制することを狙っている。
そのような技術の一例としては、以下の特許文献1の技術が挙げられる。
この特許文献1の技術においては、同文献の図1に示されるように、車室内に設けられた空調装置(7)から供給された暖気や冷気をバッテリーフレーム(5)内に供給することが出来るようになっている。
【特許文献1】特許第3050051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、同文献の図1や図2に示されるバッテリーダクト(19)をバッテリーフレーム(5)に固定するための工程が複雑になってしまっているという課題が存在する。
つまり、バッテリケース側に設けられたダクト(ケース側ダクト)と、車両側に設けられたダクト(車両側ダクト)とを接続するためには、両ダクトを接続する部品(接続部品)が必要となる。
【0004】
この場合、ケース側ダクトとバッテリケースとを固定するとともに、接続部品とバッテリケースとを固定し、さらに、ケース側ダクトと接続部品とを接続するという、少なくとも3つの作業工程が必要となるのである。
このように、いくつもの作業工程が必要となっていることにより、製造コストや製作期間の増大を招くという課題も生じている。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、製作コストや製作期間の増大を抑制することが出来る、電気自動車用バッテリケースの空調装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置(請求項1)は、電気自動車用のバッテリを内蔵するバッテリケースと、該バッテリケースに形成されたプラグ穴と、該電気自動車の車内と車外とを連通させる車両側ダクトと、該電気自動車の車外と該バッテリケース内とを連通させるケース側ダクトと、該プラグ穴に嵌入され該車両側ダクトに接続される断面中空の接続プラグとを備え、該接続プラグは、該ケース側ダクトと一体に形成され、且つ、該プラグ穴の内径よりも大きな外径)を有するように形成され、且つ、該バッテリケースの外側から該プラグ穴の縁部に密着するプラグフランジを有することを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置は、請求項1記載の内容において、該接続プラグは、該プラグ穴の内径よりも僅かに大きな外径を有する弾性材で形成されていることを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置は、請求項1または2記載の内容において、該バッテリケースの該プラグ穴の縁部に埋設された埋設ナットと、該埋設ナットに螺合する固定ボルトとをさらに有し、該プラグフランジには、該固定ボルトが挿入されるボルト穴が形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項4記載の本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置は、請求項1または2記載の内容において、該プラグフランジは、接着剤により該バッテリケースに固定されていることを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法は、電気自動車用のバッテリを内蔵するバッテリケースと、該バッテリケースに形成されたプラグ穴と、該電気自動車の車内と該バッテリケースの内部とを連通させるダクトと、該プラグ穴に嵌入され該ダクトとに接続される弾性材製の接続プラグとを有し、該接続プラグは、該ダクトと一体に形成され且つ該プラグ穴の内径よりも大きな外径を有するように形成され且つ該バッテリケースの外側から該プラグ穴の縁部に密着するプラグフランジを有する、電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法であって、該プラグフランジを弾性変形させ且つ該プラグ穴を通じて該バッテリケースの外側へ引き出す引出ステップと、該引出ステップで該弾性変形した該プラグフランジを復元させる復元ステップと、該復元ステップにおいて復元した該プラグフランジを該バッテリケースの外側に固定する固定ステップとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置によれば、プラグフランジをバッテリケースの外側からプラグ穴の縁部に密着させ、接続プラグおよびダクトの双方をバッテリケースの望ましい位置に固定することが可能となる。したがって、電気自動車用バッテリケースの空調装置の製作コストや製作期間の増大を抑制することが出来る。(請求項1)
また、接続プラグを僅かに弾性変形させながらプラグ穴に挿入し、その後、接続プラグを変形前の形に復元させることで、接続プラグとプラグ穴との間に隙間が生じることを防ぎ、バッテリケース内の気密性を高めることが出来る。(請求項2)
また、バッテリケースの気密性を確保しながら、接続プラグとバッテリケースとを確実に固定することが出来る。また、埋設ナットと固定ボルトとを用いることで、接続プラグおよびダクトとバッテリケースとの着脱作業を容易にすることも出来る。(請求項3)
また、バッテリケースの気密性を確保しながら、接続プラグとバッテリケースとを確実に固定することが出来る。(請求項4)
そして、本発明の電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法によれば、引出ステップ,復元ステップ,固定ステップという簡素な工程により、電気自動車用バッテリケースの空調装置の製作コストや製作期間の増大を抑制することが出来る。(請求項5)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る電気自動車用バッテリケースの空調装置について説明すると、図1はその全体を示す模式的な構成図、図2はバッテリケースの外観を示す模式的な上面図、図3はバッテリケースの内部を示す模式的な上面図、図4はシャットバルブユニットを示す模式的な斜視図である。
また、図5は図4の模式的なV−V矢視断面図であって弁体が閉状態である場合を示し、図6は図4の模式的なV−V矢視断面図であって弁体が閉状態である場合を示している。
【0011】
そして、図7は接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって接続プラグがプラグ穴に嵌入された状態を示し、図8は接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって接続プラグがプラグ穴に嵌入される以前の状態を示している。
また、図9は接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって接続プラグがプラグ穴に嵌入される途中の状態を示し、図10は本発明に用いられる接続プラグを創作する過程で創案された接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図である。
【0012】
図1に示すように、電気自動車10の車内11前方には、空調機(HVAC; Heating Ventilating Air Conditioning)12が設けられている。この空調機12は、車内11の空調を行なうだけではなく、バッテリケース13内の空調を行なうことが出来るようになっている。
バッテリケース13は、主に、ケースアッパ14と、ケースロア15とを有して構成され、電気自動車10のフロアパン(床面)16の下に備えられている。なお、ケースアッパ14およびケースロア15のいずれも、樹脂によって形成されている。
【0013】
ケースロア15の上には、複数のバッテリ17が載置されており、これらのバッテリ17から高電圧(例えば、約300V)の電力が図示しない電気自動車10の駆動モータに供給されるようになっている。
ケースアッパ14は、ケースロア15の上に載置され、図示しないボルトナットによってケースロア15と固定されている。
【0014】
また、このバッテリケース13内は、車両側ダクト(エアダクト)18とケース側ダクト(エアダクト)19とを通じて車内11と連通しており、これらの車両用ダクト18およびバッテリケース側ダクト19を介して、空調機12からバッテリケース13内に空気が供給されるようになっている。なお、以下、‘上流’または‘下流’といった表現を用いることがあるが、これは、車内11から車両側ダクト18およびケース側ダクト19を介しバッテリケース13内へ流れる気流(図1中矢印A参照)を基準としたものである。
【0015】
バッテリケース13の後端近傍には、バッテリケース13内の空気をケースアッパ14外の上方に排出する排気ファン21が設けられている。
図2に示すように、バッテリケース13の下面には4つのサポートフレーム22,23,24,25が設けられている。
これらのサポートフレーム22,23,24,25は、いずれも、車幅方向に延在する金属製のフレームであって、電気自動車10の車長方向に延在する一対のサイドメンバ26,26の両側に対しボルトナット(図示略)によって固定されている。
【0016】
また、最前列のサポートフレーム22には、2つの前突フレーム27,27が形成されている。これらの前突フレーム27,27は、いずれも、最前列のサポートフレーム22から電気自動車10の前方へ突出した金属製のフレームであって、一対のサイドメンバ26,26を接続するクロスメンバ28に対してボルトナット(図示略)によって固定されている。
【0017】
また、ケースアッパ14の前面14Aの左側には、接続プラグ(接続部材)29が設けられている。
図3に示すように、この接続部材29は、車両側エアダクト19の入口である。なお、この接続プラグ29の構造については、図7,図8および図9を用いて後述する。
この図3に示すように、ケースロア15の前側に載置されたバッテリ17の上に、車両側エアダクト19が配設されている。
【0018】
この車両側エアダクト19は、前側ダクト31とシャットバルブユニット32と後側ダクト33とから主に構成されている。
前側ダクト31は、接続プラグ29と一体成型された断面中空のダクトである。
シャットバルブユニット32は、前側ダクト31の下流端と後側ダクト33の上流端との間に介装され、前側ダクト31と後側ダクト33との間で空気が流通することを許可または禁止するものである。なお、このシャットバルブユニット32の構造については、図4,図5および図6を用いて後述する。
【0019】
後側ダクト33は、シャットバルブユニット32の下流端に接続された断面中空のダクトである。また、この後側ダクト33の側端と後端には開口部34,35,36,37が形成され、これらの開口部34,35,36,37を通じて、車内11側から送出された空気をバッテリケース13内に供給することが出来るようになっている。
ここで、バルブユニット32に関して説明する。
【0020】
図4に示すように、シャットバルブユニット32は、主に、バルブケース38,弁体39,弁体アクチュエータ41およびシャフト部材42によって構成されている。
バルブケース38は、断面中空の樹脂部品であって、その内部にバタフライ式の弁体39が設けられている。
この弁体39は、図示しない電気モータを内蔵する弁体アクチュエータ41によって閉状態(図5参照)または開状態(図6参照)となるように駆動されるようになっている。
【0021】
また、バルブケース38に対して、弁体39の上端部を回動可能に支持するシャフト部材41が設けられ、上記の弁体アクチュエータ42に接続されている。
弁体アクチュエータ41は、図示しない制御ECU(Electronic Control Unit)により制御されている。この制御ECUは、バッテリケース13内の温度が適正温度(例えば15℃〜25℃程度)になるように、バッテリケース13内に設けられた温度センサ(図示略)の検出結果に基づいて、空調機12および弁体アクチュエータ41を制御する電子制御ユニットである。
【0022】
さらに、この制御ECUは、弁体アクチュエータ41を制御して、原則的に弁体39が閉状態とし、バッテリケース13内の温度を低減する必要が生じた場合に弁体39を開状態とするようになっている。もっとも、バッテリケース13内の温度を低減する必要があったとしても、バッテリ17から水素ガスや二酸化炭素ガスが漏れ出る可能性が高い場合(例えば、電気自動車10の衝突が検出された場合)、制御ECUは、弁体アクチュエータ41を制御して、弁体39を閉状態にするようになっている。
【0023】
このシャットバルブユニット32は、バッテリケース13内に収容されている。
また、図5に示すように、バルブケース38の内側全周にはフランジが形成されている。なお、ここでは、上縁のフランジ43と下縁のフランジ44とを示す。
そして、弁体39は、閉状態時に(図5参照)、これらのフランジと当接するようになっている。
【0024】
一方、弁体39は、開状態時に(図6参照)、シャフト部材42を中心にその下端部が跳ね上がり、これらのフランジ43,44から離隔するようになっている。
小径部45は、前側ダクト31と接続される部分である。
大径部46は、バルブケース38において小径部45よりも下流側に形成された部分であって、小径部45よりも大きな内径を有しており、後側ダクト33と接続される部分である。なお、ここでいう‘内径’とは、円形断面の直径に限るものではなく、内側の幅または高さを含むものとする(この本実施形態では高さとしている)。
【0025】
また、小径部45の上端部45Aの高さh45よりも、大径部46の上端部46Aの高さh46の方が大きくなるように設定されている。
また、小径部45の上端部45Aと大径部46の上端部46Aとの間は、鉛直方向に立接する面である段差面47によって接続されている。
そして、シャフト部材42は、上縁フランジ43および段差面47の下流側で且つ上縁フランジ43および段差面47に近接する位置に配置されている。
【0026】
また、弁体39の上流側の面には、発泡ゴムにより形成されたシール材48が貼り付けられている。したがって、弁体39は、閉状態時、このシール材48を介してフランジ43,44に当接するようになっている。
次に、接続プラグ29について説明する。
図7に示すように、ケースアッパ14の前面14Aには、プラグ穴49が形成されている。
【0027】
プラグ穴49には、接続プラグ29が嵌入されている。
この接続プラグ29は、ケース側ダクト19の上流端として、ケース側ダクト19と一体に形成された部品である。そして、この接続プラグ29は、フロアパン16に対してボルト56およびナット57によって固定された車両側エアダクト18の下流端に接続されるようになっている。
【0028】
また、この接続プラグ29は、主に、先端部51とプラグフランジ52とを有し、ゴム材や柔らかな樹脂材(弾性材)によって形成されている。
また、図8に示すように、先端部51は、外周が蛇腹状に形成され、且つ、プラグ穴49に嵌入されていない状態で、プラグ穴49の内径d49よりも僅かに大きな外径d51を有するように形成されている。
【0029】
プラグフランジ52は、接続プラグ29がプラグ穴49に対して完全に嵌入された場合(図7参照)において、ケースアッパ14の外側からプラグ穴49の縁部に密着するものである。
また、このプラグフランジ52の外径d52は、プラグ穴49の内径d49よりも大きな外径d52を有するように形成されている。
【0030】
また、図7に示すように、このプラグフランジ52には、固定ボルト53が挿入されるボルト穴52Aが形成されている。
この固定ボルト51は、ケースアッパ14におけるプラグ穴49の縁部に埋設された埋設ナット54に対して螺合するものである。なお、この埋設ナット54は、ケースアッパ14の外側にのみ連通しており、ケースアッパ14の内側には連通していない。
【0031】
ここで、接続プラグ29をプラグ穴49に嵌入させる手順を説明する。
まず、図8に示すように、接続プラグ29を備えるケース側ダクト19をケースアッパ内に入れ、その後、図9に示すように、先端部51の径が小さくなるように圧縮弾性変形させながら(図9中矢印F1参照)、接続プラグ29を、ケースアッパ内からプラグ穴49に挿入する。さらに、このプラグ穴49を通じて、接続プラグ29をケースアッパ14の外側へ引き出す(図9中矢印F2参照)。このとき、プラグフランジ52がプラグ穴49の縁部に当接するものの、プラグフランジ52は弾性変形可能なゴム材により形成されているため、その先端がケースアッパ14の内側へ倒れるよう自然に変形する。
【0032】
その後、さらに、接続プラグ29をプラグ穴49から引き出すと、図7に示すように、プラグフランジ52は元の形状に復元し、このプラグフランジ52をバッテリケース14の外側からプラグ穴49の縁部に密着させる。
そして、プラグフランジ52の上から座金55を被せ、固定ボルト53を、座金55のボルト穴およびプラグフランジ52のボルト穴52Aに挿入したうえで、埋設ナット54に螺合させることで、接続ソケット29をケースアッパ14に固定することが出来るようになっている。
【0033】
本発明の一実施形態に係る電気自動車用バッテリケースの空調装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図3を用いて上述したように、シャットバルブユニット32は、バッテリケース13内に収容されている。
また、図5や図6を用いて上述したように、シャフト部材42は、バルブケース38内において上縁フランジ43よりも下流側に配設されている。
【0034】
したがって、シャットバルブユニット32内からシャフト部材42の周縁を通じてシャットバルブユニット32外へ気体(例えば、水素ガス,二酸化炭素ガス,一酸化炭素ガス,炭化水素ガス)が漏れ出たとしても(図5中破線矢印参照)、漏れ出た気体が車室11内へ浸入することを防ぐことが出来る。
この場合、シャフト部材42とバルブケース38との間に高度な気密性を要求する必要がなくなるので、製作コストや製作期間の増大を招かず、バルブケース38内の気体が車内11へ流入する事態を防ぐことが出来るのである。
【0035】
さらに、バッテリケース13内の気圧が車内11の気圧よりも高くなった場合に、各フランジ43,44に対して弁体39が押さえ付けられるようにすることが可能となり、シャットバルブユニット32の気密性を高めることが出来る。
また、図6を用いて上述したように、バルブケース38には、小径部45よりも下流側に形成され、且つ、小径部45よりも大きな内径を有した大径部46が形成されているので、バルブケース32内の気流が過度に速くならないように抑制することが可能となる。
【0036】
つまり、図3中矢印で示すように、後側ダクト33の開口部34,35,36,37を通じてバッテリケース13内に送出される気流が過剰な勢いで噴出した場合、これらの開口部34,35,36,37に近接したバッテリ17のみが重点的に冷やされたり暖められたりするおそれがある。
これに対して、バルブケース38の大径部46内で流速が適度に抑制されるようになっているので、特定のバッテリ17のみが冷やされたり暖められたりする事態を防ぐことが出来るのである。
【0037】
また、図6を用いて上述したように、シャフト部材42が、段差面47の下流側に近接して設けられているので、弁体39が開状態にある場合に、シャフト部材42がバルブケース38内における気流に晒されることを防ぐことが可能となる。したがって、シャフト部材42がバルブケース38内における気流の抵抗となる事態を防ぐことが出来、また、小径部45内における気流が阻害されることを防ぐことが出来る。
【0038】
また、図5を用いて上述したように、弁体39は、閉状態時、シール材48を介して各フランジ43,44に当接するので、閉状態の弁体39と各フランジ43,44との間を通じて気体が流通する事態をより確実に防ぐことが出来る。
また、図8に示すように、接続プラグ29は、ケース側エアダクト19と一体に形成され、且つ、プラグ穴49に嵌入される以前の状態でプラグ穴49の内径d49よりも大きな外径d51を有する先端部51と、プラグ穴49の内径d49よりも大きな外径d52を有するプラグフランジ52とを有して形成されている。
【0039】
さらに、図7に示すように、この接続プラグ29は、バッテリケース13の外側からプラグ穴49の縁部に密着するプラグフランジ52を有している。
したがって、接続プラグ29をプラグ穴49に嵌入させた後に、プラグフランジ52をバッテリケース13の外側からプラグ穴49の縁部に密着させることで、接続プラグ29およびケース側エアダクト19の双方をバッテリケース13の適切な位置に固定することが出来る。
【0040】
つまり、従来であれば、ケース側エアダクト19とバッテリケース13とを固定するとともに、接続プラグ29とバッテリケース13とを固定し、さらに、ケース側エアダクト19と接続プラグ19とを接続するという3つの作業工程が必要であった。
これに対して、本発明によれば、接続プラグ29のプラグフランジ52をバッテリケース13に密着させるという1つの作業工程に集約することが出来るのである。
【0041】
このように、バッテリケース13の組立に要する作業工程を簡素化させることで、コストの低減や生産時間の短縮を可能とすることが出来る。
また、図8に示すように、接続プラグ29の先端部51は、プラグ穴49に嵌入される以前の状態で、プラグ穴49の内径d49よりも僅かに大きな外径d51を有する弾性変形可能なゴム材で形成されている。
【0042】
同様に、接続プラグ29のプラグフランジ52も、プラグ穴49に嵌入される以前の状態で、プラグ穴49の内径d49よりも大きな外径d52を有する弾性変形可能なゴム材で形成されている。
したがって、先端部51およびプラグフランジ52を弾性変形させながらプラグ穴49に嵌入させると(図9参照)、その後、先端部51およびプラグフランジ52の形状が変形前の形に復元するので(図7参照)、接続プラグ29とプラグ穴49との間に隙間が生じることを防ぎ、バッテリケース13内の気密性を高めることが出来る。
【0043】
また、図7を用いて上述したように、ケースアッパ14のプラグ穴49の縁部に埋設ナット54が埋設され、且つ、これらの埋設ナット54に固定ボルト56を螺合することで接続プラグ29をケースアッパ14に対して固定出来るようになっている。
これにより、バッテリケース13の気密性を確保しながら、バッテリケース13に対して接続プラグ29を確実に固定することが出来る。
【0044】
つまり、埋設ナット54を用いることで、バッテリケース13の気密性低下を避けることが出来るのである。
さらに、埋設ナット54と固定ボルト53とを用いることで、接続プラグ29およびケース側エアダクト19とバッテリケース13との着脱作業を容易に行なうことが出来る。
ここで、本実施形態に係る接続プラグ29を創作する過程で創案された接続プラグ129について、図10を用いて説明する。
【0045】
図10に示すように、接続プラグ129は、主に、先端部151とプラグフランジ152とにより構成され、ゴム材(弾性材)によって形成されている。
そして、プラグフランジ152が、ケースアッパ14の前面14Aに対して固定ボルト153および固定ナット154によって固定されている。
そして、この接続プラグ129は、フロアパン16に対してボルト56およびナット57によって固定された車両側エアダクト18の下流端に接続されるようになっている。
【0046】
ケース側エアダクト119は、原則的には、図7に示すケース側エアダクト19と同様のものである。しかしながら、図7のケース側ダクト19の上流端は接続プラグ29により形成されていたのに対し、図10のケース側ダクト119の上流端にはダクトフランジ119Aが形成されており、このダクトフランジ119Aが、ケースアッパ114の内側において、プラグ穴49の縁部に上記の固定ボルト153および固定ナット154によって固定されている点で異なっている。
【0047】
また、これらの固定ボルト153は、プラグフランジ152,ケースアッパ14の前面14Aおよびダクトフランジ119Aをそれぞれ貫通するようになっている。
そして、この図10に示す構造においては、まず、接続プラグ129をケースアッパ14の前面14Aに外側から当接させつつ、さらに、ケース側エアダクト119のダクトフランジ119Aをケースアッパ14の前面14Aに内側から当接させる必要が生じる。
【0048】
その後、ダクトフランジ119A,ケースアッパ14の前面14Aおよびダクトフランジ119Aを固定ボルト153により貫通させた上で、この固定ボルト153と固定ナット154とを螺合させる必要がある。
つまり、接続プラグ129とケースアッパ14との固定と、ケース側ダクト119とケースアッパ14との固定と、さらに、接続プラグ129とケース側ダクト119との接続、という3つの作業工程を経る必要が生じるのである。
【0049】
これに対して、図7に示す本実施形態に係る本発明においては、図7〜図9を用いて上述したように、接続プラグ29のプラグフランジ52をケースアッパ14の前面14Aに固定するという1つの作業工程で、接続プラグ29とケースアッパ14との固定と、ケース側ダクト19とケースアッパ14との固定と、接続プラグ29とケース側ダクト29との接続を行うことが出来るのである。
【0050】
また、図10に示す構造においては、接続プラグ129とケースアッパ14との間や、ケース側ダクト119とケースアッパ14との間の気密性を保つことが難しいという問題がある。
さらに、図10に示す構造においては、固定ボルト153が、ダクトフランジ119A,ケースアッパ14の前面14Aおよびダクトフランジ119Aを貫通しているため、バッテリケース113内の気密性が低下するという問題もある。
【0051】
これに対して、図7に示す本実施形態に係る本発明においては、図7〜図9を用いて上述したように、接続プラグ29とケース側ダクト19とが継ぎ目なく一体に形成されているので、接続プラグ29とケースアッパ14との間で隙間は存在せず、同様に、ケースアッパ14とケース側ダクト19との間でも隙間は存在しない。このため、接続プラグ29とケース側ダクト19との間の気密性を確実に高めることが出来るのである。
【0052】
さらに、図7に示す本実施形態に係る本発明においては、固定ボルト53が、ケースアッパ14の前面14Aに埋設された埋設ナット54に螺合するようになっているので、固定ボルト53がケースアッパ14を貫通することがない。したがって、バッテリケース13の気密性が低下する事態を防ぐことが出来るのである。
次に、具体的な電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法について説明する。
【0053】
図8に示すように、まず、ケースアッパ14の内部において、プラグ穴49の近傍に接続プラグ29を配設する。
その後、図9に示すように、接続プラグ29の先端部51の径が細くなるように弾性変形させ、且つ、プラグ穴49を通じてケースアッパ14の外側へ接続プラグ29を引き出す(引出ステップ)。
【0054】
そして、図7に示すように、上記の引出ステップにおいて弾性変形した先端部51およびプラグフランジ52を、弾性復元させる(復元ステップ)。
その後、復元ステップにおいて弾性復元したプラグフランジ52の上から座金55を被せ、固定ボルト53を、座金55のボルト穴55Aおよびプラグフランジ52のボルト穴52Aに挿入したうえで、埋設ナット54に螺合させることで、プラグフランジ52をケースアッパ14の外側に固定する(固定ステップ)。
【0055】
これらのステップを経ることにより、電気自動車11に用いられるバッテリケース13の空調装置の組立に要する作業工程を簡素化させ、コストの低減や生産時間を短縮することが出来るのである。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが出来る。その一例を以下に示す。
【0056】
上述の実施形態においては、図6に示すように、弁体39が開状態である場合、弁体39の下端部がシャフト部材42と略同じ高さとなる姿勢となるように、弁体アクチュエータ41が弁体39を駆動する場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、弁体39が開状態である場合、弁体39の下端部がバルブケース38における大径部46の上端部46Aに近接する(図11中矢印A参照)ような姿勢となるように、弁体アクチュエータ41が弁体39を駆動するようにしても良い。
【0057】
これにより、バルブケース38内の気流が、バルブケース38上端部に形成された段差面47の存在によって乱れることを防ぐことが出来る。
また、上述の実施形態においては、プラグフランジ52が、固定ボルト53および埋設ナット54によってケースアッパ14に固定されている場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、プラグフランジ52が、ケースアッパ14の前面14Aに対して接着剤により固定されるようにしても良い。この場合、バッテリケース13の気密性を高めるとともに、部品点数を低減させることによる作業工程の抑制やコストの低減を図ることが出来るというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車用バッテリケースの空調装置の全体構成を示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるバッテリケースの外部を示す模式的な上面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるバッテリケースの内部を示す模式的な上面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるシャットバルブユニットを示す模式的な斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるシャットバルブユニットの模式的な断面図(図4の模式的なV−V矢視断面図)であって、弁体が「閉状態」である場合を示す。
【図6】本発明の一実施形態におけるシャットバルブユニットの模式的な断面図(図4の模式的なV−V矢視断面図)であって、弁体が「開状態」である場合を示す。
【図7】本発明の一実施形態における接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって、接続プラグがプラグ穴に嵌入された状態を示す。
【図8】本発明の一実施形態における接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって、接続プラグがプラグ穴に嵌入される以前の状態を示す。
【図9】本発明の一実施形態における接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図であって、接続プラグがプラグ穴に嵌入され始めた状態を示す。
【図10】本発明の一実施形態における接続プラグを創作する過程で創案された接続プラグ近傍の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の変形例におけるシャットバルブユニットの模式的な断面図(図4の模式的なV−V矢視断面に相当する図)であって、弁体が「開状態」である場合を示す。
【図12】車両の空調に用いられる一般的なバルブユニットを示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10 電気自動車
13 バッテリケース
17 バッテリ
18 車両側ダクト(ダクト)
19 ケース側ダクト(ダクト)
29 接続プラグ
32 シャットバルブユニット
38 バルブケース
39 弁体
41 弁体アクチュエータ
42 シャフト部材
43 上縁フランジ(フランジ)
44 下縁フランジ(フランジ)
45 小径部
46 大径部
46A 大径部の上端部
47 段差面
48 シール材
49 プラグ穴
52 プラグフランジ
54 埋設ナット
49 プラグ穴の内径
52 プラグフランジの内径
45 小径部の高さ
46 大径部の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車用のバッテリを内蔵するバッテリケースと、
該バッテリケースに形成されたプラグ穴と、
該電気自動車の車内と車外とを連通させる車両側ダクトと、
該電気自動車の車外と該バッテリケース内とを連通させるケース側ダクトと、
該プラグ穴に嵌入され該車両側ダクトに接続される断面中空の接続プラグとを備え、
該接続プラグは、該ケース側ダクトと一体に形成され、且つ、該プラグ穴の内径よりも大きな外径を有するように形成され、且つ、該バッテリケースの外側から該プラグ穴の縁部に密着するプラグフランジを有する
ことを特徴とする、電気自動車用バッテリケースの空調装置。
【請求項2】
該接続プラグは、該プラグ穴の内径よりも僅かに大きな外径を有する弾性材で形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載の電気自動車用バッテリケースの空調装置。
【請求項3】
該バッテリケースの該プラグ穴の縁部に埋設された埋設ナットと、
該埋設ナットに螺合する固定ボルトとをさらに有し、
該プラグフランジには、該固定ボルトが挿入されるボルト穴が形成されている
ことを特徴とする、請求項1または2記載の電気自動車用バッテリケースの空調装置。
【請求項4】
該プラグフランジは、接着剤により該バッテリケースに固定されている
ことを特徴とする、請求項1または2記載の電気自動車用バッテリケースの空調装置。
【請求項5】
電気自動車用のバッテリを内蔵するバッテリケースと、該バッテリケースに形成されたプラグ穴と、該電気自動車の車内と該バッテリケースの内部とを連通させるダクトと、該プラグ穴に嵌入され該ダクトとに接続される弾性材製の接続プラグとを有し、該接続プラグは、該ダクトと一体に形成され且つ該プラグ穴の内径よりも大きな外径を有するように形成され且つ該バッテリケースの外側から該プラグ穴の縁部に密着するプラグフランジを有する、電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法であって、
該プラグフランジを弾性変形させ且つ該プラグ穴を通じて該バッテリケースの外側へ引き出す引出ステップと、
該引出ステップで該弾性変形した該プラグフランジを復元させる復元ステップと、
該復元ステップにおいて復元した該プラグフランジを該バッテリケースの外側に固定する固定ステップとを有する
ことを特徴とする、電気自動車用バッテリケースの空調装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−70010(P2010−70010A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238529(P2008−238529)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】