説明

電気自動車用バッテリパック装置

【課題】本発明は、バッテリパック部の大きな変更を伴わずに、遮断ユニットが一体に組み付く電気自動車のバッテリパック装置を提供する。
【解決手段】本発明は、バッテリパック部16のケース19外面に、外付けでコンタクタユニット22を設置して、当該ユニット22をバッテリパック部16と一体にする構成を用いた。これにより、バッテリパック部16の内部機器のレイアウトや構造を大きく変更させずに、容易にコンタクタユニット22とバッテリパック部16とを一体にさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の駆動に必要な駆動用電力を供給する電気自動車用バッテリパック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の動力系には、車体に搭載されたバッテリパック装置から走行用モータ、さらには各部へ電力を供給するシステムが用いられている。
【0003】
こうした動力系を構成するバッテリパック装置には、ケース内に複数の蓄電池を収めてユニット化されたバッテリパック部を車体に組付けた構造が用いられる。
【0004】
ところで、バッテリパック部は、バッテリパック部単体で取扱う場合、安全性の確保から、電力の入出力を行う端子部へ電流が流れないようにすることが求められる。そのため、バッテリパック部では、別途、外部信号で動作するコンタクタ(常閉式)や手動式の遮断機器など遮断機器で構成される遮断ユニット部を端子部に接続して、バッテリパック部を単独で取扱うときは、遮断ユニットの遮断機能を用いて、蓄電池からの電圧がバッテリパック部の電力供給側や充電側の端子へ印加しないようにしている。
【0005】
ところが、こうした遮断ユニット部は使い勝手が悪い。
【0006】
そのため、従来、遮断ユニット部は、バッテリパック部の内部に、バッテリパック部の内部機器と一緒に設置するようになった(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平7−14564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、遮断ユニットをバッテリパック部の内部に組付ける構造は、バッテリパック部内部に、遮断ユニットを設置するための設置スペースを確保する都合上、バッテリパック部の内部に収まる蓄電池のレイアウトの変更や、これら蓄電池間をつなぐ接続部材のルートの変更など、大きな変更が余儀なくされることが多い。このため、バッテリパック装置は、遮断ユニットの組付けにより、バッテリパック装置の構造が複雑になりやすい問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、バッテリパック部の大きな変更を伴わずに、遮断ユニットが一体に組み付く電気自動車のバッテリパック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、バッテリパック部のケース外面に、遮断ユニットを外付けで設置して、当該遮断ユニットをバッテリパック部と一体にする構成を採用した。
【0010】
請求項2に記載の発明は、さらに、車体に形成されている各部の既存スペースを活用して、遮断ユニットが外付けされたバッテリパック部が車体に組み付くよう、バッテリパック部は、車体のうち、後席のフロア下に有するフロア下空間に収まるように構成し、遮断ユニット部は、フロア下空間と連通するフロアトンネルの端部分内に収まるように構成した。
【0011】
請求項3に記載の発明は、さらに、車体へ加わる衝撃を要因としたバッテリパック部の車体からの脱落が抑えられるよう、バッテリパック部は、車体前後方向前側のパック部分が、軸心方向が車幅方向に向く第1締結部材を介して、フロア下の車体部材に固定可能とし、車体前後方向後側のパック部分が、軸心方向が上下方向に向く第2締結部材を介して、フロア下の車体部材に固定可能な構成とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、バッテリパック部の内部機器のレイアウトや接続部財のルートが変わるなど、大きな変更を伴わずに、容易に遮断ユニットとバッテリパック部とが一体となったバッテリパック装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、さらに上記効果に加え、車体に形成されている既存スペースを、そのままバッテリパック装置の設置スペースに活用して、車体にバッテリパック装置全体を組付けることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、さらに上記効果に加え、簡単な固定手法により、衝突時、車体からバッテリパック装置が脱落しにくくでき、安全性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[一実施形態]
以下、本発明を図1〜図6に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0016】
図1は電気自動車の一部の平断面を示し、図2は同じく側断面図を示している。同図中1は例えば箱形の車体、2は同車体1の内部に形成された車室空間、3は同空間2のフロア面を形成するフロアパネル、4は同フロアパネル3のフロントフロア部分の左右にそれぞれ設置されたフロントシート(運転席、助手席)、6は同フロアパネル3のリヤ側をフロント側より高い地点に段差させてなるリヤフロア部分、7は同リヤフロア部分6の最前部に設置されたリヤシート、8はリヤフロア部分6の段差した壁部6a(縦壁)の車幅方向中央からフロンナパネル3のフロント側へ向って直線状に形成されたフロアトンネル部、9は車体1の前・後両側に組付くタイヤを示す。なお、フロアパネル3の下面には、車体剛性を確保する構造として、車幅方向両側に形成されたタイヤハウス部分3a(リヤ側の一部しか図示せず)の近くを通じて車体前後方向に延びる一対のサイドレール10や、段差した壁部6aの内面に沿わせながら一対のサイドレール10間に連結されたクロスメンバ11(いずれも本願の車体部材に相当)など各種骨格部材が取着してある。
【0017】
車体1のうち、段差したリヤフロア部分6で形成されるリヤシート下のフロア下空間13(エンジン駆動式自動車の車体では、通常、燃料タンクが配置される部位となる場所)には、図1〜図3に示されるように電気自動車用のバッテリパック装置15が組込まれている。図5にはこのバッテリパック装置15を車体1に組み込んだ状態が斜視図で示され、図6には同装置15を車体1から取り外した状態が示されている。
【0018】
これら各図を用いてバッテリパック装置15を説明すると、16はバッテリパック部である。バッテリパック部16は、上面が開放した偏平状の上側ケース17と、下面が開放した偏平状の上側ケース18とを結合して構成される偏平箱形の密閉ケース19(本願のケースに相当)を有し、この密閉ケース19内に複数の蓄電池、例えば複数のLi(リチウム)−ion(イオン)バッテリ20(以後、単にバッテリ20という)を密に収めて構成される。このバッテリパック部16の外形はフロア下空間13の形状にならわせてある。そして、この形状を利用してバッテリパック部16の全体がフロア下空間13内(図6にのみ図示)に収容してある。なお、各バッテリ20は、大電力を出力可能とするために、いずれも直列に接続してある。
【0019】
またバッテリパック部16の前部(車体前後方向)中央には、遮断ユニット部としてコンタクタユニット22が組み付けられている。コンタクタユニット22は、例えば図5および図6に示されるように下側ケース18の前壁下段の外面中央から突き出た盤状のベース23に組み付けてある。さらに同構造を説明すると、ベース23の最前部には出力用(メイン)の一対の端子部24が設けられ、側部には充電用の一対の端子部25が設けられている。これら端子部24,25に上記バッテリパック部16から延びる入出力線(図示しない)が接続され、一対の端子部24から電気自動車のモータ駆動に求められる大電力が出力されたり、一対の端子部25から各バッテリ20の充電に求められる電力が入力される構造にしている。ベース23の上面には、例えばメインコンタクタ、チャージコンタクタ(外部信号で動作する常開式のリレー機器よりなる:いずれも図示しない)を組み合わせてユニット化したコンタクタ部27が設置されている。メインコンタクタは、端子部24とバッテリパック部16の入出部間をむすぶ通電経路(図示しない)に介装され、チャージコンタクタは、端子部25とバッテリパック部16の入出部間をむすぶ通電経路(図示しない)に介装されていて、バッテリパック装置15を単体で取り扱うときには、各コンタクタの開放動作により、各端子部24,25へバッテリ20の電圧が加わらないようにしている。さらにベース23の上面には、このコンタクタ部27の周囲を覆うようにカバー28が設けられ、コンタクタ部27の周囲、さらには端子部24,25の基部側を密閉している。コンタクタユニット22は、このような密閉構造により、電源を遮断する系統を1つにまとめてユニット化させている。つまり、コンタクタユニット12は、外付けされて、バッテリパック部16に対して一体に組み付けてある。
【0020】
このコンタクタユニット22の外形は、フロア下空間13につながるフロアトンネル部8の端部分の形状にならわせてある。この形状を用いて、コンタクタユニット22のほぼ全体をフロアトンネル部8の端部の内部空間に収めている。そして、メイン側となる一対の端子部24が走行用モータなどパワープラント部(図示しない)に接続され、チャージ側となる一対の端子部25が同パワープラント部の回生系統やチャージ口部(いずれも図示しない)に接続され、バッテリ20から各機器へ電力を供給したり、発電系統やチャージ口部から充電電力がバッテリ20へ供給されたりしている。
【0021】
またバッテリパック部16は、図3、図5および図6に示されるように車体1から脱落しにくい構造で、車体1の各部に固定されている。同構造には、例えばバッテリパック部16の前側(車体前後方向)を、軸心方向が車幅方向に向く締結部材、例えばボルト部材30(本願の第1締結部材に相当)を用いて、車体部材、例えばクロスメンバ11に支持させ、後側(車体前後方向)を、軸心方向が上下方向に向く締結部材、例えばボルト部材31(本願の第2締結部材に相当)を用いて、車体部材、例えば左/右のサイドレール10に支持させる構造が用いられている。具体的には、前側の構造には、例えば図6に示されるようにコンタクタユニット20を挟んだ下側ケース18の前壁両側(外面)に、それぞれ車幅方向に並ぶ一対の支持板33を有する一対のブラケット34を取着し、上記前壁と隣接する地点にあるクロスメンバ11の両側(フロアトンネル端を挟んだ両側)に、それぞれ上記支持板33を前方側から囲うチャンネル形状の受板35をもつ一対のブラケット36を取着し、車幅方向に並ぶ支持板33と受板35の側壁との間にボルト部材30を挿通させてナット37で止める構造が用いられている。つまり、バッテリパック部16の前側は、車幅方向に延びるボルト部材30で行われる締結により、クロスメンバ11から吊り下がるように固定してある。なお、38は、開放した支持板33間を通るボルト部分に挿通したカラーを示す。
【0022】
また後側の構造には、例えば図6に示されるように下側ケース18の車幅方向両側壁に、上面に設置座40が形成された一対の台状のブラケット41を取着し、上記側壁と隣接する地点にあるサイドレール10の下部に、下面にねじ孔42(固定孔)が開口した台状のブラケット43を取着し、ブラケット41に形成された上下方向に貫通する通孔44からボルト部材31をブラケット43のねじ孔42へ螺挿する構造が用いられている。つまり、バッテリパック部16の後側は、上下方向に延びるボルト部材31で行われる締結により、一対のサイドレール10から吊り下がるように固定してある。またボルト部材31は、サイドフレーム10に変形(曲がり)がもたらす荷重が軸方向へ所定値以上、加わると、破断、例えばねじ孔42から脱落するように設定されている。
【0023】
つまり、バッテリパック装置15は、車両後端から衝撃が加わると、バッテリパック部16を固定している前側の固定状態はそのままに、後側の固定だけが解除される構造で支持されていて、容易には車体1からバッテリパック装置15が脱落しない構造にしている。
【0024】
上述のようにコンタクタユニット22を外付けで一体に組み込むバッテリパック装置15を採用したことにより、バッテリパック部16の内部機器の大きな変更、例えばバッテリのレイアウトの変更やバッテリ間をつなぐ接続部材のルートの変更などを回避(内部機器に加わる負担の抑制)した、コンタクタユニット22が一体になったバッテリパック装置15が実現できる。
【0025】
しかも、バッテリパック部16は、既存の車体では燃料タンクが配置される部位となっていたフロア下空間13内に収まるように構成され、コンタクタユニット22は、同じくフロア下空間13と連通するフロアトンネル部8内に収まるように構成されているから、図5に示されるようにエンジンを搭載する車体1に有る既存のスペースを、そのまま設置スペースに活用して、バッテリパック装置15の全体を車体1に組み付けることができる。
【0026】
またバッテリパック装置15の固定には、バッテリパック部16の前側を、車幅方向に向くボルト部材30(左/右:2本)で車体側に支持し、後側を、上下方向に向くボルト部材31(左/右:2本)で車体側に支持した構造を採用したことにより、図4中の二点鎖線(一部だけ)に示されるように例えば衝突により車体1の後部から衝撃を受けてサイドレール10が変形したような場合(衝突エネルギー:大) 、その変形が前後のボルト部材30,31のうち、後側のボルト部材31には抜け出る方向に作用するようになる。そのため、大きな衝撃が車体後部から加わると、ボルト部材31だけが脱落して、残る前側のボルト部材31でバッテリパック装置15の支持を継続するようになる。その結果、バッテリパック部16へ加わる衝撃入力は抑えられる。しかも、バッテリパック装置15の脱落が防止されるので、安全性の向上が図れる。そのうえ、ボルト部材31の脱落により、大きな衝撃吸収性をもたらすサイドフレーム10の端部分での衝撃吸収は妨げずにすむので、衝撃吸収性の確保の点にも優れる利点がある。
【0027】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のバッテリパック装置を、同装置を搭載した電気自動車の車体と共に示す平断面図。
【図2】同じく側断面図。
【図3】バッテリパック装置の支持構造を示す側断面図。
【図4】車体後部から衝撃が加わったときのバッテリパック装置の挙動を説明するための側断面図。
【図5】バッテリパック装置の支持構造を示す斜視図。
【図6】同じく分解斜視図。
【符号の説明】
【0029】
1…車体、8…フロアトンネル部(フロアトンネル)、10,11…サイドレール,クロスメンバ(車体部材)、13…フロア下空間、15…バッテリパック装置、16…バッテリパック部、19…密閉ケース(ケース)、20…バッテリ(蓄電池)、22…コンタクタユニット(遮断ユニット部)、30,31…ボルト部材(第1締結部材,第2締結部材)、34,36,41,43…ブラケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に複数の蓄電池を収めてユニット化された電気自動車駆動用のバッテリパック部と、
前記ケースの外面に外付けされて該バッテリパック部と一体に設けられた、前記バッテリパック部の電源を遮断するための遮断ユニット部と
を具備したことを特徴とする電気自動車用バッテリパック装置。
【請求項2】
前記バッテリパック部は、フロアトンネルおよびリヤシートを有する車体のうち、前記リヤシートのフロア下に有するフロア下空間に収まるように構成され、
前記遮断ユニット部は、前記フロア下空間と連通するフロアトンネルの端部分内に収まるように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用バッテリパック装置。
【請求項3】
前記バッテリパック部は、車体前後方向前側のパック部分が、軸心方向が車幅方向に向く第1締結部材を介して、フロア下の車体部材に固定され、車体前後方向後側のパック部分が、軸心方向が上下方向に向く第2締結部材を介して、フロア下の車体部材に固定される
ことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車用バッテリパック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−73466(P2006−73466A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258478(P2004−258478)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】