説明

電気車用電源装置

【課題】 電気車の照明や空調装置などに電源を供給する電気車用電源装置の小型軽量化を実現する。
【解決手段】 電気車電源装置1は、直流を3相交流に変換する第1〜第3インバータ相4a〜4cと、前記第1〜第3インバータ相4a〜4cに対して、3相インバータ用のゲート信号を発生する制御部15と、前記第1〜第3インバータ相4a〜4cの3相出力電圧を任意値の電圧に変換し、電車内の負荷に電力を供給するトランス6と、前記直流を単相交流に変換する待機相インバータ4dと、前記第1〜第3インバータ相4a〜4cの相単位の故障を検知する故障検知手段38と、前記故障検知回路38により故障を検知されたインバータ相を、前記待機相インバータに切換えて運転を継続する切換手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線から電力を受け取り、電気車の照明や空調装置などに電源を供給する電気車用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電気車用電源装置は、電圧検出器にて架線電圧の有無を取得し、電圧が印加されている場合に動作を開始する。このような電気車用電源装置においては、冗長系を有するために1編成に2台以上の電源装置を搭載することがある。例えば、10両編成の列車で、2車両にこのような電源装置を搭載し、通常は一方の電源を使用して、電源異常が発生した場合に他方の電源を使用するように構成する場合がある。あるいは、1電源装置内に2つ以上の3相インバータを備えることもある。一例として、1台もしくは全数ではないが複数台の3相インバータを待機させ、故障が発生した際に待機していた3相インバータに切り換えることを特徴とする電気車用電源装置が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−287129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した電気車用電源装置は、電源装置内に3相インバータを2系統以上待機させるため、装置が大型化し重量が増大する問題があった。
【0004】
本発明は、電気車用電源装置の小型軽量化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
故障を起こす可能性の高いインバータ部は、インバータ部の1相のみ故障となる場合がほとんどであることから、インバータ部の1相のみを待機させることにより、装置の小型軽量化を図ることが可能となる。
【0006】
本発明に係る電気車電源装置は、直流を3相交流に変換する第1乃至第3インバータ相と、前記第1乃至第3インバータ相に対して、3相インバータ用のゲート信号を発生する制御部と、前記第1乃至第3インバータ相の3相出力電圧を任意値の電圧に変換し、電車内の負荷に電力を供給するトランスと、前記直流を単相交流に変換する待機相インバータと、前記第1乃至第3インバータ相の相単位の故障を検知する故障検知手段と、前記故障検知回路により故障を検知されたインバータ相を、前記待機相インバータに切換えて運転を継続する切換手段とを具備する。
【発明の効果】
【0007】
電気車用電源装置の小型軽量化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る電気車用電源装置の実施例について、図面を参照して説明する。
【0009】
[第1実施例]
(構成)
本発明による電気車用電源装置1の第1実施例の回路構成を図1、図2に示す。
【0010】
図1において、架線31から例えばDC1500Vの電圧が、パンタグラフ32、電源装置1の接触器2、初期充電回路3及び複数の切替接点7a〜7dを介して複数のインバータ相(相単位インバータ)4a〜4dに供給される。初期充電回路3は、電源投入時のフィルタコンデンサ36への突入電流を抑制する。各インバータ相4a〜4dは、自己消弧形素子(GTOサイリスタ、IGBT等)34及びダイオード35等の電力用半導体素子で構成されるスイッチング回路、及び入力側に設けられたフィルタコンデンサ35を含む。
【0011】
インバータ相4a〜4dの出力は複数の切替接点8a〜8d(8d1〜8d3)、ACフィルタ5を介して絶縁トランス6に接続されている。ACフィルタ5は各インバータ相の出力を正弦波に波形整形する。絶縁トランス6の出力電圧は、電車内に設けられた照明装置、空調装置等の負荷へ供給される。絶縁トランス6は、ACフィルタ5の3相出力電圧を任意値の3相電圧に変換すると共に、上記インバータ相4a〜4dと負荷を直流的に絶縁する。この電源装置1のGNDは、車輪34に接続されている。
【0012】
図2において、インバータ相4a〜4dは図1の4a〜4dに相当する。制御部15は、待機回路切換論理14、相ゲート信号出力回路9a〜9dを含んでいる。インバータ相4a〜4dはゲートアンプ回路10a〜10dを含んでいる。
【0013】
制御部15は、インバータ部に対する3相PWMゲート信号(5V/0V振幅)を発生する回路(図示されず)を含む。制御部15はこのゲート信号を発生するために、図示されないマイコン、メモリ、各種センサからのアナログ信号をA/D変換するA/D変換器及び電源を含む。待機回路切換論理14は、入力されるゲート異常信号12a〜12dに基づいて、ゲート出力指令13a〜13d及び相切換接点投入信号16a〜16fを出力する。
【0014】
相ゲート信号出力回路9(9a、9b、9d)は、ゲート出力指令13(13a、13b、13d)に従って、制御部15で発生されたゲート信号を15V/0V振幅のゲート信号指令11(11a、11b、11d)に変換して出力する。ゲートアンプ回路10(10a、10b、10d)は、ゲート信号指令11を+15V/−15V振幅のゲート信号に変換して、インバータ相4のゲートに供給する。各ゲートアンプ回路10は、各インバータ相のスイッチング回路を構成する電力用半導体素子(以下、スイッチング素子という)の故障を検知する故障検知部38を有している。スイッチング素子の故障を検出した場合、故障検知部38はゲート異常信号12(12a〜12d)を出力する。故障検知部38は、例えばゲートアンプ回路10の入出力信号の論理が互いに一致していない場合、ゲート異常信号12を出力する。
【0015】
インバータ相4の例えば自己消弧形素子34が故障すると、一般にそのゲート電圧は0V付近の電圧となる。故障検知部38は、入力ゲート信号指令11が+15Vであるのにも係らず、ゲートアンプ回路10の出力電圧(インバータ相のゲート電圧)が0Vであった場合、当該インバータ相が故障していると判断し、ゲート異常信号12(例えばハイレベル信号)を出力する。尚、図2では説明を簡単にするため各インバータ相について、相ゲート信号出力回路9及びゲートアンプ回路10を含む回路36が1回路示されているが、実際にはインバータ相の2つのスイッチング回路に対してそれぞれ回路36が設けられている。つまり回路36は、各インバータ相について2回路設けられる。
【0016】
(作用)
インバータU相4a、インバータV相4b、インバータW相4cは通常時、3相インバータとして動作する。この時、相切換接点7a〜7c、8a〜8cは全て閉じており、待機相インバータ4dの前後に設けられた相切換接点7dと8dは開いている。
【0017】
インバータ相4a〜4cのいずれかの相に故障が発生した場合、故障の発生した相の相切換接点7と8を開放し、待機相4dの切換接点7dを閉じ、故障の発生した相に対応する切換接点8d(8d1〜8d3の1つ)が閉じる。このとき、待機相インバータ4dが、開放された(故障した)インバータ相と同じタイミングでスイッチング動作することにより、正常な3相インバータが構成される。
【0018】
具体例を上げて以下説明する。
【0019】
例えば、インバータV相4bにてスイッチング素子が壊れたとすると、V相ゲート異常信号12bが制御部15に入力する。制御部15内の待機回路切換論理14はV相ゲート異常信号12bを受け取ると、V相相切換接点投入指令16bとしてオフ信号(例えばローレベル信号)を出力し、同時に投入指令16eとしてオン信号(例えばハイレベル信号)を出力する。投入指令16bがオフ信号となると、図1に示す相切換接点7bと8bがオフすることにより、故障した相4bは3相インバータから切り離される。同時に投入指令16eがオン信号となると、図1のOR回路33がオン信号を出力し、切換接点7dと8d2がオンして待機相4dが3相インバータの1相として機能する。
【0020】
図2において待機回路切換論理14は、ゲート出力指令13dとしてV相の信号指令を出力する。相ゲート出力回路9dはV相信号指令に応答して、制御部15で発生されたV相ゲート信号を出力する。その結果、インバータ相4aがU相、4cがW相、4dがV相となり正常な3相インバータが構成される。
【0021】
(効果)
3相インバータの相単位に故障を検知して、故障した相のみを待機系に切換えることにより、復旧して正常起動することができる。待機する回路が3相インバータ単位でなく相単位なので、装置の小型軽量化が可能となる。
【0022】
[第2実施例]
次に、本発明に係る電気車用電源装置の第2実施例について説明する。
【0023】
インバータの制御部15は、インバータの各相4a〜4cと同様に故障する頻度が高い。制御部15が故障すると、例えばインバータの故障を誤検知することがある。つまり、インバータの各相4a〜4cが正常であるにもかかわらず、異常と判断されることがある。そこで第2実施例では、第1実施例と同様にインバータの相単位に故障を検知すると共に、異常と判断されたインバータ相及び制御部が、待機系のインバータ相及び制御部に切換えられる。
【0024】
(構成)
本発明による電気車用電源装置の第2実施例の回路構成を図1、図3に示す。
【0025】
図1の回路構成は、第1実施例と同様に第2実施例に適用でき、各部の説明は省略される。
【0026】
図3において、インバータの各相4a〜4dは図1の各相4a〜4dに相当する。以下、図2の第2実施例と異なる構成部についてのみ説明する。制御部15aの相ゲート信号出力回路9a〜9cの出力は、ゲート信号切換接点17a〜17cを介してゲートアンプ回路10a〜10cに接続されている。制御部15bは待機系の制御部として設けられており、インバータ相4a〜4cのいずれかの相で故障が検出されると、制御部15aに代わって、インバータ相4a〜4cのうち正常な2相及び待機系インバータ相4dを3相インバータとして制御する。
【0027】
(作用)
インバータの各相4a〜4cのいずれかにおいてスイッチング素子が壊れた場合、相内の対応するゲートアンプ回路10にて、スイッチング素子のゲート電圧異常を検知して、制御部15a内の待機回路切換論理14aに、対応するゲート異常信号12が出力される。
【0028】
具体例を上げて以下説明する。
【0029】
正常状態では、図3のゲート信号切換接点17a〜17cは全てオンされ、ゲート信号切換接点17e〜17gは全てオフされている。相切換接点投入指令16a〜16cとしては全てオン信号が出力され、16d〜16fは全てオフ信号が出力される。
【0030】
ここで例えば、図1のインバータのV相4bにてスイッチング素子が壊れたとすると、V相ゲート異常信号12bが制御部15aに入力する。制御部15a内の待機回路切換論理14aはV相ゲート異常信号12bを受け取ると、V相相切換接点投入指令16bとしてオフ信号を出力する。V相相切換接点投入指令16bのオフ信号に応答して、図1に示す相切換接点7bと8bがオフされ、故障した相4bは3相インバータから切り離される。
【0031】
これと同時に、図3の待機回路切換論理14aはゲート信号切換接点17a〜17cをオフして、待機系起動指令18としてV相異常故障を検知した事を示す信号を、待機系制御部15b内の待機回路切換論理14bに出力する。この待機系起動指令18に応じて待機回路切換論理14bは、投入指令16eとしてオン信号を出力する。このオン信号の出力により、図1の切換接点7dと8d2がオンして、待機相4dが3相インバータの1相として機能する。
【0032】
また待機回路切換論理14bは、故障と判断したV相のゲート信号切換接点17fはオフしたまま、正常相のゲート信号切換接点17e、17gをオンする。これと同時に待機相へのゲート出力指令13dをV相運転指令に設定する。
【0033】
以上の待機系への切換動作によりインバータ相4aがU相、4cがW相、4dがV相となり、制御部も待機系に切り替わり、正常な3相インバータ回路が構成される。
【0034】
(効果)
インバータの相単位に故障を検知して、異常が検出された相及び制御部を、待機系の相及び制御部に切換えることにより、インバータ部に故障が発生した場合に、復旧して正常起動することができる。第1実施例と同様に、待機する回路が3相インバータ単位でなく相単位なので、電源装置の小型軽量化が可能となる。
【0035】
更に第2実施例では、インバータ回路部と同様に故障する頻度が高い制御部も待機系に切換えることにより、故障が検出された場合、第1実施例よりも復旧する確率が高くなっている。
【0036】
[第3実施例]
次に、本発明に係る電気車用電源装置の第3実施例について説明する。
【0037】
第3実施例では、ゲート異常信号12では検知できないインバータの欠相状態が、インバータの相出力電流検出器の検出信号に基づいて、インバータの各相4a〜4cの異常として検知される。
【0038】
(構成)
本発明による電気車用電源装置の第3実施例の回路構成を図1、図4に示す。
【0039】
図1の回路構成は、第1実施例と同様に第3実施例に適用でき、各部の説明は省略される。
【0040】
図4において、インバータの各相4a〜4dは図1の各相4a〜4dに相当する。以下、図2の第2実施例と異なる構成についてのみ説明する。図4の各インバータ相4a〜4dの出力には、相4aに代表して示されるように、相出力電流検出器19(19a〜19d)が設けられる。相出力電流検出器19の検出値20(20a〜20d)は制御部15の待機回路切換論理14に提供される。
【0041】
(作用)
待機回路切換論理14は、相出力電流検出値20に基づいて、各相の過電流もしくは相電流(実効値)のアンバランスを検出する。また待機回路切換論理14は、ゲート異常信号12としてゲート異常が入力されない場合でも、相出力電流検出値20の過電流もしくは相電流アンバランスを検知した場合には、該当する相4が異常であることを検知する。異常を検知した後の待機系への切換動作は第1実施例と同様である。
【0042】
(効果)
ゲート異常信号12で検知できない欠相状態の場合に、相出力電流検出器19の検出値信号に基づいて、相4a〜4cの異常を検知して、待機系への切換が可能となる。
【0043】
[第4実施例]
次に、本発明に係る電気車用電源装置の第4実施例について説明する。
【0044】
この第4実施例では、インバータの故障を相単位で修復すると共に、通常運転時、4つの相単位インバータ4a〜4dの動作時間を均等化し、3相インバータならびに相切換接点の長寿命化を図る。
【0045】
(構成)
本発明による電気車用電源装置の第4実施例の回路構成を図1、図2に示し、本実施例に係る動作情報例を図5に示す。
【0046】
図1、図2の回路構成は、第1実施例と同様に第4実施例に適用でき、各部の説明は省略される。
【0047】
(作用)
本実施例に係る電源装置の制御部は、図5に示す動作情報例を使用して、図1、図2に示す4つの相単位インバータ4a〜4dの動作時間を均等化して稼働させる論理を有している。また本実施例に係る電源装置は、6つの相切換接点8a〜8c、8d1〜8d3の動作時間を均等化して稼働させる論理を有している。
【0048】
図6は本実施例の動作例を示すタイミングチャートである。
【0049】
本例では、図5の動作情報例No.1(時刻条件:午前/午後)を適用した電源装置の動作例を示す。図6のタイミングチャートのハイレベル時は動作期間を示し、ローレベル時は停止期間を示す。例えば、1日目の午前中は、インバータU相4a、V相4b、W相4cが動作し、待機相4dが停止している。また1日目の午後は、U相4aが停止し、V相4b、W相4c、待機相4dが動作している。このように、4つのインバータ相のうち停止相が順番に設定され、残りの3相により3相インバータが構成される。
【0050】
図5の動作情報例No.2は、偶数日/奇数日すなわち1日単位に停止相が順番に設定される。この他に停止相の設定は、図5のNo.3〜No.8のように、平日/休日、路線の上り/下り、2回毎、5時間毎、4日毎、前回とは違う相(1回毎)など、各路線の運行状態等に応じて適切な動作情報に基づいて行われる。ここで回数は、電源装置の電源ONからOFFまでの動作を1回とする。例えばラッシュアワーに2時間連続して動作した場合、それを1回の動作とする。従って2回毎とは、朝と夕方のラッシュアワーに動作する電源装置の場合は1日毎に設定を変更すことになる。
【0051】
(効果)
相単位インバータの稼働時間を均等化することにより、期待される余寿命が均等化され、3相インバータとしての長寿命化を図れる。また、待機系インバータ相も定期的に動作することになるので、その故障を早期に発見することができる。
【0052】
また、相切換接点8a〜8dの稼働時間を均等化することにより、相切換接点の余寿命が均等化され、長寿命化を図れる。また、待機系の相切換接点も定期的に動作することになるので、その故障を早期に発見することができる。
【0053】
[第5実施例]
次に、本発明に係る電気車用電源装置の第5実施例について説明する。
【0054】
電源装置の直流入力電流に発生することがある高周波(交流分)は、電気車の地上側、車上側に設置されている各種の信号機器に対して誘導障害を与える場合がある。本実施例は、直流入力電流に生じるこのような交流分を、待機系のインバータ相を用いて除去あるいは抑制する。
【0055】
(構成)
本発明による電気車用電源装置の第5実施例の回路構成を図7、図8に示す。
【0056】
図7に示す電源装置は図1の装置に比べ、電源装置1の直流入力側に直列に設けられたリアクトル23及び電流検出器24と、待機系インバータ相4dの出力と入力中間電位間に直列に接続された相切換接点21、電流検出器25、リアクトル22を有している。図8に示す制御部15は、図1の制御部15に比べ、相切換接点投入指令16gが追加され、この投入指令16gは図7の相切換接点21にオン/オフ信号を提供する。
【0057】
(作用)
第1実施例と同様に、インバータU相4a、インバータV相4b、インバータW相4cが、通常動作時に3相インバータ動作をしている。この時、相切換接点7a〜7c、8a〜8cは全て閉じている。また通常動作時に、待機相4dの前後に接続された相切換接点7dと21が閉じている。相切換接点8d1〜8d3は開いている。
【0058】
インバータ相4a〜4cのいずれかの相に故障が発生した場合、故障の発生した相の相切換接点を開放し、待機相の切換接点21をオフして、切換接点8dの対応する接点を閉じる。待機相4dが第1実施例と同様に、開放された(故障した)相と同じタイミングでスイッチングされることにより、正常な3相インバータが構成される。
【0059】
第5実施例では、全ての回路が健全な場合、待機相4dは入力電流内に発生することのある交流分と同様の電流をリアクトル22に流すように作用する。図8の制御部15は、図7の電流検出器24にて入力電流を検出して、その交流分(振幅及び位相角)をフィルタ演算により分離し検知する。制御部15は、検知した入力電流の交流分と同様(同一振幅、同相)の電流がリアクトル22に流れるように、電流検出器25の検出値を参照して待機相4dに対するゲート信号を発生する。同時に待機回路切換論理14は、相ゲート信号出力回路9dにゲート出力指令13d(例えばハイレベル信号)を出力する。相ゲート信号出力回路9dは制御部15により発生された前記ゲート信号を電圧変換して出力する。その結果、待機相4dは上記交流分と同様な電流を出力し、該電流がリアクトル22を流れる。
【0060】
尚、制御部15は、入力電流の交流分の減衰を考慮して、リアクトル22に流れる電流の位相を、90度進める制御も可能である。その他の動作は、第1実施例の動作に順ずる。
【0061】
(効果)
待機相4dにより無効電流を制御することにより、インバータ相4a〜4cに内蔵のフィルタコンデンサ37とリアクトル23で構成される逆L型フィルタ回路による入力電流の振動抑制を行うことや、インバータ動作している相4a〜4cの3相インバータが入力電流に放出する高調波電流(交流分)をリアクトル22に流すことによって、入力電流に含まれる高調波電流を抑制でき、電気車の地上側、車上側に設置されている各種信号機器に対する誘導障害を解消することができる。
【0062】
以上の説明はこの発明の実施の形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に基づく第1実施例に係る電気車用電源装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に基づく第1実施例に係る制御部の構成を示す図である。
【図3】本発明に基づく第2実施例に係る制御部の構成を示す図である。
【図4】本発明に基づく第3実施例に係る制御部の構成を示す図である。
【図5】本発明に基づく第4実施例に係る動作情報の例を示す図である。
【図6】本発明に基づく第4実施例に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明に基づく第6実施例に係る電気車用電源装置である。
【図8】本発明に基づく第6実施例に係る制御部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1…架線、2…接触器(CTT)、3…初期充電用回路、4…インバータ、5…ACフィルタ、6…絶縁トランス、7…相切換え接点、8…相切換え接点、14…待機回路切換論理部、15…制御部、19…相出力電流検出器、20…相出力電流検出値21…相切換え接点、22…リアクトル、23…リアクトル、24…電流検出器、25…電流検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を3相交流に変換する第1乃至第3インバータ相と、
前記第1乃至第3インバータ相に対して、3相インバータ用のゲート信号を発生する制御部と、
前記第1乃至第3インバータ相の3相出力電圧を任意値の電圧に変換し、電車内の負荷に電力を供給するトランスと、
前記直流を単相交流に変換する待機相インバータと、
前記第1乃至第3インバータ相の相単位の故障を検知する故障検知手段と、
前記故障検知回路により故障を検知されたインバータ相を、前記待機相インバータに切換えて、該故障を検知されたインバータ相に前記制御部により発生されたゲート信号を供給し運転を継続する切換手段と、
を具備することを特徴とする電気車用電源装置。
【請求項2】
前記第1乃至第3インバータ相に対して、3相インバータ用のゲート信号を発生する第2制御部と、
前記故障検知回路により故障を検知されたインバータ相を、前記待機相インバータに切換えて、前記第1乃至第3インバータ相のうち正常なインバータ相及び前記故障を検知されたインバータ相に、前記第2制御部により発生された前記3相ゲート信号を供給し運転を継続する第2切換手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項3】
前記故障検知手段は、各インバータ相の故障を、該インバータ相に入力されるゲート信号電圧の値、または各インバータ相出力電流の値に基づいて検知することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項4】
前記制御部は通常動作時に、前記第1乃至第3インバータ相と、前記待機相インバータの4つの相のうち、いずれか3相が3相インバータとして動作するよう前記切換手段を制御し、使用しない相を所定動作条件に従って、順番に設定することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項5】
前記電源装置に供給される前記直流の電流経路内に直列に設けられた第1リアクトルと、
前記第1乃至第3インバータ相の直流入力側に並列にそれぞれ設けられたフィルタコンデンサと、
前記待機相インバータの出力端と所定電位間に直列に接続される、第2リアクトル、該リアクトルに流れる電流のオン/オフを行うスイッチ及び該リアクトルに流れる電流を検出する第1電流検出器と、
前記第1リアクトルから前記第1乃至第3インバータ相に流れ込む入力電流を検出する第2電流検出器を更に具備し、
前記制御部は、通常動作時に前記スイッチをオンとし、前記第1リアクトルと前記フィルタコンデンサにより生じる前記直流電流内の交流分を、前記第1電流検出器にて検出し、該交流分と同様の電流が、前記待機相インバータを介して前記第2リアクトルに流れるように、前記第2電流検出器の検出値を参照して前記待機相インバータにゲート信号を提供することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−153348(P2009−153348A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331050(P2007−331050)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】