説明

電気部品の製造方法及び電気部品

本発明は、少なくとも2つの電気接点、基板に配置された、導電性材料でできたナノ粒子、磁性材料でできたナノ粒子及び/又は磁化材料でできたナノ粒子を有する電気部品を製造する方法において、前記ナノ粒子及び/又は殻に包まれた前記ナノ粒子を含んだインクを前記基板上に印刷プロセスによって塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの電気接点と、基板上に配置された導電性材料からなるナノ粒子、磁性材料からなるナノ粒子及び/又は磁化材料からなるナノ粒子とを有する電気部品の製造方法に関する。同様に本発明は電気部品に関する。
【0002】
2003年にビーレフェルト大学物理学科に提出されたInga Ennenによる修士論文"Charakterisierung von Cobalt-Nanopartikeln und Untersuchung zur Herstellung granulaerer Strukturen"と、2008年にビーレフェルト大学物理学科に提出されたInga Ennenによる博士論文"Magnetische Nanopartikel als Bausteine fuer granulaere Systeme: Mikrostruktur, Magnetismus und Transporeigenschaften"とから、ナノ粒子を核形成、成長、熟成及び安定化によって形成することが公知である(上記博士論文第2章第1節)。さらに、粉体モデルシステムを構築するために約8nmの平均直径を有するCoナノ粒子を用いること、及び、Coナノ粒子をスピンコーティング又は浸漬により基板上に移すこと、ならびにナノ粒子の有機殻を除去した後に磁性粒子核を薄い金属層で覆うことも公知である(上記博士論文第7章第1節ならびに上記博士論文に含まれている上記博士論文及び上記修士論文への相互参照)。このやり方は特に、スピンコーティング又浸漬によって粒子単一層を形成する点で不利である。これらの方法は電気部品の工業的製造には適していない。
【0003】
以上を背景として、本発明は、冒頭で述べたような電気部品の工業的製造を可能にする製造方法を提案することを課題としている。さらに、多様に使用しうる電気部品も提案する。
【0004】
この課題は請求項1に係る製造方法と請求項12に係る電気部品とによって解決される。有利な実施形態は従属請求項と以下の説明において示される。
【0005】
本発明は、ナノ粒子及び/又は殻に覆われたナノ粒子を流体中に置くことにより、印刷プロセスによって基板に塗布できるインクを形成するという基本思想に基づいている。印刷プロセス、すなわち、インクを基板に塗布するプロセスは、別の技術分野から、特に紙とテキスタイルへの印刷から周知であり、印刷の技術は工業規模でインクを基板に塗布するのに十分成熟している。
【0006】
印刷法としては、いわゆるノンインパクト印刷(NIP印刷、あからさまな印刷版のない電子印刷)に属する、オフィステクノロジーから公知のインクジェット印刷を使用することが特に好ましい。
【0007】
しかしまた、DIN 16500において規定されている平版印刷、凸版印刷、凹版印刷又はスクリーン印刷に従って動作する印刷法を使用することもできる。凸版印刷では、印刷版の画像部は非画像部よりも高い位置にある(活版印刷、フレキソ印刷から公知)。平版印刷では、印刷版の画像部と非画像部はほぼ同じ平面内にある(例えばオフセット印刷から公知)。凹版印刷では、印刷版の画像部は非画像部よりも低い位置にある。スクリーン印刷では、印刷版の画像部は染料を通す(プラスチック繊維又は金属繊維からなる)孔版支持体上の孔版からなっており、非画像部は染料を通さない(例えばシルクスクリーン印刷及びリソグラフィから公知)。印刷像を直接印刷版から基板上に移すことを特徴とする直接印刷法を用いると特に有利である。それゆえ、印刷像は左右反転して印刷版に塗布されなければならない。直接印刷法の例はスキージ凹版印刷、活版印刷及びフレキソ印刷である。しかし、印刷像をまず中間支持体に移すことを特徴とする間接印刷法を使用することも可能である。中間支持体は可撓性があり、染料をさらに基板へと渡す。こうした理由から、間接印刷法では印刷像は表読みでなければならない。間接印刷法の例はオフセット印刷とタンポン印刷である。(インクなし)フェルトペンの先端をインクの中に漬けることによってフェルトペンの先端でインクを受け取り、フェルトペンの先端を基板に押しつけてインクを放出する印刷法も、タンポン印刷法と理解される。同様に、インクを放出する先端を備えた、インクで満たされたフェルトペンを基板に押しつけ、場合によっては押しつけたままの状態で基板の表面に沿って動かす印刷法も、タンポン印刷法と理解される。同様に、レーザーでローラの一部を帯電させ、このローラを逆極性に帯電したトナーに通し、電荷差によってトナーの粒子を引き付け、トナー粒子を引き付けた後にローラが紙を通過するときにトナー粒子を紙に移すレーザ印刷を使用してもよい。同様に、粒子を含んだワックスが滴状に溶けることにより、ワックス滴がローラに滴り、ローラによって紙に塗布されるワックスインク印刷も使用される。特に好ましくは、平版印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法又はスクリーン印刷法に従う以上に記載した考えられる印刷法のうち、インクが400℃を超える温度まで加熱されない方法が使用される。
【0008】
特に選好して使用されるインクジェット印刷法は、小さなインク小滴を噴出及び偏向させることで印刷像を形成するマトリックス印刷法を意味する。この印刷法は単一ジェット又は複数ジェットで行うことができる。複数ジェットの場合、単位時間当りに複数の小滴が吹き出される、つまり平行な複数の「ジェット」として吹き出される。両方のケース(単一ジェット及び複数ジェット)において、インクジェットはノズルを通ってインクヘッドから出る。1つの有利な実施形態では、このジェットが均一に個々の小滴に崩壊する(レイリー液滴崩壊)ように、ノズルの背後にある圧電変換器を介してこのジェットを変調してよい。1つの有利な実施形態では、このようにして形成された液滴は帯電電極によって多かれ少なかれ静電帯電させることができる。その場合、10〜40m/sの速い液滴は比較的大きな偏向電極を通過する際に、そこで比電荷に依存して横方向に偏向される。そして、装置の種類に従って、帯電した液滴又は帯電していない液滴が基板に達する。不要な液滴は既に印刷ヘッドにおいて回収し、インク回路に戻すことができる。インクジェット印刷法は2方向偏向法又は多方向偏向法として動作することができる。前者の場合、液滴は基板に達するか、又は液滴キャッチャ内へと偏向される。多方向偏向法では、帯電状態の違いに応じて液滴を異なって偏向することができる。このようにして、1つのノズルを介して幅の広い行を印刷することが可能となる。行の幅はノズルから基板までの距離に依存する。そのため、この距離が大きいと、解像度が低下する。
【0009】
帯電電極を用いた実施形態とは異なり、特に選好して使用されるインクジェット印刷法を帯電電極を用いずに実現することもできる。この場合、形成された液滴は印刷ヘッドに設けられたチャネルによって紙まで案内される。形成された液滴はチャネル出口から出て、紙上に置かれる。
【0010】
インクジェット印刷法の使用は、印刷ヘッド内でのインクの形成及び伝搬が偏向に基づいた圧力によって生じるため、印刷ヘッド内の温度とインクの温度が実質的に室温に一致するが、少なくとも400℃を超えることがないという利点をもたらす。これにより、(そのような位相跳躍を起こすナノ粒子がインク中に含まれている場合に、)既にインク中でHCP(六方最密充填構造)からFCC(面心立方構造)への位相跳躍が生じるのを防ぐことができる。1つの代替的実施形態では、印刷ヘッド内の温度とインクの温度が実質的に400℃を超す印刷法を使用してもよい。これにより、(そのような位相跳躍を起こすナノ粒子がインク中に含まれている場合に、)既にインク中でHCP(六方最密充填構造)からFCC(面心立方構造)への位相跳躍が生じるようにすることができる。また1つの代替的実施形態では、既に印刷プロセスの実行前にFCCを有するナノ粒子がインク中に含まれていることも可能である。
【0011】
特に好ましくは、基板上に塗布される小滴を形成する又はトナー粒子を使用する印刷法が使用される。特に好ましいインクジェット印刷法では、例えば小滴が形成され、印刷ヘッドから「噴出」される。特に好ましくは、平均含有量が500ピコリットル未満、特に好ましくは100ピコリットル未満、特に好ましくは50ピコリットル未満、さらに特に好ましくは10ピコリットル未満、有利には約1.5ピコリットルである小滴を形成する、又はトナー粒子を使用する印刷法が使用される。小滴の含有量が少なければ少ないほど、印刷法によって形成可能な「像」の解像度が高くなる、すなわち基板上でのインクの配置が細かくなる。
【0012】
好適な実施形態では、ディスペンサ又はマイクロディスペンサによって、有利には磁性部材及び/又は金属部材を有する印刷機によって印刷法が実行される。磁性部材及び/又は金属部材は例えばインク中のナノ粒子の分布に影響を与えることができる。特に好ましくは、少なくともインクと接触する部材は磁性部材又は金属部材ではなく、インクと接触しない部材は磁性又は金属性である印刷機が使用される。好ましくは、印刷機はEMF遮蔽されている、つまり、電磁場(EMF)に対するシールドを有している。
【0013】
好適な実施形態では、インクは基板上に塗布される前に混合される。その結果、有利には、インク中にナノ粒子を均一に分布させることができる。例えば、インクをタンク内に貯蔵し、例えばタンクを振ることによって、又はタンク内に浸けられた据え付け及び/又は可動の混合部材によって、タンク内でインクを混合するようにしてよい。また、インクは例えばタンクから取り出すときに混合してもよい。例えば、インクをタンクから取り出すために吸引装置をタンク内のインクに浸けるときに、吸引装置を激しい振動を伴ってインクに浸けることによりインクを混合してもよい。また、インクは印刷装置の導管(存在するならば)の中で、例えばこれらの導管を振ることによって又は導管内に設けられた据え付け及び/又は可動の混合部材にインクを通すことによって混合してもよい。また、インクの中に超音波を入れることによってインクを混合する超音波ヘッドを設けてもよい。混合は、インクの一部を吸引によってピペットの中に取り込み、再び排出することによって行ってもよい。排出の際に形成された流体ジェットが残りのインクに入ることによって、残りのインクを混合することができる。
【0014】
1つの好適な実施形態では、(存在するならば)インクタンクは環境の影響、特に酸素から保護される。これにより、金属ナノ粒子の酸化を防ぐことができる。1つの好適な実施形態では、インクタンクに保護ガス装置を設けてもよい。保護ガス装置は実質的に、印刷ヘッドによってタンク内に達する穴が開けられた膜を有する箱であってよく、これらの穴からインクが吸い取られる。この箱は、保護ガスは膜を通って流出できるが、酸素は保護ガス装置内に入れないように、例えば窒素のような保護ガスで満たし、環境に対して僅かに過圧にしてよい。1つの代替的実施形態では、Scherジェット、連続ジェット、MEMSバルブ、熱アクチュエータ(バブルジェット)及びロールオンロール印刷法を使用してよい。
【0015】
基板上に配置されるナノ粒子は、導電性材料、磁性材料からなるナノ粒子及び/又は磁化材料からなるナノ粒子からできている。導電性材料、磁性材料からなるナノ粒子及び/又は磁化材料からなるナノ粒子の他に、例えば導電性ナノ粒子を絶縁するため、又は例えば不動態化のために、非導電性ナノ粒子も使用してよい。磁性材料からなるナノ粒子とは、既に磁場を発生させているナノ粒子を意味している。磁化材料からなるナノ粒子とは、更なるステップによって、例えば外部磁場を印加することによって磁場を発生させるように変えることのできるナノ粒子を意味している。外部に向かって磁場を発生させないが、例えば磁石と絶縁体との間の境界におけるTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)のように磁場に反応する、超常磁性ナノ粒子も考えられる。特に、コバルト(Co)、サマリウム(Sm)、鉄(Fe)、ルテニウム、ネオジムもしくは他の希土類、又は、これらの元素の1つ又は複数を含む、例えば鉄/コバルト(Fe/Co)合金やコバルト/銅(Co/Cu)合金のような合金からなるナノ粒子が好ましい。
【0016】
インクに含まれているナノ粒子、又は殻によって包囲されているナノ粒子は、好ましくは100nm未満の平均直径を有する(殻によって包囲されているナノ粒子の場合、この規定はナノ粒子自体の直径に関係する)。特に好ましくは、ナノ粒子は50nm未満の平均直径、特に好ましくは20nm未満の平均直径を有する。特に、強磁性効果を有すべき電気部品の場合には、15nmの平均直径の粒子が使用され、超常磁性効果を有する電気部品の場合には、6nmの平均直径を有する粒子が使用される。
【0017】
ナノ粒子は必ずしも球でなくてもよい。例えば、縦長(葉巻形)又は長円又は楕円であってよい。ナノ粒子の「葉巻形」は粒子の異方性配列を可能にする。しかし、1つの好適な実施形態では、ナノ粒子は実質的に球又は長円又は楕円である。
【0018】
1つの好適な実施形態では、インクに含まれているナノ粒子は実質的に同じ直径を有する。これに関して、1つの好適な実施形態では、ナノ粒子の直径の分布の標準偏差(シグマ)は10%未満、特に好ましくは5%未満である。ナノ粒子の直径のこのような分布では、ナノ粒子の自己組織化が特に良好である。
【0019】
1つの好適な実施形態では、ナノ粒子は、配位子殻に囲まれた酸化物殻を有している。これにより、ナノ粒子は酸化に対して安定するので、周囲空気の中で配位子殻を除去することが可能である。1つの好適な実施形態では、酸化物殻の酸化物の厚さは2nm、特に好ましくは1.5nm、殊に好ましくは1nmである。
【0020】
1つの好適な実施形態では、インクは2つ以上の異なる種類のナノ粒子を含んでいてよい。例えば、第1の種類として、第1の材料でできた(例えば磁性材料でできた、又は磁化材料でできた)ナノ粒子が、第2の種類として、第2の材料でできた(例えば非磁性、非磁化、導電性材料でできた)ナノ粒子を含んでいてよい。2つ以上の異なる種類のナノ粒子を含んだインクは、単一の印刷ステップで基板上に異なる種類のナノ粒子を含んだ構造を形成するために使用することができる。例えば、GMR効果を生じさせる可能な方法として、まず1種類のナノ粒子だけを含んだインクでナノ粒子平面を形成し、その後、配位子を除去し、導電性ナノ粒子を含んだインクで新しい導電面を形成する。最後に、不動態化効果を有するナノ粒子を含んだインクで不動態化面を形成する。TMR効果を生じさせる可能な方法としては、ナノ粒子の混合物を含んだインク、例えば、両方とも配位子殻を有する超常磁性ナノ粒子と金ナノ粒子との混合物を含んだインクを使用してよい。混合物のナノ粒子は好ましくは、超常磁性ナノ粒子の金ナノ粒子に対する所望のマトリックス配列を生じさせる分子結合が形成されるように意図されている。TMR効果は超常磁性ナノ粒子層と酸化物層との間の境界面に生じる。この境界面が明確に形成されていれば、TMR効果を利用することができる。金は相互間の電気接点として機能する。混合比は例えば1:1としてよい。
【0021】
1つの好適な実施形態では、本発明による製造方法において使用されるインクは、ナノ粒子が溶け込んだ溶媒を有している。本発明による製造方法の1つの好適な実施形態によれば、溶媒は基板上にインクを塗布した後に蒸発する。特に好ましくは、1,2-ジクロロベンゼンが溶媒として使用され、安定剤としては、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、オレイン酸及び/又はアマニ油混合物が使用される。好ましくは、周囲空気に触れて揮発する化合物で、保護雰囲気下でナノ粒子に対して安定化効果を有し、ナノ粒子の凝集及び沈殿を防ぐ化合物が使用される。周囲温度においてブラウン運動によるエネルギー入力が可能である。
【0022】
インクの溶媒は、有利には、本発明の1つの実施形態においてナノ粒子を包囲する殻の材料に対して化学的に安定している、特にナノ粒子の材料に対して安定している。
【0023】
特に好ましくは、溶媒は低い蒸発速度を有する。1,2-ジクロロベンゼンは数分以内に蒸発することができるが、蒸発速度は量と周囲空気に対する比表面積(界面積)とに依存する。2〜5分以内での蒸発(手動操作可能)が製造プロセスには望ましい。しかし、もっと速く蒸発することが望ましい場合もある(機械操作)。
【0024】
インクは有利にはインクを酸素に接触させないタンクから取り出される。例えば、タンクを気密封止する及び/又は保護雰囲気(例えば窒素)中に配置してよい。これにより、ナノ粒子の酸化が防止される。また、タンクに貯蔵されているインクを混合する混合装置を設けてもよい。
【0025】
1つの好適な実施形態では、殻に包囲されたナノ粒子を含んだインクが使用される。ナノ粒子を殻で包囲することで、ナノ粒子を安定化することが可能になる。インク中に溶解したナノ粒子は凝集又は凝固する傾向を有している。本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、これらの過程が妨げられる。安定化の考えられる方法は、電荷安定化、ポリマーによる安定化又は立体安定化である。特に好ましくは、本発明による製造方法では立体安定化が用いられる。電荷安定化は例えばハロゲン化銀粒子において生じる。例えばPVP(ポリビニルピロリドン)のようなポリマーによる安定化はポリマー分子の大きさに基づいた粒子の空間的分離をもたらす。立体安定化では、ナノ粒子の分離は、粒子を互いから分離し、例えば酸化から保護する配位子によって行われる。配位子とは、親水性先頭基によって粒子核(ナノ粒子)との共有結合又は配位結合を形成し、溶媒中に疎水性アルキル鎖を示す両親媒性分子を意味している。配位子殻を有するナノ粒子を使用する場合、溶媒として好ましくは非極性媒体が使用される。先頭基と核との間の結合の強さは粒子の成長と形状に影響を与えるが、アルキル鎖の長さは粒子間の相互作用ポテンシャルの決定に寄与する。
【0026】
本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、ナノ粒子は少なくとも以下の方法ステップによって形成される。
-溶媒中の金属塩の還元又は金属有機化合物の分解によって核を形成するステップ、
-核を成長させるステップ、及び
-オズワルド熟成過程。
特に、ナノ粒子の核の形成、例えばコバルトナノ粒子又はFeCoナノ粒子の核の形成は、W.F. Puntes、K.M. Krishnan及びP. AlivisatosによるScience 291, 2115(2001)に記載されているように、2成分界面活性溶液中の金属有機前駆体の熱分解を介して行われる。ナノ粒子の製造方法の詳細な説明には、Ennen博士の前掲修士論文の第2.1章又は前掲博士論文の第3.1章及び第3.1.1章を参照されたい。ナノ粒子の製造に関して、これらの章は参照により本発明による製造方法の説明に取り込まれ、本発明による製造方法の説明の一部を成す。
【0027】
1つの好適な実施形態では、オズワルト熟成過程に続いて、例えば配位子殻の形成により、オズワルト熟成過程の間に形成されたナノ粒子の安定化が行われる。
【0028】
1つの好適な実施形態では、基板は少なくとも部分的に、特に大部分、酸化シリコンからなる。代替的に又は付加的に、基板は例えば処理されたシリコン及び/又はゲルマニウムでできたチップ表面であってよい。同様に、基板は少なくとも部分的にプラスチック又はセラミックス又はガラスからできていてもよい。基板は従来式の回路板又はフレックスプリント基板であってよい。回路板上には、インクの塗布に影響を与える構造を設けてもよい。これらの構造は、チャネルや、ナノ粒子が結合もしくは(望ましいならば)結合しない特別なコーティングのような、機械的構造であってよい。他の構造は通電時に塗布特性に影響を与える電場及び/又は磁場を発生する導電路であってよい。基板は箔として形成されていてよい。基板は例えばインク塗布中に磁場が発生するように磁場を発生させる手段を有していてよい。また、基板は白金表面又は処理済みのチップ表面を有していてもよい。表面にできるだけ多くのナノ粒子を結合するために、基板をプラズマで前処理してもよい。
【0029】
本発明による製造方法によれば、少なくとも2つの電気接点を有する電気部品が製造される。これらの電気接点は好ましくはインクが塗布されるのと同じ基板の上に配置される。第1実施形態では、電気部品は基板上と基板内にそれぞれ配置されている。インクは例えばこれら電気接点上に印刷してもよいし、少なくとも、部分的に接点とオーバーラップするように塗布してよい。また、電気接点から距離をあけてインクを塗布し、その後で、例えば導電性材料に例えば非磁性導電性材料でできたナノ粒子を含んだ第2のインクを印刷することによって、接点とナノ粒子との間の電気接続を形成してもよい。電気部品の電気接点はインクが塗布される基板の上及び中にそれぞれ配置されている必要はない。例えば、第2実施形態では、後続ステップにおいて、基板上に配置されているナノ粒子の上に電気接点を配置してよい。また、接点の配置は例えば非磁性導電性材料でできたナノ粒子を含んだ第2のインクを用いた印刷法によって行ってもよい。
【0030】
本発明による製造方法で製造される電気部品の場合、ナノ粒子を配置すべき基板の表面領域内にナノ粒子を均一に配置すると有利である(均一格子構造)。この均一格子構造は既にある構造を利用して形成してもよいし(例えば、基板は表面構造、例えば複数の窪みを有していてよく、ナノ粒子は印刷後に各窪みに配置される)、例えば、特に好ましくは、ナノ粒子の自己組織化を利用して形成してもよい。本発明の説明では、自己組織化は図1に示されている基板上でインク中の粒子が無秩序状態から周期的配列に移行することを意味している。自己組織化と自己組織化に影響を与えるパラメータの詳細な説明については、Inga Ennen博士の前掲博士論文("Magnetische Nanopartikel als Bausteine fuer granulaere Systeme: Mikrostruktur, Magnetismus und Transporteingenschaften")の第2.2章を参照されたい。なお、自己組織化に関して、この第2.2章の内容は参照により本明細書に取り込まれ、自己組織化の形成に関する本発明の説明の一部と見なされる。
【0031】
1つの好適な実施形態では、溶液中の粒子の体積割合は49%より高く、溶媒とインク中に含まれる他の要素は51%未満の体積割合である。基板上の粒子の自己組織化は49%以上の体積割合において特に容易に生じることが分かっている。粒子の自己組織化を支援するには、基板をインクで均一に濡らし、ナノ粒子の分布を特に小さく保ち、場合によっては溶媒の蒸発をゆっくり行うのが有利である。
【0032】
1つの好適な実施形態では、外部磁場はインク塗布中又はインクから液体を除去する間に印加される。この外部磁場はナノ粒子の配列に影響を与え、基板上にナノ粒子の所望の配列をもたらすことができる。例えば、磁性ナノ粒子の場合、磁場の印加によって、ナノ粒子は特定の方向に整列させることができる。
【0033】
本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、少なくとも部分的に、殻に覆われたナノ粒子を含んだインクが使用され、この好適な実施形態によれば、このようなインクの場合、ナノ粒子を包囲している殻は基板上に塗布された後に除去される。殻の除去は例えば熱によって行われる。代替的に、殻に覆われたナノ粒子を含んだインクを使用する場合、この殻の除去は省いてよい。
【0034】
本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、少なくとも1つのナノ粒子を電気接点に接続する導電性材料が塗布される。導電性材料の塗布は印刷によって行うことができる。導電性材料は、例えば、印刷ヘッドの第1ノズルが例えば磁性材料又は磁化材料でできた第1種のナノ粒子を含んだインクを塗布し、第2ノズルが例えば非磁性導電性材料でできた第2種のナノ粒子を塗布することによって同時に塗布される。導電性材料はまたインク塗布後に1つの方法ステップにおいて塗布してもよい。しかし、導電性材料は、複数のナノ粒子を一方では互いに接続し、他方では電気接点と接続するように配置されてもよい。導電性材料は例えば金又は銀、カーボンナノチューブであってよく、例えば、導電性トラック又は導電性ポリマーとして銅が既に使用されている場合には、銅であってよい。導電性材料はまた他の形態で塗布してもよく、印刷法によって塗布されなくてもよい。例えば、ハンダによって、ボンディングワイヤ又はイオンビーム注入によって塗布してもよい。
【0035】
本発明による方法の1つの好適な実施形態では、基板上に塗布された少なくとも1つのナノ粒子を基板上に塗布されている第2のナノ粒子と接続する導電性材料が塗布される。電気部品は例えば、基板上又は基板内に配置されている電気接点とナノ粒子が接触するように構成されていてよい。この(第1の)ナノ粒子を別の(第2の)ナノ粒子に接続する導電性材料を塗布することにより、この別の(第2の)ナノ粒子は前記接点に導電接続することができる。導電性材料の塗布は-複数のナノ粒子が基板上に塗布されている場合には-複数のナノ粒子のうち、いくつかのナノ粒子だけが互いに接続され、他のナノ粒子はまったく互いに接続されないように、選択的に行われる(いわゆるパーコレーション理論)。導電性材料の塗布により、導電性トラックを形成することができる。なお、導電性トラックは、第1の導電性トラックの導電性材料を第2の導電性トラックの導電性材料と接触させずに、基板上に塗布されている第1グループのナノ粒子を相互に導電接続する。
【0036】
本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、別の層、例えば保護層がナノ粒子の塗布後に少なくとも1つのナノ粒子の上に塗布される。この付加層は絶縁体として使用することができる。この付加層は例えば酸化からの保護としても又は機械的影響からの保護としても使用することができる。この保護層は、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)又はポリスチロールのようなポリマーでできていてよい。
【0037】
1つの好適な実施形態では、ナノ粒子は印刷プロセス中及び/又は基板への塗布後に熱処理される。この入熱は、一方では、本発明の特定の実施形態において設けられているナノ粒子の周りの殻を除去するために、及び/又はインク中の液体を蒸発させるために使用することができる。しかし、この入熱はまたナノ粒子の磁気特性に影響を与えるためにも、例えば超常磁性から強磁性に移行させるためにも使用することができる。これは例えば400℃を超える温度まで粒子を加熱することで達成することができる。入熱、特に塗布されたナノ粒子又は塗布された個々のナノ粒子の磁気特性を変化させるための入熱は、例えばレーザによって行ってよい。レーザは特定の出力を有している。パルス、パルスの数及び長さを介して、決められたエネルギーの入力が具体的に行われる。これは特に所定の位置においてHCPからFCCへの転移を達成するために利用することができる。同様に、幅の広いアパーチャ(つまり、レーザビームを拡散させる光学系)によって、小さな点だけでなく平面全体を、隣接する平面を著しく妨害することなく、変換することができる。本発明の特定の実施形態においてナノ粒子の周りに設けられた殻を除去するためだけ及び/又はインク中の液体を蒸発させるためだけの入熱は、特に好ましくは、例えば炉の中で400℃未満の温度で行われる。付加的に又は代替的に、1つの好適な実施形態では、ナノ粒子は印刷プロセス中及び/又は基板への塗布後に高周波照射又はマイクロ波で処理される。
【0038】
1つの好適な実施形態では、基板上に塗布されたナノ粒子のうちのいくつかだけを熱処理する。これはいくつかのナノ粒子のみの磁気特性を変更するのに役立つ。このようにして例えばバイアス磁石を基板上に形成することができる。バイアス磁石の磁場の方向は熱処理中にナノ粒子に外部磁場を印加することによって調節することができる。また、熱処理中に、以前に埋め込まれた接続ラインに電流を供給し、このようにして所定の磁場を形成してもよい。
【0039】
1つの好適な実施形態においてインクを押し出す間に行われる入熱、特にインクが印刷ヘッドと基板の間にある間のインクの熱処理によって、ノズルから基板への途中で相転移を生じさせることができる。
【0040】
本発明による製造方法の1つの好適な実施形態では、少なくとも2つの連続する印刷ステップが実行される。第1の印刷ステップでは、ナノ粒子及び/又は殻に覆われたナノ粒子を含んだインクが基板上に塗布される。なおここで、ナノ粒子は磁性材料又は磁化材料でできている。そして第2の印刷ステップでは、非磁性導電性材料でできたナノ粒子を含んだインクが基板上に塗布される。また、1つの印刷ステップにおいて、いくつかのナノ粒子又はすべてのナノ粒子上に保護層を塗布してもよい。また、複数の印刷ステップにおいて、ナノ粒子の複数の層を塗布してもよい。また、第1の印刷ステップでは(例えば磁性材料又は磁化材料でできた)ナノ粒子の第1の層を塗布し、第2の印刷ステップでは(例えば、異なる材料でできた、例えばプラスチックでできたナノ粒子からなる)中間層を塗布し、第3の印刷ステップでは、例えば第1の層のナノ粒子と同じ(例えば磁性材料又は磁化材料でできた)ナノ粒子の第2の層を塗布してもよい。中間層は別の塗布プロセスによって塗布してもよい。
例A:
1.コバルト(Co)、サマリウム(Sm)、鉄(Fe)又はこれら元素のうちの1つ又は複数を含む合金、例えば鉄/コバルト(Fe/Co)合金もしくはコバルト/銅(Co/Cu)合金のような合金でできたナノ粒子の層
2.層:1.の層のナノ粒子の少なくともいくつかを互いに電気的に接続する導電層
3.層:保護層
例B:
1.コバルト(Co)、サマリウム(Sm)、鉄(Fe)又はこれら元素のうちの1つ又は複数を含む合金、例えば鉄/コバルト(Fe/Co)合金もしくはコバルト/銅(Co/Cu)合金のような合金でできたナノ粒子の層
2.層:保護層
1つの好適な実施形態では、いくつかのスタックから、例えば例Aの第1及び第3の層のいくつかのスタックからスタックが形成される。
【0041】
1つの好適な実施形態では、XMR効果(X磁気抵抗効果)、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を利用して磁場又は磁場の変化を感知するセンサが、本発明による製造方法によって製造される。
【0042】
1つの好適な実施形態では、GMR効果を利用した、本発明による製造方法で製造されたセンサの基板上に、磁性材料でできた磁性ナノ粒子(「磁性ナノ粒子」、磁化材料からなり、基板への塗布後にはそれ自体が磁場を発生させるナノ粒子も、「磁性ナノ粒子」)と理解される)と、磁性ナノ粒子の間のスペースに存在する非磁性導電性材料でできたナノ粒子(「導電性ナノ粒子」)とが設けられている。基板上のナノ粒子のこのような配置は、本発明による製造方法に従って、磁性ナノ粒子と導電性粒子を1つの印刷ステップで基板に塗布される単一のインクに含めることで達成することができる。2種類の粒子を含むインクを刷り込むことによって、基板上に磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子をランダムに配置することができる。しかし、磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子のこのランダムな配置は既に少なくとも小さいが有用なGMR効果を有していると考えられる。例えば、整然としたマトリックス配列は配位子殻上の所定の結合点によって形成することができる。代替的に又は付加的に、本発明による製造方法において、まず、磁性ナノ粒子を含む、又は少なくとも主に磁性ナノ粒子を含み、他のナノ粒子は低い割合でしか含まない第1のインクを印刷プロセスによって塗布し、その後、導電性ナノ粒子を含む、又は少なくとも主に導電性ナノ粒子を含み、他のナノ粒子は低い割合でしか含まない第2のインクを塗布してもよい。磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子を2つの別個の印刷プロセスで別々に塗布することで、磁性ナノ粒子を導電性ナノ粒子に対して相対的に配置することが可能になる。
【0043】
1つの好適な実施形態では、上で説明したGMR効果を用いたセンサの製造において、殻に覆われた、例えば配位子殻に覆われた磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子とが使用される。この実施形態の改良形態では、磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子を同時に(単一のインクで)又は逐次的に(2つのインクで)塗布した後、別の1つのステップにおいて、また部分的に間に入る複数のステップにおいて、例えば熱作用によって配位子殻を除去してよい。また、配位子殻を除去する前に又は配位子殻の除去と同時に溶媒を蒸発させてもよい。
【0044】
磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子を塗布し、(ナノ粒子が殻を有しているならば)配位子殻を除去した後、磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子は基板上で安定化され、保護されるようにしてよい。1つの好適な実施形態では、これは例えば同様に印刷可能なポリマー層を配置することによって行われる。1つの好適な実施形態では、その際、ナノ粒子を溶解しない溶媒を有するポリマーが使用される。
【0045】
1つの好適な実施形態では、GMR効果を利用するセンサの製造方法のすべてのステップは400℃未満の温度で行われる。これにより、磁性ナノ粒子がHCP相からFCC相へ転移することが防止される。
【0046】
1つの好適な実施形態では、本発明による製造方法によって、TMR効果を利用するセンサが製造される。この製造方法では、絶縁中間層を有する磁性ナノ粒子が特に好ましく使用される。例えば、中間層はナノ粒子の縁部を選択的に酸化させることによって形成される。それから、このナノ粒子は導電性ナノ粒子を介して、例えば金ナノ粒子を介して接点と接触させられる。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、配位子殻はナノ粒子の塗布後に特に好ましく入熱によって除去される。好ましくは、基板上に塗布されたナノ粒子間の粒子距離は殻の除去後も維持される。1つの好適な実施形態では、既に説明した実施例における配位子殻がレーザによって除去される。また、配位子殻は炉の中で入熱によって除去してもよい。付加的に又は代替的に、配位子殻をマイクロ波の照射によって又は例えばUV光の照射によって除去してもよい。
【0048】
1つの好適な実施形態では、塗布された粒子の上に例えば印刷によって酸化物保護が塗布される。1つの好適な実施形態では、この酸化物保護はプラスチックである。特に好ましくは、印刷可能なポリマー、有機物質、特に好ましくは、PMMA、ポリスチロール又はPVCが酸化物保護として使用される。1つの好適な実施形態では、プラスチックが磁性ナノ粒子と導電性ナノ粒子とに対して化学的に安定した溶媒と共に酸化物保護として使用される。1つの好適な実施形態では、印刷可能な酸化物保護は400℃未満の温度で硬化する。
【0049】
本発明による電気部品は、少なくとも2つの電気接点、基板上に配置された、導電性材料でできたナノ粒子、磁性材料でできたナノ粒子及び/又は磁化材料でできたナノ粒子を有する。これらのナノ粒子は基板の1つ以上の表面領域に、格子構造を有する規則正しい形状で配置されている。なお、ナノ粒子の格子構造は各表面領域の全体にわたって延在している。各表面領域の全体は幾何学的に一様な互いに接し合う正方形部分領域(正方形ピクセル)に分割されていてもよいし、幾何学的にマトリックス上に互いに隣接しあう円形又は楕円形の部分領域(丸ピクセル)に分割されていてもよい。各正方形部分領域は4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの辺を有し、各円形分領域もしくは各楕円形部分領域が4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの最大直径を有する。
【0050】
表面領域の幾何学形状は、これらのナノ粒子がナノ粒子及び/又は殻に覆われたナノ粒子を含んだインクの印刷によって形成されたことに由来している。このようにして形成された表面領域は複数のピクセル(幾何学的な部分領域)から構成されている。
【0051】
4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの辺を有する正方形部分領域、又は4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの最大直径を有する円形もしくは楕円形の部分領域を使用することにより、最小の寸法及び/又は複雑な形状を有する表面領域を形成することが可能になる。それゆえ、多様な形状及びサイズの電気部品を製造することができ、部品の使用分野も多様になる。
【0052】
特に好ましくは、少なくとも1つの表面領域は、少なくとも1つの正方形部分領域又は1つの円形もしくは楕円形部分領域だけが1つだけ又は2つだけの他の正方形領域もしくは円形ないし楕円形部分領域に隣接して配置されている、幾何学形状を有する。1つの好適な実施形態では、少なくとも1つの表面領域は、正方形又は円形又は楕円形の部分領域の少なくとも2つの列を含んでいる。なお、1つの列の部分領域の個数は第2の列の部分領域の個数とは異なっている。
【0053】
1つの好適な実施形態では、ナノ粒子の格子構造は1つの水平面に広がる単層のナノ粒子を含んでいる。これにより特に薄い電気部品を形成することができる。
【0054】
1つの好適な実施形態では、ナノ粒子の格子構造は上下に配置された複数の水平面を含んでいる。これにより、GMR効果のような特定の効果を有する電気部品を実現することができる(もっともGMR効果は単層でも実現できるが)。また、複数の層はナノ粒子が生じさせる効果の強さを増大させることができる。1つの好適な実施形態では、少なくとも1つのナノ粒子を保護層で覆ってよい。
【0055】
1つの好適な実施形態では、本発明による電気部品が本発明による製造方法によって製造される。
【0056】
1つの好適な実施形態では、電気部品はXMR効果(X磁気抵抗効果)、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】殻に覆われたナノ粒子を含んだナノ粒子懸濁液の溶媒が蒸発するときの無秩序から秩序への移行を概略的に示す。
【図2】本発明による製造方法で製造された電気部品の第1の構成を概略的に示す。
【図3】本発明による製造方法で製造された電気部品の第2の構成を部分的な断面図で概略的に示す。
【図4】本発明による製造方法で製造された電気部品の第3の構成を部分的な断面図で概略的に示す。
【図5】本発明による製造方法で製造された電気部品の第4の構成を部分的な断面図で概略的に示す。
【図6】本発明による製造方法で製造されたプリント基板の形態の電気部品を透視平面図で概略的に示す。
【図7】本発明による製造方法で製造されたASIC(特定用途向け集積回路)の形態の電気部品を透視平面図で概略的に示す。
【図8】本発明による製造方法で製造された、箔を基板として有する電気部品を、透視平面図で概略的に示す。
【図9】本発明による製造方法で製造された、バイアス磁石を基板として有する電気部品を、透視平面図で概略的に示す。
【図10】本発明による製造方法で製造された、基板上に印刷されたバイアス磁石を有する電気部品を、平面図で概略的に示す。
【図11】本発明による製造方法で製造された、マイクロ流体システムに組み込まれた電気部品を、平面図で概略的に示す。
【0058】
以下では、単に実施例を示した図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0059】
図1に示されている概略図はInga Ennen博士の前掲博士論文(第10頁、図2.5)から取ったものである。概略図の左側の画像には、支持体上に塗布されたナノ粒子懸濁液が示されている。これらのナノ粒子は配位子殻によって包まれている。概略図の右側の画像は、ナノ粒子懸濁液の溶媒が蒸発した後にナノ粒子をどのように支持体上に配置するかを示している。この秩序化プロセスは粒子の体積割合が値Φkrit=0.49を超えたときに始まる。
【0060】
概略図に示されているナノ粒子懸濁液は、Inga Ennen博士の博士論文によればスピンコーティング又は浸漬によって塗布されるが、本発明による製造方法では、印刷プロセスによって、ナノ粒子及び/又は殻によって包まれたナノ粒子を含んだインクとして基板上に塗布される。
【0061】
図2及び3には、本発明による製造方法で製造された電気部品の実施形態が示されている。この電気部品は基板1を有しており、この基板1の上に単層のナノ粒子2が塗布されている。ナノ粒子2は導電性材料、磁性材料及び/又は磁化材料からできていてよい。図2には、ナノ粒子の層の上に置かれた2つの電気接点による電気的接触3が示されている。図3には、ナノ粒子2の層の脇に置かれた2つの電気接点による電気接触部3が示されている。図2及び3では、ナノ粒子2と接触部3の上方に保護層4が置かれている。
【0062】
図4に示されている実施形態では、電気部品はナノ粒子10、11の粉体ネットワークが配置された基板を有している。ナノ粒子10は磁性材料でできた磁性ナノ粒子である。ナノ粒子11は導電性材料でできている。個々の導電性材料は互いに接触しているので、ナノ粒子11は直接導電路12を形成していることが見て取れる。さらに、磁性ナノ粒子10を通るXMRを感知する導電路13が見て取れる。図4に示されている電気部品は保護層4を有している。少なくとも1つの導電性ナノ粒子11と接触する接触部(図示せず)が設けられている。
【0063】
図5に示されている実施形態では、電気部品は本発明による製造方法によってナノ粒子10、11の2重層が塗布された基板1を有している。ナノ粒子10は磁性材料でできた磁性ナノ粒子である。ナノ粒子11は導電性材料でできている。個々の導電性材料は互いに接触しているので、ナノ粒子11は直接導電路12を形成していることが見て取れる。さらに、磁性ナノ粒子10を通るXMRを感知する導電路13が見て取れる。図5に示されている電気部品は保護層4を有している。少なくとも1つの導電性ナノ粒子11と接触する接触部(図示せず)が設けられている。
【0064】
図6には、本発明による製造方法で製造された電気部品がプリント基板(PCB;回路板)としても構成しうることが示されている。回路板20は一方では、例えば支持板(基板)22に接着する導電接続(導体路)を介して互いに電気的に接続された部品21の支持体を形成している。他方では、ナノ粒子は図7に拡大して示されているメアンダー構造33を形成する回路板20の基板30に直接印刷されている。メアンダー構造33の端部には、印刷されたナノ粒子によって形成された構造33を他の部品31に接続する接点34が設けられている。メアンダー構造33とナノ粒子はそれぞれ、電気部品がXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すように、構成ないし選択されている。
【0065】
図8には、本発明による製造方法で製造された電気部品が基板として箔40を有することもできることが示されている。箔40には、図8に拡大して示されているメアンダー構造43を形成するナノ粒子が直接印刷されている。メアンダー構造43とナノ粒子はそれぞれ、電気部品がXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すように、構成ないし選択されている。図8には、点線で分割線が示されている。箔はこれらの分割線に沿って切断され、個々のセンサ(電気部品)が製造される。
【0066】
図9には、本発明による製造方法で製造された電気部品が基板としてバイアス磁石50を有することもできることが示されている。基板50には、図9に拡大して示されているメアンダー構造53を形成するナノ粒子が直接印刷されている。メアンダー構造53とナノ粒子はそれぞれ、電気部品がXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すように、構成ないし選択されている。メアンダー構造53の端部には接点54が設けられている。
【0067】
図10では、本発明による製造方法で製造された電気部品は基板60に配置されたバイアス磁石61を有するようにも構成しうることが示されている。メアンダー構造63を形成するナノ粒子は基板60に直接印刷されている。メアンダー構造63とナノ粒子はそれぞれ、電気部品がXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すように、構成ないし選択されている。メアンダー構造63の端部には接点64が設けられている。
【0068】
図11には、マイクロ流体システムが示されている。基板70の上には、流体が通過できるチャネル71が形成されている。メアンダー構造73を形成するナノ粒子は基板70に直接印刷されている。メアンダー構造73とナノ粒子はそれぞれ、電気部品がXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すように、構成ないし選択されている。メアンダー構造73の端部には接点74が設けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電気接点(3、24、34、54、64、74)、基板(1、22、30、40、50、60、70)上に配置された、導電性材料でできたナノ粒子(2、10、11)、磁性材料でできたナノ粒子(2、10、11)及び/又は磁化材料でできたナノ粒子(2、10、11)を有する電気部品を製造する方法において、
前記ナノ粒子(2、10、11)及び/又は殻に包まれた前記ナノ粒子(2、10、11)を含んだインクを前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上に印刷プロセスによって塗布することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記インクに含まれている前記ナノ粒子(2、10、11)は実質的に球形である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記インクに含まれている前記ナノ粒子(2、10、11)は実質的に同一の直径を有しており、前記ナノ粒子の直径の分布の標準偏差(シグマ)は10%よりも小さい、特に好ましくは5%よりも小さい、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子(2、10、11)は以下の方法ステップ、すなわち、
溶媒中の金属塩の還元又は金属有機化合物の分解によって核を形成するステップ、
核を成長させるステップ、及び
オズワルド熟成過程のステップ
によって形成されたものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記オズワルド熟成過程の後、前記オズワルド熟成過程中の安定化を行う、請求項5に記載の製造方法。
【請求項6】
前記インクは前記ナノ粒子(2、10、11)が溶け込んだ溶媒を有しており、該溶媒は前記インクを前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上に塗布した後に蒸発させられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記インクの中の前記ナノ粒子(2、10、11)は前記インクの全体積の49%を超す体積割合を占める、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つのナノ粒子(2、10、11)が電気接点と接続するように導電性材料を塗布する、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記インクに含まれている少なくとも1つのナノ粒子(2、10、11)が殻を有しており、当該殻は前記インクを前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上に塗布した後に除去される、請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子(2、10、11)を前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上に塗布した後、少なくとも1つのナノ粒子(2、10、11)の上に保護層(4)を塗布する、請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
XMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示すセンサを形成する、請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも2つの電気接点(3、24、34、54、64、74)、基板(1、22、30、40、50、60、70)上に配置された、導電性材料でできたナノ粒子(2、10、11)、磁性材料でできたナノ粒子(2、10、11)及び/又は磁化材料でできたナノ粒子(2、10、11)を有する電気部品において、
前記ナノ粒子(2、10、11)は前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上で前記基板(1、22、30、40、50、60、70)の1つ以上の表面領域に配置されており、
前記ナノ粒子(2、10、11)は前記表面領域内に前記基板(1、22、30、40、50、60、70)上の格子構造の形態で配置されており、前記ナノ粒子(2、10、11)の前記格子構造は前記各表面領域の全体にわたって延在しており、
前記各表面領域の全体は、幾何学的に同じ形状の互いに隣接する正方形部分領域(正方形ピクセル)に、又は幾何学的に1つのマトリックス内で並んで配置された同じ形状の円形もしくは楕円形の部分領域(丸ピクセル)に実質的に分割することができ、
各正方形部分領域は4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの辺を有し、各円形分領域もしくは各楕円形部分領域は4ミリメートル未満、特に好ましくは1ミリメートル未満、殊に好ましくは100μm未満の長さの最大直径を有する、ことを特徴とする電気部品。
【請求項13】
前記ナノ粒子(2、10、11)の前記格子構造は1つの水平面内に広がる単層のナノ粒子(2、10、11)を有している、請求項12に記載の電気部品。
【請求項14】
前記ナノ粒子(2、10、11)の前記格子構造は上下に配置された複数の水平面を有している、請求項12に記載の電気部品。
【請求項15】
前記少なくとも1つのナノ粒子(2、10、11)を保護層(4)が覆っている、請求項12から14のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、請求項12から15のいずれか1項に記載の電気部品。
【請求項17】
前記部品はXMR効果(X磁気抵抗効果)を、例えばGMR効果(巨大磁気抵抗効果)又はAMR効果(異方性磁気抵抗効果)又はTMR効果(トンネル磁気抵抗効果)を示す、請求項12から16のいずれか1項に記載の電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−504883(P2013−504883A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529149(P2012−529149)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005620
【国際公開番号】WO2011/029629
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511015478)メアス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】MEAS Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauert 13, D−44227 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】