説明

電源装置および画像形成装置

【課題】出力する電圧の極性の異なる2つの電源回路を備えた電源装置における出力の切り換えを行った際の切換動作の遅れを抑制する。
【解決手段】相対的に大きな電位差を発生する負電圧発生回路303のトランス305の一次側をスイッチングするスイッチング用FET304のゲートに制御信号を供給する制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に、極性切換信号の切換に応答して、Highレベル電位を出力するスイッチ回路324を配置する。負電圧を出力する状態から正電圧を出力する状態へと切り替わる際に、極性切換信号の変化に基づいてデットタイムコントロール端子(DTC端子)にHigh電圧が加わり、マイナスリモート信号に基づく制御のみを行った場合に発生する負電圧発生回路の動作停止の遅延が抑えられ、切換動作の遅れが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリンター、複写機等の画像形成装置におけるトナー像を用紙に転写するために必要なマイナス高電圧を供給する電源装置において、極性の異なる第1の電源回路と第2の電源回路から選択的に出力を行うことができる構成が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000―232729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、出力する電圧の極性の異なる2つの電源回路を備えた電源装置における出力の切り換えを行った際の切換動作の遅れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、トランスを備え、第1の制御信号に基づいて電圧の値が制御される第1の電圧を出力する第1の電源回路と、前記第1の電圧と極性が異なり、第2の制御信号に基づいて電圧の値が制御される第2の電圧を出力する第2の電源回路と、前記トランスの一次側に加わる電圧をスイッチングするスイッチング素子と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路とを備え、極性切換信号に基づき、前第1の電圧の出力から前記第2の電圧の出力への切換が行われ、前記切換時において、前記極性切換信号に基づき前記制御回路の動作の停止が行われることを特徴とする電源装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御回路は、予め定められた電位の信号が入力されることで、動作を停止させる入力端子を備え、前記極性切換信号に基づいて前記予め定められた電位の信号を生成する信号生成回路を更に備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の電圧の電位差は、前記第2の電圧の電位差よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、未定着画像が形成される転写ベルトと、前記未定着画像を前記転写ベルトから記録材上に転写する転写手段と、前記第1の電圧を前記未定着画像の前記記録材への転写時に加えるバイアス電圧として前記転写手段に供給し、前記第2の電圧を前記未定着画像の前記記録材への未転写時に加えるバイアス電圧として前記転写手段に供給する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電源装置とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、出力する電圧の極性の異なる2つの電源回路を備えた電源装置における出力の切り換えを行った際の切換動作の遅れが抑制される。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、極性切換信号に基づく制御回路の停止を行い、第1の電圧を停止させ、第1の電圧の影響による第2の電圧の立ち上がりが遅れる現象を抑えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、相対的に電位差の大きい第1の電圧の出力によって、相対的に電位差の小さい第2の電圧の立ち上がりが遅れる現象が抑えられる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載された優位性を有する電源装置を備えた画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(画像形成装置の例)
図1は、発明を利用した画像形成装置の一例を示す概念図である。図1には、画像形成装置100が示されている。画像形成装置100は、記録材の一例である用紙102を収納する用紙収納装置101を備えている。用紙102は、図示省略した用紙送り出し装置の機能により、搬送経路103に送り出される。なお、記録材としては、OHP用紙等の樹脂製のものを用いることもできる。
【0014】
用紙収納装置101の用紙の搬送方向で見た下流側には、搬送ロール機構128が配置され、その下流側には、二次転写部106が配置されている。二次転写部106は、二次転写ロール108と対向ロール109を備えている。二次転写ロール108は、図1では図示省略されているモータにより駆動され回転する。二次転写ロール108は、金属製の円筒構造であり、金属製の回転軸を備えている。二次転写ロール108の回転軸には、図示省略したギア機構を介して、上述したモータにより回転力が与えられる。
【0015】
また二次転写ロール108の回転軸は、図示省略した装置の筐体に回転可能な状態で支持されていると共に、ブラシ接触機構により、装置の筐体と導通し、グランド電位(基準電位)とされている。対向ロール109には、金属製で回転可能な導通用ロール111が接触している。導通用ロール111の軸(図示省略)は、ブラシ機構(図示省略)により、本発明の電源装置の一例であるバイアス電圧発生回路110に接続されている。この構成により、バイアス電圧発生回路110から出力される電圧が、二次転写ロール108と対向ロール109との間にバイアス電圧として加えられる。
【0016】
この例では、転写ベルト112上のトナー像が負に帯電し、それがバイアス電圧により用紙上に二次転写される構成の例を説明する。本実施形態において、バイアス電圧発生回路110は、グランド電位に対して正負2種類の電圧を出力する。この2種類の電圧の詳細については後述する。
【0017】
画像形成装置100は、主制御ユニット130により全体の動作が制御される。主制御ユニット130は、CPU、メモリ、各種インターフェースを備えたコンピュータとしての機能を有し、画像形成に関係する制御を統括する。図1では、主制御ユニット130からの制御信号により、バイアス電圧発生回路110の動作が制御される構成が記載されている。
【0018】
バイアス電圧発生回路110から負電圧を出力する際には、主制御ユニット130から負電圧の出力電圧を制御する制御信号であるマイナス出力リモート信号がバイアス電圧発生回路110に出力される。また、バイアス電圧発生回路110から正電圧を出力する際には、主制御ユニット130から正電圧の出力電圧を制御する制御信号であるプラス出力リモート信号がバイアス電圧発生回路110に出力される。マイナス出力リモート信号とプラス出力リモート信号は、制御する電圧の範囲に応じたDUTY比を有したPWM信号である。
【0019】
また主制御ユニットは、バイアス電圧発生回路110に極性切換信号を出力する。この例では、負電圧を出力する期間は、High出力(この例では3.3V)が極性切換信号として主制御ユニット130からバイアス電圧発生回路110に出力され、正電圧を出力する期間は、Low出力(この例では0V)が極性切換信号として主制御ユニット130からバイアス電圧発生回路110に出力される。
【0020】
その他、主制御ユニット130は、各種センサ等からのセンシング信号が入力され、また画像形成装置100の各動作部分に制御信号を出力するのであるが、ここではそれらに関する説明は省略する。
【0021】
二次転写ロール108と対向ロール109との間には、未定着画像を保持する転写ベルト112が挟まれる。転写ベルト112は、対向ロール109、ガイドロール113、および駆動ロール114の間に掛け渡されている。ガイドロール113は、転写ベルト112の回転に従って回転する。駆動ロール114は、図1では図示省略したモータにより駆動され回転し、転写ベルト112を回転させる。
【0022】
図1には、画像生成装置115、116、117および118が示されている。これら画像生成装置のそれぞれは、感光体ドラム、クリーニング装置、帯電装置、露光装置、現像装置および一次転写ロールを備えている。画像生成装置115、116、117および118は、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナー像を形成し、それを回転している転写ベルト112に転写(一次転写)する。これにより、YMCKのトナー像が重ねられ、カラーのトナー像(未定着画像)が転写ベルト112上に形成される。
【0023】
転写ベルト112における二次転写部106の手前側(上流側)には、画像検出センサ107が配置されている。画像検出センサ107は、後述する濃度制御用の試験トナー像を検出する。画像検出センサ107によって検出された濃度制御用の試験トナー像の検出結果に基づいて、画像生成装置115、116、117および118の動作条件の調整が行われ、形成されるトナー像の濃度が調整される。この調整機構は、通常の画像形成装置におけるものと同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0024】
転写ベルト112上の未定着トナー像は、二次転写部106において、用紙上に二次転写される。この際、二次転写部106において、二次転写ロール108、用紙、転写ベルト112、対向ロール109の順に重なった状態とされる。そして、二次転写ロール108と対向ロール109との間で、圧力とバイアス電圧が加えられることで、転写ベルト112から用紙上への未定着画像の二次転写が行われる。
【0025】
二次転写部106の下流側には、搬送ベルト機構119が配置されている。搬送ベルト機構119は、図示省略したファンの吸引力を利用して、ベルト面に用紙を吸着させ、更に下流方向(図1の右方向)に搬送する。搬送ベルト機構119の下流側には、定着装置120が配置されている。定着装置120は、加熱ロール121と加圧ロール122を備えている。加熱ロール121と加圧ロール122との間に用紙が挟まれることで、熱と圧力が加えられ、用紙上の未定着画像の用紙への定着が行われる。
【0026】
定着装置120の下流側には、搬送ロール機構123が配置されている。搬送ロール機構123は、定着装置120から排出された用紙を装置外または搬送ロール機構124に送り出す。搬送ロール機構124は、搬送ロール123から送られてきた用紙を反転装置125に送り出し、また反転装置125から送り出された用紙を搬送経路126に送り出す。搬送経路126には、図の左方向に向かって搬送された用紙を搬送ロール機構128に送る搬送ロール機構127が配置されている。ここで、搬送経路126は、用紙の両面への画像の形成を行う際に利用される搬送経路である。
【0027】
(バイアス電圧発生回路の概略)
図1のバイアス電圧発生回路は、2種類の電圧を出力する。第1の電圧は、例えば−5kVの負電圧である。第2の電圧は、例えば+1kVの正電圧である。ここで、電圧の正負は、装置のグランド電位に対する極性である。第1の電圧(−5kV)は、トナー像の用紙上への2次転写時に対向ロール109に加えられるバイアス電圧である。第2の電圧は、転写ベルト112上において、搬送方向に隣接する第1のトナー像と第2のトナー像との間に形成される濃度制御用の試験トナー像が、2次転写部106を通過する際に、対向ロール109に加えられるバイアス電圧である。
【0028】
図2は、転写ベルト上に形成されたトナー像の状態を示す概念図である。図2には、転写ベルト112上に第1のトナー像201、濃度制御用の試験トナー像202aおよび202b、第2のトナー像203と順に形成された状態が示されている。
【0029】
トナー像201と203は、最終的に用紙上に定着させられる画像であり、用紙上に2次転写される。トナー像201と203の用紙上への二次転写時には、バイアス電圧発生回路110から対向ロール109に負電圧(例えば−5kV)の電圧が加えられる。この例では、転写ベルト112上のトナー像は負電位に帯電しているので、相対的に正電位側である二次転写ロール108側にトナー像を移動させる電気的な力が働き、二次転写ロール108と転写ベルト112との間に挟まれる用紙上に転写ベルト112上のトナー像が転写(二次転写)される。
【0030】
濃度制御用の試験トナー像202aおよび202bは、画像検出センサ107により検出され、画像生成装置115、116、117および118が、転写ベルト112上に一次転写するトナー像の濃度を検出するために利用される。濃度制御用の試験トナー像202aおよび202bは、二次転写の必要がないので、濃度制御用の試験トナー像202aおよび202bが二次転写部106を通過する際には、電位勾配による転写が起こらないように、バイアス電圧発生回路110から対向ロール109に正電位(例えば+1kV)の電圧が加えられる。この場合、対向ロール109が相対的に正電位となるので、対向ロール109側にトナー像が移動しようとする電気力が働き、転写ベルト112から用紙上への濃度制御用の試験トナー像202aおよび202bの転写が避けられる。
【0031】
図2に示すように、転写ベルト112上において、濃度制御用の試験トナー像の前後には、電源の極性の切換に要する時間の余裕を確保するための予め決められたある期間が設けられている。
【0032】
(バイアス電圧発生回路の詳細)
図3は、図1に示すバイアス電圧発生回路110の詳細な一例を示す回路ブロック図である。図3には、バイアス電圧発生回路110が示されている。バイアス電圧発生回路110は、−5kVの電圧を発生するための負電圧発生回路303と、+1kVの電圧を発生するための正電圧発生回路310を備えている。なお、発生する電圧の値は一例であり、画像の種類、トナーの種類、用紙の種類、機種等によって適切な値は異なる。ここでは、一例として、二次転写用に−5kV、用紙間の濃度制御用の試験トナー像の2次転写を防ぐバイアス電圧として+1kVを利用する場合を説明する。
【0033】
負電圧発生回路303と正電圧発生回路310とは直列に接続され、一方が電圧を発生している期間は、他方は電圧を発生せず、他方が電圧を発生している期間は、一方は電圧を発生しないように動作制御が行われる。何れかの電圧発生回路が発生した電圧(−5kVまたは+1kV)は、負荷320に加えられる。負荷320は、図1の2次転写部106を抵抗と容量で構成される等価回路に置き換えたものである。なお、負荷の定数も代表的な一例である。
【0034】
(負電圧発生回路に関係する構成)
まず、負電圧を生成する構成について説明する。負電圧(−5kV)は、負電圧発生回路303において生成される。負電圧を生成する場合は、図1にも記載された主制御ユニット130から制御信号として、マイナス出力リモート信号が出力される。マイナス出力リモート信号は、生成したい電圧(この場合は、−5kV)に対応したDUTY比のPWM信号である。マイナス出力リモート信号は、D/A変換回路301によって直流信号に変換され、制御回路302に入力される。
【0035】
D/A変換回路301は、マイナス出力リモート信号のDUTY比に比例した電圧を出力する。制御回路302は、専用のICであり、負電圧電源回路303が備えたトランス305の一次側に接続されたスイッチング用FET304をスイッチングさせる信号をスイッチング用FET304のゲート端子に出力する。すなわち、D/A変換回路301からの出力電圧に基づいて、制御回路302は、主制御ユニット130から指示された負電圧を負電圧発生回路303が発生するように、スイッチング用FET304をスイッチングするための制御信号を出力する。
【0036】
上述した制御回路302から出力された制御信号により、トランス305に加えられるDC24Vの電圧がスイッチング用FET304によってスイッチングされ、トランス305の2次側に昇圧された周期電圧が発生する。この周期電圧が整流回路306によって整流され、直流化されることで、負電圧(例えば−5kV)が発生する。こうして、負電圧発生回路303における負電圧の生成が行われる。
【0037】
負電圧発生回路303の出力の電圧値は、−出力電圧検出回路307によって検出される。−出力電圧検出回路307の出力は、制御回路302にフィードバックされ、出力が定められた電圧値となるようにフィードバック制御が行われる。負電圧発生回路303の出力の電流値は、−出力電流検出回路316によって検出される。−出力電流検出回路316の出力は、制御回路302にフィードバックされ、出力が定められた電流値を越えないようにフィードバック制御が行われる。こうして、電源出力の電圧の安定化および電流の安定化(例えば、負荷変動に対して出力を安定化させる制御)が行われる。
【0038】
制御回路302は、デットタイムコントロール端子(DTC端子)を備えている。デットタイムコントロール端子は、kVといような高圧を扱う電源のON時におけるソフトスタート(徐々に出力の電位差が大きくなる特性)を実現するために利用される。簡単に説明すると、制御回路302の内部には、三角波を発生させる回路が内蔵されており、デットタイムコントロール端子(DTC端子)に加えられるコントロール電圧とこの三角波が内部のコンパレータにより比較される。ここで、コントロール電圧をコンデンサの放電特性等を利用して、最初は、三角波の波高値より電位が高く、徐々に低下する電圧変化を示すようにすると、三角波の波高値より低下した段階でコンパレータからの出力が徐々に立ち上がり、ある時間をかけてその出力が上昇してゆく特性が得られる。このコンパレータからの出力の時間経過に従う出力の上昇特性を利用して、電源電圧が急激に立ち上がらず、徐々に上昇してゆく特性が得られる。通常、デットタイムコントロール端子(DTC端子)は、最初の電源ON時のみ使われ、その後は、閾値電圧以下の電圧が加わる状態とされている。
【0039】
この例では、デットタイムコントロール端子(DTC端子)を、制御回路302を強制的にOFFにするコントロール端子として利用する。すなわち、上記の原理から分かるように、デットタイムコントロール端子(DTC端子)に、内部で生成される三角波の波高値との関係で決まる予め決められた電圧以上の電圧(これをHighレベル電圧と称する)を加えた場合、制御回路302は、制御信号を出力しない(つまりOFF状態)。他方で、デットタイムコントロール端子(DTC端子)に、内部で生成される三角波の波高値との関係で決まる閾値電圧以下の電圧(これをLowレベル電圧と称する)を加えた場合、制御回路302は、制御信号を出力する(つまりON状態)。
【0040】
通常は、上記のHighレベル電圧からLowレベル電圧への変化を利用して、電源のソフトスタート特性を得るのであるが、ここでは、デットタイムコントロール端子(DTC端子)にHighレベル電圧を加えると、制御回路302の制御機能がOFF、デットタイムコントロール端子(DTC端子)にLowレベル電圧を加えると、制御回路302の制御機能がON、となる特性を利用する。この例では、制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)における上記Highレベル電圧が3.3V、Lowレベル電圧が1.5Vに設定されているものを用いる。
【0041】
図3に示すように、本実施形態では、デットタイムコントロール端子(DTC端子)に2系統の信号が入力される構成とされている。
【0042】
第1の系統は、マイナス出力リモート信号に基づくコントロール信号の系統である。この信号の系統は、出力ON/OFF判定回路321を備えている。出力ON/OFF判定回路321は、装置の主電源ON時に主制御ユニット130から制御信号を受け(この信号経路は図示省略)、トランジスタスイッチ322に制御信号を出力する。トランジスタスイッチ322が動作することで、時定数回路323の作用により、上述したデットタイムコントロール端子(DTC端子)に加わる電圧がHighレベルからLowレベルへと、予め決められた時間をかけて変化し、デットタイムコントロールが行われる。この部分の作用および構成は、通常の電源におけるものと同じである。なお、装置の主電源ON時以外は、時定数回路323からの出力は、Lowレベルまたはそれ以下の値(0V)となる。
【0043】
デットタイムコントロール端子(DTC端子)に入力する信号の第2の系統は、極性切換信号に基づくコントロール信号の系統である。極性切換信号は、トランジスタとオペアンプを用いたスイッチ回路324に入力される。
【0044】
スイッチ回路324は、極性切換信号に基づいてデットタイムコントロール端子(DTC端子)に加える信号を生成する信号生成回路の一例である。スイッチ回路324の入力にLowレベルの信号が入ると、初段のトランジスタがOFFとなり、2段目のトランジスタのベースに正電圧が加わり、2段目のトランジスタがONとなる。この結果、分圧抵抗の一つがバイパスされ、バッファ(インピーダンス変換回路)であるオペアンプの入力に抵抗分圧回路により決められた電圧が加わり、終段のオペアンプから制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に3.5Vの電圧(Highレベル電圧)が出力される。なお、スイッチ回路324の出力に接続されたダイオードは、デットタイムコントロール端子(DTC端子)側からの電流の逆流を防ぐために配置されている。
【0045】
スイッチ回路324の入力にHighレベルの信号が入ると、初段のトランジスタがONとなり、2段目のトランジスタのベース電圧が下がり、2段目のトランジスタがOFFとなる。この結果、終段のオペアンプの入力に上記の入力Lowの場合よりも低い電圧が加わり、終段のオペアンプから制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に0.8V(Lowレベル電圧)の電圧が出力される。
【0046】
極性切換信号は、負電圧発生回路303が生成する負電圧を負荷320に供給する場合にHighレベルとなり、正電圧発生回路310が生成する正電圧を負荷320に供給する場合にLowレベルとなる。つまり、極性切換信号は、負電圧発生回路303をONにし、正電圧発生回路をOFFにする場合にHighレベルとなり、負電圧発生回路303をOFFにし、正電圧発生回路をONにする場合にLowレベルとなる。
【0047】
したがって、主制御ユニット130が、負電圧発生回路303が生成する負電圧を負荷320に供給するように制御を行う場合は、極性切換信号がHighとなり、スイッチ回路324から制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に0.8Vの電圧が出力される。デットタイムコントロール端子(DTC端子)に0.8Vの電圧が加わると、制御回路302は、ONとなり、マイナス出力リモート信号に基づくスイッチング用FET304のスイッチング制御が行われ、負電圧発生回路303からの負電圧の出力が行われる。
【0048】
他方で、主制御ユニット130が、正電圧発生回路310が生成する正電圧を負荷320に供給するように制御を行う場合は、極性切換信号がLowとなり、スイッチ回路324から制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に3.5Vの電圧が出力される。デットタイムコントロール端子(DTC端子)に3.5Vの電圧が加わると、制御回路302は、OFFとなり、スイッチング用FET304のスイッチング制御が行われなくなる。この結果、トランス305の二次側には、周期電圧が発生せず、整流回路306による整流機能も働かず、負電圧発生回路303の負電圧出力は停止する。
【0049】
(正電圧発生回路に関係する構成)
正電圧発生回路310は、トランス331を備えている。トランス331の一次側には、スイッチング用FET332が接続されている。スイッチング用FET332のゲートに加わる電位が制御回路333からの制御信号によりスイッチングされることで、トランス331の一次側のDC24Vがスイッチングされ、トランス331の二次側に昇圧された周期電圧が発生する。この周期電圧が、整流回路334において整流されることで、直流化され、正電圧(例えば+1kV)が生成される。
【0050】
制御回路333は、プラス出力リモート信号に基づいて動作する。すなわち、主制御ユニット130から出力されたプラス出力リモート信号は、D/A変換回路335において、出力電圧の値に応じた直流信号に変換され、制御回路333に入力される。制御回路333は、このD/A変換回路335からの直流信号に基づいて、スイッチング用トランジスタ332のスイッチングの制御を行う。また、制御回路333には、極性切換信号が入力され、正電圧発生回路310のON/OFFのために用いられる。すなわちHighで正電圧OFF。Lowで正電圧ONとなる。
【0051】
(極性切換時の動作)
以下、バイアス電圧発生回路110が負電圧を出力している状態から正電圧を出力する状態へと移行するための極性の切換が行われる場合の動作の詳細の一例を説明する。まず、バイアス電圧発生回路110が負電圧を出力している状態では、主制御ユニット130からマイナス出力リモート信号が出力され、プラス出力リモート信号が出力されず、且つ、極性切換信号としてHighレベル電圧が出力される。
【0052】
この状態において、バイアス電圧発生回路110が正電圧を出力する状態へと移行する場合、主制御ユニット130からのマイナス出力リモート信号の出力が停止し、プラス出力リモート信号の出力が開始される。また、このタイミングに合わせて極性切換信号がHighレベル電圧からLowレベル電圧に切り替わる。
【0053】
この際、D/A変換回路301の時定数に起因する信号の遅延や回路内における残留電荷の影響により、マイナス出力リモート信号が停止しても、その後しばらくの間(数msec程度)制御回路302の制御入力端子に、マイナス出力リモート信号に基づく電位が加わる。この結果、マイナスリモート信号の停止を利用するだけでは、負電圧発生回路の停止に遅延が発生する。
【0054】
この例では、マイナス出力リモート信号が停止するタイミングで極性切換信号がHighレベル電圧からLowレベル電圧に切り替わる。このため、スイッチ回路324の出力が、0.8Vから3.5Vに変化する。この変化は、スイッチ回路324の時定数の分遅延するが、図示するようにスイッチ回路324は、配線容量やトランジスタの応答特性に起因する時定数しか持たないので、その遅延は、μsec以下であり、上記マイナス出力リモート信号に係る遅延に比較すれば、無視できる。このため、上記マイナス出力リモート信号に係る遅延が発生しても、制御回路302のデットタイムコントロール端子(DTC端子)に加わる電圧が3.5Vとされることで、スイッチングトランジスタ304のスイッチングが停止される。スイッチングトランジスタ304のスイッチングが停止されると、トランス305の二次側に周期電圧は現れなくなるので、負電圧発生回路303の出力(例えば−5kV)が止まる。
【0055】
この仕組みにより、マイナス出力リモート信号に係る遅延が生じても、その影響を受けずに負電圧発生回路303の出力を止めることができる。
【0056】
(実施形態の優位性)
本実施形態によれば、負電圧発生回路303のOFFを、負電圧を発生させるために必要なトランス305の一次側をスイッチングするスイッチング用FET304のスイッチングを制御する制御回路302の動作を停止させることで行う。しかも、この動作の停止を制御回路のデットタイムコントール端子(DTC端子)に加える電圧を、極性切換信号に基づいて変化させることで行う。極性切換信号に基づくデットタイムコントール端子(DTC端子)へのHighレベル電圧(停止を行うための電圧)を加える回路は、時定数を小さく(反応速度を速く)できるので、マイナスリモート信号に基づく制御回路302の動作の遅延を防ぐことができる。これにより、負電圧の出力から正電圧の出力への切換時における正電圧の発生が遅延する現象を抑えることができる。
【0057】
なお正電圧から負電圧への切換の場合、特に大きな問題は生じない。以下、この理由を説明する。この場合も正電圧の出力が遅延して残る現象が生じるが、正電圧発生回路310が発生する電位差は、負電圧発生回路303が発生する電位差よりも小さい。このため、正電圧発生回路310のOFF動作の遅延が、負電圧発生回路の立ち上がりに大きな影響を与えることはない。
【0058】
(実測例)
図4は、電圧の極性切換に伴いバイアス電圧発生回路110の出力電圧の時間変化を測定した結果を示すグラフである。図4(A)は、図3に示す構成において、スイッチ回路324を備えない場合のデータであり、図4(B)は、図3に示す構成とした場合のデータである。図4の横軸は、時間(1目盛2msec)であり、縦軸は出力電圧の任意値である。図4には、負電圧(−5kV)を出力している状態において、正電圧(1kV)を出力する切換を行ったタイミングが「切換時」として示されている。
【0059】
図4(A)と(B)を見れば明らかなように、スイッチ回路324を配置し、デットタイムコントロール端子(DTC端子)を利用した制御回路302の強制OFF動作を行うことで、正電圧出力の立ち上がりを改善できる。
【0060】
(画像形成動作の例)
以下、図1に例示する画像形成装置100における画像形成動作の一例を説明する。画像を形成する処理が開始されると、まず用紙収納装置101に収納された用紙が図示省略した用紙送り出し装置の機能により、搬送経路103に送り出される。この用紙は、図の右方向に搬送され、二次転写部106に送り込まれる。
【0061】
このタイミングに合わせて、画像生成装置115〜118の働きにより、転写ベルト112上にYMCKの各トナー像が積層され、カラーのトナー像(未定着画像)が形成される(一次転写)。この転写ベルト112上のカラーのトナー像は、二次転写部106において、図の左方向から右方向に向かって搬送される用紙の上に二次転写される。この際、マイナス出力リモート信号が主制御ユニット130から出力され、図3のバイアス電圧発生回路110が負電圧(例えば−5kV)を発生する。この負電圧が対向ロール109に転写バイアスとして加えられる。
【0062】
図2に示すように連続して搬送される用紙間に濃度制御用のトナー像202aおよび202bを形成する場合、先行する用紙が通過したタイミングに合わせて、主制御ユニット130からバイアス電圧発生回路110に出力さえるリモート信号が、マイナス出力リモート信号からプラス出力リモート信号へと切り替わる。また、この切り替わりのタイミングで、極性切換信号が、HighからLowへと切り替わる。極性切換信号が、HighからLowになると、スイッチ回路324の出力が0.8V(Lowレベル電圧)から3.5V(Highレベル電圧)へと変化する。スイッチ回路324の出力が0.8V(Lowレベル電圧)から3.5V(Highレベル電圧)へと変化することで、デットタイムコントロール端子(DTC)端子を用いた制御回路302の強制OFF(出力停止状態への移行)が行われ、スイッチング用FET304のスイッチングが停止され、負電圧発生回路の出力(例えば−5kV)が停止する。
【0063】
そして、負電圧発生回路の出力の停止に合わせて出力を開始する正電圧発生回路からの非転写バイアス(1kVの正バイアス)の発生動作へと切り替わる。そして、次の用紙が搬送されてくるタイミングに合わせて、主制御ユニット130からバイアス電圧発生回路110に出力されるリモート信号および極性切換信号の上記とは逆の切り替わりが行われ、次の用紙への二次転写が行われる。
【0064】
二次転写部106において、二次転写が行われた用紙は、ベルト搬送機構119により、定着装置120に送られ、加熱と加圧が行われることで、用紙上に形成された(二次転写された)トナー像の用紙への定着が行われる。画像の定着が終了した用紙は、搬送ロール機構123から装置外に排出される。また、用紙両面に画像を形成する場合は、搬送ロール機構123から反転装置125に向けて用紙が搬送される。
【0065】
(変形例1)
スイッチ回路324を動作させる信号として、主制御ユニット130から出力される極性切換信号ではなく、プラス出力リモート信号を用いることもできる。この場合、プラス出力リモート信号をD/A変換回路335の前で分岐し、時定数の小さい平滑回路に入れ、この平滑回路の出力をスイッチ回路324の入力に入れる構成とする。この際、平滑回路の出力でスイッチ回路の初段のトランジスタがOFFになるように回路定数を選択する。
【0066】
平滑回路は、プラス出力リモート信号のPWM信号からスイッチ回路324の初段のトランジスタをOFFにできる程度の電圧を生成すればよいので、時定数を小さくでき、D/A変換回路301の経路における信号の遅延に比較して応答を速くできる。この構成では、プラス出力リモート信号が主制御ユニット130から出力されると、スイッチ回路324の入力にLowレベルの電位が現れ、上記の極性切換信号を用いた場合と同様な動作が得られる。
【0067】
また、スイッチ回路324を動作させる信号として、主制御ユニット130から出力される極性切換信号ではなく、マイナス出力リモート信号を用いることもできる。この場合、マイナス出力リモート信号をD/A変換回路301の前で分岐し、時定数の小さい平滑回路に入れ、この平滑回路の出力を、スイッチ回路324の入力に入れる構成とする。
【0068】
この構成でも時定数を小さくでき、D/A変換回路301の経路における信号の遅延に比較して応答を速くできる。この構成では、マイナス出力リモート信号の主制御ユニット130からの出力が途切れると、スイッチ回路324の入力にLowレベルの電位が現れ、上記の極性切換信号を用いた場合と同様な動作が得られる。
【0069】
このプラス出力リモート信号を用いる方法およびマイナス出力リモート信号を用いる方法は、プラス出力リモート信号またはマイナス出力リモート信号から、極性切換信号を得る技術として捉えることができる。またこの場合、極性切換信号と制御回路333の結線も無くす事ができる。
【0070】
(その他)
スイッチング用FET304および/または332は、FET以外にバイポーラトランジスタ等の他のスイッチングデバイスでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、画像の形成を行う技術に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】発明を利用した画像形成装置の一例を示す概念図である。
【図2】転写ベルト上に形成されるトナー象の一例を示す概念図である。
【図3】バイアス電圧発生回路の一例を示す回路ブロック図である。
【図4】正バイアスの立ち上がりの電圧変化を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
100…画像形成装置、101…用紙収納装置、102…用紙、103…用紙搬送経路、106…二次転写部、107…濃度センサ、108…二次転写ロール、109…対向ロール、110…バイアス電圧発生回路、111…導通用ロール、112…転写ベルト、113…ガイドロール、114…駆動ロール、115〜118…画像生成装置、119…ベルト搬送機構、120…定着装置、121…加熱ロール、122…加圧ロール、123…搬送ロール機構、124…搬送ロール機構、125…反転装置、126…搬送経路、127…搬送ロール機構、128…搬送ロール機構、130…主制御ユニット、301…D/A変換回路、302…制御回路、303…負電圧発生回路、304…スイッチング用FET、305…トランス、306…整流回路、307…−出力電圧検出回路、310…正電圧発生回路、321…出力ON/OFF判定回路、322…トランジスタスイッチ、323…時定数回路、324…スイッチ回路、331…トランス、332…スイッチング用FET、333…制御回路、334…整流回路、335…D/A変換回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスを備え、第1の制御信号に基づいて電圧の値が制御される第1の電圧を出力する第1の電源回路と、
前記第1の電圧と極性が異なり、第2の制御信号に基づいて電圧の値が制御される第2の電圧を出力する第2の電源回路と、
前記トランスの一次側に加わる電圧をスイッチングするスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路と
を備え、
極性切換信号に基づき、前第1の電圧の出力から前記第2の電圧の出力への切換が行われ、
前記切換時において、前記極性切換信号に基づき前記制御回路の動作の停止が行われることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、予め定められた電位の信号が入力されることで、動作を停止させる入力端子を備え、
前記極性切換信号に基づいて前記予め定められた電位の信号を生成する信号生成回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1の電圧の電位差は、前記第2の電圧の電位差よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
未定着画像が形成される転写ベルトと、
前記未定着画像を前記転写ベルトから記録材上に転写する転写手段と、
前記第1の電圧を前記未定着画像の前記記録材への転写時に加えるバイアス電圧として前記転写手段に供給し、前記第2の電圧を前記未定着画像の前記記録材への未転写時に加えるバイアス電圧として前記転写手段に供給する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電源装置と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161836(P2010−161836A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−833(P2009−833)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】