説明

露光装置、露光方法、半導体装置の製造方法

【課題】 ウェハステージの移動距離を短くして作業時間を短縮する。
【解決手段】 マスクステージ14は、マスクステージ基準マーク15を備えると共にマスク30を支持する。ウェハステージ16は、マスクステージ14に対して露光光の光軸方向に間隔をあけて配置され、ウェハ40を支持する。ナノインプリント装置24は、ウェハ40上にアラインメントマーク44を形成可能である。オンアクシスカメラ20は、マスクステージ基準マーク15とアラインメントマーク44とを投影光学系12を介して同時に撮像する。位置調整装置26は、マスクステージ14に対するウェハステージ16の位置を調整可能であって、かつ、マスクステージ基準マーク15とアラインメントマーク44をオンアクシスカメラ20によって撮像することにより得られる画像データに基づいて、ウェハステージ16の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、半導体製造プロセスにおいて、マスク(フォトマスク又はレチクルとも呼ばれる)に形成されたパターンをウェハに投影する露光装置と露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、マスクに形成されたパターンを、表面に感光性膜が形成されているウェハに投影する露光装置が開示されている。この種の露光装置は、マスクを支持するマスクステージと、ウェハを支持するウェハステージと、マスクを介して入射する光を縮小してウェハに投影する投影光学系を備えている。マスクステージにはマスクステージ基準マークが備えられ、ウェハステージにはウェハステージ基準マークが備えられている。この露光装置では、上記のマスクステージ基準マークと、ウェハステージ基準マークを基準としてマスクステージとウェハステージを位置合わせした上で、ウェハへのパターンの投影を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−279457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の露光装置においては、マスクステージに対するウェハステージの位置合わせのための情報を取得するために、マスクステージに形成されたマスクステージ基準マークとウェハステージに形成されたウェハステージ基準マークを利用する。すなわち、オンアクシスカメラによってマスクステージ基準マークとウェハステージ基準マークとを投影光学系を介して同時に撮像しながら、両基準マークが所定の位置関係となるようにマスクステージに対するウェハステージの位置を調整し、マスクステージに対するウェハステージの位置合わせ情報を取得する。このオンアクシスカメラは、ウェハ表面に形成されている感光性膜を反応させる波長の光を用いるため、ウェハ上にウェハステージ基準マークを設けると、ウェハステージ基準マークを撮影する際にウェハ表面の感光性膜が反応してしまう。このため、従来の露光装置では、ウェハステージ上のウェハが支持される部分の外側にウェハステージ基準マークが設けられていた。その結果、ウェハステージ基準マークを撮像するためには、マスクステージに対してウェハステージを長い距離移動させる必要があり、その分作業時間も長くなるという問題が生じていた。
【0005】
本明細書では、マスクステージとウェハステージの位置合わせをする際のマスクステージに対するウェハステージの移動距離を短くして作業時間を短縮する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される技術は、パターンが形成されたマスクに露光光を照射することにより、前記パターンを投影光学系を介して表面に感光性膜が形成されているウェハに投影する露光装置として具現化される。この露光装置は、マスクステージと、ウェハステージと、マーク形成装置と、オンアクシスカメラと、位置調整装置と、制御装置と、を備える。マスクステージは、マスクステージ基準マークを備えると共に前記マスクを支持する。ウェハステージは、マスクステージに対して露光光の光軸方向に間隔をあけて配置され、前記ウェハを支持する。マーク形成装置は、ウェハステージに支持されたウェハの表面のうち半導体装置が形成されない外周部分にアラインメントマークを形成する。オンアクシスカメラは、感光性膜が反応する光を用いて、マスクステージ基準マークとアラインメントマークとを投影光学系を介して同時に撮像可能となっている。位置調整装置は、マスクステージに対するウェハステージの位置を調整可能となっている。制御装置は、オンアクシスカメラによってマスクステージ基準マークとアラインメントマークを撮像しながら位置調整装置によりマスクステージに対するウェハステージの位置を調整することで、マスクステージに対するウェハステージの位置合わせ情報を取得する。
【0007】
この露光装置では、マスクステージとウェハステージの位置合わせ情報の取得を、マスクステージ基準マークと、ウェハ表面に形成されたアラインメントマークにより行う。アラインメントマークは、ウェハ表面に形成されているため、アラインメントマークをオンアクシスカメラで撮像可能な位置まで移動させる際のマスクステージに対するウェハステージの移動距離は、従来の露光装置においてウェハステージ基準マークをオンアクシスカメラで撮像可能な位置まで移動させる際の移動距離に比べて短くなる。その結果、作業時間を短縮することができる。また、アラインメントマークは、ウェハ表面のうち半導体装置が形成されない外周部分に形成されている。このため、アラインメントマークをオンアクシスカメラで撮像しても、半導体装置が形成される部分の感光性膜に影響しない。さらに、アライメントマークの形成は、ウェハをウェハステージ上に支持した状態で行われる。このため、ウェハステージにウェハを載置する前に、ウェハの表面にアライメントマークを形成しておく必要はない。
【0008】
上記の露光装置は、感光性膜が反応しない光を用いて、投影光学系を介することなくウェハを撮像可能なオフアクシスカメラをさらに備えていてもよい。この場合に、ウェハは半導体装置が形成される内周部分にウェハ基準マークを備えることができ、また、マーク形成装置は、オフアクシスカメラに固定することができる。そして、マーク形成装置は、オフアクシスカメラがウェハ基準マークに位置合わせされたときにアラインメントマークを形成してもよい。
【0009】
この構成によると、オフアクシスカメラがウェハ基準マークに位置合わせされた位置で、アラインメントマークをウェハ上に形成することができる。このため、ウェハ基準マークとアライメントマークの位置関係は、オフアクシスカメラとマーク形成装置の位置関係と同一となる。したがって、アラインメントマークを改めてオフアクシスカメラで撮像しながら位置合わせを行う工程を不要とすることができる。作業時間を短縮することができる。
【0010】
上記の露光装置では、制御装置は、さらに、オフアクシスカメラによってウェハ基準マークを撮像しながら位置調整装置によりマスクステージに対するウェハステージの位置を調整することで、オフアクシスカメラに対するウェハ基準マークの位置合わせを行うと共に、その位置合わせをした位置でウェハの表面にアライメントマークを形成し、マスクステージに対するウェハステージの位置合わせ情報と、オフアクシスカメラに対するマーク形成装置の位置情報に基づいて、位置調整装置によりマスクステージに対するウェハステージの位置を調整してマスクのパターンをウェハに投影するようにしてもよい。
【0011】
この構成によると、マスクステージに対するウェハステージの位置合わせ情報と、オフアクシスカメラとマーク形成装置の位置関係と、に基づいてマスクステージとウェハステージを位置合わせし、マスクのパターンをウェハの所望の位置に投影することができる。所望のパターンが投影されたウェハを正確に形成することができる。
【0012】
本明細書によって開示されるもう一つの技術は、パターンが形成されたマスクに露光光を照射することにより前記パターンを投影光学系を介して表面に感光性膜が形成されているウェハ上に投影する露光方法である。この露光方法は、ウェハステージに支持されたウェハの表面のうち半導体装置が形成されない外周部分にアラインメントマークを形成する工程と、マスクステージに対するウェハステージの位置を調整しながらオンアクシスカメラによってマスクステージのマスクステージ基準マークとアラインメントマークを撮像することでマスクステージとウェハステージの位置合わせを行う工程と、を備える。
【0013】
この方法によると、マスクステージに対してウェハステージの位置合わせをする際のマスクステージに対するウェハステージの移動距離を従来よりも短くすることができ、作業時間を短縮することができる。
【0014】
また、上記の露光方法による露光工程を有する半導体装置の製造方法も、新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】露光装置の構成及び露光方法を説明する図(1)。
【図2】露光方法を説明する図(2)。
【図3】露光方法を説明する図(3)。
【図4】露光方法を説明する図(4)。
【図5】露光方法を説明する図(5)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明する実施例の技術的特徴を列挙する。
(形態1) マーク形成装置として、ナノインプリント装置が用いられている。
(形態2) オンアクシスカメラは、λ=365nmの露光光を撮像対象に照射する。
(形態3) オフアクシスカメラは、λ=590±60nmのハロゲンランプ光を撮像対象に照射する。
(形態4) アラインメントマークは、ウェハ表面に塗布されているフォトレジスト膜上に形成される。そのため、オンアクシスカメラによって露光光を照射してから読み取り可能になるまでの時間が短く済む。
(形態5) アラインメントマークは、ウェハの表面のうちパターンが投影されない外周部分に形成される。従って、仮にオンアクシスカメラによって露光光を照射することによってアラインメントマーク周囲のフォトレジストが露光された場合であっても、パターンの投影に影響を及ぼすことがない。
(形態6) マスクはマスク基準マークを備えている。マスク基準マークとマスクステージ基準マークとを位置合わせすることにより、マスクとマスクステージの位置合わせを行う。
【実施例】
【0017】
図面を参照して実施例を説明する。図1は、本実施例の露光装置2の構成の概略を示している。露光装置2は、半導体装置を製造する装置として用いられ、マスク30に形成されたパターン(回路パターン、素子パターン、配線パターン等)を投影光学系12により縮小し、縮小したパターンをウェハ40上に投影する。本実施例の露光装置2は、マスク30を固定して、ウェハ40を間欠移動させながらマスク30のパターンをウェハ40の複数箇所に投影する投影露光装置(ステッパ)である。露光装置2は、光源10と、投影光学系12と、マスクステージ14と、ウェハステージ16と、制御部18と、オンアクシスカメラ20と、オフアクシスカメラ22と、ナノインプリント装置24と、位置調整装置26と、を備える。マスクステージ14上にはマスク30が支持されている。また、ウェハステージ16上にはウェハ40が支持されている。
【0018】
光源10は、ウェハ40の表面に塗布されるフォトレジスト(感光剤)が反応する波長の光を照射する。光源10には、例えば、高圧水銀ランプやエキシマレーザー、その他のレーザー装置等を用いることができる。光源10から出射された露光光100は、光源10の近傍に設けられた反射ミラー11a、11bによって反射されて、マスクステージ14に支持されたマスク30に照射される(図5参照)。マスク30に照射された露光光100は、投影光学系12を介してウェハ40に照射される(図5参照)。
【0019】
マスクステージ14は、上記の光源10と投影光学系12の間に配置されている。マスクステージ14は、その中心に開口部が形成されており、その開口部の周縁でマスク30の周縁部を支持するようになっている。光源10からマスク30に照射された露光光100は、マスクステージ14の開口部から投影光学系12に入射するようになっている(図5参照)。マスクステージ14には、マスクステージ14とマスク30との位置調整、及び、マスクステージ14とウェハステージ16との位置調整を行うための基準となるマスクステージ基準マーク15が形成されている。マスクステージ基準マーク15は上記のオンアクシスカメラ20によって撮像可能とされている。マスクステージ14は、図示しないフレームに固定されており、光源10及び投影光学系12等との位置関係が変動しないようにされている。
【0020】
上述したマスクステージ14には、マスク30が支持される(図4、図5参照)。マスク30は、通常ガラス板で形成されている。マスク30には、所望する半導体装置に応じた回路パターン等が形成されているとともに、マスク30とマスクステージ14との位置調整を行うためのマスク基準マーク32が形成されている。マスク基準マーク32も、上記のオンアクシスカメラ20によって撮像可能とされている。マスク30に露光光100が照射されると、マスク30に形成されたパターンが、投影光学系12を介してウェハ40の表面に投影されるようになっている。
【0021】
なお、マスクステージ14の近傍には、マスクステージ14上でマスク30の位置を調整するマスク調整機構34が備えられている。マスク調整機構34には、例えば、アームロボット等が用いられる。
【0022】
投影光学系12は、マスクステージ14の下方(図1のZ軸方向)に配置されている。本実施例におけるZ軸方向とは、図1に示すように、マスク30からウェハ40に投影される露光光100(図5参照)の光軸100aに平行な方向(垂直方向)を指す。また、X軸方向とY軸方向とはZ軸方向に垂直な平面内で相互に直交する方向(水平方向)を指し、回転軸方向とはZ軸周りの回転方向を指す。投影光学系12は、複数のレンズ50から構成されており、マスク30を介して入射する光を縮小してウェハ40に投影する。例えば、投影光学系12には、マスク30に形成された回路パターンを、例えば1/4倍、1/5倍又は1/10倍に縮小してウェハ40に投影するように複数のレンズ50が配されている。
【0023】
ウェハステージ16は、投影光学系12の下方(図1のZ軸方向)に配置されており、投影光学系12を挟んでマスクステージ14と対向している。ウェハステージ16は、その上面にウェハ40を支持する。ウェハステージ16に支持されたウェハ40には、マスク30に照射された露光光100がマスク30と投影光学系12を介して投影される(図5参照)。ウェハステージ16は、位置調整装置26に連結されている。位置調整装置26は、制御部18に接続されており、制御部18からの駆動制御指令に従い、ウェハステージ16をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、回転軸方向(Z軸周り)に駆動する。位置調整装置26によるウェハステージ16の駆動情報(位置情報(モータ等の回転角度等))は、制御部18に入力される。制御部18は、位置調整装置26からの駆動情報に基づいて、ウェハステージ16の位置を算出することができる。
【0024】
上述したウェハステージ16上に支持されるウェハ40は、マスク30のパターンが投影される基板である。ウェハ40には、ウェハ40とウェハステージ16との位置関係を特定するためのウェハ基準マーク42が形成されている。本実施例では、ウェハ基準マーク42は、上記のオフアクシスカメラ22で撮像される。ウェハ40の表面にはフォトレジストが塗布され、フォトレジスト膜が形成されている。上記のウェハ基準マーク42は、ウェハ40内のうち、露光光100によってマスク30のパターンが投影される範囲の一部に形成されている。また、このウェハ基準マーク42は、上記のフォトレジスト膜の下に形成されている。上記のフォトレジストは、半導体製造プロセスに用いられる種々のものを使用することができ、露光光100が投影されることによって物性が変化し、後に続くエッチングなどの処理から物質表面を保護する作用を有している。本実施例では、フォトレジストの性質(ポジ型やネガ型)については限定しない。
【0025】
オンアクシスカメラ20は、図示しない光源と撮像装置を備え、撮像対象に光を照射し、撮像対象から反射される光を受光することによって像を得る装置である。オンアクシスカメラ20は、図3に示すように、投影光学系12を介して撮像対象を撮像するものである。そのため、オンアクシスカメラ20の光源には、露光用の光源10と同一波長の光を出射できるものが用いられている。本実施例では、オンアクシスカメラ20の光源としては、例えば高圧水銀ランプ等のレーザー装置が用いられる。本実施例のオンアクシスカメラ20は、λ=365nmの露光光(i線)を撮像対象に対して照射することができる。また、オンアクシスカメラ20の撮像装置としては、例えば、CCD素子等の光電変換素子を用いることができる。本実施例では、オンアクシスカメラ20は、マスクステージ14の上方に配置されている。なお、オンアクシスカメラ20の照射光の光軸20aは、図3に示すように、投影光学系12の各レンズ50の周縁部に照射されるため、各レンズ50を透過することによって屈折する。オンアクシスカメラ20は、ウェハ40上に形成されたアラインメントマーク44(後述する)と、マスクステージ基準マーク15とを、投影光学系12を介して同時に撮像することができる(図3参照)。また、オンアクシスカメラ20は、マスク基準マーク32とマスクステージ基準マーク15を同時に撮像することもできる(図4参照)。この場合は、オンアクシスカメラ20は、投影光学系12を介することなく、マスク基準マーク32とマスクステージ基準マーク15を撮像する。オンアクシスカメラ20によって撮像された画像は、制御部18に出力される。
【0026】
オフアクシスカメラ22も、上記のオンアクシスカメラ20と同様に、図示しない光源と撮像装置を備え、撮像対象に光を照射し、撮像対象から反射される光を受光することによって像を得る装置である。オフアクシスカメラ22は、図1に示すように、投影光学系12を介さずに撮像対象を撮像するものである。従って、オフアクシスカメラ22の光源には、ウェハ40表面のフォトレジスト(感光剤)が反応しない任意の波長の光を出射できるものを用いることができる。本実施例では、オフアクシスカメラ22の光源としては、例えばハロゲンランプが用いられる。そのため、オフアクシスカメラ22は、λ=590±60nmのハロゲンランプ光を照射することができる。オフアクシスカメラ22の撮像装置としては、例えば、CCD素子等の光電変換素子を用いることができる。本実施例では、オフアクシスカメラ22は、投影光学系12の側方、即ち露光光100の光軸100aから外れた位置であって、ウェハステージ16の上方に配置されている。本実施例では、オフアクシスカメラ22は、ウェハ40に形成されたウェハ基準マーク42を、投影光学系12を介することなく撮像することができる。オフアクシスカメラ22によって撮像された画像は、制御部18に出力される。
【0027】
ナノインプリント装置24は、ウェハ40の表面のフォトレジスト膜上にアラインメントマーク44を作成する装置である。ナノインプリント装置24は、上記のオフアクシスカメラ22の側方に固定されている。ナノインプリント装置24は、図2に示すように、本体であるUV光照射部54と、そのUV光照射部54内に収容されている原版56とを備える。UV光照射部54は、UV光を出射する光源(図示省略)を内蔵しており、原版56にUV光を照射可能である。ナノインプリント装置24は、アラインメントマーク44を形成する際に、UV光照射部54の下端からウェハ40に向かって原版56を前進させ、その下端面をウェハ40の表面に当接させることができる。原版56の下端面にはパターン58が形成されている。図2に示すように、原版56の下端面をウェハ40の表面に当接させた状態で、UV光照射部54から原版56にUV光を照射することにより、原版56の下端面が当接するフォトレジストに原版56のパターン58を転写することができる。これにより、ウェハ40の表面のフォトレジスト膜上に、パターン58に応じた形状のアラインメントマーク44が形成されることとなる。ナノインプリント装置24では、原版56の前進及び収容、UV光照射部54から原版56へのUV光の照射等の各動作は、制御部18からの信号に応じて行われる。
【0028】
上記のナノインプリント装置24によるアラインメントマーク44の形成は、オフアクシスカメラ22がウェハ基準マーク42に位置合わせされた位置において、ウェハステージ16を移動させることなく行われる(図1、図2参照)。ナノインプリント装置24は、オフアクシスカメラ22に固定されているため、ナノインプリント装置24とオフアクシスカメラ22との位置関係は予め決まっており、既知である。このため、オフアクシスカメラ22がウェハ基準マーク42を撮像した位置でアライメントマーク44を形成すると、ウェハ基準マーク42とアライメントマーク44の位置関係はオフアクシスカメラ22とナノインプリント装置24との位置関係と同一となる。これによって、本実施例では、オフアクシスカメラ22に対してアライメントマーク44を位置合わせする工程を省略することができる。
【0029】
また、本実施例では、ナノインプリント装置24によって形成されるアラインメントマーク44は、ウェハ40の中心部から見て、ウェハ基準マーク42より径方向外側であって、かつ、露光光100(図5参照)によってパターンが投影されない部分に形成される。そのため、オンアクシスカメラ20の露光光によってアラインメントマーク44の周囲のフォトレジストが露光されても、その後に行われる、露光光100によるマスク30のパターンの投影に影響を及ぼすことはない。なお、アラインメントマーク44は、ウェハ40の表面のフォトレジスト膜上に形成される。そのため、ウェハ40の外周部(露光光100によってパターンが投影されない部分)に予めアライメントマークを形成しておき、そのウェハ40の表面にフォトレジスト膜を形成した場合と比較して、オンアクシスカメラ20によってアライメントマークを読み取り可能になるまでの時間が短く済む。すなわち、フォトレジスト膜の下方にアライメントマークを形成した場合、そのアライメントマークを撮影するためには、そのアライメントマーク上方のフォトレジスト膜を感光しなければならない。このため、アライメントマークが撮影可能となるまでにある程度の時間を要する。しかしながら、本実施例では、アライメントマーク44がフォトレジスト膜の表面に形成されているため、このような時間を要しない。
【0030】
制御部18は、図示しないCPUや記憶部を有しており、露光装置2の動作を制御する。制御部18には、光源10、位置調整装置26、マスク位置調整機構34、オンアクシスカメラ20、オフアクシスカメラ22、ナノインプリント装置24が接続されている。なお、図1〜図5において、制御部18と上記の各装置との配線の図示は省略している。制御部18は、位置調整装置26からの駆動情報、オンアクシスカメラ20及びオフアクシスカメラ22からの画像データが入力される。制御部18は、入力される各種情報に基づいて、光源10、位置調整装置26、マスク位置調整機構34、ナノインプリント装置24等を制御する。
【0031】
以上、本実施例の露光装置2の構成について詳述した。以下に、本実施例の露光装置2において、マスク30とウェハ40の位置を調整し、マスク30のパターンをウェハ40に投影する方法の一例を図1〜図5を参照して以下に説明する。
【0032】
図1に示すように、まず、制御部18は、オフアクシスカメラ22でウェハ40の表面を撮影しながら、ウェハ基準マーク42がオフアクシスカメラ22で撮影される画像内の所定の位置(例えば、画像の中心)となるように位置調整装置26を駆動し、ウェハステージ16の位置決めを行う。
【0033】
次いで、図2に示すように、制御部18は、オフアクシスカメラ22に対してウェハ基準マーク42を位置合わせした位置からウェハステージ16を移動させることなく、ナノインプリント装置24を起動させる。ナノインプリント装置24は、原版56をウェハ40に向けて前進させ、原版56の下端面をウェハ40の表面に当接させる。次いで、UV光照射部54は原版56に向けてUV光を照射する。このUV光の照射により、原版56の下端面に形成されたパターン58に対応するアラインメントマーク44が、ウェハ40の中心部から見て、ウェハ基準マーク42より径方向外側であって、かつ、露光光100(図5参照)によってパターンが投影されない外周部分に形成される。また、アラインメントマーク44は、ウェハ40の表面のフォトレジスト膜上に形成される。ナノインプリント装置24はオフアクシスカメラ22に固定されているため、ウェハ基準マーク42とアラインメントマーク44の位置関係は、オフアクシスカメラ22とナノインプリント装置24の位置関係と同一となる。
【0034】
次いで、図3に示すように、制御部18は、オンアクシスカメラ20でウェハ40の表面を撮影しながら、オンアクシスカメラ20で撮影される画像内でマスクステージ基準マーク15とアラインメントマーク44が所定の位置関係(例えば、両マークが重なり合う位置関係)となるように位置調整装置26を駆動し、ウェハステージ16の位置決めを行う。制御部18は、オンアクシスカメラ20で撮影される画像内でマスクステージ基準マーク15とアラインメントマーク44が所定の位置関係となったときのウェハステージ16の位置情報(すなわち、マスクステージ14に対するウェハステージ16の位置情報)を算出して記憶する。この位置情報は、位置調整装置26から入力される駆動情報に基づいて算出される。
【0035】
次いで、図4に示すように、制御部18は、マスク調整機構34を起動させる。マスク調整機構34は、アーム(図示省略)を用いてマスク30をマスクステージ14上に載置する。制御部18は、オンアクシスカメラ20で、載置されたマスク30のマスク基準マーク32と、マスクステージ14のマスクステージ基準マーク15とを同時に撮像する。オンアクシスカメラ20によって撮像された画像データは、制御部18に入力される。制御部18は、オンアクシスカメラ20から入力された画像データに基づいて、画像データ内のマスク基準マーク32とマスクステージ基準マーク15の位置が一致するようにマスク調整機構34を駆動する。制御部18は、マスク基準マーク32とマスクステージ基準マーク15の位置が一致する位置で、マスク調整機構34の駆動を停止する。これにより、マスク30とマスクステージ14とが位置合わせされたこととなる。
【0036】
次いで、図5に示すように、制御部18は、位置調整装置26に内蔵されているモータの回転角度を監視しながら、所定の位置にウェハ40が位置するように位置調整装置26を駆動する。ここでいう所定の位置とは、露光光を照射してマスクに形成されたパターンを投影するためのウェハ40の位置をいう。投影のためのウェハ40の所定の位置は、あらかじめ制御部18にウェハ基準マーク42との相対位置として記憶されている。ここで、ウェハ基準マーク42とアライメントマーク44の位置関係は取得済みであり、アライメントマーク44とマスクステージ基準マーク15の位置関係も取得済みである。このため、ウェハ基準マーク42とマスクステージ基準マーク15の位置関係を特定することができ、この特定した位置関係に基づいて、所望の位置にマスク30のパターンを投影することができる。なお、本実施例のウェハ40には、パターンを投影するための複数の領域が備わっており、制御部18には、それぞれの領域の相対位置が記憶されている。制御部18は、特定されるウェハ基準マーク42とマスクステージ基準マーク15の位置関係に基づいて、各領域についてウェハステージ16を位置決めする位置を算出する。そして、制御部18は、その算出した位置にウェハステージ16を位置決めすることで、マスク30のパターンを投影する所望の位置に、パターンを投影する露光光100の焦点が合うようにウェハ40を位置決めすることができる。
【0037】
次いで、制御部18は光源10を駆動し、露光光100を発生させる。これによって、露光光100は反射ミラー11a、11bを介して、マスクステージ14に支持されたマスク30に照射される。露光光100がマスク30に照射されることにより、マスク30のパターンが投影光学系12に向けて出射される。出射されたパターンは、投影光学系12を透過して縮小されてウェハ40に照射される。これにより、マスク30のパターンがウェハ40に投影される。さらに、制御部18は位置調整装置26を駆動して、ウェハ40の位置決めと光源10の駆動を繰り返すことで、所望のパターンが投影されたウェハ40が得られる。
【0038】
上記の説明から明らかなように、本実施例のナノインプリント装置24が請求項に記載のマーク形成装置に対応する。また、本実施例のフォトレジスト膜が請求項に記載の感光性膜に対応する。
【0039】
本実施例の露光装置2によると、ウェハ40上に形成したアラインメントマーク44と、マスクステージ基準マーク15とをオンアクシスカメラ20によって撮像することで、マスクステージ14とウェハステージ16の位置合わせを行う。そのため、アラインメントマーク44をオンアクシスカメラ20で撮像可能な位置まで移動させる際のウェハステージ16の移動距離が、従来の露光装置における、ウェハステージに設けられたウェハステージ基準マークをオンアクシスカメラで撮像可能な位置まで移動させる際のウェハステージの移動距離に比べて短く済む。また、マスクステージ14とウェハステージ16の位置合わせ後にウェハ40を所望のパターン投影位置に移動させる際のウェハステージ16の移動距離も短く済む。そのため、作業時間を短縮することができる。
【0040】
また、本実施例の露光装置2によると、ナノインプリント装置24は、オフアクシスカメラ22に固定されているため、オフアクシスカメラ22の撮像位置(ウェハ基準マーク42の位置)と、ナノインプリント装置24によって形成されるアラインメントマーク44の形成位置との位置関係は予め決まっており、既知である。そのため、ナノインプリント装置24で形成したアラインメントマーク44を改めてオフアクシスカメラ22で撮像して、オフアクシスカメラ22とアラインメントマーク44を位置合わせする必要がない。作業時間を短縮することができる。
【0041】
上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施例の露光装置2は、マスク30を固定してマスク30のパターンをウェハ40に露光する投影露光装置(ステッパ)であるが、露光装置2はステッパには限られない。従って、例えば、マスクステージ14とウェハステージ16を固定してマスク30のパターンをウェハ40に露光する投影露光装置(アライナー)としてもよい。また、マスクステージ14とウェハステージ16を互いに同期移動させながらマスク30のパターンをウェハ40に露光する走査型の投影露光装置(スキャナ)としてもよい。
【0042】
(2)上記の実施例では、投影光学系12は、倍率が固定の複数のレンズ50で構成されているが、投影光学系12は、倍率を変更可能な複数のレンズ50で構成してもよい。また、単一のレンズ50で構成してもよい。
【0043】
(3)上記の実施例では、マスクステージ14は固定されているが、マスクステージ14は、モータ等の駆動装置によって、垂直方向、水平方向、及び回転軸方向(Z軸周り)に駆動可能に構成されていてもよい。
【0044】
(4)上記の実施例では、オフアクシスカメラ22とウェハ基準マーク42を位置合わせした位置でアライメントマーク44を形成することで、オフアクシスカメラ22とアライメントマーク44を位置合わせする工程を省略したが、本願の技術はこのような形態に限られない。ウェハ40の外周部であればどのような位置にアライメントマーク44を形成してもよい。この場合には、オフアクシスカメラ22とアライメントマーク44を位置合わせし、オフアクシスカメラ22に対するアライメントマーク44の位置情報を取得する。これによって、ウェハ基準マーク42とアライメントマーク44の位置関係を特定することができる。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0046】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
2:露光装置、10:光源、11a、11b:反射ミラー、12:投影光学系、14:マスクステージ、15:マスクステージ基準マーク、16:ウェハステージ、18:制御部、20:オンアクシスカメラ、22:オフアクシスカメラ、24:ナノインプリント装置、26:位置調整装置、30:マスク、32:マスク基準マーク、34:マスク調整機構、40:ウェハ、42:ウェハ基準マーク、44:アラインメントマーク、50:レンズ、52:マスクステージ基準マーク、54:UV光照射部、56:原版、58:パターン、100:露光光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたマスクに露光光を照射することにより、前記パターンを投影光学系を介して表面に感光性膜が形成されているウェハに投影する露光装置であって、
マスクステージと、ウェハステージと、マーク形成装置と、オンアクシスカメラと、位置調整装置と、制御装置と、を備え、
前記マスクステージは、マスクステージ基準マークを備えると共に前記マスクを支持し、
前記ウェハステージは、前記マスクステージに対して露光光の光軸方向に間隔をあけて配置され、前記ウェハを支持し、
前記マーク形成装置は、前記ウェハステージに支持された前記ウェハの表面のうち半導体装置が形成されない外周部分にアラインメントマークを形成し、
前記オンアクシスカメラは、前記感光性膜が反応する光を用いて、前記マスクステージ基準マークと前記アラインメントマークとを前記投影光学系を介して同時に撮像可能となっており、
前記位置調整装置は、前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置を調整可能となっており、
前記制御装置は、前記オンアクシスカメラによって前記マスクステージ基準マークと前記アラインメントマークを撮像しながら前記位置調整装置により前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置を調整することで、前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置合わせ情報を取得する、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記感光性膜が反応しない光を用いて、前記投影光学系を介することなく前記ウェハを撮像可能なオフアクシスカメラをさらに備えており、
前記ウェハは、半導体装置が形成される内周部分にウェハ基準マークを備えており、
前記マーク形成装置は、前記オフアクシスカメラに固定されており、
前記マーク形成装置は、前記オフアクシスカメラが前記ウェハ基準マークに位置合わせされたときにアラインメントマークを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御装置は、さらに、
前記オフアクシスカメラによって前記ウェハ基準マークを撮像しながら前記位置調整装置により前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置を調整することで、前記オフアクシスカメラに対する前記ウェハ基準マークの位置合わせを行うと共に、その位置合わせをした位置で前記ウェハの表面に前記アライメントマークを形成し、
前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置合わせ情報と、前記オフアクシスカメラに対する前記マーク形成装置の位置情報に基づいて、前記位置調整装置により前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置を調整して前記マスクのパターンを前記ウェハに投影する、
ことを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
パターンが形成されたマスクに露光光を照射することにより前記パターンを投影光学系を介して表面に感光性膜が形成されているウェハ上に投影する露光方法であって、
ウェハステージに支持された前記ウェハの表面のうち半導体装置が形成されない外周部分にアラインメントマークを形成する工程と、
オンアクシスカメラによってマスクステージのマスクステージ基準マークと前記アラインメントマークを撮像しながら前記マスクステージに対する前記ウェハステージの位置を調整することで前記マスクステージと前記ウェハステージの位置合わせを行う工程と、
を備えることを特徴とする露光方法。
【請求項5】
請求項4に記載の露光方法による露光工程を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108912(P2011−108912A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263649(P2009−263649)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】