説明

露光装置およびデバイス製造方法

【課題】製造が容易な投影光学系を有する露光装置を提供する。
【解決手段】原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置において、前記投影光学系は、ミラーアセンブリを含み、前記ミラーアセンブリは、前記投影光学系の光軸を折り曲げる第1反射面を有する第1ミラー部材と、前記光軸を折り曲げる第2反射面を有する第2ミラー部材と、前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材を支持する支持機構とを含み、前記支持機構が位置決めされることによって前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材の相互の位置関係が維持されたまま前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材が位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置、および、それを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造に使用される露光装置の投影光学系は、物体面から像面に向かって、反射ミラー、凹面鏡、凸面鏡、凹面鏡、反射ミラーを順に有する。2つの反射ミラーは、投影光学系の光軸を折り曲げるために使用される。フラットパネルディスプレイを製造するための露光装置では、ディスプレイの大型化や製造コストの削減などの要求に応えて露光領域の拡大が進んでいる。露光領域を拡大するためには、投影光学系を構成する光学素子を大型化する必要があり、光学素子の大型化は、それを製造するための製造装置の大型化を招く。
【0003】
従来は、投影光学系に組み込まれる2つの折り曲げミラーは、それらの反射面が互いに90度をなす一体的な構造として製造されることが多かった。しかしながら、露光領域の拡大に対する要求は、このような一体的な構造を有する2つの折り曲げミラーの製造を困難にしてきた。
【0004】
特許文献1には、2つの別個の反射ミラーを折り曲げミラーとして有するミラー光学系が開示されている。しかしながら、特許文献1には、光軸を折り曲げるための2つの反射ミラーがどのような支持機構によって支持されるかに関して開示も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3445021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造が容易な投影光学系を有する露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置に係り、前記露光装置において、前記投影光学系は、ミラーアセンブリを含み、前記ミラーアセンブリは、前記投影光学系の光軸を折り曲げる第1反射面を有する第1ミラー部材と、前記光軸を折り曲げる第2反射面を有する第2ミラー部材と、前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材を支持する支持機構とを含み、前記支持機構が位置決めされることによって前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材の相互の位置関係が維持されたまま前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材が位置決めされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造が容易な投影光学系を有する露光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態のミラーアセンブリおよびそれを支持するフレームを示す斜視図。
【図2】第1実施形態のミラーアセンブリから第1および第2ミラー部材を取り外した状態を示す斜視図。
【図3】軸ベースの構造(a)および支持部材の構造(b)を例示する図。
【図4】ベース部材に固定された軸ベースおよび支持部材を例示する図。
【図5】支持ベースの上部に配置された支持部材によって第1ミラー部材を支持する構造を例示する図。
【図6】支持ベースの下部に配置された支持部材の構成を例示する図。
【図7】上側に配置される第1ミラー部材の構造を例示する斜視図。
【図8】下側に配置される第2ミラー部材の構造を例示する斜視図。
【図9】ミラーアセンブリの製造方法を例示する図。
【図10】支持ベースの上部に配置された支持部材によって第1ミラー部材を支持する構造を例示する図。
【図11】本発明の一実施形態の露光装置の構成を示す図。
【図12】第1ミラー部材に対して支持点において摩擦力が加わったとき場合における第1ミラー部材の第1反射面の変形量を計算した結果を示す図。
【図13】第1ミラー部材の変形を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図11を参照しながら本発明の一実施形態の露光装置EXの構成を説明する。露光装置EXは、原版(レチクル)21を照明する照明光学系19と、原版21のパターンを基板(プレート)28に投影する投影光学系22とを備えている。原版21は、原版ステージによって投影光学系22の物体面に配置され、基板28は、基板ステージによって投影光学系22の像面に配置される。露光装置EXは、典型的には、走査露光装置として構成され、原版21および基板28が走査されながら原版21のパターンが基板28に転写される。露光装置EXは、原版21と基板28との位置関係を計測するためのアライメントスコープ20を備えうる。
【0011】
投影光学系22は、第1反射面を有する第1ミラー部材24および第2反射面を有する第2ミラー部材25を含むミラーアセンブリMAを含む。該第1反射面および該第2反射面は、それぞれ、投影光学系22の光軸を折り曲げるための反射面である。第1ミラー部材24は光軸を鉛直方向(重力方向)の上方から水平方向へと折り曲げている。第2ミラー部材25は光軸を水平方向から鉛直方向の下方へと折り曲げている。投影光学系22は、第1凹反射面26aと、凸反射面27と、第2凹反射面26bとを更に含みうる。ここで、第1凹反射面26aと第2凹反射面26bは、1つの凹反射ミラー26における互いに異なる領域に設けられてもよい。投影光学系22の物体面と像面との間には、該物体面から該像面に向って、第1ミラー部材24の第1反射面、第1凹反射面26a、凸反射面27、第2凹反射面26b、第2ミラー部材25の第2反射面が順に配置されている。投影光学系22の物体面と第1ミラー部材24との間には、平行平板ガラス等の透過型光学素子23aが配置されうる。第2ミラー部材25と投影光学系22の像面との間には、平行平板ガラス等の透過型光学素子23bが配置されうる。
【0012】
図1および図2を参照しながらミラーアセンブリMAの構成例を説明する。ミラーアセンブリMAは、投影光学系22の光軸を折り曲げる第1反射面24aを有する第1ミラー部材24と、該光軸を更に折り曲げる第2反射面25aを有する第2ミラー部材25と、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25を支持する支持機構Sとを含む。第1ミラー部材24および第2ミラー部材25は、例えば、ショット社から入手可能なゼロデュア又はオハラ社から入手可能なクリアセラム等のガラスセラミクス(線膨張係数約0.1ppm/℃)で構成されることが好ましい。ベース部材4は、例えば、スーパーインバー又は京セラから入手可能なコージライト等のゼロ膨張セラミクス(線膨張係数0.1ppm/℃)で構成されることが好ましい。
【0013】
支持機構Sが位置決めされることによって、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の相互の位置関係が維持されたまま第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が位置決めされる。ここで、位置決めとは、位置および姿勢の少なくとも一方を決定することをいう。支持機構Sは、例えば、Y軸に平行な直線上に配置された軸2および軸3を有し、軸2および軸3を介してフレーム1によって支持される。軸2は、例えば、ベース部材4に固定された軸ベース9に固定されうる。軸3は、ベース部材4に直接に固定されうる。
【0014】
フレーム1は、投影光学系22の鏡筒の一部を構成する。例えば、軸2および軸3がY軸に平行な軸の周りで回転駆動されることによって、または、軸2および軸3の回転角が調整されることによって、支持機構Sの回転角(姿勢)が調整されうる。支持機構Sは、ベース部材4と、ベース部材4に固定された支持部材5、6、10、30、31とを含む。第1ミラー部材24は、支持部材5、6、10によって支持され、第2ミラー部材25は、支持部材10、30、31によって支持される。なお、この例では、中央部に配置された支持部材10は、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25を支持するように構成されているが、支持部材10は、第1ミラー部材24を支持する部材と第2ミラー部材25を支持する部材とに分割されてもよい。
【0015】
図3および図4を参照しながら軸ベース9および支持部材10の構成例を説明する。中央部に配置された支持部材10は、上側に配置された第1ミラー部材24を支持する受け部413と、下側に配置された第2ミラー部材25を支持する受け部416とを有する。軸ベース9および支持部材10は、例えば、スーパーインバー又は京セラから入手可能なコージライト等のゼロ膨張セラミクス(線膨張係数0.1ppm/℃)で構成されることが好ましい。
【0016】
図5を参照しながら支持ベース4の上部に配置された支持部材5によって第1ミラー部材24を支持する構造を説明する。なお、同様に支持ベース4の上部に配置された支持部材6は、支持部材5と対称な構成を有しうる。第1ミラー部材24は、その反射面である第1反射面24aが属する面と第1反射面24aの裏側の第1裏面24bが属する面との間に第1支持点43、44を有し、第1支持点43、44において支持機構S(支持部材5、6)によって支持される。第1ミラー部材24は、第1裏面24bの側に第1窪み部24rを有し、第1支持点43、44は、第1窪み部24rに配置される。第1ミラー部材24の第1窪み部24rの側面、底面には、それぞれ取付部15a、15bが固定されている。第1窪み部24rへの取付部15a、15bの固定は、例えば、ネジ等による機械的な締結または接着剤でなされうる。接着剤は、投影光学系22を構成する光学素子のくもりを防止するため、低発ガスタイプのものが望ましい。
【0017】
第1ミラー部材24の第1支持点44(取付部15a)は、受け部411aによって支持される。受け部411aは、例えば、支持部材5に固定された台座12a、台座12aに固定された球面部材11aとを有し、球面部材11aの球面によって第1ミラー部材24の第1支持点44(取付部15a)を支持する。受け部411aは、第1ミラー部材24の第1反射面24aに平行な方向Cにおける第1ミラー部材24の位置を決定する。
【0018】
第1ミラー部材24の第1支持点43(取付部15b)は、受け部411bによって支持される。受け部411bは、例えば、支持部材5に固定された台座12b、台座12bに固定された球面部材11bとを有し、球面部材11bの球面によって第1ミラー部材24の第1支持点43(取付部15b)を支持する。受け部411bは、第1ミラー部材24の第1反射面24aに垂直な方向(厚さ方向)Dにおける第1ミラー部材24の位置を決定する。方向Dにおける受け部411bの位置(球面部材11bの球面の位置)は、調整機構39によって調整することができる。調整機構39は、例えば、支持部材5に形成された雌ねじ14とそれにねじ込まれた雄ねじ13とを含み、雄ねじ13に台座12bが結合されている。雄ねじ13を回転させることによって、方向Dにおける受け部411bの位置(球面部材11bの球面の位置)を調整し、これによって方向Dにおける第1ミラー部材24の第1反射面24aの位置を調整することができる。支持部材5には、雄ねじ13を回転させるためのアクセス部5rが設けられている。方向Dにおける第1ミラー部材24の第1反射面24aの位置を調整することによって、X軸に平行な軸の周りにおける第1反射面24aの角度を調整することができる。
【0019】
支持部材5、6、台座12a、12b、球面部材11a、11b、調整機構39、取付部15a、15bは、例えば、スーパーインバー又は京セラから入手可能なコージライト等のゼロ膨張セラミクス(線膨張係数0.1ppm/℃)で構成されることが好ましい。
【0020】
図6および図8を参照しながら支持ベース4の下部に配置された支持部材31によって第2ミラー部材25を支持する構造を説明する。なお、同様に支持ベース4の下部に配置される支持部材30は、支持部材31と対称な構成を有しうる。第2ミラー部材25は、第1ミラー部材24と同様に、その反射面である第2反射面25aが属する面と第2反射面25aの裏側の第2裏面25bが属する面との間に第2支持点を有し、該第2支持点には取付部15が固定されている。第2ミラー部材25は、該第2支持点において支持機構S(より具体的には、支持部材30、31、10)によって支持されている。第2ミラー部材25は、第2反射面25aの側に第2窪み部25rを有し、取付部15が固定された第2支持点は、第2窪み部25rに配置される。第2ミラー部材25の第2窪み部25rのうち2つの側面および底面には、取付部15が固定されている。
【0021】
第2ミラー部材25の第2窪み部25r内の第2支持点に固定された取付部15は、受け部414cによって支持される。受け部414cは、例えば、支持部材31に固定された台座12c、台座12cに固定された球面部材11cとを有し、球面部材11cの球面によって第2ミラー部材25の取付部15(第2支持点)を支持する。支持部材31、30、台座12c、球面部材11c、取付部15は、例えば、スーパーインバー又は京セラから入手可能なコージライト等のゼロ膨張セラミクス(線膨張係数0.1ppm/℃)で構成されることが好ましい。
【0022】
図7には、上側に配置される第1ミラー部材24の構造が例示されている。第1ミラー部材24は、その裏面である第1裏面24bの側に、2つの第1窪み部24rを有し、それらの側面、底面にそれぞれ取付部15a、15bが固定されている。即ち、第1ミラー部材24は、第1反射面24aが属する面と第1裏面24bが属する面との間に4個(2個の取付部15aと2個の取付部15b)を有する。更に、第1ミラー部材24は、第1裏面24bに1つの取付部15cを有し、取付部15cは、支持部材10に固定された受け部413bによって支持される。つまり、第1ミラー部材24は、合計で5個の取付部を有し、該5個の取付部を介して支持機構Sによって支持される。
【0023】
図8には、下側に配置される第2ミラー部材25の構造が例示されている。第2ミラー部材25は、その表面である第1表面25aの側に、3つの第2窪み部25rを有する。3つの第2窪み部25rのうち第2ミラー部材25が支持機構Sによって支持された状態において上側になる2つの第2窪み部25rには、その側面および底面のそれぞれに取付部15が固定される。3つの第2窪み部25rのうち第2ミラー部材25が支持機構Sによって支持された状態において下側になる1つの第2窪み部25rには、その底面に1つの取付部15が固定されうる。つまり、第2ミラー部材25は、合計で5個の取付部15を有し、該5個の取付部15を介して支持機構Sによって支持される。
【0024】
図9を参照しながらミラーアセンブリMAの製造方法を説明する。ミラーアセンブリMAは、支持機構Sによって第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持された状態で、以下の(目標1)および(目標2)を満足するように製造される。
【0025】
(目標1)第1ミラー部材24の第1反射面24aと第2ミラー部材25の第2反射面25aとがなす角度を目標角度(例えば90度)の許容範囲内とする。
【0026】
(目標2)第1反射面24aおよび第2反射面25aの平面度を目標平面度の許容範囲内とする。
【0027】
ここで、目標1を達成するために、ステップS91〜S93が実行されうる。具体的には、ステップS91において、第1ミラー部材24の第1反射面24aおよび第2ミラー部材25の第2反射面25aが研磨される。次いで、ステップS92において、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sに搭載される。次いで、ステップS93において、調整機構39(図5参照)を用いて、下側の第2ミラー部材25に対して上側の第2ミラー部材24の角度が調整される。
【0028】
目標2を達成するために、ステップS94〜S98が実行されうる。具体的には、ステップS94において、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sによって支持された状態で第1ミラー部材24の第1反射面24aおよび第2ミラー部材25の第2反射面25aの平面度が干渉計等の計測器17を用いて計測される。次いで、ステップS95において、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sから降ろされる。次いで、ステップS96において、ステップS94における計測によって得られた結果に基づいて、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sによって支持された状態における第1反射面24aおよび第2反射面25aの凸部が削られる。次いで、ステップS97において、第1反射面24aおよび第2反射面25aに膜が蒸着され、ステップS98において、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sに再搭載される。第1ミラー部材24および第2ミラー部材25はその重量を支持機構Sが支えていることで固定されて位置決めされている。そのため、第1第1ミラー部材24および第2ミラー部材25は支持機構Sから降ろして、再搭載することが容易になっている。
【0029】
ここで、ステップS95において第1ミラー部材24および第2ミラー部材25を支持機構Sから降ろす前とステップS98においてそれらを支持機構Sに再登載した後との間において第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の変形に再現性が必要である。第1ミラー部材24および第2ミラー部材25が支持機構Sから降ろす前とそれらを支持機構Sに再登載した後とでは、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25に加わる摩擦力が異なりうる。
【0030】
図5を参照しながら、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25にかかる摩擦力の変化に対して第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の変形を鈍感にするために有利な構成を説明する。方向Dにおける支持点43と第1ミラー部材24の第1裏面24bとの間の距離t2は、第1ミラー部材24の厚さt1の30%〜70%であることが好ましく、図5に示すように50%であることが更に好ましい。t2がt1の30%〜70%の範囲内であると、目標とする平坦性が得られている。同様に、第2ミラー部材25のその面方向の支持点と第2ミラー部材25の第2裏面25bとの間の距離は、第2ミラー部材25の厚さの30%〜70%であることが好ましく、50%であることが更に好ましい。このような条件下では、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25を支持機構Sに搭載する度に変化しうる第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の前記支持点に加わる摩擦力の変化に対し第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の変形が鈍感になる。
【0031】
図12は、第1ミラー部材24に対して支持点43において摩擦力が加わったとき場合における第1ミラー部材24の第1反射面24aの変形量を計算した結果である。横軸は、方向Dにおける支持点43と第1ミラー部材24の第1裏面24bとの間の距離t2であり、縦軸は、第1反射面24aの変形量である。ここでは、第1ミラー部材24の厚さt1を150mmとしている。図12から明らかなように、t2がt1の50%であるときに面変形量が最も小さくなる。
【0032】
この理由は、次のように説明することができる。t2>t1/2の条件では、図7において矢印Fのように取付部15b(支持点43)に対して摩擦力が発生した場合は、第1ミラー部材24は、図13(A)のような変形を受ける。一方、t2<t1/2の条件では、図7において矢印Fのように取付部15b(支持点43)に対して摩擦力が発生した場合は、第1ミラー部材24は、図13(B)のような変形を受ける。t2=t1/2の条件では、図13(A)に示す変形と図13(B)に示す変形の中間の変形になり、変形量は極小になる。
【0033】
上記の実施形態では、第1ミラー部材24の5箇所の支持点のうちの上部側の4箇所が第1窪み部(つまり、第1反射面24aと第1裏面24bとの間)に配置され、下部側の1箇所が第1ミラー部材24の裏面に配置されている。しかしながら、当該5箇所の支持点の全てが第1反射面24aと第1裏面24bとの間に配置されてもよい。
【0034】
次に、図7および図8を参照しながら第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の形状に関して説明する。図7に例示されるように、第1ミラー部材24は、支持機構Sによって支持された状態で下側に位置する角部分61に切欠き部を有することが好ましい。下側の角部分61は、受け部によって支持されないので、切欠き部を設けることによって、下側の角部分61の重量を低減することが第1ミラー部材24の撓みの防止に有効である。第2ミラー部材25は、支持機構Sによって支持された状態で上側に位置する角部分62に切欠き部を有することが好ましい。上側の角部分62は、受け部によって支持されないので、切欠き部を設けることによって、上側の角部分62の重量を低減することが第2ミラー部材25の撓みの防止に有効である。切欠き部は、図7に例示するように1又は複数の段差を有しても良いし、傾斜面を有しても良い。
【0035】
上記の実施形態において、ミラーアセンブリMAの構成要素を全てが低熱膨張材で構成されることが好ましいが、ミラーアセンブリMAが配置される環境の温度が精密に制御される場合には、他の材料の利用を考慮することもできる。
【0036】
図10を参照しながら第1ミラー部材24および第2ミラー部材25にかかる摩擦力の変化に対して第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の変形を鈍感にするためにために有利な他の構成を説明する。方向Dにおける支持点44と第1ミラー部材24の第1裏面24bとの間の距離t2は、第1ミラー部材24の厚さt1の30%〜70%であることが好ましく、図10に示すように50%であることが更に好ましい。同様に、第2ミラー部材25のその面方向の支持点と第2ミラー部材25の第2裏面25bとの間の距離は、第2ミラー部材25の厚さの30%〜70%であることが好ましく、50%であることが更に好ましい。このような条件下では、第1ミラー部材24および第2ミラー部材25を支持機構Sに搭載する度に変化しうる第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の前記支持点に加わる摩擦力の変化に対し第1ミラー部材24および第2ミラー部材25の変形が鈍感になる。
【0037】
本発明の好適な実施形態のデバイス製造方法は、例えば、半導体デバイス、液晶デバイス等のデバイスの製造に好適である。前記方法は、感光剤が塗布された基板を、上記の露光装置を用いて露光する工程と、前記露光された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、前記デバイス製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系は、ミラーアセンブリを含み、前記ミラーアセンブリは、
前記投影光学系の光軸を折り曲げる第1反射面を有する第1ミラー部材と、
前記光軸を折り曲げる第2反射面を有する第2ミラー部材と、
前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材を支持する支持機構とを含み、
前記支持機構が位置決めされることによって前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材の相互の位置関係が維持されたまま前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材が位置決めされる、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記投影光学系は、第1凹反射面と、凸反射面と、第2凹反射面とを更に含み、
前記投影光学系の物体面と像面との間に、前記物体面から前記像面に向って、前記第1反射面、前記第1凹反射面、前記凸反射面、前記第2凹反射面、前記第2反射面が順に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1ミラー部材は、前記第1反射面が属する面と前記第1反射面の裏側の第1裏面が属する面との間に第1支持点を有し、前記第1支持点において前記支持機構によって支持され、
前記第2ミラー部材は、前記第2反射面が属する面と前記第2反射面の裏側の第2裏面が属する面との間に第2支持点を有し、前記第2支持点において前記支持機構によって支持されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第1ミラー部材は、前記第1裏面の側に第1窪み部を有し、前記第1支持点は、前記第1窪み部に配置され、
前記第2ミラー部材は、前記第2反射面の側に第2窪み部を有し、前記第2支持点は、前記第2窪み部に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1支持点の数が4個であり、前記第1ミラー部材は、前記第1裏面であって4個の前記第1支持点よりも低い位置に支持点を更に有する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第2支持点の数が5個である、
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系は、ミラーアセンブリを含み、前記ミラーアセンブリは、
前記投影光学系の光軸を鉛直方向の上方から水平方向へ折り曲げる第1反射面を有する第1ミラー部材と、
前記光軸を水平方向から鉛直方向の下方へ折り曲げる第2反射面を有する第2ミラー部材と、
前記第1ミラー部材および前記第2ミラー部材を支持する支持機構とを含み、
前記第1ミラー部材と前記第2ミラー部材は、それぞれの重量を前記支持機構が支持することにより前記支持機構に対して位置決めされている
ことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記支持機構は前記第1反射面の裏面の側および前記第2ミラー部材の前記第2反射面の側を支持していることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
デバイスを製造するデバイス製造方法であって、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
該基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−277050(P2010−277050A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132427(P2009−132427)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】