説明

露光装置および露光方法

【課題】ワークの交換時間を短くして、装置の利用効率を上げること。
【解決手段】ワークトレイ6A〜6Dを複数用意し、ワークトレイ6A〜6Dを基台5に対して着脱可能とし、基台5に、ワークトレイ6A〜6Dの内の一つを装着してワークステージ4を構成する。ワークトレイ6A〜6Dを基台5から分離し、例えばワークトレイ6Aに複数のワークWを載せて基台5上に置き、ワークWに対して一枚毎にアライメントを行い、光照射部1からの光をマスクMを介してワークWに対して照射し、逐次露光処理を行う。ワークトレイ6AのワークWの露光処理をしている間に、他のワークトレイ6B〜6D上に未処理のワークWを載せる作業を行い、上記露光処理が終わると、ワークトレイ6Aを取り外し、未処理のワークが載せられたワークトレイ6B〜6Dを基台5に載せて露光処理を行う。また、同時にワークトレイ6Aから露光済みのワークWを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射部から出射する光を、パターンを形成したマスクを介してワークステージ上のワークに対して照射する露光装置および露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、液晶基板、マイクロマシン等のミクロサイズの加工が必要な様々な電気部品等の製造においては、ワーク上に各種電子的素子等を形成するため、パターンを形成したマスクを介した光をワーク上に照射して、ワーク上にマスクパターンを露光する工程が行われる。
図8は、従来の露光装置の構成例を示す斜視図である。
露光装置は、露光光を出射する光照射部1、露光を行うパターンが形成されたマスクMを保持するマスクステージ2、露光処理を行うワークを保持するワークステージ4、マスクMに形成されたパターンをワークステージ4上のワークWに投影する投影レンズ3、露光処理を行うワークWをワークステージ4に搬入するワーク搬入機構20、露光処理を終えたワークWをワークステージ4から搬出するワーク搬出機構30などから構成される。
なお、露光装置は、マスクとワークの位置合せを行うためのアライメント機構や上記した各構成部位の動作を制御する制御部なども備えるが省略している。
【0003】
光照射部1は、内部に、露光光を放射する光源ランプ、ランプからの光を反射する反射ミラーなどを備えている。
ワークステージ4は、マスクMに形成されているパターンを転写するワークWを保持する。ワークWは、プリント基板、ガラス基板、ウエハなど様々な種類がある。図8においては、ワークWとして円形のウエハを示している。
ワークステージ4には、ワークステージ移動機構7が取り付けられている。ワークステージ移動機構7は、ワークステージ4を、ワークステージ4の平面内のXY方向、ワークステージ面に垂直なZ方向(上下方向)、ワークステージ面に垂直な軸を中心としたθ回転方向に移動させる。
なお、露光装置の中には投影レンズを備えず、マスクとワークとを密着または近接させてマスクパターンをワーク上に転写する露光装置もある。
【0004】
図8を用いて、この露光装置によるワークの露光手順を説明する。
露光処理を行うワーク(ウエハ)Wを複数収納したワークキャリア22(ウエハ・カセット)から、ワーク搬入機構20であるワークハンドラ(搬送ロボット)21が、ワークWを取り出す。
ワークハンドラ21は、取り出したワークWをワークステージ4まで搬送し、ステージ上に置く。ワークステージ4の表面には真空吸着孔が形成されており、ワークWを吸着保持する。なお、ワークWの表面には露光光により反応するレジストが塗布されている。
マスクMとワークWの位置合せを行った後、光照射部1から露光光が出射する。出射した露光光は、マスクMと投影レンズ3を介してワークWに照射される。マスクMに形成されたマスクパターンは投影レンズ3によりワークW上に投影され露光される。
露光する時間(ワークに露光光を照射する時間)はあらかじめ設定されている。露光時間が経過すると光照射部1は露光光の出射を停止し露光処理が終わる。
露光処理が終わると、ワーク搬出機構30であるワークハンドラ(搬送ロボット)31が、ワークステージ4からワークWを取り出す。ワークハンドラ31は、取り出したワークWを、露光処理を終えたワークを収納するワークキャリア(ウエハ・カセット)32にまで搬送し収容する。
露光装置は、ワークキャリア22から未処理のワークWがなくなるまで、上記の動作を繰り返す。このような露光装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3152133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークの露光処理に必要なトータルの時間(総露光処理時間)は、単に露光光を照射している時間(露光時間)だけでなく、処理済のワークをワークステージから搬出し、未処理のワークをワークステージに撒入する時間(ワークの交換時間)が含まれる。
例として4枚のワークを露光処理する場合を想定する。1枚のワークの露光時間を10秒、ワークステージにおけるワークの交換時間を5秒とする。なお、マスクとワークの位置合せの時間は無視して考える。
図9にこの場合の総露光処理時間を示す。同図に示すように65秒かかる。このうちワークの交換時間は25秒ある。この例の場合では、ワークの交換時間は総露光処理時間の4割近くを占める。ワークの交換時間はいわゆる露光を行っていない時間であり、露光装置を効率よく使用するためには、このワーク交換の時間をできるだけ短縮することが望まれている。
【0007】
ワークの交換時間を短縮するため、例えば、ワークステージを2台用意し、露光処理とワークの搬送を交互に行うことが考えられる。
すなわち、一方のワークステージ上のワークに対して露光処理を行っている間に、ワークキャリアからワークを搬入して他方のワークステージ上に載せ、露光処理が終わると、他方のワークステージ上のワークに対して露光処理を行い、その間に、一方のワークステージ上の露光済みのワークを取り出してワークキャリアに搬出するとともに、未露光のワークを一方のワークステージ上に搬入する。
しかし、上記のようにワークステージを2台用意するのは装置構成が複雑になるとともに、装置が高価となり、コストアップになる。
なお、露光処理とワークの搬入、搬出を同時に同一のワークステージ上で行うことは望ましくない。これは、ワークのアライメントや露光処理中に、該ワークが載っているワークステージに他のワークの搬入、搬出行うと、アライメントや露光処理中のワークが動いてしまうなど、露光に悪影響を与える可能性が高いためである。
【0008】
以上のように、従来においては、総露光処理時間中に占めるワークの交換時間の割合が高く、装置の利用効率が低かった。また、ワークの交換時間を短縮するために、2台のワークステージを用意することも考えられるが、装置が複雑で高価になるといった問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点解決するものであって、本発明の目的は、比較的安価な装置構成で、ワークの交換時間を短くして、装置の利用効率を上げることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明においては、ワークステージを、複数のワークを保持するワークトレイと、ワークトレイを上に載せて支持する基台とを備えた構造にし、ワークトレイと基台とを別体で構成する。ワークトレイは複数用意され、基台に対して着脱(分離装着)可能とし、複数のワークトレイの内の任意一つが基台上に装着されたとき、ワークトレイと基台とで、ワークステージが構成されるようにする。
そして、ワークトレイを基台から分離し、該ワークトレイに複数のワークを載せ、複数のワークが載ったワークトレイを基台上に置いて、基台(すなわちワークステージ)を移動させながら、ワークステージ上に載せられた複数のワークに対して、一枚毎にアライメントを行い、光照射部から出射する光をマスクを介してワークに照射し、各ワークに対して逐次露光処理を行う。
複数のワークトレイの内の一つのワークトレイを基台上に置いて、未処理のワークに対して露光処理をしている間に、他のワークトレイ上に複数の未処理のワークを載せる作業を行い、上記露光処理が終わると、露光処理されたワークが載せられたワークトレイを基台から取り外す。
そして、上記未処理のワークが載せられたワークトレイを基台上に載せて、上記のように露光処理を行う。また、これと同時に、基台から取り外したワークトレイから露光済みのワークを回収する。
すなわち、本発明においては、次のようにして前記課題を解決する。
(1)ワークステージ上に載せられた複数のワークに対して、一枚毎にアライメントを行い、光照射部から出射する光をパターンを形成したマスクを介してワークステージ上のワークに対して照射し、各ワークに対して逐次露光処理を行う露光装置において、上記ワークステージを、基台と、該基台上に着脱可能な、複数のワークを保持するワークトレイとから構成し、該基台上に該ワークトレイが設置されたとき、基台とワークトレイとで上記ワークステージが構成されるようにし、また、上記ワークトレイを複数用意する。
上記複数のワークトレイには、上記複数のワークをワークトレイ上の所定の位置に位置決めする手段が設けられ、上記基台には、上記ワークトレイを所定の位置に位置決めする手段と、該基台を水平方向に移動させる移動機構とが設けられる。
(2)上記(1)の露光装置は、上記ワークトレイに複数のワークを載せるワーク搬入手段と、上記ワーク搬入手段により複数のワークが載せられたワークトレイを、上記基台の上に載せるワークトレイ搬入手段とを備える。
(3)基台と、該基台上に着脱可能な複数のワークを保持するワークトレイとからなり、該基台上に該ワークトレイが設置されたとき、該基台と該ワークトレイとでワークステージが構成されるワークステージを有し、該ワークステージ上に載せられた複数のワークに対して、一枚毎にアライメントを行い、光照射部から出射する光をパターンを形成したマスクを介してワークステージ上のワークに対して照射し、各ワークに対して逐次露光処理を行う露光方法において、上記ワークトレイを複数用意する。
上記露光処理は、該ワークトレイに複数のワークを載せる第1の工程と、上記複数のワークを載置した上記ワークトレイを、基台上に載せる第2の工程と、上記基台と上記ワークトレイとで構成されるワークステージを移動させながら、上記ワークトレイ上の上記複数のワークを順次露光する第3の工程と、露光が終わった上記複数のワークを載置した上記ワークトレイを、上記基台から取り外す第4の工程と、上記ワークトレイから露光の終わった上記複数のワークを取り外す第5の工程により行われ、上記第2、第3および第4の工程の実施中に、上記第1の工程および/または第5の工程を実施する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)ワークステージを、基台と、該基台上に着脱可能な、複数のワークを保持するワークトレイとから構成し、ワークトレイに複数のワークを載せて各ワークに対して逐次露光処理を行うようにしたので、ワークステージ上で複数のワークの露光処理している間に、他のワークトレイに未処理のワークを載せたり、ワークトレイから露光済みワークを回収することができる。
また、複数のワークが載せられたワークトレイ毎交換するようにしたので、ワークステージ上で一枚ずつワークを交換する必要がなく、複数のワークを連続して短時間に露光することができる。また、アライメントや露光中にワークステージ上のワークを交換する必要もない。
このため、露光処理と、ワークの交換作業を並行して行うことができるとともに、ワーク露光、交換に要する時間を短くして、装置の利用効率を上げることができる。
(2)ワークトレイは複数のワークを載せて移送ができるものであればよく、比較的安価に構成することができる。このため、複数のワークステージ等を設ける場合と比べると、装置を低コストに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の露光装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例の露光装置の構成を示す斜視図である。
【図3】ワークトレイの構成例を示す図である。
【図4】ワークトレイと基台の詳細構成例を示す断面図である。
【図5】ワークの露光手順を説明する図である。
【図6】本実施例の総露光処理時間を説明する図である。
【図7】ワークおよびワークトレイの搬送機構を2セット設けた場合の構成例を示す図である。
【図8】従来の露光装置の構成例を示す斜視図である。
【図9】従来の露光装置における総露光処理時間を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の実施例の露光装置の基本構成を示す図である。
本実施例の露光装置は、露光光を出射する光照射部1、露光を行うパターンが形成されたマスクを保持するマスクステージ2、露光処理を行うワークを保持するワークステージ4、マスクMに形成されたパターンをワークステージ4上のワークWに投影する投影レンズ3などから構成される。
なお、露光装置は、マスクMとワークの位置合せを行うためのアライメント機構や上記した各構成部位の動作を制御する制御部なども備えるが省略している。
光照射部1は、内部に、露光光を放射する光源ランプ、ランプからの光を反射する反射ミラーなどを備えている。
【0013】
ワークステージ4は、マスクMに形成されているパターンを転写するワークWを保持するものであり、本発明において、ワークステージ4は、複数のワークを保持する上部のワークトレイ6と、下部の基台5とから構成され、上部のワークトレイ6は、基台5上に着脱可能であり、基台5上に上記ワークトレイ6が設置されたとき、基台5とワークトレイ6とで上記ワークステージ4を構成する。
基台5には、ワークステージ移動機構7が取り付けられている。ワークステージ移動機構7は、基台5を、ワークステージの平面内のXY方向、ワークステージ面に垂直なZ方向(上下方向)、ワークステージ面に垂直な軸を中心としたθ回転方向に移動させる。
ワークトレイ6は上述したように基台5に対して着脱(分離装着)が可能であり、ワークトレイ6には、同図に示すように複数(同図では4枚)のワークWが、ワークトレイ6に対して所定の位置に位置決めされて載せられる。また、基台5上に位置決め手段が設けられ、ワークトレイ6は基台上の所定の位置に位置決めして設置される。
本発明では、同一構成のワークトレイが、1台の露光装置に対して複数用意され、図1では、基台5上のワークトレイを6Aといい、他のワークトレイを6B,6C,6Dという。
同図に示すように、ワークトレイ6Aが基台5上に置かれ、ワークトレイ6A上のワークWは、一枚毎にアライメントされ、光照射部1から出射する露光光がパターンを形成したマスクMを介して照射され、各ワークWに対して逐次露光処理が行われる。
【0014】
一方、上記ワークトレイ6A上のワークWが露光処理されている間に、他のワークトレイ6B,6C、6Dは基台5から取り外される。
ワークトレイ6Bは例えば露光済みのワークWが載せられたワークトレイであり、上記ワークトレイ6A上のワークの露光処理をしている間に、露光済みのワークWが、ワークトレイ6B上から回収され、露光済みのワークを収納するワークキャリア(不図示)に搬送され、収納される。
また、ワークトレイ6C,6Dは、未露光のワークが載せられるワークトレイであり、ワークトレイ6A上のワークの露光処理をしている間に、未露光のワークを収納したワークキャリア(不図示)から、ワークWがワークトレイ6C,6Dに搬送され、ワークトレイ6C,6D上に位置決めして載せられる。
【0015】
そして、ワークトレイ6Aの露光処理が終わると、ワークトレイ6Aは基台5から取り外され、露光済みのワークWが、ワークトレイ6A上から回収され、露光済みのワークを収納するワークキャリア(不図示)に搬送され、収納される。
一方、ワークトレイ6C上に、4枚の未露光のワークWが載せられると、ワークトレイ6Cは基台5に設置され、上述したように露光処理が行われる。以上の動作を繰り返して、ワークWの露光処理を行う。
以上のようにワークトレイ6上に複数のワークWを載せ、ワークトレイ6ごと交換することにより、従来のように、処理済のワークを1枚ずつワークステージから搬出し、未処理のワークを1枚ずつワークステージに撒入する場合に比べ、ワークの交換時間を短縮することができ、露光処理に要する全体の時間を短縮することができる。
【0016】
図2は、図1に示した露光装置にワークおよびワークトレイの搬送機構を設けた本発明の実施例の露光装置の構成を示す斜視図、図3、図4はワークトレイと基台の具体的構成例を示す図である。
露光装置の構成は、図1に示したものと同じであり、露光光を出射する光照射部1、マスクを保持するマスクステージ2、ワークを保持するワークステージ4、投影レンズ3などから構成される。光照射部1は、内部に、露光光を放射する光源ランプ、ランプからの光を反射する反射ミラーなどを備えている。
ワークステージ4は、前述したように、複数のワークを保持するワークトレイ6と、基台5とから構成され、上部のワークトレイ6は、基台5上に着脱可能であり、基台5上に上記ワークトレイ6が設置されたとき、基台5とワークトレイ6とで上記ワークステージ4を構成する。ワークステージ4には、前述したようにワークステージ移動機構7が取り付けられている。ワークステージ移動機構7は、ワークステージ4の基台5を、ワークステージ4の平面内のXY方向、ワークステージ面に垂直なZ方向(上下方向)、ワークステージ面に垂直な軸を中心としたθ回転方向に移動させる。
【0017】
図3にワークトレイ6の拡大図を示す。ワークトレイ6には複数のワークをワークトレイ上の所定の位置に位置決めする手段が設けられており、本実施例においては、位置決め手段として、その表面に、保持されるワークの数分だけワークがはまり込む凹部61が形成されている。
本実施例の場合、ワークWはウエハであり、トレイ6には4枚のウエハを載せるので、円形の凹部61を4ケ所形成している。しかし、これは一例であって、ワークトレイ6に載せるワークWの枚数は、4枚以上であっても良いし、2枚、3枚であっても良く、また、位置決め手段として、凹部61の代わりに位置決めピン等を設けてもよい。
【0018】
図4は、ワークトレイ6と基台5との関係を示す断面図である。図4(a)はワークステージが基台から離れている状態、図4(b)はワークトレイが基台に装着されている状態である。
同図に示すように、ワークトレイ6と基台5とは別体で構成され、ワークトレイ6は基台5に対して着脱(分離装着)が可能である。ワークトレイ6は、上記したように、表面にワークWを保持する凹部61が載せるワークWの数の分だけ形成されている。また、この凹部61には、ワークWの吸着保持用の真空を供給する貫通孔62が形成されている。また、ワークトレイ6の下部(基台5と接する側)には、基台5との位置決めを行う位置決め手段を構成する位置決めピン63が設けられている。
基台5には、ワークトレイ6にワーク吸着保持用の真空を供給するための真空吸着孔52が形成されている。また、基台5の表面(ワークトレイ6と接する側)には、ワークトレイ6の位置決めピン63にはまり合う位置決め手段を構成する位置決め孔51が設けられている。
【0019】
図4(b)に示すように、基台5上にワークトレイ6が載り、位置決めピン63が位置決め孔51とはまり合うと、基台5の真空吸着孔52とワークトレイ6の貫通孔62が連通し、ワークトレイ6の凹部61に真空が供給され、ワークWが凹部61内において吸着保持される。
ワークトレイ6は、前述したように、1台の露光装置において複数使用し、あるワークトレイが基台5上に置かれ露光処理されている時に、他のワークトレイからは露光処理済のワークWがワークキャリアに回収され、また未処理のワークWがワークキャリアからワークトレイに載せられる。なお、本発明においては、複数のワークを載せるワークトレイ6が複数必要であり、このようなワークトレイ6を複数使用しないと、本発明の課題である総露光処理時間の短縮が達成できない。
【0020】
本発明の露光装置においては、ワークWはワークトレイ6に複数載せられてワークステージの基台5に置かれる。
このため、ワークキャリアから、未処理ワークのワークトレイへの移し替え、処理済みワークのワークトレイからワークキャリアへの回収、ワークが載せられたワークトレイの基台5への搬送、基台5からワークトレイの搬送等の作業を行う必要がある。この作業は人手で行うことも可能であるが、これらの作業を行うワークおよびワークトレイの搬送機構を設けることが望ましい。
上記ワークおよびワークトレイの搬入搬出を行うワークおよびワークトレイの搬送機構10は、例えば図2のように構成することができる。
図2において、第1のワークキャリア置き台17Aに載せられた第1のワークキャリア(ウエハ・カセット)16Aには、露光処理を行う未露光のワークが収納され、第2のワークキャリア置き台17Bに載せられた第2のワークキャリア(ウエハ・カセット)16Bには露光処理済みのワークが収納される。
ワーク移載手段14とワークトレイ搬送手段11は、それぞれワークまたはワークトレイを保持して搬送するアームを備えるロボット搬送機構である。
ワーク移載手段14とワークトレイ搬送手段11には、それぞれを平面内2方向(XY方向)に移動させ、またアーム141,111の方向を回転移動させるワーク移載手段移動機構15、ワークトレイ搬送手段移動機構12が取り付けられている。
また、ワーク移載手段14とワークトレイ搬送手段12の間には、第1のワークトレイ置き場13Aと第2のワークトレイ置き場13Bが設けられる。
【0021】
ワーク移載手段14は、ワーク移載機移動手段15により上記第1、第2のワークキャリア16A、16Bと、ワークトレイ6が置かれる第1、第2のワークトレイ置き場13A,13Bの間を移動し、アーム141により、ワークトレイ6上のワークWを把持して、第2のワークキャリア16Bに搬送して収納したり、第1のワークキャリア16Aに収納されたワークWを第1のワークトレイ置き場13Aに搬送して、その上に置かれたワークトレイ6の上に載せる。
ワークトレイ搬送手段11は、ワークトレイ搬送手段移動手段12により露光機の基台5と第1、第2のワークトレイ置き場13A,13Bの間を移動し、アーム111により、露光機の基台5に載せられた露光済みのワークWが載せられたワークトレイ6を把持して、第2のワークトレイ置き場13Bに搬送したり、第1のワークトレイ置き場13Aにおかれたワークトレイ6を把持して、露光機の基台5に搬送する。
【0022】
第1のワークトレイ置き場13Aには、空のワークトレイが置かれ、ワーク移載手段14により、ワークキャリア16Aから未処理のワークWが載せられる。ワークWが載せられたワークトレイは、ワークトレイ搬送手段11により、第1のワークトレイ置き場13Aから基台5上に搬送される。
第2のワークトレイ置き場13Bには、ワークトレイ搬送手段11により露光処理済のワークWが載ったワークトレイが置かれ、そこからワーク移載手段14により、露光処理済のワークWがワークキャリア13Bに回収される。空になったワークトレイは、ワーク移載手段14により第1のワークトレイ置き場13Aに搬送される。
【0023】
図2を用いて、このワークおよびワークトレイの搬送機構を用いた露光装置によるワークの露光手順を説明する。なお本実施例では4枚のウエハを載せるワークトレイを2枚使用する(図2では基台5上に置かれたワークトレイを6Aとし、第1のワークトレイ置き場13Aに置かれたワークトレイを6Bとしている)。
第1のワークキャリア置き場17Aに、これから露光処理を行うワークWを収納したワークキャリア16Aを置く。また、第2のワークキャリア置き場17Bに、露光処理を終えたワークを収納するワークキャリア16Bを置く。
第1のワークトレイ置き場13Aに空のワークトレイ6Aが、第2のワークトレイ置き場に空のワークトレイ6Bが置かれる(なお、図2では、さらに作業が進んだ状態を示しており、ワークトレイ6Aが基台5上に置かれ、ワークトレイ6Bが第1のワークトレイ置き場13Aにおかれた状態を示している)。
ワーク移載手段14は、ワークキャリア16Aから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6AにワークWを載せる。ワークトレイ6Aに4枚のワークWが載ると、ワークトレイ搬送手段11がワークトレイ6Aを保持し、基台5上に運ぶ。
【0024】
ワークトレイ6Aが基台に載り4枚のワークWが真空吸着保持されると、露光装置は、ワークトレイ6A上のワークWの逐次露光処理を開始する。
すなわち、図5に示すように、ワークトレイ上の第1のワークW1のアライメントを行い、第1のワークW1に対してマスクを介して露光光を照射して露光する。第1のワークW1の露光処理が終わったら、露光光の照射を止め、ワークステージ移動機構7によりワークステージ4を移動し、第2のワークW2に対して、上記と同様に露光処理を行う。このようにワーク露光とワークステージ4の移動を繰り返し、第3のワークW3、第4のワークW4を露光する。
【0025】
一方、ワークトレイ6Aのワークステージ4への搬送と、その上のワークWの露光が行われている間に、ワーク移載手段14は第2のワークトレイ置き場13Bのワークトレイ6Bを、第1のワークトレイ置き場13Aに搬送する。そして、ワーク移載手段14はワークキャリア16Aから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6Bに順次4枚のワークWを載せる。なお、図2は、このワークトレイ6A上のワークWを露光し、ワークトレイ6BにワークWを載せる作業を行っている状態を示している。
ワークトレイ6A上のワークWの露光が終了すると、ワークトレイ搬送手段11がワークトレイ6Aを基台5から取外し、第2のワークトレイ置き場13Bに搬送する。そして、ワークトレイ搬送手段11は4枚のワークWが載ったワークトレイ6Bを、第1のワークトレイ置き場13Aから、基台5上に搬送する。
ワークトレイ6Bが基台5に載り4枚のワークWが真空吸着保持されると、露光装置は、ワークトレイ6B上の4枚のワークを、上記したように順次露光する。
【0026】
一方ワーク移載手段14は、第2のワークトレイ置き場13B上のワークトレイ6Aから、露光処理済のワークWを順次取り出して、ワークキャリア16Bに収納する。ワーク移載手段14は、4枚の露光済みワークのワークキャリア16Bへの回収が終わったら、ワークトレイ6Aを、第2のワークトレイ置き場13Bから第1のワークトレイ置き場13Aに搬送する。
そして、ワーク移載手段14は、ワークキャリア16Aから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6Aに順次4枚のワークを載せる。
上記を繰り返してワークキャリア16Aに収納されている全てのワークWの露光処理を行い、露光処理済みのワークWをワークキャリア16Bに回収する。
【0027】
図6に、本実施例の総露光処理時間を示す。
上記した背景技術の例と同じように、4枚のワークを露光処理する場合を想定し、1枚のワークの露光時間を10秒、またマスクとワークの位置合せの時間は無視する。なお、ワークステージ4におけるワークの交換時間は、本実施例においてはワークトレイ6の交換時間となるが、その時間は背景技術におけるワークの交換時間と同様の5秒とする。また、ワークトレイ6上の第1のワークから第2のワークに露光位置を移動させるためのワークステージの移動時間は1秒とする。
従来は、図9に示したように、1枚目のワークの露光処理から2枚目のワークの露光処理までの間に、ワークを交換するための時間(5秒)が必要であった。しかし、本発明においては、図6に示すように、1枚目のワークから2枚目のワークの交換は、ワークステージ4の移動時間(1秒)となり、ワークの交換時間が短縮される。これにより、4枚のワークの処理で総露光処理時間は53秒であり、従来(図9)に比べて12秒短縮できる。
【0028】
ワーク移載手段14による未露光ワークのワークキャリア16Aからワークトレイ6への移し替えや、露光処理済ワークのワークトレイ6からワークキャリア16Bへの回収の時間は、ワークトレイ6上の複数のワークWが露光されている間に並行して行われ、その間に終了する。そのため、総露光処理時間を長くすることはない。
一般にワークキャリアには25枚程度のワークWが収納されている。仮にワークキャリア16Aに24枚のワークWが入っているとすると、12秒×6=72秒の総露光時間を短縮できる。
本発明の露光装置は、従来の露光装置に比べて、{(ワークトレイ6に載置されるワークWの枚数)−1}×{(従来のワークWの交換時間)−(露光位置をワークトレイ6上の第1のワークWから第2のワークWに移動させるためのワークステージの移動時間)}だけ、ワークの交換時間が短くなる。
したがって、ワークトレイに載せるワークの枚数が2枚であっても、従来に比較すれば総露光処理時間を短縮することができる。
【0029】
また、上記式によれば、ワークトレイ6に載せるワークWの枚数が多いほどワークWの交換時間を短くできることになる。しかし、ワークトレイ6に載せるワークWの枚数が増えると、ワーク移載手段14による、露光処理済ワークWのワークトレイ6からの回収や、未処理ワークWのワークトレイ6への移し替えの時間が長くなり、ワークWが露光されている間にその動作が終わらず、総露光処理時間が長くなることも考えられる。
そのため、ワークトレイ6に載せるワークの枚数は、ワークトレイ6に載ったワークが露光されている時間のなかに、ワーク移載手段14による、露光処理済ワークWのワークトレイ6からの回収や、未処理ワークWのワークトレイ6への移し替えの時間が含まれるように調整するのが望ましい。
【0030】
ここで、ワークトレイ6への未処理のワークWの移し替えや、ワークトレイ6から露光済みワークWの回収の時間に比べて、ワークトレイ6上のワークWの露光処理に要する時間が短い場合には、ワークトレイ上のワークの露光処理が終わっても、次に露光するワークが載せられたワークトレイを用意できていない場合が生じ、待ち時間が生じて、時間のロスが生ずることがある。
このような問題を解決するために、上記ワークの搬送機構を複数セット設けるようにしてもよい。
【0031】
図7にワークの搬送機構を2セット設けた場合の構成例を示す。
同図に示すように、第1、第2のワークキャリア置き台17A、17B、第1、第2のワークキャリア16A、16Bに加えて、第3、第4のワークキャリア置き台17C、17D、第3、第4のワークキャリア16C、16Dが設けられ、第1、3のワークキャリア16A,16Cには露光処理を行う未露光のワークが収納され、第2、第3のワークキャリア16B、16Dには露光処理済みのワークが収納される。
また、第1、第2のワーク移載手段14A,14Bが設けられ、第1のワーク移載手段14A,第2のワーク移載手段14Bと、ワークトレイ搬送手段12の間には、第1のワークトレイ置き場13Aと第2のワークトレイ置き場13Bに加え、第3のワークトレイ置き場13Cと第4のワークトレイ置き場13Dが設けられる。
また、ワークトレイ搬送手段11は、ワークトレイ搬送手段移動機構12により、上記第1〜第4のワークトレイ置き場13A〜13Dの間を移動できるように構成される。その他の構成は図2に示したものと同じである。
【0032】
図7に示すワークおよびワークトレイの搬送機構の動作は、前記図2で説明したのと同様である。
すなわち、最初に、第1〜第4のワークトレイ置き場13A〜13Dに空のワークトレイ6A〜6Dが置かれる。
第1のワーク移載手段14Aは、ワークキャリア16Aから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6AにワークWを載せる。
そして、ワークトレイ搬送手段11によるワークトレイ6Aの基台5への搬送と、露光が行われている間に、第1のワーク移載手段14Aはワークトレイ6Bを、第1のワークトレイ置き場13Aに搬送し、ワークキャリア16Aから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6Bに順次4枚のワークWを載せる。
ワークトレイ6A上のワークWの露光が終了し、ワークトレイ搬送手段11により、ワークトレイ6Aが第2のワークトレイ置き場13Bに搬送されると、第1のワーク移載手段14Aは、ワークトレイ6Aから、露光処理済のワークWを順次取り出して、ワークキャリア16Bに収納する。そして、ワークトレイ6Aを、第2のワークトレイ置き場13Bから第1のワークトレイ置き場13Aに搬送する。
【0033】
また、新たに追加された第2のワーク移載手段14Bも、上記第1のワーク移載手段14Aの動作と並行して、ワークキャリア16Cから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6CにワークWを載せる。
そして、ワークトレイ搬送手段11によるワークトレイ6Cの基台5への搬送と、露光が行われている間に、第2のワーク移載手段14Bはワークトレイ6Dを、第3のワークトレイ置き場13Cに搬送し、ワークキャリア16Cから未露光のワークWを取り出し、ワークトレイ6Dに順次4枚のワークWを載せる。
ワークトレイ6C上のワークWの露光が終了し、ワークトレイ搬送手段11により、ワークトレイ6Cが第4のワークトレイ置き場13Dに搬送されると、第2のワーク移載手段14Bは、ワークトレイ6Cから、露光処理済のワークWを順次取り出して、ワークキャリア16Dに収納する。そして、ワークトレイ6Cを、第4のワークトレイ置き場13Dから第3のワークトレイ置き場13Cに搬送する。
【0034】
図7に示すように、ワークおよびワークトレイの搬送機構を2セット設けることにより、ワークトレイ6への未処理のワーク移し替えや、ワークトレイ6から露光済みワークの回収の時間を約半分にすることができ、露光装置におけるワークトレイ6上のワークの露光時間が短い場合であっても、待ち時間が生ずることがなく、短時間で処理を終わらせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 光照射部
2 マスクステージ
3 投影レンズ
4 ワークステージ
5 基台
52 真空吸着孔
51 位置決め孔
6,6A〜6D ワークトレイ
61 凹部
62 貫通孔
63 位置決めピン
7 ワークステージ移動機構
10 ワークおよびワークトレイ搬送手段
11 ワークトレイ搬送手段
111 アーム
12 ワークトレイ搬送手段移動機構
13A〜13D 第1〜第4のワークトレイ置き場
14 ワーク移載手段
141 アーム
15 ワーク移載手段移動機構
16A〜16D 第1〜第4のワークキャリア(ウエハ・カセット)
17A〜17D 第1〜第4のワークキャリア置き台
M マスク
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークステージ上に載せられた複数のワークに対して、一枚毎にアライメントを行い、光照射部から出射する光をパターンを形成したマスクを介してワークステージ上のワークに対して照射し、各ワークに対して逐次露光処理を行う露光装置であって、
上記ワークステージは、基台と、該基台上に着脱可能な、複数のワークを保持するワークトレイとから構成され、該基台上に該ワークトレイが設置されたとき、基台とワークトレイとで上記ワークステージを構成し、
上記ワークトレイは複数用意され、該ワークトレイには、上記複数のワークをワークトレイ上の所定の位置に位置決めする手段が設けられ、上記基台には、上記ワークトレイを所定の位置に位置決めする手段と、該基台を水平方向に移動させる移動機構とが設けられている
ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
上記露光装置は、
上記ワークトレイに複数のワークを載せるワーク搬入手段と、
上記ワーク搬入手段により複数のワークが載せられたワークトレイを、上記基台の上に載せるワークトレイ搬入手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
基台と、該基台上に着脱可能な複数のワークを保持するワークトレイとからなり、該基台上に該ワークトレイが設置されたとき、該基台と該ワークトレイとでワークステージが構成されるワークステージを有し、
該ワークステージ上に載せられた複数のワークに対して、一枚毎にアライメントを行い、光照射部から出射する光をパターンを形成したマスクを介してワークステージ上のワークに対して照射し、各ワークに対して逐次露光処理を行う露光方法において、
上記ワークトレイは複数用意され、
上記ワークトレイに複数のワークを載せる第1の工程と、
上記複数のワークを載置した上記ワークトレイを、基台上に載せる第2の工程と、
上記基台と上記ワークトレイとで構成されるワークステージを移動させながら、上記ワークトレイ上の上記複数のワークを順次露光する第3の工程と、
露光が終わった上記複数のワークを載置した上記ワークトレイを、上記基台から取り外す第4の工程と、
上記ワークトレイから、露光の終わった上記複数のワークを取り外す第5の工程とを備え、
上記第2、第3および第4の工程の実施中に、上記第1の工程および/または第5の工程を実施する
ことを特徴とする露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129231(P2012−129231A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276802(P2010−276802)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】