説明

非常釈放機能を持つ車両の駐車制動装置及びこのような駐車制動装置の操作方法

本発明は、非常釈放機能を持つ車両特に商用車両の駐車制動装置に関し、駐車制動機を釈放又は投入するための少なくとも1つのばね制動シリンダ11、第1の圧縮空気貯蔵容器16及びばね制動シリンダ11の給気又は排気のための第1の制御弁装置17を持つ第1の電空駐車制動回路14を持っている。更に第1の駐車制動回路14の故障の場合駐車制動機を非常釈放するための第2の電空駐車制動回路15が設けられ、第2の駐車制動回路15が、第2の圧縮空気貯蔵容器38及び非常釈放の場合ばね制動シリンダ11に給気するための第2の制御弁装置40を持っている。第2の制御弁装置40が、第2の圧縮空気貯蔵容器38に接続される給気ポート41と、大気に接続可能な排気ポート45と、ばね制動シリンダ11に接続可能な第3のポート42とを含んでいる。非常釈放の場合駐車制動機の釈放可能性を改善するため、第1の局面によれば、第2の制御弁装置40の排気ポート45が、車両の外部範囲に終わる圧縮空気導管46に接続され、この圧縮空気導管46を経て圧縮空気が、外部の圧縮空気源48から第2の制御弁装置40の排気ポート45及び第3のポート42を経てばね制動シリンダ11へ供給可能である。第2の局面によれば、少なくとも第2の制御弁装置40を制御するための制御装置27が設けられて、第2の駐車制動回路15を動作させるため、非常釈放の場合とは無関係に第2の制御弁装置40が試験的に操作可能であるように構成されている。
本発明は更にこのような駐車制動装置の操作方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車制動機を非常釈放するため非常釈放機能を持つ車両特に商用車両の駐車制動装置に関する。本発明は更に」このような駐車制動装置の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主として商用車両において使用される公知の駐車制動装置は、駐車制動機を釈放するため給気され、駐車制動機を投入するため排気されるばね制動シリンダを持っている。この目的のため(第1の)駐車制動回路が設けられている。
【0003】
ばね制動シリンダへ通じる圧縮空気導管に漏れがあると、ばね制動シリンダが排気され、それにより駐車制動機が投入される。しかしこの漏れのため、ばね制動シリンダはもはや給気されず、したがって駐車制動機はもはや釈放されない。この状態即ち駐車制動機が投入された状態で車両はもはや引張って行かれない。従って公知の車両では、釈放ねじが規則どおりにばね制動シリンダに設けられ、このような場合釈放ねじにより駐車制動機が非常釈放可能にされる。
【0004】
しかしバスでは、車両の下に存在する場所は、釈放ねじに近寄るには通常小さすぎるので、バスではいわゆる管破損保護装置が設けられる。非常の場合駐車制動機を釈放できるようにするため、ばね制動シリンダは、更に手動制動弁を経て直接に、別の制動回路即ち二次負荷回路から圧縮空気を供給される。従って駐車制動機のために2つの制動回路が設けられ、それによりばね制動シリンダを操作することができる。しかし駐車制動機のこれら両方の制動回路は、ばね制動シリンダにあるシャトル弁により分離されている。
【0005】
駐車制動機が釈放される際、第1の駐車制動回路が空気を失い、例えばこの制動回路の導管が破損すると、大抵の場合さわがしい吹出し騒音が聞こえる。その場合ばね制動シリンダの圧縮空気供給が、第2の駐車制動回路、二次負荷回路又は非常釈放回路を経て保証される。こうして故障の場合にも駐車制動機を再び釈放又は投入することができる。しかしその場合段階的制動はもはや不可能である。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第1033611号明細書から公知の電空駐車制動機では、シャトル弁を介して2つの制動回路が駐車制動回路調整器の貯蔵容器ポートに並列に接続されている。駐車制動回路調整器の出力端には別のシャトル弁があり、このシャトル弁によりばね制動シリンダが2つの並列な導管を経て供給される。ばねの所で並列な導管が、別のシャトル弁により再び集合される。
【0007】
しかしこの駐車制動回路調整器において導管が破損すると、シャトル弁により導管が直ちに閉じられる。従って吹出し騒音は知覚不可能である。それから並列接続される圧縮空気導管を介して圧縮空気の供給が行われる。こうして駐車制動機は引続き段階的に操作可能である。
【0008】
しかし駐車制動機は、管の破損後も運転者にとって通常のように動作し、運転者は吹出し騒音を知覚できないので、運転者は欠陥についての応答を受けない。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005024120号明細書によれば、駐車制動回路調整器からばね制動シリンダへ至る導管が圧力センサにより監視される。導管に欠陥たとえば漏れがある場合、駐車制動機を釈放するための信号要求があるにもかかわらず、ばね制動シリンダへ至る導管における圧力確立が行われないことを、圧力センサが検出する。この場合第2の駐車制動回路が非常釈放のため動作せしめられ、適当な制御弁装置が切換えられて、第2の駐車制動回路の圧縮空気貯蔵容器とばね制動シリンダとの間の流れ接続が行われるので、駐車制動機を釈放することができる。
【0010】
しかしこのような管破損は非常にまれにしか起こらず、車両の寿命中には多分全く起こらないので、非常釈放の場合のみ使用される第2の駐車制動回路も、非常にまれにしか使用されないか、または全く使用されない。従ってこの第2の駐車制動回路に付属する弁装置も非常にまれにしか使用されないか、又は全く使用されない。しかしそれにより、この制御弁装置が動かなくなり、従ってもはや働かなくなる確率が大きい。例外的に一度非常釈放機能が必要とされるまれな欠陥の場合、非常釈放制動回路即ち第2の駐車制動回路も同様に故障している確率が大きい。
【0011】
従って非常釈放機能を持つ公知の駐車制動装置では、第1の駐車制動回路に管破損が起こると、非常釈放機能にもかかわらず、駐車制動機をもはや釈放できない確率が実際に大きい。従って今まで非常釈放の場合における駐車制動機の釈放可能性は不充分にしか実現されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の基礎になっている課題は、第1の駐車制動回路に欠陥が生じた場合、駐車制動機の釈放可能性を改善し、特に管破損の場合駐車制動機を釈放できない確率を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、この問題を請求項1及び請求項4に記載の駐車制動装置により解決する。更に本発明は、この問題を請求項11及び請求項13に記載の駐車制動装置の操作方法により解決する。
【0014】
本発明の第1の局面によれば、第2の電空駐車制動回路の第2の制御弁装置の排気ポートが、車両の外部範囲に終わる圧縮空気導管に接続されている。駐車制動機の非常釈放のため、この圧縮空気導管を経て圧縮空気が、外部の圧縮空気源から、即ち駐車制動装置の圧縮空気貯蔵容器とは無関係に、第2の駐車制動回路のこの制御弁装置の排気ポート及びばね制動シリンダへ通じるこの制御弁装置の第3のポートを経てばね制動シリンダへ供給可能である。
【0015】
この解決策は、駐車制動装置又は車両の圧縮空気貯蔵容器に圧力がない場合にも、ばね制動シリンダへの給気従って駐車制動機の釈放が可能である、という利点を持っている。従って例えば車両において圧縮空気がもはや利用可能でない場合にも、駐車制動機をまだ釈放することができる。これは、例えば圧縮空気導管に漏れがあるか又は電気エネルギ供給装置が故障している場合、電気的に駆動される圧縮機が圧縮空気をもはや供給できない時に、起こる。
【0016】
本発明の第2の局面によれば、第2の駐車制動回路の弁装置を動作可能にするため、第2の駐車制動回路の一時的な試験サイクルが行われる。従って第2の駐車制動回路を動作させるため、非常釈放の場合とは無関係に第2の制御弁装置を試験的に操作する第2の制御弁装置を制御する電気又は電子制御装置を、駐車制動装置が持っている。こうして一般に非常にまれにしか使用されないかまたは全く使用されない第2の駐車制動回路を、定期的に動作させることができる。こうして弁又は弁部品は動作可能に保たれ、弁又は弁部品が動かなくなるのを防止される。
【0017】
本発明の両方の局面は、第1の駐車制動回路に欠陥がある場合、駐車制動機が第2の駐車制動回路によってもはや釈放されない確率を著しく少なくする。従って駐車制動機の欠陥のため、場合によっては見渡せないか又は危険な場所にも車両が停止したままであるという危険を、著しく少なくすることができる。それにより本発明は道路交通における安全性を高める。
【0018】
それ以外の有利な実施形態は、従属請求項及び添付図面により詳細に説明される実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の第1実施例による自動車の駐車制動装置を示す。
【図2】 本発明の第2実施例による自動車の駐車制動装置を示す。
【図3】 本発明の別の実施例による方法を説明する流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、自動車特に商用車両なるべくバスの駐車制動装置10を概略図で示す。
【0021】
図示した実施例において駐車制動装置10は、組合わせばね−膜制動シリンダとして構成される2つのばね制動シリンダ11を含んでいる。このような組合わせ制動シリンダは、膜制動シリンダの機能のほかに、更にばね機能を持っている。ばね制動シリンダ11は、(図示しない)常用制動装置に空気圧接続されて固有の制動圧力を受けるそれぞれ1つの膜部分12を持っている。更にばね制動シリンダ11は、空気圧的に膜部分12から隔離されかつ別個の圧縮空気導管を介して圧縮空気を供給されるそれぞれ1つのばね部分13を含んでいる。
【0022】
ばね部分13に圧縮空気が作用する際、ばねが予荷重をかけられ、その際ばねの制動作用が減少されることによって、各ばね部分13がばね機能を変換する。ばね部分13を排気すると、ばねが緩むので、ばね機能の範囲内で制動作用が、それぞれのばね制動シリンダ11に接続される制動機へ及ぼされる。ばね制動シリンダ11により、圧縮空気のない場合にも車両の制動または停止を可能にする駐車制動機能が実現される。駐車制動機を釈放するために、ばね部分13に給気せねばならない。
【0023】
このようなばね制動シリンダ11は、トラクタでもトレーラでもよい車両のなるべく1つの車軸の少なくとも複数の車輪又は複数の車軸に存在する。
【0024】
しかし別の実施例(図示せず)では、例えばカルダン軸において作用するただ1つのばね制動シリンダのみが設けられている。
【0025】
駐車制動装置10は第1の電空駐車制動回路14及び第2の電空駐車制動回路15を含んでいる。
【0026】
第1の駐車制動回路14は、第1の圧縮空気貯蔵容器16及びばね制動シリンダ11の給気又は排気用の第1の制御弁装置17を持っている。制御弁装置17は、中継弁18の形の空気量を増大する弁装置を持っている。中継弁18は、第1の圧縮空気貯蔵容器16用のポート20に接続されている入口19を含んでいる。中継弁18は、更にばね制動シリンダ11用の別のポート22に接続されている出口21を持っている。更に中継弁18は概略的に示す排気口23を含み、この排気口を経て圧縮空気が逃げることができる。排気口23及び別の弁の別の排気口は共通な排気装置に接続されるのがよく、この排気装置を経て圧縮空気が中央で大気へ逃げることができる。
【0027】
中継弁18は更に制御入力端24を持ち、制御導管25及び制御入力端24を経て制御圧力を中継弁18へ供給することができる。中継弁18はその出口21において正確にこの制御圧力を出すが、中継弁18は空気量を増大する。即ち中継弁18の出口21に供給される体積は、制御導管25内を送られる体積より著しく大きい。
【0028】
中継弁18の出口21の圧力、従ってばね制動シリンダ11へ供給される圧力は、圧力センサ26により測定される。この圧力センサ26は電気信号を電気又は電子制御装置27へ供給する。
【0029】
中継弁18の制御入力端24の制御圧力は、同様に第1の制御弁装置17に付属する保持弁28及び双安定弁29を介して決定される。この目的のため保持弁28は中継弁18の制御入力端24の前に接続されているので、制御導管25をこの保持弁28により遮断するかまたは開くことができる。保持弁28は、電気的に操作可能な2ポート2位置切換え電磁弁として構成されている。
【0030】
双安定弁29は、第1の圧縮空気貯蔵容器16用のポート20に接続される入口30を持っている。更に双安定弁29は、圧力媒体通路32を経て保持弁28に接続される出口31を持っている。最後に双安定弁29は排気口33を持ち、この排気口を経て圧縮空気が逃げることができる。
【0031】
双安定弁29は、2つの切換え状態を持つ双安定切換え状態を持つように構成されている。即ち双安定弁29は、もはや通電されなくてもその状態を維持する。
【0032】
これとは異なり、保持弁28はばね荷重を受ける弁であり、このばね荷重を受ける弁は、通電されない状態で、図1に示す第1の切換え状態をとり、即ち導通して、制御導管25を圧力媒体通路32に接続する。これに反し通電される第2の切換え状態で、保持弁28は制御導管25を圧力媒体通路32に対して遮断するので、制御導管25に存在する圧力従って中継弁18の制御入力端24及び出口21における圧力が保持される。
【0033】
双安定弁29は第1の切換え状態を持ち、この切換え状態で圧縮空気が保持弁28から排気口33を経て放出可能である。双安定弁29の第2の切換え状態で、圧縮空気が第1の圧縮空気貯蔵容器16から保持弁28へ供給可能である。
【0034】
従って双安定弁29の第1の切換え状態で、出口31が排気口33に接続され、一方出口31は入口30に対して遮断されている。これに反し第2の切換え状態で出口31が入口30に接続され、一方出口31は排気口33に対して遮断されている。
【0035】
中継弁18、保持弁28及び双安定弁29を持つ制御弁装置17と制御装置27は、駐車制動モジュール34に設けられている。駐車制動モジュール34は車両の空気圧制動装置の一部である。
【0036】
駐車制動モジュール34のポート22を経て、中継弁18の出口21が、圧縮空気導管35,36及びそれぞれ1つのシャトル弁37を介して、ばね制動シリンダ11しかもそのばね部分13に導かれる。従って第1の制御弁装置17はシャトル弁37を介してばね制動シリンダ11に接続され、駐車制動機を投入又は釈放できる第1の駐車制動回路14を形成している。
【0037】
この第1の駐車制動回路14が故障する場合、同様にシャトル弁37に接続されている第2の駐車制動回路15が利用可能である。第1の駐車制動回路14の故障の際、この第2の駐車制動回路15により駐車制動機を非常釈放でき、即ち非常釈放の場合第2の駐車制動回路15により、ばね制動シリンダ11のばね部分13に給気して、駐車制動機を釈放することができる。
【0038】
第2の駐車制動回路15は第2の圧縮空気貯蔵容器38を持ち、この貯蔵容器が圧縮空気導管39を経て第2の制御弁装置40に接続され、この制御弁装置によりばね制動シリンダ11に少なくとも給気及び排気することができる。
【0039】
第2の制御弁装置40は、ばね荷重を受けかつ電気的に操作可能な3ポート2位置切換え電磁弁として構成されているのがよい。
【0040】
この3ポート2位置切換え電磁弁40は、圧縮空気導管39を介して第2の圧縮空気貯蔵容器38に接続される給気ポートとしての入口41を持っている。更に3ポート2位置切換え電磁弁40は、圧縮空気導管43,44を介してシャトル弁37に接続される第3のポートとしての出口42を持っている。最後に3ポート2位置切換え電磁弁40は排気ポート45を持ち、この排気ポートを経て圧縮空気を大気へ逃がすことができる。
【0041】
第2の駐車制動回路15は、第1の駐車制動回路14が故障する場合のために設けられている。第1の駐車制動回路14の故障の際、例えば圧縮空気導管35,36の破損の際、ばね制動シリンダ11のばね部分13が排気され、それにより駐車制動機が投入される。従って車両が停止するかまたは動かぬようにされ、もはや動かされない。即ち故障のため、車両を一番近い修理工場へ引張って行くことがもはやできない。なぜならば、駐車制動機が投入されたままだからである。それにもかかわらず駐車制動機の釈放を可能にするために、第2の駐車制動回路15が設けられ、それによりばね制動シリンダ11のばね部分13へ給気することができる。この目的のため3ポート2位置切換え電磁弁40が通電され、それにより図1には示してない切換え状態に切換えられる。この切換え状態で、3ポート2位置切換え電磁弁40の入口41がこの弁の出口42に接続されるので、圧縮空気が、第2の圧縮空気貯蔵容器38から圧縮空気導管43,44及びシャトル弁37を経て、ばね制動シリンダ11のばね部分13へ供給される。シャトル弁37は次のように構成されている。即ちそれぞれ第1又は第2の駐車制動回路14,15に接続されるシャトル弁の両方の入力端の一方に加わる高い方の圧力がばね部分13へ供給され、低い方の圧力を持つ他方の入力端は遮断される。
【0042】
第1の駐車制動回路14における故障は、圧力センサ26により検出される。圧力センサ26により測定される圧力が低下すると、ばね制動シリンダへ至る導管35又は36の圧力が給気のため本来高くあるべきだとしても、又はこの圧力が上昇しないとしても、給気が行われても、制御装置27は、既に他の欠陥が検出されていない限り、圧縮空気導管の1つの漏れがあり、即ち管の破損が起こっていることを検出する。
【0043】
このような漏れ又は管の破損が検出されると、第2の駐車制動回路15が健全である限り、この駐車制動回路によりばね制動シリンダ11が給気される。
【0044】
しかし第2の駐車制動回路15が故障している場合、3ポート2位置切換え電磁弁40の排気ポート45が、車両の外部の側方範囲で圧縮空気導管46に接続されている。即ち圧縮空気導管46の適当に開いている端部47は、車両の外部から容易に接近可能であるように取付けられている。即ち端部47は、車両をジャッキで持上げる必要なしに、人間例えば運転者または車両引張り企業の作業員が端部47を操作できるように、車両に設けられている。
【0045】
非常釈放の場合駐車制動機を釈放するため、外部の圧縮空気源48から3ポート2位置切換え電磁弁40の排気ポート45及び出口42を経て圧縮空気をばね制動シリンダ11へ供給するために、圧縮空気導管46のこの端部47をこの外部の圧縮空気源48に接続することができる。
【0046】
圧縮空気導管46の端部47は、外部の圧縮空気源48又は外部の圧縮空気源48に通じる別の圧縮空気導管を連結するための継ぎ手47Aを持っているのが有利である。
【0047】
外部の圧縮空気源48は、例えば保守車両により利用可能な外部の空気圧縮機である。しかし外部の圧縮空気源48は他の商用車両の圧縮空気溜めであってもよい。最後に、非常釈放の場合第2の制御弁装置40を介して圧縮空気をばね制動シリンダ11へ供給するため、外部の圧縮空気源48として簡単な圧縮空気ボンベも使用できる。
【0048】
非常釈放の場合、特にまず圧縮空気導管46の端部47に逆止め弁49が連結される。逆止め弁49は、外部の圧縮空気源48から第2の制御弁装置40へ圧縮空気は流れるが、外部圧縮空気源48を外す際ばね制動シリンダ11が利用可能な圧縮空気は端部47を経て逃げることができないように、調整されている。こうして外部の圧縮空気源48を介して圧縮空気をばね制動シリンダ11へ供給することにより、駐車制動機を釈放し、続いて外部の圧縮空気源48を分離することができる。これは有利である。なぜならば、第1の駐車制動回路14が故障する場合、第2の圧縮空気貯蔵容器38により圧縮空気をばね制動シリンダ11へ供給できない時にも、このように大きい費用なしに、第2の駐車制動回路15により駐車制動機を釈放することができる。この事例は、電気エネルギ源の故障のため、3ポート2位置切換え電磁弁40をもはや切換えることができないか、例えば第2の圧縮空気貯蔵容器38に供給する圧縮機が故障している時に起こる。
【0049】
圧縮空気の短時間供給によりばね制動シリンダ11に給気し、それにより駐車制動機を釈放するため、例えば外部の圧縮空気源48として他の車両が使用される場合、駐車制動機の釈放後、この車両が再び別の方法を取り、駐車制動装置10に属する車両が駐車制動機の釈放の際引張られるようにすることができる。
【0050】
逆止め弁49は、その両端に、圧縮空気導管46の端部47又は継ぎ手47Aと外部の圧縮空気源48の適当な継手片51とに合わされる継手片50を持っている。
【0051】
図1による実施例では、圧縮空気貯蔵容器16を別として、第1の駐車制動回路14が駐車制動モジュール34に統合されている。しかし第2の駐車制動回路15は、外部即ち駐車制動モジュール34外に設けられている。
【0052】
しかし図2による実施例では、同様に圧縮空気貯蔵容器16及び38を別として、第2の駐車制動回路15も駐車制動モジュール34′に統合されている。しかしその他の点で図2による実施例は、図1に示す実施例と一致しているので、図1についての説明が参照される。
【0053】
通常第2の駐車制動回路15の導管は圧力なしで、大きく荷重をかけられていないので、第2の駐車制動回路15は第1の駐車制動回路14より原理的に高い有用性をもっている。しかし第2の駐車制動回路15は極めてまれにしか必要とされない。従って3ポート2位置切換え電磁弁40が固着し、従って非常釈放の場合もはや操作不能となる危険がある。これを回避するため、3ポート2位置切換え電磁弁は、制御装置27により、不時の非常釈放の場合とは無関係に繰返し試験的に操作されて、動作可能に保たれる。同様に非常の場合にのみ操作されるシャトル弁37に対しても、同じことが当てはまる。これらのシャトル弁37においても固着の危険があり、定期的な操作によりこの危険が著しく少なくされる。
【0054】
制御装置27は、それが3ポート2位置切換え電磁弁を所定の時点に自動的に操作するように構成されている。このような時点は、例えば車両の停止段階中に、常用制動機を同時に操作する際規定可能である。第2の駐車制動回路15のこのような試験操作の際、まず第1の駐車制動回路14を介してばね制動シリンダ11のばね部分13が排気されるので、駐車制動機が投入される。それから第2の駐車制動回路15により、第2の圧縮空気貯蔵容器38から供給される圧縮空気を介して、ばね部分13の給気が行われる。駐車制動機の投入及び釈放のこの段階において、車両が危険な走行状態に至らないようにするため、車両が停止しかつ同時に常用制動機が操作されているか又は操作されるときにのみ、このような試験サイクルが実施される。従って制御装置27は常用制動機に接続されており、常用制動機により車両を制動状態に保つかまたは制動することができる。
【0055】
有利なように3ポート2位置切換え電磁弁40は、車両の機関の始動の直後及び/又は車両の停止の直前に操作される。いずれの場合も、車両が停止していることを前提とすることができる。必要な試験サイクルは非常に速く行うことができるので、車両の発進の際又は車両の停止の際、感じられるほどの減速は起こらない。
【0056】
自動的に行われる上述した試験サイクルのほかに、有利なように、制御装置27に接続されている電気操作素子例えば電鍵又は開閉器が設けられている。この操作素子により、この素子の操作に応答して、3ポート2位置切換え電磁弁40を手動で切換えることができる。それにより運転者又は保守作業者は、第2の駐車制動回路15のための試験サイクルを手動で開始することもできる。
【0057】
図3は本発明の実施例による方法を実施するための概略ブロックダイヤグラムを示す。段階S1で試験サイクルが、前述したように例えば電鍵Tにより手動で、又は制御装置27により自動的に開始される。段階S2で3ポート2位置切換え電磁弁40が通電され、それにより切換えられることによって、試験サイクルが実行される。それにより第2の圧縮空気貯蔵容器38から圧縮空気が、3ポート2位置切換え電磁弁40、圧縮空気導管43,44及びシャトル弁37を経て、ばね制動シリンダ11のばね部分13へ達するので、駐車制動機が釈放される。駐車制動機が釈放されるこの段階中に、常用制動機は投入された状態に保たれる。試験サイクルの終りに、3ポート2位置切換え電磁弁40の通電が終了されるので、弁40は再び図1又は2に示すようにばね荷重を受ける状態に切換わり、この状態において圧縮空気導管43,44が圧縮空気導管46を経て排気される。その際シャトル弁37が第1の駐車制動回路14を介して給気される時に、特に圧縮空気導管36の圧力が圧縮空気導管44の圧力より高い時、シャトル弁37が圧縮空気導管44を遮断し、かつばね制動シリンダ11のばね部分13の排気を阻止する。
【0058】
更に試験サイクルの段階S2において、例えば圧縮空気導管43,44又は3ポート2位置切換え電磁弁40のポート42の圧力を監視することによって、監視が行われる。この圧力監視は図1及び2に示す圧力センサ52により行われ、この圧力センサが電気信号を制御装置27へ供給する。3ポート2位置切換え電磁弁40が通電されると、この3ポート2位置切換え電磁弁40が動作可能であり、かつ圧縮空気貯蔵容器38の圧縮空気が利用可能である時、導管43,44の圧力は上昇せねばならない。しかし3ポート2位置切換え電磁弁40が固着し、即ちもはや動作不可能であるか、または圧縮空気貯蔵容器38の圧力が利用不可能であると、圧縮空気導管43,44の圧力は上昇しない。この場合段階S3において、第2の駐車制動回路15における誤動作が確認され、段階S4において欠陥通報を出すことができる。
【0059】
別の実施例では、圧力センサ52に加えて又はその代わりに、3ポート2位置切換え電磁弁40の出口又は導管43,44に圧力開閉器が設けられて、所定の圧力閾値を上回るか又は下回る際電流を開閉する。この電流は、3ポート2位置切換え電磁弁40が操作されているか否か、即ちそれが動作可能であるか否かの説明を与える。これに反し圧力開閉器が開閉しないと、再び段階S3において第2の駐車制動回路15における誤動作が確認され、段階S4において欠陥通報が出される。
【0060】
別の実施例では、圧力センサ52又は圧力開閉器の代わりに又はそれに加えて、3ポート2位置切換え電磁弁40における電流及び/又は電圧の監視が行われる。即ち3ポート2位置切換え電磁弁40へ流れる電流及び/又はこの弁にかかる電圧が測定される。この電流及び電圧は制御装置27において利用可能であり、従って3ポート2位置切換え電磁弁40に至る電気導線又は空気導管を設けることなしに制御装置27において測定可能である。従ってこのような解決策では、構造費が非常に少ない。3ポート2位置切換え電磁弁40が動作可能であり、従って計画通りに開閉すると、電磁弁40における誘導により、電磁弁40が固着している場合に比べて電磁弁40の電流又は電圧の測定可能な変化が起こる。従って制御装置27において、電磁弁40の電流又は電圧の推移が監視される。この推移が所定の推移に一致していないと、段階S4において欠陥通報が出される。
【0061】
前記の実施例において、段階S4による欠陥通報は、光表示手段53例えば監視灯により、かつ/又は音響表示手段54例えばブザーにより出される。その段階S5において、第2の駐車制動回路15の非常釈放機能の試験及び検査が終了される。しかし段階S3において第2の駐車制動回路15の誤動作が検出されない限り、欠陥通報を出すことなく段階S5において試験が終了される。
【0062】
本発明による解決策のため、非常釈放機能を持つ駐車制動機の釈放可能性を著しく改善し、それにより特に管破損または漏れ確認の場合非常釈放機能にもかかわらず駐車制動機がもはや釈放されず、車両をもはや引張って行くことができない確率を、少なくすることができる。
【0063】
前記の説明および特許請求の範囲においてあげられたすべての特徴は、個々にも本発明による駐車制動装置と組合わせ可能である。従って本発明は上述するか又は請求項の特徴の組合わせに限定されない。むしろ個々の特徴のすべての組合わせが開示されているものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常釈放機能を持つ車両特に商用車両の駐車制動装置であって、駐車制動機を釈放又は投入するための少なくとも1つのばね制動シリンダ(11)、第1の圧縮空気貯蔵容器(16)及びばね制動シリンダ(11)の給気又は排気のための第1の制御弁装置(17)を持つ第1の電空駐車制動回路(14)、及び第1の駐車制動回路(14)の故障の場合駐車制動機を非常釈放するための第2の電空駐車制動回路(15)を持ち、第2の駐車制動回路(15)が、第2の圧縮空気貯蔵容器(38)及び非常釈放の場合ばね制動シリンダ(11)に少なくとも給気するための第2の制御弁装置(40)を持ち、第2の制御弁装置(40)が、第2の圧縮空気貯蔵容器(38)に接続される給気ポート(41)と、大気に接続可能な排気ポート(45)と、ばね制動シリンダ(11)に接続可能な第3のポート(42)とを持っているものにおいて、第2の制御弁装置(40)の排気ポート(45)が、車両の外部範囲に終わる圧縮空気導管(46)に接続され、この圧縮空気導管(46)を経て圧縮空気が、外部の圧縮空気源(48)から第2の制御弁装置(40)の排気ポート(45)及び第3のポート(42)を経てばね制動シリンダ(11)へ供給可能であることを特徴とする、駐車制動装置。
【請求項2】
圧縮空気導管(46)が、車両の外部範囲に設けられる端部(47)に、外部の圧縮空気源(48)または外部の圧縮空気源(48)に通じる別の圧縮空気導管を連絡するための継ぎ手(47A)を持っていることを特徴とする、請求項1に記載の駐車制動装置。
【請求項3】
圧縮空気導管(46)が、車両の外部範囲に設けられる端部(47)に、逆止め弁を連結するための継手(47A)を持っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の駐車制動装置。
【請求項4】
非常釈放機能を持つ車両特に商用車両の駐車制動装置であって、駐車制動機を釈放又は投入するための少なくとも1つのばね制動シリンダ(11)、第1の圧縮空気貯蔵容器(16)及びばね制動シリンダ(11)の給気又は排気のための第1の制御弁装置(17)を持つ第1の電空駐車制動回路(14)、及び第1の駐車制動回路(14)の故障の場合駐車制動機を非常釈放するための第2の電空駐車制動回路(15)を持ち、第2の駐車制動回路(15)が、第2の圧縮空気貯蔵容器(38)及び非常釈放の場合ばね制動シリンダ(11)に少なくとも給気するための第2の制御弁装置(40)を持ち、第2の制御弁装置(4が、第2の圧縮空気貯蔵容器(38)に接続される給気ポート(41)と、大気に接続可能な排気ポート(45)と、ばね制動シリンダ(11)に接続可能な第3のポート(42)とを持っている、特に請求項1〜3の1つに記載のものにおいて、駐車制動装置(10)が、更に少なくとも第2の制御弁装置(40)を制御するための電気又は電子制御装置(27)を持ち、第2の駐車制動回路(15)を動作させるため、非常釈放の場合とは無関係に第2の制御弁装置(40)が試験的に操作可能であるように、制御装置(27)が構成されていることを特徴とする、駐車制動装置。
【請求項5】
第2の制御弁装置(40)が、所定の時点に自動的に操作可能であることを特徴とする、請求項4に記載の駐車制動装置。
【請求項6】
車両の停止段階中に常用制動機が操作されると、第2の制御弁装置(40)が操作可能であることを特徴とする、請求項5に記載の駐車制動装置。
【請求項7】
車両の機関の始動の直後に、第2の制御弁装置(40)が操作可能であることを特徴とする、請求項6に記載の駐車制動装置。
【請求項8】
車両の停止の直前に、第2の制御弁装置(40)が操作可能であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の駐車制動装置。
【請求項9】
制御装置(27)が電気操作素子(T)特に電鍵又は開閉器に接続されて、操作素子(T)の操作に応答して第2の制御弁装置(40)を手動で操作することを特徴とする、請求項4〜8の1つに記載の駐車制動装置。
【請求項10】
第2の駐車制動回路(15)の誤動作が確認されると欠陥通報を出すために、制御装置(27)が、第2の駐車制動回路(15)の動作能力を監視する手段(52)及び欠陥表示手段(53;54)を持っていることを特徴とする、請求項4〜9の1つに記載の駐車制動装置。
【請求項11】
請求項1〜10の1つに記載の非常釈放機能を持つ駐車制動装置の操作方法であって、第2の駐車制動回路(14)の故障の際駐車制動機を非常釈放するため、排気ポート(45)に接続される圧縮空気導管(46)の車両外部範囲で終わる端部(47)が、外部の圧縮空気源(48)に接続され、圧縮空気が、この圧縮空気源(48)から第2の制御弁装置(40)の排気ポート(45)及び第3のポート(42)を経てばね制動シリンダ(11)へ供給され、それにより駐車制動機が非常釈放される、方法。
【請求項12】
圧縮空気導管(46)の端部にまず逆止め弁(49)が取付けられ、それから逆止め弁(49)に外部の圧縮空気源(48)又はこの圧縮空気源(48)へ通じる別の圧縮空気導管が接続され、圧縮空気が外部の圧縮空気源(48)から第2の制御弁装置(40)へ流れるけれども逆の方向には流れないように、逆止め弁(49)が取付けられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜10の1つに記載の非常釈放機能を持つ駐車制動装置の操作方法特に請求項11又は12に記載の方法において、第2の駐車制動回路(15)を動作させるため、第2の制御弁装置(40)が、電気又は電子制御装置(27)により、非常釈放の場合とは無関係に試験的に操作される、方法。
【請求項14】
第2の制御弁装置(40)が所定の時点に自動的に操作される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
車両の停止段階中に常用制動機が操作されると、第2の制御弁装置(40)が操作される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
車両の機関の始動の直後に第2の制御弁装置(40)が操作される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
車両の停止の直後に第2の制御弁装置(40)が操作される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
第2の制御弁装置(40)が手動で操作される、請求項13〜17の1つに記載の方法。
【請求項19】
制御装置(27)が第2の制御弁装置(40)の試験的操作を監視し(S2)、第2の駐車制動回路(15)の誤動作(S3)が確認される場合欠陥通報を出す(S4)、請求項13〜18の1つに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−523384(P2010−523384A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501420(P2010−501420)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002571
【国際公開番号】WO2008/122382
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(596055475)ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (47)
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
【Fターム(参考)】