説明

非接触型表面導電率測定プローブ

コーティング材料の導電率を求める非接触型プローブ(100)を開示する。プローブ(100)は、選択された発振周波数で動作する自励発振器(40)と、IC回路から形成されるセンサと、センサコイル(44)の磁気誘導の変化に応答するLC回路の変化を検出する検出器と、信号の検出変化を表面導電率データに変換するマイクロプロセッサと、を備える。検出器は周波数検出器とすることができ、この周波数検出器はLC回路の共振周波数の変化を検出する、または検出器は振幅検出器とすることができ、この振幅検出器はLC発振器(40)の信号振幅の変化を検出する。センサはLC回路のコイルインダクタ(44)である。センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して測定装置に関し、特に表面導電率の測定に使用するインダクタ−キャパシタ(inductor−capacitor:LC)プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
ステルス機のガラス/ポリカーボネート製ウインドシールド及びプラスチックランプカバーには、レーダ信号の散乱処理のために、インジウム錫酸化物(Indium Tin
Oxide:ITO)のような高導電性コーティングが塗布されている。グラファイト及びファイバガラスから成る複合表面には、銀表面または同様な導電表面が頻繁に使用される。これらの導電性コーティングの電気特性はオーム/スクエア(ohms/sqare:Ω/sq)の単位で表示される面抵抗により特徴付けられる。
【0003】
4端子プローブは直流(DC)抵抗測定装置であり、このデバイスは導電表面に直接接触する必要がある。これらの部品の組み立てが完了すると、ウインドシールドのITOコーティングはウレタントップコートにより保護される。銀塗装複合表面にはウレタン系カラーペイントが施される。これらのトップコートは、導電コーティングを絶縁し、4端子プローブを使用して行なわれる導電剤の電気的試験をできなくする。
【0004】
銀塗料は数年の耐用年数を有する。耐用年数を超えると、銀塗料は、例えば酸化によって導電性が失われる。コーティングの導電性に対する定期的な修復検査が必要になる。従って、導電層の面抵抗を絶縁トップコートを通して測定する方法が必要となる。
【0005】
表面の隙間及び継ぎ目がレーダ信号に対する主要な散乱源となる。レーダ信号の散乱を抑えるためには、表面の隙間は通常、導電性コーキング剤により充填される。ほとんどの導電性コーキング剤はポリマー及び金属粒子から形成される。ニッケル粒子が、低価格であり、かつ化学的に不活性であるという理由により一般的に使用される。硬化したポリマーが縮むことによって金属粒子が固まって、コーキング剤に直流(DC)導電性をもたらす。導電性コーキング剤が表面の隙間に形成されるので、コーキング剤は周囲雰囲気及び機械的ストレスに晒される。コーキング剤の導電率はポリマーの使用年数が経過し、ポリマーの弾性が低くなるにつれて減少する。絶縁カラーペイントの厚さによって稼働状態にある機器に含まれるコーキング剤の直流(DC)試験ができなくなる。導電性コーキング剤の検査はニッケル粒子の磁気特性により更に複雑になる。渦電流も磁気誘導も中程度の導電性を有する磁性材料には生じない、というのは、導電体の渦電流は金属の強誘電性によって生じる磁気誘導を打ち消すからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、中程度の導電性を有する磁性材料の導電率を測定する方法が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
材料の導電率を求めるための非接触型表面導電率測定プローブについて開示する。プローブは、発振器と、LC回路により形成されるセンサと、LCセンサ回路の応答を検出する検出器と、検出信号を表面導電率に変換するマイクロプロセッサとを含む。検出器は、LC回路の共振周波数の変化を検出する周波数カウンタであってもよいし、あるいは、検出器は、LC回路の両端に現われる信号振幅の変化を検出するRFレベル検出器であってもよい。LC回路はキャパシタ(c)及びセンサコイル(L)を含む。センサコイルのインダクタンス及び誘電正接(dissipation factor)は、センサコイル
近傍の材料の導電率及び透磁率によって変化する。
【0008】
好適には、発振器及びLCセンサ回路を組み合わせて自励発振器を形成する。更に好適には、発振器はコルピッツ(Colpitts)発振器である。
好適には、発振周波数は約21MHzである。
【0009】
通常の用途においては、センサコイルは試験表面から一定距離だけ離れた位置に保持される。表面抵抗は共振周波数の偏移、またはLC回路の共振出力電圧の変化により測定することができる。共振周波数または信号振幅の偏移は一連の標準薄膜の既知の抵抗値に関連付けて試験表面の面抵抗を求める。標準薄膜の抵抗値に対するセンサの応答特性は、マイクロプロセッサ回路に保存することができる。例示としての実施形態では、プローブは約0.01Ω/sq〜約30Ω/sqの範囲の表面抵抗を有する。
【0010】
試験表面または目標表面は導電性の非磁性材料であり得る。共振周波数の偏移を測定する操作は好適な検出法である。材料が導電性の非磁性材料である場合、表面導電率が高くなると大きな渦電流が導電表面に生じ、大きな磁界が形成される。この磁界はセンサによって生成される磁界を打ち消す。磁界を打ち消す磁界、または逆方向の磁界が大きくなると、共振周波数偏移(増大)が大きくなる。
【0011】
試験表面は強磁性材料であってもよい。発振器の出力レベルを測定する操作は好適な検出法である。材料が強磁性材料である場合、表面導電率が高くなることによって、より大きな負荷がLC回路に掛かり、発振器の出力レベルが低くなる。
【0012】
プローブは導電率測定値を表示する表示装置を含むことができる。
試験表面は、磁気レーダ吸収剤(Magnetic Radar Absorbing
Material:MagRAM)を含むことができる。共振周波数偏移の測定値を使用してMagRAMコーティングの厚さを求めることができる。MagRAMコーティングが厚くなると、磁束鎖交数が増加し、センサコイルのインダクタンスが大きくなる。その結果、共振周波数はMagRAMコーティングの厚さが大きくなると低くなる。MagRAMは導電基板または非導電基板を有することができる。MagRAMコーティングを非導電性の塗料コーティングにより被覆してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のこれらの特徴だけでなく他の特徴も、添付の図を参照することにより一層明らかになる。
コーティング材料の表面導電率を検知するインダクタ−キャパシタ(Inductor−Capacitor:LC)プローブ10を開示する。プローブ10はLC発振器の出力周波数または出力振幅を測定する。プローブを使用して、絶縁トップコートを通して導電層の表面抵抗を求め、充填されている隙間充填材の導電率を求めることができる。プローブは、低可観測性の表面処理に使用される磁気レーダ吸収剤(Magnetic Radar Absorbing Material:MagRAM)のような磁気コーティングの厚さを測定するために用いることもできる。プローブの適用例として、絶縁下地塗料(insulating primer)及び塗料コーティングの下の銀塗料、導電性の充填済み隙間充填材、ウインドシールド及びランプの上のITOコーティングの導電率の検査が挙げられる。
【0014】
次に図面を参照するが、これらの図面は、本発明の好適な実施形態を説明するための例示としてのみ使用され、従って本発明を制限するものではない。図1は試験表面の典型的な構成を示している。LCプローブ10は携帯型プローブであり、このプローブを使用して非導電性トップコート12によって絶縁される薄膜導電層14の表面抵抗を測定する。
図1は試験表面の典型的なコーティング積層構造を示している。最上層12は絶縁塗料層及び/又は絶縁下地塗料層である。中間層14は試験対象の導電層である。基板16は非導電性の複合構造または導電性の複合構造とすることができる。
【0015】
LC発振器出力振幅を測定することにより、LCプローブ10は、充填されている隙間充填材の導電率の低下を検出する機能を備える。隙間充填材または導電性コーキング剤は中位の導電性を示す磁性材料、または非磁性材料である。図2は導電性コーキング剤の典型的な構成を示している。絶縁トップコート12はカラーペイント及び下地塗料層から成る。導電性コーキング剤18は導電構造20aと導電構造20bとの間の表面隙間22全体に渡る電気的導通性を確保してレーダ信号の散乱を最小限に抑える。導電性コーキング剤18の導電性が失われると、レーダ散乱を抑制するコーキング剤の機能が低下する。導電性コーキング剤18をLCプローブ10で検査することにより、材料の電気的不具合を検出することになる。
【0016】
LCプローブのセンサコイルは、磁気誘導だけでなく渦電流も検出でき、これによりプローブ10はMagRAMの厚さを測定することができる。異なる厚さを有する幾つかのMagRAMサンプルについてプローブの共振周波数の偏移に対してカーブフィッティングを行なうことにより、フィッティング曲線を使用してセンサ出力をMagRAMの厚さに変換することができる。
【0017】
LCプローブセンサのコアはインダクタ(L)及びキャパシタ(C)により構成される共振回路である。インダクタは検出素子であるコイルである。一の実施形態では、インダクタは、巻き数が15で直径が約0.508cm(0.2インチ)の自立コイルである。並列キャパシタを一緒に使用することにより、共振回路が形成される。共振周波数(F)は次式で与えられる。
【0018】
【数1】

【0019】
10MHz〜30MHzの共振周波数範囲によって中程度から高い導電性を有する導電表面(0.1〜30Ω/sq)に対して良好な感度が得られることが判明した。
幾つかの実施形態では、センサコイルをプリント回路(PC)基板の上にエッチングにより形成して、プローブ10の小型化を推進する。プリント回路基板の空き表面がセンサ表面となる。平面コイルは、試験表面から一定の距離だけ離れた位置にプリント回路基板によって保持される。例示としての実施形態では、PC基板の厚さは約0.762mm(0.03インチ)であり、センサは、1.27cm(0.5インチ)の外径を有する8巻きコイルであり、該コイルは共振周波数を15MHzに調整されている。図3はPC基板の上にエッチングにより形成されるセンサコイルの一例を示している。図示の例では、エッチングコイル32は、PC基板30の上にエッチングにより形成される銅線である。
【0020】
LCプローブ10は試験表面の導電率及び試験表面からの距離の両方を検出する。不均一なトップコート厚さ、または塗料厚さは導電率測定の精度を低下させる。好適には、コイルは、試験表面から塗料厚さ(約0.127mm(0.005インチ))に対して大きな距離(0.762mm(0.030インチ))だけ離れた位置にプリント回路基板によって保持されるので、トップコート厚さが多少ばらついても表面導電率測定に与える悪影響は軽減される。
【0021】
フェライト棒及びC字型フェライトコアに巻き付けるコイルのような他のセンサコイル構成を使用してLCプローブ10の小型化を推進し、LCプローブ10の感度を高くすることができる。
【0022】
図4はLCプローブの一実施形態の簡易回路図である。LC回路及び負荷抵抗RLは電圧分割器を形成し、固定周波数発振器信号の一部をRF電圧計に供給する。センサコイルの近傍に導電材料が位置しない状態で、LC回路を調整して発振周波数で共振させる。共振点では、LC結合は大きな回路インピーダンスを示す。小さな信号レベルが負荷抵抗RLの両端に現われることになる。電圧レベルはRF電圧計が検出する。センサコイルが導電表面に載置されると、コイルが生成する磁界が渦電流を導電表面に生じさせる。この渦電流によって対向磁界が生じ、この対向磁界によってコイルを貫通する正味の磁束密度が小さくなる。その結果、センサコイルのインダクタンスが小さくなる。従って、共振周波数が高くなる。LC回路の共振周波数が固定発振周波数から動くと、LC回路のインピーダンスは低くなる。電圧分割器によって大きな信号がRF電圧計に供給されるようになる。表面導電率が高くなると発振周波数からのLC共振周波数の偏差が大きくなり、かつLC回路インピーダンスが更に低くなる。従って検出電圧はLC回路の性能低下(周波数の偏移)の指標となる。センサコイルが導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持される場合、センサ出力は表面導電率の関数となる。センサ出力を一連の標準薄膜の既知の抵抗値に対してマッピングして等価読み取り値をΩ/sq単位で表示することができる。
【0023】
渦電流を利用するほとんどの導電性試験装置と同じように、それらの校正された導電率読み取り値、または抵抗率読み取り値は強磁性導電体に関しては有効でない。これまでの検出手法は、導電性の非磁性導電材料の導電率測定に対してのみ適用することができる。
【0024】
センサコイルが強磁性材料の近傍に配置されると、この材料の高い透磁率(μ)によってコイルの2つの端部または極の間のリラクタンス(磁気抵抗)が低下するが、この低下は、磁束線が通る経路が短くなることにより生じる。従ってコイルインダクタンスが大きくなる。導電性の非磁性材料とは異なり、LCの共振点は低い周波数に偏移する。高い透磁率を有する材料によってコイルインダクタンスが非常に大きくなる。材料の磁気特性を材料の誘導応答によって蓄積するセンサコイルは磁気誘導センサとして知られている。これらのセンサの一般的な用途は磁気コーティングの厚さ測定である。簡単な回路構成を維持しつつLCセンサの実用性を高めるために、LC結合を構成し直して図5に示すように自励発振器(free−running oscillator)を形成する。図5に示す発振回路は好適な構成であり、この構成では、発振器の周波数範囲安定度及び出力安定性の点からコルピッツ発振器を使用する。
【0025】
発振周波数(FOSC)は次式により与えられる。
【0026】
【数2】

【0027】
上式において、
EQ=C//Cである。
公称動作周波数は約21MHzである。試験対象が無い状態で、発振周波数及び出力振幅を測定し、後続の計算の基準として記録する。センサコイルを導電性の非磁性表面に載置すると、導電体の渦電流によって生じる対向磁界が作用してコイルインダクタンスが小さくなり、発振周波数(FOSC)が高くなる。
【0028】
図6はLCプローブ周波数を非磁性薄膜の抵抗値の関数として示すグラフである。LCプローブは0.1Ω/sq〜4Ω/sqの表面抵抗に対して非常に高い感度を示す。プローブの感度は図6に示すように急激に小さくなるが、プローブ周波数の読み取り値は2KHz以内の精度で安定する。従って、プローブによって約30Ω/sqまでの抵抗率に関して許容できる感度が得られる。
【0029】
強磁性体が近傍に位置すると、コイルインダクタンスは大きくなり、発振周波数は低くなる。周波数変化の大きさは材料の質量及び透磁率の関数である。ほとんどのMagRAMの密度及び透磁率を高精度に制御することができるので、LCを使用してMagRAMの厚さを測定することができる。媒体充填MagRAM(medium load MagRAM)の厚さに対するLCプローブの応答を図7に示す。これらの測定が行なわれる場合、試験サンプルは一本の厚い高剛性の誘電発泡体によって支持されるので、結果は支持基板の電磁特性の影響を受けなかった。
【0030】
図5に示す発振器の出力レベルはセンサコイルのクオリティファクター(Q factor)の関数である。導電表面(磁性または非磁性)をセンサコイルの近傍に置くと、RF信号の一部が導電体と誘導結合し、導電体によって消失する。従って、LC回路に蓄積されるエネルギーが小さくなる。回路性能から見ると、コイルの内部抵抗が大きくなり、発振器のクオリティファクターが低下する。その結果、発振器の出力振幅は小さくなる。図8は、LCプローブの出力振幅を表面抵抗率の関数として示すグラフである。図8に示す試験データは、プローブ出力が、約0.2Ω/sqから40Ω/sqに増える表面抵抗と共に単調に大きくなることを示している。出力電圧は約0.2Ω/sqで最も低くなる。この現象から、導電表面によって結合し、消失するエネルギーの大きさは約0.2Ω/sqで最大になることが推測される。0.2Ω/sq以下では、LC回路に蓄積されるエネルギーは、非常に小さい負荷インピーダンスに起因して、効率的に伝送され、消費されるということがない。この仮定を立証するために、並列LC回路を掃引周波数を使用するインピーダンスアナライザーに接続した。回路のQファクターはコイルを同じ表面抵抗の範囲で試験したときに最小値を示した。最小値の左側を排除することにより、LCプローブの単調な振幅応答は、導電性コーキング剤及び導電性充填材のような中程度の導電性を有する磁性材料の導電率測定の手段となる。
【0031】
図9はLCプローブ10の例示としての実施形態のブロック図を示している。図5に示すような発振器40はシリンダー状プローブハウジング42に収納される。好適な実施形態では、発振器は21MHzの発振周波数を有する。センサコイル44はプローブの測定端のナイロンキャップ46の中央部に封止される。発振器出力はバッファリングされ、計器ボックスに同軸ケーブル48を通して供給される。計器ボックスに入ると、RF信号は増幅され、2つの経路に分岐される。一方の経路50はダイオード検出器52に至る。他方の経路54は18ビットカウンタ56に至る。ダイオード検出器52は21MHzのRF信号の振幅をDC電圧に変換する。18ビットカウンタ56はRF信号をスケーリングして10KHz未満のデジタル信号に変換する。次に、処理されたこれらの信号は、12ビットA/D変換器58及び16ビットタイマー/カウンタ60によってデジタル化される。図9に示すLCプローブの例示としての実施形態は2つのボタンを有する。すなわち、一方のボタン62によって利用可能な試験機能をスクロールし、他方のボタン64を使用して試験機能を選択する。発光ダイオード(LED)66は、簡易試験基準を満たしているかどうかを示すゴー(続行)信号またはノーゴー(続行不可)信号を表示する表示器として機能する。選択される測定対象(例えば、銀塗料、ITOの導電率、MagRAM厚さ)に応じて、プローブ周波数及び/又はプローブ出力振幅を取得し、適切な処理ルーティンに渡すことができる。処理ルーティンのロジックはマイクロプロセッサ68に保存される。マイクロプロセッサは、例えば8051マイクロプロセッサである。デジタル出
力は液晶ディスプレイ(LCD)のような画面に表示することができる。
【0032】
LCプローブ10の用途には、塗布したコーティング及びコーキング剤の導電率、及びMagRAM厚さ及び均一性の検査が含まれる。プローブ10は、渦電流、磁気誘導、及びエネルギー結合を測定する機能を単一の装置に組み込んでいる。このプローブの簡単な検出手法によって、複雑な振幅及び位相検出回路が必要ではなくなる。従来の渦電流及び磁気誘導プローブとは異なり、LCプローブ10は共振型センサを使用することにより検出感度を高めることができる。プローブの約21MHzの動作周波数は、ほとんどの従来の渦電流及び磁気誘導プローブよりもかなり高い。
【0033】
LCプローブの例示としての実施形態は、約0.01Ω/sq〜30Ω/sqの薄膜抵抗率測定範囲を有する。小さなプローブ接触面積及びプローブの高い動作周波数によって、導電性充填材を隣接構造からの干渉を低減した状態で検査することができる。このLCプローブは、耐用期間中の銀塗料、補修コーティング、及び0.508cm(0.2インチ)以上の隙間に充填される導電材料を日常的に検査するのに適する。
【0034】
ほとんどの導電性の隙間充填剤及び導電性コーキング剤は、それらにはニッケル粒子またはニッケルで被覆した粒子が充填されているため磁性材料である。これらの導電性隙間充填剤及び導電性コーキング剤の導電率は、材料の使用時間が経つにつれて低くなる。これらの材料は高い透磁率及び中程度の導電率を有するので、磁気誘導による周波数偏移は、渦電流により生じる偏移を打ち消す方向に作用し、渦電流により生じる偏移を大きく左右する。その結果、渦電流はこれらの導電磁性材料の劣化を定量化するためには有効ではなくなるか、または渦電流によってこれらの導電磁性材料の劣化を定量化することができなくなる。LCプローブ10はこの問題を、共振回路に蓄積されるエネルギーの消失を測定することにより解決する。周波数偏移に加えられる逆方向の効果によって生じる複雑さをこのようにして解消する。
【0035】
LCプローブ10を薄膜導電率測定に関して校正する操作は簡単である。0.1Ω/sq〜40Ω/sqの範囲の一連の標準薄膜を測定する。Ω/sq単位の値をプローブ読み取り値の関数としてフィッティングして得られるフィッティング曲線を生成し、LCプローブのマイクロコントローラ68にプログラムする。このプロセスは、プローブ10またはプローブの電子機器を修理しない限り、ほとんど繰り返す必要が無い。LCプローブ10の電源を投入すると、導電材料または磁性材料が傍に無い状態でのプローブ出力に関する測定値が得られ、これにより検出電圧及び検出周波数のずれを調整する。この測定を行なった後、プローブ10を使用する準備が整う。校正標準はプローブを日常的に使用するためには必要ではなくなる。
【0036】
異なるプローブヘッドは、プローブの異なる実施形態において使用することができる。種々のプローブヘッドは異なるサイズとすることができる。最近行なった実験から、LCプローブを使用して導電性ファイバマットを検査することができることが判明した。前記ファイバマットは未加工のものであってもよいし、または樹脂を含浸させたものであってもよい。
【0037】
本発明の例示としての、かつ現時点で好適と考えられる実施形態について本明細書において詳細に記載してきたが、本発明のコンセプトは開示した以外の種々の方法により具体化し、採用することができ、更には添付の請求項が先行技術によって制限される場合を除き、このような変更を含むと考えられるべきものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従って形成されるLCプローブが使用される試験表面の典型的な構成を示す図。
【図2】LCプローブが使用される、導電性コーキング剤が充填された隙間の典型的な構成を示す図。
【図3】プリント回路基板の上にエッチングにより形成されるセンサコイルを示す図。
【図4】LCプローブの略回路図。
【図5】LCセンサを形成するコルピッツ発振器を示す図。
【図6】導電性の非磁性薄膜の抵抗値に対する典型的なLCプローブ周波数応答を示すグラフ。
【図7】使用可能期間の半分程度使用したMagRAMに対する典型的なLCプローブ周波数応答を示すグラフ。
【図8】導電性の非磁性薄膜の抵抗値に対する典型的なLCプローブ振幅応答を示すグラフ。
【図9】例示としてのLCプローブのブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電表面を有する材料の導電率を測定するための非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、該センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の共振周波数の変化を検出する周波数検出器と、
(d)共振周波数の検出された変化を表面導電率データに変換するマイクロプロセッサと、
(e)センサコイルを導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持するスペーサとを備えるプローブ。
【請求項2】
発振器は自励発振器である請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
自励発振器はコルピッツ発振器である請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
発振周波数は無線周波数である請求項1記載のプローブ。
【請求項5】
発振周波数は約21MHzである請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
共振周波数の偏移に基づいて表面抵抗測定値を求めるために、プローブは導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持されている請求項1記載のプローブ。
【請求項7】
導電表面を有する材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、前記センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の共振周波数の変化を検出する周波数検出器と、
(d)共振周波数の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサとを備え、センサコイルは、共振周波数の偏移に基づいて表面抵抗測定値を求めるために、導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持されており、前記共振周波数の偏移は一連の標準薄膜の既知の抵抗値に対してマッピングされて、表面抵抗測定値をΩ/sq単位の等価読み取り値として生成する、プローブ。
【請求項8】
一連の標準薄膜の既知の抵抗値はマイクロプロセッサに保存される請求項7記載のプローブ。
【請求項9】
プローブは約0.01Ω/sq〜約30Ω/sqの範囲の表面抵抗を有する請求項7記載のプローブ。
【請求項10】
材料は導電性の非磁性材料である請求項7記載のプローブ。
【請求項11】
材料は強磁性材料である請求項7記載のプローブ。
【請求項12】
導電率測定値を表わす出力を表示する表示装置を更に備える、請求項1記載のプローブ。
【請求項13】
材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、前記センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の共振周波数の変化を検出する周波数検出器と、
(d)共振周波数の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサとを備え、前記材料の上部にはMagRAMコーティングが塗布されており、導電率測定値を用いて、MagRAMコーティングの厚さを磁気誘導により求める、プローブ。
【請求項14】
材料は導電基板または非導電基板を有する請求項13記載のプローブ。
【請求項15】
材料は非導電表面を有する請求項13記載のプローブ。
【請求項16】
MagRAMコーティングは非導電性の塗料コーティングによって被覆される請求項13記載のプローブ。
【請求項17】
導電表面を有する材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつ共振周波数で共振するように動作するとともに、センサコイル(L)を備えたLC回路を有するセンサであって、前記センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の信号振幅の変化を検出する信号振幅検出器と、
(d)信号振幅の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサと、
(e)センサコイルを導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持するスペーサとを備えるプローブ。
【請求項18】
発振器は自励発振器である請求項17記載のプローブ。
【請求項19】
自励発振器はコルピッツ発振回路である請求項18記載のプローブ。
【請求項20】
発振周波数は無線周波数である請求項17記載のプローブ。
【請求項21】
発振周波数は約21MHzである請求項20記載のプローブ。
【請求項22】
前記プローブは、表面抵抗測定値を信号振幅の偏移に基づいて求めるために、導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持されている請求項17記載のプローブ。
【請求項23】
導電表面を有する材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、前記センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の信号振幅の変化を検出する信号振幅検出器と、
(d)信号振幅の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサとを備え、
材料は導電表面を有し、センサコイルは、信号振幅の偏移に基づいて表面抵抗測定値を求めるために、導電表面から一定距離だけ離れた位置に保持されており、信号振幅の偏移は一連の標準薄膜の既知の抵抗値に対してマッピングされて表面抵抗測定値をΩ/sq単位の等価読み取り値として生成する、プローブ。
【請求項24】
一連の標準薄膜の既知の抵抗値は変換回路に保存される請求項23記載のプローブ。
【請求項25】
プローブは約0.01Ω/sq〜約30Ω/sqの範囲の表面抵抗を有する請求項23記載のプローブ。
【請求項26】
材料は導電性の非磁性材料である請求項23記載のプローブ。
【請求項27】
材料は強磁性材料である請求項23記載のプローブ。
【請求項28】
更に、導電率測定値を表わす出力を表示する表示装置を備える、請求項17記載のプローブ。
【請求項29】
材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、前記センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化するセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の信号振幅の変化を検出する信号振幅検出器と、
(d)信号振幅の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサとを備え、
前記材料の上部にはMagRAMコーティングが塗布されており、導電率測定値を用いて、磁気誘導を利用することによってMagRAMコーティングの厚さを求め、LC回路に蓄積されるエネルギーの消費量を測定する、プローブ。
【請求項30】
材料は非導電表面を有する請求項29記載のプローブ。
【請求項31】
MagRAMコーティングは非導電性の塗料コーティングによって被覆される請求項29記載のプローブ。
【請求項32】
試験表面を有する材料の導電率測定を行なう非接触型表面導電率測定プローブであって、
(a)選択された発振周波数で動作する発振器と、
(b)発振器の一体化部分であり、かつほぼ平坦なセンサコイル(L)を備えるLC回路を有するセンサであって、センサコイルのインダクタンスがセンサコイルの近傍の材料の導電率によって変化し、前記センサコイルは、該センサコイルが試験表面から一定距離だけ離れた位置にプリント回路基板によって保持されるように、プリント回路(PC)基板の上にエッチングされているセンサと、
(c)センサコイルの磁気誘導の変化に応答するLC回路の共振周波数の変化を検出する周波数検出器と、
(d)共振周波数の検出変化を表面導電率データに変換するプロセッサとを備えるプローブ。
【請求項33】
PC基板は厚さが約0.762mm(0.03インチ)であり、かつ試験表面と界接する空き表面を有する、請求項32記載のプローブ。
【請求項34】
センサコイルは、約15MHzの共振周波数に調整された8巻きのコイルである、請求項32記載のプローブ。
【請求項35】
エッチングされたセンサコイルは銅線である請求項32記載のプローブ。
【請求項36】
エッチングされたセンサコイルは約1.27cm(0.5インチ)の外径を有する請求項32記載のプローブ。
【請求項37】
エッチングにより形成されるセンサコイルはPC基板上にほぼらせん状の構造を有する請求項32記載のプローブ。
【請求項38】
発振器は自励発振器である請求項32記載のプローブ。
【請求項39】
自励発振器はコルピッツ発振回路である請求項38記載のプローブ。
【請求項40】
発振周波数は無線周波数である請求項32記載のプローブ。
【請求項41】
発振周波数は約21MHzである請求項40記載のプローブ。
【請求項42】
センサコイルは、共振周波数の偏移に基づいて表面抵抗測定値を求めるために、試験表面から一定距離だけ離れた位置に保持されている請求項32記載のプローブ。
【請求項43】
信号振幅の偏移は、一連の標準薄膜の既知の抵抗値に対してマッピングされて、表面抵抗測定値をΩ/sq単位の等価読み取り値として生成する請求項42記載のプローブ。
【請求項44】
一連の標準薄膜の既知の抵抗値はプロセッサに保存される請求項43記載のプローブ。
【請求項45】
プローブは約0.01Ω/sq〜約30Ω/sqの範囲の表面抵抗を有する請求項43記載のプローブ。
【請求項46】
材料は導電性の非磁性材料である請求項43記載のプローブ。
【請求項47】
材料は強磁性材料である請求項43記載のプローブ。
【請求項48】
更に、導電率測定値を表わす出力を表示する表示装置を備える、請求項32記載のプローブ。
【請求項49】
前記材料の上部にはMagRAMコーティングが塗布されており、導電率測定値を用いて、磁気誘導を利用することによってMagRAMコーティングの厚さを求めて、LC回路に蓄積されるエネルギーの消費量を測定する、請求項32記載のプローブ。
【請求項50】
材料は非導電表面を有する請求項49記載のプローブ。
【請求項51】
MagRAMコーティングは非導電性の塗料コーティングによって被覆される請求項49記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−506621(P2006−506621A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552107(P2004−552107)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/036029
【国際公開番号】WO2004/044539
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】