説明

非接触式測定及び検査用装置

【課題】 測定値(検査値)の演算時間を短縮化し、迅速に且つ精度良く測定、検査でき、また照明装置からの発熱を抑え、消費電力を低減でき、定盤を薄型化、小型化、軽量化でき、更にはちらつきや眩しさを防いで測定や検査を容易にできるようにする。
【解決手段】 定盤1上の被測定物3を映すためのカメラ2と、このカメラ2の画像データを処理する演算処理部4と、この演算処理部4で処理したデータを表示する表示部5と、またカメラ2を前後及び左右方向に水平状態で送るための送り機構6とを備えて形成する。定盤1の上面を、透明板1aで形成する。この透明板1aの下側に、透明板1aを介して被測定物3を照明するためのシート状面発光体7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触式測定及び検査用装置に関し、更に詳しくは例えば小孔、小物部品、柔かい物、プリント基板、版下、印刷物、その他の被測定物(検査時は被検査物)の孔ピッチや寸法、キズ、汚れ、欠陥などを、簡単に、しかも精密に測定及び検査できるよう形成した非接触式測定及び検査用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置としては、例えば定盤上の被測定物を映すためのカメラと、このカメラの画像データを処理する演算処理部と、この演算処理部で処理したデータを表示する表示部と、また上記のカメラを前後及び左右方向に水平状態で送るための送り機構とを備えて形成されているものがある(例えば特許文献1参照)。
而してこの種の従来装置の場合、被測定物を照明するときは、定盤に、蛍光灯等の固定照明装置や、或は例えば図8に示されるように発光ダイオードを用いた点光源aを平行一対状のガイドbで摺動させる移動追従型照明装置cを設け、これにより透明板dに置いた被測定物を下方から照らしてカメラeにより画像の入力を行なうよう形成されているのが通例であった。
【0003】
従ってこの種の従来装置によると、被測定物への照明の当たり方によって、被測定物の端面の形状から得られる有効寸法値にばらつきが生じたから、データの正確さを得るために補正手段を伴い、計測に時間がかかるのを避けられない、という問題点があった。
また従来装置の場合は、透明板の下側に組み込まれる照明装置によって定盤の高さが高くなり、照明装置とカメラを同期させて測定や検査を行なっていた。このため従来装置は、構造が複雑で装置の大型化や重量の増加を招き、カメラのレンズと測定面までの有効距離に制約を来たすことがあった。また従来装置によると、照明装置からの発熱や消費電力の増加、またちらつきや眩しさで測定作業がし難い等の諸問題があった。
【特許文献1】特開平8−201025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、測定値(検査値)の演算時間を短縮化し、迅速に且つ精度良く測定、検査でき、また照明装置からの発熱を抑え、消費電力を低減でき、定盤の薄型化、小型化、軽量化を図れ、更にはちらつきや眩しさを防いで測定や検査の容易化を図ることができるよう形成した非接触式測定及び検査用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、定盤1上の被測定物3を映すためのカメラ2と、このカメラ2の画像データを処理する演算処理部4と、この演算処理部4で処理したデータを表示する表示部5と、また上記のカメラ2を前後及び左右方向に水平状態で送るための送り機構6とを備えて形成されている非接触式測定及び検査用装置であって、上記の定盤1の上面が、透明板1aで形成され、この透明板1aの下側に、透明板1aを介して被測定物3を照明するためのシート状面発光体7が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
ここで、定盤1とは、被測定物3を載せるための平たい台を意味する。カメラ2は、レンズなどの光学系を用いて、被測定物3の映像を、撮像素子などの面上に結ばせる装置であり、高さ調節自在に設けられているのが良い。被測定物3は、検査時は被検査物であり、測定や検査の対象物を意味する。演算処理部4は、例えばマイクロコンピュータで形成される。また表示部5は、例えば7セグメント表示素子を備えてデジタル表示可能に形成されている。なお本発明は、データを出力できるよう、印刷機を備えて形成されているのでも良い。また送り機構6は、カメラ2を前後、左右に水平状態で送ることができるのであれば、その構造は任意である。またここで、シート状面発光体7とは、例えば薄膜エレクトロルミネッセンス素子で形成されている面光源を意味する。エレクトロルミネッセンスとは、蛍光体物質が電界により励起し、エネルギーを発光して放出することを言い、薄膜エレクトロルミネッセンス素子とは、電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心が励起されて発光する素子を言う。
【0007】
而して本発明は、図3等に示されるように、透明板1aの上に透明の樹脂板10が積層され、この樹脂板10が、上面に開口する多数の縦孔状の吸引孔11と、この吸引孔11同士を連通する吸引路12を有して形成され、この吸引路12の吸引口12aに吸引機13が接続されて形成されているのでも良い(請求項2)。
【0008】
なぜならこれによると、被測定物3が軽量物や、フィルム等の薄いシート状物の場合、被測定物3を定盤1に吸着させて測定、検査でき、測定作業等を確実且つ容易にできるからである。
【0009】
また請求項2に係る本発明の場合は、吸引路12が透明の樹脂板10の下面に溝状に形成され、この吸引路12が透明板1aで密閉されて横孔状に形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0010】
なぜならこれによると、吸引路12の形成、加工を、簡単化、容易化でき、その分、製造コスト、加工コストを低減化、軽減化できるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装置は、このように定盤がシート状の面発光体を備え、この面発光体により被測定物を均一、広範囲に、被測定物の端面に陰を作ることなく、照らすことができるよう形成しているものである。
従って本発明によると、測定値(検査値)の補正、演算時間を短縮でき、低コストで迅速に且つ精度良く測定(検査)できる。
また本発明は、面発光体によるため、光源からの発熱が軽微(周囲温度+2℃程度)であり、消費電力を低減化できる。また本発明によると、定盤を薄型化できるから、小型、軽量な装置を提供でき、更には防眩性を有するから測定作業(検査作業)を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1等において、1は定盤であり、2はこの定盤1上の被測定物3を映すためのカメラである。このカメラ2は、高画質なデジタル画像を取り込むことができるよう、電荷結合素子を備えたCCDカメラである。4は、カメラ2の画像データを処理する演算処理部としてのマイクロコンピュータである。また5は、この演算処理部4で処理したデータを、デジタル表示する表示部である。この表示部5は、7セグメント表示素子を備えて形成されている。
【0013】
また6は、上記のカメラ2を前後及び左右方向に水平状態で送るための送り機構である。この送り機構6は、カメラ2を左右方向に沿って水平状態で案内するための横枠6aと、この横枠6aをカメラ2と一緒に前後方向に移動させるための平行一対状のガイド部6bとで形成されている。上記のカメラ2は、レンズを下向きにして、横枠6aに取り付けられている。ガイド部6bは、定盤1の左右位置に、前後方向に延びて設けられている。横枠6aは、その左右の両端部が、ガイド部6bに、前後方向に摺動自在に係合され、前後方向に移動自在に形成されている。なお6cは、カメラ2を左右方向に微動送りするためのハンドルであり、6dは前後方向に微動送りするためのハンドルである。
【0014】
而して本発明の場合、上記の定盤1は、上面が透明板1aで形成され、この透明板1aの下側に、透明板1aを介して被測定物3を照明するためのシート状面発光体7が設けられている。面発光体7は、薄膜型のエレクトロルミネッセンスシートで形成されている。透明板1aは、この実施形態ではガラス板である。8は、面発光体7の駆動用のインバーターである。このインバーター8の、例えば周波数が高くなると、面発光体7は輝度が上がるよう構成されている。なお9は、電源コードである。
【0015】
次に本発明の作用を説明する。
先ず作業者は、透明板1aに、被測定物3としての例えばフィルムを載せる。次に作業者は、カメラ2を、横枠6a及びガイド部6bに沿って左右方向及び前後方向に移動させ、その後、被測定物3を撮影する。この画像データは、演算処理部4で処理され、表示部5に測定値(検査値)がデジタル表示される。
而して本発明の場合、面発光体7の電源を入れると、面発光体7から光が面発光体7の全面において、均等に、且つちらつくことなく照射される。従って本発明によると、被測定物3であるフィルムの表面のゴミや異物を簡単に発見でき、測定や検査の精度を上げることができる。また本発明は、被測定物3が、例えばラミネート状シートなどで、且つ端面が斜めに切断され、保護膜とシート本体との境界が見分けにくい場合でも、点光源(電球)や線光源(蛍光灯)による従来装置とは異なり、被測定物3の端面に陰ができにくい。従って本発明によると、この種の被測定物3の場合でも、被測定物3の端面を鮮明に映し出して測定や検査を正確に、且つ精度良く行うことができる。なお面発光体7の輝度調節は、インバーター8の周波数を変更して行なう。
【0016】
以上の処において、本発明の装置は、図3等に示されるように、定盤1が、被測定物3を、上面に吸着可能に構成されているのでも良い。
即ちこの本発明は、透明板1aの上に透明の樹脂板10が積層され、この樹脂板10が、上面に開口する多数の縦孔状の吸引孔11と、この吸引孔11同士を連通する吸引路12とを有して形成され、この吸引路12の吸引口12aに真空ポンプ等の吸引機13が接続されているものである。
【0017】
本発明の場合、上記の樹脂板10は、例えば無色のアクリル板で形成されている。吸引孔11は、樹脂板10の全面において吸引力が均等に働くよう、吸引路12の屈曲位置と、直線部の適宜位置に等間隔に形成されている。またこの実施形態の場合、吸引路12は、樹脂板10の下面に方形波の溝形に形成され、樹脂板10の下面に密着される透明板1aで密閉され、横孔状に形成されている。
【0018】
而してこの本発明の場合、作業者が、吸引機13のスイッチを入れると、吸引孔11と吸引路12が連通状であるから、吸引孔11の上端の開口箇所に負圧が生じる。従って被測定物3が、定盤1の上面、即ち樹脂板10の上面に吸着される。それ故、被測定物3が、例えばフィルム等の薄いシート状物や軽量物でも、定盤1に固定した状態で測定や検査を簡単、確実に行なうことができる。
【0019】
なおこの本発明の場合、上記の吸引路12は、溝形に形成される場合には限られず、樹脂板10の肉厚内に貫通孔状に形成されるのでも良い。また吸引路12は、その他例えば渦形に形成されるのでも良い。
更に本発明は、例えば図6、図7に示されるように、樹脂板10の下面が凹段差状に凹まれ、吸引路12が面状のスペースに形成されているのでも良い。吸引路12は、樹脂板10の下側に設けられる透明板1aで密閉されている。同図において、14は、吸引機13としての真空エジェクターである。この真空エジェクター14は、吸引路12と連通するよう吸引口12aに接続され、定盤1の側面に設けられている。またこの真空エジェクター14は、樹脂板10の全面において、被測定物3を均等に吸引できるよう、この実施形態では適宜位置に2個設けられている。樹脂板10は、吸引作用で上面が歪まないよう、適宜位置に脚部15が形成されている。この本発明の場合は、真空エジェクター14に圧縮空気が矢示(図6参照)のように通されると、この真空エジェクター14に吸引作用が働き、これにより被測定物3が樹脂板10の上面に吸着されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の装置の好適な一実施形態を示し、Aは要部斜視図、Bは要部縦断面図である。
【図2】同上装置の定盤の構成を示す要部分解斜視図である。
【図3】同上装置の他の実施形態を示す要部平面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】同上装置の更に他の実施形態を示す要部平面図である。
【図7】図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】従来例を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 定盤
1a 透明板
2 カメラ
3 被測定物(被検査物)
4 演算処理部
5 表示部
6 送り機構
7 シート状面発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤上の被測定物を映すためのカメラと、このカメラの画像データを処理する演算処理部と、この演算処理部で処理したデータを表示する表示部と、また上記のカメラを前後及び左右方向に水平状態で送るための送り機構とを備えて形成されている非接触式測定及び検査用装置であって、上記の定盤の上面が、透明板で形成され、この透明板の下側に、透明板を介して被測定物を照明するためのシート状面発光体が設けられていることを特徴とする非接触式測定及び検査用装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触式測定及び検査用装置であって、透明板の上に透明の樹脂板が積層され、この樹脂板が、上面に開口する多数の縦孔状の吸引孔と、この吸引孔同士を連通する吸引路を有して形成され、この吸引路の吸引口に吸引機が接続されて形成されていることを特徴とする非接触式測定及び検査用装置。
【請求項3】
請求項2記載の非接触式測定及び検査用装置であって、吸引路が透明の樹脂板の下面に溝状に形成され、この吸引路が透明板で密閉されて横孔状に形成されていることを特徴とする非接触式測定及び検査用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10482(P2006−10482A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187596(P2004−187596)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(599143885)株式会社中村製作所 (9)
【Fターム(参考)】