説明

鞍乗型車両のクッション取付構造

【課題】 クッションユニットのストローク長を長くして、車輪からの衝撃を確実に吸収して良好な乗り心地を得ることができる鞍乗型車両のクッション取付構造を提供する。
【解決手段】 車体フレーム11を構成する支持フレーム63の左右にサスペンションアーム103を構成するアッパアーム101及びロアアーム102を揺動可能に連結し、このサスペンションアーム103に後輪17を支持する。クッションユニット113の一端側を車体フレーム11に支持させ、クッションユニット113の他端側を、リンク部材112及びプッシュロッド114を介してアッパアーム101に支持させる。クッションユニット113は、車体フレーム11に支持される第1の端部113aが車体フレーム11の車体幅方向内側に位置し、サスペンションアーム103側に支持される第2の端部113bが車体フレーム11の車体幅方向外側に位置し、且つ、その軸線が車体フレーム11に交差して車体前後方向に延びるように、配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のクッション取付構造に関し、特に、不整地を走行する三輪或いは四輪車両に好適な鞍乗型車両のクッション取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不整地を走行する鞍乗型車両における後輪懸架構造としては、上下のアームからなるサスペンションアームによって車輪を支持するダブルウィッシュボーンタイプの独立懸架構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載の後輪懸架構造では、上端を車体フレームに連結するとともに下端をサスペンションアームに連結し、車体に対して側面視鉛直、且つ正面視ハの字状に配置する一対のクッションユニットによって左右の車輪の衝撃を吸収している。
【特許文献1】特開2003−56607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、クッションユニットを車体幅方向に斜めに取付けることでストローク長をとっているが、車高や車幅による制限上、ストローク長に限度がある。このため、クッションユニットのストローク長を長くし、良好なクッション性能を得ることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、クッションユニットのストローク長を長くして、車輪からの衝撃を確実に吸収して良好な乗り心地を得ることができる鞍乗型車両のクッション取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、少なくとも左右一対の車輪を有する鞍乗型車両のクッション取付構造であって、車体フレームに揺動可能に連結され、車幅方向に延出して車輪を懸架するサスペンションアームと、車体フレームに支持される第1の端部と、サスペンションアーム側に支持される第2の端部を有し、車輪に伝わる衝撃を吸収するクッションユニットと、を備え、クッションユニットは、第1の端部が車体フレームの車体幅方向内側に位置し、第2の端部が車体フレームの車体幅方向外側に位置し、且つ、その軸線が車体フレームに交差して車体前後方向に延びるように、配置されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、車体フレームから車体幅方向外方に延出するステップをさらに備え、クッションユニットの第1の端部が、ステップの車体幅方向略内側に配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成に加えて、車体フレームには、複数のフレーム部材が連結される集合部が設けられ、クッションユニットの第1の端部は、集合部に取付けられることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1の構成に加えて、サスペンションアームには、伸縮するクッションユニットとの干渉を避ける逃げ部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、クッションユニットは、車体フレームに支持される第1の端部が車体フレームの車体幅方向内側に位置し、サスペンションアーム側に支持される第2の端部が車体フレームの車体幅方向外側に位置し、且つ、その軸線が車体フレームに交差して車体前後方向に延びるように、配置されるので、クッションユニットのストローク長を無理なく長くとることができる。これにより、車輪からの衝撃がクッションユニットによって極めて円滑に吸収され、良好なクッション性能を得ることができ、良好な乗り心地を確保することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、クッションユニットの第1の端部が、運転時に運転者が足を載置するステップの車体幅方向略内側に配置されるので、ストローク長の長いクッションユニットを無理なく車体前後方向に配置することができ、より良好なクッション性能を得ることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、クッションユニットの第1の端部は、複数のフレーム部材が連結される車体フレームの集合部に取付けられるので、剛性の高い集合部にて車輪からの衝撃を吸収するクッションユニットを確実に支持することができ、車体フレームの剛性を上げることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、サスペンションアームには、伸縮するクッションユニット及び揺動するリンク部材との干渉を避ける逃げ部が設けられるので、クッションユニットをサスペンションアームと干渉させることなく円滑に伸縮させることができ、より良好なクッション性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、左右対称部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0014】
図1は本発明に係る鞍乗型車両の左側面図であり、図2は車体フレームを示す上面図である。鞍乗型車両10は、不整地走行用の四輪車両であり、車体フレーム11の前部に左右の前輪12を操舵するためのステアリングシャフト13を取り付け、車体フレーム11の中央部にエンジン14及び変速機15からなるパワーユニット16を取り付け、車体フレーム11の後部に左右の後輪17へ駆動力を伝達するための駆動力伝達部18を設けた車両である。
【0015】
ここで、符号21はバッテリ、22はラジエー夕、23,24はラジエータ22とエンジン14とに接続されるラジエータホース、25はクランクケース、26はシリンダブロック、27はシリンダヘッド、28はヘッドカバー、29はクランクシャフト、30は変速機15に設けた減速機ユニット、31は変速操作用のシフトペダル、32は減速機ユニット30の出力軸、33は出力軸32に取り付けたドライブスプロケット、34はドライブスプロケット33に掛けたチェーン、35はシリンダヘッド27にコネクティングチューブ36を介して接続されるエアクリーナ、37はシリンダヘッド27から後方に延びる排気管、38は排気管37の後端に接続されるマフラ、39は左右の前輪12の地面からの衝撃を吸収するフロントクッションユニットである。
【0016】
図1及び図2に示すように、車体フレーム11は、山形に屈曲させた左右一対のフロントアッパフレーム51と、これらのフロントアッパフレーム51の前端に連結した左右一対のフロントミドルフレーム52と、これらのフロントミドルフレーム52の後端及びフロントアッパフレーム51の前部に傾斜させて渡した左右一対のフロント第1傾斜フレーム53と、フロントアッパフレーム51の後端から後方へ略水平に延びる左右一対のリヤアッパフレーム54と、フロントアッパフレーム51の後端部から後方且つ下方へ傾斜して延びるリヤ第1傾斜フレーム55と、リヤアッパフレーム54の中間部及び後端に連結されるシートレール56と、を備える。
【0017】
また、車体フレーム11は、前述のフロントミドルフレーム52の後端から下方へ傾斜する左右一対のフロントロア第1フレーム57と、フロントロア第1フレーム57の下端及びリヤ第1傾斜フレーム55の下端に連結することで前後に延ばした左右一対のロアフレーム58と、フロントミドルフレーム52及びロアフレーム58の前部に渡した左右一対のフロントロア第2フレーム59と、ロアフレーム58の後端及びリヤアッパフレーム54の後端に渡した左右一対のリヤ第2傾斜フレーム60と、を備える。更に、車体フレーム11は、フロントアッパフレーム51の後端、リヤアッパフレーム54の前端、及びリヤ第1傾斜フレーム55の上端を接合する集合部である左右一対のジョイント部材61同士を連結する連結フレーム62(図2参照。)と、リヤアッパフレーム54の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の上端との連結箇所近傍、及びリヤ第1傾斜フレーム55の後端とロアフレーム58の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の下端との連結箇所近傍に支持される左右一対の支持フレーム63と、を備える。なお、符号64はフロントミドルフレーム52の前端及びロアフレーム58の前端にそれぞれ取り付けられるフロントガード部材である。
【0018】
フロントアッパフレーム51は、それぞれパワーユニット16を支持する第1ブラケット71を有する。フロントミドルフレーム52は、それぞれ左右の前輪12を支持するアッパアーム(不図示)を上下スイング自在に取り付けるアッパアーム支持部72,73を備える。また、フロントロア第1フレーム57は、パワーユニット16を支持する第2ブラケット74を備える。
【0019】
ロアフレーム58は、前部にそれぞれ左右の前輪12を支持するロアアーム(不図示)を上下スイング自在に取り付けるロアアーム支持部75,76を設けるとともに 、ステアリングシャフト13の下部を支持するステアリングシャフト下部支持部材77を備える。更に、ロアフレーム58は、中間部にパワーユニット16を支持する第3ブラケット78及び第4ブラケット79を備える。また、連結フレーム62は、パワーユニット16を支持する第5ブラケット80を備える。
【0020】
ロアフレーム58の後端とリヤ第1傾斜フレーム55の後端との連結箇所近傍には、左右一対の補強フレーム81が連結される。また、ロアフレーム58には、補強フレーム81との連結箇所近傍に、車体幅方向外側に延出して運転時に運転者が足を載置する左右一対のステップ82が固定される。さらに、リヤ第1傾斜フレーム55の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の下端との連結箇所における隅部には、左右一対の補強プレート83が固定される。
【0021】
左右一対の支持フレーム63には、チェーン34が掛け渡されるドリブンスプロケット200を回転可能に支持するファイナルギヤケース201が取り付けられるとともに、その両側面にアッパアーム101及びロアアーム102からなるサスペンションアーム103が揺動可能に連結され、車幅方向に延出して左右の後輪17をそれぞれ懸架している。
【0022】
図3は、支持フレームの構造を説明する上面図であり、図4は、支持フレームの構造を説明する平面図である。図3に示すように、左右一対の支持フレーム63は、互いに突き合わせて結合される分割フレームであり、いずれも鋳物によって一体成形されるものである。これら支持フレーム63の前方側には、リヤアッパフレーム54の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の上端との連結箇所近傍、及びロアフレーム58の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の下端との連結箇所近傍に取り付けられる、位置決めボス131が互いの対向位置にそれぞれ形成されており、これら位置決めボス131を突き合わせることにより、互いの支持フレーム63が位置決めされる。
【0023】
また、図3及び図4に示すように、各支持フレーム63には、その対向面から突出する固定部である4つの固定ボス132a,132b,132c,132dが形成されており、互いの支持フレーム63を突き合わせることにより、これら固定ボス132a,132b,132c,132dの端面同士が互いに当接される。
【0024】
図5は、固定ボス132a位置における支持フレームの接合構造を説明する断面図である。なお、固定ボス132a,132b,132c,132d位置における接合構造は同一であるため、固定ボス132a位置の接合構造のみ説明する。
【0025】
固定ボス132aは、支持フレーム63の内面側から突出されており、その中心には、ボルト挿通孔133が形成されている。また、支持フレーム63の外表面には、ボルト挿通孔133の形成位置にざぐり部134が形成されている。
【0026】
そして、一対の支持フレーム63は、互いに突き合わせて固定ボス132aの端面同士を当接させ、互いのボルト挿通孔133を連通させた状態にて、これらボルト挿通孔133へ一方側から連結ボルト135を挿入し、他方側にて連結ボルト135にナット136を螺合することにより、互いの支持フレーム63が締結固定される。連結ボルト135は、互いに締結された支持フレーム63の外側面間の距離と略等しい或いは若干短い長さを有しており、連結ボルト135の頭部135a及びナット136が、支持フレーム63の外表面から突出することなく、ざぐり部134内に配置されて収容される。
【0027】
図4に示すように、ファイナルギヤケース201は、その前方側がケース支持ブラケット205を介して支持フレーム63に支持されている。また、このファイナルギヤケース201には、その後方側に調整ねじ孔206が形成されており、この調整ねじ孔206には、支持フレーム63の後端の挿通孔207に挿通された調整ねじ208がねじ込まれている。そして、この調整ねじ208の調整ねじ孔206へのねじ込み量を調整することにより、ファイナルギヤケース201の前後方向の取付位置が調整され、ドリブンスプロケット200に掛け渡されたチェーン34の張力が調整される。
【0028】
また、支持フレーム63に取り付けられるアッパアーム101及びロアアーム102は、これらの先端部を後述する後輪17のハブ204(図6参照。)に連結しており、サスペンションアーム103は、ダブルウィッシュボーン式の独立懸架構造を構成する。図3に示すように、アッパアーム101は、支持フレーム63に対して後方に傾斜して延びるアッパ第1アーム部105と、支持フレーム63に対して略直角に延びるアッパ第2アーム部106と、アッパ第1アーム部105とアッパ第2アーム部106とを連結する連結部107とを有する。また、ロアアーム102も、支持フレーム63に対して後方に傾斜して延びるロア第1アーム部108と、支持フレーム63に対して略直角に延びるロア第2アーム部109と、ロア第1アーム部108とロア第2アーム部109とを連結する連結部110とを有する(図8参照。)。
【0029】
図4に示すように、支持フレーム63の外表面には、アッパアーム101及びロアアーム102、即ち、アッパ第1アーム部105の筒状の取付部105a、アッパ第2アーム部106の筒状の取付部106a、ロア第1アーム部108の筒状の取付部108a、ロア第2アーム部109の筒状の取付部109aを連結する4つのサスペンションアーム支持部(以下、アーム支持部と称す。)137a,137b,137c,137dが設けられている。なお、アーム支持部137a,137b,137c,137dにおけるサスペンションアームの取付構造は同一であるため、アーム支持部137aにおける取付構造のみ説明する。
【0030】
アーム支持部137aは、支持フレーム63の表面から立ち上げられた平面視略コの字状の支持壁138を備え、支持壁138の互いに対向する取付壁部138aには支持ボルト139が挿通される孔部138bが形成されている。取付壁部138a間には、アッパ第1アーム部105の取付部105aと、取付部105aの内周面に止め輪140,140で固定される外輪141と、この外輪141に設けた凹状の球面に凸状の球面を滑り自在に嵌合させた内輪142と、この内輪142の両端面に当てたカラー143,143と、これらカラー143,143及び取付部105aとの間に介在させたシール部材144,144が配置される。
【0031】
そして、支持ボルト139を、車両前方から、取付壁部138a、カラー143、内輪142、カラー143、取付壁部138aに順に挿入し、支持ボルト139の先端にナット145を螺合することで、アッパ第1アーム部105がアーム支持部137aに上下方向に揺動可能に取り付けられる。
【0032】
ここで、4つのアーム支持部137a,137b,137c,137dは、それぞれ、剛性の高い、支持フレーム63同士を接合する固定ボス132a,132b,132c,132dの近傍に設けられている。特に、アッパアーム101のアーム支持部137a,137bは、固定ボス132a,132bに設けられた連結ボルト135及びナット136が外部から見えないように、支持フレーム63同士の固定ボス132a,132bと側面視一致した位置に配置されている。
【0033】
一方、ロアアーム102のアーム支持部137c,137dは、平面視にてチェーン34軌道の近傍位置となり、チェーン34の軌道と部分的に干渉する位置となる。このため、アーム支持部137c、137dの近傍に配置される下方の固定ボス132c、132dは、チェーンの軌道から外れたチェーン34と干渉しない位置に配置される。
【0034】
図4及び図6に示すように、駆動力伝達部18は、ドライブスプロケット33とドリブンスプロケット200との間に掛け渡されるチェーン34と、ドリブンスプロケット200を回転可能に支持し、左右一対の支持フレーム間に支持されるファイナルギヤケース201と、ファイナルギヤケース201に軸受部202を介して一端が支持される左右のドライブシャフト203と、これらのドライブシャフト203の先端に連結されるハブ204と、を備え、ハブ204には後輪17が取り付けられる。
【0035】
ドライブシャフト203は、軸受部202側に連結したスイング可能で軸方向に伸縮可能な摺動型の等速ジョイント210と、ハブ204側に連結したスイング可能な固定型の等速ジョイント211と、これらの等速ジョイント210,211間に設けたシャフト212とからなる。
【0036】
等速ジョイント211は、後輪17の車軸221に一体成形された外輪222と、シャフト212の一端にスプライン結合した内輪223と、外輪222の内周面に設けた複数のボール溝及び内輪223の外周面に設けた複数のボール溝内に移動可能に配置した複数のボール224と、これらのボール224を保持するケージ225とからなる。
【0037】
また、アッパアーム101及びロアアーム102の先端部は、連結部230,231にてハブ204を構成するナックルアーム232に連結されており、等速ジョイント211は、ハブ204を構成するナックルアーム232にベアリング233を介して回転自在に支持される。なお、234はベアリング233を固定する止め輪、235はシール部材である。
【0038】
図7に示すように、ファイナルギヤケース201で支持された軸受部202は、ファイナルギヤケース201の嵌合穴201aの内周面に嵌合させたベアリング251と、嵌合穴201a及び等速ジョイント210のそれぞれの間に介在させたシール部材252とを備える。
【0039】
等速ジョイント210は、外輪となるハウジング253と、シャフト212の他端にスプライン結合した内輪254と、ハウジング253の内周面に設けた複数のボール溝及び内輪254の外周面に設けた複数のボール溝内に移動可能に配置した複数のボール255と、これらのボール255を保持するケージ256とからなる。
【0040】
ハウジング253は、外周面をベアリング251に嵌合させるとともに止め輪258でベアリング251の抜け止めをし、一端に形成された小径部253aの外周面に雄スプライン259を形成した有底筒状の部材である。253bはハウジング253の底面である。
【0041】
そして、これらハウジング253同士は、互いに近接されてファイナルギヤケース201に取り付けられ、これらのハウジング253のそれぞれの雄スプライン259にドリブンスプロケット200の雌スプライン200aがスプライン結合されている。
【0042】
図8は、車体フレームに取り付けられる左後輪側の支持構造を示す要部斜視図であり、図9は、後輪側の支持構造を示す上面図である。図8及び図9に示すように、車体フレーム11とサスペンションアーム103との間には、リンク部材112、クッションユニット113、プッシュロッド114が揺動可能に配置されている。
【0043】
ロアフレーム58の後端とリヤ第2傾斜フレーム60の下端との連結箇所には、リンク取り付け部111が設けられており、このリンク取り付け部111には、リンク部材112が後方に向かって車体フレーム11から車体幅方向に離れるように斜めに連結されている。リンク部材112は、平面視略三角形状に形成され、前方に位置する第1の頂部112aをリンク取り付け部111に回動可能に連結するとともに、中間部上方に位置する第2の頂部112bをクッションユニット113に、後方に位置する第3の頂部112cをプッシュロッド114の下端に、更に中間部下方に位置する底辺部112dをスタビライザー115の連結ロッド116の一端に、それぞれ回動可能に連結する。
【0044】
クッションユニット113は、その軸線がリンク部材112と略平行となるように配置され、フロントアッパフレーム51、リヤアッパフレーム54、リヤ第1傾斜フレーム55、及び、連結フレーム62が互いに連結される集合部であるジョイント部材61のクッション支持部61aに回動可能に連結される。ジョイント部材61のクッション支持部61aは、車体フレーム11の内側で、且つ、上面視ステップ82の車体幅方向略内側に位置している。
【0045】
このため、クッションユニット113では、一端で車体フレーム11のクッション支持部61aに支持される第1の端部113aが、車体フレーム11の車体幅方向内側に位置し、サスペンションアーム側であるリンク部材112に支持される第2の端部113bが車体フレーム11の車体幅方向外側に位置する。また、クッションユニット113は、その軸線が車体フレーム11に交差して車体前後方向に延びるように、第1の端部113aと第2の端部113bが車体前後方向にずれて配置されている。これにより、クッションユニット113のストローク長を無理なく長くとることができ、サスペンションアーム103、プッシュロッド114、リンク部材112を介して伝達される後輪17からの衝撃を確実に吸収する。
【0046】
また、リンク取り付け部111に連結されるリンク部材112の第1の頂部112aは、ジョイント部材61に支持されるクッションユニット113の第1の端部113aよりも車体後方に位置させており、第1の頂部112aはクッションユニット113の第2の端部113bとの距離を近づけ、クッションユニット113のストロークによるリンク部材112の揺動半径を小さくしている。
【0047】
リンク部材112の第3の頂部112cに連結されたプッシュロッド114は、その軸線がリンク部材112と略平行となるように配置され、その上端がボールジョイント118を介してアッパアーム102に揺動可能に連結される。従って、リンク部材112は、クッションユニット113のストロークに応じてリンク取り付け部111を中心として揺動し、その揺動方向がアッパアーム101及びロアアーム102の揺動方向と異なり、略直交している。
【0048】
ボールジョイント118は、アッパ第1アーム部105の中間部に、クッションユニット113及びリンク部材112との干渉を避けるように屈曲して形成された逃げ部105bに取り付けられている。なお、ロア第1アーム部108の中間部にも、同様に逃げ部108bが形成されている。
【0049】
図10(a)及び図10(b)に示すように、ボールジョイント118は、アッパアーム101に固定され、収納孔119aを有するハウジング119と、プッシュロッド114の先端部に固定され、ハウジング119の収納孔119aに配置されるボール部120と、ハウジング119の上部側の開口部に設けられ、ボール部120と摺動可能に接するベアリング部121aを有するプラグ121とを有する。これにより、ボール部120が、ハウジング119の収納孔119a内にて摺動可能に保持され、プッシュロッド114は、アッパアーム101に対して揺動自在となる。また、ハウジング119には、その下方側に形成された開口部を覆う樹脂製のブーツ122が取り付けられており、ブーツ122は、プッシュロッド114の揺動を許容しつつ、ハウジング119内への塵や水などの侵入を阻止する。
【0050】
リンク部材112の中間部底辺部に連結ロッド116の一端が連結されるスタビライザー115は、この左右一対の連結ロッド116と、これら連結ロッド116の他端間を連結するスタビライザー本体123とを備える。スタビライザー本体123は、その中間部が左右一対の補強プレート83に支持ブラケット124を介して保持されており、車体フレーム11を構成するフロントアッパフレーム51と、クッションユニット113と、リンク部材112とから形成される空間部125に挿通される。また、一対の補強プレート83から突出するスタビライザー本体123の両端部は、後方に屈曲してリンク部材115と略平行に延び、左右一対の連結ロッド116の他端に連結される。
【0051】
上記構造の鞍乗型車両10では、走行時に後輪17が地面から衝撃を受けると、後輪17を支持するサスペンションアーム103が揺動し、さらに、ボールジョイント118によって連結されたプッシュロッド114を介してリンク部材112が揺動する。したがって、後輪17の衝撃が、リンク部材112及び車体フレーム11に連結されて車体の前後方向に沿って配置されたクッションユニット113に伝達され、このクッションユニット113によって確実に吸収される。これにより、車体フレーム11への後輪17からの衝撃の伝達が大幅に抑えられ、車両10の良好な乗り心地が確保される。
【0052】
以上、説明したように、上記実施形態に係る鞍乗型車両10のクッション取付構造によれば、クッションユニット113は、車体フレーム11に支持される第1の端部113aが車体フレーム11の車体幅方向内側に位置し、サスペンションアーム103側に支持される第2の端部113bが車体フレーム11の車体幅方向外側に位置し、且つ、その軸線が車体フレーム11に交差して車体前後方向に延びるように、配置されるので、このクッションユニット113のストローク長を無理なく長くとることができる。
これにより、後輪17からの衝撃をクッションユニット113によって極めて円滑に吸収させて、良好なクッション性能を得ることができ、良好な乗り心地を確保することができ、不整地走行用の鞍乗型車両10に好適に用いることができる。
【0053】
また、クッションユニット113の第1の端部113aが、運転時に運転者が足を置くステップ82の車体幅方向略内側に配置されるので、ストローク長の長いクッションユニット113を無理なく車体前後方向に配置することができ、より良好なクッション性能を得ることができる。
【0054】
さらに、クッションユニット113の第1の端部113aは、複数のフレーム部材であるフロントアッパフレーム51、リヤアッパフレーム54、リヤ第1傾斜フレーム55、及び連結フレーム62が連結される車体フレームの集合部(ジョイント部材61)に取付けられる。これにより、剛性の高い集合部にて車輪17からの衝撃を吸収するクッションユニット113を確実に支持することができ、車体フレーム11の剛性を上げることができる。
【0055】
しかも、サスペンションアーム103には、伸縮するクッションユニット113及び揺動するリンク部材112との干渉を避ける逃げ部105b,108bが設けられるので、クッションユニット113をサスペンションアーム103と干渉させることなく円滑に伸縮させることができ、より良好なクッション性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の車両のクッション取付構造を適用した鞍乗型車両の側面図である。
【図2】本発明の鞍乗型車両の車体フレームを示す上面図である。
【図3】支持フレームの構造を説明する上面図である。
【図4】支持フレームの構造を説明する側面図である。
【図5】支持フレームの接合構造を説明する断面図である。
【図6】駆動力伝達系の構造を示す断面図である。
【図7】駆動力伝達系の要部の構造を示す断面図である。
【図8】車体フレームに取り付けられる左後輪側の支持構造を示す要部斜視図である。
【図9】後輪側の支持構造を示す上面図である。
【図10】ボールジョイントの構造を説明する平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 鞍乗型車両
11 車体フレーム
17 後輪(車輪)
51 フロントアッパフレーム(フレーム部材)
54 リヤアッパフレーム(フレーム部材)
55 リヤ第1傾斜フレーム(フレーム部材)
61 ジョイント部材(集合部)
62 連結フレーム(フレーム部材)
63 支持フレーム(車体フレーム)
82 ステップ
105b、108b 逃げ部
103 サスペンションアーム
113 クッションユニット
113a 第1の端部
113b 第2の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左右一対の車輪を有する鞍乗型車両のクッション取付構造であって、
車体フレームに揺動可能に連結され、車幅方向に延出して前記車輪を懸架するサスペンションアームと、
前記車体フレームに支持される第1の端部と、前記サスペンションアーム側に支持される第2の端部を有し、前記車輪に伝わる衝撃を吸収するクッションユニットと、
を備え、
前記クッションユニットは、前記第1の端部が前記車体フレームの車体幅方向内側に位置し、前記第2の端部が前記車体フレームの車体幅方向外側に位置し、且つ、その軸線が前記車体フレームに交差して車体前後方向に延びるように、配置されることを特徴とする鞍乗型車両のクッション取付構造。
【請求項2】
前記車体フレームから車体幅方向外方に延出するステップをさらに備え、
前記クッションユニットの第1の端部が、前記ステップの車体幅方向略内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のクッション取付構造。
【請求項3】
前記車体フレームには、複数のフレーム部材が連結される集合部が設けられ、
前記クッションユニットの第1の端部は、前記集合部に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のクッション取付構造。
【請求項4】
前記サスペンションアームには、伸縮する前記クッションユニットとの干渉を避ける逃げ部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のクッション取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−273140(P2006−273140A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95889(P2005−95889)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】