説明

頭部装着式映像表示装置

【課題】映像の視認性を損なうことなく、消費電力を低減することが可能な頭部装着式映像表示装置(HMD)を提供する。
【解決手段】赤(R)、緑(G)、青(B)用画像信号に基づき映像を表示するカラーLCDと、発光色がそれぞれR、G、Bの光源を有し、LCDを照明するバックライトと、を備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有するHMDであって、電子カメラと、電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部と、LCDにR、G、B用画像信号を出力し、該LCDの動作およびR、G、Bの光源の動作を制御する制御部と、を有し、制御部は、R、G、B用画像信号を合成して単色の合成画像信号を生成し、画像色解析部の解析結果に基づいて、合成画像信号をR、G、Bの液晶表示素子のうちいずれかに出力して駆動する液晶単色駆動およびR、G、Bの光源のうちいずれかを駆動する光源単色駆動またはそのいずれかの駆動動作を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着式映像表示装置に関し、特に液晶カラーディスプレイを備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有する頭部装着式映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者の頭部や顔面に着脱自在に装着され、小型のCRTや液晶表示素子等の映像表示素子から得られる映像(以下、画像とも称する。)を、接眼光学系によって観察者の眼球に直接投影させることで、恰も該映像が空中に拡大投影されているかの様な虚像の観察を可能にした頭部装着式映像表示装置、すなわちHMD(Head Mount Display)が知られている。
【0003】
HMDは、DVDやビデオ等のコンテンツ映像の観賞用や、産業機器若しくは医療機器等の遠隔操作用としての表示装置として利用され、その用途は多岐に渡っている。
【0004】
遠隔操作用としては、通常、作業者の作業に必要な各種情報をHMDの表示ユニットを通して入射する外界光による自然画像(以下、シースルー画像とも称する。)に重ね合わせて表示する所謂シースルー型のHMDが用いられている。
【0005】
例えば、作業者が電子カメラを備えたシースルー型のHMDを装着し、作業対象物のシースルー画像を観察しながら作業を行い、指示者が電子カメラで撮影された作業対象物の画像を、遠隔地に設けられた例えばホストコンピュータ等のモニタで観察しながら、作業者に音声や映像による適切な情報を提供し作業指示を行う、といった遠隔作業支援システムが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、このような遠隔操作用に用いられるHMDは、その電源として、通常、電池が用いられている。この為、消費電力を抑え、使用可能時間を延長させることが要望されている。しかしながら、映像表示素子としてバックライトを必要とする透過型液晶表示素子を用いた場合、液晶表示素子のみならずバックライトの駆動にも大きな電力を必要することから、電池の消耗を早め、使用可能時間に大きく影響を及ぼすという問題があった。
【0007】
そこで、このような問題に対応する為、種々の液晶表示装置が検討されている。例えば、低電力モード時には、液晶表示素子を駆動する赤(R)、緑(G)、青(B)のカラー画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成する。そして、該合成画像信号によりR、GおよびB用液晶駆動回路の内G用液晶駆動回路のみを駆動し、残りの2つの駆動回路の電力供給を中断する。これにより、消費電力を低減させることが可能な液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−132487号公報
【特許文献2】特開2000−10529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の液晶表示装置は、合成画像信号によりG用液晶駆動回路のみを駆動し、残りの2つの駆動回路の電力供給を中断することにより、消費電力を低減させる構成としている。しかしながら、このような液晶表示装置を前述のような遠隔操作用のHMDに用いた場合、シースルー画像の色合いによっては、液晶表示装置に表示される表示映像の視認性が大きく低下するという問題がある。例えば、シースルー画像の色合いが緑色に偏っている場合、液晶表示装置に表示される表示映像の色合いが同色の緑であることより、シースルー画像と表示映像との識別が困難になり、液晶表示装置に表示される表示映像の視認性が大きく低下する。また、たとえ合成画像信号によりR用液晶駆動回路またはB用液晶駆動回路のみを駆動する構成としても、シースルー画像の色合いが赤または青に偏っている場合には同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、映像の視認性を損なうことなく、消費電力を低減することが可能な頭部装着式映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の1乃至3のいずれか1項に記載の発明によって達成される。
【0011】
1.赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づき表示色がそれぞれR、G、Bの映像を表示する透過型液晶表示素子を有する液晶カラーディスプレイと、
発光色がそれぞれR、G、Bの光源を有し、前記液晶カラーディスプレイを照明するバックライトと、を備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有する頭部装着式映像表示装置であって、
前記外界を撮影する電子カメラと、
前記電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部と、
前記液晶カラーディスプレイにR、G、B用画像信号を出力し、該液晶カラーディスプレイの動作およびR、G、Bの前記光源の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、前記画像色解析部の解析結果に基づいて、前記合成画像信号をR、G、Bの前記透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動およびR、G、Bの前記光源のいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有することを特徴とする頭部装着式映像表示装置。
【0012】
2.頭部装着式映像表示装置の動作用電源としての電池の電圧を検知する電池電圧検知部を有し、
前記制御部は、
前記電池電圧検知部の検知結果に基づいて、前記液晶単色駆動および前記光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を行うことを特徴とする前記1に記載の頭部装着式映像表示装置。
【0013】
3.赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づき表示色がそれぞれR、G、Bの映像を表示する透過型液晶表示素子を有する液晶カラーディスプレイと、
発光色がそれぞれR、G、Bの光源を有し、前記液晶カラーディスプレイを照明するバックライトと、を備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有する頭部装着式映像表示装置であって、
前記外界を撮影する電子カメラと、
前記電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部と、
前記液晶カラーディスプレイにR、G、B用画像信号を出力し、該液晶カラーディスプレイの動作およびR、G、Bの前記光源の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、前記画像色解析部の解析結果に基づいて、前記合成画像信号をR、G、Bの前記透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動およびR、G、Bの前記光源の少なくとも1つの光源を駆動する光源駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有することを特徴とする頭部装着式映像表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記制御部は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、画像色解析部の解析結果に基づいて、該合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動および画像色解析部の解析結果に基づいて、R、G、Bの光源のいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有する構成とした。これにより、R、G、Bの3つの透過型液晶表示素子およびR、G、Bの3つのバックライト光源をいつも駆動することなく、必要に応じて、液晶単色駆動および光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を行うことにより単色化することができる。その結果、消費電力を大きく低減することができ、電池の消耗を抑え、使用可能時間を延長することができる。
【0015】
また、液晶単色駆動、光源単色駆動を行う際には、外界を撮影する電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部の解析結果に基づいて、駆動する透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択するようにしている。これにより、例えば、外界のシースルー画像の色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択し、駆動することができる。すなわち、シースルー画像の色合いと異なった色合いの映像を表示することができる。その結果、シースルー画像と表示映像との識別が容易になり単色化による視認性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明に係る頭部装着式映像表示装置(以下、HMDとも称する。)の実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0017】
最初に、HMDの外観を図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るHMD1の外観を示す斜視図である。
【0018】
HMD1は、図1に示すように、テンプル21R,21L、ブリッジ22、鼻当て23R,23L、透明基板24R,24L、表示ユニット25(LCD表示部26、接眼光学系27)、カメラユニット28、イヤホン29R,29L、マイク30、及び制御ユニット31等を有している。
【0019】
このような構成のHMD1は、作業者がHMD1を頭部に装着し、表示ユニット25を通して作業対象物のシースルー画像を観察しながら作業を行い、指示者がカメラユニット28で撮影された作業対象物の画像を、遠隔地に設けられた例えばホストコンピュータ等のモニタで観察しながら、作業者に無線LAN等を介して音声や映像による適切な情報を提供し作業指示を行うものである。
【0020】
テンプル21R,21Lは、可撓性を有する弾性材等により構成された長尺状の部材であり、装着者の耳や側頭部に掛止され、HMD1の装着者に対する頭部への保持及び装着位置の調整を行う為のものである。尚、テンプル21R,21Lは、回動部21Ra,21Laにおいて矢印P,Q方向に回動可能に構成されており、HMD1を使用しない場合には、テンプル21R,21Lを矢印P,Q方向に回動させて透明基板24R,24Lに沿わせることにより、コンパクト化することができる。
【0021】
ブリッジ22は、HMD1の装着者に対する顔面への保持を行う鼻当て23R,23Lを備え、透明基板24R,24Lの互いに対向する所定位置に架け渡された短尺の棒状部材であり、透明基板24Rと透明基板24Lとを一定の間隙を介した相対位置関係に保持するものである。
【0022】
透明基板24R,24Lは、一方の眼球に対応した位置にU字型のスペース24Rsを形成する略平板状の透明体である。また、透明基板24Rに囲まれて形成されるU字型のスペース24Rsには、接眼光学系27が嵌め込まれている。
【0023】
表示ユニット25は、LCD表示部26、及び接眼光学系27等を有し、カメラユニット28で撮影された画像や、制御ユニット31に設けられた後述の通信部36を介して、遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータから提供された映像等を表示する。また、表示ユニット25は、接眼光学系27を通して外界(前方の被写体)をシースルー可能に構成されている。尚、表示ユニット25の詳細は後述する。
【0024】
カメラユニット28は、本発明における電子カメラに該当し、図示しない後述のズームレンズ281、CCD(Charge Coupled Device)282、及び画像処理部283等を有する。カメラユニット28は、装着者の周囲の外界(前方の被写体)を撮影するものであり、ズームレンズ281によって結像された被写体光学像を、CCD282によって光電変換して画像信号(以下、映像信号とも称する。)を生成し、画像処理部283等により画像信号に所定の画像処理を施す。
【0025】
イヤホン29R,29Lは、装着者の耳に挿入され、装着者に音声を提供する。
【0026】
マイク30は、装着者の音声を音声信号に変換する。
【0027】
制御ユニット31は、マイクロコンピュータからなり、電源スイッチ351、操作スイッチ352等を有し、これら各種操作スイッチからの信号、及び遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータからの制御信号等を受けて、HMD1で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものである。
【0028】
ここで、表示ユニット25の構成を、図2を用いて説明する。図2は、表示ユニット25の左側面からの側断面図であり、主に表示ユニット25の内部構成を示している。
【0029】
図2に示すように、表示ユニット25は、筐体261、バックライト262、コリメータレンズ263、LCD(Liquid Crystal Display)264からなるLCD表示部26、及びプリズム271、HOE(Holographic Optical Element)272からなる接眼光学系27等から構成される。
【0030】
LCD表示部26の筐体261の内部には、バックライト262、コリメータレンズ263、及びLCD264が内蔵された状態で、該筐体261が接眼光学系27のプリズム271の上端部において上斜め前方(図2では右斜め上方向)に突出する態様で取り付けられている。
【0031】
バックライト262は、発光色がそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の発光ダイオードであるRLED262R、GLED262G、BLED262Bを有し、LCD264を照明する光源である。
【0032】
コリメータレンズ263は、バックライト262のRLED262R、GLED262G、BLED262Bの光をほぼ平行光にしてLCD264に投光するものである。
【0033】
LCD264は、カメラユニット28で撮影された画像や、制御ユニット31に設けられた後述の通信部36を介して、遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータから提供された映像等を表示する。LCD264は、赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づき表示色がそれぞR、G、Bの映像を表示する透過型液晶表示素子を有する液晶カラーディスプレイである。
【0034】
プリズム271は、ガラスや透明樹脂等からなる略板状の透明部材であり、LCD264からの光を内部で複数回の反射を行わせるものである。プリズム271の上端部は、LCD264からの光の大部分を内部に採光できるように、上方に向かってより肉厚となるように前面側(接眼面と反対側)が突き出るように楔形状に形成された肉厚部271bが形成されている。
【0035】
また、プリズム271の下端部には、傾斜面271aが形成されており、プリズム271は、透明基板24Rに形成された傾斜面24Raに対しHOE272を介して接合(例えば接着)されている。また、プリズム271の表裏面は、透明基板24Rの表裏面に対して面一とされている。これにより、プリズム271は、透明基板24Rと一枚の板状に一体化されている。
【0036】
HOE272は、光学的に軸非対称な所謂自由曲面で構成されて正のパワーを有する体積位相型のホログラム光学素子であり、プリズム271の下端部において所定の傾斜角を有して支持されている。HOE272は、プリズム271により導光された光が照射されることにより、光の干渉現象を用いてホログラム映像を眼球Eに提供する。
【0037】
以上のような構成を有する表示ユニット25において、バックライト262のRLED262R、GLED262G、BLED262Bから射出された光は、コリメータレンズ263を通してLCD264を照明し、この照明によりLCD264で生成された像光は、プリズム271内で複数回の全反射を行った後、HOE272により回折し虚像として装着者の眼球Eに導かれる。
【0038】
さらに、プリズム271は、前方から入射する光を装着者の眼球Eに導くようになっている。これにより、装着者は、外界(前方の被写体)をシースルー可能となり、カメラユニット28で撮影され生成された画像や、制御ユニット31に設けられた後述の通信部36を介して、遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータから提供された映像等を外界(前方の被写体)と重畳して視認することとなる。
【0039】
次に、HMD1の概略構成を図3を用いて説明する。図3は、HMD1の概略構成を示すブロック図である。尚、図3では、図1、図2に示した部材と同じ部材には同一の番号を付与した。
【0040】
HMD1の要部は、表示ユニット25、カメラユニット28、及び制御ユニット31等から構成される。
【0041】
表示ユニット25は、LCD表示部26、接眼光学系27から構成され、各部位で行われる動作については前述したので説明は省略する。
【0042】
カメラユニット28は、ズームレンズ281、CCD(Charge Coupled Device)282、及び画像処理部283等を有する。
【0043】
CCD282は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色透過フィルタをピクセル単位(画素単位)で市松模様状に配置させたカラーエリア撮像センサで、ズームレンズ281により結像された被写体光像を、R、G、Bの各色成分の画像信号(各画素単位で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換するものである。
【0044】
画像処理部283は、図示しない例えば、黒レベル補正部、画素補間部、ホワイトバランス制御部、ガンマ補正部、マトリックス演算部、シェーディング補正部、及び画像圧縮部等を有し、CCD282より読み出された画像信号に周知の画像信号処理を施すものである。そして、これらの部位で所定の処理を施された画像信号は、後述の制御ユニット31の画像メモリ33に格納される。
【0045】
制御ユニット31は、制御部32、画像メモリ33、VRAM(Video Random Access Memory)34、操作部35、通信部36、LCDドライバ37、及びHMD1の動作用電源である電池38等から構成される。
【0046】
制御部32は、図示しない各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理等のデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等から構成される。制御部32は、電源スイッチ351及び操作スイッチ352を有する操作部35からの信号、及び遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータからの制御信号等を受けて、HMD1で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものである。尚、制御部32による表示動作制御の詳細は後述する。
【0047】
画像メモリ33は、制御部32により画像信号に対する各種処理を行う為の作業領域として用いられる一時メモリである。
【0048】
VRAM34は、LCD表示部26中のLCD264の画素数に対応した画像信号の記録容量を有し、LCD264に再生表示される映像を構成する画像信号のバッファメモリである。
【0049】
通信部36は、例えば、無線LANの無線通信デバイスで構成され、通信ネットワークを介して遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータとの間で映像、音声、及び制御信号等の送受信を行う。尚、無線通信手段としては、他にBluetoothやワイヤレスUSB、また、低消費電力型のデバイスを用いてもよい。
【0050】
LCDドライバ37は、LCD264の駆動回路でり、LCD264を構成するR、G、Bそれぞれの透過型液晶表示素子に対応して、RLCDドライバ37R、GLCDドライバ37G、BLCDドライバ37Bを有する。RLCDドライバ37R、GLCDドライバ37G、BLCDドライバ37Bは、それぞれ後述の表示制御部321からVRAM34を介して出力される赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づきR、G、Bそれぞれの透過型液晶表示素子を駆動する。
【0051】
ここで制御部32の詳細を説明する。制御部32は、表示制御部321、画像色解析部322、電池電圧検知部323等を有する。
【0052】
電池電圧検知部323は、電池38の電圧や残容量を検知する。
【0053】
画像色解析部322は、カメラユニットで撮影された画像信号に基づき、画像すなわち装着者の前方の被写体の色合いを解析する。色合いを解析する方法としては、例えば、画像信号からR、G、B信号の強度分布(ヒストグラム)をとり、度数の大きい色成分を算出するするとか、R、G、B信号の割合の偏り等を算出といった、周知の方法を用いることができる。
【0054】
表示制御部321は、LCD264を構成するR、G、Bそれぞれの透過型液晶表示素子に対応して、赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号をRLCDドライバ37R、GLCDドライバ37G、BLCDドライバ37Bを介して出力し駆動を制御する。また、LCD264のバックライト262の光源であるRLED262R、GLED262G、BLED262Bの駆動を制御する。
【0055】
また、表示制御部321は、LCD264、バックライト262の駆動モードとして、液晶単色駆動、光源単色駆動の2つの駆動モードを有している。
【0056】
液晶単色駆動は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、画像色解析部322の解析結果に基づいて、該合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動するモードである。
【0057】
また、光源単色駆動は、画像色解析部322の解析結果に基づいて、RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれか1つの光源を駆動するモードである。
【0058】
そして、表示制御部321は、電池電圧検知部323の検知結果に基づいて、液晶単色駆動および光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動モード実行することができる。
【0059】
ここで、HMD1で行われる表示制御動作の流れを図4、図5を用いて説明する。図4(a)は、表示制御前の画面の一例を示す模式図、図4(b)は、表示制御後の画面の一表示例を示す模式図である。図5は、表示制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0060】
表示ユニット25の画面には、図4(a)に示すように、接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像H1がカラー表示されている。
【0061】
このような状態で、最初に、電池電圧検知部323は、電池38の電圧を検知する(ステップS1)。次に、表示制御部321は、電池電圧検知部323で検知された電池38の電圧Vbと予め設定しておいた基準電圧Vrとを比較する。比較した結果、Vb<Vrの場合(ステップS2;Yes)、すなわち電池38の残容量が低下している場合、表示制御部321は、先ず、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成する(ステップS3)。次に、カメラユニット28によりシースルー画像の画角と略等しい画角で作業対象物Xを撮影し画像信号を取り込む(ステップS4)。画像色解析部322は、カメラユニット28で取り込まれた画像信号を解析し、被写体の色合いを解析する(ステップS5)。次に、表示制御部321は、画像色解析部322で解析された被写体の色合いに基づいて、合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれに出力するかを選択する(ステップS5)。同様に、表示制御部321は、画像色解析部322で解析された被写体の色合いに基づいて、RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれの光源を駆動するかを選択する(ステップS6)。
【0062】
例えば、シースルー画像Sの色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択する。すなわち、シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択する。
【0063】
そして、表示制御部321は、選択した過型液晶表示素子に合成画像信号を出力し駆動するとともに選択したバックライト光源を駆動する(ステップS8)。このとき、表示ユニット25の画面は、図4(b)に示すように、カラーの表示映像H1が単色の表示映像H2に変化し表示される。
【0064】
このように、本発明の実施形態に係るHMD1においては、表示制御部321は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、画像色解析部322の解析結果に基づいて、該合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動および画像色解析部322の解析結果に基づいて、R、G、Bのバックライト光源のいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有する構成とした。これにより、R、G、Bの3つの透過型液晶表示素子およびR、G、Bの3つのバックライト光源をいつも駆動することなく、必要に応じて、液晶単色駆動および光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を行うことにより単色化することができる。その結果、消費電力を大きく低減することができ、電池の消耗を抑え、使用可能時間を延長することができる。
【0065】
また、液晶単色駆動、光源単色駆動を行う際には、電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部322の解析結果に基づいて、駆動する透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択するようにしている。これにより、例えば、外界のシースルー画像の色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択し、駆動することができる。すなわち、シースルー画像の色合いと異なった色合いの映像を表示することができる。その結果、シースルー画像と表示映像との識別が容易になり単色化による視認性の低下を抑えることができる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は前述の実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、適宜変更、改良が可能であることは勿論である。例えば、前述の実施の形態においては、電池38の電圧が低下した場合、液晶単色駆動および光源単色駆動の両方の駆動モードを実行するようにしたが、何れか一方の駆動モードのみを実行するようにしてもよい。特に、バックライト光源に消費される電力は大きい為、光源単色駆動モードのみとした場合でも、大きな効果が得られる。
【0067】
また、バックライト光源の駆動に関しては、RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動としたが、2つのLEDを選択して駆動するようにしてもよい。この場合は、光源単色駆動に比べて消費電力の低減効果は少ないが、バックライトの表現色を増やすことができ、ユーザーの所望の色合いに近づけることができる。
【0068】
また、前述の実施の形態においては、電池38の電圧(残容量)に基づいて、液晶単色駆動、光源単色駆動を実行するようにしたが、例えば、作業者の操作スイッチ等による指示により実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係るHMDの外観を示す斜視図である。
【図2】HMDの表示ユニットの側断面図である。
【図3】HMDの概略構成を示すブロック図である。
【図4】表示例を示す模式図である。
【図5】表示制御動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 頭部装着式映像表示装置(HMD)
21R,21L テンプル
22 ブリッジ
23R,23L 鼻当て
24R,24L 透明基板
25 表示ユニット
26 LCD表示部
261 筐体
262 バックライト
262R RLED
262G GLED
262B BLED
263 コリメータレンズ
264 LCD
27 接眼光学系
271 プリズム
272 HOE
28 カメラユニット
281 ズームレンズ
282 CCD
283 画像処理部
29R,29L イヤホン
30 マイク
31 制御ユニット
32 制御部
321 表示制御部
322 画像色解析部
323 電池電圧検知部
33 画像メモリ
34 VRAM
35 操作部
351 電源スイッチ
352 操作スイッチ
36 通信部
37 LCDドライバ
37R RLCDドライバ
37G GLCDドライバ
37B BLCDドライバ
38 電池
E 目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づき表示色がそれぞれR、G、Bの映像を表示する透過型液晶表示素子を有する液晶カラーディスプレイと、
発光色がそれぞれR、G、Bの光源を有し、前記液晶カラーディスプレイを照明するバックライトと、を備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有する頭部装着式映像表示装置であって、
前記外界を撮影する電子カメラと、
前記電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部と、
前記液晶カラーディスプレイにR、G、B用画像信号を出力し、該液晶カラーディスプレイの動作およびR、G、Bの前記光源の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、前記画像色解析部の解析結果に基づいて、前記合成画像信号をR、G、Bの前記透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動およびR、G、Bの前記光源のいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有することを特徴とする頭部装着式映像表示装置。
【請求項2】
頭部装着式映像表示装置の動作用電源としての電池の電圧を検知する電池電圧検知部を有し、
前記制御部は、
前記電池電圧検知部の検知結果に基づいて、前記液晶単色駆動および前記光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の頭部装着式映像表示装置。
【請求項3】
赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号に基づき表示色がそれぞれR、G、Bの映像を表示する透過型液晶表示素子を有する液晶カラーディスプレイと、
発光色がそれぞれR、G、Bの光源を有し、前記液晶カラーディスプレイを照明するバックライトと、を備えた外界をシースルー可能な表示ユニットを有する頭部装着式映像表示装置であって、
前記外界を撮影する電子カメラと、
前記電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部と、
前記液晶カラーディスプレイにR、G、B用画像信号を出力し、該液晶カラーディスプレイの動作およびR、G、Bの前記光源の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、前記画像色解析部の解析結果に基づいて、前記合成画像信号をR、G、Bの前記透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動およびR、G、Bの前記光源の少なくとも1つの光源を駆動する光源駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有することを特徴とする頭部装着式映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192583(P2009−192583A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30215(P2008−30215)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】