顔照合装置
【課題】効率的且つ様々な条件でも安定した顔照合を行うための技術を提供する。
【解決手段】画像入力部10から画像が入力される。入力された画像は画像記憶部11に記憶され、顔検出部12が、画像記憶部11に記憶された画像から顔を検出する。次に、特徴量抽出部13が、当該検出された顔から特徴量を抽出し、スコア算出部14が、当該抽出された特徴量と、登録者情報記憶部15に記憶されている登録者の特徴量との類似度を、スコアとして算出する。そして、スコア調整部16が、スコア調整パラメータを用いて当該算出されたスコアを調整し、判定部17が、調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することにより、画像入力部10から入力された画像の人物が、登録者か否かを判定する。スコア調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるようにスコアを調整するためのものである。
【解決手段】画像入力部10から画像が入力される。入力された画像は画像記憶部11に記憶され、顔検出部12が、画像記憶部11に記憶された画像から顔を検出する。次に、特徴量抽出部13が、当該検出された顔から特徴量を抽出し、スコア算出部14が、当該抽出された特徴量と、登録者情報記憶部15に記憶されている登録者の特徴量との類似度を、スコアとして算出する。そして、スコア調整部16が、スコア調整パラメータを用いて当該算出されたスコアを調整し、判定部17が、調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することにより、画像入力部10から入力された画像の人物が、登録者か否かを判定する。スコア調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるようにスコアを調整するためのものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔画像を照合する顔照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔照合装置の照合精度は、登録者の登録条件や照合対象者との照合条件などに大きく依存する。
【0003】
登録条件としては、例えば、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、登録画像を撮影する撮像装置の特性(S/N比、シャッタースピード、露出量、焦点距離、撮影枚数など)、登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向きなどがある。
【0004】
照合条件としては、例えば、登録画像を撮影したときからの経過時間、照合画像を撮影する撮像装置の特性、照合画像の撮影枚数、照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、顔検出の信頼度、特徴量の信頼度などがある。
【0005】
具体的には、登録者以外の他人が照合する場合、登録者の登録人数が多くなるにつれて、複数の登録者の中に当該他人に類似する人物が現れる確率が高くなる。そのため、登録者の登録人数が多いほど、平均として高めのスコアが算出される。照合対象者が登録者か否かを判定するための閾値が1つしか設定されていない状況では、このようなスコアの変動により、他人の受け入れ易さ(他人受入率)も変動してしまう。
【0006】
このように他人受入率が条件によって変動することは、条件によって装置の認証精度が変動することを意味する。安定した認証精度で顔照合を行うために、他人受入率が登録条件や照合条件に依存しないような顔照合を行うことのできる顔照合装置が望まれている。
【0007】
このような問題に対して、従来、装置を設置する度に、その装置の条件に合わせたスコアの補正値を求めたり、適切な閾値を求めたりするなどの事前調整が行われてきた。
【0008】
しかし、装置を設置するたびに調整することは、ユーザにとって大きな負担であり、効率的ではない。
【0009】
このような照合装置の例として特許文献1,2に記載された発明がある。
【特許文献1】特開2000−163092号公報
【特許文献2】特開2001−101406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、登録条件や照合条件によらず安定した顔照合を行うための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、以下の構成を採用する。
【0012】
本発明に係る第1の顔照合装置は、登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人
を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するスコア調整手段と、前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、を備える。
【0013】
本発明に係る第1の顔照合装置では、スコア調整パラメータを用いて算出手段で算出されたスコアを調整する。そして、当該調整は、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率のいずれかが登録条件や照合条件によらず略一定になるように行われる。
【0014】
スコアの調整はどのように行ってもよいが、一例を挙げると、他人画像や本人画像を用いた学習を条件ごとに行い、スコア調整パラメータを算出し、当該算出したスコア調整パラメータを用いてスコアを調整してもよい。
【0015】
そして、スコア調整パラメータは、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率が登録条件や照合条件によらず略一定になるような効果を与えるものであればどのようなものであってもよい。すなわち、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率などの違いが、調整前に比べて小さくなっていればよい。そのような変換がなされれば、登録条件や照合条件による他人受入率などの変動の小さい顔照合を行うことができる。すなわち、当該構成により、装置を設置する度に調整するというユーザの負担を減らすことができ、効率的且つ安定した顔検出を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る第2の顔照合装置は、登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整する閾値調整手段と、前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、を備える。
【0017】
本発明に係る第2の顔照合装置では、閾値調整パラメータを用いて予め定められた閾値を調整する。そして、当該調整は、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率が登録条件や照合条件によらず略一定になるように行われる。これにより、上記第1の顔照合装置で得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、効率的且つ安定した顔検出を行うことができる。
【0018】
前記登録条件は、少なくとも、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、前記登録画像を撮影する撮像装置の特性、又は、前記登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、若しくは、表情の変化を含むことが好ましい。少なくともこれらの条件のいずれかによる他人受入率などの変動を抑えることにより、ユーザはその条件についての調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0019】
前記照合条件は、少なくとも、前記登録画像を撮影したときからの経過時間、前記照合画像を撮影する撮像装置の特性、前記照合画像の撮影枚数、又は、前記照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、若しくは、特徴量の信頼度を含むことが好ましい。上述した登録条件と同様に、少なくともこれらの条件のいずれかによる、他人受入率などの変動を抑えることにより、ユーザはその条件
についての調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0020】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
であることが好ましい。
【0021】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
前記スコア調整パラメータは、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であることが好ましい。
【0022】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
であることが好ましい。
【0023】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
前記閾値調整パラメータは、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であることが好ましい。
【0024】
スコア調整パラメータや閾値調整パラメータとして、上記の式を用いることにより、登録人数や、登録画像・照合画像から検出される顔サイズが異なっていても他人受入率が略一定になるようにスコアを調整することができる。そのため、ユーザは装置を設置する度にこれらの条件に合わせた調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0025】
また、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する顔照合装置として捉えてもよいし、上記処理の少なくとも一部を含む顔照合方法、または、かかる方法を実現するための顔照合プログラムやそのプログラムを記録した記録媒体として捉えることもできる。なお、
上記手段及び処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、登録条件や照合条件によらず安定した顔照合を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、効率的且つ安定した顔照合を行うために、登録者の特徴量と照合対象者の特徴量とから算出されるスコアを調整する構成について説明する。
【0029】
<装置構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。この顔照合装置は、顔画像を用いて照合対象者の本人認証又は個人識別を行う装置であり、例えば、カメラ付きのコンピュータや携帯電話におけるセキュリティ装置、侵入者検知を行う監視装置、入退室管理やドアの錠制御を行う装置などの様々な用途に応用可能である。
【0030】
第1の実施形態に係る顔照合装置は、図1に示す複数の機能要素、すなわち画像入力部10、画像記憶部11、顔検出部12、特徴量抽出部13、登録者情報記憶部14、スコア算出部15、スコア調整部16、判定部17を備えている。本実施形態では、これらの機能要素は、演算処理装置がソフトウエア(プログラム)を実行し、必要に応じて記憶装置・撮像装置・入力装置などのハードウエア資源を制御することで実現される。ただし、これらの機能要素を専用のチップで構成しても構わない。
【0031】
画像入力部10は、登録者の顔画像(登録画像)や照合対象者の顔画像(照合画像)を顔照合装置へ入力するためのインタフェースであり、どのような既存技術を用いて構成されてもよい。例えば、ネットワークを介して登録画像や照合画像が入力される場合はネットワークインタフェースが画像入力部に該当し、デジタルカメラ・スキャナ・コンピュータ・記憶装置等の外部機器から登録画像や照合画像が入力される場合は外部機器と顔照合装置を有線又は無線で接続する通信インタフェースが画像入力部に該当し、メモリ・CD・DVD等の記録媒体から登録画像や照合画像が入力される場合は記録媒体のリーダが画像入力部に該当する。また、顔照合装置がCCDやCMOSセンサ等からなる撮像装置を具備し、その撮像装置で登録者や照合対象者を撮影するのであれば、撮像装置が画像入力部に該当する。
【0032】
画像記憶部11は、処理対象となる画像を一時的に記憶する記憶装置である。この記憶装置としては、揮発性メモリや不揮発性メモリなど、どのような具体的技術が適用されてもよい。
【0033】
顔検出部12は、画像処理によって画像から顔を検出する機能である。顔検出部12による顔検出処理は、既存の顔検出処理のどのような技術が適用されてもよい。一例を挙げると、顔全体の輪郭に対応した基準テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって顔を検出する手法、顔の器官(目、鼻、耳など)に基づくテンプレートマッチングによって顔を検出する手法、クロマキー処理によって頭部などの頂点を検出し、この頂点に基づいて顔を検出する手法、肌の色に近い領域を検出し、その領域を顔として検出する手法、ニューラルネットワークを使って教師信号による学習を行い、顔らしい領域を顔として検出する手法、などがある。
【0034】
特徴量抽出部13は、顔検出部12によって検出された顔から特徴量を抽出する機能である。特徴量抽出部13は、例えば、顔検出部12によって検出された顔から特徴点を検出し、当該特徴点から特徴量を抽出する。特徴点とは口の両端、目尻、目頭、鼻先などのような特徴となる箇所のことである。特徴量の種類はどのようなものを採用してもよく、例えば、特徴点近傍の濃淡値やその周期性・方向性、特徴点の位置関係などを特徴量として採用できる。特徴量の個数についても、期待する照合精度に応じて任意に設定できる。本実施形態では、それら複数の特徴量を組み合わせたものはベクトルまたは特徴量ベクトルと呼ばれる。特徴量抽出部13による特徴点検出処理は、既存の特徴点検出処理のどのような技術が適用されてもよい。一例を挙げると、特徴点の位置を示すパターンを学習し、その学習データを使用したマッチングを行うことによって特徴点を検出する手法、検出された顔の内側において、パターンマッチングにより特徴点を検出する手法など、既存のいかなる手法を用いてもよい。
【0035】
登録者情報記憶部14は、登録画像から抽出された特徴量を記憶する記憶装置である。この記憶装置としては、不揮発性メモリやハードディスクなど、どのような具体的技術が適用されてもよい。登録者情報記憶部14に記憶される登録者の人数は、1人であってもよいし、複数人であってもよい。
【0036】
なお、登録画像と照合画像とでは、それぞれ異なる画像入力部10、画像記憶部11、顔検出部12、特徴量抽出部13が用いられていてもよい。
【0037】
スコア算出部15は、登録者情報記憶部14に記憶されている登録者の特徴量と、照合画像から抽出された特徴量とを比較することによってスコアを算出する機能である。当該スコアは、登録者の特徴量と照合対象者の特徴量との類似度である。
【0038】
当該類似度によって照合対象者が登録者か否かを判定することは可能であるが、登録条件や照合条件の違いによって、算出されやすいスコアの値にも違いが生じてしまう。そのため、照合時に他人を受け入れる確率(他人受入率)も、登録条件や照合条件によって大きく変動してしまい、安定した判定精度を確保することができない。(後で述べる)登録条件や照合条件が、装置の設置状況に基づいて想定できる場合には、当該設置状況に基づいてスコアの補正値や照合対象者が登録者か否かを判定するための閾値などを調整することも可能であるが、装置を設置する度にそのような調整を行うことは、効率的とは言えない。そこで、本実施形態では、以下に記すスコア調整部16を備えることにより、当該問題を解消する。
【0039】
スコア調整部16は、スコア調整パラメータを用いて、スコアを調整する機能である。スコア調整パラメータは、当該顔照合装置にプログラムとして組み込まれていてもよいし、スコア調整パラメータを記憶装置に予め記憶しておき、当該記憶装置から必要に応じて読み出すような構成を採用してもよい。スコア調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるようにスコアを調整することのできるパラメータである。具体的には、スコア調整パラメータは、登録条件や照合条件などの関数として定めることができる。
【0040】
登録条件は、例えば、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、登録画像を撮影する撮像装置の特性、登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化などである。
【0041】
照合条件は、例えば、登録画像を撮影したときからの経過時間、照合画像を撮影する撮像装置の特性、照合画像の撮影枚数、照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の
隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、特徴量の信頼度などである。
【0042】
本実施形態では、上記登録条件及び照合条件のうちのいずれか1つ以上を考慮したスコア調整パラメータを用いるものとする。なお、スコア調整パラメータについては後で一例を用いて詳しく説明する。
【0043】
判定部17は、スコア調整部16によって調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって照合対象者が登録者か否かを判定する機能である。
【0044】
<顔照合機能>
図2のフローチャートに沿って顔照合機能の構成と処理の流れを説明する。
【0045】
顔照合機能が起動すると、画像入力部10から照合画像が入力される(ステップS10)。入力された照合画像は、画像記憶部11に格納される。
【0046】
次に、顔検出部12が、ステップS10で入力された照合画像から人の顔を検出し、顔の位置や大きさ等を特定する(ステップS11)。
【0047】
そして、特徴量抽出部13が、ステップS11で検出された顔から特徴量を抽出する(ステップS12)。
【0048】
次に、スコア算出部15が、登録者情報記憶部14に記憶されている登録者の特徴量と、ステップS12で抽出された特徴量との類似度(スコア)を算出する(ステップS13)。
【0049】
そして、スコア調整部16が、スコア調整パラメータを用いてステップS13で算出されたスコアを調整する(ステップS14)。
【0050】
次に、判定部17が、ステップS14で調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することにより、ステップS10で入力された照合画像の人物が登録者であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0051】
それでは次に、スコア調整パラメータの一例について説明する。
【0052】
<スコア調整パラメータ1>
上述したように、スコア調整パラメータは、スコア算出部15によって算出されたスコアを調整するためのものである。具体的には、スコア調整パラメータは、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率の変動を抑えるように定められたものである。
【0053】
以下に、登録者の登録人数(1人、10人、100人)を条件とする場合について説明する。
【0054】
図3(a)は、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出部15によるスコアの算出結果を表す模式図である。図3(a)は、横軸を「スコア」、縦軸を「算出されたスコアの確率密度」とするグラフである(どちらの軸も定義の仕方次第で値のとりうる範囲は変化する。例えば図3(a)ではスコアの最大値が1になるように規格化してある)。すなわち、図3(a)は、「他人が顔照合を行った場合に、どの程度のスコアが算出されやすいのか」ということを条件ごとに表している。図3(a)の例から、登録人数が増すにつれて算出されやすいスコアの値も上昇することがわかる。これは、登録人数が多いほど、登録者の中に他人に類似する人物が現れる確率が高くなることを意味する。
【0055】
このような場合、閾値1が、図3(a)に示すように、登録人数1人の場合に他人を適切に排除できるような値(スコア)に設定してあると、登録人数が増えるにつれ、他人を照合したときに、当該閾値よりも高いスコアが算出されやすくなってしまう。つまり、他人を登録者として受け入れやすくなってしまう。そこで、本実施形態では、以下の式を用いてスコアを調整する。
【0056】
スコア算出部12によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、スコア調整パラメータをPとし、
S´=S/P
P=A+B×logN
但し、A,B:係数
とする。なお、本実施形態では、係数A=1,係数B=0.5とする。
【0057】
上記スコア調整パラメータを用いると、図3(a)に示す各分布を、図3(b)に示すように互いの分布が近づくように調整することができる。図3(b)の例では、閾値1により全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該スコア調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0058】
<スコア調整パラメータ2>
次に、顔サイズを条件とする場合について説明する。具体的には、登録者と照合対象者との、顔検出部12によって検出された顔サイズ(顔領域の画素数)の差を条件とする。
【0059】
図4(a)は、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出部15によるスコアの算出結果を表す模式図である。図4(a)は、横軸を「スコア」、縦軸を「算出されたスコアの確率密度」とするグラフである。すなわち、図4(a)は、「他人が顔照合を行った場合に、どの程度のスコアが算出されやすいのか」ということを条件ごとに表している。
【0060】
図4(a)に示すように、登録者と照合対象者とで、検出された顔サイズが互いに大きい場合には、検出された顔の領域の画素数も多いため、どちらの顔からも正確な特徴量を抽出することができる。その結果、妥当なスコアが算出され、精度良い顔照合を行うことができる。しかし、一方の顔サイズが大きく、もう一方の顔サイズが小さい場合、小さい顔の領域の画素数が少ないため、小さい顔からは正確な特徴量を抽出できない。その結果、顔サイズが大きいものと小さいものとでは、特徴量の類似度も低くなってしまうため、低めのスコアが算出されてしまう(図4(a))。また、互いの顔サイズが小さい場合には、異なる人物の顔であっても、顔の領域の画素数が少ないため、見分けがつきにくく特徴量の類似度が高くなり、高めのスコアが算出されてしまう(図4(a))。
【0061】
このような場合、閾値2が、図4(a)に示すように、顔サイズが互いに大きい場合に他人を適切に排除できるような値(スコア)に設定してあると、顔サイズが異なる場合や互いに小さい場合に、適切に他人を排除することができない。そこで、本実施形態では、以下の式を用いてスコアを調整する。
【0062】
スコア算出部12によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズ(顔領域の画素数)をRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、スコア調整パラメータをPとし、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
とする。
【0063】
但し、顔サイズが互いに大きい場合に比べ、一方が小さい場合には低めのスコアが、両方小さい場合には高めのスコアが算出されるため、f(RX,RX´)は、R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であるとする。なお、本実施形態では、R1=R1´=5万画素、及び、R2=R2´=20万画素とし、f(R1,R2´)=f(R2,R1´)=0.5、f(R2,R2´)=1、f(R1,R1´)=2とする。
【0064】
上記スコア調整パラメータを用いると、図4(a)に示す各分布を、図4(b)に示すように互いの分布が近づくように調整することができる。図4(b)の例では、閾値2により全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該スコア調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0065】
<他の条件におけるスコア調整方法の具体例>
図5に、様々な登録条件及び照合条件の具体例、その条件の違いによって生じると想定される事項、その事項に対する大まかなスコア調整方法を示す。以下に、図5に示されているそれぞれ条件について説明する。
【0066】
まず、登録者の人数を条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ1で)説明したとおり、登録者の人数が多いほど、登録者と他人が類似する確率が高くなる。そのため、他人のスコアは高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、登録者の人数が多いほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0067】
次に、その登録者の登録画像枚数を条件とする場合について説明する。この場合も、登録者の人数を条件とする場合と同様であり、その登録者の登録画像枚数が多くなるほど、その登録者に他人が類似する確率が高くなる。そのため、他人のスコアが高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、登録画像枚数の数が多い登録者との照合を行うときほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0068】
次に、登録画像を撮影したときからの経過時間を条件とする場合について説明する。当該経過時間とは、登録画像の撮影日時と照合画像の撮影日時の差である。例えば、登録画像の撮影日時が照合画像の撮影日時に比べて非常に古い場合、登録画像と照合画像が同一人物の画像であったとしても、あまり類似しない確率が高くなる(例えば、子供のときの顔と大人になってからの顔とでは特徴量が類似しないことが多い)。そのため、本人のスコアが低めに算出され、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、当該経過時間が長いほどスコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0069】
次に、照合画像の撮影枚数を条件とする場合について説明する。当該撮影枚数とは、照合対象者が照合に用いた画像の枚数である。例えば、ビデオカメラなどで撮影された顔画像が入力される場合には、顔照合装置として照合対象者が当該ビデオカメラの撮像領域内にいる時間が長いほど多くの照合画像が入力される構成のものがある。その装置において、照合が当該複数の入力画像のうち最も高いスコアの入力画像を用いて行われるとすると、入力される画像数が多ければ多いほど、登録者に類似の顔画像が入力される確率が高くなる。そのため、他人のスコアは高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、照合画像の撮影枚数が多いほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0070】
次に、登録画像の撮影に用いた撮像装置と照合画像の撮影に用いた撮像装置のS/N比を条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ2で)説明した顔サイズと同様であり、どちらの画像もS/N比が高い撮像装置で撮影された場合には、妥当なスコアが算出されるが、一方の撮像装置のS/N比が低い場合には低めのスコアが、両方低い場合には高めのスコアが算出されてしまう。そのため、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の撮像装置のS/N比が低い場合には、S/N比の差に応じてスコアを高くし、両方の撮像装置のS/N比が低い場合には、そのS/N比に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0071】
次に、登録画像の撮影に用いた撮像装置と照合画像の撮影に用いた撮像装置のシャッタースピードを条件とする場合について説明する。シャッタースピードが速い撮像装置で撮影された場合、暗めの画像になる。シャッタースピードが遅い撮像装置で撮影された場合、明るめの画像になる。そのため、そのようような画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、シャッタースピードが速い(又は遅い)撮像装置で撮影された場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、シャッタースピードが速い(又は遅い)撮像装置で撮影された場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の撮像装置のシャッタースピードが速い(又は遅い)場合には、シャッタースピードの差に応じてスコアを高くし、両方の撮像装置のシャッタースピードが速い(又は遅い)場合には、そのシャッタースピードに応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0072】
次に、登録画像と照合画像の露出度を条件とする場合について説明する。シャッタースピードを条件とする場合と同様であり、露出度が低い場合は暗めの画像になり、露出度が高い場合は明るめの画像になる。そのため、そのようような画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、露出度が低い(又は高い)場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、露出度が低い(又は高い)場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の露出度が低い(又は高い)場合には、露出度の差に応じてスコアを高くし、両方の露出度が低い(又は高い)場合には、その露出度に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0073】
次に、焦点距離を条件とする場合について説明する。例えば、登録画像と照合画像とで、焦点距離が被写体とレンズの距離に対して適切であるか否かということを条件とする。焦点距離が適切である場合は、はっきりとした画像が撮影されるが、焦点距離が適切でない場合は、ぼやけた画像になってしまう。そのため、焦点距離が適切でない状態で撮影された画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、画像のぼやけ度合(ボケ量)の差に応じてスコアを高くし、両方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、そのボケ量に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0074】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔のサイズを条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ2で)説明したとおり、どちらの顔サイズも大きい場合には、妥当なスコアが算出されるが、一方の顔サイズが小さい場合には低めのスコアが、
両方小さい場合には高めのスコアが算出されてしまう。そのため、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の顔サイズが小さい場合には、顔サイズの差に応じてスコアを高くし、両方の顔サイズが小さい場合には、その顔サイズに応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0075】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の照明環境を条件とする場合について説明する。照明環境が、「暗い」、「明るい」、「斜光状態」である場合、正確な特徴量が抽出されない。そのため、「照明環境が順光状態でない」且つ「互いの照明環境が同じ」である場合に、高めのスコアが算出されてしまう。「互いの照明環境が異なる」場合には、低めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、「互いの照明環境が異なる」場合には、照明環境の差に応じてスコアを高くし、「照明環境が順光状態でない」且つ「互いの照明環境が同じ」である場合には、その照明環境に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0076】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の器官の隠れ(例えば、髪の毛、サングラス、マスクなどによる顔器官の隠れ)を条件とする場合について説明する。検出された顔に器官の隠れがある場合、その器官からは正確な特徴量が抽出できない。そのため、互いの画像で同じ器官に隠れが生じている場合に、高めのスコアが算出されてしまう。また、互いの画像で異なる器官に隠れが生じている場合には、低めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、異なる器官に隠れが生じている場合には、スコアを高くし、同じ器官に隠れが生じている場合には、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。なお、スコアの調整量は、顔全体に対する器官の隠れている割合などに応じて決定すればよい。
【0077】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の向きを条件とする場合について説明する。或る1人の人物の顔画像を撮影し、特徴量を抽出する場合、当該特徴量は顔の向きによって異なる。そのため、互いの画像で顔向きが同じの場合には、妥当なスコアが算出されるが(もちろん正面向き同士が理想的である)、顔向きが異なる場合には、低めのスコアが算出されてしまう。そのため、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、顔向きが異なるほど、スコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0078】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の表情を条件とする場合について説明する。或る1人の人物の顔画像を撮影し、特徴量を抽出する場合、当該特徴量は顔の表情によって異なる。そのため、互いの画像で表情が同じの場合には、妥当なスコアが算出されるが(もちろん真顔同士が理想的である)、表情が異なる場合には、低めのスコアが算出されてしまう。そのため、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、表情が異なるほど、スコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0079】
次に、登録画像と照合画像から検出された人物の身体的特徴(髪型、身長、体型など)を条件とする場合について説明する。顔特徴量(顔画像から抽出された特徴量)から算出されたスコアを、身体的特徴に応じて調整することにより、妥当な値にすることができる。具体的には、他人の顔が登録者の顔の似ている場合、高めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、髪型、身長、体型などが異なるほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0080】
次に、登録画像と照合画像から検出された人物の属性(性別、年代など)を条件とする場合について説明する。顔特徴量(顔画像から抽出された特徴量)から算出されたスコアを、属性に応じて調整することにより、妥当な値にすることができる。具体的には、他人の顔が登録者の顔の似ている場合、高めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、年代、性別などが異なる場合に、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。なお、年代については異なるほどスコアを低くしてもよい。
【0081】
次に、照合画像から検出された顔の信頼度を条件とする場合について説明する。顔検出の信頼度は、例えば、検出された顔の顔らしさがどの程度かということを表したものである。顔検出の信頼度が高い場合、検出された顔が「顔」である確率は高い。一方、顔検出の信頼度が低い場合には、検出された顔が「非顔」である確率が高くなる。そのため、照合画像から検出された顔の信頼度が高い場合には、妥当なスコアが算出されるが、信頼度が低い場合には、スコアの信頼度も低くなる。スコアの信頼度が低い照合対象者を登録者として受け入れることは、他人を受け入れてしまう確率を高くするため、そのような照合対象者は受け入れるべきではない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、顔検出の信頼度が低いほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0082】
次に、照合対象者の顔から抽出された特徴量の信頼度を条件とする場合について説明する。特徴量の信頼度についても、顔検出の信頼度を条件とする場合と同様であり、特徴量の信頼度が高い場合には、妥当なスコアが算出されるが、信頼度が低い場合には、スコアの信頼度も低くなる。スコアの信頼度が低い照合対象者を登録者として受け入れることは、他人を受け入れてしまう確率を高くするため、そのような照合対象者は受け入れるべきではない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、特徴量の信頼度が低いほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0083】
上述したようにスコアを調整すれば、他人受入率を略一定にすることができる。そのように調整するためのスコア調整パラメータは、例えば、各条件に対応する他人の画像を複数用いて、「その条件のときに他人が照合を行うと、どの程度のスコアが算出されるのか」ということを予め求める(学習する)ことにより、定義することができる。また、上述した各条件はそれぞれ組み合わせてもよいし、上述した条件以外の条件と組み合わせてもよい。その場合には、「組み合わせた条件でスコアがどのように変動するのか」ということが重要となる。
【0084】
なお、本実施形態では、スコア調整パラメータによって、どの程度スコアが調整されるのかについて詳しく説明していないが、スコアの調整量は、条件の違いによるスコアの差が、調整前に比べて小さくなれば、どの程度調整してもよい。少なくともそのように調整すれば、調整前に比べて条件の影響の少ない安定した顔照合を行うことができる。
【0085】
なお、上述したような学習などによってスコア調整パラメータを決定すれば、他人受入率を条件によらずより一定にすることができる。例えば、そのような学習により、図6に示すような、閾値に対する他人受入率のグラフを、条件ごとに作成することができる(図6では、1つの条件のみの曲線を例示する)。図6に示すように、閾値をAとすれば他人受入率はBとなる。他の条件について、他人受入率がBのときの閾値がAになるように各条件のスコアを調整すれば、他人受入率を条件によらず一定にすることができる。
【0086】
なお、登録者についても様々な条件で学習を行えば、図7に示すような、閾値に対する本人を棄却する確率(本人棄却率)のグラフも得ることができる。スコア調整パラメータ
は、本人棄却率を条件によらず略等しくするようなパラメータであってもよい。また、他人受入率と本人棄却率の曲線の交点は、「等エラー率」と呼ばれ、この等エラー率も一般に評価される値である。スコア調整パラメータは、等エラー率を条件によらず略等しくするようなパラメータであってもよい。ここで、等エラー率を条件によらず略等しくする、とは、等エラー率のときの閾値、または、等エラー率と等エラー率のときの閾値の組を条件によらず略等しくすることを意味する。
【0087】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、効率的且つ安定した顔照合を行うために、条件に応じて閾値を自動的に調整する構成について説明する。
【0088】
<装置構成>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る顔照合装置は、第1の実施形態に係る顔照合装置の備えるスコア調整部16の変わりに、閾値調整部81を備えている。なお、第1の実施形態で説明した機能と同様の機能については、同じ符号をつけ、説明を省略する。
【0089】
閾値調整部81は、閾値調整パラメータを用いて、予め定められた閾値を調整する機能である。閾値調整パラメータは、当該顔照合装置にプログラムとして組み込まれていてもよいし、閾値調整パラメータを記憶装置に予め記憶しておき、当該記憶装置から必要に応じて読み出すような構成を採用してもよい。閾値調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるように閾値を調整することのできるパラメータである。
【0090】
<顔照合機能>
図9のフローチャートに沿って顔照合機能の構成と処理の流れを説明する。
【0091】
ステップS20〜S23の処理は、図2におけるステップS10〜S13の処理と同様のため、説明を省略する。
【0092】
ステップS23の次に、閾値調整部81が、閾値調整パラメータを用いて予め定められた閾値を調整する(ステップS24)。
【0093】
ステップS25の処理は、図2におけるステップS15の処理と同様のため、説明を省略する。
【0094】
それでは次に、閾値調整パラメータの一例について説明する。
【0095】
<閾値調整パラメータ1>
上述したように、閾値調整パラメータは、予め定められた閾値を調整するためのものである。具体的には、閾値調整パラメータは、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率の変動を抑えるように定められたものである。
【0096】
以下に、登録者の登録人数(1人、10人、100人)を条件とする場合について説明する。
【0097】
図10(a)は、図3(a)と同様のため説明を省略する。
【0098】
本実施形態では、以下の式を用いて閾値を調整する。
【0099】
予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、閾値調整パラメータをPLとし、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
とする。なお、本実施形態では、係数A=1,係数B=0.5とする。
【0100】
上記閾値調整パラメータを用いると、図10(a)に示す閾値1を、図10(b)に示すように、それぞれの分布において分布と閾値が同じ関係になるように閾値を調整することができる。図10(b)の例では、登録人数が1人のときには閾値1を用いて判定が行われ、登録人数が10人のときには閾値101を用いて判定が行われ、登録人数が100人のときには閾値102を用い判定が行われるように閾値が調整される。これにより、全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該閾値調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0101】
<閾値調整パラメータ2>
次に、登録者と照合対象者との、顔検出部12によって検出された顔サイズ(顔領域の画素数)の差を条件とする場合について説明する。
【0102】
図11(a)は、図4(a)と同様のため、説明を省略する。
【0103】
本実施形態では、以下の式を用いて閾値を調整する。
【0104】
予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、閾値調整パラメータをPLとし、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
とする。
【0105】
但し、本実施形態でも図4の例と同様に、顔サイズが互いに大きい場合に比べ、一方が小さい場合には低めのスコアが、両方小さい場合には高めのスコアが算出されるため、R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であるとし、R1=R1´=5万画素、及び、R2=R2´=20万画素、f(R1,R2´)=f(R2,R1´)=0.5、f(R2,R2´)=1、f(R1,R1´)=2とする。
【0106】
上記閾値調整パラメータを用いると、図11(a)に示す閾値2を、図11(b)に示すように、それぞれの分布において分布と閾値が同じ関係になるように閾値を調整することができる。図11(b)の例では、顔サイズが互いに大きいときには閾値1を用いて判定が行われ、一方の顔画像が小さいときには閾値111を用いて判定が行われ、両方の顔画像が小さいときには閾値112を用い判定が行われるように閾値が調整される。すなわち、当該閾値調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0107】
<他の条件における閾値調整方法の具体例>
上記閾値調整パラメータの具体例から、閾値の調整方法は、第1の実施形態におけるスコアの調整と反対の処理を閾値に対して行っていることがわかる。例えば、第1の実施形態においてスコアを小さくするような調整を行うのに対し、本実施形態では閾値を大きく
するような調整を行う。すなわち、第1の実施形態で図5を用いて説明したスコアの調整方法の逆の処理が閾値の調整方法になる。そのため、閾値調整方法の具体例は、第1の実施形態で述べた図5の説明を参照することとし、説明を省略する。
【0108】
なお、閾値調整方法も、上述したスコア調整方法と同様に、本人棄却率や等エラー率を一定とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る顔照合装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、スコア調整パラメータの一例を表す図であり、図3(a)は、登録者の人数を条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図3(b)は、登録者の人数に応じて調整されたスコアを表す模式図である。
【図4】図4は、スコア調整パラメータの一例を表す図であり、図4(a)は、顔サイズを条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図4(b)は、顔サイズに応じて調整されたスコアを表す模式図である。
【図5】図5は、様々な登録条件及び照合条件の具体例、その条件の違いによって生じると想定される事項、その事項に対応するための大まかなスコア調整方法を示す図である。
【図6】図6は、閾値の変化に対する他人受入率の変化を示す図である。
【図7】図7は、閾値の変化に対する他人受入率及び本人棄却率の変化を示す図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る顔照合装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、閾値調整パラメータの一例を表す図であり、図10(a)は、登録者の人数を条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図10(b)は、登録者の人数に応じて調整された閾値を表す模式図である。
【図11】図11は、閾値調整パラメータの一例を表す図であり、図11(a)は、顔サイズを条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図11(b)は、顔サイズに応じて調整された閾値を表す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 画像入力部
11 画像記憶部
12 顔検出部
13 特徴量抽出部
14 登録者情報記憶部
15 スコア算出部
16 スコア調整部
17 判定部
81 閾値調整部
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔画像を照合する顔照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔照合装置の照合精度は、登録者の登録条件や照合対象者との照合条件などに大きく依存する。
【0003】
登録条件としては、例えば、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、登録画像を撮影する撮像装置の特性(S/N比、シャッタースピード、露出量、焦点距離、撮影枚数など)、登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向きなどがある。
【0004】
照合条件としては、例えば、登録画像を撮影したときからの経過時間、照合画像を撮影する撮像装置の特性、照合画像の撮影枚数、照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、顔検出の信頼度、特徴量の信頼度などがある。
【0005】
具体的には、登録者以外の他人が照合する場合、登録者の登録人数が多くなるにつれて、複数の登録者の中に当該他人に類似する人物が現れる確率が高くなる。そのため、登録者の登録人数が多いほど、平均として高めのスコアが算出される。照合対象者が登録者か否かを判定するための閾値が1つしか設定されていない状況では、このようなスコアの変動により、他人の受け入れ易さ(他人受入率)も変動してしまう。
【0006】
このように他人受入率が条件によって変動することは、条件によって装置の認証精度が変動することを意味する。安定した認証精度で顔照合を行うために、他人受入率が登録条件や照合条件に依存しないような顔照合を行うことのできる顔照合装置が望まれている。
【0007】
このような問題に対して、従来、装置を設置する度に、その装置の条件に合わせたスコアの補正値を求めたり、適切な閾値を求めたりするなどの事前調整が行われてきた。
【0008】
しかし、装置を設置するたびに調整することは、ユーザにとって大きな負担であり、効率的ではない。
【0009】
このような照合装置の例として特許文献1,2に記載された発明がある。
【特許文献1】特開2000−163092号公報
【特許文献2】特開2001−101406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、登録条件や照合条件によらず安定した顔照合を行うための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、以下の構成を採用する。
【0012】
本発明に係る第1の顔照合装置は、登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人
を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するスコア調整手段と、前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、を備える。
【0013】
本発明に係る第1の顔照合装置では、スコア調整パラメータを用いて算出手段で算出されたスコアを調整する。そして、当該調整は、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率のいずれかが登録条件や照合条件によらず略一定になるように行われる。
【0014】
スコアの調整はどのように行ってもよいが、一例を挙げると、他人画像や本人画像を用いた学習を条件ごとに行い、スコア調整パラメータを算出し、当該算出したスコア調整パラメータを用いてスコアを調整してもよい。
【0015】
そして、スコア調整パラメータは、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率が登録条件や照合条件によらず略一定になるような効果を与えるものであればどのようなものであってもよい。すなわち、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率などの違いが、調整前に比べて小さくなっていればよい。そのような変換がなされれば、登録条件や照合条件による他人受入率などの変動の小さい顔照合を行うことができる。すなわち、当該構成により、装置を設置する度に調整するというユーザの負担を減らすことができ、効率的且つ安定した顔検出を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る第2の顔照合装置は、登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整する閾値調整手段と、前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、を備える。
【0017】
本発明に係る第2の顔照合装置では、閾値調整パラメータを用いて予め定められた閾値を調整する。そして、当該調整は、他人受入率、本人棄却率、又は、等エラー率が登録条件や照合条件によらず略一定になるように行われる。これにより、上記第1の顔照合装置で得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、効率的且つ安定した顔検出を行うことができる。
【0018】
前記登録条件は、少なくとも、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、前記登録画像を撮影する撮像装置の特性、又は、前記登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、若しくは、表情の変化を含むことが好ましい。少なくともこれらの条件のいずれかによる他人受入率などの変動を抑えることにより、ユーザはその条件についての調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0019】
前記照合条件は、少なくとも、前記登録画像を撮影したときからの経過時間、前記照合画像を撮影する撮像装置の特性、前記照合画像の撮影枚数、又は、前記照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、若しくは、特徴量の信頼度を含むことが好ましい。上述した登録条件と同様に、少なくともこれらの条件のいずれかによる、他人受入率などの変動を抑えることにより、ユーザはその条件
についての調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0020】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
であることが好ましい。
【0021】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
前記スコア調整パラメータは、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であることが好ましい。
【0022】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
であることが好ましい。
【0023】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
前記閾値調整パラメータは、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であることが好ましい。
【0024】
スコア調整パラメータや閾値調整パラメータとして、上記の式を用いることにより、登録人数や、登録画像・照合画像から検出される顔サイズが異なっていても他人受入率が略一定になるようにスコアを調整することができる。そのため、ユーザは装置を設置する度にこれらの条件に合わせた調整をする必要がなくなるため、効率的且つ安定した顔照合を行うことができる。
【0025】
また、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する顔照合装置として捉えてもよいし、上記処理の少なくとも一部を含む顔照合方法、または、かかる方法を実現するための顔照合プログラムやそのプログラムを記録した記録媒体として捉えることもできる。なお、
上記手段及び処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、登録条件や照合条件によらず安定した顔照合を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、効率的且つ安定した顔照合を行うために、登録者の特徴量と照合対象者の特徴量とから算出されるスコアを調整する構成について説明する。
【0029】
<装置構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。この顔照合装置は、顔画像を用いて照合対象者の本人認証又は個人識別を行う装置であり、例えば、カメラ付きのコンピュータや携帯電話におけるセキュリティ装置、侵入者検知を行う監視装置、入退室管理やドアの錠制御を行う装置などの様々な用途に応用可能である。
【0030】
第1の実施形態に係る顔照合装置は、図1に示す複数の機能要素、すなわち画像入力部10、画像記憶部11、顔検出部12、特徴量抽出部13、登録者情報記憶部14、スコア算出部15、スコア調整部16、判定部17を備えている。本実施形態では、これらの機能要素は、演算処理装置がソフトウエア(プログラム)を実行し、必要に応じて記憶装置・撮像装置・入力装置などのハードウエア資源を制御することで実現される。ただし、これらの機能要素を専用のチップで構成しても構わない。
【0031】
画像入力部10は、登録者の顔画像(登録画像)や照合対象者の顔画像(照合画像)を顔照合装置へ入力するためのインタフェースであり、どのような既存技術を用いて構成されてもよい。例えば、ネットワークを介して登録画像や照合画像が入力される場合はネットワークインタフェースが画像入力部に該当し、デジタルカメラ・スキャナ・コンピュータ・記憶装置等の外部機器から登録画像や照合画像が入力される場合は外部機器と顔照合装置を有線又は無線で接続する通信インタフェースが画像入力部に該当し、メモリ・CD・DVD等の記録媒体から登録画像や照合画像が入力される場合は記録媒体のリーダが画像入力部に該当する。また、顔照合装置がCCDやCMOSセンサ等からなる撮像装置を具備し、その撮像装置で登録者や照合対象者を撮影するのであれば、撮像装置が画像入力部に該当する。
【0032】
画像記憶部11は、処理対象となる画像を一時的に記憶する記憶装置である。この記憶装置としては、揮発性メモリや不揮発性メモリなど、どのような具体的技術が適用されてもよい。
【0033】
顔検出部12は、画像処理によって画像から顔を検出する機能である。顔検出部12による顔検出処理は、既存の顔検出処理のどのような技術が適用されてもよい。一例を挙げると、顔全体の輪郭に対応した基準テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって顔を検出する手法、顔の器官(目、鼻、耳など)に基づくテンプレートマッチングによって顔を検出する手法、クロマキー処理によって頭部などの頂点を検出し、この頂点に基づいて顔を検出する手法、肌の色に近い領域を検出し、その領域を顔として検出する手法、ニューラルネットワークを使って教師信号による学習を行い、顔らしい領域を顔として検出する手法、などがある。
【0034】
特徴量抽出部13は、顔検出部12によって検出された顔から特徴量を抽出する機能である。特徴量抽出部13は、例えば、顔検出部12によって検出された顔から特徴点を検出し、当該特徴点から特徴量を抽出する。特徴点とは口の両端、目尻、目頭、鼻先などのような特徴となる箇所のことである。特徴量の種類はどのようなものを採用してもよく、例えば、特徴点近傍の濃淡値やその周期性・方向性、特徴点の位置関係などを特徴量として採用できる。特徴量の個数についても、期待する照合精度に応じて任意に設定できる。本実施形態では、それら複数の特徴量を組み合わせたものはベクトルまたは特徴量ベクトルと呼ばれる。特徴量抽出部13による特徴点検出処理は、既存の特徴点検出処理のどのような技術が適用されてもよい。一例を挙げると、特徴点の位置を示すパターンを学習し、その学習データを使用したマッチングを行うことによって特徴点を検出する手法、検出された顔の内側において、パターンマッチングにより特徴点を検出する手法など、既存のいかなる手法を用いてもよい。
【0035】
登録者情報記憶部14は、登録画像から抽出された特徴量を記憶する記憶装置である。この記憶装置としては、不揮発性メモリやハードディスクなど、どのような具体的技術が適用されてもよい。登録者情報記憶部14に記憶される登録者の人数は、1人であってもよいし、複数人であってもよい。
【0036】
なお、登録画像と照合画像とでは、それぞれ異なる画像入力部10、画像記憶部11、顔検出部12、特徴量抽出部13が用いられていてもよい。
【0037】
スコア算出部15は、登録者情報記憶部14に記憶されている登録者の特徴量と、照合画像から抽出された特徴量とを比較することによってスコアを算出する機能である。当該スコアは、登録者の特徴量と照合対象者の特徴量との類似度である。
【0038】
当該類似度によって照合対象者が登録者か否かを判定することは可能であるが、登録条件や照合条件の違いによって、算出されやすいスコアの値にも違いが生じてしまう。そのため、照合時に他人を受け入れる確率(他人受入率)も、登録条件や照合条件によって大きく変動してしまい、安定した判定精度を確保することができない。(後で述べる)登録条件や照合条件が、装置の設置状況に基づいて想定できる場合には、当該設置状況に基づいてスコアの補正値や照合対象者が登録者か否かを判定するための閾値などを調整することも可能であるが、装置を設置する度にそのような調整を行うことは、効率的とは言えない。そこで、本実施形態では、以下に記すスコア調整部16を備えることにより、当該問題を解消する。
【0039】
スコア調整部16は、スコア調整パラメータを用いて、スコアを調整する機能である。スコア調整パラメータは、当該顔照合装置にプログラムとして組み込まれていてもよいし、スコア調整パラメータを記憶装置に予め記憶しておき、当該記憶装置から必要に応じて読み出すような構成を採用してもよい。スコア調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるようにスコアを調整することのできるパラメータである。具体的には、スコア調整パラメータは、登録条件や照合条件などの関数として定めることができる。
【0040】
登録条件は、例えば、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、登録画像を撮影する撮像装置の特性、登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化などである。
【0041】
照合条件は、例えば、登録画像を撮影したときからの経過時間、照合画像を撮影する撮像装置の特性、照合画像の撮影枚数、照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の
隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、特徴量の信頼度などである。
【0042】
本実施形態では、上記登録条件及び照合条件のうちのいずれか1つ以上を考慮したスコア調整パラメータを用いるものとする。なお、スコア調整パラメータについては後で一例を用いて詳しく説明する。
【0043】
判定部17は、スコア調整部16によって調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって照合対象者が登録者か否かを判定する機能である。
【0044】
<顔照合機能>
図2のフローチャートに沿って顔照合機能の構成と処理の流れを説明する。
【0045】
顔照合機能が起動すると、画像入力部10から照合画像が入力される(ステップS10)。入力された照合画像は、画像記憶部11に格納される。
【0046】
次に、顔検出部12が、ステップS10で入力された照合画像から人の顔を検出し、顔の位置や大きさ等を特定する(ステップS11)。
【0047】
そして、特徴量抽出部13が、ステップS11で検出された顔から特徴量を抽出する(ステップS12)。
【0048】
次に、スコア算出部15が、登録者情報記憶部14に記憶されている登録者の特徴量と、ステップS12で抽出された特徴量との類似度(スコア)を算出する(ステップS13)。
【0049】
そして、スコア調整部16が、スコア調整パラメータを用いてステップS13で算出されたスコアを調整する(ステップS14)。
【0050】
次に、判定部17が、ステップS14で調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することにより、ステップS10で入力された照合画像の人物が登録者であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0051】
それでは次に、スコア調整パラメータの一例について説明する。
【0052】
<スコア調整パラメータ1>
上述したように、スコア調整パラメータは、スコア算出部15によって算出されたスコアを調整するためのものである。具体的には、スコア調整パラメータは、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率の変動を抑えるように定められたものである。
【0053】
以下に、登録者の登録人数(1人、10人、100人)を条件とする場合について説明する。
【0054】
図3(a)は、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出部15によるスコアの算出結果を表す模式図である。図3(a)は、横軸を「スコア」、縦軸を「算出されたスコアの確率密度」とするグラフである(どちらの軸も定義の仕方次第で値のとりうる範囲は変化する。例えば図3(a)ではスコアの最大値が1になるように規格化してある)。すなわち、図3(a)は、「他人が顔照合を行った場合に、どの程度のスコアが算出されやすいのか」ということを条件ごとに表している。図3(a)の例から、登録人数が増すにつれて算出されやすいスコアの値も上昇することがわかる。これは、登録人数が多いほど、登録者の中に他人に類似する人物が現れる確率が高くなることを意味する。
【0055】
このような場合、閾値1が、図3(a)に示すように、登録人数1人の場合に他人を適切に排除できるような値(スコア)に設定してあると、登録人数が増えるにつれ、他人を照合したときに、当該閾値よりも高いスコアが算出されやすくなってしまう。つまり、他人を登録者として受け入れやすくなってしまう。そこで、本実施形態では、以下の式を用いてスコアを調整する。
【0056】
スコア算出部12によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、スコア調整パラメータをPとし、
S´=S/P
P=A+B×logN
但し、A,B:係数
とする。なお、本実施形態では、係数A=1,係数B=0.5とする。
【0057】
上記スコア調整パラメータを用いると、図3(a)に示す各分布を、図3(b)に示すように互いの分布が近づくように調整することができる。図3(b)の例では、閾値1により全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該スコア調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0058】
<スコア調整パラメータ2>
次に、顔サイズを条件とする場合について説明する。具体的には、登録者と照合対象者との、顔検出部12によって検出された顔サイズ(顔領域の画素数)の差を条件とする。
【0059】
図4(a)は、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出部15によるスコアの算出結果を表す模式図である。図4(a)は、横軸を「スコア」、縦軸を「算出されたスコアの確率密度」とするグラフである。すなわち、図4(a)は、「他人が顔照合を行った場合に、どの程度のスコアが算出されやすいのか」ということを条件ごとに表している。
【0060】
図4(a)に示すように、登録者と照合対象者とで、検出された顔サイズが互いに大きい場合には、検出された顔の領域の画素数も多いため、どちらの顔からも正確な特徴量を抽出することができる。その結果、妥当なスコアが算出され、精度良い顔照合を行うことができる。しかし、一方の顔サイズが大きく、もう一方の顔サイズが小さい場合、小さい顔の領域の画素数が少ないため、小さい顔からは正確な特徴量を抽出できない。その結果、顔サイズが大きいものと小さいものとでは、特徴量の類似度も低くなってしまうため、低めのスコアが算出されてしまう(図4(a))。また、互いの顔サイズが小さい場合には、異なる人物の顔であっても、顔の領域の画素数が少ないため、見分けがつきにくく特徴量の類似度が高くなり、高めのスコアが算出されてしまう(図4(a))。
【0061】
このような場合、閾値2が、図4(a)に示すように、顔サイズが互いに大きい場合に他人を適切に排除できるような値(スコア)に設定してあると、顔サイズが異なる場合や互いに小さい場合に、適切に他人を排除することができない。そこで、本実施形態では、以下の式を用いてスコアを調整する。
【0062】
スコア算出部12によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズ(顔領域の画素数)をRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、スコア調整パラメータをPとし、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
とする。
【0063】
但し、顔サイズが互いに大きい場合に比べ、一方が小さい場合には低めのスコアが、両方小さい場合には高めのスコアが算出されるため、f(RX,RX´)は、R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であるとする。なお、本実施形態では、R1=R1´=5万画素、及び、R2=R2´=20万画素とし、f(R1,R2´)=f(R2,R1´)=0.5、f(R2,R2´)=1、f(R1,R1´)=2とする。
【0064】
上記スコア調整パラメータを用いると、図4(a)に示す各分布を、図4(b)に示すように互いの分布が近づくように調整することができる。図4(b)の例では、閾値2により全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該スコア調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0065】
<他の条件におけるスコア調整方法の具体例>
図5に、様々な登録条件及び照合条件の具体例、その条件の違いによって生じると想定される事項、その事項に対する大まかなスコア調整方法を示す。以下に、図5に示されているそれぞれ条件について説明する。
【0066】
まず、登録者の人数を条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ1で)説明したとおり、登録者の人数が多いほど、登録者と他人が類似する確率が高くなる。そのため、他人のスコアは高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、登録者の人数が多いほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0067】
次に、その登録者の登録画像枚数を条件とする場合について説明する。この場合も、登録者の人数を条件とする場合と同様であり、その登録者の登録画像枚数が多くなるほど、その登録者に他人が類似する確率が高くなる。そのため、他人のスコアが高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、登録画像枚数の数が多い登録者との照合を行うときほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0068】
次に、登録画像を撮影したときからの経過時間を条件とする場合について説明する。当該経過時間とは、登録画像の撮影日時と照合画像の撮影日時の差である。例えば、登録画像の撮影日時が照合画像の撮影日時に比べて非常に古い場合、登録画像と照合画像が同一人物の画像であったとしても、あまり類似しない確率が高くなる(例えば、子供のときの顔と大人になってからの顔とでは特徴量が類似しないことが多い)。そのため、本人のスコアが低めに算出され、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、当該経過時間が長いほどスコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0069】
次に、照合画像の撮影枚数を条件とする場合について説明する。当該撮影枚数とは、照合対象者が照合に用いた画像の枚数である。例えば、ビデオカメラなどで撮影された顔画像が入力される場合には、顔照合装置として照合対象者が当該ビデオカメラの撮像領域内にいる時間が長いほど多くの照合画像が入力される構成のものがある。その装置において、照合が当該複数の入力画像のうち最も高いスコアの入力画像を用いて行われるとすると、入力される画像数が多ければ多いほど、登録者に類似の顔画像が入力される確率が高くなる。そのため、他人のスコアは高めに算出され、他人を受け入れやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、照合画像の撮影枚数が多いほどスコアをより低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0070】
次に、登録画像の撮影に用いた撮像装置と照合画像の撮影に用いた撮像装置のS/N比を条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ2で)説明した顔サイズと同様であり、どちらの画像もS/N比が高い撮像装置で撮影された場合には、妥当なスコアが算出されるが、一方の撮像装置のS/N比が低い場合には低めのスコアが、両方低い場合には高めのスコアが算出されてしまう。そのため、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の撮像装置のS/N比が低い場合には、S/N比の差に応じてスコアを高くし、両方の撮像装置のS/N比が低い場合には、そのS/N比に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0071】
次に、登録画像の撮影に用いた撮像装置と照合画像の撮影に用いた撮像装置のシャッタースピードを条件とする場合について説明する。シャッタースピードが速い撮像装置で撮影された場合、暗めの画像になる。シャッタースピードが遅い撮像装置で撮影された場合、明るめの画像になる。そのため、そのようような画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、シャッタースピードが速い(又は遅い)撮像装置で撮影された場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、シャッタースピードが速い(又は遅い)撮像装置で撮影された場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の撮像装置のシャッタースピードが速い(又は遅い)場合には、シャッタースピードの差に応じてスコアを高くし、両方の撮像装置のシャッタースピードが速い(又は遅い)場合には、そのシャッタースピードに応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0072】
次に、登録画像と照合画像の露出度を条件とする場合について説明する。シャッタースピードを条件とする場合と同様であり、露出度が低い場合は暗めの画像になり、露出度が高い場合は明るめの画像になる。そのため、そのようような画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、露出度が低い(又は高い)場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、露出度が低い(又は高い)場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の露出度が低い(又は高い)場合には、露出度の差に応じてスコアを高くし、両方の露出度が低い(又は高い)場合には、その露出度に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0073】
次に、焦点距離を条件とする場合について説明する。例えば、登録画像と照合画像とで、焦点距離が被写体とレンズの距離に対して適切であるか否かということを条件とする。焦点距離が適切である場合は、はっきりとした画像が撮影されるが、焦点距離が適切でない場合は、ぼやけた画像になってしまう。そのため、焦点距離が適切でない状態で撮影された画像からは、正確な特徴量を抽出することができない。すなわち、どちらの画像も、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、スコアが高めに算出され、片方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、スコアが低めに算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、画像のぼやけ度合(ボケ量)の差に応じてスコアを高くし、両方の画像が、焦点距離が適切でない状態で撮影されたものである場合には、そのボケ量に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0074】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔のサイズを条件とする場合について説明する。既に(スコア調整パラメータ2で)説明したとおり、どちらの顔サイズも大きい場合には、妥当なスコアが算出されるが、一方の顔サイズが小さい場合には低めのスコアが、
両方小さい場合には高めのスコアが算出されてしまう。そのため、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、一方の顔サイズが小さい場合には、顔サイズの差に応じてスコアを高くし、両方の顔サイズが小さい場合には、その顔サイズに応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0075】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の照明環境を条件とする場合について説明する。照明環境が、「暗い」、「明るい」、「斜光状態」である場合、正確な特徴量が抽出されない。そのため、「照明環境が順光状態でない」且つ「互いの照明環境が同じ」である場合に、高めのスコアが算出されてしまう。「互いの照明環境が異なる」場合には、低めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、「互いの照明環境が異なる」場合には、照明環境の差に応じてスコアを高くし、「照明環境が順光状態でない」且つ「互いの照明環境が同じ」である場合には、その照明環境に応じてスコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0076】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の器官の隠れ(例えば、髪の毛、サングラス、マスクなどによる顔器官の隠れ)を条件とする場合について説明する。検出された顔に器官の隠れがある場合、その器官からは正確な特徴量が抽出できない。そのため、互いの画像で同じ器官に隠れが生じている場合に、高めのスコアが算出されてしまう。また、互いの画像で異なる器官に隠れが生じている場合には、低めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、異なる器官に隠れが生じている場合には、スコアを高くし、同じ器官に隠れが生じている場合には、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。なお、スコアの調整量は、顔全体に対する器官の隠れている割合などに応じて決定すればよい。
【0077】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の向きを条件とする場合について説明する。或る1人の人物の顔画像を撮影し、特徴量を抽出する場合、当該特徴量は顔の向きによって異なる。そのため、互いの画像で顔向きが同じの場合には、妥当なスコアが算出されるが(もちろん正面向き同士が理想的である)、顔向きが異なる場合には、低めのスコアが算出されてしまう。そのため、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、顔向きが異なるほど、スコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0078】
次に、登録画像と照合画像から検出された顔の表情を条件とする場合について説明する。或る1人の人物の顔画像を撮影し、特徴量を抽出する場合、当該特徴量は顔の表情によって異なる。そのため、互いの画像で表情が同じの場合には、妥当なスコアが算出されるが(もちろん真顔同士が理想的である)、表情が異なる場合には、低めのスコアが算出されてしまう。そのため、本人を棄却しやすくなってしまう。このような場合、スコア調整パラメータとしては、表情が異なるほど、スコアを高くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0079】
次に、登録画像と照合画像から検出された人物の身体的特徴(髪型、身長、体型など)を条件とする場合について説明する。顔特徴量(顔画像から抽出された特徴量)から算出されたスコアを、身体的特徴に応じて調整することにより、妥当な値にすることができる。具体的には、他人の顔が登録者の顔の似ている場合、高めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、髪型、身長、体型などが異なるほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0080】
次に、登録画像と照合画像から検出された人物の属性(性別、年代など)を条件とする場合について説明する。顔特徴量(顔画像から抽出された特徴量)から算出されたスコアを、属性に応じて調整することにより、妥当な値にすることができる。具体的には、他人の顔が登録者の顔の似ている場合、高めのスコアが算出されてしまう。その結果、状況に応じて適切に他人を排除することができない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、年代、性別などが異なる場合に、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。なお、年代については異なるほどスコアを低くしてもよい。
【0081】
次に、照合画像から検出された顔の信頼度を条件とする場合について説明する。顔検出の信頼度は、例えば、検出された顔の顔らしさがどの程度かということを表したものである。顔検出の信頼度が高い場合、検出された顔が「顔」である確率は高い。一方、顔検出の信頼度が低い場合には、検出された顔が「非顔」である確率が高くなる。そのため、照合画像から検出された顔の信頼度が高い場合には、妥当なスコアが算出されるが、信頼度が低い場合には、スコアの信頼度も低くなる。スコアの信頼度が低い照合対象者を登録者として受け入れることは、他人を受け入れてしまう確率を高くするため、そのような照合対象者は受け入れるべきではない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、顔検出の信頼度が低いほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0082】
次に、照合対象者の顔から抽出された特徴量の信頼度を条件とする場合について説明する。特徴量の信頼度についても、顔検出の信頼度を条件とする場合と同様であり、特徴量の信頼度が高い場合には、妥当なスコアが算出されるが、信頼度が低い場合には、スコアの信頼度も低くなる。スコアの信頼度が低い照合対象者を登録者として受け入れることは、他人を受け入れてしまう確率を高くするため、そのような照合対象者は受け入れるべきではない。このような場合、スコア調整パラメータとしては、特徴量の信頼度が低いほど、スコアを低くするようなスコア調整パラメータを考えればよい。
【0083】
上述したようにスコアを調整すれば、他人受入率を略一定にすることができる。そのように調整するためのスコア調整パラメータは、例えば、各条件に対応する他人の画像を複数用いて、「その条件のときに他人が照合を行うと、どの程度のスコアが算出されるのか」ということを予め求める(学習する)ことにより、定義することができる。また、上述した各条件はそれぞれ組み合わせてもよいし、上述した条件以外の条件と組み合わせてもよい。その場合には、「組み合わせた条件でスコアがどのように変動するのか」ということが重要となる。
【0084】
なお、本実施形態では、スコア調整パラメータによって、どの程度スコアが調整されるのかについて詳しく説明していないが、スコアの調整量は、条件の違いによるスコアの差が、調整前に比べて小さくなれば、どの程度調整してもよい。少なくともそのように調整すれば、調整前に比べて条件の影響の少ない安定した顔照合を行うことができる。
【0085】
なお、上述したような学習などによってスコア調整パラメータを決定すれば、他人受入率を条件によらずより一定にすることができる。例えば、そのような学習により、図6に示すような、閾値に対する他人受入率のグラフを、条件ごとに作成することができる(図6では、1つの条件のみの曲線を例示する)。図6に示すように、閾値をAとすれば他人受入率はBとなる。他の条件について、他人受入率がBのときの閾値がAになるように各条件のスコアを調整すれば、他人受入率を条件によらず一定にすることができる。
【0086】
なお、登録者についても様々な条件で学習を行えば、図7に示すような、閾値に対する本人を棄却する確率(本人棄却率)のグラフも得ることができる。スコア調整パラメータ
は、本人棄却率を条件によらず略等しくするようなパラメータであってもよい。また、他人受入率と本人棄却率の曲線の交点は、「等エラー率」と呼ばれ、この等エラー率も一般に評価される値である。スコア調整パラメータは、等エラー率を条件によらず略等しくするようなパラメータであってもよい。ここで、等エラー率を条件によらず略等しくする、とは、等エラー率のときの閾値、または、等エラー率と等エラー率のときの閾値の組を条件によらず略等しくすることを意味する。
【0087】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、効率的且つ安定した顔照合を行うために、条件に応じて閾値を自動的に調整する構成について説明する。
【0088】
<装置構成>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る顔照合装置は、第1の実施形態に係る顔照合装置の備えるスコア調整部16の変わりに、閾値調整部81を備えている。なお、第1の実施形態で説明した機能と同様の機能については、同じ符号をつけ、説明を省略する。
【0089】
閾値調整部81は、閾値調整パラメータを用いて、予め定められた閾値を調整する機能である。閾値調整パラメータは、当該顔照合装置にプログラムとして組み込まれていてもよいし、閾値調整パラメータを記憶装置に予め記憶しておき、当該記憶装置から必要に応じて読み出すような構成を採用してもよい。閾値調整パラメータは、他人受入率が登録条件や照合条件によらず略一定になるように閾値を調整することのできるパラメータである。
【0090】
<顔照合機能>
図9のフローチャートに沿って顔照合機能の構成と処理の流れを説明する。
【0091】
ステップS20〜S23の処理は、図2におけるステップS10〜S13の処理と同様のため、説明を省略する。
【0092】
ステップS23の次に、閾値調整部81が、閾値調整パラメータを用いて予め定められた閾値を調整する(ステップS24)。
【0093】
ステップS25の処理は、図2におけるステップS15の処理と同様のため、説明を省略する。
【0094】
それでは次に、閾値調整パラメータの一例について説明する。
【0095】
<閾値調整パラメータ1>
上述したように、閾値調整パラメータは、予め定められた閾値を調整するためのものである。具体的には、閾値調整パラメータは、登録条件や照合条件の違いによる他人受入率の変動を抑えるように定められたものである。
【0096】
以下に、登録者の登録人数(1人、10人、100人)を条件とする場合について説明する。
【0097】
図10(a)は、図3(a)と同様のため説明を省略する。
【0098】
本実施形態では、以下の式を用いて閾値を調整する。
【0099】
予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、閾値調整パラメータをPLとし、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
とする。なお、本実施形態では、係数A=1,係数B=0.5とする。
【0100】
上記閾値調整パラメータを用いると、図10(a)に示す閾値1を、図10(b)に示すように、それぞれの分布において分布と閾値が同じ関係になるように閾値を調整することができる。図10(b)の例では、登録人数が1人のときには閾値1を用いて判定が行われ、登録人数が10人のときには閾値101を用いて判定が行われ、登録人数が100人のときには閾値102を用い判定が行われるように閾値が調整される。これにより、全ての条件で同じように他人を排除することができる。すなわち、当該閾値調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0101】
<閾値調整パラメータ2>
次に、登録者と照合対象者との、顔検出部12によって検出された顔サイズ(顔領域の画素数)の差を条件とする場合について説明する。
【0102】
図11(a)は、図4(a)と同様のため、説明を省略する。
【0103】
本実施形態では、以下の式を用いて閾値を調整する。
【0104】
予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、閾値調整パラメータをPLとし、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
とする。
【0105】
但し、本実施形態でも図4の例と同様に、顔サイズが互いに大きい場合に比べ、一方が小さい場合には低めのスコアが、両方小さい場合には高めのスコアが算出されるため、R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)であるとし、R1=R1´=5万画素、及び、R2=R2´=20万画素、f(R1,R2´)=f(R2,R1´)=0.5、f(R2,R2´)=1、f(R1,R1´)=2とする。
【0106】
上記閾値調整パラメータを用いると、図11(a)に示す閾値2を、図11(b)に示すように、それぞれの分布において分布と閾値が同じ関係になるように閾値を調整することができる。図11(b)の例では、顔サイズが互いに大きいときには閾値1を用いて判定が行われ、一方の顔画像が小さいときには閾値111を用いて判定が行われ、両方の顔画像が小さいときには閾値112を用い判定が行われるように閾値が調整される。すなわち、当該閾値調整パラメータを用いることにより、他人受入率を略一定にする効果が得られる。
【0107】
<他の条件における閾値調整方法の具体例>
上記閾値調整パラメータの具体例から、閾値の調整方法は、第1の実施形態におけるスコアの調整と反対の処理を閾値に対して行っていることがわかる。例えば、第1の実施形態においてスコアを小さくするような調整を行うのに対し、本実施形態では閾値を大きく
するような調整を行う。すなわち、第1の実施形態で図5を用いて説明したスコアの調整方法の逆の処理が閾値の調整方法になる。そのため、閾値調整方法の具体例は、第1の実施形態で述べた図5の説明を参照することとし、説明を省略する。
【0108】
なお、閾値調整方法も、上述したスコア調整方法と同様に、本人棄却率や等エラー率を一定とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る顔照合装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、スコア調整パラメータの一例を表す図であり、図3(a)は、登録者の人数を条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図3(b)は、登録者の人数に応じて調整されたスコアを表す模式図である。
【図4】図4は、スコア調整パラメータの一例を表す図であり、図4(a)は、顔サイズを条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図4(b)は、顔サイズに応じて調整されたスコアを表す模式図である。
【図5】図5は、様々な登録条件及び照合条件の具体例、その条件の違いによって生じると想定される事項、その事項に対応するための大まかなスコア調整方法を示す図である。
【図6】図6は、閾値の変化に対する他人受入率の変化を示す図である。
【図7】図7は、閾値の変化に対する他人受入率及び本人棄却率の変化を示す図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る顔照合装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る顔照合装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、閾値調整パラメータの一例を表す図であり、図10(a)は、登録者の人数を条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図10(b)は、登録者の人数に応じて調整された閾値を表す模式図である。
【図11】図11は、閾値調整パラメータの一例を表す図であり、図11(a)は、顔サイズを条件として、複数の他人画像を用いた場合の、スコア算出結果を表す模式図であり、図11(b)は、顔サイズに応じて調整された閾値を表す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 画像入力部
11 画像記憶部
12 顔検出部
13 特徴量抽出部
14 登録者情報記憶部
15 スコア算出部
16 スコア調整部
17 判定部
81 閾値調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するスコア調整手段と、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、
を備える顔照合装置。
【請求項2】
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整する閾値調整手段と、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、
を備える顔照合装置。
【請求項3】
前記登録条件は、少なくとも、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、前記登録画像を撮影する撮像装置の特性、又は、前記登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、若しくは、表情の変化を含む
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の顔照合装置。
【請求項4】
前記照合条件は、少なくとも、前記登録画像を撮影したときからの経過時間、前記照合画像を撮影する撮像装置の特性、前記照合画像の撮影枚数、又は、前記照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、若しくは、特徴量の信頼度を含む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔照合装置。
【請求項5】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
である
請求項1に記載の顔照合装置。
【請求項6】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記スコア
調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)である
請求項1に記載の顔照合装置。
【請求項7】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
である
請求項2に記載の顔照合装置。
【請求項8】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)である
請求項2に記載の顔照合装置。
【請求項9】
コンピュータが、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶し、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出し、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出し、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整し、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する
顔照合方法。
【請求項10】
コンピュータが、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶し、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出し、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出し、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる
確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整し、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する
顔照合方法。
【請求項11】
コンピュータに、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶するステップと、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出するステップと、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するステップと、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するステップと、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定するステップと、
を実行させるための顔照合プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶装置に記憶するステップと、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出するステップと、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するステップと、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整するステップと、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定するステップと、
を実行させるための顔照合プログラム。
【請求項1】
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するスコア調整手段と、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、
を備える顔照合装置。
【請求項2】
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶する記憶手段と、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するスコア算出手段と、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整する閾値調整手段と、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する判定手段と、
を備える顔照合装置。
【請求項3】
前記登録条件は、少なくとも、登録者の人数、その登録者の登録画像枚数、前記登録画像を撮影する撮像装置の特性、又は、前記登録画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、若しくは、表情の変化を含む
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の顔照合装置。
【請求項4】
前記照合条件は、少なくとも、前記登録画像を撮影したときからの経過時間、前記照合画像を撮影する撮像装置の特性、前記照合画像の撮影枚数、又は、前記照合画像における、顔サイズ、照明環境、顔器官の隠れ、顔向き、表情の変化、顔検出の信頼度、若しくは、特徴量の信頼度を含む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔照合装置。
【請求項5】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録人数をN、前記スコア調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
である
請求項1に記載の顔照合装置。
【請求項6】
スコア算出手段によって算出されたスコアをS、調整後のスコアをS´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記スコア
調整パラメータをPとしたとき、
S´=S/P
P=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)である
請求項1に記載の顔照合装置。
【請求項7】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録人数をN、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(N)=A+B×logN
但し、A,B:係数
である
請求項2に記載の顔照合装置。
【請求項8】
前記予め定められた閾値をSL、調整後の閾値をSL´、登録画像から検出された顔のサイズをRX、照合画像から検出された顔のサイズをRX´、前記閾値調整パラメータをPLとしたとき、
SL´=SL×PL
PL=f(RX,RX´)
但し、
f(RX,RX´)は、
R1<R2、R1´<R2´、R1=R1´、及び、R2=R2´、であるとき、
f(R1,R2´)=f(R2,R1´)<f(R2,R2´)<f(R1,R1´)である
請求項2に記載の顔照合装置。
【請求項9】
コンピュータが、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶し、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出し、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出し、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整し、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する
顔照合方法。
【請求項10】
コンピュータが、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶し、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出し、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出し、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる
確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整し、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定する
顔照合方法。
【請求項11】
コンピュータに、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶手段に記憶するステップと、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出するステップと、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するステップと、
スコア調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記スコアを調整するステップと、
前記調整されたスコアと予め定められた閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定するステップと、
を実行させるための顔照合プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
登録者の登録画像から抽出された特徴量であって、少なくとも1人以上の特徴量を記憶装置に記憶するステップと、
照合対象者の照合画像から特徴量を抽出するステップと、
前記登録者の特徴量と前記照合対象者の特徴量との類似度を表すスコアを算出するステップと、
閾値調整パラメータを用いて、照合時に他人を受け入れる確率を表す他人受入率、照合時に本人を棄却する確率を表す本人棄却率、又は、他人受入率と本人棄却率が等しくなる確率である等エラー率のいずれかが、登録条件及び/又は照合条件によらず略一定になるように、前記照合対象者が登録者か否かを判定するための予め定められた閾値を調整するステップと、
前記算出されたスコアと前記調整された閾値とを比較することによって前記照合対象者が登録者か否かを判定するステップと、
を実行させるための顔照合プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−163555(P2009−163555A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1350(P2008−1350)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]